JP3762388B2 - 空気調和装置と空気調和方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物において、上記活動空間に対する冷房をなすための空気調和装置と空気調和方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの人々が集まる、たとえばゲームセンターやショッピングセンター、あるいは展示場等を構成する建築物は、デザイン性を重視するばかりでなく、人々に閉塞感(=不安感)を与えてはならないことが必須の要件である。
その意味から、フロア面から屋根部分までの吹き抜け状をなす建築物は、内部に広い空間を作り出し、内部にいる人に対して開放感(=安心感)を与えるので、好まれている。
【0003】
このような建築物の内部は、人々がゲームし、買い物あるいは観賞等の活動をなす空間である活動空間が下部に形成され、この活動空間の上方部位は吹き抜け状となり屋根内部に高天井空間が形成されることになる。
高天井空間を備えた建築物の上記活動空間に対する空気調和運転として、暖房運転をなす時間(もしくは期間)よりも、冷房運転をなす時間(もしくは期間)が極めて長い。
【0004】
すなわち、ゲームセンターのゲーム機器によっては発熱量が大であり、かつゲームする人による発熱量も無視できない。ショッピングセンターや展示場では、照明にともなう発熱やショーケース等の機器からの発熱があり、同様に、人が集まることによる発熱量が大である。
これらの熱気は上昇して高天井空間に溜まる熱負荷となる。さらに、天井はその外側が太陽光による直射を受けるため内面側の温度も上昇し、高天井空間の温度をさらに上昇させてしまう。したがって、上記建築物においては効率的な冷房運転を行う必要がある。
【0005】
図7は、従来の上記建築物の活動空間に対する空気調和運転、実際には冷房運転を模式的に説明する図である。
図中1は、いわゆる半ドーム状に形成された屋根2を有する建築物である。この建築物のフロア面3には、たとえばパチンコ台等のゲーム機器(以下、機器類と呼ぶ)4が配置される。
【0006】
上記機器類4は、所定間隔を存して複数列配列されていて、これら機器類列間にたとえばゲームする人が存在する。したがって建築物1内は、フロア面3から上記機器類4のある程度上部までの空間が活動空間5となる。さらに、この活動空間5の上方部位は吹き抜け状をなし、屋根2内部が高天井空間6となる。
通常、活動空間5より上部位置に吹出し用ダクト7と吸込み用ダクト8を並行に設けており、それぞれのダクト7,8に所定間隔を存して吹出口を形成する吹出口体7aと、吸込口を形成する吸込口体8aが突設される。
【0007】
吹出し用ダクト7と吸込み用ダクト8は、それぞれの端部が建築物1の外部に延出され、ここに配置される装置本体9の吹出し部aおよび吸込み部bに接続される。
上記吹出口体7aは、機器類4列の相互間に対向した位置で、かつ斜め下方に向けて設けられる。また、上記吸込口8aは吸込みダクト7の左右両側に、かつそれぞれ水平方向に向けて設けられる。
【0008】
冷房運転時に、活動空間5の上部にある吹出口体7aから冷却空気が斜め下方に向かって吹き下ろされ、機器類4列間にいる人は冷風にさらされる。したがって、人は冷却空気の吹出し流による直接的な冷熱感が得られる。
冷却空気の吹出し流は活動空間5の人や機器類4、あるいはフロア面3に衝突し、温度上昇するとともに流れにともなう上昇気流となる。そして、吹き抜け状に形成される高天井空間6に導かれ、さらにこの高天井空間に沿って下降し、ついには吸込口8aに吸込まれる。
【0009】
このようにして、上記吹出口体7aから吹出される冷却空気の吹出し流が活動空間5を冷却したあと、吹抜け状に形成される高天井空間6を介して吸込口8aに導かれるので、建築物1内部に鉛直方向に大きな循環流Rが形成される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、実際に、上記吹出口体7aから吹出される冷却空気の風向きと流速を計測すると、活動空間5において吹出口体7aが向いた方向では流速が大であり、この部分では極めて強い冷房効果が得られる反面、吹出口体7aが向いていない方向では流速が小さくて冷房効果が低い。
すなわち、活動空間5の各部位における冷却ムラが顕著である。流速が大である範囲にいる人にとって、常に強い吹出し流にさらされることになり、急流ドラフト感があって空調快適性が損なわれている。
【0011】
一方、高天井空間6は最も高い温度が計測されるが、この高温度帯範囲は高天井空間6の容量と比較して小さい。すなわち、高温度帯と低温度帯との間が広く、緩やかな温度変化をなしている。
