JP3734687B2 - 四塩化チタン水溶液の製造方法 - Google Patents

四塩化チタン水溶液の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、四塩化チタン水溶液の製造方法に関し、詳しくは、高純度でかつ品質の安定した四塩化チタン水溶液を、工業的規模において、より安全で、効率良く製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
四塩化チタンは古くから、クロール法による金属チタンの中間原料、或いは酸化チタンの中間原料として利用されている。しかし、四塩化チタンは反応性が高く、空気中の酸素或いは水分と接触すると白煙を出し激しく反応するため、窒素など不活性ガス雰囲気中で取り扱わねばならない。そのため、四塩化チタンは、酸素或いは水分を嫌うプロセスにおいて或いは汎用工業製品の製造以外の用途については、大気中でも安定で取り扱いが容易な四塩化チタン水溶液の形で広く利用されている。例えば、近年開発が盛んにおこなわれている光触媒用などの酸化チタンの原料であるアルコキシチタンなどの有機チタン化合物の原料、パール顔料の原料、その他各種チタン化合物の中間原料など近年その需要は伸びつつある。
【0003】
四塩化チタン水溶液は、一般に四塩化チタンを水或いは塩酸水溶液と接触し反応させることにより製造されるが、その際の発熱が著しく、部分的に80℃以上に過熱され酸化チタンの水和物が析出し、その後も析出物が溶解せず、そのため四塩化チタン水溶液の製造が困難となる。また、四塩化チタン水溶液は酸性であるため、その反応容器は樹脂など耐酸性材料を用いるが、上記発熱により反応容器の劣化が激しく、コストアップの原因であった。更には、上記反応の際、塩酸ガスが激しく多量に発生するため、その処理の問題また労働環境上の問題もあった。
【0004】
上記のような問題を避けるためには、四塩化チタン中に水を少量ずつ滴下するか、或いは水中に四塩化チタンを少量ずつ滴下し、発熱及び塩酸ガスの発生を抑制しながら四塩化チタン水溶液を調製するが、このような水若しくは四塩化チタンを少量ずつ滴下する方法では、工業的規模の生産性が低く、コストアップとなる。
【0005】
また、特開平52−70999号公報には、四塩化チタン水溶液の連続製造方法についての困難さが記載され、四塩化チタンに水を添加する場合には、水添過程で現れる粘稠性の塩基性生成物の分散溶解、発生する塩酸ガスの処理等撹拌装置に工夫を要し、又公害防止設備の配慮を要する等の為添加する水の量は著しく制限され、それ以上の添加を行うと、生成する塩基性生成物により四塩化チタン表面が覆われ、水の均一な混合が阻害され、爆発的な反応が起こり易く、塩酸ガスの発生も多く、容器の破損及び作業員への危険性が大であるとの記載がある。逆に、水に四塩化チタンを添加する場合にも、添加初期の温度が低い間は、四塩化チタンの加水分解が起こり、コロイド状酸化チタン水和物の生成が認められ、使用に不適当な場合も起こる可能性が大である。しかし、塩酸水溶液、或いはあらかじめ調整した四塩化チタン水溶液を溶媒に使用すれば、この加水分解による影響はおさえられるが、水添の場合と同様四塩化チタンの添加注入口の閉塞が起こりやすいので、反応容器に強力な撹拌機を取り付けると共に、前記した閉塞対策を講じなければならないとしている。このように、四塩化チタン水溶液の製造には、強力な撹拌装置や析出する塩基性生成物による添加注入口の閉塞防止対策、発生する塩酸ガスによる公害対策等を必要とし、又添加速度の規制による生産性の制限の点から安全且つ容易にして、経済的な装置の開発が望まれるとして、ここでは、四塩化チタンを添加するに際し用いる溶媒に、噴流を形成し、ここに四塩化チタンを添加する四塩化チタン水溶液の連続製造方法を開示している。噴流による分散力を利用して反応容器に撹拌機を取り付ける必要性を排除し、又噴流形成装置内に生じる吸引力により、四塩化チタンを注入するため、閉塞防止対策が不要であり、そして発生する塩酸ガスの装置外への漏れもなくその対策が不要になるというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来方法では、塩酸ガスは反応溶液に溶解し塩酸ガスの外部への発生は改善されるが、発熱は制御できず、また酸化チタン水和物の膜が反応溶液の表面に生成し、反応を継続することは困難であった。また、製造する四塩化チタン水溶液の品質を制御することも困難であった。更に、噴流を形成するための設備を必要とし、そのコントロール及び保守も面倒であった。
