JP3738149B2 - 気体圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般室内空調エアコンシステムの一部として使用される気体圧縮機に関し、特に、その高速回転使用域で生じる低圧冷媒ガスの吸入不足を回避し、高速回転使用域での冷房能力の向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の気体圧縮機は、図8に示すように内周略楕円状のシリンダ1を有し、シリンダ1の両端面にはサイドブロック2、3が取り付けられ、シリンダ1の内側にはロータ4が収納されている。
【0003】
ロータ4は、これに一体に形成されたロータ軸5と、そのロータ軸5の先端側および後端側を支持する軸受6、7とを介して回転可能に設けられ、また、ロータ4の外周面にはベーン溝8が複数形成され(図9参照)、ベーン溝8にはベーン9が摺動可能に装着されている。
【0004】
上記のようなシリンダ1、サイドブロック2、3、ロータ4、ベーン9等からなる組立構造体が圧縮機本体10であり、この圧縮機本体10は一端開口型のケーシング11内に収納されている。なお、ケーシング11の開口端にはフロントヘッド12が取り付けられており、フロントヘッド12の内側には、サイドブロック2との間で形成される吸入室13が設けられ、また、ケーシング11の密閉端とリア側のサイドブロック3との間の後方空間は、吐出室14として構成されている。
【0005】
図9に示すように、シリンダ1の内周側は、シリンダ1内壁、サイドブロック2、3内面、ロータ4外周面、およびベーン9によって複数の小室に仕切られるが、その仕切り形成された小室は圧縮室15と称し、ロータ4の回転により容積の大小変化を繰り返す。このような圧縮室15の容積変化が生じると、その容積増加時に、吸入室13から圧縮室15への低圧冷媒ガスの吸入が行われるとともに、その容積減少時に、圧縮室15での低圧冷媒ガスの圧縮と、圧縮室15から吐出室14側への高圧冷媒ガスの吐出が行われる。
【0006】
すなわち、圧縮室15の容積が最小から最大となるまでの吸入過程では、吸入室13内の冷媒ガスが、フロント側サイドブロック2の吸入通路21やシリンダ1およびリア側サイドブロック3の吸入通路21を介してシリンダ1の前後両端面1a、1b側に移行し、かつこのシリンダ前後両端面1a、1b側から圧縮室15への低圧冷媒ガスの吸入が行われる。そして、圧縮室15の容積が最大付近になると、圧縮室15が吸入通路21から離れて密閉空間となり、圧縮室15内に低圧冷媒ガスが閉じ込められる。
【0007】
次に、密閉空間である圧縮室15の容積が最大から最小に向うと、この容積減少量に応じて圧縮室15内の低圧冷媒ガスが圧縮される。そして、圧縮室15の容積が最小付近になると、その圧縮された高圧冷媒ガスがシリンダ吐出孔22と吐出バルブ23を経てシリンダ1外周面側の吐出チャンバ24に流出する。このようにして吐出チャンバ24内に流入した高圧冷媒ガスは、さらにリア側サイドブロック3の高圧ガス孔25を通過した後、同サイドブロック3に取り付けられている吐出室14内の油分離器16を通過して、吐出室14内に吐出する。
【0008】
なお、吐出室14の底部はオイル溜り17となっており、このオイル溜り17のオイルは、吐出室14内の高圧冷媒ガス圧が作用することにより、リア側サイドブロック3の油穴18からロータ軸5後端側の軸受7に圧送され、該軸受7の潤滑を行う。また、オイル溜り17のオイルは、リア側サイドブロック3の油穴18からシリンダ1の油穴18側に分流した後、フロント側サイドブロック2の油穴18を経由してロータ軸5先端側の軸受6に圧送され、該軸受6の潤滑をも行う。さらに、上記軸受6、7に達したオイルは、軸受6、7隙間の通過時に絞られ減圧された後、両サイドブロック2、3のロータ側端面に設けられている一対のサライ溝19、19を介して、ベーン9底部の背圧室20に供給される。