JP3741887B2 - 表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は表示装置に関し、詳細には電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と書込み装置とが着脱可能に一体化した表示装置であって、高速書込みが可能で、かつ書込み装置から外しても表示媒体が表示画像を保持することができる表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体として、液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等が知られているが、それらを用いた表示装置の多くは表示媒体が一対の電極基板とその間に挿入された表示要素からなり、各電極に画像を表示するための信号を印加する駆動回路が接続されている。このような表示装置は、マトリックス状の2次元駆動が容易であるために特にアクティブマトリックス駆動を採用することにより、高速かつ高解像度の書込みが可能であるが、表示媒体を駆動部から切り離すことは実質上不可能である。そのために、表示媒体が大型化し、かつ高価なものとなり、手軽に持ち歩いたり、複数枚を並べて見るというような用途には不向きであった。
【0003】
一方、表示要素を挟む一対の基板の片方は電極のない絶縁物とし、その外側の表面にイオン照射手段によりイオン流を照射するなどして電荷を与え、それにより電界を印加する方式が、例えば特開平6−202168号公報に開示されている。この方式では表示媒体が書込み部と分離しているために手軽に持ち歩いたり、表示媒体を複数個用意することによって、複数の画像を並べて見ることが容易にできる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の方式によれば、イオン照射手段を高密度に2次元配列することが困難であるために書込みにはメカニカルな走査が必要となり、書込み速度が遅くなるという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためのものであり、高速書込みが可能で、しかも表示媒体を手軽に持ち歩いたり、複数の画像を並べて見ることが安価にできると共に、高コントラスト、高視野角かつ低消費電力の表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記問題点を解決するために、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、該表示媒体と着脱可能に一体化され、複数の信号電極と複数の走査電極を備えると共に、各信号電極と各走査電極との交差部の各々に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加するスイッチング素子を有する書込み装置とを有する表示装置において、表示媒体が、基板と、該基板上に設けられた共通電極と、該共通電極上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた絶縁体フィルムと、基板と絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備することに特徴がある。あるいは、表示媒体が、第1の絶縁体フィルムと、該第1の絶縁体フィルム上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた第2の絶縁体フィルムと、前記第1及び第2の絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備する。よって、表示媒体を低コストに作製できることにより、複数枚用意して複数の画像を並べて見る場合でも極めて安価にできる。
【0007】
また、表示要素が、強誘電性液晶、メモリ性高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等の電界の消去後も表示された画像を保持する表示物質であることにより、表示状態を保持したままで書込み装置から外すことができることにより手軽に持ち歩いたりできる。更に、表示要素が、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の電気泳動粒子を分散させたものであることにより、高コントラスト、高視野角かつ低消費電力の表示装置を提供できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、該表示媒体と着脱可能に一体化され、複数の信号電極と複数の走査電極を備えると共に、各信号電極と各走査電極との交差部の各々に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加するスイッチング素子を有する書込み装置とを有する表示装置において、表示媒体が、基板と、該基板上に設けられた共通電極と、該共通電極上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた絶縁体フィルムと、基板と絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備する。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