【0007】
更に、上述したように四塩化チタン水溶液は液相法による酸化チタン微粒子の製造の原料として利用されるが、近年酸化チタン微粒子は、誘電体物質であるチタン酸バリウムなど電子材料の原料、チタン酸リチウムなどの電池材料の原料、或いは光照射で励起されることにより生じる酸化チタンの光触媒作用また親水性機能を利用した機能性材料などに利用されつつあり、高純度が要求される。しかしながら、そのような高純度の酸化チタンを得るためには高純度の四塩化チタン水溶液が必要となり、従来方法では、未溶解固形分が残留するため、所望純度のものが得られなかった。
【0008】
従って、本発明の課題は、四塩化チタン水溶液の製造において、上記従来技術に残された、塩酸ガスの発生、発熱による固形物析出の問題を解決し、更に効率良く、高純度でかつ品質の安定した四塩化チタン水溶液を工業的規模で製造する方法を提供することにある。
換言すれば、四塩化チタンを四塩化チタン水溶液にする場合に、四塩化チタンを溶解・加水分解する際、多量の発熱(分解・溶解)や塩化水素ガスの発生、また水溶液表面に水和物の膜が生成し、これらを防止するため、四塩化チタンを溶解する時に溶液を冷却したり、投入部での局所反応を避けるために四塩化チタンの滴下量を絞る必要があり、多量の四塩化チタンを投入・溶解することが困難であったことに鑑み、本発明はより安全で、効率的な、高純度でかつ品質の安定した四塩化チタン水溶液を工業的規模で製造する方法を開発することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、四塩化チタンと水との反応により生成する化合物の化学的特性を利用し、ある特定の条件で製造することにより効率良く、高純度でかつ品質の安定した四塩化チタン水溶液を工業的規模で製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、最初に述べたように、TiCl4は水との反応性が著しく、水分と接触すると多量の熱を発生し、塩酸とTin(OH)mClxで表すことのできる化合物となる。Ti(iv)の酸性溶液中での溶存状態についてはTi1+とTiO2+の両者が考えられるが、酸塩基滴定法によりTiO2+の形で存在していると云われている。また、pH<1の塩酸酸性溶液中ではTiO2+の他、ポリカチオンとして[(TiO)8(OH)124+が存在していると云われている。塩化物イオンを含む水溶液中では、Ti(iv)は、TiO(OH25 2+のアクアイオンの形で存在しており、このようなチタニルイオンTiO2+(配位水分子を省略)は遊離水素イオンの濃度低下と共にポリカチオン[(TiO)8(OH)124+に変わり、pH1付近からは逐次TiO(OH)2となって析出物は[(TiO)(OH)2]nの形(酸化チタン水和物)で重合析出すると云われている。
