JP3740510B2 - 記録具および消色具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に建築施工、土木施工、造園施工等の際に、あるいはコンクリート二次製品を含む建築資材、土木資材の作製の際等にマーキング(文字、記号、印、線などのいずれをも含む概念である、以下同様)を施すのに用いられる記録具および、該記録具で形成されたマーキングを消色するための消色具に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築施工、土木施工等における資材の位置や場所を表示するためのマーキングは、従来は耐候性、耐水性等を考慮し、墨による筆書き、墨によるプレートを用いた印字、墨出し器(いわゆる墨壺を含む、以下同様)による墨出し線付け等により行なわれており、さらに塗料スプレー、油性マーカー等が使用されていた。
【0003】
これらの墨や塗料は入手が容易であり、また取扱いも簡単なため施工現場において広く用いられている。
【0004】
そして、これらを用いたマーキングは水や溶剤で容易には除去できず、また退色することもほとんどなく半永久的にあるいは数カ年の判読が可能である。
【0005】
上記のような従来の墨や塗料や、油性マーカーを用いる場合、使用後、文字や印、線などが不必要となったり変更が生じた場合、または誤ってマーキングを行った場合に、その部分をサンドペーパー等で削り取ったり、文字や印、線などの上から塗料を塗布して隠す必要があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、建築施工、土木施工等における資材の位置や場所を表示するためのマーキングにおいて、不用な文字や印、線などを容易に消去できる消色剤や消色方法がないため、前記方法にて消去する方法が実施されてきたが、このような方法では消去作業が面倒であるだけでなく、簡単、迅速にかつ美麗に消去するのが難しいという問題があり、容易に消去できるマーキングを形成しうる記録具、および該マーキングを消色するための消色具の開発が待たれていた。
【0007】
本発明は前記の事情に鑑み、使用後文字や印、線などが不必要となったり変更が生じた場合、または誤ってマーキングを行った場合に、容易に消去できる記録具、および該マーキングを消色するための消色具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)消色剤によって消色できるマーキングを記録するために使用する記録具であって、所定の消色剤を用いることにより消色する耐水性の油溶性染料であって、C.I.ソルベントレッド109、C.I.ソルベントレッド132、C.I.ソルベントレッド218、C.I.ソルベントオレンジ45、C.I.ソルベントオレンジ62、C.I.ソルベントイエロー82、C.I.ソルベントブルー38、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック29、C.I.ソルベントブラック34からなる金属錯塩染料、C.I.ソルベントブルー94からなるアントラキノン系染料、およびC.I.ソルベントブルー5からなるトリアリールメタン系染料よりなる群から選択される少なくとも1種の染料を主成分とし、着色インク中に該染料が1〜10重量%の割合で含有される着色インクを用いたことを特徴とする記録具に関する。
【0010】
本発明はさらに、(2)前記記録具が、前記インクが充填されるタンク部と、前記タンク部内のインクが含浸される墨糸を備えた墨だし器である前記(1)項記載の記録具に関する。
【0011】
本発明はさらに、(3)前記記録具が、前記インクが充填されるタンク部と、前記タンク部内のインクが含浸されるペン先部とを備えたペンである前記(1)項記載の記録具に関する。
【0015】
本発明はさらに、(4)前記(1)〜(3)項のいずれかに記載の記録具と、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の記録具により記録されたマーキングを消色する消色剤を用いた消色具であって、消色剤の主成分として次亜塩素酸ナトリウムを含有する消色具とからなる記録具セットに関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の記録具で用いられるインクは、耐水性の油溶性染料を主成分とするものであり、記録具の形態としては、例えば、ペンや墨出し器(墨壷)、スタンプ等を挙げることができる。
【0017】
本発明の消色剤を用いることで容易に消色する油溶性染料としては金属錯塩染料(含金属染料)、キサンテン系染料、アントラキノン系染料、トリアリールメタン系染料などが挙げられる。インクの耐水性がわるいとマーキングが滲んだり、雨などにより消失したりするので、耐水性の染料が使用される。
【0018】
また、本発明にかかわる消色剤による消色は、消色剤成分である塩素系酸化剤中の有効塩素から生じる塩素イオン(塩素カチオン)によって油溶性染料の分解反応が進むものと考えられる。
【0019】
本発明にかかわるインクは、太陽光や紫外線、熱、水分等の外的要因の強さによっては自然消色する。即ち、太陽光や紫外線、熱、水分等の外的要因が強いほど、退色が迅速に行われる。
【0020】
