JP3729098B2 - 乗員保護装置のデータ処理方法及びこれを用いた乗員保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗員保護装置の正確な起動制御のために採用されるデータ処理方法に関する。より詳しくは、車両に配設されている加速度検出部側から送信されたデータを乗員保護装置の起動制御装置側で受信した際に、その真偽を簡易に確認できるようにしたデータの処理方法に関する。
【0002】
また、本発明には上記のようなデータ処理方法の技術を含めて構成した乗員保護装置も含んでいる。
【0003】
【従来の技術】
車両には、乗員保護装置が搭載されている。この乗員保護装置には、車両の衝突を検出するための加速度センサや、この加速度センサからの検出値の基づいてエアバッグ等の乗員保護具を駆動させるか否かの判断を行っている起動制御装置等が含まれている。
【0004】
例えば、車両が前面衝突(前突)したことを検出するために、車両の前部には1つ又は複数の加速度センサ(フロントセンサ)が配設されている。この加速度センサとしては車両に発生した加速度に応じた電圧等を生じさせる電子式のセンサ等が採用されている。
【0005】
一方、車両の本体側には、乗員保護装置の起動を制御する起動制御装置が配設されている。起動制御装置は上記加速度センサからの加速度データに基づいて乗員保護装置の起動を制御する。
【0006】
一般に、上記加速度センサと上記起動制御装置とは車両内の配線により接続されている。加速度センサはエンジンルーム等の車両前方側に配置されており、一方で起動制御装置は車両中央のフロアトンネル等に配設されているので上記配線を介して、上記加速度データが送信されることになる。
【0007】
ところが、エンジンルームからフロアトンネルに至るまでには、多くの電源やハーネスが存在しており、上記加速度データが配線中でノイズ等の影響を受けて本来の送信データでない変化したデータ(異常データ)に化けてしまう場合がある。このように、データの送信中に異常データが発生してしまうと上記起動制御装置により乗員保護装置の起動を精度良く制御できないことになる。
【0008】
そこで、従来から上記のような異常データに対処するためのデータ処理法がある。例えば、受信データの信頼性を向上させるために、送信データとミラー反転させたデータを送信する送信方法や、マンチェスター符合化したデータを送信する方法、さらにはCRC符合を付したデータを送信する方法等が提案されており、これらの処理により異常データが発生しても対処できるようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来のデータ処理方法を採用するとデータ解析の処理が複雑となり、特に受信側の負荷が増加する。これにより、受信側の処理制御を行うCPUの負荷が増大することになる。この負荷を軽減するには別途新たに専用のIC等を設けるなどの対処が必要となる。
【0010】
すなわち、従来のデータ処理方法では、異常データへの対処はできるものの、処理能力の高いCPUや新たなIC等が必要となるので、部品点数が増加して構成が複雑化すると共に高コストな方法となっていた。
【0011】
したがって、本発明の第1の目的は、複雑な処理を行うことなく簡単な構成、低コストで異常データに対処ができる乗員保護装置のデータ処理方法を提供することであり、また第2の目的はそのような処理技術を含んで構成した乗員保護装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は請求項1に記載の如く、車両の加速度を検出し、デジタル化した加速度データを生成する加速度データ生成手段と、前記デジタル加速度データに基づいて乗員保護装置の起動を制御する起動制御装置とのデータ処理方法であって、
前記加速度データ生成手段は1つのデータを2回繰返しながら前記起動制御装置へ送信し、前記起動制御装置では同一のデータを連続して2回受信したときに当該データを真のデータとして確定する処理を順次行うと共に、連続して3回以上異なるデータを受信したときには異常データとして処理するようにした、ことを特徴とする乗員保護装置のデータ処理方法により達成される。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、加速度データ生成手段がデジタル加速度データを複数回繰り返して送信し、起動制御装置側ではこのデータを比較して同一性を確認するという簡単な手法で、異常データが発生したことを確認して対処できる。よって、受信側となる起動制御装置の構成の負荷を軽減しつつ、乗員保護装置を精度良く起動制御できるようになる。このような、データ処理方法では従来と比較して構成を簡素化できるのでコストの低減を図ることができる。