本発明者は、この化学平衡を利用して、初期溶解は塩酸濃度の低い水溶液相で行い(この段階で酸化チタン水和物が析出する)、更にTiCl4の加水分解を進め、分解発生するHCl濃度を増加させ、同時にこの際の発熱を利用して、析出した[(TiO)(OH)2]nを再溶解させる方法を見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、従来の方法では、酸化チタン水和物が析出すると品質に悪影響を与えまた水和物の膜形成により反応継続を困難にしていたため、初期段階での酸化チタン水和物の析出を防止すべく、第1段階反応温度をある程度下げたり、水ではなく塩酸水溶液中に四塩化チタンを供給するという対策がとられていた。しかしながら、そうした対策を為さずとも、反応溶液中の析出した酸化チタン水和物を過剰の塩酸溶液化することにより再溶解させ、また四塩化チタンの投入により発生する反応熱を利用することにより、反応初期段階(第1段階反応)では加熱或いは塩酸を使用せず、酸化チタン水和物を析出してもこれを溶解し(第2段階反応)、その後四塩化チタンと水を同時に供給し(第3段階反応)、発生する反応熱を吸収し、かつ固形物の析出を抑えることにより、最終的に品質の高い四塩化チタン水溶液を工業規模で製造することができることが判明したものである。
【0010】
かくして、本発明の四塩化チタン水溶液の製造方法は、(イ)水中に四塩化チタンを供給することにより四塩化チタンと水を接触、反応させ、四塩化チタン水溶液を生成しつつ酸化チタン水和物を析出させ、(ロ)次いで、四塩化チタンを水1モルに対し0.1モル/時間以上で供給することにより反応系の塩素濃度を3モル/L以上として前記析出した酸化チタン水和物を反応系に溶解させ、四塩化チタン水溶液の生成を継続し、(ハ)その後、酸化チタン水和物を溶解させた反応系に四塩化チタンと水を独立にかつ同時に供給することにより酸化チタン水和物の析出を回避しつつ所要量の四塩化チタン水溶液を生成することを特徴とする。
要するに、本発明は、初期溶解時に発生する析出物の溶解熱を利用し、再溶解させること、及び溶解時の四塩化チタン滴下部での部分過熱による加水分解固形物の析出を防止することをポイントとする。
【0011】
上記方法において、前記酸化チタン水和物の析出物を溶解させる際の反応系の温度を40〜65℃に調整することが好ましい。
前記四塩化チタンの純度が99.99重量%以上であることが好ましい。
生成した四塩化チタン水溶液に空気又は不活性ガスを接触させることにより四塩化チタン水溶液中の塩素濃度を制御することができる。
【0012】
尚、本発明において、「酸化チタン水和物」とは、[(TiO)(OH)2]nで表される酸化チタン水和物或いは水酸化チタン又は含水酸化チタン、その誘導体を包括して呼ぶものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
(イ.第1段階反応)
実質上無水の四塩化チタンは比重1.726の無色透明な液体である。
本発明の四塩化チタン水溶液は、先ず水中に四塩化チタンを供給し、四塩化チタンと水を接触、反応させ、水−四塩化チタン反応系において四塩化チタン水溶液を生成しつつ、酸化チタン水和物を析出させる。水中に四塩化チタンを水1モルに対し0.05〜0.3モル/時間で供給する。このとき反応系の塩素濃度は、0.1モル/L未満、特には0.05〜0.1モル/Lとすることが望ましい。初期溶解は塩酸濃度の低い水溶液相で実施する。
具体的な接触及び反応方法は、反応容器内に水を装入しておき、攪拌機で流動させるか、或いは反応容器に循環ポンプを組み込んだ循環流路のような循環装置を設け、水を循環させ流動させておくことが望ましい。このように流動させた水中に四塩化チタンを供給することにより、発生する塩酸ガスの発生を抑制することができ、また酸化チタン水和物などの析出物を再溶解させることが可能となる。特には、後者の反応容器に反応溶液を循環させる方法において、循環速度を大きくし、更に循環系をある程度加圧状態とし発生する塩酸ガスの反応系外への放出を抑制することにより、反応の際発生する塩酸ガスを反応溶液に再溶解させることが望ましい。このとき反応系のpHは1以上であることが望ましく、特に望ましくはpH1〜2である。具体的には、供給する四塩化チタンの量で制御するが、通常水1モルに対し四塩化チタンは0.05〜0.3モルである。
【0014】
このように、本発明では、第1段階での反応系の塩素濃度を制御することにより、塩酸ガスの発生を抑え、発熱を抑制することができる。また、この第1段階反応時の温度は20〜50℃の範囲で制御する。