これは、活動空間5から吹き抜け状に形成される高天井空間6に導かれる鉛直方向に大きな循環流Rが形成されることで、吹出口体7aから吹出される冷却空気が高天井空間6へと流れ出すと同時に、この高天井空間6に溜まっていた熱気の一部が循環流Rにのって下部側の活動空間5までに導かれるのが要因であると考えられる。
【0012】
本来、活動空間5のみを冷房すればよく、高天井空間6については冷房不要であるところを、結果として高天井空間6に溜まった熱気までも冷却することとなり、無駄なエネルギーの消費がある。
さらに、活動空間5に対する熱交換効率を上げるために送風量を増大すると、より大きい循環流Rが生じて建築物1内部を上下方向にかき混ぜる傾向が強くなり、上述の不具合が増大してしまう。
【0013】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、いわゆる活動空間の上部に高天井空間が形成される建築物において、上記活動空間に対して有効で効率のよい冷房作用を得られ、省エネ性に優れた空気調和装置と、空気調和方法を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明の空気調和装置は、活動空間および高天井空間を備えた建築物における活動空間を冷房する装置であり、下辺高さが活動空間より高い位置で吹出し方向を内壁面の一定方向に沿うとともに略水平に向けられ吹出した冷却空気で活動空間上部において所定方向に周回する周回気流を作る複数の吹出口と、これら吹出口よりも高い位置でかつ高天井空間の略下部に設けられ吸込み作用をなす複数の吸込口と、吹出口および吸込口とそれぞれ通風路を介して連通され吹出口から冷却空気を吹出し冷房したあとの冷却空気を吸込口から吸込ませる装置本体とを具備し、複数の吸込口は互いに所定間隔離間し、周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれるように配置されるとともに、吹出口の面積の総和と吸込口の面積の総和との関係を、吹出口面積の総和>吸込口面積の総和とした。
【0015】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明は、上述の空気調和装置において、同様の吹出口と、吸込口と、装置本体と、吸込口よりも高い位置の高天井空間に設けられ高天井空間の換気をなす少なくとも排気口および排気扇からなる換気手段を具備し、複数の吸込口は、互いに所定間隔離間し、周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ流れが崩れて吸込まれるように配置される
【0016】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明は、上述の空気調和装置において、同様の吹出口と、吸込口と、装置本体とを具備し、上記複数の吸込口は、互いに所定間隔離間し、前記周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれるように配置されるとともに、上記吹出し口は、建築物内壁面のコーナー部および内壁面中間部に設けられ、少なくとも中間部に設けられる吹出口は建築物内壁面から突出し、この中間部の吹出口に向かって冷却空気を吹出すコーナー部に設けられる吹出口とは互いに高さ位置を異ならせた。
【0017】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明の空気調和方法は、内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物において、活動空間より高い位置で建築物のコーナー部と建築物内壁面中間部から一定方向に沿うとともに略水平でかつ互いに高さ位置を異ならせた位置から冷却空気を吹出し、活動空間の上部に一定方向に周回する周回気流を作り、冷却空気の吹出し位置よりも高くかつ高天井空間の下部位置において建築物内部空気が所定距離離間して配置された複数の吸込口によって周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれることで活動空間を冷房する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は高天井空間を備えた建築物内部の透視図であり、図2は建築物の断面図であり、いずれも模式的に示している。
【0019】
建築物1自体は、いわゆる半ドーム状の屋根2を載せていて、フロア面3には機器類4が所定間隔を存して複数列配列され、これら機器類4列間にたとえばゲームする人が存在する。
