JP3754648B2 - ゲルタンパク質低減オオムギの作出 - Google Patents

ゲルタンパク質低減オオムギの作出 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、オオムギ種子中のゲルタンパク質を低減したオオムギを作出することに関する。
背景技術
オオムギ(Hordeum vulgare)の種子には、種子特異的に発現するタンパク質(種子貯蔵タンパク質)が多量に存在し、そのうち35〜55%をアルコール可溶性のホルデインが占めている(Shewry 1993,Barley:Chemistry and Technology.pp164:American Association of Cereal Chemi sts)。
このホルデインは、その遺伝子座及びアミノ酸組成等からB、C、D、γの4タイプに分類され、全ホルデインに対する含量比は、Bが70から80%、Cが10から20%、Dが5%以下である。
これらホルデインはビール醸造においては、酵母のアミノ酸源として非常に重要な役割を持っている他に、ビールの色度や寒冷混濁の形成に影響を及ぼすことが報きた。これらの報告は、ホルデインの各分類個々のものではなく、ホルデイン全体が及ぼすビール品質やビール製造工程への影響を調べたものである。
例えば、Baxter(Baxter,1980,Brewers Digest 55:45-47)はマイシェ(mash)に還元剤を加えることにより、麦汁の濾過速度が改善されることを見いだした。さらに、von den Bergら(van den Berg et al.1981,Proceeding of the EBC congress,Copenhagen,47:461-469)は、オオムギから1.5% SDSでタンパク抽出後、遠心分離により沈殿するゲル状のタンパク質凝集体、すなわちゲルタンパク質が、麦汁濾過性に悪影響を及ぼすと報告している。これらの報告は、B、Dホルデインがジスルフィド結合により高分子化したゲルタンパク質と麦汁濾過性との関連性を示唆している。
また、このゲルタンパク質と麦芽エキスとの間に強い負の相関があることも報告されている(Smith and Lister(1983),Journal of Cereal Science 1:229-239、Smith and Simpson(1983),Journal of Cereal Science 1:185-197、Skerritt and Janes(1992),Journal of Cereal Science 16:219-235、Howard et al.(1996),Journal of Cereal Science 24:47-53)。
さらに、Brennan(Brennan et al.(1998),Journal of Cereal Science 28:291-299)は、Dホルデインを欠くオオムギ系統を用いたisogenic lineを利用し、Dホルデインの有無とゲルタンパク質量について検討し、両者間の関連を示唆した。
このような見地から、何らかの方法によりゲルタンパク質を低減することができれば、麦汁濾過性や麦汁エキス収量を改善できる可能性が示唆されてきた。
発明の開示
しかしながら、これまでゲルタンパク質を減少させる方法として、ゲルタンパク質含量の低いオオムギ系統を片親とする交配によるか(Brennan et al.(1998),Journal of Cereal Science 28:291-299)、または放射線照射等による突然変異育種による方法が採用されていたが、これら方法はいずれも効率的な方法とは言えなかった。
すなわち、上記交配を用いた方法では、目的のゲルタンパク質が低下した品種あるいは系統を得るためには、かなりの時間、労力、育種圃場、及び適切な育種技術が要求されることになる。また、選抜にあたっても多くの系統を供試することが必要となる。そのため、この方法では、経済的且つ、効率的なゲルタンパク質が低減されたオオムギの作出を図ることは極めて困難であった。
また、もう一つの方法である放射線などを用いた突然変異体の誘発方法は、突然変異の頻度は低く、また、突然変異が挿入される位置はランダムであることから、目的の突然変異体を得るためには、かなりの規模の突然変異誘発試験を必要とする。また、このような放射線照射を行うには特別の施設を必要とし、作出操作を行う場所が制約されるという問題がある。
一方、近年の分子生物学の進展により、遺伝子工学技術を利用して植物を改変する方法が開発され、プロトプラスト法、パーティクルボンバードメント法、アグロバクテリウム法などオオムギの形質転換技術の開発、改善により比較的容易に、かつ短期間に形質転換オオムギが得られるようになってきている。
そこで、本願発明者らは、これら諸問題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、形質転換技術を利用して効率的且つ経済的にゲルタンパク質が低減されたオオムギの作出方法を開発した。
