JP3745972B2 - Steel material manufacturing method - Google Patents

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JP3745972B2 JP2001080328A JP2001080328A JP3745972B2 JP 3745972 B2 JP3745972 B2 JP 3745972B2 JP 2001080328 A JP2001080328 A JP 2001080328A JP 2001080328 A JP2001080328 A JP 2001080328A JP 3745972 B2 JP3745972 B2 JP 3745972B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、BおよびNを含有する鋼材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Fe−C系合金からなる鋼材料は最も一般的な金属材料の1種であり、特に、何らかの元素を含有する鋼材料は特殊鋼と指称され、構造用部材や工具、治具の原材料として広汎に使用されている。
【0003】
特殊鋼に含有される元素としては、Al、B、Co、Cr、Mn、Mo、N、Ni、Pb、S、V、Ti、Ta、WまたはZr等が挙げられ、これらは、所定の割合で含有されることにより鋼材料の特性を向上させる。例えば、40〜70ppm(重量割合、以下同じ)のBを含有するボロン鋼は、一般的な鋼材料に比して強度、硬度および靱性に優れる。また、Pbを含有する鋼は、切削加工を施すことが著しく容易な快削鋼として広く知られている。
【0004】
なお、鋼材料中におけるこれらの元素の存在状態は、元素によって異なる。ほとんどの元素は、鋼材料を構成するフェライト(α−FeとCとの固溶体)またはセメンタイト(Fe3C)との固溶体ないし化合物として存在するが、酸化物や硫化物等の非金属化合物、または金属間化合物として存在することもある。さらに、上記したPb快削鋼においては、Pbは、他の元素と結合することなくそれ自体で鋼材料中に存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鋼材料に圧延や鍛造等の各種の加工を施して所定の形状に塑性加工する最中には、焼き入れや浸炭、窒化等のいわゆる表面処理を施すことが一般的である。焼き入れは、鋼材料の表面を加熱してオーステナイト(γ−FeとCとの固溶体)を形成させた後に急冷してマルテンサイトを形成させるものである。また、浸炭、窒化は、鋼材料を加熱した後、該鋼材料の表面から内部に指向してCまたはNを浸透させるものである。このような表面処理により、該鋼材料の表面が硬化される。
【0006】
しかしながら、例えば、上記のボロン鋼には、焼き入れの最中に割れが生じ易いという欠点がある。勿論、割れが発生したものは製品として供することができない。換言すれば、ボロン鋼を焼き入れする場合、歩留まりの低下を招くという不具合が生じる。この理由は、鋼材料中に不純物として遊離状態で存在するごく微量のFe、C、Si、Ni、Mo等とBとが反応することによってFeB、Fe2B、Fe5SiB2、Ni43、MoFeB4、Mo2FeB2、B4C等の脆性材料が生成して鋼材料の結晶粒界に偏在し、このために焼き入れ時に鋼材料に発生する熱応力が大きくなるためであると考えられている。
【0007】
しかも、ボロン鋼には、ごく表面の強度、硬度および靱性は良好であるが、内部の上記諸特性は充分ではないという不具合がある。すなわち、鋼材料をホウ化する際にBが上記したような遊離元素と早期に反応してしまうので、Bを内部深くまで浸透(拡散)させることが困難であるからである。
【0008】
また、浸炭や窒化を行っても、CまたはNの表面からの拡散距離は通常0.1mm程度、最大でも0.25mmをやや超える程度である。すなわち、浸炭または窒化では、鋼材料の表面のごく近傍を硬化することはできるが、表面からの距離が0.3mmを超える内部を硬化することは著しく困難である。しかも、この場合、鋼材料の靱性が浸炭または窒化を行う前に比して低下してしまうという不具合がある。
【0009】
上記各種処理とは別に、特開昭53−142933号公報には、まず鋼材料を窒化処理し、その後、ホウ化処理する表面処理方法が提案されている。このような表面処理方法によれば、ホウ化処理の際、窒化処理を施さない場合に比して鋼材料の加熱温度を低くすることができ、したがって、ひずみのない製品を得ることができるとされている。
【0010】
しかしながら、同号公報に記載されているように、この表面処理方法においては、Fe−B−N系化合物が鋼材料のごく表面に形成されるのみである。すなわち、BまたはNが内部まで浸透しないので、鋼材料の諸特性を内部まで向上させることは困難である。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、強度、硬度および靱性に優れ、しかも、加熱に際して割れが生じ難く、このために高い歩留まりで製品を得ることが可能な鋼材料の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、重量割合で7〜30ppmのBと10〜70ppmのNとを含有し、BおよびNが、BN、Fe−C−B−N系ホウ窒化物、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体として拡散するとともにビッカース硬度で720以上である部位として定義される硬化深さが0.3mmを超える鋼材料の製造方法であって、
原料鋼をホウ素化合物で被覆または囲繞する工程と、
前記原料鋼を1100〜1750Kの温度範囲内で加熱しながら窒化ガスを流通して、BN、Fe−C−B−N系ホウ窒化物、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0013】
すなわち、鋼材料に含有されるBおよびNは、それぞれ、前記ホウ素化合物および前記窒化ガスを源として該鋼材料中に拡散したものである。そして、Bをこのような割合で含有する鋼材料は、Bを含有していない鋼材料に比して強度、硬度および靱性に優れる。また、Nを上記した割合で含有しているので、Bと鋼材料中に不純物として存在する遊離元素とが互いに反応することが著しく抑制される。このため、上記したような脆性材料が鋼材料中に生成することが抑制されるので、該鋼材料に割れが発生することを抑制することができる。
【0014】
要するに、本発明によれば、強度、硬度および靱性に優れ、しかも、割れが発生し難い鋼材料を簡便かつ容易に製造することができる。
【0015】
ここで、窒化の際の温度を1100〜1750Kとする理由は、1100K未満ではNがフェライトまたはセメンタイトと容易に結合してしまうのでNの重量割合が70ppmを超えるようになり、また、1750Kを超えるとBが原料鋼中のFe、Si、Ni、Mo等の遊離元素と優先的に結合して上記したような脆性のホウ化物が生成し、割れが発生し易い鋼材料となってしまうからである。