反対にこれら外的要因が弱いばあいには、自然消色しにくい。たとえば、日光のほとんど入らないような地下空間においては退色に数カ月〜数カ年を要する。
【0021】
前記油溶性染料は太陽光等に暴露されたとき、一重項酸素酸化等により染料構造の分解等を起こし退色するものと考えられ、退色終了後はほぼ無色となる。
【0022】
本発明の記録具を用いれば、記録された文字や印、線などは消色剤により、あるいは前記の外的要因により自然消色し無色になるため、消色する必要がある箇所にも気軽にマーキングを行え、また消色する作業を必ずしも必要としないので、省力化が図れる。
【0023】
また、記録された文字や印、線などは消色し無色になるため、美観上も好ましい。
【0024】
また、屋外では1週間から6カ月、屋内では1カ月から数カ年で消色するため、その後再度マーキングを行うことが可能となる。
【0025】
本発明にかかわる記録具で用いられるインクは、前記油溶性染料を染料溶解剤に溶解したものであるが、本発明の目的を損なわない範囲で樹脂、界面活性剤、粘度調節剤、防菌剤、防錆剤、潤滑剤など種々の添加剤を適宜選択して使用することもできる。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明に使用される油溶性染料としては、金属錯塩染料(含金属染料)、キサンテン系染料、アントラキノン系染料、トリアリールメタン系染料が使用でき、例えば金属錯塩染料としてはC.I.ソルベントレッド132、C.I.ソルベントレッド218、C.I.ソルベントオレンジ62、C.I.ソルベントイエロー82、C.I.ソルベントオレンジ45、C.I.ソルベントレッド109、C.I.ソルベントレッド8、C.I.ソルベントブルー38、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ソルベントブラック29、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック34等が、キサンテン系染料としてはC.I.ソルベントレッド49等が、アントラキノン系染料としてはC.I.ソルベントブルー94等が、トリアリールメタン系染料としてはC.I.ソルベントブルー5等が挙げられる。これら油溶性染料は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0028】
本発明に使用される染料溶解剤としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、n−ヘプタノール、メチルアミルアルコール、n−アミルアルコール、ジアセトンアルコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルフェニルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、アセト酢酸エチル、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これら染料溶解剤は単独で、または2種以上を組合せて使用できる。
【0029】
ただし、墨打ち用インクとして使用する場合には、インクの揮発性を考慮し、上記に挙げた染料溶解剤のうち沸点が100〜250℃のものを使用することが好ましい。
【0030】
また、本発明で必要により用いられる油溶性樹脂としては、石油樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0031】
本発明に使用される油溶性染料は、良好な退色、消色性を考慮してインキ全量の1〜10重量%とするのがよい。特に1〜5重量%の範囲が最も好ましい。
【0032】
樹脂やその他の添加剤は使用しなくても構わないが、本発明の目的を損なわない範囲で適宜使用することができる。
【0033】
本発明の記録具により記録された文字や印、線などを強制的に消去する場合には消色剤を用いた消色具が用いられ、消色具の形態としては、ペンやスプレーなどを挙げることができ、特にフェルトペン等のペンタイプが良い。
【0034】
本発明で使用する消色剤は、塩素系酸化剤を主成分とするものである。
【0035】
前記塩素系酸化剤としては次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。消色性能などの点から、次亜塩素酸ナトリウムがとくに好ましい。
【0036】
本発明に使用される塩素系酸化剤で、前記記録具により記録された文字や印、線などを容易かつ良好に消色するためには、塩素系酸化剤水溶液中の有効塩素量が1〜20重量%の範囲であることが好ましく、特に4〜17%の範囲が最も好ましい。
【0037】
本発明にかかわる消色剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、界面活性剤やPH調整剤などの添加剤を適宜選択して使用することもできる。
【0038】
記録具により記録された文字や印、線などの上から消色具により消色剤を塗布すると、例えば、消色具がペンである場合には、ペンにより記録された文字や印、線などの上をなぞることで、また、スプレーである場合には、記録された文字や印、線などに噴霧状に塗布することで、消色剤の主成分である塩素系酸化剤中の有効塩素により前記の油溶性染料の分解反応が進み、これにより文字や印、線などは迅速に消去される。