さらに、加速度生成手段側から1つのデータを2回繰り返して送信し、起動制御装置側で同一のデータが連続して2回受信されたか、否かにより受信データが正常であるか、異常であるかを確認できる。
上記起動制御装置は、受信した順に1つのデータをその直前と、その直後のデータと比較するという処理を継続的に行い、同一である場合に1つのデータを確定するという簡易な処理を行う。よって、受信側の処理の負荷を大幅に軽減できる。
なお、ある1つのデータに対して、その直前及び直後のデータを比較するという簡易な手法を採用するので、データが正常に送信された場合でも、起動制御装置側でのデータ比較の結果は、データ確定とデータ非確定の状態が交互に現われる。これに対し、データ異常があった場合には連続して3回以上異なるデータを受信することになるので確定と非確定が交互に現われる状態が見られる。すなわち、データ非確定が3回以上連続する状態となる。
【0014】
また、請求項2に記載の如く、請求項1に記載の乗員保護装置のデータ処理方法において、
前記加速度データ生成手段と前記起動制御装置との通信に単方向2線式電流通信を用いることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の如く、請求項2に記載の乗員保護装置のデータ処理方法において、前記加速度データ生成手段と前記起動制御装置との通信に調歩同期式を用いることができる。
【0020】
請求項2及び3に記載の発明によれば、前述した請求項1に記載の発明を簡易な構成で実現できる。
【0021】
そして、上記目的は、請求項4に記載の如く、車両の加速度を検出し、デジタル化した加速度データを複数回繰返して生成する加速度データ生成手段と、
前記デジタル加速度データを受信し、同一のデジタル加速度データを繰り返し受信したときに当該デジタル加速度データを真のデータとして処理し、同一のデジタル加速度データを繰り返し受信できないときには異常データとして処理して得た確定データに基づいて起動を制御する起動制御装置と、
前記加速度データ生成手段は、前記車両の加速度を検出する加速度検出素子と、該加速度検出素子による加速度値をデジタル化した加速度データに変換するA/D変換部と、前記デジタル加速度データを複数回繰り返して送信する送信制御部と、を有し、前記起動制御装置は、前記送信制御部から同一のデジタル加速度データを繰り返し受信したときに当該デジタル加速度データを真のデータとして処理し、同一のデジタル加速度データを繰り返し受信できないときには異常データとして処理する受信制御部を有し、
前記送信制御部は1つのデータを2回繰り返しながら前記受信制御部へ送信し、前記受信制御部は同一のデータを連続して2回受信したときに当該デジタル加速度データを真のデータとして確定する処理を順次行うと共に、連続して3回以上異なるデータを受信したときには異常データとして処理するように設定されている、ことを特徴とする乗員保護装置によっても達成することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、加速度データ生成手段がデジタル加速度データを複数回繰り返して送信し、起動制御装置側ではこのデータを比較して同一性を確認するという簡単な構成で、異常データが発生したことを確認できる。よって、受信側となる起動制御装置側の負荷を軽減しつつ精度良く起動制御された乗員保護装置を提供できる。このような乗員保護装置は従来と比較して構成を簡素化できるのでコストの低減を図ることができる。
また、送信制御部側から1つの加速度データを2回繰り返して送信し、受信制御部側で同一の加速度データが連続して2回受信したか、否かにより受信データが正常であるか、異常であるかを確認できる。
さらに、受信制御部は、受信した順にデータをその直前と、その直後のデータと比較するという処理を継続的に行い、同一である場合に1つのデータを確定するという簡易な処理を行う。よって、受信制御部の処理の負荷を大幅に軽減できる。
【0027】
また、請求項5に記載の如く、請求項4に記載の乗員保護装置において、前記送信制御部と前記受信制御部との通信に単方向2線式電流通信を用いることができる。
【0028】
また、請求項6に記載の如く、請求項5に記載の乗員保護装置において、前記送信制御部と前記受信制御部との通信に調歩同期式を用いることができる。
