JP3740915B2 - 切削工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴の加工に用いて好適な切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の切削工具として、本発明の発明者らは、例えば特許第2779112号や特許第2804696号などにおいて、軸線回りに回転される略円錐状の工具本体の先端にガンリーマ等の穴加工工具が上記軸線に沿って出没可能に設けられるとともに、この工具本体先端の上記穴加工工具の周辺の内周側と外周側とにはそれぞれ切刃チップが取り付けられ、さらに工具本体の外周に該工具本体がなす円錐の母線方向に沿って形成された凹溝にも、切刃チップを先端に備えたスライダーが該母線方向に摺動可能に装着されたものを提案している。ここで、上記工具本体内部に形成された取付孔には、上記軸線に平行に延びるキーを介して該工具本体と一体回転可能かつ上記軸線方向に進退可能にカップリングが取り付けられており、このカップリングには上記母線に直交するとともに上記軸線に交差する方向に連結孔が形成される一方、上記凹溝の底面には、上記取付孔に開口してこの取付孔と凹溝とを連通せしめる連通孔が形成されている。
【0003】
そして、さらに上記スライダーには、凹溝底面の上記連通孔から上記取付孔内に突出してカップリングの連結孔に出没自在に嵌挿させられる連結ピンが取り付けられており、上記カップリングを軸線方向に進退させることにより、この連結ピンが連結孔に対して出没しながらスライダーを凹溝に沿って母線方向に摺動させるので、その先端の切刃チップもこの母線に平行に移動させられる。従って、このような構成の切削工具によれば、上記穴加工工具によってバルブ穴の内周の加工が行われる一方、このスライダーの切刃チップの移動経路が上記軸線回りになす回転軌跡を、工具本体先端の内外周の切刃チップの回転軌跡の間を結ぶように設定することにより、これらの切刃チップによって上記バルブ穴の開口部周縁の加工を、このバルブ穴の加工と正確に同軸的に行うことが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような構成の切削工具において、工具本体外周の凹溝に取り付けられたスライダーを、工具本体内部の取付孔に取り付けられたカップリングの進退により連結ピンを介して上記母線方向に確実に摺動可能とするには、これら工具本体、スライダー、カップリング、および連結ピンといった部品を、それぞれに高い成形精度で製造する必要があるが、このような部品を製造するに際しては、ある程度の成形誤差や精度のばらつきが生じることは避けられない。しかるに、この点、上記従来の切削工具においては、工具本体の凹溝とスライダーとの間にはクサビ部材やスペーサーとともに調整部材が介装されており、またこのスライダーと連結ピンとの間にも両者の上記母線方向の位置を微調整する微調整機構を備えることが提案されている。
【0005】
しかしながら、この連結ピンと上記カップリングとは、従来カップリングに形成された断面円形の丸孔である上記連結孔に円柱状の上記連結ピンが単に嵌挿されて連結されているだけであるので、たとえ上記微調整機構によって連結ピンと連結孔との上記母線方向の位置が調整可能であったとしても、上記成形誤差や精度のばらつきにより工具本体の周方向においてこれら連結ピンと連結孔との位置にズレが生じてしまうと、連結ピンを連結孔に挿入してカップリングとスライダーとを連結することができなくなってしまう。その一方で、工具本体に形成された凹溝に取り付けられる限られた大きさのスライダーに、上記母線方向の位置の微調整機構に加えて、この周方向の位置を微調整する調整機構をも設けることはきわめて困難であり、またたとえそのような調整機構を設けることができたとしても、これら両方向の調整作業が甚だ煩雑となることは避けられない。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、上述のような構成の切削工具において、このような工具本体の周方向への調整機構を設けることなく、簡略な手段で、しかも確実に連結ピンを連結孔に挿入してカップリングとスライダーとを連結することが可能な切削工具を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転される外形略円錐台状の工具本体の母線に沿って形成された凹溝に、切刃チップを備えたスライダーを上記母線方向に摺動可能に装着するとともに、上記工具本体内部に形成された取付孔には、該工具本体と一体回転可能かつ上記軸線方向に進退可能にカップリングを取り付け、このカップリングには、上記凹溝と取付孔とを連通する連通孔に臨んで開口する連結孔を形成する一方、上記スライダーには、上記連通孔から上記取付孔に突出して上記連結孔に出没自在に挿入される連結ピンを設け、この連結ピンを上記連結孔に、上記母線方向に係合可能かつ上記工具本体の周方向に向けては摺動自在に嵌挿させたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、上述のような構成の切削工具において、連結ピンは、カップリングの連結孔に嵌挿されることによってスライダーを上記母線方向に摺動させるものであって、スライダー自体の周方向の位置は、該スライダーが凹溝に装着されることにより、この凹溝の内壁や上記クサビ部材、スペーサーによって所定の位置に位置決めされているので、連結ピンとカップリングとは上記母線方向にのみ係合していればよく、工具本体の周方向に係合させられる必要はない。