JP3754280B2 - セクタアンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、セクタアンテナに関し、特に、同一平面上で仮想円周に沿ってほぼ等間隔で配置された複数の指向性アンテナを有するセクタアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のセクタアンテナは、無線LAN等の高速伝送を行う無線システムにおいて重要な構成要素となっており、例えば、特開平7−131845号公報において、自動車電話および携帯電話等の移動端末との通信システムに使用される基地局送受信装置の例が述べられている。これらの無線LANシステムにおいては、図8に示されるような構成が採用されている。すなわち、基地局510,520は、相互に有線ラインLNによって接続され、それぞれのサービスエリア内の移動端末511,512,513;521,522と無線回線にて接続される。この場合に、これらの基地局送受信装置にはセクタアンテナが用いられている。
【0003】
このような基地局送受信装置に使用されるセクタアンテナとしては、例えば、3セクタ、6セクタ、12セクタのものがよく知られているが、そのうちの12セクタのものが図9に示されている。図9に示されたセクタアンテナ900は、導体からなる円盤191の上に半径方向外側に向かって延びる12個のリフレクタ192が配置され、リフレクタ192の一端は中心近くの環状部193によって接続されている。2つのリフレクタ192と環状部193とで囲まれた部分の環状部193に近いところにアンテナ素子194が配置されている。したがって、2つのリフレクタ192と環状部193とアンテナ素子194とが1組の指向性アンテナを形成している。
【0004】
上述した従来のセクタアンテナは、不要な反射波や妨害波を受信しないような良好な特性を有しているが、3次元形状を有しているために組み立て工数が多くかかり、コスト高となる問題がある。また、ミリ波等の非常に高い周波数の信号を扱う場合には、その波長が短いためにアンテナ素子の寸法精度が非常に高いことが要求される。例えば、60GHzの信号の波長は5mmであり、図10に示されたセクタアンテナを構成する場合、アンテナ素子194の長さを1/4波長とすると、1.25mmとなり、機械加工については1/100mm程度の精度を確保しなければならず、機械加工は容易でなく、ひいては、コスト高をまねくこととなる。
【0005】
そこで、従来のような機械加工を行わないで誘電体基板の上に複数の指向性アンテナ(例えば、パッチアンテナ)を有するセクタアンテナが特願平11−204660号において、複数の指向性アンテナであるキャビティ付きスロットアンテナを使用したセクタアンテナが特願平11−204661号においてそれぞれ提案されている。このように提案されたセクタアンテナは、プリント基板の製造方法を応用することで、製作コストを低減し、加工精度を容易に上げることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特願平11−204660号および特願平11−204661号において述べられたセクタアンテナは、例えば、図10に示されるセクタアンテナ901のように、放射方向が半径方向でその半径方向の中心に向くようにバックワード励振が行われた場合、励振された指向性アンテナの放射方向に非励振の指向性アンテナが存在するとともに、両アンテナの相互結合は大きいために、非励振の指向性アンテナの影響により、励振される指向性アンテナの放射特性が劣化するという問題がある。
【0007】
この発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであって、同一平面上に複数の指向性アンテナを有するセクタアンテナにおいて、これらの指向性アンテナのいずれかが励振されるとき、他の指向性アンテナとの結合が小さく、結合による悪影響を受けないセクタアンテナを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するために、この発明は、同一平面上で仮想円周に沿ってほぼ等間隔で配置された複数の指向性アンテナを有するセクタアンテナにおいて、各指向性アンテナのビーム方向は、各指向性アンテナの中心における仮想円周に対する接線方向よりも仮想円周の中心に近付くように設定され、且つそれぞれの放射パターンのビーム方向が隣接する他の指向性アンテナのヌルを向くように配置されている。
