JP3742963B2 - スピーカ装置、および音響再生方法 - Google Patents

スピーカ装置、および音響再生方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスピーカ装置、および音響再生方法に関し、特に、低音域音声信号の再生能力に優れたスピーカ、および音響再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
低音域音声信号の再生率の向上を図ったスピーカとして、バスレフ(バスレフレックス)方式、ケルトン方式などのスピーカが知られている。
【0003】
バスレフ方式のスピーカは、図4(a)に示すように、キャビネット60に配置されたスピーカユニット70と、キャビネット60の内部と外部空間とを連通するバスレフポート80とを備える。このバスレフポート80が、キャビネット60内に発生する低音域の再生音と共振し、開口部から低音域再生音を放射する。
【0004】
図4(a)に示すようなバスレフ方式のスピーカは、バスレフポートを持たない密閉型のスピーカと比較して低音域の再生率を向上できる。しかし、その低音再生能力は不十分なものであった。
【0005】
一方、ケルトン方式のスピーカは、図4(b)に示すように、サブバッフル62によりキャビネット61内に複数のキャビティ(密閉室)を構成し、キャビティ毎にスピーカユニット71,72を備えた構造を有する。
【0006】
ケルトン方式のスピーカは、バスレフ方式のスピーカと比較して、低音域の再生能力が向上するものの、その低音再生能力は不十分なものであった。
【0007】
そこで、さらに、低音域再生の増強を図ったスピーカとして、ケルトン方式のスピーカのキャビネット内に構成されるキャビティそれぞれにバスレフポートを配置した低音用スピーカシステムが実用新案登録第2553877号に開示されている。
【0008】
この考案のスピーカシステムでは、図4(c)に示すように、第1のスピーカユニット73の後方キャビティに設けられた第1のバスレフポート81と、第2のスピーカユニット74の後方キャビティに設けられた第2のバスレフポート82とが、キャビネット63の前面において外部空間と繋がるように構成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
実用新案登録第2553877号に開示された低音用スピーカシステムでは、バスレフポート81,82の開口部がキャビネット前面に配置されている。このため、キャビネット63の容積が小さい場合などにはバスレフポート81,82の長さを十分に確保できず、低音域の再生能力が不十分になる場合がある。
【0010】
また、すべてのバスレフポート81,82の開口部がキャビネット63の前面に配置された構造なので、キャビネットの前方に障害物などがある場合、低音域再生音の広がりが遮られてしまう。このため、十分な低音域の再生能力が得られない。
例えば、自動車の車室内のトランクにこのスピーカを設置する場合、設置場所によっては、前面バッフルが塞がれてしまい、音の出口が全て大きな負荷を受けて音が出にくくなる場合がある。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みてなされたもので、低音域再生能力に優れたスピーカ装置、および音響再生方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るスピーカ装置は、
前面に開口部を備えるキャビネットと、
開口部を備え、前記キャビネットの内部を前後方向に少なくとも2つのキャビティに分割する仕切板と、
前記キャビネットの開口部および前記仕切板の開口部に、直列配置となるように配置されたスピーカユニットと、
前記キャビネットにキャビティ毎に配置され、キャビティと外部空間とを連通し、相互に異なる方向に向かって開口し、低音域の再生音を外部に放射する少なくとも2つのバスレフポートと、を備え、
前記2つのバスレフポートのうち、一のバスレフポートは前記キャビネットの上方向に開口し、他のバスレフポートは前記キャビネットの横方向に開口
前記2つのバスレフポートの共振周波数が異なるよう、前記バスレフポートの長さが設定されている、
ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、バスレフポートの開口方向を、前面に限らず、任意に設定することができる。これにより、キャビティのサイズに対して、できるだけ長いバスレフポートを設計することができ、比較的小さいキャビネットのスピーカであっても、高い低音域再生能力を達成できる。
【0014】
また、バスレフポートがそれぞれ異なる方向に開口しているので、障害物がある場合でも、低域再生音の広がりが遮られることがない。
なお、全てのバスレフポートが互いに異なる方向を向いて開口している必要はない。少なくとも2つのバスレフポートが互いに異なった方向を向いて開口していればよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る音響再生方法は、
複数のキャビティと、該キャビティと外部空間とを連通して配置されたバスレフポートとを有するスピーカにおける音響再生方法であって、