そこで、この連結ピンを上記連結孔に対して上記周方向に向けては摺動自在としておけば、たとえこれら連結ピンやスペーサー、カップリングに成形誤差等があって連結ピンや連結孔が周方向に所定の位置からずれていたとしても、このずれた位置で連結ピンを連結孔に嵌挿(ただし、嵌合しているのは上記母線方向のみ)することが可能となり、しかもこのずれは連結ピンとカップリングとの上記母線方向の係合には支障を来さないので、該連結ピンを介してカップリングの進退によりスライダーを確実に摺動させることができるのである。
【0009】
ここで、このように連結ピンを連結孔に上記母線方向に係合可能かつ上記工具本体の周方向に向けては摺動自在に嵌挿させるには、この連結孔を、上記母線方向に上記連結ピンが嵌挿可能な幅で工具本体の周方向に向けて延びる長孔状に形成するのが望ましい。ただし、このように連結ピンが連結孔に対して工具本体の周方向に摺動自在であるといっても、これは、連結ピンが上記母線方向に嵌合した状態で周方向には連結孔の任意の位置に挿入可能であるということであり、組み立てられた当該切削工具においては、カップリングを進退させることによってスライダーを摺動させても、連結ピンは連結孔内を出没する際に該連結ピンの中心軸方向に摺動するだけであって、工具本体の周方向に連結孔内を移動したりするようなはない。また、これら連結ピンと連結孔との上記母線方向の係合をより確実にするには、上記連結孔に、上記母線方向に対向する一対の互いに平行な壁面を備えるとともに、上記連結ピンには、これらの壁面に摺接可能な一対の互いに平行な側面を形成するのが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1ないし図5は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態において工具本体1は、先端側(図1において左側)に向かうに従い段階的に縮径する外形略多段円錐台状をなしており、その後端部が図示されない工作機械の主軸端等に装着されて、図2に示す工具回転方向Tにその軸線O回りに回転されて切削加工に供される。また、この工具本体1の先端には上記軸線Oに沿ってブッシュ2が装着されており、このブッシュ2に上述したガンリーマ等の穴加工工具(図示略)のシャンクを嵌挿して、工具本体1ごと回転しつつ該穴加工工具を前進させることにより、上述のようなバルブ穴の内周の仕上げ加工等が可能とされている。なお、図中に符号3で示すのは、この穴加工工具のシャンクを、やはり図示されないチャックスピンドルに取り付けるためのクランプ機構である。
【0011】
さらに、工具本体1の先端部外周には、上記バルブ穴の開口部周縁の加工を行う3つの切刃チップ4…が設けられており、これらの切刃チップ4…のうち2つは工具本体1に直接的に取り付けられる一方、残りの一つは、工具本体1がなす円錐の母線の方向に沿って該工具本体1の外周に形成された凹溝5に摺動可能に取り付けられたスライダー6の先端に取り付けられている。ここで、上記凹溝5は、図3に示すように互いに平行な一対の対向する壁面5a,5bと、これらの壁面5a,5bに直交する底面5cとにより画成されて外周側に開口する断面「コ」字状をなしており、上記壁面5a,5bのうち工具回転方向T側を向く壁面5aにはスペーサー7が、また工具回転方向Tの後方側を向く壁面5bにはプレート8が、それぞれ上記スライダー6との間に介装されている。
【0012】
スペーサー7は、工具本体1への装着状態において凹溝5の略全長に亙って延びるように形成された板状の部材であって、凹溝5の上記壁面5aおよび底面5cに密着するように一対のクランプネジ9,9によって着脱可能に取り付けられており、その凹溝5の内側、すなわち工具回転方向T側を向く側面には、図3に示すように上記母線方向に沿って延びる断面波型のセレーション溝7aが形成されている。一方、プレート8は、やはり凹溝5の略全長に亙って延びるように形成された板状部材であって、凹溝5の壁面5bとスライダー6との間に挟み込まれるようにして着脱可能とされており、その上記壁面5bに対向する側面からは貫通孔8aが穿設されている。
【0013】