本発明は、ホルデインの中の微量に含まれるD型、すなわち、Dホルデインの生成を抑制して、オオムギ中のゲルタンパク質量の低減を図るものである。この本発明は、Dホルデインが全ホルデインにおいて5%程度を占めるに過ぎないが、このDホルデインの生成を抑制することにより、ゲルタンパク質量を予想以上に低減させることが可能となることを本願発明者らが見出したことによる。
すなわち、本発明は、オオムギからのタンパク抽出時にゲル状に凝集し得るゲルタンパク質が低減されたオオムギを作出する方法であって、オオムギの内在Dホルデインタンパク質の産生を抑制し得るDホルデイン発現抑制核酸をオオムギに導入し、前記Dホルデイン発現抑制核酸の導入により前記Dホルデインタンパク質の生成が抑制されてゲルタンパク質量が低減されることを特徴とする。
上記発明によれば、オオムギにDホルデイン発現抑制核酸が導入されて前記Dホルデインタンパク質の産生が抑制され、ゲルタンパク質からDホルデインタンパク質画分を低減させることが可能となる。さらには、このDホルデインタンパク質はゲルタンパク質のうち極一部を構成するに過ぎないが、この極一部を占めるDホルデインタンパク質の低減により、ゲルタンパク質を構成する他のタンパク質をもゲルタンパク質から排除又は低減させることが可能となる。その結果、本発明によれば、全ゲルタンパク質量を予想以上に低減させることができる。
本発明は、上記発明において、前記Dホルデイン発現抑制核酸が、オオムギの内在DホルデインRNAと相捕するアンチセンスRNAを発現し得ることを特徴とする。
上記発明によれば、オオムギ内でアンチセンスDホルデインRNAが発現され、これが内在のDホルデインRNAと相捕し、タンパクへの翻訳が阻害され、Dホルデインタンパク質の生成を抑制することが可能となる。
本発明は、オオムギ内で生成される内在DホルデインRNAと相補し得るアンチセンスRNAを生成させるDホルデイン発現抑制核酸であって、前記オオムギ内で作動するプロモータの下流に、前記アンチセンスRNAを生成させ得るように、DホルデインをコードするDホルデインコード配列が逆向きに連結されていることを特徴とする。
本発明のDホルデイン発現抑制核酸によれば、プロモータからアンチセンスDホルデインRNAが転写され、このアンチセンスDホルデインRNAは、内在のDホルデインRNAと相補的に結合して、DホルデインRNAを基にするDホルデインタンパク質の翻訳を阻害することができる。
また、本発明のDホルデイン発現抑制核酸は、上記Dホルデインコード配列が、(1)配列番号1に記載の塩基配列、(2)配列番号2に記載の塩基配列、(3)配列番号1に記載の塩基配列において置換、欠失、付加、挿入のうち少なくとも一つを有し、前記オオムギの内在DホルデインRNAと相補し得るRNAをコードした塩基配列、又は、(4)配列番号2に記載の塩基配列において置換、欠失、付加、挿入のうち少なくとも一つを有し、前記オオムギの内在DホルデインRNAと相補し得るRNAをコードした塩基配列、のいずれかであることを特徴とする。
これら塩基配列によれば、これらが発現することにより内在のDホルデインRNAと相補的に結合し、Dホルデインタンパク質の生成を抑制することができる。
また、本発明は、上記Dホルデイン発現抑制核酸を含むベクターに関する。
このように発現抑制核酸をベクターにつなぐことにより、発現カセットを安定に保持することができ、また、発現カセットの増幅生成を自在に行うことが可能となる。
本発明は、前記Dホルデイン発現抑制核酸の近傍に選択可能なマーカーを発現し得る選択マーカー発現カセットが備えられていることを特徴とする。
上記発明によれば、選択マーカー発現カセットを備えることにより、上記Dホルデイン発現抑制核酸が導入された株を上記選択マーカーを手がかりに選抜することが可能となり、Dホルデインの発現が抑制されている株、すなわち、ゲルタンパク質低減株を迅速に識別することが可能となる。
本発明のゲルタンパク質低減オオムギ作出キットは、上記Dホルデイン発現抑制核酸若しくは上記ベクターを含み、前記Dホルデイン発現抑制核酸又は前記ベクターをオオムギに導入し、オオムギのゲルタンパク質を低減させることを特徴とする。
本発明によれば、Dホルデイン発現抑制核酸若しくは上記ベクターが含まれているため、これらをオオムギに導入して形質転換をするだけで簡便にゲルタンパク質が低減されたオオムギを得ることが可能となる。
本発明は、上記のいずれかのゲルタンパク質低減オオムギの作出方法又は請求項8〜9のいずれかに記載のゲルタンパク質低減オオムギの作出キットにより作出されたオオムギをも含む。
本発明のオオムギによれば、ホルデインの中でも微量と言えるDホルデインタンパク質量のみを低減し、これによってゲルタンパク質量の低減が図られているため、ゲルタンパク質量と関連性があるとされる麦汁濾過性や麦芽エキス収量の向上が望める。
【図面の簡単な説明】
図1は、本実施例1で用いたDホルデイン発現抑制ベクターの構成を示す図である。
図2は、本実施例1で用いたDホルデイン発現抑制ベクターの構築方法を示す図である。
図3は、本実施例2の形質転換オオムギのサザンブロッティングによる導入遺伝子確認の結果を示す図である。
図4は、本実施例3の形質転換オオムギ種子のホルデイン画分のSDSポリアクリルアミド電気泳動による解析を示す図である。
図5A、図5Bは、本実施例4の形質転換オオムギ種子のゲルタンパク質定量の結果を示す図である。