そして、このように背圧室20に供給されるオイルの圧力が、ベーン背圧としてベーン9底部に作用し、該ベーン9を底部からシリンダ1内壁に向って押し上げている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の気体圧縮機にあっては、上記の如くシリンダ1の前後両端面1a、1b側から圧縮室15側に低圧冷媒ガスを吸い込んでいるが、エアコンシステムにより急速に室内温度を変化させたい場合には、多量の冷媒ガスをシステム内に循環させる必要があるため、気体圧縮機のロータ4を高速で回転させることになり、圧縮室15に吸い込まれる低圧冷媒ガスの流速が増加することになる。この流速が増加する際に、低圧冷媒ガスの密度が変化することなく圧縮室15に吸込まれれば問題ないが、冷媒ガスが粘性流体であることと、圧縮室15に吸い込まれるまでに吸入通路21を通過する必要があることから、次のような問題が生じる。
【0010】
すなわち、吸入通路21の壁面近傍を通過する冷媒ガスは、その粘性が壁面に対する抵抗となって流速が増加しにくく、吸入通路21の断面中央付近を通過する冷媒ガスの流速とに差が生じ、冷媒ガスの密度が希薄化されてしまうという問題がある。この減少は、吸入通路断面積が小さい程また吸入通路長さが長い程顕著に現れる。なお、この冷媒ガスの密度が希薄化するに伴いその圧力も低下するが、これを粘性抵抗または流路抵抗による圧力損失と呼んでいる。
【0011】
このため、高速回転使用域では、圧縮室15側に低圧冷媒ガスが十分に吸入されず、冷房能力が頭打ちとなり低下する。要するに、低速または中速回転使用域ではその回転数増加に応じた冷房能力が得られるが、高速回転使用域ではその回転数増加に応じた冷房能力が得られない。
【0012】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高速回転使用域で生じる低圧冷媒ガスの吸入不足を回避し、高速回転使用域での冷房能力の向上を図るのに好適な気体圧縮機を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、内周に曲面が形成されたシリンダと、上記シリンダの端面に取り付けられたサイドブロックと、上記シリンダと上記両サイドブロックにより閉鎖されたシリンダ室と、上記シリンダ室内に回転可能に設けられたロータと、上記ロータの外周面に形成されたベーン溝と、上記ベーン溝に摺動可能に装着されたベーンと、上記シリンダ室を上記シリンダ、サイドブロック、ロータおよびベーンによって仕切り形成する圧縮室とを備え、上記ロータが回転するに伴い上記ベーンが半径方向に往復運動して上記圧縮室の容積を変化させ、気体を吸入圧縮し吐出する気体圧縮機において、上記シリンダおよび上記サイドブロックに、該シリンダの前後両端面側へ低圧の気体を導く吸入通路を配設し、上記吸入通路の途中に、上記シリンダ室側に連通する吸入補助通路を設け、上記吸入補助通路は、上記吸入通路内の低圧気体の流れ方向に沿って下りの勾配をもつ斜孔からなり、上記吸入補助通路の上記シリンダ室へのロータ回転円周方向の開口区間は、上記ベーンの半径方向飛び出し長さが最短の位置から、該ベーンが該ベーンの回転方向前方の上記圧縮室と上記吸入通路との連通を遮断する位置までの区間の3分の1以内であり、かつ、上記吸入補助通路の上記シリンダ室への開口位置がロータ回転方向側に寄っていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、上記吸入補助通路は、上記吸入通路内の低圧気体の流れ方向に沿って下りの勾配をもつ斜孔からなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明は、上記吸入補助通路の上記シリンダ室へのロータ回転軸方向の開口長さは、