【0029】
請求項5及び6に記載の発明によれば、前述した請求項4に記載の発明を簡易な構成で実現できる。
【0030】
また、請求項7に記載の如く、請求項4から6のいずれかに記載の乗員保護装置において、前記加速度検出素子は、車両の前部側に少なくとも1つ配設され、該車両の前後方向の加速度を検出するように構成できる。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、加速度検出素子が車両の衝突を早期に検出し、この検出値に基づいて加速度データが起動制御装置へ供給されるので、簡単な構成で早期の乗員保護を実現できる乗員保護装置を提供できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0033】
図1は本発明の一実施例である乗員保護装置10の要部構成を示した図であり、図2は同乗員保護装置10が車両1に搭載されたときの様子を例示した図である。
【0034】
本実施例の同乗員保護装置10は、図1及び図2に示すように、例えば車両1の左及び右サイドメンバの前方(クラッシュゾーン)に左加速度データ生成部20と右加速度データ生成部30が各々配設されている。これら左加速度データ生成部20及び右加速度データ生成部30は、左及び右で同様な構成を有している。
【0035】
左加速度データ生成部20には、車両の左サイド前方の加速度を所定周期で検出する左フロントセンサ21と、この左フロントセンサ21から供給されたアナログの加速度値をデジタルの加速度データに変換する左A/D変換器22及びA/D変換器22で形成したデジタル加速度データを1つのデータ毎に2回繰り返しながら順次送信するように制御する左送信制回路23とを含んでいる。右サイド加速度検出部30には同様に、右フロントセンサ31、右A/D変換器32及び右送信制回路33が含まれている。
【0036】
上記左及び右フロントセンサ21、31としては、車両1の前後方向に生じた加速度を検出できる公知の加速度検出素子としての電子センサを採用することができ、この電子センサによりアナログの加速度データが出力される。このように検出されたアナログ加速度データは送信中にノイズ等の影響を受け易いため、本実施例ではA/D変換器22、32でこのアナログ加速度データをデジタル加速度データに変換してから送信する。
【0037】
また、乗員保護装置10は、エアバッグ装置50等の乗員保護具の展開駆動を制御する起動制御装置40を含んでいる。この起動制御装置40は、上記左及び右フロントセンサ21、31からの加速度値に基づいて形成されたデジタル加速度データを受信する受信制御回路41と、この受信制御回路41で真偽が確認され処理された確定データに基づいて上記エアバッグ装置50の起動を制御する起動制御回路42を含んでいる。
【0038】
上記受信制御回路41と左及び右加速度検出部20、30の各々とは、それぞれ2本の配線25、35で接続されている。この受信制御回路41は、順次送信されて来る1つのデジタル加速度データ(以下、単にデータとする)毎にその直前及び直後のデータと比較しながら真の送信データであるか、否かを確認する機能を備えている。この機能について説明する。前述したように左及び右送信制御回路23、33を介して送信されるデータは、1つのデータを2回繰り返しながら、即ちある1つのデータ(例えば、A)を2回連続させながら順次送信している。このような送信を受ける受信制御回路41は、その1つのデータ(A)を2回連続して受信したときに、その1つのデータをAであると確定して、後段の起動制御回路42へ供給する。
【0039】
すなわち、本実施例の乗員保護装置10では、左送信制回路23から1つのデータを2回繰り返しながら送信し、これを受信側となる受信制御回路41で連続したデータの同一性を順に確認して行くという簡易な手法で、送信途中に生じた異常データを検出できるようにしている。この検出手法の詳細については、後述する。
【0040】
上記受信制御回路41と起動制御回路42とを含む起動制御装置40は、図2に示すように車両本体中央部のフロアトンネル等に配置される。この起動制御装置40は、例えば図3に具体的に例示するような電子制御ユニット(ECU)40により実現され、このECU40が車両のフロアトンネル等に配置される。このECU40は、CPU43を中心として所定の処理プログラムを記憶したROM44、一時的にデータを記憶するRAM46と入出力回路(I/O)等48を含んで形成されている。
【0041】