図6は、本実施例5の形質転換オオムギ種子のゲルタンパク質の組成変化を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明の好適な実施の形態を説明する。
1.Dホルデイン遺伝子の発現抑制法
オオムギのDホルデインの発現の抑制は、Dホルデインタンパク質が、染色体遺伝子からのRNAへの転写、RNAからのタンパク質への翻訳という過程を経て行われることから、これらいずれかの過程を抑制することにより実行することができる。
例えば、Dホルデインタンパク質の発現を抑制するための方法としては、アンチセンス法、co-supression法,リボザイム法等が挙げられる。また、Dホルデインタンパク質の生成過程を阻害する方法のみならず、このDホルデインタンパク質の生成の基礎となるDホルデイン遺伝子領域を改変することにより、その発現を抑制してもよい。このような発現抑制方法としては、例えば、遺伝子ターゲッティング法を採用することができる。
Dホルデインの発現を抑制することが目的であるため、このようにDホルデインタンパク質の発現を抑制し得るものであれば、上記のいかなる方法を採用してもよいが、確実性が高く且つ特異性の高い方法としてはアンチセンス法を好適に利用することができる。
2.Dホルデイン遺伝子の発現抑制用核酸の作成
Dホルデインの発現を抑制するための核酸は、採用する発現抑制方法によって、その構成が異なる。
(1)アンチセンス法
アンチセンス法は、目的となるDホルデインmRNAにアンチセンスRNAを特異的に結合させ、これによりDホルデインmRNAからのタンパク質への翻訳を阻害する。従って、アンチセンス法を採用した場合には、発現抑制核酸としてアンチセンスDホルデインRNAを用いることができ、このアンチセンスRNAをオオムギに直接供給することによりDホルデインタンパク質の発現を抑制することができる。
また、この発現抑制核酸としては、好ましくは、アンチセンスRNAを発現する発現カセットを採用することができる。この発現カセットを用いて、オオムギを形質転換させることにより、形質転換オオムギにおいて安定にアンチセンスRNAを供給することができ、また、この形質転換体から得られた次世代種子群等にこの性質を遺伝させることもできる。
上記アンチセンスDホルデイン発現カセットは、次のように構成することができる。オオムギ登熟中胚乳組織で発現するプロモーターの下流に作動可能に、オオムギDホルデイン遺伝子を逆向きに連結し、さらにその下流に同様にオオムギ登熟中胚乳組織で機能する転写終結因子を連結することにより作成することができる。
ここで、「オオムギDホルデイン遺伝子」は、アンチセンスRNAを生成し得るようにプロモータの下流に逆向きに連結されている。この発現カセットに導入されている「オオムギDホルデイン遺伝子」は、Dホルデイン遺伝子の全領域を有している必要はなく、内在のDホルデインmRNAからの翻訳を阻害し得る長さを有していれば、Dホルデイン遺伝子の一部配列でもよい。
また逆に、カセット内の「オオムギDホルデイン遺伝子」は、同様に内在のDホルデインmRNAに基づく翻訳を阻害し得るものであれば、内在のDホルデインmRNAよりも長くてもよく、また、任意のDNA断片が付加されたものであってもよい。
上記オオムギDホルデイン遺伝子として、具体的には配列番号1又は2に示す配列を好適に用いることができるが、これら配列と実質的に同一の配列をも用いることができる。この実質的同一な配列とは、上記配列に置換、欠失、付加、挿入のうち少なくとも一つを有し、上記内在Dホルデイン遺伝子の発現を抑制し得る配列等である。
また、発現カセット内の導入遺伝子は、「オオムギDホルデイン遺伝子」に限られず、Dホルデイン遺伝子と相同性が高い遺伝子をも用いることができる。たとえば、コムギ高分子グルテニンサブユニット遺伝子あるいはライムギ高分子セカリン遺伝子などでも、内在のDホルデインmRNAと相補的に結合し得るものであれば用いることができる。
また、ここで用いる発現カセット内の導入遺伝子は、ゲノムDNA、cDNA、これらの遺伝子を合成、改変等の操作された遺伝子などであってもよい。
発現カセット内の「プロモーター」は、オオムギ登熟中胚乳組織でプロモーター活性を持つものであれば、特に制限はない。たとえば、Bホルデインプロモーター、Cホルデインプロモーター、γホルデインプロモーター、βアミラーゼプロモーター、コムギ高分子グルテニンサブユニットプロモーター、ライムギ高分子セカリンプロモーター、CaMV35Sプロモーター、アクチンプロモーター等が挙げられる。
また、転写終結因子としては、オオムギ登熟中胚乳組織で機能するものであれば、特に限定は無く、例えば、NOSターミネーター等を用いることができる。
(2)co-supression法
co-supression法におけるDホルデイン発現抑制核酸は、例えば、オオムギ登熟中胚乳組織で発現するプロモーターの下流に正方向に導入遺伝子としてオオムギDホルデイン遺伝子を連結し、さらにその下流にNOSターミネーターなどの転写終結因子を連結することで作成できる。