【0039】
そのため、消去の痕跡はほとんど残らず、従って消去により美観が損なわれることがない。また消去の痕跡がほとんど残らないから、本発明の記録具を用いて再度マーキングを行なうことができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
(記録具の作製)
金属錯塩染料であるC.I.ソルベルトブラック29の2重量部を染料溶解剤であるベンジルアルコール98重量部に溶解してインクを調製した。
【0042】
このインクをマーカーペン(バルブタイプ、ペン先:アクリル樹脂製)に充填して記録具を作製した。
【0043】
実施例2
(記録具の作製)
実施例1でえられたインクを墨だし器に充填して記録具を作製した。
【0044】
実施例3
(記録具の作製)
金属錯塩染料であるC.I.ソルベルトレッド132の3重量部を染料溶解剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート97重量部に溶解してインクを調製した。
【0045】
このインクをマーカーペン(バルブタイプ、ペン先:アクリル樹脂製)に充填して記録具を作製した。
【0046】
実施例4
(記録具の作製)
実施例3でえられたインクを墨だし器に充填して記録具を作製した。
【0047】
実施例5
(消色具の作製)
有効塩素量12重量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し、これをマーカーペン(バルブタイプ、ペン先:ポリエチレン製)に充填して消色具を作製した。
【0048】
[コンクリート面へのマーキング]
前記実施例1〜4でえられた各記録具を用いて、脱型後1週間経過したコンクリート壁にマーキングを行い、マーキング5分後に、実施例5の消色具を用いて消色剤をマーキング面が塗布した。塗布60秒後には、すべてのマーキング面が無色になり、水分の蒸発後は完全に印字の痕跡がなくなった。
【0049】
この反応は、消色剤の主成分である塩素系酸化剤中の有効塩素により前記油溶性染料の分解反応が起きた為である。
【0050】
比較例
脱型後1週間経過したコンクリート壁に、アルコール系油性マーカー(パイロット(株)製)により同じマーキングを行った。マーキング5分後に、実施例5の消色具で消色剤をマーキング面に塗布した。塗布後数時間してもほとんど消色せず、一部に変色が見られただけであった。
【0051】
さらに、墨や朱墨、ポスターカラー等においても、同様のテストを行ったが、塗布後数時間してもほとんど消色せず、一部に変色が見られただけであった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の記録具で記録したマーキングは、本発明の消色具を用いて消色剤を塗布することにより容易に消色できる。
【0053】
したがって、建築施工、土木施工などの際に資材に施すマーキングを記録するのに有利に使用できる。
Claims (4)
- 消色剤によって消色できるマーキングを記録するために使用する記録具であって、所定の消色剤を用いることにより消色する耐水性の油溶性染料であって、C.I.ソルベントレッド109、C.I.ソルベントレッド132、C.I.ソルベントレッド218、C.I.ソルベントオレンジ45、C.I.ソルベントオレンジ62、C.I.ソルベントイエロー82、C.I.ソルベントブルー38、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック29、C.I.ソルベントブラック34からなる金属錯塩染料、C.I.ソルベントブルー94からなるアントラキノン系染料、およびC.I.ソルベントブルー5からなるトリアリールメタン系染料よりなる群から選択される少なくとも1種の染料を主成分とし、着色インク中に該染料が1〜10重量%の割合で含有される着色インクを用いたことを特徴とする記録具。
- 前記記録具が、前記インクが充填されるタンク部と、前記タンク部内のインクが含浸される墨糸を備えた墨だし器である請求項1記載の記録具。
- 前記記録具が、前記インクが充填されるタンク部と、前記タンク部内のインクが含浸されるペン先部とを備えたペンである請求項1記載の記録具。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の記録具と、請求項1〜3のいずれかに記載の記録具により記録されたマーキングを消色する消色剤を用いた消色具であって、消色剤の主成分として次亜塩素酸ナトリウムを含有する消色具とからなる記録具セット。
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JP24619195A JP3740510B2 (ja) | 1995-09-25 | 1995-09-25 | 記録具および消色具 |
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1995
- 1995-09-25 JP JP24619195A patent/JP3740510B2/ja not_active Expired - Fee Related
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