上記シリンダの両端面間の長さの2分の1以下であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明は、上記吸入補助通路の上記シリンダ室へのロータ回転円周方向の開口区間は、上記ベーンの半径方向飛び出し長さが最短の位置から、該ベーンが該ベーンの回転方向前方の上記圧縮室と上記吸入通路との連通を遮断する位置までの区間の3分の1以内であり、かつ、上記吸入補助通路の上記シリンダ室への開口位置がロータ回転方向側に寄っていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明では、圧縮室への低圧冷媒ガスの吸入が、シリンダの前後両端面側と吸入補助通路を介して行われる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る気体圧縮機の実施形態について図1乃至図7を基に詳細に説明する。
【0019】
なお、本実施形態の気体圧縮機の基本的な構成、たとえば、図8および図9を代用して説明すると、内周略楕円状のシリンダ1を有し、シリンダ1の両端面にはサイドブロック2、3が取り付けられていること、シリンダ1の内側にはロータ軸5とその軸受6、7を介して回転可能に設けられたロータ4が配設されていること、ロータ4の外周面にはベーン溝8が形成され、ベーン溝8にはベーン9が摺動可能に装着されていること、シリンダ1の内周側には、シリンダ1内壁、サイドブロック2、3内面、ロータ4外周面、およびベーン9によって仕切り形成された圧縮室15が設けられていること、並びに、圧縮室15内に冷媒ガスが閉じ込められ、かつ圧縮室15の容積がロータ4の回転により大小変化すると、その容積変化により、シリンダ1の前後両端面1a、1b側から圧縮室15への低圧冷媒ガスの吸入、圧縮室15での低圧冷媒ガスの圧縮、および圧縮室15から吐出室14側への高圧冷媒ガスの吐出が行われること等については従来と同様であり、従来と同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0020】
本実施形態の気体圧縮機においても、図8および図9を用いて説明すると、シリンダ1の前後両端面1a、1b側へ吸入室13内の低圧冷媒ガスを導く手段として吸入通路21を備えており、この吸入通路21は、▲1▼吸入室13からフロント側サイドブロック2を貫通してシリンダ前端面1a側に連通する第1のルートと、▲2▼吸入室13からフロント側サイドブロック2とシリンダ1の肉厚部分を貫通した後、リア側サイドブロック3のシリンダ対向面で反転して当該シリンダ後端面1b側に連通する第2のルートとからなるが、図1に示すように、本実施形態は、従来問題となっていた高速回転使用域での低圧冷媒ガスの吸入不足を回避する観点から、上記のような吸入通路21の途中に、圧縮室15側に連通する吸入補助通路40を別途新設したものである。
【0021】
吸入補助通路40は、図2に示すように、シリンダ1の肉厚部分に複数穿設されており、これらの吸入通路40は、いずれもその入口40aが、シリンダ1の肉厚t部分を貫通する吸入通路21の途中に開口され、かつ、出口40bが圧縮室15側に開口されている。したがって、吸入室13内の低圧冷媒ガスは、吸入通路21を通過してシリンダ1の前後両端面1a、1b側から圧縮室15内に流入できるだけでなく、さらに吸入通路21より吸入補助通路40を経由してシリンダ1の肉厚方向からも短い距離で圧縮室15内に流入できる。このように、本実施形態の気体圧縮機では、シリンダ1の前後両端面1a、1b側とシリンダ肉厚t方向の3方から圧縮室15内に低圧冷媒ガスが流入可能に構成されている。
【0022】