【0016】
原料鋼を加熱する手段の好適な例としては、高周波加熱装置を挙げることができる。高周波加熱装置は原料鋼を所定の温度まで短時間で上昇させることができるので、鋼材料の生産効率が向上するからである。
【0017】
この場合、原料鋼を筒状体の内部に収容し、かつ該筒状体の内部に窒化ガスを流通させた状態で原料鋼の窒化を行うことが好ましい。これにより窒化ガスを原料鋼に確実に接触させることができるので、高周波加熱装置を使用する場合であっても原料鋼を効率よく窒化させることができるからである。
【0018】
なお、原料鋼を被覆または囲繞するホウ素化合物の好適な例としては、六方晶BN(h−BN)またはB4Cを挙げることができる。これらは入手が容易であるので、鋼材料の製造コストの低廉化を図ることができるからである。
【0019】
また、窒化ガスとしてはN2ガスを使用することが好ましい。原料鋼に拡散させるべきNの量が著しく少ないので、活性が低いN2の方が原料鋼へのNの拡散量を容易に制御することができるからである。
【0020】
鋼材料中におけるBとNの一部は、六方晶BN(h−BN)または正方晶BN(c−BN)、さらにはFeおよびCとともに結合してFe−C−B−N系ホウ窒化物の状態で存在するが、大部分は、Feに固溶されたFe(B,N)系固溶体またはFeおよびCに固溶されたFe(C,B,N)系固溶体の状態で存在する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鋼材料の製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
まず、鋼材料につき概略説明する。本実施の形態においては、鋼材料は、フェライト、オーステナイト、ベイナイト(オーステナイトの冷却変態生成物)等に固溶され、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体の状態で存在するBとNとを含有する。なお、これらの固溶体中には、鋼材料に微量に含まれるSiやMn、P、S等がさらに固溶されていてもよい。
【0023】
Bは、ボロン鋼における場合と同様に、鋼材料の強度、硬度および靱性を向上させる成分である。そして、Bの割合は7〜30ppmに設定される。7ppm未満では上記の諸特性を向上させる効果に乏しく、また、30ppmを超えると鋼材料の靱性が低下してしまう。Bのより好ましい割合は、10〜20ppmである。
【0024】
Nは、鋼材料中に不純物として遊離状態で含有されたFe、Si、Ni、Mo等とBとの反応を抑制する成分である。すなわち、Nが存在する場合、Bとこれらの遊離元素とが互いに反応することが著しく抑制され、このため、FeB、Fe2B、Fe5SiB2、Ni43、MoFeB4、Mo2FeB2、B4C等の脆性材料が生成することが著しく抑制される。したがって、本実施の形態に係る鋼材料では、焼き入れをはじめとする加熱時に発生する熱応力が一般的なボロン鋼に比して著しく小さくなり、結局、割れが発生し難いものとなる。
【0025】
Nの割合は、10〜70ppmに設定される。10ppm未満では鋼材料の割れの発生を抑制する効果に乏しい。一方、70ppmを超えると、鋼材料の硬度が低下してしまうからである。
【0026】
鋼材料中におけるBとNは、上記したように、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体の状態で存在する。この場合、鋼材料は、BとNがh−BNまたはc−BNの状態で存在する鋼材料に比して優れた強度、硬度および靱性を示す。
【0027】
しかも、この場合、該BおよびNの拡散距離が著しく大きくなる。すなわち、BとNは、ボロン鋼や窒化された鋼材料に比して内部深くまで浸透する。Nが共存することによって、Bが鋼材料中の遊離元素と反応することが著しく抑制されるからである。具体的には、本実施の形態に係る鋼材料では、表面からの距離が30〜70mmを超える内部においてもNとBとが存在することがある。
【0028】
さらに、この場合、該鋼材料を構成する組織が該鋼材料の表面から内部にかけて緩やかに変化する。このため、該鋼材料を加熱する際に発生する熱応力が著しく小さくなるので、割れが著しく発生し難くなる。
【0029】
このように、この鋼材料においては、内部深くまでNとBとが拡散している。このため、該鋼材料の内部においても優れた強度、硬度および靱性を確保することができるとともに、割れが発生することを著しく抑制することができる。
【0030】
次に、本実施の形態に係る鋼材料の製造方法につき説明する。
【0031】
本実施の形態に係る鋼材料の製造方法のフローチャートを図1に示す。この製造方法は、原料鋼をホウ素化合物で被覆または囲繞する第1工程S1と、前記原料鋼を加熱窒化処理する第2工程S2とを有する。
【0032】
まず、第1工程S1において、原料鋼をホウ素化合物で被覆または囲繞する。
【0033】
具体的には、原料鋼をホウ素化合物で被覆する場合、原料鋼の表面にホウ素化合物からなるコーティング膜を形成する。コーティング膜は、例えば、キシレンやトルエン、あるいはアセトン等の溶媒にh−BN等のようなホウ素化合物が分散された溶液を原料鋼の表面に噴霧した後、前記溶媒を揮散除去することにより容易かつ簡便に形成することができる。または、化学的気相成長(CVD)法や物理的気相成長(PVD)法等によりコーティング膜を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、原料鋼をホウ素化合物で囲繞する場合、原料鋼を収容した坩堝内にB4C等のような粉末状ホウ素化合物を充填すればよい。
【0035】
次いで、第2工程S2において、前記コーティング膜が形成された原料鋼または粉末状ホウ素化合物に囲繞された原料鋼を加熱窒化処理する。この処理により原料鋼が窒化されるとともに、ホウ素化合物からBが拡散して原料鋼の表面から内部に指向して浸透する。勿論、原料鋼を窒化したNも原料鋼の表面から内部に指向して浸透する。その結果、上記した鋼材料が得られるに至る。
【0036】
原料鋼を窒化するための窒化ガスは、NH3、N2およびH2の混合ガス、NH3、N2およびArの混合ガスのようにNH3を含むガスであってもよいが、N2のみであることが好ましい。原料鋼に拡散させるNは上記したように重量割合で10〜70ppmと著しく少ないので、活性が低いN2の方が原料鋼へのNの拡散量を容易に制御することができるからである。
【0037】
