JP3743977B2 - 電気粘性流体による研磨方法及び研磨装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被研磨物の表面を精密且つ高速に研磨する方法及び研磨装置に関し、特に、被研磨物が導電性或いは非導電性に拘わらず、研磨可能とするために有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、精密機械やマイクロマシン等を切削する加工工程で発生する表面の微細な加工痕や加工変質層を除去するために、ラップ工具やポリッシャ等の研磨工具を使用し、当該研磨工具と被研磨物との間に研磨材を介在させ、研磨工具と被研磨物との摺動運動によってなされる研磨が公知となっている。しかし、寸法が極小であったり、煩雑な形状である半導体デバイスや精密光学素子、或いは精密金型等においては、硬度が非常に高く角張った形状の結晶粒子や粉末等微細な砥粒からなる研磨材を流体に分散させた研磨剤を併用するのが一般的である。
【0003】
研磨剤を併用することによって、粗度サブミクロン精度で研磨することが可能となるが、研磨工具と研磨剤とを併用する研磨方法においては、研磨部位に合わせた研磨工具の選定や被研磨物の相対的な移動の速度、研磨圧、研磨剤供給速度、等の煩わしい操作や微妙な調整が必要であると同時に、感や経験に頼るところが多かった。また、研磨剤の使用によって、砥粒が研磨したい面から周辺部に移動してしまうことによって、研磨効率の低下や研磨圧等研磨特性の変動が生じやすかった。
【0004】
そこで、かかる問題を解決するために、研磨面に電場をかけて砥粒を電気泳動によって引き寄せる方法(精密光学会誌Vol.52、No.3、p547、1986参照)や、磁気粘性流体(MR流体)を用いて磁場で砥粒を研磨面に保持する方法(米国特許第5,577,948 号)、及び電気粘性流体(ER流体)を用いて研磨面で流体の粘性を増大させるとともに砥粒の移動を防止する方法(特開平8-229793号公報、特開平9-234630号公報参照)等が提案されている。
【0005】
上記方法によると、電場や磁場によって砥粒を被研磨物の研磨面に集めることが可能となり、研磨効率の低下及び研磨特性の変動を抑制することが可能となった。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
ところが、電気泳動を利用する方法では、砥粒を研磨工具或いは被研磨物の表面に集めることは可能となるが、分散流体自体の粘性は向上しないため、滑りが生じて研磨効率を期待するほど向上させることができなかった。
また、MR流体を用いる方法では、磁場を研磨面に効率よく集中させる技術が容易ではなく、さらに、MR流体を発現する磁性粒子は金属であることが一般的であるため、被研磨物に研磨痕を残しやすかった。
【0007】
さらに、ER流体を用いる方法では、正極或いは負極の電極基板と当該電極基板とは逆の電極に帯電させた研磨工具との間に、被研磨物を配置する必要がある。ここで、被研磨物の表面が非導電性の場合には、有効な電場がかからなくなるため、ER流体の粘性を向上させることが困難になるばかりでなく、砥粒を被研磨物の表面に集めることができなくなる。一方、被研磨物が導電性の場合には、ER流体の粘性を向上させることは可能となるが、被研磨物の表面と研磨工具との間隙の僅かな変動で放電や絶縁破壊が起こりやすくなり、安心して研磨することができなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被研磨物の表面が導電性や非導電性に拘わらず、あらゆる被研磨物に対して研磨効率がよく、研磨圧等の研磨特性の変動を抑制することを可能とした被研磨物の研磨方法及び研磨装置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、請求項1に係る発明は、研磨平面上に正極と負極とが対向して形成された基板を用い、当該基板の前記研磨平面と被研磨物の被研磨面とが対向するようにその被研磨物を設置するとともに、前記研磨平面と前記被研磨面との間に研磨剤として機能する電気粘性流体を介在させ、そして前記正極及び負極間に電圧を印加した状態で、前記基板及び前記被研磨物を前記研磨平面と平行な方向に相対的に移動させることで前記被研磨物を研磨することを特徴とする電気粘性流体による研磨方法としている。
【0010】