はじめに、本発明の基本構成について説明する。本発明の表示装置は、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、当該表示媒体と着脱可能に一体化された書込み装置とからなる表示装置において、前記書込み装置が複数の信号電極と走査電極を備え、その交差部に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加するように構成されている。このような構成を有する本発明の表示装置によれば、2次元配列された電界印加手段がスイッチング素子を有するため、表示媒体の応答速度が遅い場合でも高速書込みが可能となる。すなわち、1走査線当りの選択時間は1画面の書込み時間を走査線数で割った数値になるため、応答速度が遅い(液晶、エレクトロクロミック、電気泳動等は数十msから数百msと遅い)場合、走査線が多くなると選択時間内で応答することができなくなるが、スイッチング素子により非選択時には高抵抗となるので、表示媒体の容量を利用して電荷を蓄積することで電界保持時間を表示媒体が応答できる時間まで延ばすことができる。スイッチング素子として大面積に作製することが容易な薄膜デバイス、特に薄膜トランジスタを用いるのが好ましい。また、薄膜トランジスタはゲートに接続された走査電極から走査パルスを印加し、これに同期してソースに接続された信号電極から画像信号によって変調されたパルスがドレインに接続された個別電極より表示媒体に印加される。この薄膜トランジスタは3端子素子であるためスイッチング性能が高く、中間調を伴うような場合にも鮮明な表示を得ることができる。
【0011】
なお、表示の画素密度が大きくなると、スイッチング素子を用いても電界保持時間が不足する場合があり、その時には蓄積コンデンサを等価回路的に表示媒体と並列になるように設けるのが好ましい。
【0012】
また、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体は、電界の消去後も表示された画像を保持するものである。このようにすることにより、書込み装置からの画像信号に応じた電界印加により画像を表示した後、表示媒体を書込み装置から外して手軽に持ち歩いたり、表示媒体を複数個用意することによって、複数の画像を並べて見ることが容易にできる。また、電界の消去後も表示された画像を保持できる、すなわちメモリ性を有する表示媒体として、強誘電性液晶、メモリ性高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等が挙げられる。
【0013】
更に、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体は、共通電極を設けた基板と所定の間隔を有して対向する絶縁体フィルムとの間に、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質或いは物質群(以下、表示要素と称す)を具備する。このような表示媒体は、詳細は後述するが図1に示すように書込み装置1に絶縁フィルム23を密着させ、共通電極22をアース電位として、書込み装置から画像信号に応じた電界を絶縁体フィルムを介して、表示装置24に印加することにより画像を表示する。書込み装置から印加された電界は、絶縁体フィルムと表示要素との間で容量配分されるため、表示要素の両端に実効的にかかる電圧は減少する。図5に等価回路を示す。Cf及びRfは絶縁フィルムの容量及び抵抗、Cm及びRmは表示要素の容量及び抵抗、Eは電源電圧である。通常Rf及びRmは十分大きいので、表示要素の両端に実効的にかかる初期電圧Vmは近似的に
【0014】
【0015】
となる。ここでεf及びdfは絶縁体フィルムの比誘電率及び厚さ、εm及びdmは表示要素の比誘電率及び厚さである。今、絶縁体フィルムとしてεf=6.2、df=25μmのポリフッ化ビニル(PVF)を用い、表示要素として着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の電気泳動粒子を分散させたもの(主物質は分散媒である有機溶媒、例えばテトラクロロエチレンでεm=2.3、dm=50μmとする)を用いると、Vmは約0.83Eとなるので、絶縁体フィルムを介さないで直接電極で表示要素に印加する場合の電圧の約1.2倍の電源電圧があればよく、ほとんど問題がないことがわかる。このような構造の表示媒体は電極の加工等を必要としないため製造コストが低く、安価にできるため複数個持つことも容易となる。
【0016】
なお、共通電極及び基板と絶縁体フィルムの少なくとも片方(表示を視認する側)は可視光に対して透明であることが必要である。また、基板と絶縁体フィルムとの間隔を均一に保つために表示に影響しない程度の支持体を内部に設けるのが望ましい。
【0017】
また、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体は、所定の間隔を有して対向する一対の絶縁体フィルム間に、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する表示要素を具備する。このような表示媒体によれば、詳細は後述するが図3に示すように書込み装置1の片方に絶縁フィルム23を密着させ、もう一方の絶縁体フィルム23’にアース電位に接続された共通電極板4(書込み面と対向するように書込み装置に付属する)を密着させることにより、両方の絶縁体フィルムを介して、書込み装置から画像信号に応じた電界を表示要素に印加することにより画像を表示する。この場合も表示要素の両端に実効的にかかる電圧は減少する。前記と同じ絶縁体フィルムと表示要素を用いた場合、絶縁体フィルムの厚さが2倍(2枚用いる)となるため、Vm=0.73Eとなり、絶縁体フィルムを介さないで直接電極で表示要素に印加する場合の電圧の約1.4倍の電源電圧が必要となる。このような構成の表示媒体は共通電極を形成する必要がないので更に製造コストを低くできる。
【0018】