【0015】
また、上記第1段階反応において、酸化チタン水和物を析出させるが、反応させた四塩化チタンのチタン分全部でなくともよく、反応させる四塩化チタンの1〜50%を酸化チタン水和物として析出させる。反応系表面に四塩化チタンの継続添加を妨げる量の酸化チタン水和物の析出が起こった状態で第1段階反応を終える。
【0016】
(ロ.第2段階反応)
次いで、四塩化チタンを水1モルに対し0.1モル/時間以上で供給することにより反応系の塩素濃度を3モル/L以上とし、前記析出した酸化チタン水和物を溶解させる。このように、本発明では、第2段階反応で供給する四塩化チタンの量により、反応系の塩素濃度を増加させる。具体的には、四塩化チタンを水1モルに対し0.1モル/時間以上、好ましくは0.15〜0.3モル/時間で供給することにより反応系の塩素濃度を3モル/L以上、好ましくは3〜6モル/Lとする。更に、このとき最終的な四塩化チタンの供給量は、水1モルに対し0.1〜1モルである。第2段階反応での反応系の温度は40〜65℃、好ましくは50〜60℃の範囲に制御する。酸化チタン水和物を溶解し均一溶液とした時点で、第2反応段階を終了する。
初期溶解時に発生する析出物の溶解熱を利用し、再溶解させ、そして溶解時の四塩化チタン滴下部での部分過熱による加水分解固形物の析出を防止することが重要である。
このように本発明では、上記第1段階反応に続く、第2段階反応で、四塩化チタンの供給速度を上げ、反応系の塩素濃度を上昇させ、またある程度反応熱により反応系の温度を上昇させ常温以上の温度で反応を継続させることにより、第1段階反応で析出した固形物を再溶解させ、品質の良い四塩化チタン水溶液を製造することが可能となる。
【0017】
また、第1段階反応と同様、上記反応の際にも反応系の水溶液を攪拌機で流動させるか、或いは反応容器に循環装置を設け生成した水溶液を循環させ流動させながら、四塩化チタンを供給することが望ましい。
【0018】
(ハ.第3段階反応)
上記のように第1段階反応で一旦酸化チタン水和物を析出させ、第2段階反応で該酸化チタン水和物を溶解し均一溶液とした後、四塩化チタンと水を独立にかつ同時に反応系に供給し、連続的に四塩化チタン水溶液を製造する。このとき、第1段階反応で析出した固形物が残存していると更に析出が促進され、所定の品質の四塩化チタンが得られないので、第2段階反応で十分に固形物が溶解したことを確認した後、四塩化チタンと水を供給する。供給する四塩化チタン及び水の量は、製造する最終的な四塩化チタン水溶液の濃度及び製造量により任意であるが、四塩化チタンを反応前に反応系に装入した水1モルに対し0.1モル/時間以上、好ましくは0.15〜0.3モル/時間である。また、供給する四塩化チタンと水の量比は、四塩化チタン1モルに対し、水1〜30モル、好ましくは5〜25モル、特に好ましくは8〜20モルである。
また、この際の反応系の温度は40〜65℃、好ましくは50〜60℃の範囲に制御する。この条件の下で、酸化チタン水和物の析出を回避しつつ所要量の四塩化チタン水溶液を生成することができる。
このように、四塩化チタンと同時に水を反応系に供給することにより、反応系の温度の上昇を制御することができ、結果として均一な品質の良好な四塩化チタン水溶液の連続製造が可能となる。
【0019】
上記反応は、第1段階反応と同様、反応系の水溶液を攪拌機で流動させるか、或いは反応容器に循環装置を設け生成した水溶液を循環させ流動させながら、四塩化チタンと水を供給することが望ましい。
【0020】
先にも述べたように、本発明では第1段階反応から、第2段階反応を経て、上記の四塩化チタンと水を同時に供給して四塩化チタン水溶液を連続的に製造する第3段階反応まで、反応溶液の流動速度を、例えば循環方法などを採用して大きくして、更に循環系をある程度加圧状態とし発生する塩酸ガスの反応系外への放出を抑制することにより、反応の際発生する塩酸ガスを反応溶液に再溶解させることが望ましい。反応系がある程度開放系で、発生する塩酸ガスを反応系外に放出すると、反応系の塩素濃度あついはpHの制御が困難となるばかりでなく、作業環境の面でも問題であるが、このような反応を行うことにより、pH制御が容易となり、固形物の析出及び再溶解が容易であり、効率よくかつ安全に製造を行うことが可能となる。