ここで用いる導入遺伝子は、Dホルデイン低減のために必要なDNA断片であり、例えば、Dホルデイン遺伝子を好適に用いることがでできる。そして、この導入遺伝子は、プロモーターと転写終結因子の間に正方向に挿入することができる。また、導入遺伝子は、mRNAとして発現する全領域を含んでいる必要はなく、短い遺伝子断片でもよい。逆に、導入遺伝子はmRNAとして発現する全領域より長くてもよく、任意のDNA断片が付加されたものでもよい。
また、導入遺伝子は、Dホルデイン遺伝子以外にも、Dホルデイン遺伝子と相同性が高い遺伝子であれば用いることができる。たとえば、コムギ高分子グルテニンサブユニット遺伝子あるいはライムギ高分子セカリン遺伝子を用いることができる。
ここで用いる導入遺伝子は、ゲノムDNAと、cDNAと、これらの遺伝子を合成、改変、操作した遺伝子とを含む。
また、「プロモーター」としては、オオムギ登熟中胚乳組織でプロモーター活性を持つものであれば何でもよい。たとえばBホルデインプロモーター、Cホルデインプロモーター、γホルデインプロモーター、βアミラーゼプロモーター、コムギ高分子グルテニンサブユニットプロモーター、ライムギ高分子セカリンプロモーター、CaMV35Sプロモーター、アクチンプロモーター等が挙げられる。
(3)リボザイム法
リボザイム法は、リボザイム(RNA酵素)によりDホルデインmRNAを分解して、Dホルデインの発現を抑制する方法である。従って、この方法に用いるDホルデイン遺伝子発現抑制核酸は、発現しているDホルデインmRNAを分解できるように設計されたリボザイムをコードした遺伝子を作成し、この遺伝子を上記のようにプロモーターと転写終結因子との間に正方向に連結することによって構成することができる。
(4)上記において述べたDホルデイン発現抑制用核酸の構築には、制限酵素処理、DNA連結処理、大腸菌の形質転換など遺伝子クローニングに関わる操作が必要であるが、これらは慣用技術を用いて実行される。たとえば、Molecular Cloning(Sambrook,Fritsch,Maniatis.Cold Springharbor Laboratory)を参考とすることができる。
本項記載の特定遺伝子発現抑制用カセットは直鎖状のままで植物の染色体に導入するか、後述のように任意のプラスミドに組み込んで特定遺伝子発現抑制遺伝子発現ベクターとして使用することができる。
3.特定遺伝子発現抑制用ベクターの作成
上記発現抑制核酸は、核酸断片として直接用いることもできるが、ベクターに挿入し、発現抑制ベクターとして用いることができる。発現抑制用ベクターは、上記発現抑制用核酸を任意のプラスミドに挿入して作成することができる。また、任意のプラスミドに、プロモーター、構造遺伝子、転写終結因子を順次連結させることにより、上記発現抑制用核酸とともに発現抑制ベクターを同時に作成することもできる。
ここで用いることができるプラスミドとしては、例えばプラスミドpBI101など市販のものなどのいかなるものを用いてもよいが、目的に応じて選択することが好ましい。例えば、ベクターを大量に回収したいときなどでは、コピー数の多いプラスミドを選択することが望ましい。さらに、前記プラスミドには、前記発現ベクターを生物等に導入する際の指標となる薬剤(ネオマイシンなど)又は栄養成分(例えば、アミノ酸要求性など)などに基づく選択マーカーを備えることができる。この選択マーカーを備えることにより、選択マーカーを指標として上記発現ベクターが導入された植物を選択することできる。
以上に述べたDホルデイン発現抑制ベクターを構築するには、制限酵素処理、DNA連結処理、大腸菌の形質転換など遺伝子クローニングに関わる操作が必要であるが、これらは慣用技術を用いて実行することができる。この場合、たとえば、Molecular Cloning(Sambrook,Fritsch,Maniatis,Cold Springharbor Laboratory)を参考とすることができる。
4.発現抑制核酸またはこれを含む発現抑制ベクターの植物への導入
発現抑制核酸またはこれを含む発現抑制ベクターを導入する細胞としては、再分化能を有する植物細胞が好ましく、このような細胞としては、例えば、未熟胚由来細胞、葯由来細胞が挙げられる。
核酸の導入の方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、ポリエチレングリコール法のほかに、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法などが挙げられる。
5.形質転換植物
前記のように外来DNAとして発現抑制核酸または発現抑制用ベクターが導入された植物は形質転換植物として形質転換以前の性質とは異なり、Dホルデインが生成されないか、あるいは生成量が低減された性質を備えた新しい品種あるいは系統を形成する。
また、上記発現抑制方法にて作成した形質転換植物を他の品種や系統と交配させることによっても同様の性質、Dホルデインが低減等されたという性質を持つ植物を得ることができるが、これらも本質的に発現抑制法にて作成した形質転換植物に該当する。
6.ゲルタンパク質の定量と定性
