JP3760198B2 - 歩行式移動装置及びその歩行制御装置及び歩行制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歩行式移動装置に関し、不整地歩行時にも足裏の滑りを検出できるようにした歩行制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、所謂二脚歩行式ロボットは、前もって設定された歩行パターン(以下、歩容という)データを生成して、この歩容データに従って歩行制御を行なって、所定の歩行パターンで脚部を動作させることにより二脚歩行を実現するようにしている。ところで、このような二脚歩行式ロボットは、例えば路面状況,ロボット自体の物理パラメータの誤差等によって、歩行の際の姿勢が不安定になりやすく、場合によっては転倒してしまう。
【0003】
これに対して、歩容データを前もって設定せずに、リアルタイムにロボットの歩行状態を認識しながら歩行制御を行なうようにすれば、歩行の際の姿勢を安定させて歩行を行なわせることも可能であるが、このような場合でも、予期しない路面状況等が発生した場合には、歩行姿勢が崩れてロボットが転倒してしまうことになる。
【0004】
このため、歩行制御によって、ロボットの足裏における床反力と重力の合成モーメントがゼロとなる点(以下、ZMP(Zero Moment Point)という)を目標値に収束させる、所謂ZMP補償を行なう必要がある。このようなZMP補償のための制御方法としては、例えば特開平5−305583号公報に示すように、コンプライアンス制御を利用してZMPを目標値に収束させ、ロボットの上体を加速させて修正する方法や、ロボットの足の接地場所を修正する制御方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような制御方法においては、ZMP規範によりロボットの安定化を図るようにしている。このZMP規範においては、足裏と床面の間に滑りが生じないことが前提条件になっている。
【0006】
従って、このような構成の二脚歩行式ロボットにおいては、不整地にて歩行運動を行なう場合、足裏と床面との間の滑りを検出することが重要である。従来、このような足裏の滑り検出のために、光学式センサを使用して足裏と床面との間の滑りを光学的に検出することが知られている。しかしながら、光学式センサの場合、床面が平坦である場合にのみ有効であることから、特に足裏の滑りの検出が必要とされる不整地歩行の場合には路面が平坦ではないことから、光学式センサを使用して足裏の滑りを検出することが困難であるという問題があった。
【0007】
この発明は、以上の点にかんがみて、不整地歩行時にも足裏と床面との間の滑りを確実に検出して、歩行安定性を実現できるようにした、歩行式移動装置と、その歩行制御装置及び歩行制御方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の第一の構成は、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する複数本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動させる駆動手段と、要求動作に対応して、目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データを生成する歩容生成部と、この歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行制御装置とを備えている歩行式移動装置であって、各足部の足裏が複数に分割されており、上記歩行制御装置が、足裏の各分割部毎に備えられて足裏に加わる力を検出する力センサと、上記力センサで検出された力のうち水平成分を含む床反力情報に基づいて歩容生成部からの歩容データを修正する補償部と、各足部の足裏の滑り情報を力学的に検出する滑り検出部を備えており、上記補償部が、滑り検出部からの検出信号を参照しながら歩容生成部からの歩容データを修正することを特徴とするものである。
【0009】
本発明による歩行式移動装置は、好ましくは、上記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、上記力センサによる水平床反力から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り加速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルを足裏滑り情報として上記補償部に出力する。
【0010】
本発明による歩行式移動装置は、好ましくは、上記滑り検出部が、各足部に備えられている。
【0011】
本発明による歩行式移動装置は、好ましくは、上記滑り検出部が各脚部または本体に備えられており、上記歩行制御装置が各滑り検出部からの検出信号に基づいて足裏における加速度を演算する。
【0012】