建築物1内部は、フロア面3から上記機器類4の上部までの空間が活動空間5であり、この活動空間の上部が吹き抜け状となっていて、屋根2内部が高天井空間6となる。
【0020】
これら活動空間5上部と高天井空間6下部との間に、後述する空気調和装置を構成する吹出しユニット10と吸込みユニット11が配置され、建築物1外部には装置本体12が配置される。
上記吹出しユニット10は機器類4よりも高い位置で、建築物1内壁面の各コーナー部に複数(建築物の平面視が矩形であるので4組)取付けられる。吹出しユニット10は矩形箱体であり、一側面が吹出口10aとして開口する。
【0021】
各吹出口10aの最下辺は上記機器類4の上端面よりも高い位置にあり、互いに同一高さに揃えられる。そして、吹出口10aは内壁面に沿って水平方向に吹出すように開口している。
各吹出口10aは個々の吹出しユニット10において互いに異なる側面に設けられていて、全ての吹出口10aから冷却空気が一斉に吹出されることによって、一定方向に吹出し気流が向くように吹出し方向が設定されている。
【0022】
上記吸込みユニット11は、高さ位置が吹出しユニット10よりも高く、かつ上記高天井空間6の略下部に位置する矩形箱体である。そして、平面視で建築物1内部の約中央部に、互いに所定間隔(約1.5M)離間した状態で、複数(ここでは2組)備えられる。
各吸込みユニット11には、その下面に吸込口11aが設けられている。すなわち、上記吸込みユニット11における吸込み作用は下方から行うことに限定される。
各吹出しユニット10の吹出口10aが設けられる面以外の一面、および吸込みユニット11の吸込口11aが設けられる面以外の一面には、通風路を構成するダクト13,14が接続されていて、建築物1外部に配置される上記装置本体12の吹出し部aと吸込み部bにそれぞれ連通される。
【0023】
上記装置本体12は、ここでは詳細を省略しているが、圧縮機、室外熱交換器および室内熱交換器他が収容され、これらは冷媒管を介して冷凍サイクルを構成するよう連通される。
室外熱交換器と対向して室外送風機が配置され、室内熱交換器と対向して室内送風機が配置される。室内送風機の吹出し側と吸込み側に、上記吹出し部aと吸込み部bが形成されている。
【0024】
なお、ここでは4つの吹出口10aと、2つの吸込口11aを備えていて、上記吹出口10aの面積の総和Kaと、吸込口11aの面積の総和Kbとは、以下のように設定されることを本発明の特徴の一つとしている。
吹出口10a面積の総和Ka > 吸込口11a面積の総和Kb
太陽光が直射する屋根2の内側である高天井空間6と、発熱条件の揃った活動空間5および上述の 吹出口10a面積の総和Ka>吸込口11a面積の総和Kb の設定条件を備えた建築物1であり、上記活動空間5に対する空気調和作用は以下に述べるように行われる。
操作者が冷房運転を指示すると、冷凍サイクル運転が開始されるとともに室内・室外送風機が駆動され、各吹出しユニット10の吹出口10aから一斉に冷却空気が吹出される。
【0025】
全ての吹出口10aが略水平方向に向き、かつ建築物1の内壁面に沿うよう開口され、しかも互いに一定方向に向くよう設定されているところから、吹出される冷却空気は活動空間5上部において建築物1内部をほぼ水平方向に周回する周回気流Sとなる。
この周回気流Sは、吹出口10aから離間することで徐々に流速が弱まり、時間の経過とともにその傾向が強くなる。また、吹出し空気は冷却されているため、周囲の空気よりも比重が重く、下方に沈みこみ活動空間5に対する冷房作用をなす。
【0026】
そして、周回気流Sは直径が徐々に縮小し、かつ周辺空気と熱交換して温度上昇する。したがって、周回気流Sは比重が軽くなり、周回を継続しながら高さ位置が徐々に高くなる。
上記吹出口10aの上部で、ほぼ中央部位に設けられる2つの吸込口11aには負圧がかかっていて、直径が徐々に縮小しかつ上昇してきた周回気流Sは、吸込口11a相互間の部位で互いに衝突して流速を減衰させられ、この部分において流れが崩れて吸込まれる。
【0027】
このようにして、吹出口10aから吸込口11a近くまでに亘る、ほぼスパイラル状の周回気流Sが得られ、冷凍サイクル運転中は継続して形成される。
周回気流Sが形成される吹出口10aの高さ位置から吸込口11aの高さ位置に至る範囲の建築物1内部空間を、ここでは「周回気流空間」15と呼ぶ。これに対して、周回気流空間15の下部側に上記活動空間5があり、周回気流空間15の上部側に高天井空間6がある。
【0028】
したがって、建築物1内部は、フロア面3から屋根2頂部に亘る高さ方向に、活動空間5と、周回気流空間15および、高天井空間6との、3つの空間が形成される。