請求項1に係る発明において、研磨平面上に正極と負極とが対向して形成された基板を用いることによって、被研磨物を正極と負極の電極基板間に配置する必要がなくなるため、被研磨物が導電性や非導電性に拘わらず、安定した電場を発生させることが可能となる。なお、このような電気粘性流体への新しい電圧の印加方法については、特開平9-53610 号公報に記載されている。
【0011】
また、研磨剤として電気粘性流体を用いたことによって、印加する電圧の強さによって研磨度合いを自由に変化させることができるため、被研磨物の形状或いは大きさを限定することなく研磨することが可能となる。
さらに、基板及び被研磨物を研磨平面と平行な方向に相対的に移動させることによって、被研磨面に集められた電気粘性流体と、研磨平面との間で抵抗が生じるため、被研磨物の研磨が行われる。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明である研磨方法において、前記研磨平面上に前記正極と前記負極とを複数対有する前記基板を用い、それぞれの対に個別に電圧を印加した状態で研磨するものとしている。
請求項2に係る発明において、研磨平面上に正極と負極とを複数対有する基板を用い、それぞれの対に個別に電圧を印加することによって、電気粘性流体の粘性を局所的に変化させることが可能となる。このため、被研磨物の研磨度合いを局所的に調節することが可能となる。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の発明である研磨方法において、前記研磨剤として、微粒子を含有しない均一系の前記電気粘性流体を用いるものとしている。
請求項3に係る発明において、研磨剤として、電界に強い分子配向を生じ、微粒子を含有しない均一な電気粘性流体用いたことによって、微粒子による研磨痕の発生を防ぐのみならず、電圧の印加で電気粘性流体の粘性を大幅に増加させることが可能となる。このため、研磨効率を向上させるとともに、精密な研磨を施すことが可能となる。
【0014】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明である研磨方法において、前記研磨剤として、研磨砥粒を含有する前記電気粘性流体を用いるものとしている。
請求項4に係る発明において、研磨剤として、研磨砥粒を含有する電気粘性流体を研磨剤として用いたことによって、電気粘性流体による研磨のみならず、研磨砥粒による研磨も施されるため、研磨砥粒を含有しない電気粘性粒体に比べて、研磨速度を向上させることが可能となる。このため、高速な研磨を行うために有効である。
【0015】
さらに、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明である研磨方法において、前記被研磨物として、半導体基板を適用するものとしている。
請求項5に係る発明において、被研磨物として半導体基板を適用したことによって、電子デバイス製作過程における、層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線形成等において、サブミクロンからオングストロンの精度での研磨が可能となる。このため、半導体素子を高集積するために有効である。
【0016】
さらに、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明である研磨方法において、前記研磨の度合いをセンサでモニタ−リングしながら研磨するものとしている。
請求項6に係る発明において、研磨度合いをセンサでモニタ−リングしながら研磨することによって、研磨の途中であっても、表面粗度計や反射計の測定値によって電気粘性粒体を最適な粘性に変えることも可能となる。このため、あらゆる形状の被研磨物に対して最適な研磨を行い、スクラッチ、エロ−ジョン、ディッシング等の研磨痕を有する欠品の発生を削減させるために有効である。
【0017】
請求項7に係る発明は、研磨平面上に正極と負極とが対向して形成された基板と、当該基板の前記研磨平面と被研磨物の被研磨面とが対向するようにその被研磨物が設置される対向基板と、前記基板及び前記対向基板を前記研磨平面に対して平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記研磨平面と前記対向基板上に設置された前記被研磨物の前記被研磨面との間に研磨剤として機能する電気粘性流体を供給する供給手段と、を備えたことを特徴とする電気粘性流体による研磨装置としている。
【0018】