この発明の第二の構成は、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する複数本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動させる駆動手段とから成る歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して歩容生成部により生成される、目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行式移動装置の歩行制御装置であって、各足部の足裏が複数に分割されており、上記歩行制御装置が、足裏の各分割部毎に備えられて足裏に加わる力を検出する力センサと、上記力センサで検出された力のうち水平成分を含む床反力情報に基づいて歩容生成部からの歩容データを修正する補償部と、各足部の足裏の滑り情報を力学的に検出する滑り検出部とを備えており、上記補償部が、滑り検出部からの検出信号を参照しながら歩容生成部からの歩容データを修正することを特徴としている。
【0013】
本発明による歩行式移動装置の歩行制御装置は、好ましくは、上記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、上記力センサによる力情報から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り加速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルを足裏滑り情報として、上記補償部に出力する。
【0014】
本発明による歩行式移動装置の歩行制御装置は、好ましくは、上記滑り検出部が各足部に備えられている。
【0015】
本発明による歩行式移動装置の歩行制御装置は、好ましくは、上記滑り検出部が各脚部または本体に備えられており、上記歩行制御装置が各滑り検出部からの検出信号に基づいて足裏における加速度を演算する。
【0016】
さらに、この発明の第三の構成は、本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する複数本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動させる駆動手段とから成る歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して歩容生成部により生成される、目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御すると共に、各足部における足裏に加わる力を力センサにより検出して、上記力センサで検出された力のうち水平成分を含む床反力情報に基づいて補償部により歩容生成部からの歩容データを修正する歩行式移動装置の歩行制御方法であって、各足部の足裏が複数に分割されており、足裏の各分割部毎に備えられた力センサにより足裏と路面との間の摩擦力ベクトルを検出する第一の段階と、各足部の足裏の滑り加速度ベクトルを滑り検出部により力学的に検出する第二の段階と、上記補償部が、各足部の足裏の摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルから成る滑り情報を参照しながら、歩容生成部からの歩容データを修正する第三の段階と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0017】
本発明による歩行式移動装置の歩行制御装置は、好ましくは、上記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、上記力センサによる力情報から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り加速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルを足裏滑り情報として上記補償部に出力する。
【0018】
本発明による歩行式移動装置の歩行制御装置は、好ましくは、上記滑り検出部が各足部に備えられている。
【0019】
本発明による歩行式移動装置の歩行制御装置は、好ましくは、上記滑り検出部が各脚部または本体に備えられており、上記歩行制御装置が各滑り検出部からの検出信号に基づいて足裏における加速度を演算する。
【0020】
上記構成によれば、滑り検出部により、各足部の足裏に設けられた力センサにより検出した摩擦力ベクトルと各足部に対応して設けられた加速度センサにより検出した滑り速度ベクトルに基づいて、補償部により歩容生成部からの歩容データを修正して駆動手段を駆動制御する。従って、ロボットの各足部が歩行動作中に、何れか一方の足部の足裏と路面との間に滑りが生じた場合には、この滑りを滑り検出部により検出して、検出した足裏滑り情報を参照しながら、足裏の床面との摩擦力によって生ずる水平床反力に基づいて歩容データを修正し、本体、好ましくはロボットの上体の安定化を図るようになっている。これにより、ロボットの各足部が、例えば不整地歩行時等において路面との間に滑りを生じたときでも、この滑りを検出して、歩容データを修正することによりロボットの安定性を確保することができ、転倒することがなく、確実に歩行制御を行なうことが可能である。