また、建築物1の内部空間のほとんど大部分は最も流速の遅い部分で占められていて、特に活動空間5の機器類4列間にいる人にとって、ドラフト感がほとんどない状態での冷房運転が行われる。
【0029】
そして、上述のように複数の吸込みユニット11を所定間隔を存して備えることにより、吸込みユニット11相互間部位で流速が減衰する。この影響が活動空間5全体に波及してソフトな流れとなり、活動空間にいる人にドラフト感を与えずにすみ、快適空調を得られる。
このようにして、高天井空間6を備えた建築物1において、空気の流れの状態が互いに異なる活動空間5と、周回気流空間15および高天井空間6が形成されるが、これら3つの空間には明確な境界面を持って分かれていると言えず、周回気流Sが支配的な周回気流空間15によって上下に高天井空間6と活動空間5が分断されたと考えるべきである。
【0030】
空調温熱環境の見地から述べるならば、周回気流空間15により上下に空間を分断するには、まず、周回気流空間15内に安定した周回気流Sが作られていなければならない。そして、吹出口10aの下辺高さは、人や機器類4が存在する活動空間5よりも高い位置になるように設定する。
【0031】
本来、冷房が不要な高天井空間6を空調しないことで、その分の被空調容積の低減が可能となり、省エネ効果に寄与する。さらには、高天井空間6を冷房せず高い温度のままとすることで、太陽光の日射によって高温となった屋根2との間に温度緩衝空間ができ、屋根2を冷却することによるエネルギー浪費もなくなって、この点においても省エネ効果の高い空調を得ることができる。
【0032】
すなわち、高天井空間6に溜まっている熱気は、ほぼそのままの状態で溜り、吸込口11aに導かれることがほとんど無い。換言すれば、活動空間5のみの有効な冷房運転が行えてエネルギーが有効に使われる。
以上によって、高天井空間6を備えた建築物1であっても、活動空間5に対して省エネ性に優れ、かつ快適性の高い空調を提供できることとなる。
また、活動空間5と高天井空間6とが周回気流空間15によって区画されるため、活動空間5で生じた煙草の煙や食品などの臭いなどが活動空間5から高天井空間6に流れ出すことを極力防止できる。
【0033】
なお、上述したように空気調和装置として、4つの吹出口10aと、2つの吸込口11aを備えていて、吹出口10aの面積の総和Kaと、吸込口11aの面積の総和Kbとの関係を、 吹出口10a面積の総和Ka>吸込口11a面積の総和Kb と設定している。
このことにより、たとえば人の移動や、人および機器類4の発熱による上昇気流の発生および、自然換気や強制換気の影響など、いわゆる外乱に対して強く安定した空調気流を作り出すことができる。
【0034】
なお説明すれば、実際には建築物1内部では自然換気や強制換気が存在するが、作用的な説明を簡単化するために被空調空間を自然換気や強制換気が全くない閉空間とみなして、上記条件を導いている。すなわち、流体の連続性から、
「吹出し風量」 = 「吸込み風量」
となり、「吹出口10aの面積の総和Ka」や「吸込口11aの面積の総和Kb」は任意の大きさで選ぶことが可能であるので、
吹出口10a面積の総和Ka > 吸込口11a面積の総和11a
とすれば、
「吹出口10aでの平均風速」 < 「吸込口11aでの平均風速」
となり、同時にベルヌーイの式から
「吹出口10aでの静圧」 > 「吸込口11aでの静圧」
という関係が導かれる。
【0035】
これは、吹出口10aから吸込口11aに向かって作り出す圧力勾配ができることとなり、吹出しによって作られた周回気流Sのある外周領域の静圧が高く、吸込口11aのある中心付近が低圧となる。
つまり、この外周から内向きに作られる圧力差が周回気流Sを最終的に吸込口11aに収束させる。そのため、複数の吸込口11aを備える構成において、「吹出口10a面積の総和Ka > 吸込口11a面積の総和11a」という設定は、気流の状態を安定させるために効果的である。
【0036】
すなわち、人の移動や、人および機器類4の発熱による上昇気流の発生および、自然換気や強制換気の影響など、いわゆる外乱に対して強く安定する空調気流を作りだすことができ、効率向上化を得られる。
【0037】
以下は、上記条件設定を行なう理由に関する補足説明である。
たとえば、建築物1内の圧力が平衡に達した状態で考える。平衡状態に達した場合は、空調される建築物1内は一般に正圧(外気より高圧)に保たれている。ここで、
吹出口面積:S1、吹出口圧力:P1、吹出口流速V1
吸込口面積:S2、吸込口圧力:P2、吸込口流速V2
とすると、流入量と流出量は同じであることから
S1*V1 = S2*V2 ……(1)
ベルヌーイの定理から、
P1+1/2*ρV1= P2+1/2*ρV2 ……(2)