請求項7に係る発明によれば、請求項1に係る発明である研磨方法を容易に実施することができる。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明である電気粘性流体による研磨装置において、前記研磨平面上に前記正極と前記負極とを複数対形成し、それぞれの対に個別に電圧を印加可能となっているものとしている。
【0019】
請求項8に係る発明によれば、請求項2に係る発明である研磨方法を容易に実施することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態における研磨装置を示す側面図、図2は、図1における研磨平面上に形成された正極と負極との配置パタ−ンを示す基板の底面図、図3は、研磨平面上に形成される正極と負極との配置パタ−ンを示す基板の底面図である。
【0021】
本実施の形態における研磨装置100は、図1に示すように、水平に支持された円盤形状であり、研磨平面11を有する基板10を下面に形成した回転円盤12と、当該回転円盤12の下面に間隙を空けて配設され、回転円盤12よりも大きな径を有する円盤形状であり、被研磨物40を上面に設置する対向基板20と、当該対向基板20に設置する被研磨物40と回転円盤12に形成された基板10との間隙に研磨剤としての電気粘性流体を供給する貯溜部30とから構成されている。
【0022】
回転円盤12は、絶縁性物質からなり、上面中央には円柱形状の回転軸13が形成され、回転運動及び水平方向(図1におけるX−X線方向)への往復運動或いは旋回運動のうちいずれか一種或いは複数種の運動を可能としている。また、下面には、回転円盤12の径(例えば外径55mm、厚さ10mm)よりも若干小さな径を有する基板10が形成されており、当該基板10の底面が研磨平面11となっている。
【0023】
ここで、研磨平面11は、被研磨物40の被研磨面40Aに対向するように形成され、図2に示すように、表面には正極11Aと負極11Bとが交互に多重同心リング状に配置されている。また、研磨平面11上に形成した正極11A及び負極11Bは、絶縁被膜された導線15A、15Bによって、回転軸13の表面に帯状に形成された正極のスリップリング14A又は負極のスリップリング14Bと直結されている。ここで、電極線の幅は、図2においては説明上太線を正極11A、細線を負極11Bとしたが、本実施の形態では、例えば、正極11Aも負極11Bもともに100μmとし、正極11Aと負極11Bとの電極間隙は200μmとした。また、最外部の電極直径は50mmとし、最内部の電極直径は8mmとした。さらに、導線15A、15Bは、各極に一本ずつ形成され、全ての対に同一導線15から印加するため、複数対の正極11A及び負極11Bの全てに均一な電圧が印加されることになる。
【0024】
また、対向基板20は、回転円盤12が水平方向(図1におけるX−X線方向)への往復運動或いは旋回運動を行っても、研磨平面11と被研磨物40との間に電気粘性流体を保持しておけるように、少なくとも基板10よりも大きな径(例えば直径150mm)を有している。対向基板20の上面には、被研磨物40が被研磨面40Aを上向きに設置され、その保持具として平面板状のリテ−ナ21が形成されており、下面には、その中心部に円柱形状の回転軸22が形成されており、対向基板20を研磨平面11に対して平行な方向への回転運動を可能とする。
【0025】
ここで、被研磨物40の材質は、金属、樹脂、セラミックス、ガラス等いずれの材質でもよく、これらを単一で或いは複合して使用しても構わない。また、これらの被研磨物40の形状、特に、研磨すべき表面の形状は平面、曲面、或いは尖った形状でもよく、大きさも大型望遠鏡のレンズからマイクロマシンの部品及び電子素子のチップまで、数mから数μmのものであってもよい。
【0026】
さらに、電気粘性流体を充填するための貯溜部30は、略矩形箱体をしており、その下面には必要量の電気粘性流体を供給することができる開閉自在の供給口31を具備している。
ここで、電気粘性流体は、電界の印加により瞬間的に大きく粘性が変化し、当該変化は可逆的である流体である。電気粘性流体は、分散系と均一系に大別され、前者は、誘電体微粒子を絶縁油に分散させたものであり、後者は、液晶や高分子液晶のような電界に強い分子配向等を示し微粒子を含有しない均一な流体からなる。本発明における研磨装置及び研磨方法には、分散系、均一系いずれの電気粘性流体も適用することができるが、特に、研磨痕及び砥粒残存の発生を防止するが研磨効率が低い均一系電気粘性流体の研磨効率を向上させるために有効である。