【0021】
上記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、上記力センサによる力情報から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り速度ベクトルを足裏滑り情報として上記補償部に出力する場合には、上記摩擦力ベクトル及び滑り速度ベクトルにより、各足部の足裏の滑りを検出することができる。
【0022】
上記滑り検出部が各足部に備えられている場合には、足裏の滑りにより足部に作用する加速度を直接に検出することができる。
【0023】
上記滑り検出部が各脚部または本体に備えられており、上記歩行制御装置が、各滑り検出部からの検出信号に基づいて、足裏における加速度を演算する場合には、足裏の滑りにより足部から脚部または本体に作用する加速度を検出して、幾何学変換により足部の加速度を演算して、足部に作用する加速度を検出することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。
図1乃至図2は、この発明による歩行式移動装置を適用した二脚歩行式ロボットの一実施形態の構成を示している。図1において、二脚歩行式ロボット10は、本体である上体11と、上体11の下部両側に取り付けられた中間に膝部12L,12Rを備えた二本の脚部13L,13Rと、各脚部13L,13Rの下端に取り付けられた足部14L,14Rと、を含んでいる。
【0025】
ここで、上記脚部13L,13Rは、それぞれ六個の関節部、即ち上方から順に、上体11に対する腰の脚部回旋用(z軸周り)の関節部15L,15R、腰のロール方向(x軸周り)の関節部16L,16R、腰のピッチ方向(y軸周り)の関節部17L,17R、膝部12L,12Rのピッチ方向の関節部18L,18R、足部14L,14Rに対する足首部のピッチ方向の関節部19L,19R、足首部のロール方向の関節部20L,20Rを備えている。なお、各関節部15L,15R乃至20L,20Rは、それぞれ関節駆動用モータにより構成されている。
【0026】
このようにして、腰関節は上記関節部15L,15R,16L,16R,17L,17Rから構成され、また足関節は関節部19L,19R,20L,20Rから構成されることになる。
さらに、腰関節と膝関節との間は、大腿リンク21L,21Rにより連結されており、また膝関節と足関節との間は、下腿リンク22L,22Rにより連結されている。これにより、二脚歩行式ロボット10の左右両側の脚部13L,13R及び足部14L,14Rはそれぞれ6自由度を与えられることになり、歩行中にこれらの12個の関節部をそれぞれ駆動モータにより適宜の角度に駆動制御することにより、脚部13L,13R,足部14L,14R全体に所望の動作を与えて、任意に三次元空間を歩行することができるように構成されている。
【0027】
さらに、上記足部14L,14Rは、足裏(下面)に力センサ23L,23Rを備えている。この力センサ23L,23Rは、後述するようにそれぞれ各足部14L,14Rにおける力、特に水平成分を含む床反力情報Fを検出するようになっている。また、上記足部14L,14Rは、加速度センサ24L,24Rを備えている。この加速度センサ24L,24Rは、後述するようにそれぞれ各足部14L,14Rの足裏における滑り情報としての滑り加速度ベクトルを検出する。なお、上記上体11は、図示の場合、単に箱状に示されているが、実際には、頭部や両手を備えることにより、全体が人型ロボットとして構成されていてもよい。
【0028】
図2は、図1に示した二脚歩行式ロボット10の電気的構成を示している。図2において、二脚歩行式ロボット10は、要求動作に対応して歩容データを生成する歩容生成部25と、この歩容データに基づいて駆動手段、即ち上述した各関節部即ち関節駆動用モータ15L,15R乃至20L,20Rを駆動制御する歩行制御装置30と、を備えている。なお、二脚歩行式ロボット10の座標系として、前後方向をx方向(前方+),横方向をy方向(内方+)そして上下方向をz方向(上方+)とするxyz座標系を使用する。
【0029】
上記歩容生成部25は、外部から入力される要求動作に対応して、二脚歩行式ロボット10の歩行に必要な各関節部15L,15R乃至20L,20Rの目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度そして水平成分を含む床反力情報の歩容データを生成するようになっている。
【0030】
上記歩行制御装置30は、角度計測ユニット31と、補償部32と、制御部33と、モータ制御ユニット34と、から構成されている。上記角度計測ユニット31は、各関節部15L,15R乃至20L,20Rの関節駆動用モータに備えられた、例えばロータリエンコーダ等により各関節駆動用モータの角度情報が入力されることにより、各関節駆動用モータの角度位置、即ち角度及び角速度に関する状態ベクトルφを計測して、補償部32に出力する。