前記各キャビティで低音域再生音を増強し、増強した低音域再生音を、前記バスレフポートを通じて外部空間の互いに異なる方向に放射する、
ことを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、低音域再生音を任意の方向に放射することができるので、スピーカの設置位置(方向)に関わらず良好な低音域再生を実現することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)は本発明の実施の形態にかかるスピーカの断面図、図1(b)はその斜視図である。
図1(a)、(b)に示すように、スピーカ(スピーカ装置)1は、キャビネット10と、前面バッフル11と、サブバッフル12と、第1のスピーカユニット31と、第2のスピーカユニット32と、第1のバスレフポート51と、第2のバスレフポート52と、から構成されている。
【0019】
キャビネット10の内部は、サブバッフル12によって仕切られて、前後2室に分割されており、前室が第1のキャビティ21、後室が第2のキャビティ22を構成する。
【0020】
キャビネット10の前面バッフル11には、振動板面が外部に向くように第1のスピーカユニット31が配置され、サブバッフル12には、振動板面が第1のキャビティに向くように第2のスピーカユニット32が配置されている。つまり、第1のスピーカユニット31と第2のスピーカユニット32とが前後方向に直列(タンデム)となるように配置されている。
【0021】
第2のバスレフポート52は、第2のキャビティ22内に配置され、キャビネット10の側面に形成された第2の開口部42を通じて第2のキャビティ22と外部空間とを繋ぐ。第2のバスレフポート52の長さと第2のキャビティ22による共振がこのスピーカ装置の基本的な再生帯域を決定するため、第2のバスレフポート52の長さは十分な長さに設定されている。
【0022】
第1のバスレフポート51は、第1のキャビティ21内に配置され、キャビネット10の天面に形成された第1の開口部41を通じて第1のキャビティ21と外部空間とを繋ぐ。
【0023】
スピーカユニットの直列配置の効果で、第1のキャビティ21の内部音圧は第2のキャビティ22の内部音圧より低くなる。このため、第1のバスレフポート51からの音圧のレベルは第2のバスレフポート52からの音圧のレベルよりも若干小さい。このため、スピーカ装置としての低音再生帯域幅を中だるみがでない形で広くとるために、第1のバスレフポート51の共振周波数が第2のバスレフポート52の共振周波数とあまり離れない範囲で若干高めとなるように、第1のバスレフポート51の長さが設定されている。
【0024】
この構成によれば、第1のバスレフポート51と第2のバスレフポート52とが互いに異なった方向(上方向と横方向)に向かって開口しており、バスレフポート51,52からの低音域再生音が異なった方向に放射される。従って、スピーカ1の前面や側面などの一部に障害物がある場合でも、低域再生音の広がりが遮られることがなく、スピーカ1の設置位置(方向)に関わらず、低音域再生音の適切な音響特性を得ることができる。
【0025】
また、スピーカ1の奥行きが小さく、キャビティ21,22の長さが短い場合でも、スピーカの高さ及び横幅を確保することにより、バスレフポート51、52の長さを最適な値に確保することができる。
【0026】
本実施の形態にかかるスピーカ1の作用を、自動車内に設置された場合を例にとって説明する。
【0027】
図2は、本実施の形態にかかるスピーカが自動車内に設置された場合を示す図であり、図中100は自動車を示し、200は自動車内の座席を示している。
【0028】
ここでは、自動車100内の座席200の後方に前面バッフル11が座席200に向くようにスピーカ1が設置された場合を想定する。
【0029】
この場合、第1のスピーカユニット31が座席200に向いて配置されているので、第1のスピーカユニット31から放射される再生音は、図中矢印1Aで示すように座席200の背もたれを通じて聴取位置に届くとともに、矢印1Bで示すように背もたれに反射して車内全体に広がって聴取位置に達する。
【0030】
また、第2の開口部42がキャビネット10の側面(図中手前側)に構成されているので、第2のバスレフポート52から放射される音は、矢印1Cで示すように車内の横壁に反射して車内全体に広がり聴取位置に達する。
【0031】
さらに、キャビネット10の天面に構成された第1のバスレフポート51からの低音域再生音はスピーカ1の上方に放射される。放射された再生音は、矢印1Dで示すように座席200の背もたれを回折しほぼ直接音として聴取位置に到達するとともに、矢印1Eで示すように車内の天井に反射されほぼ直接音として聴取位置に到達する。
【0032】
また、第1のバスレフポート51の開口部(第1の開口部41)を聴取位置に向くようにスピーカ1を配置することで、ほぼ直接音として低音域再生音が聴取位置に達するので、再生音の伝導効率が向上し、効率的な低音域再生を実現できる。
【0033】
つまり、各バスレフポートが互いに異なる方向に向いているので、スピーカ1の設置位置(方向)に自由度を持たせ、設置場所の状況に応じて最適な再生効率が得られるように設置することができる。これにより、設置場所に関わらず最適な低音域再生が実現できる。
【0034】