ここで、窒化ガスは、温度が1100〜1750Kの範囲内であるときに導入する。1100K未満では、Nがフェライトやオーステナイト、ベイナイト等に容易に固溶されてしまうので、Nの重量割合が70ppmを超えるようになる。また、1750Kを超えると、Bが原料鋼中のFe、Si、Ni、Mo等の遊離元素と優先的に結合するので、上記したような脆性のホウ化物が生成し、結局、割れが発生し易い鋼材料となってしまう。なお、温度が上記範囲外の際には、Ar等の不活性窒化ガスを導入するようにすればよい。原料鋼の表面にコーティング膜を形成した場合には、真空引きを行うようにしてもよい。
【0038】
また、第2工程S2での加熱手段は特に限定されるものではないが、原料鋼を短時間で昇温することができ、このために鋼材料を効率よく製造することができるということから、高周波誘導加熱装置が特に好適である。この場合、原料鋼を筒状体の内部に収容し、かつ該筒状体の内部に窒化ガスを流通させた状態で原料鋼の窒化を行うことが好ましい。これにより窒化ガスを原料鋼に確実に接触させることができるので、高周波加熱装置を使用する場合であっても原料鋼を効率よく窒化させることができるからである。なお、筒状体としては、例えば、石英または黒鉛製のものを使用することができる。
【0039】
処理時間は、原料鋼の肉厚や体積に応じて設定されるが、加熱炉による加熱では概ね10分〜2時間、高周波誘導装置による加熱では概ね5秒〜5分とすれば充分である。処理時間を長くし過ぎると、BまたはNがそれぞれ30ppm、70ppmを超えるようになるので注意を要する。
【0040】
【実施例】
1.BおよびNの効果
原料鋼として、50mm×50mm×100mmの直方体のS50C(JIS規格)を用意した。キシレンにh−BNが分散された溶液をこの原料鋼の表面に噴霧し、室温で放置して乾燥することによりh−BNからなるコーティング膜を形成した。
【0041】
次いで、この原料鋼を加熱炉内に入れ、10K/分で1600Kまで昇温した後、1600Kで30分保持して加熱窒化処理することにより、BおよびNを含有する鋼材料を得た。これを実施例1とする。なお、温度が1200Kとなるまでは加熱炉内を真空引きし、1200Kに到達した直後からN2を導入した。
【0042】
この実施例1の鋼材料におけるBおよびNの重量割合を吸光光度分析法にて定量分析したところ、それぞれ、17ppm、20ppmであった。
【0043】
また、上記と同一寸法の原料鋼を用意し、この原料鋼をB4Cの粉末が充填された坩堝内に圧入して該原料鋼をB4Cの粉末で囲繞した。
【0044】
この状態で原料鋼を坩堝ごと加熱炉内に入れ、実施例1と同様の条件下で加熱窒化処理して鋼材料を得た。これを実施例2とする。なお、実施例2の鋼材料では、BおよびNの各重量割合は18ppm、50ppmであった。
【0045】
さらに、直径10mm×長さ30mmの円柱状の原料鋼に対して火炎焼き入れを行ったものを用意した。これを比較例1とする。なお、比較例1の鋼材料にはBおよびNは検出されなかった。
【0046】
これら実施例1、2および比較例1の各鋼材料につきビッカース硬度を測定したところ、比較例1の鋼材料の表面における値は640であった。これに対し、実施例1、2の各鋼材料におけるビッカース硬度は、図2に表すように、一側面から他側面に亘って比較例1の表面に比して80〜100程度高い値を示した。この結果から、BおよびNを含有することにより鋼材料の硬度が向上することが明らかである。また、実施例1、2の各鋼材料の硬度が略均一であることから、これら鋼材料においては、その表面から内部中央までBおよびNが拡散していることも諒解される。
【0047】
次に、実施例1、2および比較例1から引っ張り試験用の試験片と衝撃試験用の試験片とを切り出し、各試験片につき引っ張り強度とシャルピー衝撃値を測定した。結果を図3に示す。なお、シャルピー衝撃値が高いほど靱性が高いことを表す。この図3から、比較例1の鋼材料に比して実施例1、2の各鋼材料が引っ張り強度および靱性に優れるものであることが分かる。
【0048】
以上の結果から、BおよびNを含有させることにより鋼材料の硬度、強度および靱性を向上させることができることが明らかである。
【0049】
これらとは別に、原料鋼としてSCM430(JIS規格)を選定したことを除いては実施例1に準拠して鋼材料を得た。これを実施例3とする。
【0050】
また、真空引きを行いながら10K/分の昇温速度で1200Kまで昇温した後に1200Kで30分間保持し、さらに1500Kに到達した時点でN2ガスを導入して1650Kで30分間保持したことを除いては実施例3に準拠して鋼材料を得た。これを実施例4とする。
【0051】
さらに、1000cm3の水を溶媒とし、この中に115gのKCl、20gのBaCl2、7.5gのNaF、1gのB23、5gのフェロボロンが溶解されたソルト浴に実施例3、4と同一寸法のSCM430を2時間浸漬することにより該SCM430をホウ化した。これを比較例2とする。
【0052】
なお、以上の実施例3、4および比較例2の各鋼材料におけるBの重量割合を定量分析したところ、それぞれ、19ppm、21ppm、2ppmであった。
【0053】
そして、これら実施例3、4および比較例2の各鋼材料につき、表面から内部に指向してビッカース硬度を測定した。表面からの距離とビッカース硬度との関係を図4に併せて示す。この図4から、比較例2の鋼材料では0.05mmを超える深度ではビッカース硬度が激減しているのに対し、実施例3、4の各鋼材料では、0.3mmを超える深度でも硬度に優れていることが明らかである。また、この結果からも、実施例3、4の各鋼材料では比較例2の鋼材料に比して内部にまでBが拡散していることが諒解される。
【0054】
2.加熱窒化処理時間と鋼材料の諸特性との関係
原料鋼としてSKS3(JIS規格)を選定し、長さは一定として底面積を変化させた直方体を種々作製した。そして、1400Kに到達した時点でN2ガスを導入し、保持時間を種々変化させたことを除いては実施例1に準拠して各直方体にBおよびNを固溶させ、鋼材料を得た。このうち、底面の寸法が40mm×40mm以上の各鋼材料から引っ張り試験用の試験片と破壊靱性値(KIC)測定用の試験片とを切り出し、各試験片につき引っ張り強度およびKICを求めた。さらに、各鋼材料における表面のロックウェル硬度(Cスケール、HRC)を測定した。これらの測定結果を加熱窒化処理における保持時間および含有するBの重量割合とともに図5および図6に示す。
【0055】
これら図5、図6から、処理時間を設定することによって鋼材料の諸特性を制御することができることが分かる。
【0056】
3.割れの抑制について
図7に示す直径50mm×長さ200mmの円柱状のSCM420(JIS規格)を原料鋼10として用意した。キシレンにh−BNが分散された溶液をこの原料鋼10の表面に噴霧し、室温で放置して乾燥することによりh−BNからなるコーティング膜(図示せず)を形成した。そして、この原料鋼10の略中央部に、該原料鋼10の軸方向に直交する直径8mmの貫通孔12を設けた。
【0057】