なお、絶縁体フィルムの少なくとも片方(表示を視認する側)は可視光に対して透明であることが必要である。また、絶縁体フィルム間の間隔を均一に保つために表示に影響しない程度の支持体を内部に設けるのが望ましい。
【0019】
更に、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する表示要素は、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の電気泳動粒子を分散させたものである。電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する表示要素としては、強誘電性液晶、メモリ性高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、酸化還元反応により着色と消色が可逆的に行われる物質からなる膜とそれに接する電解液からなるもの(エレクトロクロミック素子)、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の電気泳動粒子を分散させたもの(電気泳動素子)等が挙げられるが、強誘電性液晶は表示を行うために偏光板が必要であるために、表示媒体の上下にパターニング電極を内蔵しない上記装置には不向きである。また、メモリ性高分子分散型液晶や双安定性コレステリック液晶は散乱によって白色を表示するが、散乱能がそれほど高くないため十分な白色濃度が得られないという問題がある。更に、液晶の誘電率が比較的大きいために液晶にかかる初期電圧が相当小さくなってしまうという問題もある。エレクトロクロミック素子は表示の見やすさの点では液晶より優れているが、電気化学反応を利用しているための書込み時に電流が流れ、消費電力が大きくなるという欠点がある。さらに、電解液の誘電率が非常に大きく、抵抗もそれほど高くないため上記装置には不向きである。これに対して、電気泳動素子は着色した分散媒中で帯電した粒子が電界を印加されることにより、電界と平行な向きに泳動し片側に堆積する現象に基づくものであり、粒子の色を分散媒と異ならせることにより、粒子が視認側に堆積した時には粒子の色が観測され、逆側に堆積した時には分散媒の色が観測されるので表示が可能となる。一度堆積した粒子はファンデルワールス力により電界が消滅した後も状態を維持できる。この場合エレクトクロミックと同様の見やすさ(高コントラスト、高視野角)を有し、かつ電流がほとんど流れないため消費電力が小さいという長所がある。また、主要な成分である分散媒(有機溶媒)として、低誘電率かつ高抵抗なものを選択することにより、上記表示装置に適するものができる。
【0020】
次に、本発明の第1の実施例に係る表示装置の構成について図1に基づいて説明する。同図において、書込み装置1は、表面に複数の信号電極と走査電極を備え、その交差部に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有している。表示媒体2は、共通電極22を設けた基板21と支持体25により所定の間隔を有して対向する絶縁体フィルム23との間に、表示要素24を具備している。電源回路3は画像に応じた信号を書込み装置1に与えるための電源回路である。基板21はガラス、プラスチック等からなり、視認側に用いる場合には透明な材質のものが選ばれる。共通電極22は金属、ITO、SnO2 、ZnO:Al等の導電体薄膜からなり、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で形成される。基板21を視認側に用いる場合には共通電極22として、ITO、SnO2 、ZnO:Al等の透明な材質のものが選ばれる。支持体25はドライフィルムレジスト、ポリエステルフィルム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等からなり、数μmから数百μmの厚さに形成される。表示要素24としては電気泳動素子が好ましく用いられる。絶縁体フィルム23は耐溶剤性に優れ、比較的誘電率の大きいポリフッ化ビニル(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等からなり、10〜100μmの厚さとされる。視認側に用いる場合には透明な材質のものが選ばれる。
【0021】
次に、電気泳動素子を用いた表示媒体の構成の一例を図4に基づいて説明する。分散媒26はベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、臭化エチル等のハロゲン化炭(化水)素類の抵抗率の高い有機溶媒中にアントラキノン類やアゾ化合物質等の油溶性染料を0.01〜10wt.%程度含有させたものからなる。有機溶媒は比重や粘度を調整するために2種類以上を混合して用いてよい。泳動粒子27は二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機顔料やダイアリーライドイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料からなる。これらは分散媒27と比重を合わせるため、或いは凝集を防いで分散性を高めるために表面に他の物質を被覆したり、他の物質と複合化してもよい。泳動粒子の粒径としては0.01〜10μm程度が好ましい。また、泳動粒子の表面電荷量を制御したり、分散性を高める目的で、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等を添加してもよい。これらの表示要素を基板21と絶縁体23の間に封入する方法として、過剰量を基板上に滴下して絶縁体フィルムを押しつけながら押し出す方法(押出し法)や毛管現象を利用して吸い込む方法(吸い込み法)が使用できる。
