JP3748304B2 - 重水素の濃縮度算出決定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然等に存在するジュウテリウム及びトリチウムの重水素を濃縮するために使用する電解濃縮方法に関するが、詳しくは従来の電解停止作動による濃縮液量を解消して電解毎に一定量の濃縮液体容量が得られるようにした重水素濃縮度の算出決定方法とその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近は、原子力発電所の安全性の判断、地殻変動の予測、温泉地下水系の測定等の分野において、天然水中の重水素、特にトリチウムの分析が重要になってきている。このトリチウム濃度は、極低レベルであるために測定精度の向上のため電解濃縮することが一般的である。従来から一般的に行われている重水素の電解濃縮は、電解質を溶解させた試料溶液を調製して板状の平板を向かい合わせて電解する方法が知られている。
【0003】
すなわち、電解液中に含まれる水にはH2 Oの他にHDOやHTOがあり、これらは通常の水電解にしたがって水素と酸素とに分解されるが、同位体効果によりH2 Oの分解がHDOやHTOの分解に対して優先して電解液中のジュウテリウムやトリチウムの濃度が上昇し濃縮が行われる。この電解に使用する陽極としては、ニッケルが又陰極としては鋼、鉄及びニッケル等が使用され、これらの電極を研磨洗浄し希薄苛性ソーダを支持塩として重水を含む水の溶液に添加し、調製した試料水を容器に入れ通電して電解が行われている。その際、電流密度を1〜10A/dm2 程度にして発熱による水の蒸発を防止するために液温を5℃以下に維持しながら、通常液量が10分の1以下になるまで電解を継続して重水素の濃縮が行われていた。
【0004】
しかし、この従来の重水素濃縮法には、▲1▼電解質を重水に溶解して試料水を調製する手間が掛かること、▲2▼電解質等の影響による電極表面の変質のために分離係数が変動しやすいこと、▲3▼発生した水素及び酸素がそれぞれ対極を覆うことにより電解効率の低下を招きやすいこと、▲4▼また水素及び酸素が爆鳴気となり爆発しやすいことなどの問題点があった。
【0005】
そこで最近、これらの問題点を解決するために本願出願人が重水素の濃縮方法及び装置(特開平8−26703号)を開発して開示した。
この改良発明は、従来の電解による重水素濃縮では発生する水素ガス及び酸素ガスが混合して爆発が起こりやすいという問題点があったので、これらの問題点を解決した重水素濃縮装置及び方法を提供することを目的として開発し、その構成は図4に示すように陽極25及び陰極26をイオン交換膜27に好ましくは密着させた本体24から成る重水素濃縮装置を設け、この装置により発生ガスが対極を覆うことがなくかつイオン交換膜27のイオン交換基が電解質として機能するため、支持塩の添加が不要になって支持塩による電極の劣化を防止させることができる。すなわち、この改良発明はイオン交換膜により陽極室と陰極室に区画されかつ重水素を含む水である電解液が充填された電解槽に通電して、前記電解液を電解し水素及び酸素を発生させることにより前記重水素を濃縮することを特徴とする重水素の濃縮方法であり、また重水素を含む水である陽極液が充填された陽極室、重水素を含む水である陽極液が充填された陽極室、該両極室を区画するイオン交換膜及び両電極への給電体を含んで成る重水素の濃縮装置の提供にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この重水の濃縮度を算出するためには電解毎に投入した液量及び電解終了後の濃縮液量を知る必要がある。従って、かかる従来からの重水素電解濃縮においては、計時装置あるいは積算電流計を利用して積算電流量によって停止作動を行なう方法であり、一定値に設定した積算電流量によって電解を停止させても濃縮液量は電解濃縮毎に変動するために電解終了後に濃縮液量を実測しなければならない欠点があった。この欠点を解決するところに、本発明が解決しようとする課題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の如き課題を解決するために開発したものであって、重水素を含む水である陽極液が充填されている陽極室と、重水素を含む水である陰極液が充填されている陰極室と、両極室を区画するイオン交換膜及び両電極への給電体を含有して成る重水素の濃縮装置において、前記重水濃縮装置に水平器及び水平調節ネジを介して電解濃縮を一定の水平値に設定し、かつ水検出器を介して一定液量に達したときに電解電源が停止する電解自動停止装置を備えたことを特徴とする重水素の濃縮度算出決定装置の提供にあり、また前記電解自動停止装置が電解により電解液が減容して一定値に達したことを電解液水位から直接検出し、該検出によって電解電流を停止させる重水素の濃縮度算出決定装置の提供にある。
【0008】
すなわち、本発明の課題を解決する手段は、従来の電解停止作動による濃縮液量の変動を解消して電解毎に一定量の濃縮液体容量を得ることによって計測作業を簡易化するため、水検出器により目標とする電解液水位を直接検出して電気信号を電解電源装置の制御端子あるいは継電器に伝えることによって、電解電流を停止させる濃縮度算出決定装置を提供するところにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水検出器としては、電気接点をはじめ光の屈折率あるいは透過率、誘電率、電気伝導度、密度等液体と気体の物性の違いを検出する多くの種類があるが、いずれを用いても良くこれらの検出器を電解電源の制御端子又は継電器に直結あるいは電気回路を通して接続することで、液体が検出されなくなったときに電解電源を停止させるスイッチの役割を果している。また水検出器によって検出された水位が、電解濃縮毎に一定の液体容量となるように装置の架台には水平調節ネジと気泡式水平器とが備えてある。