(2)式に(1)式を代入すると、
P1−P2=1/2*ρV2(1−(S2/S1)) ……(3)
以上の(3)式から、吹出口面積S1<吸込口面積S2の場合、P2>P1となり、安定した周回気流が作られ難く、一旦、特定の周回気流が形成されても小さな外乱だけで流れが乱れ、安定性の低い気流形成となってしまう。
【0038】
これに対して、吹出口面積S1>吸込口面積S2の場合、P2<P1となり、吸込口11aの圧力が吹出口10a圧力より低圧となり、吹出口10aから吸込口11aへの安定した周回気流が形成される。
そして、この場合は、吸込口10aにおける圧力が低圧となるため、建築物内部の空気の流れは基本的に吸込口10aに向かう流れが強く、外部からの気流の乱れに対しても安定性の高い周回気流が形成されることとなる。
【0039】
図3は、他の実施の形態の空気調和装置を備えた建築物内部の透視図である。吹出口10aは下辺高さが活動空間より高い位置に配置され、吹出し方向を建築物内壁面に沿い略水平に向けられている。吸込口11aは吹出口10aよりも高い位置で高天井空間の略下部に設けられ、下方から吸込み作用をなす。
これに対して、上記吸込口11aよりも高い位置の高天井空間に換気機構(換気手段)Nが設けられる。上記換気機構Nとして、給気口20および、この給気口20に設けられる給気扇21もしくは、排気口22および、この排気口22に設けられる排気扇23があり、少なくとも、排気口22および排気扇23は備えなければならない。
【0040】
冷房作用の対象空間である活動空間5には、人が存在するので人体負荷があり、さらには配置された機器類が発熱源となる機器負荷がある。また、太陽光が屋根2を直射するので、ここには日射負荷があり、高天井空間6に備えた照明類の負荷がある。
これら負荷から発生する熱が浮力の影響を受けて溜り易い反面、吸込口11aが高天井空間6よりも下方にある。しかも、吸込口11aが下方に向き高天井空間6側に向いていないため、高天井空間では熱の回収が行われない。高天井空間6は外気温度以上に上昇することが珍しくなく、空調負荷が増大してしまう。
【0041】
そこで、上述したように高天井空間6に換気機構Nを備えることにより、下層の周回気流を乱すことなく、上部に滞留した高温空気を排気できて、空調気流を乱すことなく所望とする換気ができ、空調負荷低減効果を有して、いわゆる省エネ性の向上が得られることとなる。
【0042】
図4は、さらに異なる実施の形態を示していて、図4(A)は吹出口10aの高さ位置を説明するための建築物1内部の概略の平面図、図4(B)は建築物内部の概略の一部断面図である。
上記吹出口10aは、建築物内壁面dのコーナー部eおよび、コーナー部e相互間の内壁面中間部fに複数設けられている。上記コーナー部eに設けられる吹出口10aは、コーナー部eを形成する内壁面dに開口する吹出口10aと、コーナー部eを形成する内壁面dから突出して設けられる吹出口10aがある。
【0043】
これに対して、内壁面中間部fに設けられる全ての吹出口10aは、内壁面dから突出して設けられる。すなわち、冷却空気を内壁面dの所定方向に沿って吹出すのに、コーナー部eであればコーナー部eを形成する内壁面dのいずれか一方に吹出口10aを設ければよい。
しかしながら、内壁面dの中間部fに設けられる吹出口10aは、単に内壁面dに開口するだけでは冷却空気を内壁面dの所定方向に沿って吹出すことができない。そのため、内壁面dから突出し、かつ所定方向に向けられた状態で設けられることになる。
【0044】
そしてさらに、コーナー部eに設けられる吹出口10aの高さ位置と、この吹出し方向に対向する内壁面中間部fに突設される吹出口10aの高さ位置とは、互いに異ならせて設けられる。
すなわち、コーナー部eの吹出口10aと、中間部fの吹出口10aの互いの高さ位置を揃えた場合は、コーナー部eの吹出口10aから吹出された冷却空気の気流は、中間部fで突出する吹出口10aに当たり、気流が乱れてしまう。
【0045】
そこで、中間部fの吹出口10aの高さ位置と、この中間部吹出口10aに向かって冷却空気を吹出すコーナー部eの吹出口10aの高さ位置を互いにずらすことで、コーナー部eから吹出される冷却空気の気流が中間部fの吹出口10aに邪魔にされることなく、内壁面dに沿って円滑に流れて効率よく周回気流Sが形成できることになる。
【0046】
ところで、本発明で説明する空気調和装置と空調方法は、常に強く安定した空調気流を被空調空間に保つことが重要である。したがって、室内が設定温度状態になり、それ以上の空調能力を必要としなくなったときに、送風動作まで停止してしまうと、空調運転を再開する際に周回気流Sを作り出すことから始めなくてはならず、非効率である。