【0031】
上記補償部32は、以下に詳細に説明するように、上記力センサ23L,23Rからの水平成分を含む床反力情報Fの実測値に基づいて、そして加速度センサ24L,24Rからの足裏滑り情報を参照して、歩容生成部25からの歩容データの補償を行なうようになっている。上記制御部33は、補償部32で修正された歩容データであるベクトルθiから、ロボットの各関節部における角度ベクトルθ0を減算して、ベクトル(θi−θ0)に基づいて各関節駆動用モータの制御信号、即ちトルクベクトルτを生成する。上記モータ制御ユニット34は、制御部33からの制御信号(トルクベクトルτ)に従って各関節駆動用モータを駆動制御するようになっている。
【0032】
ここで、上記補償部32は図3に示すように構成されている。図3において、補償部32は、滑り力変換部32aと、滑り力検出部32bと、補償部本体32cと、を備えている。
【0033】
上記滑り力変換部32aは、歩容生成部25からの歩容データ、即ち各関節部における目標角度軌道,目標角速度及び目標角加速度そして水平成分を含む床反力に基づいて、ロボットに作用する足裏摩擦力ベクトル及び滑り速度ベクトル(以下、滑り情報という)のリファレンス値を算出して、補償部本体32cに出力する。
【0034】
上記滑り力検出部32bは、上記角度計測ユニット31からの各関節部の関節駆動用モータの角度情報と、力センサ23L,23R及び加速度センサ24L,24Rからの検出信号に基づいて、滑り情報の実測値を算出して補償部本体32cに出力する。
【0035】
上記補償部本体32cは、滑り力検出部32bで検出された滑り情報の実測値と滑り力変換部32aからの滑り情報のリファレンス値とを比較して、その差、即ち足裏摩擦力誤差ベクトル及び滑り速度誤差ベクトルを生成する。
そして、補償部本体32cは、運動安定化フィルタ部32dにより、上記足裏摩擦力誤差ベクトル及び滑り速度誤差ベクトルを参照して、歩容生成部25からの歩容データである目標角度軌道,目標角速度及び目標角加速度を修正し、ベクトルθi(i=1からn、ただし、nはロボット10の歩行に関する自由度)を制御部33に出力するようになっている。
【0036】
ここで、上記力センサ23L,23Rは左右対称の構成であるから、力センサ23Lについて、図4を参照して説明する。図4において、力センサ23Lは、足部14Lの下面である足裏板35の下側にて水平方向に分割して、即ちx方向に二分割,y方向に二分割して設けられた、四個の力センサ36a,36b,36c,36dとして構成されている。
【0037】
各力センサ36a,36b,36c,36dは互いに同じ構成であり、力センサ36aについて以下に説明する。力センサ36aは、上方のソール37と下方のソール38との間に取り付けられた三軸力センサであって、検出部材としての下方のソール38が受ける力を検出するようになっている。ここで、下方のソール38は力センサ36aのセンサ軸を中心に前後左右に揺動可能に支持されており、全方位について揺動により接地し得るようになっている。なお、この場合、力センサ23L及び23Rはそれぞれ四個に分割されているが、これに限らず、分割されていなくてもよく、さらに二個,三個または五個以上に分割されていてもよい。また、各力センサ36a乃至36dは、図示の場合、足裏にて整列して配置されているが、これに限らず、任意に配置されていてもよい。
【0038】
ところで、一般的には同一平面上に四個以上の力センサが設けられていても、すべての力センサが着地した状態で、それぞれ力を検出することは幾何学的にも不可能になり、四個目以上は冗長となる。しかしながら、この場合には、各分割部が互いに分割されていることにより、すべての力センサ36a乃至36dが床面に着地可能となり、冗長な力センサがなくなって各力センサがそれぞれ力を検出することができる。
【0039】
従って、足部14L,14Rの床面への着地により加えられる力は、各力センサ36a乃至36dに分散して印加されることになるので、各力センサ36a乃至36dは小型で軽量のものを使用することができ、これにより、各力センサ36a乃至36dのコストを低減することができる。また、各力センサ36a乃至36dに印加される力が小さくなるので、解像度が向上することになる。従って、同じ解像度を得るためには、各力センサ36a乃至36dを受けてAD変換するADコンバータとして、比較的性能が低く安価なものを使用することができるので、ADコンバータのコストを低減することができる。
【0040】
ここで、上述した各力センサ36a乃至36dは、三軸力センサであるが、二個以上の三軸力センサが在れば、六軸方向の力を演算することができる。
以下、一般的にn個の三軸力センサから、六軸方向の力を演算する場合について図5を参照して説明する。図5において、足裏にて、力計測の原点O(Ox,Oy)に対して、n個の三軸力センサS1,S2,S3,・・・,Snが配置されている。なお、力計測の原点Oは、例えば足部の関節の駆動座標系に一致させることが好ましい。
