JP3757513B2 - 金属の連続溶解鋳造方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘導加熱技術の利用によって、鋳型 (冷却式るつぼ) 内の金属を溶解しかつ連続的に冷却しながら凝固金属 (インゴット) として下方に引き抜くことにより、高純度の金属・合金を製造するのに用いられる、金属の連続溶解鋳造方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋳型 (水冷式るつぼ) を用いた誘導加熱方式による金属の連続溶解鋳造技術としては、図1に示すような方法があった。この方法は、金属製鋳型101 とこれを囲繞するように配設された誘導加熱コイル102 と、そして鋳型の底部を構成する昇降可能な可動底部103 からなる誘導加熱鋳造装置により、図示のようなプロセスを経て、インゴット鋳造を行うものである。
この方法において、上記コイル102 は、鋳型101 の中腹に配設されるが、この位置は嵩密度の小さい初装入原料104 を装入し (図1(a))、誘導加熱によって溶解した場合にちょうど溶湯プール106 が形成される部分 (図1(b))にほぼ相当しており、このコイル102 の領域から外れる上部が追加装入原料の投入空間となり、一方、その下部が水冷却に伴う凝固域であり、ここで生成した凝固金属 (インゴット) は可動底部103 の下降によって下方に引き抜かれて製品インゴットとなる。
【0003】
この方法の欠点は、初装入原料104 および追加装入原料105 の充填空間、ならびに鋳型101 下部に冷却面を確保するための冷却空間を設ける必要から、鋳型101 が長くなること、鋳型101 とコイル102 との位置関係が固定されているので、鋳型内壁面の特定の位置 (凝固界面) が損傷し、また鋳型内上部に溶け残りの付着金属 (アンザッツ) が残り、それの肥厚化による操業障害を招くという問題点があった。
【0004】
これに対し、最近、上記従来技術の欠点を克服する方法として、特開平5−38555号公報にて開示の次のような方法がある。この改良技術は、「導電性るつぼと、このるつぼを囲繞して配置されたコイル形誘導子と、インゴットを支持して下方へ引き抜く引き抜き棒と、るつぼの昇降装置と、上記のすべてを大気から遮断するチャンバーとを有し、前記るつぼの昇降装置は、その上端をコイル形誘導子の上端と下端との間で上下に移動させることができる金属連続溶解鋳造装置を使用し、そのるつぼ内に装入した金属母材を加熱溶解し、るつぼ上端面よりも上方に盛り上がったドーム状溶融金属を形成させ、その後るつぼ上端面をコイル形誘導子の上端レベルより低く、かつ下端レベルより高いレベルに保持して、ドーム状溶融金属に原料金属を供給するとともに、原料供給速度に相当する引き抜き速度でインゴットを下方に引き抜く、金属の連続溶解鋳造方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したところから判るように、上記従来技術の特徴は、図2に示すように、誘導加熱コイル201 とドーム状溶融金属202 との間にるつぼ壁203 を介在させることなく溶解操作を行い、引き抜き棒204 による鋳片 (インゴット) 引き抜き速度に見合う装入原料205 の供給とインゴット引き抜き鋳造を同期制御するようにした点の構成にある。
この方法の問題点は、導電性るつぼの加熱を避けて誘導加熱効率を向上させるために、るつぼ上端面よりも上方に盛り上げたドーム状溶融金属202 を形成させるので、追加装入原料 (添加金属) の供給が円滑にできないだけでなく、溶湯のオーバーフローが発生すること、さらにはるつぼが比較的大きくなることにある。
【0006】
そこで、本発明の主たる目的は、鋳型の長さが短くてすみ、特定の内壁位置の損傷が起こらず、かつ付着金属の溶け残りの発生を効果的に防止できる溶解鋳造技術を確立することにある。
本発明の他の目的は、追加装入原料の供給とインゴットの引き抜きが円滑にできる、金属の連続溶解鋳造方法を提案するところにある。