形質転換オオムギに実った種子からゲルタンパク質を抽出し、定量する方法は公知の方法で行うことができる。たとえば、Smith and Lister(Smith and Lister(1983),Journal of Cereal Science 1:229-239)あるいはSkerritt and Janes(Skerritt and Janes(1992),Journal of Cereal Science 16:219-235)の方法を用いることができる。得られたゲルタンパク質の組成を調べるにはSDSポリアクリルアミド電気泳動が有効であるが、高速液体クロマトグラフィーを用いても可能である。B、C、D各ホルデインの同定は、分子量から公知の情報を基に行うことができる。たとえば、Shewry(Shewry(1993),Barley:Chemistry and Technology.pp164:American Association of Cereal Chemists)は参考となる。
[実施例]
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]Dホルデイン発現抑制ベクター作製
DホルデインmRNAに対するアンチセンスRNAを発現する発現抑制ベクターの構成を図1に示す。
Dホルデイン発現抑制ベクターには、図1に示すようにDホルデイン発現抑制核酸として、DホルデインmRNAに対するアンチセンスRNAを発現するアンチセンス発現カセット10が備えられている。このアンチセンス発現カセット10には、Dホルデインプロモーター(DホルデインP)14(配列番号3)の下流にDホルデインcDNA16(配列番号1又は2)が逆向き、すなわち3’→5’方向に接続されている。さらに、この逆向きDホルデインcDNA16の下流には、NOSターミネーター18が接続されている。
また、Dホルデイン発現抑制ベクターには、前記アンチセンス発現カセット10と上流同士が向き合う形(head to head)で選択マーカー発現カセット12が備えられ、この選択マーカー発現カセット12には、arfプロモーター20の下流にネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子22が接続され、さらに、その下流にNOSターミネーター24が接続されている。
このDホルデインベクターの構築を、図2に示す。
Dホルデインプロモーター14であるDPP3プロモーターを担持したベクターを準備し、このベクターのマルチクローニングサイトのHindIII部位をNheI部位変えたDPP3Nhe2ベクターを調製した。このDPP3Nhe2ベクターを制限酵素BamHIとEcoRIとを用いて消化し、ここに転写終結因子としてpBI221(Clonetec社製)由来のNOSターミネーター18を含むBamHI−EcoRIフラグメントを挿入し、ライゲーションにより接続して、DPP3NheTベクターを得た(S01)。
次いで、このDPP3NheTベクターを制限酵素BstX1を用いて消化し、末端を平滑化して再接続して、DPP3NheTBXDベクターを得た(S02)。ここで得られたDPP3NheTBXDベクターは、DホルデインプロモーターとNOSターミネーターの間にPmaCI部位とSacI部位を有する。
次に、上記DPP3NheTBXDベクターをSacIで消化し、末端を平滑化したものを調製した(S03)。一方、DホルデインcDNA16を担持するpDH4又はpDH6をEcoRIで消化し、DホルデインcDNA(pDH4由来:配列番号1、pDH6由来:配列番号2)の全領域をふくむEcoRI断片を平滑末端化した断片を調整した(S04)。これら両断片を連結し、DホルデインcDNA16の方向はプロモーター14に対して逆向きのものを選抜して、それぞれDPADH4S、DPADH6Sとした(S05)。
上記の通り、アンチセンス発現カセット10が形成されたDPADH4S、DPADH6Sベクターに選択マーカー発現カセット12を導入するために、pSBG121NHから選択マーカー発現カセットの調整を行った。
このpSBG121NHには、arfプロモーター(配列番号4)の下流にネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neomycin phosphotran sferase,Pharmacia社製、以下nptII遺伝子)が連結され、さらにその下流にNOSターミネーターが連結されている。そのため、このpSBG121NHをNheIで消化し、NPTII遺伝子22を含む発現カセットを回収し(S06)、この断片を上記DPADH4SならびにDPADH6SのNheI部位に導入した。導入後、選択マーカー発現カセット12とアンチセンス発現カセット10とがhead-to-headに連結したものを選抜し、これらをDPADH4NPTならびにDPADH6NPTとした(S07)。
[実施例2]オオムギの形質転換
1.オオムギの形質転換
オオムギの形質転換は、オオムギ品種Igriの未熟胚由来の細胞系から得たプロトプラストにポリエチレングリコール法を用いてDホルデイン発現抑制ベクター(DPADH4NPTあるいはDPADH6NPT)を導入することにより行った。
詳細には、上記実施例1で作成した2種のベクターを、それぞれキアゲンカラム(Quiagen社製)を用いて精製後、1μg/μlの濃度になるようにTE緩衝液(10mMトリスHCl(pH7.5)、1mM EDTA)に懸濁した。一方、プロトプラストは、品種Igriの液体懸濁培養細胞系より酵素処理後、精製することで調製された。