上記のような吸入補助通路40は、吸入通路21から圧縮室15に向って真下に伸びる縦穴として形成することも可能であるが、本実施形態の吸入補助通路40は斜孔41からなり、この斜孔41は吸入通路21内の低圧冷媒ガスの流れに沿って下りの勾配を有している。このような勾配をもつ斜孔41を採用することとしたのは、吸入通路21内の低圧冷媒ガスの流速が速いため、流れの方向変化を小さくし、方向を変え易くしてスムーズに流入させるためである。したがって、図5に示すように勾配αが小さいほど気体圧縮機の高速回転時の冷房能力が向上する。
【0023】
しかしながら、勾配αを小さくすることにより別の問題が生じてくる。それは、勾配αが小さくなることにより、吸入補助通路40のシリンダ室50への回転軸方向の開口長さが長くなり、運転時にベーン9の先端が該開口部を通過する際に、ベーン9先端のシリンダ1の内壁への押し付け力を受ける面積が一時的に大きく減少するため、その小さな接触面積の部分での面圧が上昇し、ベーン9の先端部やシリンダ1の内壁における該開口部近傍の摩耗が促進されてしまうという問題である。そこで、吸入補助通路40のシリンダ室50への回転軸方向の開口長さと、ベーン9の先端部の摩耗量との関係を実験で確認してみた。
【0024】
図6は、この実験の結果を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸はシリンダ1の両端面間の距離L(すなわち回転軸方向の全長)に対する吸入補助通路40のシリンダ室50への回転軸方向の開口長さbの比である(すなわち開口長さbが長いと数値が大きくなる)。縦軸はベーン9の先端部の摩耗量である。横軸Apは、この気体圧縮機の実使用時間に対する実験時間との比から導いた、この実験におけるベーン9先端部の摩耗量の許容値を示している。また、斜線Avはベーン9の先端部の摩耗量の実測値をプロットしたものである。この結果より、b/Lが少なくとも50%を越えなければ、ベーン9の先端部の摩耗量は許容範囲であることがわかる。
【0025】
したがって、吸入補助通路40のシリンダ室50への回転軸方向の開口長さbを、シリンダ1の両端面間の距離Lの2分の1以下となる範囲で、吸入補助通路40の勾配αをできるだけ小さく設定することが、高速回転時における性能向上と耐久性を確保する上で望ましいといえる。
【0026】
さらに、本実施形態においては、吸入補助通路40のシリンダ室50へのロータ4の回転円周方向の開口区間を、ベーン9のベーン溝8からの半径方向の飛び出し長さが最短の位置から、該ベーン9が該ベーン9の回転方向前方の圧縮室15と吸入通路21との連通を遮断する位置までの区間の3分の1以内とし、かつ吸入補助通路40のシリンダ室50へのロータ4の回転方向の開口位置を、ロータ4の回転方向側に寄るように構成した。以下にその構成と、そのように構成させた理由を詳細に説明する。
【0027】
従来の技術の後半でも説明した通り、この気体圧縮機運転時のベーン9底部の背圧室20には、オイル溜り17のオイルが吐出室14内の高圧冷媒ガス圧の作用により、軸受6、7を通過して絞られ減圧されたオイルの圧力が作用し、該ベーン9を底部からシリンダ1内壁に向って押し上げている。
【0028】
ベーン9に対してシリンダ1内壁に向って作用する力は、この背圧室20の圧力と遠心力とであるが、これに対向してベーン9をベーン溝8の底部へ押し下げようとする力も同時に作用する。それは、1枚のベーン9が仕切っている該ベーン9の回転方向前後の圧縮室15内の圧力であり、この圧縮室15内の圧力は該ベーン9の回転方向位置により変化するが、次のように大別される。
【0029】
その区別とは、
▲1▼、該ベーン9が、ベーン溝8からの半径方向飛び出し長さが最短の位置から、該ベーン9の回転方向前方の圧縮室15がサイドブロック2、3の吸入通路21との連通を遮断されるまでの位置の範囲における、該ベーン9の回転方向前後の圧力双方が少なくとも吸入圧力と同じかそれ以下の圧力である場合と、