本発明のさらに他の目的は、上記の方法の実施に好適に用いられる金属の連続溶解鋳造装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来技術が抱えている上述の如き実情に鑑み、鋭意研究を続けた結果発明者らは、上掲の目的実現のためには、次のような方法が有利に適合することを突き止めた。即ち、本発明は、真空槽内に、水冷式の可動底部を具える鋳型と誘導加熱コイルとを配設してなる誘導加熱装置によって、金属を連続的に溶解し冷却して鋳造する方法において、前記鋳型内への初装入原料を誘導溶解する初期段階は、前記コイルに対する鋳型ならびに底部の位置を固定して溶解し、その原料溶解量が定格量に達したのちは、前記鋳型ならびに底部をともに下降させると同時に、このときの該底部の下降速度を鋳型の下降速度より速くすることにより、鋳型の特定位置を損傷させず、また鋳型内上部には原料の追加装入空間を形成させると共に、鋳型内下部には冷却面を次第に大きくして冷却空間を形成させ、このことにより金属の凝固を促進してインゴットを成長させてから下方に引き抜くようにすることを特徴とする金属の連続溶解鋳造方法である。なお、この方法の実施にあたっては、溶解量が定格量に達したのちの鋳型の下降を途中で停止させ、底部のみを引き続き下降させてインゴットの引き抜きを行うようにすることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、上記の方法の実施に当たって、水冷金属鋳型、この鋳型の外側に所定の間隔を隔てて配設された誘導加熱コイル、およびこれらを収容するための真空槽とから主としてなり、この鋳型の下部内側に水冷金属製底部を上下動可能に嵌め入れると共に、これらの鋳型ならびに底部のいずれもがそれぞれ独立して上下動するように支持し、かつ該鋳型と該底部には、底部を鋳型の下降速度よりも速い速度で下降させる鋳型・底部駆動機構を設けたことを特徴とする金属の連続溶解鋳造装置を用いる。または、水冷金属鋳型、この鋳型の外側に所定の間隔を隔てて配設された誘導加熱コイル、およびこれらを収容するための真空槽とから主としてなり、この鋳型の下部内側に水冷金属製底部を上下動可能に嵌め入れると共に、底部の上下機構のみで鋳型を上下動し、任意の位置よりは鋳型の下方に、鋳型の下降を阻止し底部のみを下降させるようにする鋳型固定台を配設したものも、目的を達成するための簡略型として考えられる。
【0009】
上記鋳型・底部駆動機構は、鋳型下部外周に螺設したネジ部に環状スプロケットを螺合させると共に、鋳型用モータとチェーンを介して上記環状スプロケットを回転させることで、鋳型を緩速で上下動させる鋳型上下機構と、底用モータの回転駆動をギヤボックスにて鋳型軸方向に立設された一対のリニアガイド軸の回転駆動に変換し、このリニアガイド軸には上下伝達台を取付け、この上下伝達台には底部を底軸を介して連結し、該リニアガイド軸の回転に伴って上下する上下伝達台と底軸とを介して該前記底部の急速で長ストロークで上下動するようにした底部上下機構とからなることが好ましい。
【0010】
上記の構成から明らかなように、本発明は、溶融金属のオーバーフローを防ぎ、鋳型の長大化を防ぐために、鋳造に際して共に下降させる鋳型と底部の動きを、後者の速度の方がより速く、またより大きなストロークで下降するようにして、小さい鋳型で十分な装入空間, 溶解空間ならびに冷却空間を形成するようにした点に特徴を有するものである。つまり、追加原料の装入速度とインゴットの引き抜き速度とは異なると共に、インゴットの引き抜き速度と鋳型の下降速度も異なるようにした点に特徴がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明方法の好適実施例を図3、4に基づき説明する。
上述したように本発明は、位置が固定される誘導加熱コイル2に対して、昇降、とくに溶解鋳造に当たって下降させる鋳型1と底部3との相対移動速度ならびに移動距離を異ならしめることにより、小さい鋳型でより大きな原料装入空間と冷却空間とを確保するようにした点において、既知技術とりわけ特開平5−38555号提案の技術と明確に区別されるものである。
【0012】
図3において、初期装入段階である(a) 工程は、鋳型1内に装入原料4が充填された状態にあり、この原料4は誘導加熱コイル2に高周波を印加することで溶解される。一般に装入原料は金属溶湯に比べると嵩密度が小さいので、原料 (金属) の溶解により、同図(b) のように該鋳型1上部には原料の追加装入空間が形成されることになる。