このプロトプラストへのベクター導入は、基本的にFunatsuki et al.(Funatsuki et al.(1995)Theoritical and Applied Genetics 91:707-712)の方法に従って行った。すなわち、得られたプロトプラストを50μgの上記ベクター、100mMのCaCl2、0.6Mのソルビトール、0.1%(w/v)のMESを含みpHを5.7に調整した250μlのCa-S(カルシウムソルビトール液)に懸濁した。
この懸濁液に、PEG(ポリエチレングリコール、分子量1540)を40%(w/v)含むCa-S PEG(pH 7.0)を600μl滴下し、数回の振とう後、5-10分静置した。10mlのLW液を加え希釈した後、遠心処理しプロトプラストを回収した。このプロトプラストを1mlの1.8% Sea Plaque Agarose(FMC社製)、0.4 Mマルトースを含む改変L1培地(Lazzeri et al.1991)に懸濁し、ナース細胞とともに培養した。
2.ベクター導入コロニーの選抜及び植物への生育
プロトプラストの培養を開始して2-3週間経過後に、液体培地及びナース細胞を除去した。更に、一次選抜としてNPTII遺伝子を有するコロニーのみを選抜するために、得られたコロニーを、G418(ジェネティシン、Gibco社製)を20もしくは25μg/ml含有させた液体培地にて培養した。
上記G418耐性コロニーを約14日間振盪培養を行った後、二次選抜として、1次選抜と同濃度のG418を含む再分化培地に移して培養を行った。2次選抜の過程でカルスや胚様体の形成、あるいはシュートの分化をみせたコロニーについては、それぞれ独立したプロトプラストに由来する形質転換細胞として、G418を含まない改変L3培地に移植し、植物体の再分化を促した。緑色シュートが1-2cmになった時点でシャーレを強光下に移動し培養後、ホルモン非添加の培地に移植し発根を促進、鉢上げを行った。
以上の形質転換実験の結果、DPADH4NPTの導入を試みた区からは18系統、66個体が得られ、また、DPADH6NPTの導入を試みた区からは12系統、29個体の再分化植物が得られた。なお、供試したすべてのオオムギの育成は、16℃、16時間日長、20000〜30000ルックス照明に制御した人工気象庫内で行った。
3.植物中におけるベクターの存在の確認
再分化した植物体中に、導入したDホルデイン発現抑制ベクター(DPADH4NPTあるいはDPADH6NPT)が存在しているかどうかを、サザンハイブリダイゼーション法を用いて確認した。
先ず、再分化植物の葉1gを準備し、これを液体窒素中で磨砕後、CTAB法(Murray et al.1980,Nucleic Acids Res.8:432 1-4325)にて全DNAを抽出した。得られたDNAは、HincIIで消化後、アガロースゲル電気泳動を行い、アルカリ変性後ナイロンメンブレン(ベーリンガー社製)にキャピラリーブロッティングした。プローブは、pDH4のインサートを逆方向に連結し直したベクター、pDH4R6をHincII消化して得られる約1.7Kbの断片を鋳型としてDIG-high prime(ベーリンガー社製)を用いてラベルしたものを用いた。
サザンハイブリダイゼーションは、ベーリンガー社のマニュアルに従い行った。ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄は、2 X SSC、1% SDSで室温下30分の洗浄の後、0.1 X SSC,0.1% SDSで42℃下、30分の洗浄を2回繰り返した。
シグナルの検出法はベーリンガー社のマニュアルに従った。得られた再分化植物の各系統についてサザンハイブリダイゼーションにて導入遺伝子の検出を行った結果、Dホルデイン発現抑制ベクターの導入を試みた区から得られた再分化植物のうち12系統、48個体、DPADH6NPTの導入を試みた区から得られた再分化植物のうち10系統、23個体から導入遺伝子が検出された。
ただし、ここでは、各系統の代表で導入遺伝子が検出された場合は、その系統に属する個体は全て導入遺伝子を持っているものとして計算した。図3に、サザンハイブリダイゼーションによる導入遺伝子の検出例を示す。これから明らかなように、対照として用いた遺伝子を導入していない再分化植物から得たDNAでは内在のDホルデイン遺伝子のシグナルが検出されるのみであるが(図3レーン8)、遺伝子導入した再分化植物からは内在遺伝子以外のシグナル、すなわち導入遺伝子が存在することが確認された(図3レーン1〜レーン7、レーン9〜レーン12)。
[実施例3]Dホルデイン発現抑制ベクターの効果の確認
Dホルデイン発現抑制ベクターの効果の確認は、以下に示す通り、形質転換体の種子中のDホルデイン含量を、電気泳動のバンド強度から測定することにより行った。
1.種子から蛋白質画分の抽出