上記実施の形態では、バスレフポートの開口部がキャビネットの天面および側面に配置されたスピーカを示したが、開口部が配置される面は任意である。例えば、バスレフポートの1つを前面で開口するようにしてもよい。この場合、図3(a)に示すように、前面に配置されたスピーカユニット301の中央に開口部41を配置し、バスレフポート51がこの開口部41から外部空間と連通するようにしてもよい。これにより、前面にバスレフポートの開口部を配置しても前面の面積を最小限にすることができ、キャビネットの小型化と十分な低音域再生を同時に実現できる。
【0035】
上記実施の形態では、2つのキャビティを有するスピーカを示したが、図3(b)に示すような、第3のキャビティ23と、第3のスピーカユニット33と、第3の開口部43と、第3のバスレフポート53を有する3室以上の構成としてもよい。つまり、n段(nは2以上の自然数)のキャビティを構成したキャビネットに本発明を適用することができる。この場合、スピーカユニットが配置されるキャビティの数は任意であり、また、キャビティ毎に配置されるスピーカユニットの数も任意である。
【0036】
また、上記実施の形態では、各キャビティに構成されるバスレフポートの数は1つであったが、1つのキャビティに複数のバスレフポートが配置されてもよい。この場合図3(c)に示すように、1つのキャビティに配置される複数のバスレフポート41A,41B(42A,42B)を、再生音放射方向が互いに異なるように配置してもよく、あるいは図3(d)に示すように、1つのキャビティに対応する複数のバスレフポート41A,41B(42A,42B)が同方向を向くように配置されてもよい。
【0037】
なお、本発明にかかるスピーカにおいては、各キャビティに対応するバスレフポートが互いに異なる方向に再生音を放射するように構成されればよいので、例えば、各バスレフポートの開口方向を任意に可変できるようなキャビネットの構成としてもよい。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかるスピーカによれば、各キャビティの構造や大きさに応じて最適な長さを確保するようにバスレフポートを設計できる。
さらに、バスレフポート毎に互いに異なる方向に低音域再生音を放射するので、スピーカの設置位置(方向)によって低音域再生が阻害されることがない。従って、設置場所の状況やスピーカの設置位置(方向)に関わらず最適な低音域再生が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるスピーカ装置の構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかるスピーカ装置が、自動車内で使用された場合の音響特性を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態の変形例を示す図であり、(a)はスピーカユニットの中央に開口部が配置されたスピーカ装置の構成を示す断面図、(b)は3室構造のスピーカ装置の構成を示す断面図、(c)は1つのキャビティに複数の異なる方向のバスレフポートが配置されたスピーカ装置の外観を示す斜視図、(d)は1つのキャビティに複数の同方向のバスレフポートが配置されたスピーカ装置の外観を示す斜視図である。
【図4】スピーカ装置の従来例の構成を示す断面図であり、(a)はバスレフ方式のスピーカを示し、(b)、(c)はケルトン方式のスピーカを示している。
【符号の説明】
1 スピーカ装置
10 キャビネット
11 前面バッフル
12 サブバッフル
21,22,23 キャビティ
31,32,33,301 スピーカユニット
41,41A,41B 第1の開口部
42,42A,42B 第2の開口部
43 第3の開口部
51 第1のバスレフポート
52 第2のバスレフポート
53 第3のバスレフポート
100 自動車
200 座席

Claims (2)

  1. 前面に開口部を備えるキャビネットと、
    開口部を備え、前記キャビネットの内部を前後方向に少なくとも2つのキャビティに分割する仕切板と、
    前記キャビネットの開口部および前記仕切板の開口部に、直列配置となるように配置されたスピーカユニットと、
    前記キャビネットにキャビティ毎に配置され、キャビティと外部空間とを連通し、互いに異なる方向に向かって開口し、低音域の再生音を外部に放射する少なくとも2つのバスレフポートと、を備え、
    前記2つのバスレフポートのうち、一のバスレフポートは前記キャビネットの上方向に開口し、他のバスレフポートは前記キャビネットの横方向に開口
    前記2つのバスレフポートの共振周波数が異なるよう、前記バスレフポートの長さが設定されている、
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  2. 複数のキャビティと、該キャビティと外部空間とを連通して配置されたバスレフポートとを有するスピーカにおける音響再生方法であって、
    各キャビティで低音域再生音を増強し、増強した低音域再生音を、前記バスレフポートを通じて外部空間の互いに異なる方向に向けて放射する、
    ことを特徴とする音響再生方法。
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