ここで、各三軸力センサSiの位置を、Si=(X(i),Y(i))とすると、六軸方向の力は、それぞれ以下の式で与えられる。
【0041】
即ち、各方向の力FX ,FY ,FZ は、
【数1】
Figure 0003760198
【数2】
Figure 0003760198
【数3】
Figure 0003760198
で与えられ、また各方向のトルクTX ,TY ,TZ は、
【数4】
Figure 0003760198
【数5】
Figure 0003760198
【数6】
Figure 0003760198
で与えられる。ただし、上記式(6)において、αは、
【数7】
Figure 0003760198
で与えられる。
このようにして、各三軸力センサ36a乃至36dの検出出力に基づいて、補償部32内に設けられた六軸力算出部32aにより演算が行なわれ、六軸方向の力が検出されることになる。
【0042】
さらに、これらの六軸方向の力から、水平床反力Fは、床面とロボット10の足裏の摩擦力によって生ずる水平方向の力、即ち上記X方向及びY方向の力FX ,FY の合力として表わされ、そのベクトルFC (足裏摩擦力ベクトル)及び大きさ|FC |は、
【数8】
Figure 0003760198
で表わされる。
【0043】
なお、各三軸力センサ36a乃至36fは、個々の検出出力のバラツキがあると共に、周囲の温度,経年変化等によって検出出力が変動する。従って、各三軸力センサ36a乃至36fの検出出力は、例えば自動キャリブレーションにより補償部32内にて自動的に較正される。
【0044】
また、上記加速度センサ24L,24Rは、公知の構成の加速度センサであって、各足部14L,14Rに取り付けられている。なお、上記加速度センサ24L,24Rの代わりに、同様に各足部14L,14Rの滑り加速度を検出するためのジャイロセンサあるいは他の種類のセンサが取り付けられていてもよい。
【0045】
本発明実施形態による二脚歩行式ロボット10は以上のように構成されており、歩行動作は、図6に示すフローチャートにより以下のように行なわれる。
図6において、先ずステップST1にて、歩容生成部25が、入力された要求動作(J=J)に基づいて歩容データを生成し、歩行制御装置30の補償部32に出力する。そして、ステップST2にて、補償部32の滑り力変換部32aが歩容生成部25の歩容データに基づいて非滑り状態での足裏の水平成分を含む床反力ベクトルのリファレンス値を算出する。
【0046】
次に、ステップST3にて、滑り力変換部32aが、同様にして非滑り状態での加速度センサ24L,24Rの検出出力のリファレンス値を算出し、続いて、ステップST4にて、滑り力変換部32aが各足部の足裏における滑り速度ベクトルのリファレンス値を算出する。なお、ステップST4は、加速度センサ24L,24Rが足部14L,14Rに設けられている場合には省略されてもよい。
【0047】
その後、ステップST5にて、滑り力検出部32bが、力センサ23L,23R及び加速度センサ24L,24Rからの検出信号に基づいて水平成分を含む床反力ベクトルF及び滑り速度ベクトルの実測値を算出する。これにより、ステップST6にて、補償部本体32cは、滑り力変換部32aからの摩擦力ベクトル及び滑り速度ベクトルのリファレンス値と、滑り力検出部32bからの摩擦力ベクトル及び滑り速度ベクトルの実測値とを比較して、これらの誤差ベクトルを算出し、足裏滑り情報として補償部本体32cに出力する。
【0048】
従って、ステップST7にて、補償部32の補償部本体32aが、これらの摩擦力誤差ベクトル及び滑り速度誤差ベクトル即ち足裏滑り情報を参照しながら、歩容データ、即ち摩擦力ベクトル及び滑り速度ベクトルを修正し、ベクトルθiを制御部33に出力する。
【0049】
次に、ステップST8にて、制御部33は、ベクトルθiから、ロボットの各関節部における角度ベクトルθ0を減算して、ベクトル(θi−θ0)に基づいて、各関節駆動用モータの制御信号、即ちトルクベクトルτを生成し、モータ制御ユニット34に出力する。そして、ステップST9にて、モータ制御ユニット34が、このトルクベクトルτに基づいて、各関節部の関節駆動用モータを駆動制御する。これにより、二脚歩行式ロボット10は、要求動作に対応して、歩行動作を行なうことになる。
【0050】
その後、ステップST10にて、制御部33が、動作カウンタインクリメントによりJ=J+1として、所定のサンプリング時間になるまで待機した後、ステップST11にて、上記Jが前以て決められた動作終了カウント以下の場合には、再びステップ2に戻って、上記動作を繰り返す。そして、ステップST11にて、上記Jが動作終了カウントを超えた場合には、動作を終了する。
【0051】