【0047】
したがって、空調能力を必要としなくなったときでも周回気流Sを維持し続けるために、送風機の駆動を継続する必要がある。ただし、上述の状況が頻繁化するのは、最小冷房能力を下回る空調負荷しかない場合で、特に、外気温や日射負荷が低くなる春や秋などの季節に生じ易い。
【0048】
このときは、空気調和装置を稼動せず、外気と室内循環の熱交換空気との混合量を調整する(=外気導入量を調整する)ことで事実上の空調が可能となり、いわゆる省エネ効果が得られる。
図5は、上記形態を説明するための空気調和装置のシステム構成図である。
【0049】
すなわち、先に説明した装置本体12内には、圧縮機30と、四方弁31と、室外熱交換器32と、電子式自動膨張弁33および室内熱交換器34が収容され、これら部品は冷媒管35を介してヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成するよう連通される。
【0050】
さらに、装置本体12内には制御部36が収容され、建築物の所定の部位に取付けられる外気温センサ37と、室温センサ38から検知信号を受け、これらの検知信号にもとづいて圧縮機30、四方弁31、電子式自動膨張弁33、室外熱交換器32と室内熱交換器34の各々に対向して配置される室外送風機40、室内送風機となるダクトファン41および換気機能を備えた全熱交換器42のダンパ駆動機構43に対して制御信号を送るようになっている。
【0051】
活動空間5で熱交換した後の空気は各吸込口11aから吸込まれ、ダクト14を介して全熱交換器42に導かれる。この全熱交換器42では後述する条件に応じてダンパ駆動機構43を駆動してダンパ開度を調整し、必要に応じた量の外気を取入れる。
活動空間5で熱交換した後の一部の空気と、取入れられた外気は、互いに全熱交換器42で交差して熱交換する。新鮮外気は温度低下して建築物1内に導かれ、熱交換した後の空気は外部へ排気される。新鮮外気が混合した空気は室内熱交換器34に導かれ、再び設定温度に低下してダクト13を介して吹出口10aから吹出される。
【0052】
具体的には、図6に示すフローチャートにもとづいて運転される。
スタートからステップS1において運転停止か否かを判断する。たとえば、夜間等では装置の運転を停止するので、ステップS2に移って圧縮機30や室外送風機40、ダクトファン41等の全ての電動部品の動作を停止する。
【0053】
ステップS1において運転中であると判断されると、ステップS3へ移って室温センサ38の検知信号から室温サーモOFFの判断、すなわち室温が設定温度に到達したか否かが判断される。室温が設定温度に到達して室温サーモOFFがYESの場合はステップS4に移る。
ここでは、コンプレッサOFF信号を圧縮機30に送って運転を停止させる。さらに、ダクトファンON継続信号をダクトファン41に送り、この運転を継続する。
【0054】
ついで、ステップS5に移って外気温センサ37で検出された外気温と、室温センサ38で検出された室温とを比較し、外気温が室温より低い場合(Yes)はステップS6で外気導入ダンパを制御する。すなわち、全熱交換器42に備えたダンパ駆動機構43を制御し、ダンパ開度を大きくして外気導入量を増加させる。
【0055】
ステップS5で外気温が室温よりも低い場合(No)は、ステップS7に移ってダンパ駆動機構43を制御し、ダンパ開度を小さくして外気導入量を減少させる。これにより、室内は常に設定された室温に保持され、しかも必要な換気機能を得られる。
一方、先に説明したステップS3で室温が設定温度に到達していない(No)場合は、ステップS8においてコンプレッサON・ダクトファンON継続として、圧縮機30および室外送風機・ダクトファン40,41ともに運転され、空調運転が継続される。
【0056】
なお、各吹出口10aにおける各々の平均風速がほぼ等しくなるような、風量に応じた吹出口10aの面積にすることにより、外乱に強く安定した空調気流を作り出すことができる。
すなわち、ここでは複数の吹出口10aをもって周回気流Sを形成しているので、局所的に速い、もしくは遅い吹出しがあると、周回気流Sの風速が不均一になり、強く安定した空調気流を作り出せなくなる。
【0057】
これを避けるため、上述の各吹出口10aにおける各々の平均風速がほぼ等しくなる条件を得るようにする。具体的には、
(吹出口1を通過する風量)/(吹出口1面積)
≒(吹出口2を通過する風量)/(吹出口2面積)
≒(吹出口3を通過する風量)/(吹出口3面積)
≒(吹出口4を通過する風量)/(吹出口4面積)
の条件を満足できればよい。なお、吹出口10aの数は限定されない。
【0058】