【0022】
また、書込み装置の表面の構造の一例を図2に基づき説明する。図2の書込み装置はスイッチング素子に薄膜トランジスタを用いた場合である。基板10としてガラス等の絶縁体又は表面を絶縁化した金属を用いる。同図において、ゲート電極を兼ねる走査電極11は、Ta、Mo、W、Al等の金属薄膜からなる。ゲート絶縁膜12はSiNx 、SiOx 、等の絶縁体薄膜からなる。チャネル13はa−Si、Poly−Si等の半導体薄膜からなる。ソース電極を兼ねる信号電極14及びドレイン電極15はそれぞれAl、Cr等の金属薄膜からなる。個別電極16はAl、Cr、ITO、SnO2 、ZnO:Al等の導電性薄膜からなる。オーバーコート層17はSiO2 、DLC(Diamond Like Carbon)等の無機物質或いはポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の無機物質からなる。これらはスパッタリング法、CVD法、塗布法等の薄膜形成技術とウェットエッチング法、ドライエッチング法等のパターンニング技術とを組み合わせた公知の方法で作製することができる。なお、図2はスイッチング素子の1ユニットを示したものであり、表示画面の大きさと画素密度(解像度)に応じてX方向及びY方向に同一パターンが繰り返し形成される。
【0023】
次に、本発明の第1の実施例に伴う具体例1を以下に説明すると、基板21として100μm厚のPETを用い、ITO薄膜をスパッタリング法により形成して共通電極22とした。支持体25は厚さ50μmのドライフィルムレジストをフォトリソエッチングして形成した。分散媒26としてテトラクロロエチレンに0.5wt.%の青色染料(マクロレックスブルーRR:バイエル社)を溶解したものを用い、泳動粒子27として、表面をAlで処理した平均粒径0.21μmの二酸化チタン(CR60:石原産業(株)製)を用いた。この粒子とジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを分散媒に各々5vol.%と0.01wt.%混合したものを基板上に滴下した後、厚さ25μmのPVFフィルム(絶縁体フィルム23)を押し当てながら周囲をエポキシ系接着剤で封止して、表示媒体2を作製した。書込み装置1として、表面に図2に示す薄膜トランジスタを2200×1600個(電極間ピッチ125μm)形成したものを用い、1走査線当りの選択時間を0.1msとして、全ラインの書込み(所要時間:0.1ms×2200=220ms)を行った。共通電極側が白表示となる電圧を+20V、青表示となる電圧を−20Vとした。書込み終了後間もなく全画面の表示が完了した。上記表示媒体は書込み装置から外しても表示状態を保持していた。確認のためにこの表示媒体のPVFフィルム側に金属板を密着させて、共通電極22をアース電位とし、金属板に+20Vの電圧を印加したところ共通電極に粒子が堆積し、白色表示が得られた。この時の応答時間は90msであった。本具体例で用いた分散液は抵抗率がρm=1×1011Ωcm、比誘電率がεm=2.3である。また、PVFフィルムの抵抗率はρf=1×1015Ωcm、比誘電率はεf=6.2である。図5の等価回路から表示媒体に印加された電圧はτ=Rf・Rm(Cf+Cm)/(Rf+Rm)の時定数で減衰する。Rf≫Rmであるので近似的にτ=Rm(Cf+Cm)=ρm[εm+εf(dm/df)]ε0 となる。ここで分散液の厚さdm=50μm、PVFフィルムの厚さdf=25μm、真空の誘電率ε0 =0.0885×10−12F/cmを代入すると、τ=0.13秒となり、応答速度(90ms)に比べて大きいため選択時間が短くても表示できたものと考えられる。一方、スイッチング素子を持たない電極を走査する場合、1走査線の選択時間は応答時間以上としなければならないため、上記全画面の表示を行うには90ms×2200=198秒以上を要することは容易に推察できる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施例に係る表示装置を図3に基づいて説明する。同図において、書込み装置1は、表面に複数の信号電極と走査電極を備え、その交差部に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有している。表示媒体2は、支持体25により所定の間隔を有して対向する一対の絶縁体フィルム23、23’の間に、表示要素24を具備している。電源回路3は画像に応じた信号を書込み装置1に与えるための電源回路である。共通電極板4はガラス、プラスチック等の基体41に金属、ITO、SnO2 、ZnO:Al等の導電体薄膜42を、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で形成したものや金属等が使用される。表示媒体の構成材料は第1の実施例と同様なものが使用できる。絶縁体フィルム23及び23’は同一材料でも異なる材料でもよいが、少なくとも一方(表示を視認する側)は可視光に対して透明な材質のものが選ばれる。書込み装置の表面には第1の実施例と同様に図2に示すスイッチング素子が複数設けられる。
【0025】