また、上記スライダー6は、図1に示すように「く」字状に曲折する角柱状部材であって、その基端側が凹溝5内に配置されるとともに、先端部には上記切刃チップ4が着脱自在に取り付けられている。ここで、このスライダー6の基端部には、工具本体1への取付状態において図3に示すように上記壁面5a側、すなわち工具回転方向Tの後方側を向く一方の側面に、スペーサー7のセレーション溝7aに密着する断面波型のセレーション溝6aが形成されており、スライダー6は、このセレーション溝6aをスペーサー7のセレーション溝7aに合致させて係合させるとともに、その基端部の工具回転方向T側を向く他方の側面6bをプレート8に密着させ、さらにその下面6cを凹溝5の底面5cに密着させて、凹溝5内に上記母線方向に沿って摺動可能に取り付けられている。
【0014】
なお、凹溝5の上記壁面5b側には、該壁面5bに垂直に工具本体1の外周面に向けて貫通する取付孔5dが上記母線方向に複数形成されており、これらの取付孔5dの上記壁面5b側の貫通部は一段小径とされるとともに、上記外周面側の開口部内周には雌ネジ部が形成され、またこれら貫通部と雌ネジ部との間にはブッシュ10が嵌挿されている。そして、これらの取付孔5dにはそれぞれ、上記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が形成された頭部とプレート8の貫通孔8aに嵌挿可能な軸部とを備えた止めネジ11が取り付けられており、各止めネジ11の上記軸部の周りには皿バネ12…が外嵌されて上記貫通部から壁面5bに突出してプレート8に当接させられていて、止めネジ11のねじ込み量に応じてこの皿バネ12…がプレート8を介してスライダー6をスペーサー7側に押し付け、両者のセレーション溝6a,7aを強固に係合せしめるようになされている。
【0015】
さらに、工具本体1の内部には、その後端から軸線Oに沿って断面円形の取付孔1aが形成されており、この取付孔1aの内周にカップリング13が嵌挿されて取り付けられている。このカップリング13は図4に示すように外形略円筒状の部材であって、その外周には該カップリング13の中心線に平行にキー取付溝13aが形成されてキー13bが嵌着される一方、取付孔1aの内周には、周方向において上記凹溝5が形成された位置と同じ位置に、軸線Oに平行に延びるキー溝1bが形成されており、このキー溝1bに上記キー13bを嵌合させることにより、カップリング13はその上記中心線を軸線Oと一致させて取付孔1aに嵌挿され、工具本体1と軸線O回りに一体に回転可能、かつ取付孔1a内を該軸線O方向に進退可能とされている。また、このカップリング13の内周部はその内径が多段に変化させられていて、この内周部に図示されないスライド軸が取り付けられることにより、カップリング13は軸線O方向に進退させられる。さらに、このスライド軸の内周には上記チャックスピンドルが挿入されていて、カップリング1の進退とは独立して上記穴加工工具が進退可能とされている。なお、図中に符号13cで示すのは、上記クランプ機構3の後端部を収容するためにカップリング13に形成された凹所である。
【0016】
さらにまた、このカップリング13の先端外周部は、先端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ面状に形成されており、そのテーパ角は、凹溝5の上記底面5cが工具本体1の軸線Oに対してなす傾斜角と等しくされている。そして、この先端外周部には、周方向において上記キー取付溝13aと中心を同じくして、該先端外周部がなすテーパ面に垂直に内周側に向かうに従い後端側に向かう連結孔14が形成されており、この連結孔14は、図4に示すようにカップリング13の周方向に延びる長孔状に形成されていて、特に本実施形態では、工具本体1への取付状態において凹溝5が形成される上記母線方向に直交する方向(図1の図面に直交する方向)に延びるように形成されている。従って、カップリング13の内外周を向いて互いに対向する連結孔14の一対の壁面14a,14aも、本実施形態では上記母線方向に垂直に配設されて該母線方向に対向し、かつこの母線方向に直交する上記方向に沿って周方向に向け互いに平行に延設されるとともに、この延設方向における該壁面14a,14aの幅は上記母線方向の壁面14a,14a間の間隔よりも大きくされることとなる。
【0017】