▲2▼、該ベーン9が前記範囲を除く位置で該ベーン9の回転方向前方の圧縮室15の容積が縮小していく範囲にあるときの、該ベーン9の回転方向前後の圧力のいずれか一方の圧力が少なくとも吸入圧力より高い圧力である場合である。
【0030】
ベーン背圧室20の圧力は、前述の圧縮室15内の圧力が▲1▼の場合であっても▲2▼の場合であっても、ベーン9がベーン溝8の底部へ押し下げられないように高めに作用させているため、前者の圧縮室15内の圧力が低い範囲の場合においては、必要以上にベーン9をシリンダ1内壁に押し付けることになっており、ベーン9のシリンダ1内壁との摺動部が摩耗し易い状況にある。このような状況にある範囲内では、吸入補助通路40のロータ4の回転円周方向のシリンダ室50への開口区間を大きくすると、ベーン9のシリンダ1内壁との摺動部接触面積が小さく面圧が上昇する区間が長くなり、さらに摩耗し易くなる。この問題を検証するために、吸入補助通路40のシリンダ室50への円周方向開口区間と、ベーン9の先端部の摩耗量との関係を実験により確認した。
【0031】
図7は、この実験結果を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は、ベーン9が、ベーン溝8からの半径方向飛び出し長さが最短の位置から、該ベーン9の回転方向前方の圧縮室15がサイドブロック2、3の吸入通路21との連通を遮断されるまでの位置の範囲のシリンダ1内壁長さLsに対する、吸入通路40のシリンダ室50への円周方向開口区間のシリンダ1内壁長さlsの比である。縦軸はベーン9の先端部の摩耗量である。横軸Bpは、図6と同様、この気体圧縮機の実使用時間に対する実験時間との比から導いた、この実験におけるベーン9の先端部の摩耗量の許容値を示している。斜線Bvはベーン9の先端部の摩耗量の実測値をプロットしたものである。また、この実験結果における、シリンダ1の両端面間の距離Lに対する吸入補助通路40のシリンダ50への回転軸方向の開口長さbの比は、50%に統一してある。この結果より、ls/Lsが少なくとも3分の1(約33%)を越えなければ、ベーン9の先端部の摩耗量は許容範囲であることが分かる。
【0032】
したがって、吸入補助通路40のシリンダ室50への円周方向開口区間のシリンダ1内壁長さlsは、ベーン9が、ベーン溝8からの半径方向飛び出し長さが最短の位置から、該ベーン9の回転方向前方の圧縮室15がサイドブロック2、3の吸入通路21との連通を遮断されるまでの位置の範囲のシリンダ1内壁長さLsの3分の1以下となる範囲で設定することが、高速回転時の性能向上と耐久性を確保する上で望ましいといえる。
【0033】
さらに、吸入補助通路40のシリンダ室50への円周方向開口を、前記Lsの範囲内のどの位置に配置させるかという課題が残るが、これについては、冷媒ガスを圧縮室15の閉じ込み容積が最大であるときに最大限吸込ませたいために、ベーン9が該ベーン9の回転方向前方の圧縮室15がサイドブロック2、3の吸入通路21との遮断する位置に極力近くなるように、開口位置を配置させることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、吸入補助通路40を斜孔41として構成したので、吸入補助通路40の出入口形状は楕円となっている(図3参照)。また、吸入補助通路40の出口40bの開口径は、その楕円の長径×斜孔数がシリンダ幅×0.5と略等しくなるように定められている。このように定めたのは、ベーン9先端の面圧上昇を従来の2倍程度に低く抑えるためである。すなわち、本実施形態では、ベーン9先端と吸入補助通路40の出口40bとは互いに対向し得る位置関係にあり、その吸入補助通路40の出口40b上をベーン9先端が通過するときには、該出口40bの開口面積分だけ、ベーン9先端とシリンダ1内壁との接触長さの減少と、これによるベーン9先端の面圧上昇が生じるが、このようなベーン9先端の面圧上昇が従来の2倍程度となるようにしたものである。
