JP3740504B2 - 固体電解質及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質に関し、詳しくは、電池、ガスセンサ、イオン濃度センサ、電気二重層素子などの各種電子材料として好適に使用することのできる固体電解質及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体電解質は、液漏れの心配がないこと、特定のイオンのみが伝導に寄与することから、電池、ガスセンサ、イオン濃度センサ、及び電気二重層素子などの電子材料として極めて好適であり、近年積極的に研究開発が進められている。
【0003】
固体電解質に要求される特性の一つとして、イオン導電性の高いことが要求される。研究開発当初においてはAgIや安定化ジルコニアなどの固体電解質が存在するのみであった。これらの固体電解質では、それぞれ1価及び2価のイオンであるAgイオン及びO2−イオンが可動イオン種になっているため、これらのイオンが移動することによる導電量は十分なものとは言えなかった。
【0004】
そこで、可動イオン種にアルミニウムなどの3価イオンを選択し、骨格構造にタングステン酸スカンジウム型構造を持つ固体電解質が開発されている。しかしながら、この固体電解質は、その骨格中含まれる6価のタングステンイオン(W6+)が還元されやすいため、実用化することは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、還元されにくく、導電性に優れる新規な固体電解質を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、(Al 1−X Sc 1/3 Zr (PO (0<X≦1)なる組成を有し、ナシコン(NASICON)型の結晶構造を呈することを特徴とする、固体電解質に関する。
【0007】
本発明者らは、上述したタングステン酸塩系の固体電解質に代わる、還元されにくく、導電性に優れた新規な固体電解質を得るべく鋭意検討を実施した。その結果、上述した組成及び結晶構造を有する、従来にない全く新規な固体電解質において、優れた導電率を有することを見いだした。
【0008】
本発明の固体電解質においては、ScとZrとから構成されるリン酸塩がナシコン型の結晶構造を有する固体電解質の骨格を構成する。そして、Scの含有割合Xが小さい場合においては、このScに結晶構造を保持させ、イオン半径の小さいAl3+イオンが可動イオン種として機能する。
【0009】
また、固体電解質は、ナシコン型の結晶構造を有するため、Al3+が固体電解質中を3次元的に容易に可動できるという特徴を有する。従来のタングステン酸塩系の固体電解質においては、二次元的にしか可動することができず、その応用が困難であるのに対し、本発明の固体電解質はより優れた材料となる。
【0010】
一方、Scの含有割合Xが大きくなると、Scは固体電解質の結晶構造を保持するのみでなく、3価のカチオンSc 3+ として伝導に寄与するようになる。そして、Sc 3+ の伝導に寄与する割合は、その含有割合Xが大きくなるにつれて増大する。具体的には、本発明の好ましい態様にしたがってScの含有割合Xを0.2〜0.8の範囲に設定することが好ましい。
【0011】
なお、Scを含まない固体電解質においては、上述したナシコン型の結晶構造を維持することができない。このため、良好な導電性を呈することはできない。
【0012】
また、ナシコシ型の結晶構造とは、3次元的なトンネルを有し、特定のイオン種がその結晶内を容易に可動できるように設計された結晶構造を意味するものである。その名称の起源は、ナトリウムイオン(Na)を可動イオン種として有するNa1+XZr8−XSi12(X≒2):NASICON)に由来するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の固体電解質は、その組成中にAl3+イオンよりもイオン半径の大きいScを含んでいることが必要である。なお、本発明においては、Scの他にY及びInを用いることもできる。これらの元素は、3価のカチオンとして前記固体電解質中を伝導することができる。
【0014】
また、Scは、本発明の固体電解質中に含有されてさえいれば、その含有量については特に限定されない。しかしながら、上述したように、Scの含有量Xが0.2を超え0.8未満であることが好ましく、さらには0.5以上0.8未満であることが好ましい。これによって、Al3+イオンに加えてSc 3+ も導電性に寄与するようになるため、極めて導電性に優れた固体電解質を得ることができる。
【0015】
また、本発明の固体電解質は、ナシコン型の結晶構造を有することが必要である。ナシコン型の結晶構造とは、上述したように3次元的なトンネルを有する結晶構造を意味するものである。Scの含有割合Xが小さい場合は、Al3+イオンが可動イオン種として、前記3次元トンネル中を移動し、Scの含有割合Xが大きくなると、この3価のカチオンSc 3+ が可動イオン種として前記3次元トンネル中を移動するようになる。
【0016】
このようなナシコン型の結晶構造は、以下に示す製造方法によって本発明の固体電解質を作製することにより、容易に作製することができる。