一方、工具本体1の取付孔1aの先端側の部分は、カップリング13の先端外周部と等しいテーパ角でその内径が先端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ面状に形成されているとともに、周方向において上記キー溝1bと同じ位置で凹溝5の底面5cとオーバーラップさせられており、これによりこの凹溝5の底面5cには、該凹溝5と上記取付孔1aとを連通せしめる連通孔5eが形成されることとなる。従って、取付孔1aに取り付けられたカップリング13の上記連結孔14は、この連通孔5eに臨んで開口して、凹溝5の底面5cに垂直に内周側に向かうに従い後端側に向かい、かつ工具本体1の周方向に向けて上記母線方向に直交する方向に延びるように配設されることとなる。そして、スライダー6の上記基端部には、その上記下面6cに垂直に、すなわち凹溝5への取付状態において該凹溝5の底面5cに垂直となるように当該基端部を貫通し、上記連通孔5eに臨んで開口する連結ピン取付孔6dが形成されており、この連結ピン取付孔6dにはクランプネジ15,15によって連結ピン16が取り付けられ、その先端が上記連通孔5eから取付孔1a内に突出させられてカップリング13の上記連結孔14に嵌挿させられている。
【0018】
この連結ピン16は、図5に示すようにその後端部が断面偏8角形の頭部16aとされて、その両側部には上記クランプネジ15,15の頭部に係合する凹部16b,16bが形成されるとともに、これよりも先端側は略円柱状の軸部16cとされ、このうちさらにスライダー6への取付状態において上記下面6cから垂直に突出して上記連通孔5eから取付孔1a内に突出させられる先端側の部分には、このスライダー6の凹溝5への取付状態において上記母線方向側を向くその両側部が切りかかれるようにして、それぞれ該母線方向に垂直かつ互いに平行な一対の側面16d,16dが形成されており、従ってこれらの側面16d,16dは、取付孔1aに取り付けられた状態のカップリング13の連結孔14の上記壁面14a,14aと平行に配置されることとなる。しかして、これら側面16d,16d間の幅は、該側面16d,16dが上記壁面14a,14aにそれぞれ対向して摺接することによって連結ピン16の上記先端部がカップリング13の上記連結孔14に嵌挿可能な大きさとされており、この連結孔14がカップリング13の取付孔1aへの取付状態において工具本体1の周方向に向けて上記母線方向に直交する方向に延びる長孔状とされることにより、連結ピン16は、上記側面16d,16dが壁面14a,14aに摺接して密着したまま、該連結孔14が延びる範囲内において、工具本体1の周方向に向けてやはり上記母線方向に直交する方向に摺動自在に連結孔14に嵌挿されることとなる。
【0019】
このような切削工具は、上記ブッシュ2、クランプ機構3、および上記2つの切刃チップ4,4を取り付けた工具本体1の取付孔1aにカップリング13を、キー13bをキー溝1bに嵌合させて取り付けるとともに、さらに残りの切刃チップ4を取り付けたスライダー6をスペーサー7およびプレート8で挟み込んで凹溝5に装入してクランプネジ9,9と止めネジ11…および皿バネ12…とによって装着した上で、このスライダー6の上記連結ピン取付孔6dに連結ピン16を挿入して、その先端部を上記連通孔5eから取付孔1a内に突出させてカップリング13の連結孔14に上述のように嵌挿し、クランプネジ15,15によって該連結ピン16をスライダー6に固定することにより、組み立てられる。
【0020】
しかして、上記構成の切削工具では、このスライダー6に連結ピン16を取り付けてその先端部をカップリング13の連結孔14に嵌挿する際に、このスライダー6の連結ピン取付孔6dや連結ピン16の成形誤差あるいはカップリング13の連結孔14の成形誤差などにより、連結ピン16の先端部と連結孔14との嵌挿位置に工具本体1の周方向に向けてのずれが生じたりしていても、特に本実施形態ではこの連結孔14の上記壁面14a,14aと連結ピン16の上記側面16d,16dとの平行度さえ確保されていれば、上述のように連結ピン16が連結孔14に対して工具本体1の周方向に向けて摺動自在とされているため、この周方向にずれた位置で側面16d,16dを壁面14a,14aに摺接させて連結ピン16を連結孔14に嵌挿可能となり、この連結ピン16を介してカップリング13とスライダー6とを連結してカップリング13の進退に伴い確実にスライダー6を上記母線方向に摺動させることができる。従って、このような切削工具によれば、スライダー6にこの周方向における連結ピン16の位置の調整機構などを設けたりせずとも、成形誤差等によってカップリング13とスライダー6とを連結できなくなるような不具合が生じるのを防ぐことができ、これらの部品の構造の簡略化を図ることができるとともに、その製造に際して必要以上の高い成形精度を要したりすることもなくなる。
【0021】