【0027】
また、研磨砥粒を添加した電気粘性流体を適用することもできる。このとき、研磨砥粒は、粒径数μm以下、好ましくは数十から数百nmの微細粒子であれば、アルミナ、シリカ、チタニア、ゲルマニア、ジルコニア、ダイアモンド等いずれの粒子を単独或いは複合して用いても構わない。また、砥粒の含有量は、電気粘性流体の電気的機能を損なわない程度であり、10重量%以下とするのが望ましい。ここで、砥粒は電気粘性流体に分散されていても、基板10の上表面にパッドと呼ばれるソフト或いはハ−ドな多孔体を存在させ、当該パッドに固定或いは半固定されていてもよい。
【0028】
さらに、被研磨物40が金属を含有する場合には、微細な研磨屑の排出や絶縁破壊等の障害を抑制するために、金属研磨屑を吸収する錯生成剤(例えばキレ−ト剤)や、金属表面層を酸化物或いは水酸化物にして金属部を研磨しやすくする酸化剤(例えば尿素や過酸化水素)を電気粘性流体に含有させることも可能である。
【0029】
ここで、上記構成による研磨装置100を用いた研磨方法は、まず、被研磨物40の被研磨面40Aを上向きにした状態で、被研磨物40を対向基板20上に設置し、リテ−ナ21によって保持する。次に、貯溜部30に充填されている電気粘性流体を、必要な分だけ供給口31より被研磨物40と研磨平面11との間に供給する。その後、電圧制御装置(図示しない)によって、研磨平面11上に形成された正極11Aと負極11B間に電圧を印加した状態で、基板10が形成された回転盤12及び被研磨物40が設置された対向基板20を研磨平面11に対して平行な方向に相対的に移動させる。すると、被研磨面40Aには、電圧の印加によって粘性を変化させた電気粘性流体が集まり、さらには、基板10と被研磨物40との相対的に移動によって、研磨平面11と被研磨面40Aの間に抵抗が生じるため、被研磨面40Aの研磨が行われる。ここで、研磨の度合いは、センサによってモニタ−リングされており、表面粗度計や反射計による測定値を把握しつつ研磨を行うことができる。
【0030】
上記構造の研磨装置100を用いて、正極11Aと負極11Bとの電極を対向して形成した研磨平面11と、当該研磨平面11に被研磨面40Aを向けて設置する被研磨物40との間に、研磨剤として電気粘性流体を介在させたことによって、被研磨物40を電極基板間に配置する必要がなくなるため、被研磨物40が導電性や非導電性に拘わらず、安定した電場を発生させることが可能となる。よって、研磨効率に優れ、研磨特性の安定した研磨が可能となった。
【0031】
また、複数対の正極11A及び負極11Bに同一の電圧を印加することによって、研磨平面と対向する被研磨面に均一な研磨を施すことができ、例えば、半導体基板等平面状の被研磨面を有する被研磨物の研磨において有効である。
さらに、均一系の電気粘性流体を用いることで、微粒子による研磨痕及び砥粒の残存を防止できるのみならず、研磨効率を向上させることが可能となる。
【0032】
さらに、電気粘性流体に研磨砥粒を添加することで、研磨砥粒による研磨と、電気粘性流体による研磨が同時に行われるため、研磨効率を向上させ、研磨砥粒を含有しない場合に比べて、研磨速度を向上させることが可能となる。
さらに、研磨の度合いをセンサでモニタ−リングしながら研磨を行うことによって、研磨の途中であっても、表面粗度計や反射計の測定値によって電気粘性粒体を最適な粘性に変えることも可能となる。このため、あらゆる形状の被研磨物40に対して最適な研磨を行い、スクラッチ、エロ−ジョン、ディッシング等の研磨痕を有する欠品の発生を削減させるために有効である。
【0033】
すなわち、本発明における電気粘性流体による研磨方法及び研磨装置によると、被研磨物の形状に合わせて研磨方法や研磨工具等を選定する煩雑さを低減できるのみならず、低い印加電圧によって電気粘性流体の粘性を変化させることが可能となるため、研磨にかかるコストの削減も期待できる。特に、配線の微細化及び高密度化、及び多段に積層される基板における製品収率の向上が望まれる半導体素子の高集積化において有効であり、近年、電子デバイス製造工程で採用されているケミカルメカノポリッシング(CMP)研磨方法において、非常に有効な手段として適応することが可能である。
【0034】
尚、本実施の形態において、正極11Aと負極11Bとを研磨平面11上に多重同心リング状に形成したが、本実施の形態に限らず、ストライプ状や渦巻き状、或いは放射状等いずれの形態でも構わない。