このようにして、本発明実施形態による二脚歩行式ロボット10によれば、各足部14L,14Rの足裏に設けられた力センサ23L,23R、即ち複数に分割された足裏にそれぞれ設けられた三軸力センサ36a乃至36dからの検出信号から演算される水平成分を含む床反力情報Fと、加速度センサ24L,24Rからの検出信号に基づいて演算される滑り速度ベクトルを、ロボットの各足部14L,14Rの足裏の滑り情報として参照しながら歩容データを修正することにより、足裏の床面との摩擦力により生ずる水平成分を含む床反力情報Fを規範として歩行制御を行なう。従って、ロボット10の歩行動作中に、各足部14L,14Rの足裏が床面に対して滑ったとしても、滑り情報を参照して歩行制御が行なわれるので、不整地を歩行する場合であっても、ロボット10は確実に歩行を行い得る。
【0052】
上述した実施形態においては、各足部14L,14Rの足裏の床面に対する滑りを、足部14L,14Rに設けた加速度センサ24L,24R(またはジャイロセンサ等)により検出するように構成されているが、これに限らず、加速度センサ24L,24R(またはジャイロセンサ等)は、各脚部13L,13Rの大腿リンク21L,21Rまたは下腿リンク22L,22Rに設けられていてもよく、さらにはただ一つの加速度センサが上体11に設けられていてもよい。足部14L,14R以外に加速度センサ24L,24R(またはジャイロセンサ等)が設けられている場合には、滑り検出部32bは、これらの加速度センサ24L,24R(またはジャイロセンサ等)の検出信号に基づいて幾何学変換を行なうことにより、足部14L,14Rにおける滑り情報、即ち摩擦力ベクトル及び滑り速度を演算すればよい。
【0053】
また、上述した実施形態においては、本発明を二脚歩行式ロボットに適用した場合について説明したが、これに限らず、他の各種機器を二本足で支持する共に、この二本足で歩行するようにした二脚歩行式移動装置や、さらには複数本の脚部で支持し且つ歩行を行なう歩行式ロボットや歩行式移動装置に対しても本発明を適用し得ることは明らかである。
【0054】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、ロボットの各足部が、例えば不整地歩行時等において路面との間に滑りを生じたときでも、足裏と路面との間の滑りを確実に検出して歩容データを修正することにより、転倒することがなく、確実に歩行制御を行なうことが可能な、極めて優れた歩行式移動装置と、その歩行制御装置及び歩行制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による二脚歩行式ロボットの一実施形態の機械的構成を示す概略図である。
【図2】図1の二脚歩行式ロボットの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の二脚歩行式ロボットの歩行制御装置における補償部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の二脚歩行式ロボットの各足部の足裏に設けられた力センサの構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図5】図4の各力センサと力計測の基点の配置を示すグラフである。
【図6】図1の二脚歩行式ロボットの歩行制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 二脚歩行式ロボット
11 本体
12L,12R 膝部
13L,13R 脚部
14L,14R 足部
15L,15R乃至20L,20R 関節部(関節駆動用モータ)
21L,21R 大腿部
22L,22R 下腿部
23L,23R 力センサ
24L,24R 加速度センサ
25 歩容生成部
30 歩行制御装置
31 角度計測ユニット
32 補償部
32a 滑り変換部
32b 滑り検出部
32c 補償部本体
33 制御部
34 モータ制御ユニット
35 足裏板
36a乃至36f 三軸力センサ
37 上方のソール
38 下方のソール

Claims (12)

  1. 本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する複数本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動させる駆動手段と、要求動作に対応して、目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データを生成する歩容生成部と、この歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行制御装置と、を備えている歩行式移動装置であって、
    各足部の足裏が複数に分割されており、
    上記歩行制御装置が、足裏の各分割部毎に備えられて足裏に加わる力を検出する力センサと、上記力センサで検出された力のうち、水平成分を含む床反力情報に基づいて歩容生成部からの歩容データを修正する補償部と、各足部の足裏の滑り情報を力学的に検出する滑り検出部と、を備えており、
    上記補償部が、滑り検出部からの検出信号を参照しながら、歩容生成部からの歩容データを修正することを特徴とする、歩行式移動装置。