上記CPU43は、例えば車両のイグニッションスイッチ(I/G)がオンされた以降、或いはアクセルペダルの踏み込みがあった以降等、を開始時期としてそれ以降継続的に所定の周期(例えば2kHz)で左及び右送信制御回路23、33から送信されるデータを受信しながら、受信制御回路41としての処理を実行することになる。
【0042】
すなわち、CPU43は上記受信制御回路41を実現して受信したデジタル加速度データに異常データが含まれていた場合の処理を行い、さらにこの受信制御回路41の後段の起動制御回路42も実現する。
【0043】
次に、図4及び図5を参照して、上記左及び右加速度検出部20、30から送信されたデータを起動制御装置40の受信制御回路41で受信して処理するために本実施例で採用しているデータ処理方法の構成とその内容をより詳細に説明する。
【0044】
なお、前述したように左及び右加速度データ生成部20、30は、同様な構成を備え受信制御回路41へデータを送信する。車両1の左右である点が異なるだけであるので、以下では左側の左加速度データ生成部20と起動制御装置40の受信制御回路41との送信を例にして説明する。
【0045】
図4は、左加速度データ生成部20から送信される1つのデータ例を示した図である。本実施例では、左加速度データ生成部20と受信制御回路41とを2本の配線25で接続している。この配線25を用いて単方向2線式電流通信で調歩同期式を採用して、左加速度データ生成部20から受信制御回路41への単方向のデータ送信を行う。このような通信方式を採用すると、簡単な構成で本実施例の乗員保護装置10で特徴とするデータ処理を実現できる。
【0046】
図4に示すように、2線式電流通信では配線を流れる電流の増大、減少によりロジック1又は0を生成して、データをシリアルに送信する。本実施例の場合は、D0〜D7の8ビットで1つのデータが形成されている。さらに図4にも示したが、パリティ1ビットを付加して9ビットで1つのデータを形成してもよい。
【0047】
また、本実施例の通信方式では調歩同期式を採用しており、データの前後に1ビットずつのスタートビットとストップビットが付加されている。
【0048】
前記左加速度データ生成部20の左送信制回路23は、上記送信方法に基づいてデータを送信するが、その際に1つのデータを2回繰り返して送信するように設定されている。左送信制回路23は、例えばA/D変換器22により生成されたデジタル加速度データを一時的にメモリ等に記録するように構成して2回の読出しが可能となるようし、さらにパラレル/シリアル変換回路等の周知の回路を含んで形成することができる。なお、上述した左フロントセンサ21、A/D変換器22及び左送信制回路23の機能を果たすように予め一体に形成した部品を採用してもよい。
【0049】
図5は上記のように左送信制回路23から受信制御回路41へ送信されたデジタル加速度データが処理され、最終的に受信データが確定されるまでついて示した図である。
【0050】
上段に左送信制回路23から送信されている送信データが示されている。ここでは1つのデータが各々8ビットであるA、B及びCの3つのデータが送信された場合を例示している。すなわち、左フロントセンサ21で検出された加速度値に基づいて、左A/D変換器22からA、B、Cというデジタル加速度データが左送信制御回路23へ供給された場合であり、左送信制御回路23が1つのデータ毎に2回ずつ繰り返してシリアル信号にして供給した状態が図5の上段の送信データとなる。
【0051】
上記送信データを受信制御回路41側で受ける受信データが、次の中段に示されている。受信制御回路41は受信した1つのデータ毎に直前及び直後のデータと順次比較して、その下段に示すように受信処理データを形成する。ここで示すように、受信制御回路41側では比較して同一データであることが確認された場合に1つのデータを確定するという単純な処理が継続される。そして、最下段に区別して示すように受信制御回路41は最終の受信データを確定する。なお、受上記信制御回路41は、メモリ、比較器等を含んだ公知の回路の組合せて形成することができる。
【0052】
図5を用いて、さらに詳細にデータ処理方法を説明すると、受信データは、A、A、B、B、C、Cであるので、受信制御回路41は(A、A)(A、B)(B、B)(B、C)(C、C)という順で連続するデータを2つずつ比較する。その結果同じデータであるときに1のデータを確定する。
【0053】