【0009】
このような構成によれば、各指向性アンテナが放射するビームの方向に存在する隣接する他の指向性アンテナとの結合が極めて小さいことにより、各指向性アンテナは、他の指向性アンテナとの結合による悪影響を受けることが極めて小さく、放射特性を劣化させることがない。また、指向性アンテナ同士を近接させても放射特性が劣化しないことから小型化が容易になる。
【0010】
そして、この発明の実施の形態では、セクタアンテナ100は、誘電体基板60を使用してその表面上における仮想円周CRに沿ってほぼ等間隔で配置された複数の指向性アンテナ10,20,〜,50を有する。この場合、各指向性アンテナ10,20,〜,50は、それぞれのビーム方向D1,D2,〜,D5が半径方向に対して、鋭角である角度δ1,δ2,〜,δ5を有することにより、ビーム方向にあって隣接する指向性アンテナの放射パターンのヌル方向と一致するように配置されている。
【0011】
また、この発明において、前記各指向性アンテナは、アレー状に配置された複数のスロット素子から構成されている。したがって、形状が単純になり、形状設定が容易である。
【0012】
また、この発明において、前記指向性アンテナは、誘電体基板にエッチング形成されている。したがって、従来のプリント基板の製造技術を用いて容易に精度よく形成することができる。
【0013】
さらに、前記指向性アンテナは、バックワード励振される。このことは、小型化に有利である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。図1は、この発明のセクタアンテナの実施の形態の構成を示す平面図、図2は、図1のセクタアンテナにおける各指向性アンテナのビーム方向を説明する図、図3は、誘電体基板を使用したキャビティ付きの指向性アンテナの単体の構成例を示す図、図4(a)は、図3の指向性アンテナの放射パターンの垂直面における特性を示す図、図4(b)は、図3の指向性アンテナの放射パターンの円錐面における特性を示す図、図5は、図3で示される形式の指向性アンテナを5組用いたセクタアンテナを示す平面図、図6は、図5のセクタアンテナの隣接する2つの指向性アンテナにおける反射特性と伝送特性とを示すグラフ、図7(a)は、図5の指向性アンテナの放射パターンの垂直面における特性を示す図、図7(b)は、図5の指向性アンテナの放射パターンの円錐面における特性を示す図である。
【0015】
図1のセクタアンテナ100は、同一平面の上で仮想円周CRに沿ってほぼ等間隔で配置された5組の指向性アンテナ10,20,〜,50を有する。指向性アンテナ10,20,〜,50は、それぞれアンテナ素子11,12,13,14;21,22,23,24;〜;51,52,53,54を有している。この例の場合、指向性アンテナ10,20,〜,50の中心C1,C2,〜,C5は、仮想円周CRの上にある。指向性アンテナ10,20,〜,50のビーム方向(バックワード励振)は、矢印D1,D2,〜,D5で示されるように、指向性アンテナ10,20,〜,50の中心C1,C2,〜,C5における仮想円周CRに対する接線方向よりも仮想円周の中心CCに近付くように、すなわち、半径方向に対して鋭角な角度δ1,δ2,〜,δ5(全ての条件が同一であればδ1,δ2,〜,δ5は同一のδである)を有している。
【0016】
そこで、角度δ1,δ2,〜,δ5について説明する。上述の指向性アンテナ10,20,〜,50が励振されたとき、指向性アンテナ10,20,〜,50は、それぞれ図2の主ビームBM1,BM2,〜,BM5を有するような放射パターンを発生させる。この場合、図2を見やすくするために、放射パターンを対応する指向性アンテナと重ねずに、各指向性アンテナの外側に図示している。一般にアンテナの放射パターンは、主ビームとサイドローブとを有し、主ビームとサイドローブとの間には利得の極めて小さい“ヌル方向”が存在する。これらの主ビームBM1,BM2,〜,BM5は、半径方向に対して角度δ1,δ2,〜,δ5を有することにより、これらの主ビームが形成される方向にある隣接する指向性アンテナのビームの“ヌル方向”を向くように設定されている。例えば、指向性アンテナ10が発生するビームBM1のビーム方向は、指向性アンテナ50が励振された場合に発生するビームBM5の“ヌル方向”に向けられている。