【0021】
従来の方法では、酸化チタン水和物が析出すると品質に悪影響を与え、また、水和物の膜形成のため、初期段階での酸化チタン水和物の析出を防止すべく、反応系を冷却したり、水ではなく塩酸水溶液中に四塩化チタンを供給するという方法がとられていた。しかしながら、上記のように本発明では、第1及び第2段階で反応溶液中の塩素濃度を制御し、また四塩化チタンと水の反応熱を利用することにより、反応初期の第1段階反応では加熱或いは塩酸を使用せず、酸化チタン水和物を析出させ、これを第2段階反応で溶解し、その後第3段階反応では、四塩化チタンと水を同時に供給し、発生する反応熱を吸収し、かつ固形物の析出を抑え、最終的に品質の高い四塩化チタン水溶液を工業規模で製造することができるのである。
【0022】
本発明の方法で用いられる四塩化チタンはなるべく不純物の少ない高純度のものが好ましく、具体的には四塩化チタンの純度が99.99重量%以上、好ましくは99.995重量%以上であり、不純物成分として、Al、Fe、Vがそれぞれ1ppm以下、Si及びSnがそれぞれ10ppm以下である。また水についてもなるべく不純物の少ない高純度のものが好ましく、具体的にはその調製にイオン交換水などの精製水を使用することが望ましい。こうした高純度四塩化チタンは市販品として入手することができる。
【0023】
(ニ.チタン或いは塩素濃度の調整)
上記のように製造した四塩化チタン水溶液を断続的或いは連続的に反応系より抜き出し四塩化チタン水溶液を製造するが、該水溶液中のチタン或いは塩素濃度を調整する場合、製造した四塩化チタン水溶液に空気又は不活性ガスを接触させることもできる。具体的には、製造した四塩化チタン水溶液に空気又は不活性ガスを吹き込む操作(曝気)を行う。曝気方法としては、四塩化チタン水溶液中に空気又は不活性ガスを供給するノズルを浸漬させてバブリングする方法、また四塩化チタン水溶液を、充填物を充填したカラムの上部から導入し、該カラムの下部から空気或いは不活性ガスを導入し、接触させ曝気する方法などが採用される。また、このとき接触させる空気或いは不活性ガスの量は、最終製品とする四塩化チタン水溶液中の塩素濃度、またチタン濃度により異なるが、通常四塩化チタン水溶液1kgに対して、接触させる空気或いは不活性ガスの量は通常10〜200L、好ましくは30〜100Lである。曝気により、四塩化チタン水溶液中のチタン或いは塩素濃度を調整することができる。
【0024】
以上、本発明により製造される四塩化チタン水溶液の組成は、Tiが5〜20重量%、好ましくは10〜18重量%、Clが25〜40重量%、好ましくは28〜37重量%である。
四塩化チタン水溶液は、水の量により形態は異なるが、安定なオルトチタン酸の塩酸水溶液、Tin(OH)mClxで表される化合物及びTiO2・xH2Oの塩酸水溶液と考えることができる。
【0025】
また、本発明に従えば、四塩化チタン水溶液中の不純物成分として、Al、Fe、V、Si、Snをそれぞれ1ppm以下にコントロールすることができ、前述した誘電体物質であるチタン酸バリウムなど電子材料の原料、チタン酸リチウムなどの電池材料の原料、或いは光照射で励起されることにより生じる酸化チタンの光触媒作用また親水性機能を利用した機能性材料など各種応用製品用途に好適に使用できる。
【0026】
以下、本発明の四塩化チタン水溶液の製造方法の一例を図1の四塩化チタン水溶液連続製造装置の流れ図を参照して具体的に説明する。
【0027】