次いで、一端部の近傍に複数個の孔部14が設けられた半ピース16a、16bをこの原料鋼10に装着することにより、図8に示すように、円筒状部材18を構成した。そして、孔部14を介してN2ガスを流通させ、かつ円筒状部材18を30rpmの回転速度で回転させながら、480V、48kW、周波数19kHzの条件下で、高周波加熱装置によって原料鋼10を加熱して鋼材料を作製した。加熱時間は10秒とした。これを実施例5とする。
【0058】
また、加熱時間を15秒または30秒としたことを除いては実施例5に準拠して鋼材料を得た。これらをそれぞれ実施例6、7とする。なお、実施例7において、原料鋼10および鋼材料につき定量分析を行ったところ、BおよびNは、原料鋼10では検出されず、一方、鋼材料では、それぞれ、17ppm、50ppmであった。
【0059】
比較のため、原料鋼10に対してコーティング膜を形成することなく高周波加熱装置にて焼き入れを行った。この場合、原料鋼10を大気中で30rpmの回転速度で回転させながら、460V、45kW、周波数19kHzの条件下で8秒間加熱した。これを比較例3とする。
【0060】
これら実施例5〜7および比較例3の各鋼材料につき割れの発生を調査したところ、比較例3では、10本の試料のうち6本に貫通孔12の周囲に割れが発生していることが確認された、一方、実施例5〜7では、合計40本の試料の全てにおいて、割れが発生していることは認められなかった。
【0061】
次に、これら実施例5〜7および比較例3の各鋼材料につき、表面から内部に亘ってビッカース硬度を測定した。表面からの距離とビッカース硬度との関係を図9に示す。
【0062】
この図9から、比較例3では、表面からの距離が2mm以上となると硬度が急激に低下すること、これに対し、実施例5〜7では、硬度は緩やかに減少していることが分かる。このことから、比較例3の鋼材料では組織が急激に変化し、一方、実施例5〜7の各鋼材料では組織の変化が緩やかであることが諒解される。このような組織を有する実施例5〜7の鋼材料では、比較例3の鋼材料に比して加熱時に発生する熱応力が著しく小さくなる。実施例5〜7において、割れが発生しない理由はこのためであると考えられる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る鋼材料の製造方法によれば、Bの作用によって優れた強度、硬度および靱性を示すとともに、Nの作用によって脆性材料が鋼材料中に生成することが抑制されるので加熱に際して割れが発生し難い鋼材料を容易かつ簡便に製造することができるという効果が達成される。このため、この鋼材料に対して加工を施して製品を得る際の歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る鋼材料の製造方法のフローチャートである。
【図2】実施例1、2の各鋼材料の一側面から他側面に亘るビッカース硬度を示す図表である。
【図3】実施例1、2および比較例1の各鋼材料から得られた試験片の引っ張り強度とシャルピー衝撃値を示す図表である。
【図4】実施例3、4および比較例2の各鋼材料における表面からの距離とビッカース硬度との関係を示すグラフである。
【図5】各鋼材料における加熱窒化処理時間と、Bの重量割合、表面のロックウェル硬度(Cスケール)、引っ張り強度および破壊靱性値との関係を示す図表である。
【図6】各鋼材料における加熱窒化処理時間と、Bの重量割合、表面のロックウェル硬度(Cスケール)、引っ張り強度および破壊靱性値との関係を示す図表である。
【図7】原料鋼と該原料鋼に装着する円筒状部材を構成する半ピースの概略全体構成説明図である。
【図8】図7の原料鋼に円筒状部材を装着した状態を示す概略全体構成説明図である。
【図9】実施例5〜7および比較例3の各鋼材料における表面からの距離とビッカース硬度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…原料鋼 12…貫通孔
14…孔部 16a、16b…半ピース
18…円筒状部材
[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for producing a steel material containing B and N.
[0002]
[Prior art]
Steel materials made of Fe-C alloys are one of the most common metal materials. In particular, steel materials containing some elements are called special steels and are widely used as raw materials for structural members, tools, and jigs. Is used.
[0003]
Examples of the elements contained in the special steel include Al, B, Co, Cr, Mn, Mo, N, Ni, Pb, S, V, Ti, Ta, W, and Zr. It improves the properties of the steel material. For example, boron steel containing 40 to 70 ppm (weight ratio, hereinafter the same) B is excellent in strength, hardness, and toughness as compared with general steel materials. Moreover, steel containing Pb is widely known as free-cutting steel that is extremely easy to cut.
[0004]
In addition, the presence state of these elements in steel materials changes with elements. Most of the elements exist as solid solutions or compounds of ferrite (solid solution of α-Fe and C) or cementite (Fe 3 C) constituting the steel material, but non-metallic compounds such as oxides and sulfides, or It may exist as an intermetallic compound. Furthermore, in the Pb free-cutting steel described above, Pb is present in the steel material itself without being bonded to other elements.