  2. 前記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、前記力センサによる力情報から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り加速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルを足裏滑り情報として前記補償部に出力することを特徴とする、請求項1に記載の歩行式移動装置。
  3. 前記滑り検出部が、各足部に備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の歩行式移動装置。
  4. 前記滑り検出部が、各脚部または本体に備えられており、前記歩行制御装置が、各滑り検出部からの検出信号に基づいて足裏における加速度を演算することを特徴とする、請求項1または2に記載の歩行式移動装置。
  5. 本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する複数本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動させる駆動手段とから成る歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して歩容生成部により生成される、目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御する歩行式移動装置の歩行制御装置であって、
    各足部の足裏が複数に分割されており、
    上記歩行制御装置が、足裏の各分割部毎に備えられて足裏に加わる力を検出する力センサと、上記力センサで検出された力のうち、水平成分を含む床反力情報に基づいて歩容生成部からの歩容データを修正する補償部と、各足部の足裏の滑り情報を力学的に検出する滑り検出部と、を備えており、
    上記補償部が、滑り検出部からの検出信号を参照しながら歩容生成部からの歩容データを修正することを特徴とする、歩行式移動装置の歩行制御装置。
  6. 前記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、前記力センサによる力情報から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り加速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルを足裏滑り情報として、前記補償部に出力することを特徴とする、請求項5に記載の歩行式移動装置の歩行制御装置。
  7. 前記滑り検出部が、各足部に備えられていることを特徴とする、請求項5または6に記載の歩行式移動装置の歩行制御装置。
  8. 前記滑り検出部が、各脚部または本体に備えられており、前記歩行制御装置が、各滑り検出部からの検出信号に基づいて足裏における加速度を演算することを特徴とする、請求項5または6に記載の歩行式移動装置の歩行制御装置。
  9. 本体と、本体の下部両側にて二軸方向に揺動可能に取り付けられた中間に膝部を有する複数本の脚部と、各脚部の下端に二軸方向に揺動可能に取り付けられた足部と、各脚部,膝部及び足部を揺動させる駆動手段とから成る歩行式移動装置に関して、要求動作に対応して歩容生成部により生成される、目標角度軌道,目標角速度,目標角加速度を含む歩容データに基づいて上記駆動手段を駆動制御すると共に、各足部における足裏に加わる力を力センサで検出して、上記力センサで検出された力のうち水平成分を含む床反力情報に基づいて補償部により歩容生成部からの歩容データを修正する歩行式移動装置の歩行制御方法であって、
    各足部の足裏が複数に分割されており、
    足裏の各分割部毎に備えられた力センサにより足裏と路面との間の摩擦力ベクトルを検出する第一の段階と、
    各足部の足裏の滑り加速度ベクトルを滑り検出部により力学的に検出する第二の段階と、
    上記補償部が、各足部の足裏の摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルから成る滑り情報を参照しながら、歩容生成部からの歩容データを修正する第三の段階と、
    を含んでいることを特徴とする、歩行式移動装置の歩行制御方法。
  10. 前記滑り検出部が、各足部に関してそれぞれ加速度センサまたはジャイロセンサを含んでおり、前記力センサによる力情報から摩擦力ベクトルを演算し、加速度センサまたはジャイロセンサから滑り加速度ベクトルを演算して、摩擦力ベクトル及び滑り加速度ベクトルを足裏滑り情報として前記補償部に出力することを特徴とする、請求項9に記載の歩行式移動装置の歩行制御方法。
  11. 前記滑り検出部が、各足部に備えられていることを特徴とする、請求項9または10に記載の歩行式移動装置の歩行制御方法。
  12. 前記滑り検出部が、各脚部または本体に備えられており、前記歩行制御装置が、各滑り検出部からの検出信号に基づいて足裏における加速度を演算することを特徴とする、請求項9または10に記載の歩行式移動装置の歩行制御方法。
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