【0035】
次に、上記の如く構成された気体圧縮機の動作について図2を基に図8及び図9を参照しながら説明する。
【0036】
この気体圧縮機にあっては、運転開始によりロータ4が回転すると、圧縮室15の容積が大小変化し、その圧縮室15の容積が最小から最大付近となる間に、その容積増加により、吸入室13から圧縮室15への冷媒ガスの吸入が行われる(図8及び図9参照)。
【0037】
その際、吸入室13内の低圧冷媒ガスは、図2に示すように、吸入通路21を通ってシリンダ1の前後両端面1a、1bから圧縮室15内に吸込まれるが、その吸入通路21を流れる低圧冷媒ガスの一部は、吸入補助通路40側に流れ込むとともに、吸入補助通路40を経由してシリンダ1の肉厚方向からも短い距離で圧縮室15内に吸入される。つまり、圧縮室15への低圧冷媒ガスの吸入は、シリンダ1の前後両端面1a、1bとシリンダ1の肉厚方向との3方向から同時に行われる。
【0038】
なお、上記のように吸入された低圧冷媒ガスは、圧縮室15の容積が最大から最小に向う間にその容積減少で圧縮されること、このように圧縮された高圧冷媒ガスは、圧縮室15の容積が最小付近となったときに、圧縮室15からシリンダ1の吐出孔22と吐出バルブ23、シリンダ1外周面側の吐出チャンバ24、リア側サイドブロック3の高圧ガス孔25および油分離器16を順に通過して吐出室14内に吐出すること等は従来と同様であり、その詳細説明は省略する。
【0039】
以上のように、本実施形態の気体圧縮機は、吸入通路21の途中に、圧縮室15側に連通する吸入補助通路40を設けることにより、シリンダ1の前後両端面1a、1b側からだけでなく、さらに吸入通路21より吸入補助通路40を経由してシリンダ1の肉厚方向からも短い距離で圧縮室15内に低圧冷媒ガスが吸入されるように構成したものであるから、粘性抵抗または流路抵抗による圧力損失が生じ易い圧縮機の高速回転使用域においても、圧縮室15内に低圧冷媒ガスを十分吸入することができる。よって、この種の低圧冷媒ガスの吸入不足による不具合、すなわち高速回転使用域での冷房能力の頭打ちが回避され、高速回転使用域における冷房能力の向上が図られている。
【0040】
また、本実施形態の気体圧縮機によると、吸入補助通路40が吸入通路21内の低圧冷媒ガスの流れ方向に沿って下りの勾配をもつ斜孔41からなるため、吸入通路21から吸入補助通路40内に低圧冷媒ガスがスムーズに流れ込み、このスムーズな流れの低圧冷媒ガスがそのまま圧縮室15側に吸入されることから、低圧冷媒ガスの吸入量をより一層十分に確保できる。
【0041】
図4は、本発明に係る気体圧縮機(本発明品)と従来の気体圧縮機(従来品)との動作特性を比較したものであり、図4において、図中実線は本発明品についての圧縮機の回転数と冷房能力との関係を、また、図中破線は従来品についての圧縮機の回転数と冷房能力との関係を示している。ここで、本発明品と従来品を対比してみると、特に、高速回転域において、従来品では回転数が増しても冷房能力が伸びなやみ、いわゆる冷房能力の頭打ちが生じているが、本発明ではこの頭打ち現象が改善され、低速回転域から高速回転域までの全回転数域において回転数に応じた冷房能力が得られている。
【0042】
なお、上記実施形態では、内周楕円状のシリンダを有する気体圧縮機について説明したが、本発明は、内周に曲面が形成されたシリンダを有する気体圧縮機にも適用できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る気体圧縮機にあっては、上記の如くシリンダの前後両端面側へ低圧冷媒ガスを導くための吸入通路の途中に、圧縮室側に連通する吸入補助通路を設けたものである。このため、シリンダの前後両端面側からだけでなく、さらに吸入補助通路を介しても短い距離で圧縮室への低圧冷媒ガスの吸入が行われることから、粘性抵抗または流路抵抗による圧力損失が生じ易い圧縮機の高速回転使用域においても、圧縮室内に低圧冷媒ガスを十分吸入することができ、この種の低圧冷媒ガスの吸入不足による不具合、すなわち高速回転使用域での冷房能力の頭打ちを回避でき、高速回転使用域における冷房能力の向上を図れる。