次に、工程(b) では、工程(a) において金属の溶解量が定格量に達したら、凝固界面は減尺状態になり、鋳型1上部に原料の追加装入空間が形成されるので、該原料装入空間に追加装入原料4aを順次に投入すると同時に、この段階については鋳型1と底部3をほぼ同期する速度で下降させることにより、コイル2の下端から外れた位置に冷却域を形成させ、これによって鋳型1下部の水冷底部3に接する部分には凝固シェルが生成するように制御する。
【0013】
次に、工程(c) では、さらなる追加装入原料4aの投入と同時に、鋳型1ならびに底部3の下降に伴う冷却域の拡大により、凝固シェルが肥大化を目指す。ただし、このことにより、原料装入空間の方は工程(b) よりも小さくなる。このことのために、この工程では、鋳型1に対する底部3の相対下降速度を大きくして、前記冷却域の一層の拡大を図り、凝固金属の成長を促進させて肥大化したインゴットが生成するように制御する。
さらに、工程(d) において、鋳型1の下降が限界に来ると、追加装入空間は少なくなるものの、鋳型1内上部に付着した溶け残り金属部分にコイル2が接近するので磁束密度が大きくなり、付着物の溶解が行われる一方で、この鋳型1の下部にはこれらの動きに対応して拡大された冷却域にインゴットが生成するので、底部3をさらに下降させ、追加装入空間に原料を追加する。そして原料追加と底部の下降をくり返し、所要の大きさのインゴットが生成した時点で、原料追加を行なわずに底部のみを下降し、そして引き続き、底部3のみを引き抜き (工程(e) )溶解鋳造を行う。このようにして得られたインゴットを下方に引き抜き、溶解を完了した時点で高周波電力の投入を停止し、操業を終了する。
【0014】
この例における本発明方法は、鋳型1と底部3との相対下降速度を制御する上記工程(a) 〜(e) にわたる処理によって、金属の連続的な溶解鋳造を行う。
【0015】
図4は、本発明方法の別の実施例, 即ち、鋳型1の下降距離と底部2の下降距離を異ならしめる方法である。この方法において、工程(a) は上述したものと何ら異ならないが、工程(b) 〜(d) における追加装入空間および冷却域の確保の方法が上記の方法とは異なる。
即ち、この場合、工程(b),(c) では、鋳型1は底部3の張り出し部に乗っているため、底部といっしょに下降し、追加装入空間の確保と冷却域の形成が行われる。そして工程(d) では、鋳型1の下降を阻止する鋳型固定台5の存在により、鋳型1の下降は停止するが、工程(e) において、底部3の方はそのまま下降を続けることにより、インゴットの引き抜きが可能となる。この方法では、凝固シェルと鋳型内壁との鋳離れがよく、インゴットの引き抜きが円滑に行われるという特徴がある。
特に、この方法の下では、上述した例と異なり、工程(b), (c)において、鋳型と底部との間に下降速度差はない。また、この方式の特徴は、駆動動力機構が底部3のみでよいことにある。
【0016】
なお、上記の本発明方法の実施に当たっては、上下の移動距離が小さく、しかも底部に比べて遅い速度で動くことの必要な鋳型上下動機構として、たとえば、図5に示すように、鋳型下部外周に螺設したネジ部7に環状スプロケット8を螺合させると共に、鋳型用モータ9とチェーン10を介して上記環状スプロケット8を回転させることで、鋳型1を緩速で上下動させるものが好適に用いられる。
【0017】
また、上下の移動距離が大きくしかも鋳型に比べて速い速度で上下に動くことが求められる底部上下動機構として、たとえば図5に示すように、底用モータ11の回転駆動をギヤボックス12にて鋳型軸方向に立設された一対のリニアガイド軸13, 13′の回転駆動に変換し、このリニアガイド軸13, 13′には上下伝達台14を取付け、この上下伝達台14には底部3を底軸15を介して連結し、該リニアガイド軸13, 13′の回転に伴って上下する上下伝達台14と底軸15とを介して該底部3の急速で長ストロークで上下動するようにしたものが好適に用いられる。
もちろん、鋳型上下動機構および底部上下動機構からなる鋳型底部駆動機構は、必ずしも上記の機構に限定されるものではなく、他の同様の目的で使われる慣用の機構で代替してもよい。