【0010】
【実施例】
以下、図面によって本発明の実施例を説明する。
実験方法
(1)既知濃度の低レベル標準トリチウム水を以下に述べる電解装置で濃縮し、その濃縮前後のトリチウム量を液体シンチレーションカウンタで計測した。
【0011】
(2)初期水量を変化させてトリチウム濃縮倍率を測定し、x軸に初期水量、y軸にトリチウム濃縮度をとった両対数座標にプロットすると測定値は傾きA、切片Bの直線に乗る。そして、得られたプロットから最小自乗法により装置定数A、Bを決定した。
【0012】
(3)この装置定数を使って初期濃度を算出して標準濃度と比較することで濃縮による誤差を調べた。
電解装置
図1に示すように試料水の循環性を向上させるために、試料容器の蓋には凝縮した水滴が滴下しやすいように中心に向かって傾斜をつけた。また、ガス抜き用チューブの接続位置を試料容器の下側に設けて、試料水が少なくなっても電極部と試料容器の間で水が循環しやすいようにした。また、電解停止水位を検出するために水位センサ、気泡式水平器及び水平調整ネジを取付けた。
【0013】
制御回路
従来の電解制御は、電解電流の積算値が設定値に達したら電解電源を停止する仕組みであった。この制御機構には、積算電流計リレーあるいは外部制御機能付きの電解電源及び制御用のパソコンなどが必要であった。
【0014】
この電解制御回路を図2に示す。電解に用いたスイッチング電源は、TDK社のRM05−20RGB型で定電流出力電圧垂下方式自動復帰型で制御端子付きである。過電流検出機能を利用して定電流電源として用い、更に出力電力値が27Aとなるように電源の調整用半固定抵抗を調節した。
【0015】
また、使用した水位センサは、プリズムレンズ付フォトリフレクタに類するものでタカギ社(北九州市小倉南区)の#72H型である。このセンサは、発光ダイオード(図中LED)及びフォトトランジスタ(図中Ph−Tr)を並べて一つのモジュールにした半導体素子にプリズムを組み合わせた構造となっている。この水位センサのLED点灯用電源として、ACアダプタ(DC出力3−9V、10mA以上)を用いた。抵抗R2 は、LEDを安定に動作させるためのものである。このLEDの赤外光は、屈折率の違いから液体に対してはプリズムを通過してPh−Trを高抵抗状態にする。一方、気体に対してはプリズムで反射してPh−Trを導通状態にする。
【0016】
このPh−Tr部を電解電源の制御端子に結線すれば、試料水の水位がセンサ位置より低くなったときだけ電解電流は停止することになる。
電解操作
試料水(初期濃度、Ti Bq/kg)を蒸留し、400−1000gをビーカにとって計量(初期水量、Vi g)して洗浄済の電解セルに入れた。そして、センサに検出される水量が毎回同じ水位となるように、電解装置の水平調整ネジを調整した。更に、装置に水素ガス用の排気チューブ、電気配線を結線して冷却器の温度が−0.1−1.0℃の設定値に達してから電解を開始した。なお、電解が終了したら電解セルから濃縮水を取り出して蒸留した後に液体シンチレーション計測した。
【0017】
実験結果
(1)装置定数については初期水量に対してトチウム濃縮倍率を両対数プロットし、最小自乗法で決定したもので直線の傾きはA=0.93、切片はB=−1.39、相関係数はr=0.999であった。
(2)また、電解セルの性能としては本実験では濃縮による誤差が1%以下で あった。
【0018】
実験結論
(1)SPE電解装置に水位センサを取付け、試料水が一定量にまで電解されたときに自動停止する機能を持たせた。これによって、濃縮水量の計量操作を省略して実験操作を更に簡略化することができた。
【0019】
(2)自動停止機能を生かして、濃縮前水量及び濃縮水濃度だけから試料水濃度を決定する手法を開発した。その結果、正確に行うことが困難であった濃縮水量の測定が回避できて環境試料水のトリチウム濃縮法として十分な精度が達成できた。
【0020】
(3)以上のような、SPE電解装置の利点である達成可能な濃縮倍率の大きさ、操作の簡易性及び安全性、電解時間の短縮に加えて精度の向上が達成できるので、環境水の分析用途として実用価値が更に高くなったものといえる。
【0021】
更に、図1乃至図3を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明に係わる重水濃縮の電解自動停止装置の一例を示したものであって、電解自動停止装置を重錘濃縮装置に組み込んだ状態を示した概要図であり、図2はその電解自動停止装置を示したものである。なお、図1に図示されている重水濃縮装置は、本願出願人が開発して開示(特開平8−26703号)されている基本構造と同じであるので説明を省略し、その特徴の構造と作用について説明する。
【0022】
まず、測定の試料水Aをビーカにとり計量した後に試料容器2aあるいは2bに入れる。2aの水と2bの水は、電解装置10の小穴で通じている。この電解電源13と電解電極を結線して電解濃縮を開始する。その結果、電解によって水が水素ガスと酸素ガスとに分解されて試料水Aは減容していった。次いで、試料水Aとが水検出器11に達したところで電解電源13は停止及び両開動作を交互に繰り返し、最終的には一定水容量で完全停止の状態となった。
【0023】