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
By the way, it is common to perform so-called surface treatments such as quenching, carburizing, and nitriding during various processing such as rolling and forging on the steel material and plastic processing into a predetermined shape. In the quenching, the surface of the steel material is heated to form austenite (solid solution of γ-Fe and C) and then rapidly cooled to form martensite. Carburization and nitriding are those in which C or N is permeated from the surface of the steel material toward the inside after the steel material is heated. By such surface treatment, the surface of the steel material is hardened.
[0006]
However, for example, the above boron steel has a drawback that cracking is likely to occur during quenching. Of course, a cracked product cannot be provided as a product. In other words, when boron steel is quenched, there arises a problem that the yield is reduced. This is because, FeB by Fe a trace amount be present in a free state as an impurity in the steel material, C, Si, Ni, and a Mo or the like and B react, Fe 2 B, Fe 5 SiB 2, Ni 4 B 3 because brittle materials such as MoFeB 4 , Mo 2 FeB 2 , and B 4 C are generated and unevenly distributed at the grain boundaries of the steel material, and this increases the thermal stress generated in the steel material during quenching. It is believed that.
[0007]
Moreover, boron steel has a very good surface strength, hardness, and toughness, but has the inconvenience that the above-mentioned various properties are not sufficient. That is, when the steel material is borated, B reacts with the free elements as described above at an early stage, so that it is difficult to penetrate (diffusion) B deep inside.
[0008]
Moreover, even if carburizing or nitriding is performed, the diffusion distance from the surface of C or N is usually about 0.1 mm, which is slightly over 0.25 mm at the maximum. That is, by carburizing or nitriding, it is possible to harden the very vicinity of the surface of the steel material, but it is extremely difficult to harden the interior whose distance from the surface exceeds 0.3 mm. In addition, in this case, there is a problem that the toughness of the steel material is lowered as compared with that before carburizing or nitriding.
[0009]
In addition to the above-mentioned various treatments, JP-A-53-142933 proposes a surface treatment method in which a steel material is first nitrided and then borated. According to such a surface treatment method, it is possible to lower the heating temperature of the steel material during boriding, compared to the case where nitriding is not performed, and thus it is possible to obtain a product without distortion. Has been.
[0010]
However, as described in the publication, in this surface treatment method, the Fe—B—N-based compound is only formed on the very surface of the steel material. That is, since B or N does not penetrate into the inside, it is difficult to improve various properties of the steel material to the inside.
[0011]
The present invention has been made to solve the above-described problems, and is excellent in strength, hardness, and toughness, and is less prone to cracking during heating, and therefore, it is possible to produce a steel material capable of obtaining a product with a high yield. It aims to provide a method.
[0012]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, the present invention contains 7 to 30 ppm B and 10 to 70 ppm N by weight , and B and N are BN, Fe—C—B—N boronitrides . , Fe (B, N) solid solution or Fe (C, B, N) based manufacturing cure depth to be defined in the steel material in excess of 0.3mm as the site is 720 or more in Vickers hardness with spreading as solid solution A method,
Coating or surrounding the raw steel with a boron compound;
A nitriding gas is circulated while heating the raw steel within a temperature range of 1100 to 1750K, and BN, Fe—C—B—N system boronitride , Fe (B, N) system solid solution or Fe (C, B , N) forming a solid solution ;
It is characterized by having.
[0013]
That is, B and N contained in the steel material are diffused in the steel material using the boron compound and the nitriding gas as sources, respectively. And the steel material which contains B in such a ratio is excellent in intensity | strength, hardness, and toughness compared with the steel material which does not contain B. Moreover, since N is contained in the above-described proportion, B and free elements existing as impurities in the steel material are remarkably suppressed from reacting with each other. For this reason, since it is suppressed that the above brittle materials generate | occur | produce in steel material, it can suppress that a crack generate | occur | produces in this steel material.
[0014]
In short, according to the present invention, it is possible to easily and easily manufacture a steel material that is excellent in strength, hardness, and toughness and that hardly causes cracking.
[0015]
Here, the reason for setting the temperature during nitriding to 1100 to 1750K is that if it is less than 1100K, N easily binds to ferrite or cementite, so that the weight ratio of N exceeds 70 ppm, and exceeds 1750K. And B are preferentially combined with free elements such as Fe, Si, Ni, and Mo in the raw steel to produce brittle borides as described above, resulting in a steel material that is susceptible to cracking. is there.
[0016]
A preferred example of means for heating the raw steel is a high-frequency heating device. This is because the high-frequency heating device can raise the raw material steel to a predetermined temperature in a short time, thereby improving the production efficiency of the steel material.
[0017]
In this case, it is preferable to perform nitriding of the raw steel in a state where the raw steel is accommodated in the cylindrical body and a nitriding gas is circulated in the cylindrical body. This is because the nitriding gas can be reliably brought into contact with the raw material steel, so that the raw material steel can be efficiently nitrided even when a high-frequency heating device is used.
[0018]
As preferable examples of boron compounds for coating or surrounding the material steel, mention may be made of hexagonal BN (h-BN) or B 4 C. This is because these can be easily obtained, so that the manufacturing cost of the steel material can be reduced.
[0019]
Further, it is preferable to use N 2 gas as the nitriding gas. This is because the amount of N to be diffused into the raw steel is remarkably small, and therefore N 2 having a lower activity can more easily control the amount of N diffused into the raw steel.
[0020]
A part of B and N in the steel material is hexagonal BN (h-BN) or tetragonal BN (c-BN), and further combined with Fe and C to form Fe-CBN boronitride. However, most of them exist in the state of an Fe (B, N) solid solution dissolved in Fe or an Fe (C, B, N) solid solution dissolved in Fe and C.
[0021]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, preferred embodiments of the steel material manufacturing method according to the present invention will be described in detail with reference to the accompanying drawings.