【0044】
特に、請求項2記載の発明によると、吸入補助通路が、吸入通路内の低圧冷媒ガスの流れ方向に沿って下りの勾配をもつ斜孔からなるため、吸入通路から吸入補助通路内に低圧冷媒ガスがスムーズに流れ込み、このスムーズな流れの低圧冷媒ガスがそのまま圧縮室側に吸入されることから、低圧冷媒ガスの吸入量をより一層十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る気体圧縮機の一実施形態についての要部説明図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB矢視図。
【図4】本発明に係る気体圧縮機と従来の気体圧縮機とにおける動作特性の比較説明図。
【図5】吸入補助通路の勾配と気体圧縮機の高速回転時の冷房能力との関係の説明図。
【図6】吸入補助通路のシリンダ室への回転軸方向の開口長さとベーンの先端部の摩耗量との関係を実験で確認したときの実験結果の説明図。
【図7】吸入補助通路のシリンダ室への円周方向開口区間とベーンの先端部の摩耗量との関係を実験により確認したときの実験結果の説明図。
【図8】従来の気体圧縮機の断面図。
【図9】図8のA−A線でのシリンダ断面図。
【符号の説明】
1 シリンダ
1a シリンダ前端面
1b シリンダ後端面
2 フロント側のサイドブロック
3 リア側のサイドブロック
4 ロータ
5 ロータ軸
6、7 軸受
8 ベーン溝
9 ベーン
10 圧縮機本体
11 ケーシング
12 フロントヘッド
13 吸入室
14 吐出室
15 圧縮室
16 油分離器
17 オイル溜り
18 油穴
19 サライ溝
20 背圧室
21 吸入通路
22 シリンダ吐出孔
23 吐出バルブ
23a バルブサポート
24 吐出チャンバ
24a 切欠き
25 高圧ガス孔
40 吸入補助通路
40a 吸入補助通路入口
40b 吸入補助通路出口
41 斜孔
t シリンダ肉厚
θ ベーン閉じ込み角

Claims (1)

  1. 内周に曲面が形成されたシリンダと、
    上記シリンダの端面に取り付けられたサイドブロックと、
    上記シリンダと上記両サイドブロックにより閉鎖されたシリンダ室と、
    上記シリンダ室内に回転可能に設けられたロータと、
    上記ロータの外周面に形成されたベーン溝と、
    上記ベーン溝に摺動可能に装着されたベーンと、
    上記シリンダ室を上記シリンダ、サイドブロック、ロータおよびベーンによって仕切り形成する圧縮室とを備え、
    上記ロータが回転するに伴い上記ベーンが半径方向に往復運動して上記圧縮室の容積を変化させ、気体を吸入圧縮し吐出する
    気体圧縮機において、
    上記シリンダおよび上記サイドブロックに、該シリンダの前後両端面側へ低圧の気体を導く吸入通路を配設し、
    上記吸入通路の途中に、上記シリンダ室側に連通する吸入補助通路を設け、
    上記吸入補助通路は、
    上記吸入通路内の低圧気体の流れ方向に沿って下りの勾配をもつ斜孔からなり、
    上記吸入補助通路の上記シリンダ室へのロータ回転円周方向の開口区間は、
    上記ベーンの半径方向飛び出し長さが最短の位置から、該ベーンが該ベーンの回転方向前方の上記圧縮室と上記吸入通路との連通を遮断する位置までの区間の3分の1以内であり、かつ、上記吸入補助通路の上記シリンダ室への開口位置がロータ回転方向側に寄っていることを特徴とする気体圧縮機。
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