また、複数の吸込口11aでは、各吸込口11aにおける各々の平均風速がほぼ等しくなるように風量に応じた吸込口11aの面積とすることにより、外乱に強く安定した空調気流を作り出すことができる。
すなわち、複数の吸込口11aで互いに静圧が異なると、特定の吸込口11aに流れが偏り、その結果歪んだ周回気流を作り出してしまい、安定した空調気流を被空調空間に作り出せなくなる。
【0059】
そこで、上述の各吸込口11aにおける各々の平均風速がほぼ等しくなる条件を得るようにする。具体的には、
(吸込口1を通過する風量)/(吸込口1面積)
≒(吸込口2を通過する風量)/(吸込口2面積)
を満足すればよい。なお、これら吹出口11aの数は限定されない。
【0060】
さらに異なる形態として、所定の吹出口をサーキュレータ(循環送風機)に置き換えることができる。この場合、
(吹出口1を通過する風量)/(吹出口1面積)
≒(吹出口2を通過する風量)/(吹出口2面積)
≒(吹出口3を通過する風量)/(吹出口3面積)
≒ サーキュレータ用ファン吹出し速度(=風量/面積)
なお、これら吹出口10aの数とサーキュレータの数は限定されない。
【0061】
すなわち、周回気流Sを発生し、または加速するサーキュレータの吹出し風速を、吹出口10aにおける吹出し風速と略等しく調整して、外乱に強く安定した空調気流を作り出すことができる。
また、上述の構成の空気調和装置において、吹出し温度や吹出し風速によっては、活動空間に吹出した気流が落ち込んでしまう。そこで、冷気流の落ち込みを減じるために風向変更装置を備え、この変更装置で風向を変更することにより、外乱に強く安定した空調気流を作り出せる。
【0062】
なお説明すると、吹出口10aから吹出された冷気は徐々に流れが拡散しながら減速しているだけでなく、障害物(たとえば、吊り下げ照明器具等)に衝突して失速したり、内壁面dや内壁面障害物(壁面から飛び出た柱や照明器具等)との摩擦によっても減速していき、徐々に冷気の重みに負けて下方に落ちてくることになる。
【0063】
本来は、冷却空気が周囲空気と混合して気流温度が上昇し、そのため気流の降下が抑制されるはずであり、ここではそれらの条件を加味して充分に高い位置に吹出口10aを設けている。
活動空間5に不快な気流感をもたらすことはほとんどないが、冷房条件や過度的な状態(たとえば、冷房運転起動時等)の低風速で低温の吹出しが生じることが考えられ、冷気が活動空間5にまで落ち込む。
【0064】
すると、不快な気流感をもたらすだけでなく、鉛直方向の気流成分の発生により周回気流Sの鉛直方向にゆがみが生じ、本来の目的を満足することができなくなってしまう。そこで、気流の落ち込みを軽減させるために風向変更装置を備えて気流の方向を変更する。
【0065】
実際には、吹出し気流の延長上の想定される気流限界高さの空間または近傍の壁に吹出気流温度センサを取付けて、この温度センサが設定温度以下を感知したら該当する吹出口10aに備えた風向変更装置を上向きに変更する。あるいは、温度センサを備えることなく、人手で、その都度、風向変更装置の風向を変更するようにしてもよい。
【0066】
なお、上記実施の形態においては、半ドーム状の屋根2を備えた建築物1として説明したが、これに限定されるものではなく、通常の屋上が形成される屋根を備えた建築物であってもよく、要は、建築物内部に活動空間5と、この上部に吹き抜け状に形成される高天井空間6を備えた建築物であれば、全て本発明が適用可能である。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、活動空間と高天井空間との間に周回気流を作り出すことで、活動空間と高天井空間との空気の流れを抑制し、高天井空間の空調は行わないことで省エネ化するとともに、活動空間においては弱い気流によって冷房することで気流ドラフト感を低減し、快適性の向上を得られる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る、高天井空間を備えた建築物および空気調和装置の構成と空気調和方法を説明する図。
【図2】 同実施の形態に係る、建築物内部の概略の断面図。
【図3】 異なる実施の形態に係る、建築物および空気調和装置の構成と空気調和方法を説明する図。
【図4】 さらに異なる実施の形態に係る、冷却空気の吹出し方法を説明する建築物の概略の平面図と、一部断面図。
【図5】 さらに異なる実施の形態に係る、空気調和装置の構成図。
【図6】 同実施の形態に係る、フローチャート図。
【図7】 従来の、高天井屋根を備えた建築物の活動空間に対する空気調和方法を説明する図。
【符号の説明】