反応系を構成する反応槽1には、水及び四塩化チタンそれぞれの供給管2、3が設置される。反応槽1には、反応系の水或いは生成した四塩化チタン水溶液を循環させるため循環ポンプPを組み込んだ循環経路から成る循環装置4が装備され、循環装置の途中には冷却器5が設置される。四塩化チタンの供給管の反応槽手前に窒素ガス或いは乾燥空気をパージするためのパージ管6が設置されている。窒素ガス或いは乾燥空気によるパージは、四塩化チタンの供給管の投入口の反応物による閉塞を防止するのに効果的である。
更に、反応槽1には、生成した四塩化チタン水溶液をオーバーフローにより抜き出すオーバーフロー管7が設けられる。
必要に応じ、四塩化チタン水溶液中の四塩化チタン或いは塩素濃度を調整するために、抜き出した四塩化チタン水溶液は、曝気槽8に移送される。
曝気槽8には、製造した四塩化チタン水溶液と曝気ガスを接触させるための気液分離充填カラム9が設置される。四塩化チタン水溶液を充填物を充填した充填カラムの上部から導入し、曝気槽8の底部から充填カラムの下部を通して空気或いは不活性ガスを導入し、四塩化チタン水溶液と接触させる。
更に、気液分離充填カラムから排出させる曝気ガスを処理する排ガス処理装置10を設置する。最終製品としての四塩化チタン水溶液が曝気槽8から回収される。
【0028】
操作において、先ず、反応槽に水を装入し、循環ポンプにより循環経路を通して循環させる。水の温度は0〜30℃の範囲とされる。次いで四塩化チタンを供給し、酸化チタン水和物の固形物を析出させる(第1段階反応)。
更に、四塩化チタンを供給し、反応槽内の温度を50〜60℃に制御し、反応系の塩素濃度を3モル/L以上にして上記固形物を再溶解させる(第2段階反応)。
その後、四塩化チタン及び水を反応槽に供給し(第3段階反応)、生成した四塩化チタンをオーバーフロー管を通じて連続的に曝気槽に抜き出す。
温度コントロールは原料供給量と冷却器とにより行う。
曝気槽底部から、エアーを供給し、抜き出した四塩化チタン水溶液を曝気し、所望の濃度の最終製品四塩化チタン水溶液を得る。
第1段階反応から、第2段階反応を経て、上記の四塩化チタンと水を同時に供給して四塩化チタン水溶液を連続的に製造する第3段階反応まで、反応溶液の流動速度を、例えば循環方法などを採用して大きくして、更に循環系をある程度加圧状態とし発生する塩酸ガスの反応系外への放出を抑制することにより、反応の際発生する塩酸ガスを反応溶液に再溶解させることが望ましい。
【0029】
上記のように、本発明の方法によれば、塩酸ガスの発生、発熱による固形物析出の問題を解決し、高純度でかつ品質の安定した四塩化チタン水溶液を工業的規模で安全に且つ効率的に製造することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。なお、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0031】
(実施例1:四塩化チタン供給量50L/時間(第1〜第3段階反応))
反応槽に水を40L装入し、100L/分で循環させ、反応槽中に四塩化チタン供給管の窒素ガスパージ管から窒素ガスを流しながら、四塩化チタンを50L/時間で30分間供給することにより、第1段階反応を実施した。反応中、四塩化チタンの反応固形物が析出した。
更に、四塩化チタンを50L/時間で30分供給し、反応系の塩素濃度を4モル/L、そして温度を55℃とし、析出した固形物を再溶解させた(第2段階反応)。
反応液が淡黄色の透明な四塩化チタン水溶液となったことを確認し、四塩化チタンを50L/時間そして水を72L/時間でそれぞれ連続供給した(第3段階反応)。このとき反応系の温度を50〜55℃の範囲に制御した。
反応槽からオーバーフローした四塩化チタン水溶液を回収した。
このとき、製造した四塩化チタン水溶液の収量は128kg/時間であり、その組成は、Tiが16.6重量%、Clが34.5重量%、真比重1.58g/mLであった。
【0032】
(実施例2:乾燥エアーを6m3/時間で曝気)
実施例1と同様にして製造した四塩化チタン水溶液を曝気槽に導入し、乾燥エアーを6m3/時間で吹き込むことにより四塩化チタン水溶液を曝気して四塩化チタン水溶液を製造した。