【0017】
各指向性アンテナ10,20,〜,50は、上述したように配置されているので、例えば、指向性アンテナ10が励振され、指向性アンテナ50が励振されない場合、指向性アンテナ10と指向性アンテナ50との間の結合は極めて小さいから、指向性アンテナ10は、指向性アンテナ50との結合による悪影響を受けることが極めて少なく(他方、指向性アンテナ50は、指向性アンテナ10から放射される電磁界の影響を受けるのが極めて少ない)、放射特性が劣化する恐れがない。換言すれば、励振された指向性アンテナ10からは、励振されていない指向性アンテナ50は、電気的に見えない配置となっている。これらのことは、指向性アンテナ10,20,〜,50の相互の距離が相当に近くても効果があるので、セクタアンテナ100の全体を小型に形成することが可能である。図1および図2で示されたセクタアンテナ100の場合、各主ビームBM1,BM2,〜,BM5は、正5角形の一辺をなすような放射パターンを有しており、加工上および小型化等に有利であるが、隣接する指向性アンテナとの関係が“ヌル方向”を向くという上述の関係を有しておれば、正5角形の関係に制限されるものではないということは言うまでもない。
【0018】
上述のセクタアンテナ等に使用するために単体の指向性アンテナをキャビティ付きスロットアンテナで構成した具体的な例について図4を参照して説明する。図4の単体の指向性アンテナは、動作周波数が19.5GHzである場合に対応して設計されている。誘電体基板60の上面には直線的にストラップ形状で延びるスタブ70が形成されている。誘電体基板60の下面には、グランドプレート80として導体層が形成され、その導体層にはその導体層を部分的に除いたスロット#1〜#n(ただし、この例では“n”は4)が形成されている。これらは、現状のプリント基板の製造方法を応用することで、製作コストを低減し、容易に精度よく形成されることは明らかである。グランドプレート80の下にはキャビティ90が配置される。この場合、指向性アンテナは、以下の条件で形成される。
【0019】
上述の条件は、図3に示されるパラメータに対応して
εr=2.17, d=0.38mm, wf=1.2mm
lf=2.8mm, ws=1mm, lc=22.5mm
wc=7.5mm, dc=1mm
また、スロット#1〜#nに関して、
n ls[mm] os[mm]
1 6.30 3.10
2 6.30 3.00
3 6.50 3.10
4 6.70 3.30
である。
【0020】
このように形成された指向性アンテナの放射パターンを測定すると図4(a)および図4(b)のような特性を有することが分かる。これらの図において、実線で示されているのが実際の測定結果であり、点線で示されているのが計算による理論値である。図4(a)に示される垂直面パターンにおいては、θがほぼ60度を向いていることが分かる。また、θをこの角度に固定したときの図4(b)に示される円錐面パターンにおいては、φに関する半値角がほぼ79度であることが分かり、これによって5セクタを有するセクタアンテナに適合していることが分かる。そこで、図1で示される指向性アンテナ10,20,〜,50の位置に、上述のような条件で形成したものを指向性アンテナ10a,20a,〜,50aとして配置したのが図5に示されるセクタアンテナ200である。この場合、スタブ70の一端が給電点にされている。この場合、誘電体基板の大きさは、直径62mmのもので充分である。
【0021】
図5のセクタアンテナ200は、指向性アンテナ10a,20a,〜,50aを有するが、例として、指向性アンテナ10aと指向性アンテナ50aとの間の反射特性SRと伝送特性STとを測定すると、その結果は、図6の実線および点線のように示される。すなわち、19.5GHz付近において反射特性SRが小さくなっており、また、伝送特性STも同周波数帯において−40dB以下の極めて小さな値をとり、隣接する指向性アンテナ間で相互結合が非常に小さいことが分かる。また、図5のセクタアンテナ200の指向性アンテナ10aを励振したときの放射パターンを測定すると、図7(a)および図7(b)のような特性を有することが分かる。すなわち、図3の単体の指向性アンテナが有する図4(a)および図4(b)で示されるのとほぼ同様な特性を有することが分かる。