また、本実施形態では、このように連結ピン16を連結孔14に工具本体1の周方向に向けて摺動自在に嵌挿するに際して、この連結孔14を上述のように周方向に向けて上記母線方向に直交する方向に延びる長孔状に形成しており、例えばこの連結孔を断面正方形や上記母線方向に延びる長方形状に形成するとともに上記連結ピンもこの連結孔に嵌挿可能かつ上記周方向に摺動自在な上記母線方向に延びる断面長方形状に形成したりした場合に比べ、その大きさが制限されざるを得ない連結ピン16にあって、該連結ピン16を上記連結孔14に対して摺動自在としながらも、連結ピン16と連結孔14との摺接面積を確保して上記母線方向に向けて確実に係合させることが可能となり、カップリング13の進退によってスライダー6をより精度よく摺動させることができる。しかも本実施形態では、連結孔14が上記母線方向に対向する一対の互いに平行な壁面14a,14aを備えているとともに、連結ピン16にはこれらの壁面14a,14aに摺接可能な一対の互いに平行な側面16d,16dが形成されているので、連結ピン16と連結孔14との間に一層大きな摺接面積を確保することができ、これによっても連結ピン16と連結孔14とを上記母線方向に確実に係合させることが可能となる。
【0022】
なお、本実施形態ではこのように連結孔14に上記母線方向に対向する互いに平行な一対の壁面14a,14aを備えるとともに、連結ピン16にはこれらの壁面14a,14aに摺接可能な一対の互いに平行な側面16d,16dを形成しているが、例えばこの連結ピンを連結孔14に嵌挿可能な直径の断面円形としたりすることにより、上記母線方向に係合可能かつ周方向に向けて摺動自在とすることも可能である。また、本実施形態では連結ピン16を工具本体1の周方向に摺動自在に連結孔14に嵌挿するに際して、この連結孔14を上記母線方向に直交する方向に延びる長孔状に形成してこの母線方向に直交する方向に連結ピン16を摺動自在としているが、特に上述のように連結ピンを断面円形とした場合には、連結孔を上記軸線Oを中心とした円錐面状に形成して該連結孔がカップリング13の先端外周部の上記テーパ面に円弧状に開口するように形成したりしてもよく、この場合には、例えばカップリング13において上記連結孔とキー取付溝13aとの中心が周方向にずれていたり、あるいは取付孔1aのキー溝1bが所定の位置からやはり周方向にずれていたりしても、連結ピンを上記母線方向に係合可能かつ周方向(ただし、この場合には軸線Oを中心とした円周方向)に向けて摺動自在として確実に連結孔に嵌挿することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、工具本体外周の母線方向に沿って摺動可能とされたスライダーに取り付けられる連結ピンが、カップリングに形成された連結孔に、上記母線方向に係合可能かつ工具本体の周方向に向けては摺動自在に嵌挿させられるので、これらの部品に成形誤差や精度のばらつきなどがあっても、複雑な構造の調整機構等を要することなく、連結ピンが連結孔に嵌挿不能となるような事態を防いで、確実にカップリングとスライダーとを連結することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】 図1に示す実施形態を先端側からみた正面図である。
【図3】 図2におけるXX断面図である。
【図4】 図1に示す実施形態のカップリング13の(イ)先端側からみた正面図、(ロ)側断面図、(ハ)(ロ)におけるY方向視の図、(ニ)(ロ)におけるZ方向視の図である。
【図5】 図1に示す実施形態の連結ピン16の(イ)一部破断側面図、(ロ)先端側(軸部16c側)からみた図である。
【符号の説明】
1 工具本体
1a 取付孔
4 切刃チップ
5 凹溝
5e 連通孔
6 スライダー
7 スペーサー
8 プレート
13 カップリング
14 連結孔
14a 連結孔14の壁面
16 連結ピン
16d 連結ピン14の側面
O 工具本体1の軸線
T 工具回転方向
Claims (3)
- 軸線回りに回転される外形略円錐台状の工具本体の母線に沿って形成された凹溝に、切刃チップを備えたスライダーが上記母線方向に摺動可能に装着されるとともに、上記工具本体内に形成された取付孔には、該工具本体と一体回転可能かつ上記軸線方向に進退可能にカップリングが取り付けられ、このカップリングには、上記凹溝と取付孔とを連通する連通孔に臨んで開口する連結孔が形成される一方、上記スライダーには、上記連通孔から上記取付孔に突出して上記連結孔に出没自在に挿入される連結ピンが設けられていて、この連結ピンは上記連結孔に、上記母線方向に係合可能かつ上記工具本体の周方向に向けては摺動自在に嵌挿させられていることを特徴とする切削工具。
- 上記連結孔は、上記母線方向に上記連結ピンが嵌挿可能な幅で上記工具本体の周方向に向けて延びる長孔状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
- 上記連結孔は、上記母線方向に対向する一対の互いに平行な壁面を備えているとともに、上記連結ピンには、これらの壁面に摺接可能な一対の互いに平行な側面が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項22に記載の切削工具。
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