このとき、製造した四塩化チタン水溶液の収量は127kg/時間であり、その組成は、Tiが16.5重量%、Clが32.0重量%、真比重1.57g/mLであった。
【0033】
(実施例3:乾燥エアー12m3/時間で曝気)
曝気の際、乾燥エアーを12m3/時間で吹き込んだ以外は実施例2と同様に四塩化チタン水溶液を製造した。
このときの四塩化チタン水溶液の収量は124kg/時間、組成は、Tiが16.6重量%、Clが29.5重量%、真比重1.57g/mLであった。
【0034】
(実施例4:四塩化チタン供給量60L/時間(第1〜第3段階反応)、乾燥エアー9m3/時間で曝気)
四塩化チタンの供給量を、第1段階反応から第3段階反応まで60L/時間としそして乾燥エアー9m3/時間による曝気を行った以外は実施例1と同様に四塩化チタン水溶液を製造した。
このときの四塩化チタン水溶液の収量は149kg/時間、組成は、Tiが17.1重量%、Clが33.5重量%、真比重1.62g/mLであった。
【0035】
(実施例5:水供給量144L/時間)
連続供給の際の水の供給量を144L/時間とした以外は実施例1と同様に四塩化チタン水溶液を製造した。
このときの四塩化チタン水溶液の収量は214kg/時間、組成は、Tiが10.0重量%、Clが29.1重量%であった。
【0036】
(比較例1)
第2段階反応の際の四塩化チタンの供給量を10L/時間で30分とし、反応系の塩素濃度を2モル/Lとした以外は、実施例1と同様に四塩化チタン水溶液を製造した。
その結果、第1段階反応で析出した酸化チタン水和物は溶解せず、この固形物を除去した最終的な四塩化チタン水溶液の収量は80kg/時間にしかならなかった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の四塩化チタン水溶液の製造方法によれば、塩酸ガスの発生、発熱による固形物析出の問題を解決し、効率良く、高純度でかつ品質の安定した四塩化チタン水溶液を工業的規模で製造することができる。実施例及び比較例からわかるように、本発明は、固形物を含有しない良質の四塩化チタン水溶液を高い収率で製造することを可能ならしめる。
【図面の簡単な説明】
【図1】四塩化チタン水溶液の連続製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 反応槽
2、3 水、四塩化チタン供給管
P 循環ポンプ
4 循環装置
5 冷却器
6 パージ管
7 オーバーフロー管
8 曝気槽
9 気液分離充填カラム
10 排ガス処理装置

Claims (4)

  1. (イ)水中に四塩化チタンを供給することにより四塩化チタンと水を接触、反応させ、四塩化チタン水溶液を生成しつつ酸化チタン水和物を析出させ、(ロ)次いで、四塩化チタンを水1モルに対し0.1モル/時間以上で供給することにより反応系の塩素濃度を3モル/L以上として前記析出した酸化チタン水和物を反応系に溶解させ、四塩化チタン水溶液の生成を継続し、(ハ)その後、酸化チタン水和物を溶解させた反応系に四塩化チタンと水を独立にかつ同時に供給することにより酸化チタン水和物の析出を回避しつつ所要量の四塩化チタン水溶液を生成することを特徴とする四塩化チタン水溶液の製造方法。
  2. 前記酸化チタン水和物の析出物を溶解させる際の反応系の温度を40〜65℃に調整することを特徴とする請求項1に記載の四塩化チタン水溶液の製造方法。
  3. 前記四塩化チタンの純度が99.99重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の四塩化チタン水溶液の製造方法。
  4. (ハ)の後、(ニ)生成した四塩化チタン水溶液に空気又は不活性ガスを接触させることにより四塩化チタン水溶液中の塩素濃度を制御することを特徴とする請求項1に記載の四塩化チタン水溶液の製造方法。
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