次に、本発明の第2の実施例に伴う具体例2を以下に説明すると、基板21と共通電極22の代わりに絶縁体フィルム23’として厚さ50μmのPVFフィルムを用い、泳動粒子27として、TiO2−フェノール樹脂複合粒子を用いた。TiO2−フェノール樹脂複合粒子はTiO2 粒子(CR60:石原産業(株)製)をフェノール樹脂前駆体と硬化剤を含む溶剤中に撹拌混合し、加熱硬化させた後、ボールミルで粉砕することによって得た。平均粒径は約1μmであった。これ以外は上記具体例1と同様にして表示媒体2を作製した。書込み装置1として、表面に図2に示す薄膜トランジスタを2200×1600個(電極間ピッチ125μm)形成したものを用い。共通電極板4として、ITO薄膜を形成したガラス板を用いた。1走査線当りの選択時間を0.1msとして、550ラインを1ブロックとして、各ブロックを2回走査した後に次のブロックに移るという駆動を行った。全ラインの書込み(所要時間:0.1ms×550×2×4=440ms)終了後間もなく全画面の表示が完了した。この場合は粒子の表面電荷が具体例1と逆の負であったので、共通電極側が白表示となる電圧を−30V、青表示となる電圧を+30Vとした。df=75μmとして、減衰時間を計算すると57msとなり、応答速度より小さい可能性があったため、上記駆動方法を採用した。上記表示装置は書込み装置から外しても表示状態を保持している。
【0026】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、該表示媒体と着脱可能に一体化され、複数の信号電極と複数の走査電極を備えると共に、各信号電極と各走査電極との交差部の各々に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加するスイッチング素子を有する書込み装置とを有する表示装置において、表示媒体が、基板と、該基板上に設けられた共通電極と、該共通電極上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた絶縁体フィルムと、基板と絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備することに特徴がある。あるいは、表示媒体が、第1の絶縁体フィルムと、該第1の絶縁体フィルム上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた第2の絶縁体フィルムと、前記第1及び第2の絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備する。よって、表示媒体を低コストに作製できることにより、複数枚用意して複数の画像を並べて見る場合でも極めて安価にできる。
【0028】
また、表示要素が、強誘電性液晶、メモリ性高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等の電界の消去後も表示された画像を保持する表示物質であることにより、表示状態を保持したままで書込み装置から外すことができることにより手軽に持ち歩いたりできる。更に、表示要素が、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の電気泳動粒子を分散させたものであることにより、高コントラスト、高視野角かつ低消費電力の表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施例における書込み装置の一部を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】第1の実施例における電気泳動素子を用いた表示媒体の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の表示装置の等価回路を示す図である。
【符号の説明】
1 書込み装置
2 表示媒体
3 電源回路
21 基板
22 共通電極
23 絶縁体フィルム
24 表示要素
25 支持体
Claims (4)
- 電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、該表示媒体と着脱可能に一体化され、複数の信号電極と複数の走査電極を備えると共に、前記各信号電極と前記各走査電極との交差部の各々に画像信号に応じて前記表示媒体に電界を印加するスイッチング素子を有する書込み装置とを有する表示装置において、
前記表示媒体が、基板と、該基板上に設けられた共通電極と、該共通電極上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた絶縁体フィルムと、前記基板と前記絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備することを特徴とする表示装置。 - 電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、該表示媒体と着脱可能に一体化され、複数の信号電極と複数の走査電極を備えると共に、前記各信号電極と前記各走査電極との交差部の各々に画像信号に応じて前記表示媒体に電界を印加するスイッチング素子を有する書込み装置とを有する表示装置において、
前記表示媒体が、第1の絶縁体フィルムと、該第1の絶縁体フィルム上に設けられた支持体を介して所定の間隔を有すると共に対向して設けられた第2の絶縁体フィルムと、前記第1及び第2の絶縁体フィルムの間に設けられた、電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる物質或いは物質群等の表示要素とを具備することを特徴とする表示装置。 - 前記表示要素が、強誘電性液晶、メモリ性高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等の電界の消去後も表示された画像を保持する表示物質である請求項1又は2に記載の表示装置。
- 前記表示要素が、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の電気泳動粒子を分散させたものである請求項1又は2に記載の表示装置。
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