最初に、ゾルゲル法によって本発明の固体電解質の原料となる固体電解質粉末を製造する。硝酸アルミニウム・9水和物と3価のカチオンMを含む酸化物、具体的には、酸化スカンジウムなどとを、例えば、濃度3mol%の硝酸溶液中に溶解させた後、硝酸酸化ジルコニウムを加える。次いで、リン酸二水素アンモニウム水溶液を滴下して沈殿物を得る。
【0017】
なお、これら硝酸アルミニウム・9水和物、Scを含む酸化物、硝酸酸化ジルコニウム、及びリン酸二水素アンモニウムは、これらの物質に含まれるAl、Sc、Zr、及びリン酸が、目的とする固体電解質の組成と一致した化学量論比を有するような所定量を用いる。
【0018】
次いで、前記沈殿物を、例えば、75℃で24時間かけて乾燥させた後、130℃で6時間加熱して、前記固体電解質粉末を得る。なお、乾燥が不十分である場合は、300℃においてさらに6時間乾燥させる。次いで、この粉末を所定の型に装填し、例えば、300℃で24時間加熱することによって、ペレット状にする。次いで、この固体電解質ペレットを例えば乾燥雰囲気中において750℃〜900℃で焼成することによって目的とする本発明の固体電解質を得る。なお、焼成時間は6〜30時間である。
【0019】
【実施例】
本発明の具体例を以下の実施例において示す。
(実施例1〜5)
(固体電解質の作製)
本実施例においては、3価のカチオンMとしてSc3+を用いた。
前述したようなゾルゲル法によって、3価のカチオンとなるM,Scの含有割合Xが、0.2、0.4、0.6、0.8及び1.0となるように硝酸アルミニウム・9水和物、Scを含む酸化物である酸化スカンジウム、硝酸酸化ジルコニウム、及びリン酸二水素アンモニウムの量比を制御し、5種類の固体電解質粉末を製造した。その後、前述したようにしてペレット状の固体電解質を得、乾燥雰囲気中、850℃で24時間焼成することにより、Scの含有割合Xが、0.2、0.4、0.6、0.8及び1.0である5種類の固体電解質を作製した。
【0020】
この固体電解質の導電性を調べるべく、600℃における交流導電率を交流インピーダンス法を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003740504
【0022】
表1から明らかなように、本発明の固体電解質が良好な導電性を示すことが分かる。そして、特に、本発明の好ましい態様を満足するScの含有割合Xが0.8の場合において、2.27×10−7S・cm−1と極めて良好な導電性を示すことが分かる。
【0023】
(固体電解質の解析)
Scの含有割合Xが0.2である固体電解質を直流電気分解し、カソード側表面における析出物の組成を電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)によって点分析した。その結果、この析出物はScを全く含まず、Alを含んでいることが判明した。すなわち、Scの含有割合Xが0.2である固体電解質においては、Al3+イオンのみが可動イオン種を構成していることが分かる。
【0024】
また、Scの含有割合がXが0.8である固体電解質を同様に直流電気分解し、カソード表面における析出物の組成をEPMAによって調べた。その結果、この析出物中には多量のScを含むことが判明し、Scの含有割合Xが0.8である場合においては、Sc3+イオンも可動イオン種を構成していることが分かる。
【0025】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0026】
例えば、上記においては、ゾルゲル法を用いて固体電解質粉末を形成し、この固体電解質粉末を焼成することによって本発明の固体電解質を製造しているが、本発明の固体電解質の製造方法はこのような方法に限定されるものではなく、如何なる方法を用いても良い。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来にない高い導電性を示す新規な固体電解質を提供することができる。したがって、電池、ガスセンサ、イオン濃度センサ、電気二重層素子などの各種電子材料として好適に使用することのできる固体電解質を提供することができる。

Claims (6)

  1. (Al 1−X Sc 1/3 Zr (PO (0<X≦1)なる組成を有し、ナシコン(NASICON)型の結晶構造を呈することを特徴とする、固体電解質。
  2. Scの含有割合Xが、0.2<X<0.8であることを特徴とする、請求項に記載の固体電解質。
  3. Al 3+ が可動イオン種として伝導に寄与することを特徴とする、請求項1又は2に記載の固体電解質。
  4. 前記Al 3+ は、前記固体電解質中を3次元的に可動することを特徴とする、請求項3に記載の固体電解質。
  5. Sc 3+ が可動イオン種として伝導に寄与することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一に記載の固体電解質。
  6. 請求項1〜5のいずれか一に記載の固体電解質の製造方法であって、
    アルミニウム硝酸塩の水和物と、酸化スカンジウムと、硝酸酸化ジルコニウムと、リン酸二水素アンモニウムとを硝酸溶液中で反応させて(Al1−XSc1/3Zr(POなる組成の固体電解質粉末を得た後、この固体電解質粉末を750℃〜900℃の温度で焼成することによって作製することを特徴とする、固体電解質の製造方法
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