また、正極11A、負極11Bと、スリップリング14A、14Bとをつなぐ導線15の数は、本実施の形態に限らず、図3に示すように、それぞれの正極11A及び負極11Bの対毎に導線15を形成し、対毎に個別に電圧を印加するようにすることもできる。すると、電気粘性流体の粘性を局所的に変化させることが可能となり、被研磨物の研磨度合いを局所的に調節することができる。
【0035】
さらに、研磨平面11上に形成する正極11Aと負極11Bの電極線幅、配線の間隙等は、本実施の形態に限らないが、電気粘性流体をより低い印加電圧で大きな粘性変化をさせるためには、配線の間隙は数mm以下、望ましくは、数百μm以下の出来るだけ狭い方がよい。また、配線の面積もできるだけ狭くして正極と負極間の間隙の面積を広く取ることが望ましい。
【0036】
さらに、本実施の形態において、被研磨物40を保持するための保持具としてリテ−ナ21を用いたが、これに限らず、回転や往復運動等を行う可動のものであってもよく、被研磨物40の形状に合わせて平面板状や曲面状、或いは棒状や円筒状等いずれの形状としても構わない。
さらに、本実施の形態において、研磨平面11は基板10の底面に設けられ、被研磨物40に対して上方に研磨平面11を設置したが、これに限らず、研磨平面11を基板10の上面に設け、被研磨物40に対して下方に研磨平面11を設置しても構わない。但し、この場合、被研磨物40は基板10の上方に設置する必要がある。
【0037】
さらに、基板10や対向基盤20、及び回転基盤12や回転軸13、22、並びに貯溜部30や供給口31等の形態は、本実施の形態に限らず、本実施の形態における機能と同一機能を有する形態であれば、自由に設定することができる。
ここで、本実施の形態においては、基板10が形成された回転円盤12及び回転軸13、及び対向基板20に形成された回転軸22が移動手段に対応し、貯溜部30及び供給口31が供給手段に対応する。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
上記構成による研磨装置100を用いて、被研磨物40として、シリコンウエハ基板上に、厚さ400nmのPBSG膜(ホウ素とリンを含むシリコン酸化膜)と、厚さ500nmのシリコン酸化膜とを成膜し、リソグラフィとエッチングにより深さ500nm、幅10μmの配線用のパタ−ン溝を形成し、その後、厚さ50nmのTiN膜の接着層、続いて厚さ700nmの銅薄膜をスパッタリング法で形成したウエハの研磨を行う。また、研磨剤としては、フェニル変形シロキサンで希釈したポリシロキサン液晶をシリコ−ン系希釈剤で希釈した液晶系電気粘性流体(旭化成(株)製)を使用した。該液晶系電気粘性流体において、無電界印加時の粘度は30℃で12ポイズであるが、制御電圧発生装置(図示しない)によって400V/200μmの電界を印加した際の粘度は300ポイズとなり、その間の電圧では略電圧に比例して粘度が変化する性質を有している。
【0039】
まず、研磨平面11と被研磨面40Aとの間に介在させた電気粘性流体に電圧を印加しない状態で、研磨平面11を有する基板10と、被研磨物40を設置する対向基板20とをそれぞれ60rpmで回転させた。さらに、前者は30秒周期で水平方向(図1におけるX−X線方向)に往復運動するように設定し、研磨温度を45℃の一定に保持させた。ところが、上記方法による研磨を20分続けても銅表面の研磨はほとんど進まなかった。
【0040】
次に、研磨平面における正極11A及び負極11B間に最初の10分間は200V、続いての10分間を100Vの電圧を印加して、同様の研磨を行った。すると、スクラッチ(ウエハ表面の傷)の発生がほとんどなく、ディッシング(金属膜の過剰研磨)も50nm以下で、エロ−ジョン(層間絶縁膜の過剰研磨)もほとんどない研磨が達成された。
【0041】
以上の結果より、電気粘性流体に電圧を印加することで、効果的な研磨が行われることが判った。
(実施例2)
前述の実施例1と同様の研磨装置100を用いて、被研磨物40として、予め予備研磨により算術平均粗度Raを0.8μm(評価長さ4mm、カットオフ値0.8mm)にし、表面を窒化処理し、さらには、Ni−Tiで表面被服した直径4cmの基板(SCM440製)の研磨を行った。ここで、研磨剤として使用する電気粘性流体は、前述の実施例1で使用した液晶系電気粘性流体に、粒径80nmのアルミナ粒子1重量%を添加したものとした。
【0042】