すなわち、図5下段の受信処理データとして示すように、(A、A)からデータAが確定する。(A、B)からは確定しない。(B、B)からデータBが確定する。(B、C)からは確定しない。(C、C)からデータCが確定する。
【0054】
その結果、受信処理データは、A確定、非確定、B確定、非確定、C確定、という順に定まる。受信制御回路41はこのように確定、非確定が交互に繰り返されることを想定した設定となっており、図5の最下段に区切って示したA、B、Cを最終の受信データとして確定することになる。
【0055】
上記最終受信データは、図1で示すように、左加速度データ生成部20による検出データとして後段の起動制御回路42へ供給される。起動制御回路42はこのデータに基づいてエアバッグ等を起動するか、否かの判定を実行することになる。
【0056】
さて、上記図5は、左送信制御回路23から送信された送信データが送信中にノイズ等の影響を受けずに正常な状態で受信制御回路41に受信された場合の処理が示されている。この図5に対して、次に示す図6は左送信制回路23から送信されたデータが送信中にノイズ等の影響を受けて変化してしまった場合の処理について示している。すなわち、図6は左送信制回路23から受信制御回路41へ送信したデータに異常が発生した場合の処理について示した図である。
【0057】
図6の場合も、各々8ビットであるA、B及びCの3つのデータが送信された場合を例に示している。しかし、例えば配線25での送信中に2番目のBデータがXに化けた場合が示されている。
【0058】
受信制御回路41は前述したように、送信されたデータを1つのデータ毎に直前のデータと比較して、同一データであることを確認すると1つのデータを確定する。
【0059】
図6で説明すると、送信データはA、A、B、B、C、Cであったが、受信データはA、A、B、X、C、Cとなってしまっているので、受信制御回路41は(A、A)(A、B)(B、X)(B、C)(C、C)という順で連続するデータを2つずつ比較することになる。その結果、(A、A)からデータAが確定する。(A、B)からは確定しない。(B、X)からは確定しない。(B、C)からは確定しない。(C、C)からデータCが確定する。
【0060】
すなわち、受信処理データは、A確定、非確定、非確定、非確定、C確定、という順となる。受信制御回路41はこのように非確定が3回以上連続した場合には受信したデータに異常があるとし、最終の受信データを非確定、すなわち異常データであるとして処理する。この場合には受信制御回路41に起動制御回路42へのデータ供給を停止する等の設定をしておくことで、起動制御回路42が誤ったデータに基づいてエアバッグを展開させる事態の発生を防止できる。
【0061】
以上詳述したように、本実施例の乗員保護装置10によると、左送信制回路23が1つのデータ毎に2回繰り返しながら順次送信し、これを受信制御回路41で受信順に1データ毎に直前のデータと順次比較するという簡易な構成で送信中に発生したデータ異常を検出し、対処することができる。よって、起動制御装置40がエアバッグ装置50を誤って展開するという事態を確実に抑制できる。
【0062】
また、上記のように受信側では、順次受信したデータをその直前及び直後のデータと比較するという簡単な処理を行うだけである。よって、本実施例の乗員保護装置10は、従来のデータ処理法を用いた場合のように処理能力の高いCPUや新たなIC等は不要であり、コスト低減を図ることができる。
【0063】
また、図4から図6は、左加速度データ生成部20の左送信制回路23と、起動制御装置40の受信制御回路41との送信について説明したが、本実施例の乗員保護装置10では右加速度データ生成部30の右送信制回路33と受信制御回路41の送信の場合も同様に処理される。
【0064】
ところで、左加速度データ生成部20及び右加速度データ生成部30からデータ送信を受ける受信制御回路41でのデータ処理に関して、受信制御回路41内に左加速度データ生成部20用と右加速度データ生成部30用の回路を別として並列に設けてもよいし、一つの回路で処理するように構成してもよい。
【0065】
ただし、一つの回路で処理できるよう構成する場合には、左加速度データ生成部20の左送信制回路23と、右加速度データ生成部30の右送信制回路33から受信制御回路41へ並行して逐次データが送信されることになる。よって、受信制御回路41で受信したデータが左加速度データ生成部20からのものか、右加速度データ生成部30からのものかを識別することが必要となる。そのためには、図4に示したデジタル加速度データの前に、左右を識別するためのIDデータを更に付加することで対処できる。このIDデータは、左送信制回路23及び右送信制回路33でデータ送信毎にその先頭に付加するように設定すればよい。上記IDデータについても2回繰り返して送信するようにしてもよい。