【0022】
上述のことから、一例として図3の単体で示される指向性アンテナを図1に従って5組配置すれば、各指向性アンテナの放射パターンで示される放射特性が劣化するのを防止することができることが分かる。また、誘電体基板を用いてセクタアンテナを構成する場合に、図10のような従来の形式のものであって、各指向性アンテナを4つのアンテナ素子で構成しようとすれば、直径90mmの誘電体基板を要する。しかし、本発明による図5のようなセクタアンテナであれば、既に述べたように直径62mmで充分であり、小型化に有利である。このことは、特に、ミリ波による高速無線伝送システムにおいて安価で特性のよいセクタアンテナを提供できることとなる。したがって、この発明のセクタアンテナは、目的に合った極めて良好な特性を有したものであることが分かる。
【0023】
【発明の効果】
この発明は以上において詳述したように構成されていることにより、複数の指向性アンテナを含むセクタアンテナにおいて、各指向性アンテナの放射方向は、影響し合うべき指向性アンテナの“ヌル方向”を向いているので、何れかの指向性アンテナが励振されたときに、他の指向性アンテナとの結合が小さく、結合による悪影響を受けることがないので、放射特性を劣化させることがない。また、このように各指向性アンテナが近接しても、各指向性アンテナが悪影響し合うことが少ないから、バックワード励振とともに小型化を容易にしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のセクタアンテナの実施の形態の構成を示す平面図である。
【図2】図1のセクタアンテナにおける各指向性アンテナのビーム方向を説明する図である。
【図3】誘電体基板を使用したキャビティ付きの指向性アンテナの単体の構成例を示す図である。
【図4】(a)は、図3の指向性アンテナの放射パターンの垂直面における特性を示す図である。(b)は、図3の指向性アンテナの放射パターンの円錐面における特性を示す図である。
【図5】図3で示される形式の指向性アンテナを5組用いたセクタアンテナを示す平面図である。
【図6】図5のセクタアンテナの隣接する2つの指向性アンテナにおける反射特性と伝送特性とを示すグラフである。
【図7】(a)は、図5の指向性アンテナの放射パターンの垂直面における特性を示す図である。(b)は、図5の指向性アンテナの放射パターンの円錐面における特性を示す図である。
【図8】従来の無線LANシステムを示すブロック図である。
【図9】図9の無線LANシステムにおいて使用される送受信アンテナの構成を示す斜視図である。
【図10】誘電体基板の上にプリント基板の製造技術を用いて平面的に形成されたセクタアンテナの従来例を示す図である。
【符号の説明】
10,20,〜,50;10a,20a,〜,50a 指向性アンテナ
11,12,〜,54 アンテナ素子
60 誘電体基板
70 スタブ
80 グランドプレート
90 キャビティ
100,200 セクタアンテナ
Claims (4)
- 同一平面上で仮想円周に沿ってほぼ等間隔で配置された複数の指向性アンテナを有するセクタアンテナにおいて、
各指向性アンテナのビーム方向は、各指向性アンテナの中心における仮想円周に対する接線方向よりも仮想円周の中心に近付くように設定され、且つそれぞれの放射パターンのビーム方向が隣接する他の指向性アンテナのヌルを向くように配置されていることを特徴とするセクタアンテナ。 - 前記各指向性アンテナは、アレー状に配置された複数のスロット素子から構成されている請求項1記載のセクタアンテナ。
- 前記指向性アンテナは、誘電体基板にエッチング形成されている請求項2記載のセクタアンテナ。
- 前記指向性アンテナは、バックワード励振される請求項2または3記載のセクタアンテナ。
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