上記においてDホルデイン発現抑制ベクターが導入されていることが確認された形質転換体に稔実した種子(以後T1種子と呼ぶ)から蛋白質を抽出した。この抽出は、上記種子1粒をハンマーを用いて細かく粉砕し、USDバッファー(8M尿素、0.1 Mジチオスレイトール、50.0mM炭酸ナトリウム)を加え攪拌後、60℃で30分インキュベートした。そして、このサンプルを15000回転、20分間遠心分離して得られる透明な画分(上清部)を採取した。
2.蛋白質画分の電気泳動
ここで得られた上清画分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分画し、クマシーブリリアントブルーR250で染色した後、解析した。解析結果を図4に示す。なお図4において黒抜きのひし形の印はDホルデインのバンドを示している。
図4は、その1例としてDPADH6NPTを導入した90113AT15−1−4系統のT1種子3粒のUSDバッファー可溶性画分を電気泳動したものである。陰性対照としては、市販されているIgriの種子及び遺伝子導入していない再分化植物についた種子を供試した。
図4に示したように、形質転換体のホルデイン画分であるレーン5と7では、非形質転換の対照(レーン2、3、4)と比較してDホルデインの他のホルデインに対する相対含量が、劇的に減少していることが明らかとなった。
また、Dホルデイン発現抑制ベクターを導入した他の系統においても、若干の差はあるものの対照と比較してDホルデインの相対含量が減少することが明らかとなった。このことから、本発明で構築したDホルデイン発現抑制ベクターは、確かに形質転換したオオムギにおいて特異的に、すなわち、他のホルデイン含量をほとんど変化させることなく、Dホルデインを減小させる効果を持つと結論できる。
なお、レーン6では対照との間に差が認められなかったが、この結果は導入遺伝子がT1種子において分離したために起こったためであると説明できる。よって、この事実は、Dホルデインの減少がDホルデイン発現抑制ベクターの導入の結果として、起こるという上記結論に矛盾するものではない。
[実施例4]ゲルタンパク質の定量
1.種子からゲルタンパク質の回収
ゲルタンパク質の定量は、Skerritt and Janes(Skerritt and Janes(1992),Journal of Cereal Science 16:219-235)を参考に行った。
形質転換体から得られたT1種子1粒の穀皮を剥ぎハンマーで細かく砕き、あらかじめ重量が測定された遠心チューブに入れ、Speed Vac Concentrater(Savant社製)を用いて30分間乾燥させた後、重量を測り、穀粒の重量を算出した。このサンプルに1.5%(w/v)SDSを3ml加え、ボルテックスにて1時間攪拌した。
攪拌後のサンプルは、40000 X g、20℃で1時間遠心分離が行われ、得られた上清を、「SDS可溶性画分」(又は「SDS画分」)とした。
一方、上記遠心分離における沈殿した画分は、1.5%(w/v)SDS/10%(v/v)2-メルカプトエタノール/16%(v/v)N,N'-ジメチルホルムアミド(以後、SDMと呼ぶ)を2ml加え、よく攪拌後、45℃で約20時間インキュベートした。このインキュベート後のサンプルを40000Xg、20℃で1時間遠心分離し、得られた上清を0.2%SDSを用いて透析を行った。この透析は、2時間を3回繰り返し、透析後に体積を測定した。なお、ここで得られた画分が「ゲルタンパク質画分」(又は「gel画分」)である。
2.Dホルデインの減少によるゲルタンパク質の減少
上記SDS画分およびgel画分のタンパク質定量は、BCA Protein Assay Reagent(Pierce社製)を用い、ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin)を標準タンパク質とした。なお、形質転換体のゲルタンパク質定量後、用いたT1種子でDホルデインが低減されているかどうかを上記SDSポリアクリルアミド電気泳動にて調べ、導入遺伝子が分離した(脱落した)ことによって、Dホルデインの低減が観察されなくなったT1種子のデータは、ここから削除した。
オオムギ品種Igriおよび遺伝子導入していない再分化オオムギ系統(90213AC1-5A,90213AC1-6B,90213AC1-4B)を陰性対照として、Dホルデイン発現抑制ベクターを導入した形質転換体系統(90113AT1-2C,90113AT14-1-3C,90113AT14-1-5G,90113AT15-1-4)のT1種子から得られるgel画分のタンパク量を調べた。
なお、各系統について少なくとも5サンプルを用いて抽出、定量を行った(n≧5)。図5Aは、サンプル1gあたりから抽出されるgel画分中のゲルタンパク質量と標準誤差を示した。
図5Aに示すグラフから明らかなように、Dホルデイン含量が低下した区(図5A:5、6、7、8)では、陰性対照と比べて(図5A:1、2、3、4)、明らかにゲルタンパク質量が低下していた。また、Dホルデインが減少した全サンプルのゲルタンパク質量の平均は、陰性対照全サンプルの平均値と比較して有為に低いこと(平均値で約40%減少)が明らかとなった(有為水準1%)。以上の結果から、ゲルタンパク質の減少は、培養変異等によるものではなく、Dホルデイン減少によって生じた現象であることを示す。
3.Dホルデインの減少とゲルタンパク質の減少との関連性の確認