[0022]
First, the steel material will be outlined. In the present embodiment, the steel material is dissolved in ferrite, austenite, bainite (cooled transformation product of austenite) or the like, and is an Fe (B, N) -based solid solution or Fe (C, B, N) -based solid solution. Contains B and N present in the state. In these solid solutions, Si, Mn, P, S, etc. contained in a trace amount in the steel material may be further dissolved.
[0023]
B is a component that improves the strength, hardness and toughness of the steel material as in the case of boron steel. And the ratio of B is set to 7-30 ppm. If it is less than 7 ppm, the effect of improving the above-mentioned properties is poor, and if it exceeds 30 ppm, the toughness of the steel material is lowered. A more preferable ratio of B is 10 to 20 ppm.
[0024]
N is a component that suppresses the reaction of B with Fe, Si, Ni, Mo, etc. contained in the steel material as impurities in a free state. That is, when N is present, B and these free elements are remarkably suppressed from reacting with each other. For this reason, FeB, Fe 2 B, Fe 5 SiB 2 , Ni 4 B 3 , MoFeB 4 , Mo 2 FeB 2 and the formation of brittle materials such as B 4 C are remarkably suppressed. Therefore, in the steel material according to the present embodiment, the thermal stress generated at the time of heating including quenching is significantly smaller than that of general boron steel, so that cracks are hardly generated.
[0025]
The ratio of N is set to 10 to 70 ppm. If it is less than 10 ppm, the effect of suppressing the occurrence of cracks in the steel material is poor. On the other hand, if it exceeds 70 ppm, the hardness of the steel material will decrease.
[0026]
As described above, B and N in the steel material exist in the state of an Fe (B, N) -based solid solution or an Fe (C, B, N) -based solid solution. In this case, the steel material exhibits superior strength, hardness, and toughness as compared to a steel material in which B and N are present in a state of h-BN or c-BN.
[0027]
In addition, in this case, the diffusion distance of B and N is remarkably increased. That is, B and N penetrate deeper into the interior than boron steel or nitrided steel material. This is because the presence of N significantly suppresses B from reacting with free elements in the steel material. Specifically, in the steel material according to the present embodiment, N and B may exist even in the interior where the distance from the surface exceeds 30 to 70 mm.
[0028]
Furthermore, in this case, the structure constituting the steel material changes gradually from the surface to the inside of the steel material. For this reason, since the thermal stress generated when the steel material is heated is remarkably reduced, cracks are hardly generated.
[0029]
Thus, in this steel material, N and B are diffused deep inside. For this reason, it is possible to ensure excellent strength, hardness and toughness even inside the steel material, and to remarkably suppress the occurrence of cracks.
[0030]
Next, a method for manufacturing a steel material according to the present embodiment will be described.
[0031]
The flowchart of the manufacturing method of the steel material which concerns on this Embodiment is shown in FIG. This manufacturing method includes a first step S1 for coating or surrounding the raw steel with a boron compound, and a second step S2 for subjecting the raw steel to heat nitriding.
[0032]
First, in the first step S1, the raw steel is covered or surrounded with a boron compound.
[0033]
Specifically, when the raw steel is coated with a boron compound, a coating film made of a boron compound is formed on the surface of the raw steel. The coating film can be easily obtained by spraying a solution in which a boron compound such as h-BN is dispersed in a solvent such as xylene, toluene, or acetone on the surface of the raw steel, and then removing the solvent by volatilization. It can be formed easily. Alternatively, the coating film may be formed by a chemical vapor deposition (CVD) method, a physical vapor deposition (PVD) method, or the like.
[0034]
When the raw steel is surrounded by a boron compound, a powdered boron compound such as B 4 C may be filled in a crucible containing the raw steel.
[0035]
Next, in the second step S2, the raw steel on which the coating film is formed or the raw steel surrounded by the powdered boron compound is subjected to heat nitriding treatment. By this treatment, the raw steel is nitrided, and B diffuses from the boron compound and penetrates from the surface of the raw steel toward the inside. Of course, N obtained by nitriding the raw steel also penetrates from the surface of the raw steel toward the inside. As a result, the above steel material is obtained.
[0036]
Nitriding gas for nitriding the material steel, NH 3, N gas mixture of 2 and H 2, NH 3, or may be a gas containing NH 3 as a mixed gas of N 2 and Ar is, N 2 It is preferable that it is only. This is because the amount of N diffused in the raw steel is remarkably small at 10 to 70 ppm by weight as described above, and therefore N 2 having a lower activity can more easily control the diffusion amount of N into the raw steel.
[0037]
Here, the nitriding gas is introduced when the temperature is in the range of 1100 to 1750K. If it is less than 1100 K, N is easily dissolved in ferrite, austenite, bainite, etc., so that the weight ratio of N exceeds 70 ppm. Further, if it exceeds 1750K, B preferentially bonds with free elements such as Fe, Si, Ni, and Mo in the raw steel, so that the brittle boride as described above is generated, and cracks are eventually generated. It becomes an easy steel material. When the temperature is out of the above range, an inert nitriding gas such as Ar may be introduced. When a coating film is formed on the surface of the raw steel, evacuation may be performed.
[0038]
Moreover, although the heating means in the second step S2 is not particularly limited, it is possible to raise the temperature of the raw material steel in a short time, and for this reason, the steel material can be efficiently produced. A high frequency induction heating device is particularly suitable. In this case, it is preferable to perform nitriding of the raw steel in a state where the raw steel is accommodated in the cylindrical body and a nitriding gas is circulated in the cylindrical body. This is because the nitriding gas can be reliably brought into contact with the raw material steel, so that the raw material steel can be efficiently nitrided even when a high-frequency heating device is used. In addition, as a cylindrical body, the thing made from quartz or graphite can be used, for example.
[0039]
The treatment time is set according to the thickness and volume of the raw steel, but it is sufficient that the heating time is about 10 minutes to 2 hours for heating with a heating furnace and about 5 seconds to 5 minutes for heating with a high-frequency induction device. Note that if the treatment time is too long, B or N will exceed 30 ppm and 70 ppm, respectively.
[0040]
【Example】
1. As a raw material steel for B and N, S50C (JIS standard) of 50 mm × 50 mm × 100 mm rectangular parallelepiped was prepared. A solution in which h-BN was dispersed in xylene was sprayed on the surface of the raw steel, and left at room temperature to dry, thereby forming a coating film made of h-BN.