まず、研磨平面11と被研磨物40との間に介在させた電気粘性流体に電界を印加しない状態で、実施例1と同様に、基板10を研磨平面11に対して回転及び水平方向(図面におけるX−X方向)及び対向基板20を研磨平面11に平行な方向へ相対的に移動させた。このような研磨を30分間行ったところ、表面粗度Raは、0.4μmに程度に低下した。
【0043】
次に、研磨平面11における正極11Aと負極11B間に300Vの電圧を印加して30分間研磨したところ、表面粗度Raは、0.2μm(最大高さRyは0.5μm)に低下した。ここで、表面粗度Raは、数値が小さくなる程表面が研磨されたことを表すものとした。
以上の結果より、電圧を印加しない状態で基板10及び対向基板20の相対的な回転のみによる研磨においては、添加された砥粒としてのアルミナ粒子によって研磨が行われた。一方、電圧を印加した状態での研磨においては、前述のアルミナ粒子による研磨と同時に、粘性を変化させた電気粘性流体による研磨が行われることが判った。よって、アルミナ粒子等研磨砥粒を含有しない電気粘性流体を使用する場合と比べて、研磨速度を向上させた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、被研磨物が導電性や非導電性に拘わらず、安定した電場を発生させることが可能となるため、研磨効率を向上させるとともに、研磨特性を安定させることができる。
また、印加する電圧の強さによって研磨度合いを自由に変化させることができるため、被研磨物の形状或いは大きさを限定することなくあらゆる被研磨物を研磨することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における研磨装置を示す側面図である。
【図2】図1における研磨平面上に形成される正極と負極の配置パタ−ンを示す基板の底面図である。
【図3】 研磨平面上に形成される正極と負極の配置パタ−ンを示す基板の底面図である。
【符号の説明】
10 基板
11 研磨平面
12 回転盤
13 回転軸
14 スリップリング
15 導線
20 対向基板
21 リテ−ナ
22 回転軸
30 貯溜部
31 供給口
40 被研磨物
100 研磨装置
Claims (8)
- 研磨平面上に正極と負極とが対向して形成された基板を用い、当該基板の前記研磨平面と被研磨物の被研磨面とが対向するようにその被研磨物を設置するとともに、前記研磨平面と前記被研磨面との間に研磨剤として機能する電気粘性流体を介在させ、そして前記正極及び負極間に電圧を印加した状態で、前記基板及び前記被研磨物を前記研磨平面と平行な方向に相対的に移動させることで前記被研磨物を研磨することを特徴とする電気粘性流体による研磨方法。
- 前記研磨平面上に前記正極と前記負極とを複数対有する前記基板を用い、それぞれの対に個別に電圧を印加した状態で研磨することを特徴とする請求項1記載の電気粘性流体による研磨方法。
- 前記研磨剤として、微粒子を含有しない均一系の前記電気粘性流体を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の研磨方法。
- 前記研磨剤として、研磨砥粒を含有する前記電気粘性流体を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の研磨方法。
- 前記被研磨物として、半導体基板を適用することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の研磨方法。
- 前記研磨の度合いをセンサでモニタ−リングしながら研磨することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の研磨方法。
- 研磨平面上に正極と負極とが対向して形成された基板と、当該基板の前記研磨平面と被研磨物の被研磨面とが対向するようにその被研磨物が設置される対向基板と、前記基板及び前記対向基板を前記研磨平面に対して平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、前記研磨平面と前記対向基板上に設置された前記被研磨物の前記被研磨面との間に研磨剤として機能する電気粘性流体を供給する供給手段と、を備えたことを特徴とする電気粘性流体による研磨装置。
- 前記研磨平面上に前記正極と前記負極とを複数対形成し、それぞれの対に個別に電圧を印加可能となっていることを特徴とする請求項7記載の電気粘性流体による研磨装置。
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