同一個体に実るT1種子において、導入遺伝子の分離の結果として起こるDホルデイン量減少の有無により、ゲルタンパク質量がどのように変化するかを調べた。
90113AT15−1−4系統の同じ個体から得たT1種子10粒について、ゲルタンパク質を抽出し、電気泳動によってDホルデインの減少量を定性的に調べ、Dホルデイン量が減少した群(5粒)と、減少が認められなかった群(5粒)に分けた。その後、これら2群の試料を用いて、このDホルデイン減少の有無とゲルタンパク質量との関係を調査した。その結果を図5Bに示す。
図5Bに示したように、Dホルデイン量が減少した種子群(5粒)におけるゲルタンパク質量(図5B:サンプル2)は、Dホルデイン量の減少が認められなかった種子(5粒)のゲルタンパク質量(図5B:サンプル1)と比較して有為に低いことが明らかとなった(有為水準1%)。
これは、同じ個体に稔実した種子を調べた試験であるので、個体間に生じる生育環境の差異は無視できる。よって、ゲルタンパク質の減少は、生育環境の差異による結果ではなく、個体の持つ特性、すなわち、特異的にDホルデインタンパク質の生成量が低減されているとの特性として生じる現象であることが示された。
以上の結果から、ゲルタンパク質量の減少は、Dホルデイン発現抑制ベクターを導入し、Dホルデインタンパク質の生成量を低減させることにより可能になると結論づけることができる。
[実施例5]ゲルタンパク質の組成変化
Dホルデイン発現抑制ベクターを導入することによって生じるゲルタンパク質の組成変化について検討した。90113AT15−1−4より抽出したSDS画分(図6:レーン2、3、4、5)およびgel画分(図6:レーン6、7、8、9)をそれぞれSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した。
その結果、対照(図6:レーン2、3、5、6、7、9)と比較して、Dホルデイン含量が減少したT1種子(図6:レーン4、8)では、本来、gel画分に多量に抽出される特定のタンパク質(以下、「GSタンパク質」と呼ぶ。図6において矢印で示す)が、SDS画分に移行していることが明らかとなった。
この結果、Dホルデイン発現抑制ベクターを導入することによって起こるゲルタンパク質の減少は、Dホルデインが減少することのみによるのではなく、他のゲルタンパク質を構成するタンパク質(少なくとも、GSタンパク質を含む)も同時にgel画分から除かれることにより生ずると考えられる。
[実施例6]導入形質の後代への伝達
上記実施例に記載した導入形質が、後代に伝達されるか検討した。Dホルデインが減少したT2種子7粒より、ゲルタンパク質を抽出、定量した結果、穀粒1gあたり平均16.9mg(±1.48)のゲルタンパク質が抽出された。このゲルタンパク質量は、Dホルデインが減少した親のT1種子の場合と、ほぼ同程度の含量であり、ゲルタンパク質減少という形質について、後代に安定して伝達されることが明らかになった。
産業上の利用可能性
本発明により、麦汁濾過性や麦汁エキス量と関連性が高いとされるゲルタンパク質を約40%減少させたオオムギが、容易にかつ効率よく作製できることが明らかとなった。本発明を用いれば、従来、交配育種法や突然育種法などで必要であった時間、労力の軽減が可能であるうえ、それらに必要であった育種圃場や放射線照射装置などを使用しなくとも、ゲルタンパク質低減オオムギを得ることが可能である。
【配列表】
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Claims (6)

  1. オオムギの内在DホルデインRNAと相補するアンチセンスRNAが生成し得るように、オオムギ内で作動するプロモータの下流に配列番号1又は2に記載の塩基配列が逆向きに連結されているDホルデイン発現抑制核酸をオオムギに導入して、Dホルデインタンパク質の産生を抑制しゲルタンパク質量を低減することを特徴とする、オオムギからのタンパク抽出時にゲル状に凝集し得るゲルタンパク質が低減されたオオムギを作出する方法。
  2. オオムギの内在DホルデインRNAと相補するアンチセンスRNAが生成し得るように、オオムギ内で作動するプロモータの下流に配列番号1又は2に記載の塩基配列が逆向きに連結されていることを特徴とするDホルデイン発現抑制核酸。
  3. 請求項2に記載のDホルデイン発現抑制核酸を含むベクター
  4. Dホルデイン発現抑制核酸の近傍に選択可能なマーカーを発現し得る選択マーカー発現カセットが備えられていることを特徴とする請求項3に記載のベクター。
  5. 請求項2に記載のDホルデイン発現抑制核酸若しくは請求項3又は4に記載のベクターを含み、Dホルデイン発現抑制核酸又はベクターをオオムギに導入し、オオムギのゲルタンパク質を低減させることを特徴とする、ゲルタンパク質低減オオムギ作出キット。
  6. 請求項1に記載のゲルタンパク質低減オオムギの作出方法又は請求項5に記載のゲルタンパク質低減オオムギの作出キットにより作出され、請求項2に記載のDホルデイン発現抑制核酸を含むオオムギ。
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