また、測定の試料水Aとして既知濃度のトリチウム水(トリチウム濃度3.7−7.7Bq/kg)400−1000ミリリットルで実験を行ったところ、トリチウム濃縮倍率はそれぞれ11−25.4となった。この関係を両対数グラフに実験点数9をプロットしたところ、傾き0.93、切片−1.39、相関係数0.999の直線関係が得られた。
【0024】
また、重水の濃縮倍率と水量の減容倍率の理論式において、電解終了後の液量を一定値としたときの関係式から電解終了後の液量31ミリリットル及びトリチウム分離係数14.3が算出された。この直線関係における傾き及び切片を装置定数として使用すると、電解装置10に投入した試料水量だけからトリチウム濃縮倍率を決定できることになり、更にこのトリチウム濃縮倍率の値からの偏差は1パーセント以下となり、低濃度トリチウム水の濃縮測定法として有効であることが明らかとなった。
【0025】
このように予め装置定数を決定しておいて、未知の試料水を本装置を利用して電解濃縮すれば、投入した試料水量の計測値だけから重水濃縮度を算出することが可能である。なお、この解析法は実験操作が簡易なだけではなく電解終了後の液量を正確に計測することが困難な電解濃縮においても測定精度の向上には役立つものである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の構成は、重水素を含む水である陽極が充填されている陽極室と、重水素を含む水である陰極液が充填されている陰極室と、両極室を区画するイオン交換膜及び両電極への給電体を含有して成る重水素の濃縮装置において、前記重水濃縮装置に水平器及び水平調節ネジを介して電解濃縮を一定の水平値に設定し、かつ水検出器を介して一定液量に達したときに電解電源が停止する電解自動停止装置を備えたことを特徴とする重水素の濃縮度算出決定装置であり、また前記電解自動停止装置が電解により電解液が減容して一定値に達したことを電解液水位から直接検出し、該検出によって電解電流を停止させる重水素の濃縮度算出決定装置であるから従来装置に対比して次のような多くの特徴を有する。
安全性:爆発性ガスが発生しないこと。試薬を必要としないこと。
実験操作性:簡単容易(操作時間2/7に短縮)であること。
濃縮倍率:上限12倍から無制限になること。
電解時間:3/8に短縮できること。
分析精度:環境濃度の測定としては十分であること。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる電解自動停止装置を重水濃縮装置に組み込んだ一例を示した説明概要図。
【図2】 図1に示した電解自動停止装置の制御回路図。
【図3】 本発明のSPE電解方法による実験フローチャート図。
【図4】 従来の重水素濃縮装置を示した概要断面図。
【図5】 従来のアルカリ水溶液方法による実験フローチャート図。
【符号の説明】
1 重水濃縮装置 2a、2b 試料容器
4 アルミニウムブロック 5 冷却器
6 制御器 7 センサー
9 水平調節ネジ 10 電解装置
11 水検出器 12 水平器
13 電解電源 21 重水素濃縮装置
22 冷却水 23 恒温槽
24 本体 25 陽極
26 陰極 27 イオン交換器
29、30 給電体 34 試料水
Claims (2)
- 重水素を含む水である陽極液が充填されている陽極室と、重水素を含む水である陰極液が充填されている陰極室と、両極室を区画するイオン交換膜及び両電極への給電体を含有して成る重水素の濃縮装置において、前記重水濃縮装置に水平器及び水平調節ネジを介して電解濃縮を一定の水平値に設定し、かつ水検出器を介して一定液量に達したときに電解電源が停止する電解自動停止装置を備えたことを特徴とする重水素の濃縮度算出決定装置。
- 前記電解自動停止装置が、電解により電解液が減容して一定値に達したことを電解液水位から直接検出し、該検出によって電解電流を停止させる請求項1記載の重水素の濃縮度算出決定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP32740296A JP3748304B2 (ja) | 1996-12-09 | 1996-12-09 | 重水素の濃縮度算出決定装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32740296A JP3748304B2 (ja) | 1996-12-09 | 1996-12-09 | 重水素の濃縮度算出決定装置 |
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JPH10167702A JPH10167702A (ja) | 1998-06-23 |
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Family Applications (1)
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JP32740296A Expired - Lifetime JP3748304B2 (ja) | 1996-12-09 | 1996-12-09 | 重水素の濃縮度算出決定装置 |
Country Status (1)
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-
1996
- 1996-12-09 JP JP32740296A patent/JP3748304B2/ja not_active Expired - Lifetime
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