[0041]
Next, this raw steel was put in a heating furnace, heated to 1600 K at 10 K / min, then held at 1600 K for 30 minutes and heat nitriding to obtain a steel material containing B and N. This is Example 1. The inside of the heating furnace was evacuated until the temperature reached 1200K, and N 2 was introduced immediately after reaching 1200K.
[0042]
When the weight ratio of B and N in the steel material of Example 1 was quantitatively analyzed by absorptiometry, they were 17 ppm and 20 ppm, respectively.
[0043]
In addition, raw material steel having the same dimensions as above was prepared, and this raw steel was press-fitted into a crucible filled with B 4 C powder, and the raw steel was surrounded by B 4 C powder.
[0044]
In this state, the raw steel was put together with the crucible in a heating furnace, and was heat-nitrided under the same conditions as in Example 1 to obtain a steel material. This is Example 2. In addition, in the steel material of Example 2, each weight ratio of B and N was 18 ppm and 50 ppm.
[0045]
Further, a material obtained by performing flame quenching on a columnar raw material steel having a diameter of 10 mm and a length of 30 mm was prepared. This is referred to as Comparative Example 1. Note that B and N were not detected in the steel material of Comparative Example 1.
[0046]
When the Vickers hardness was measured for each of the steel materials of Examples 1 and 2 and Comparative Example 1, the value on the surface of the steel material of Comparative Example 1 was 640. On the other hand, as shown in FIG. 2, the Vickers hardness in each steel material of Examples 1 and 2 shows a value about 80 to 100 higher than the surface of Comparative Example 1 from one side surface to the other side surface. It was. From this result, it is clear that the hardness of the steel material is improved by containing B and N. Moreover, since the hardness of each steel material of Example 1, 2 is substantially uniform, in these steel materials, it is also understood that B and N are diffusing from the surface to the inner center.
[0047]
Next, a test piece for a tensile test and a test piece for an impact test were cut out from Examples 1 and 2 and Comparative Example 1, and a tensile strength and a Charpy impact value were measured for each test piece. The results are shown in FIG. In addition, it represents that toughness is so high that a Charpy impact value is high. From FIG. 3, it can be seen that each steel material of Examples 1 and 2 is superior in tensile strength and toughness as compared with the steel material of Comparative Example 1.
[0048]
From the above results, it is apparent that the hardness, strength and toughness of the steel material can be improved by containing B and N.
[0049]
Apart from these, a steel material was obtained in accordance with Example 1 except that SCM430 (JIS standard) was selected as the raw material steel. This is Example 3.
[0050]
In addition, after raising the temperature to 1200 K at a temperature increase rate of 10 K / min while evacuating, holding at 1200 K for 30 minutes, and when reaching 1500 K, introducing N 2 gas and holding at 1650 K for 30 minutes Except for this, a steel material was obtained according to Example 3. This is Example 4.
[0051]
Furthermore, Examples 3 and 4 were added to a salt bath in which 1000 cm 3 of water was used as a solvent and 115 g of KCl, 20 g of BaCl 2 , 7.5 g of NaF, 1 g of B 2 O 3 , and 5 g of ferroboron were dissolved therein. The SCM430 was borated by immersing the same size SCM430 for 2 hours. This is referred to as Comparative Example 2.
[0052]
In addition, when the weight ratio of B in each steel material of the above Examples 3 and 4 and Comparative Example 2 was quantitatively analyzed, they were 19 ppm, 21 ppm, and 2 ppm, respectively.
[0053]
And about each steel material of these Examples 3 and 4 and the comparative example 2, the Vickers hardness was measured toward the inside from the surface. The relationship between the distance from the surface and the Vickers hardness is also shown in FIG. From FIG. 4, the Vickers hardness is drastically reduced at a depth exceeding 0.05 mm in the steel material of Comparative Example 2, whereas the hardness of each steel material of Examples 3 and 4 is increased even at a depth exceeding 0.3 mm. It is clear that it is excellent. Also from this result, it can be understood that B diffuses into the steel materials of Examples 3 and 4 as compared with the steel material of Comparative Example 2.
[0054]
2. SKS 9 3 selects the (JIS standard) as the relationship raw steel with properties of heat nitriding time and the steel material, were variously prepared cuboid with varying base area as a predetermined length. Then, N 2 gas was introduced at the time of reaching the 1400 K, the retention time, except that was varied by solid solution B and N in each rectangular in conformity with Example 1 to obtain a steel material . Among these, a test piece for tensile test and a test piece for fracture toughness (K IC ) measurement are cut out from each steel material having a bottom dimension of 40 mm × 40 mm or more, and the tensile strength and K IC are obtained for each test piece. It was. Further, the surface Rockwell hardness (C scale, H RC ) of each steel material was measured. These measurement results are shown in FIGS. 5 and 6 together with the holding time in the heat nitriding treatment and the weight ratio of B contained.
[0055]
These FIG. 5 and FIG. 6 show that various characteristics of the steel material can be controlled by setting the processing time.
[0056]
3. Regarding the suppression of cracking, cylindrical SCM420 (JIS standard) having a diameter of 50 mm and a length of 200 mm shown in FIG. A solution in which h-BN was dispersed in xylene was sprayed on the surface of the raw steel 10 and allowed to dry at room temperature to form a coating film (not shown) made of h-BN. And the through-hole 12 with a diameter of 8 mm orthogonal to the axial direction of this raw material steel 10 was provided in the approximate center part of this raw material steel 10.
[0057]
Next, as shown in FIG. 8, a cylindrical member 18 was configured by attaching half pieces 16 a and 16 b provided with a plurality of holes 14 near one end to the raw steel 10. Then, the raw steel 10 is heated by a high-frequency heating device under conditions of 480 V, 48 kW, and a frequency of 19 kHz while N 2 gas is circulated through the hole 14 and the cylindrical member 18 is rotated at a rotation speed of 30 rpm. Thus, a steel material was produced. The heating time was 10 seconds. This is Example 5.