2…屋根、5…活動空間、6…高天井空間、1…建築物、S…周回気流、10a…吹出口、11a…吸込口、13,14…ダクト(通風路)、12…装置本体、22…排気口、23…排気扇、N…換気機構(換気手段)、d…内壁面、e…コーナー部、f…内壁面中間部。

Claims (4)

  1. 内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物における、上記活動空間を冷房する空気調和装置において、
    下辺高さが上記活動空間より高い位置で、吹出し方向を建築物内壁面の所定方向に沿うとともに略水平に向けられ、吹出した冷却空気で上記活動空間上部において一定方向に周回する周回気流を作る複数の吹出口と、
    これら吹出口よりも高い位置で、かつ上記高天井空間の略下部に設けられ吸込み作用をなす複数の吸込口と、
    上記吹出口および吸込口とそれぞれ通風路を介して連通され、上記吹出口から冷却空気を吹出し、冷房したあとの冷却空気を上記吸込口から吸込ませる装置本体とを具備し、
    上記複数の吸込口は、互いに所定間隔離間し、上記周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれるように配置されるとともに、
    上記吹出口の面積の総和と、上記吸込口の面積の総和との関係を、
    吹出口面積の総和 > 吸込口面積の総和
    としたことを特徴とする空気調和装置。
  2. 内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物における、上記活動空間を冷房する空気調和装置において、
    下辺高さが上記活動空間より高い位置で、吹出し方向を建築物内壁面の所定方向に沿うとともに略水平に向けられ、吹出した冷却空気で上記活動空間上部において一定方向に周回する周回気流を作る複数の吹出口と、
    これら吹出口よりも高い位置で、かつ上記高天井空間の略下部に設けられ吸込み作用をなす複数の吸込口と、
    上記吹出口および吸込口とそれぞれ通風路を介して連通され、上記吹出口から冷却空気を吹出し、冷房したあとの冷却空気を上記吸込口から吸込ませる装置本体と、
    上記吸込口よりも高い位置の高天井空間に設けられ、高天井空間の換気をなす、少なくとも排気口および排気扇からなる換気手段と
    を具備し、
    前記複数の吸込口は、互いに所定間隔離間し、前記周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれるように配置されることを特徴とする空気調和装置。
  3. 内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物における、上記活動空間を冷房する空気調和装置において、
    下辺高さが上記活動空間より高い位置で、吹出し方向を建築物内壁面の所定方向に沿うとともに略水平に向けられ、吹出した冷却空気で上記活動空間上部において一定方向に周回する周回気流を作る複数の吹出口と、
    これら吹出口よりも高い位置で、かつ上記高天井空間の略下部に設けられ吸込み作用をなす複数の吸込口と、
    上記吹出口および吸込口とそれぞれ通風路を介して連通され、上記吹出口から冷却空気を吹出し、冷房したあとの冷却空気を上記吸込口から吸込ませる装置本体とを具備し、
    上記複数の吸込口は、互いに所定間隔離間し、前記周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれるように配置されるとともに、
    上記複数の吹出口は、建築物内壁面のコーナー部および内壁面中間部に設けられ、少なくとも中間部に設けられる吹出口は建築物内壁面から突出し、この中間部の吹出口に向かって冷却空気を吹出す上記コーナー部に設けられる吹出口とは、互いに高さ位置を異ならせたことを特徴とする空気調和装置。
  4. 内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物において、
    上記活動空間より高い位置で、建築物のコーナー部と建築物内壁面中間部から一定方向に沿うとともに略水平で、かつ互いに高さ位置を異ならせた位置から冷却空気を吹出し、上記活動空間の上部に一定方向に周回する周回気流を作り、上記冷却空気の吹出し位置よりも高い上記高天井空間の下部位置において、建築物内部空気が、所定距離離間して配置された複数の吸込口によって上記周回気流が相互間の部位で互いに衝突して流速を減速させられ、流れが崩れて吸込まれることで上記活動空間を冷房することを特徴とする空気調和方法。
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