【0018】
また、本発明においては、詳細な構造については図示を省略するが、鋳型として、周方向に複数の縦スリットを入れた複数のセグメントで構成される水冷式金属製るつぼが有利に適合し、この金属製るつぼは、上述した誘導加熱コイルとともに、真空槽16内に配設して、高純度の金属の溶解に適用することが好ましい実施形態と言える。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、溶湯のオーバーフローや溶け残り金属の壁面付着による操業上のトラブルが少なく、かつ鋳型の大きさを小さくすることができる他、鋳型の特定位置 (湯面レベル) の損傷をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の連続溶解鋳造方法の工程図。
【図2】従来の連続溶解鋳造方法の説明図。
【図3】本発明に従う連続溶解鋳造方法の工程図。
【図4】本発明に従う他の連続溶解鋳造方法の説明図。
【図5】本発明の連続溶解鋳造装置の略線図。
【符号の説明】
1 鋳型
2 誘導加熱コイル
3 底部
4 装入原料
5 鋳型固定台
7 ネジ部
8 環状スプロット
9 鋳型用モータ
10 チエーン
11 底用モータ
12 ギヤボックス
13, 13′リイアガイド軸
14 上下伝達台
15 底軸
16 真空槽

Claims (5)

  1. 真空槽内に、水冷式の可動底部を具える鋳型と誘導加熱コイルとを配設してなる誘導加熱装置によて、金属を連続的に溶解し冷却して鋳造する方法において、前記鋳型内への初装入原料を誘導溶解する初期段階は、前記コイルに対する鋳型ならびに底部の位置を固定して溶解し、その原料が溶落したのちは、前記鋳型ならびに底部をともに下降させると同時に、このときの該底部の下降速度を鋳型の下降速度より速くするかもしくは同一にすることにより、鋳型の特定位置を損傷させず、また鋳型内上部には原料の追加装入空間を形成させると共に、鋳型内下部には冷却面を次第に大きくして冷却空間を形成させ、このことにより金属の凝固を促進してインゴットを成長させてから下方に引き抜くようにすることを特徴とする金属の連続溶解鋳造方法。
  2. 原料の追加装入空間が最小となったとき、その位置で鋳型の下降を停止させ、底部のみを引き続き下降させてインゴットの引き抜きを行うようにすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 水冷金属鋳型、この鋳型の外側に所定の間隔を隔てて配設された誘導加熱コイル、およびこれらを収容するための真空槽とから主としてなり、この鋳型の下部内側に水冷金属製底部を上下動可能に嵌め入れると共に、これらの鋳型ならびに底部のいずれもがそれぞれ独立して上下動するように支持し、かつ該鋳型と該底部には、底部を鋳型の下降速度よりも速い速度で下降させる鋳型・底部駆動機構を設けたことを特徴とする金属の連続溶解鋳造装置。
  4. 水冷金属鋳型、この鋳型の外側に所定の間隔を隔てて配設された誘導加熱コイル、およびこれらを収容するための真空槽とから主としてなり、この鋳型の下部内側に水冷金属製底部を上下動可能に嵌め入れると共に、鋳型を底部と同一の駆動機構により上下動させ、その鋳型の下方に鋳型の任意の位置からの下降を阻止し底部のみを下降させるようにする鋳型固定台を配設したことを特徴とする金属の連続溶解鋳造装置。
  5. 上記鋳型・底部駆動機構は、鋳型下部外周に螺設したネジ部に環状スプロケットを螺合させると共に、鋳型用モータとチェーンを介して上記環状スプロケットを回転させることで、鋳型を緩速で上下動させる鋳型上下機構と、底用モータの回転駆動をギヤボックスにて鋳型軸方向に立設された一対のリニアガイド軸の回転駆動に変換し、このリニアガイド軸には上下伝達台を取付け、この上下伝達台には底部を底軸を介して連結し、該リニアガイド軸の回転に伴って上下する上下伝達台と底軸とを介して該前記底部の急速で長ストロークで上下動するようにした底部上下機構とからなることを特徴とする請求項3に記載の装置。
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