[0058]
Further, a steel material was obtained according to Example 5 except that the heating time was set to 15 seconds or 30 seconds. These are referred to as Examples 6 and 7, respectively. In Example 7, when the raw material steel 10 and the steel material were quantitatively analyzed, B and N were not detected in the raw material steel 10, whereas in the steel material, they were 17 ppm and 50 ppm, respectively.
[0059]
For comparison, the raw steel 10 was quenched with a high-frequency heating device without forming a coating film. In this case, the raw steel 10 was heated for 8 seconds under the conditions of 460 V, 45 kW, and a frequency of 19 kHz while rotating at a rotation speed of 30 rpm in the atmosphere. This is referred to as Comparative Example 3.
[0060]
When the occurrence of cracks was investigated for each of the steel materials of Examples 5 to 7 and Comparative Example 3, in Comparative Example 3, cracks occurred around the through hole 12 in 6 of the 10 samples. On the other hand, in Examples 5 to 7, no cracks were observed in all of the 40 samples.
[0061]
Next, for each steel material of Examples 5 to 7 and Comparative Example 3, Vickers hardness was measured from the surface to the inside. FIG. 9 shows the relationship between the distance from the surface and the Vickers hardness.
[0062]
From FIG. 9, it can be seen that in Comparative Example 3, the hardness sharply decreases when the distance from the surface is 2 mm or more, whereas in Examples 5-7, the hardness is gradually decreased. From this, it is understood that the structure of the steel material of Comparative Example 3 changes abruptly, while that of each of the steel materials of Examples 5 to 7 has a gradual change of structure. In the steel materials of Examples 5 to 7 having such a structure, the thermal stress generated during heating is significantly smaller than that of the steel material of Comparative Example 3. In Examples 5 to 7, it is considered that this is the reason why cracks do not occur.
[0063]
【The invention's effect】
As described above, according to the method for producing a steel material according to the present invention, excellent strength, hardness and toughness are exhibited by the action of B, and the formation of brittle material in the steel material by the action of N is suppressed. Therefore, the effect that the steel material which is hard to generate | occur | produce a crack at the time of a heating can be manufactured easily and simply is achieved. For this reason, the yield at the time of processing this steel material and obtaining a product improves.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a flowchart of a method for producing a steel material according to the present embodiment.
FIG. 2 is a chart showing Vickers hardness from one side surface to the other side surface of each steel material of Examples 1 and 2.
3 is a chart showing the tensile strength and Charpy impact value of test pieces obtained from the steel materials of Examples 1 and 2 and Comparative Example 1. FIG.
4 is a graph showing the relationship between the distance from the surface and Vickers hardness of each steel material of Examples 3, 4 and Comparative Example 2. FIG.
FIG. 5 is a chart showing the relationship between the heat nitriding treatment time, the weight ratio of B, the surface Rockwell hardness (C scale), the tensile strength, and the fracture toughness value in each steel material.
FIG. 6 is a chart showing the relationship between the heat nitriding treatment time, the weight ratio of B, the surface Rockwell hardness (C scale), the tensile strength, and the fracture toughness value in each steel material.
FIG. 7 is a schematic entire configuration explanatory view of a half piece constituting a raw steel and a cylindrical member attached to the raw steel.
8 is a schematic overall configuration explanatory view showing a state in which a cylindrical member is mounted on the raw steel shown in FIG.
9 is a graph showing the relationship between the distance from the surface and the Vickers hardness of each steel material of Examples 5 to 7 and Comparative Example 3. FIG.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 10 ... Raw material steel 12 ... Through-hole 14 ... Hole part 16a, 16b ... Half piece 18 ... Cylindrical member

Claims (5)

重量割合で7〜30ppmのBと10〜70ppmのNとを含有し、BおよびNが、BN、Fe−C−B−N系ホウ窒化物、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体として拡散するとともにビッカース硬度で720以上である部位として定義される硬化深さが0.3mmを超える鋼材料の製造方法であって、
原料鋼をホウ素化合物で被覆または囲繞する工程と、
前記原料鋼を1100〜1750Kの温度範囲内で加熱しながら窒化ガスを流通して、BN、Fe−C−B−N系ホウ窒化物、Fe(B,N)系固溶体またはFe(C,B,N)系固溶体を形成する工程と、
を有することを特徴とする鋼材料の製造方法。
It contains 7 to 30 ppm of B and 10 to 70 ppm of N by weight , and B and N are BN, Fe—C—B—N boronitride , Fe (B, N) solid solution or Fe (C , B, a method of manufacturing steel material hardened depth is defined as the site is 720 or more in Vickers hardness exceeds the 0.3mm with diffusion as N) solid solution,
Coating or surrounding the raw steel with a boron compound;
A nitriding gas is circulated while heating the raw steel within a temperature range of 1100 to 1750K, and BN, Fe—C—B—N system boronitride , Fe (B, N) system solid solution or Fe (C, B , N) forming a solid solution ;
A method for producing a steel material, comprising:
請求項1記載の製造方法において、前記原料鋼を加熱する手段として高周波加熱装置を使用することを特徴とする鋼材料の製造方法。  2. The method of manufacturing a steel material according to claim 1, wherein a high-frequency heating device is used as means for heating the raw steel. 請求項2記載の製造方法において、前記原料鋼を筒状体の内部に収容し、かつ前記筒状体の内部に窒化ガスを流通させた状態で前記原料鋼の窒化を行うことを特徴とする鋼材料の製造方法。  3. The manufacturing method according to claim 2, wherein the raw steel is nitrided in a state in which the raw steel is accommodated in a cylindrical body and a nitriding gas is circulated in the cylindrical body. Manufacturing method of steel material. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ホウ素化合物として六方晶BNまたはB4Cを使用することを特徴とする鋼材料の製造方法。The manufacturing method according to any one of claims 1 to 3, wherein hexagonal BN or B 4 C is used as the boron compound. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、前記窒化ガスとしてN2ガスを使用することを特徴とする鋼材料の製造方法。The manufacturing method according to claim 1, wherein N 2 gas is used as the nitriding gas.
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