【0066】
また、上述した実施例では2つのフロアセンサを用いた場合を例示したが、車両中央の前部に1つ設けた構成としてもよい。この場合には実施例で説明した場合よりも構成を簡素化できる。その逆に、フロアセンサを3個以上設けるようにしてもよい。また、上記実施例ではフロントセンサを例に説明したが、起動制御装置と配線を介して接続される他の衝突検出センサ、例えば側突センサに本発明を採用してもよいことは言うまでもない。
【0067】
また、上記実施例ではA/D変換器によるデータを左及び右送信制御回路23、33でシリアル信号に変更して2線で受信制御回路41へ送信するようしたが、配線本数を増やしてデータをパラレルで送信するようしてもよい。
【0068】
さらに、上記本実施例ではデータを2回連続して送信するという手法により、受信データの誤り(異常データ)がある場合にこれを対処する場合を説明した。しかし、図4でも例示したデータのように周知の誤り訂正手法であるパリティビットを付加した場合には、このパリティビットによる誤り検出と上記実施例の誤り検出機能とを組合せてデータ異常を検出し、対処するようにしてもよい。
【0069】
また、上記本実施例ではデータを2回繰り返して送信する場合を例にしたが、データを3回以上繰り返して送信しても上記実施例と同様にデータ異常を検出できる。この場合、受信側では実施例と同様に連続するデータを2個ずつチェックするようにしてもよいし、データの繰り返し回数に応じて同時にチェックするデータ数を変更してもよい。
【0070】
さらに、上記実施例では受信データに異常データが確認された場合には、エアバッグの誤展開を防止する観点から起動制御回路42への信号供給を制限することとした。しかし、異常データの発生が長時間に及ぶような場合には、乗員保護が必要な衝突である可能性も否定できない。よって、異常データが所定時間を越えて継続するような場合には車両に予め設定されているフェールセーフモードにより乗員保護装置10が起動制御されるような所定の信号が上記受信制御回路41から発信されるように設計してもよい。
【0071】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0072】
なお、特許請求の範囲の加速度データ生成手段は左加速度データ生成部20と右加速度データ生成部30に、加速度検出素子は左フロントセンサ21と右フロントセンサ31とに、A/D変換部は左A/D変換器22と右A/D変換器32に、送信制御部は左送信制回路23と右送信制回路33に、それぞれ対応している。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、加速度データ生成手段がデジタル加速度データを複数回繰り返して送信し、起動制御装置側ではこのデータを比較して同一性を確認するという簡単な手法で、異常データが発生したことを確認して対処できる。よって、受信側となる起動制御装置の構成の負荷を軽減しつつ、乗員保護装置を精度良く起動制御できるようになる。このような、データ処理方法では従来と比較して構成を簡素化できるのでコストの低減を図ることができる。
【0074】
また、加速度生成手段側から1つのデータを2回繰り返して送信し、起動制御装置側で同一のデータが連続して2回受信されたか、否かにより受信データが正常であるか、異常であるかを確認できる。
【0075】
請求項2及び3に記載の発明によれば、前述した請求項1に記載の発明を簡易な構成で実現できる。
【0076】
請求項4に記載の発明によれば、加速度データ生成手段がデジタル加速度データを複数回繰り返して送信し、起動制御装置側ではこのデータを比較して同一性を確認するという簡単な構成で、異常データが発生したことを確認できる。よって、受信側となる起動制御装置側の負荷を軽減しつつ、精度良く起動制御された乗員保護装置を提供できる。このような乗員保護装置は従来と比較して構成を簡素化できるのでコストの低減を図ることができる。
【0077】
また、送信制御部側から1つの加速度データを2回繰り返して送信し、受信制御部側で同一の加速度データが連続して2回受信したか、否かにより受信データが正常であるか、異常であるかを確認できる。
【0078】
請求項5及び6に記載の発明によれば、前述した請求項4に記載の発明を簡易な構成で実現できる。
【0079】
請求項7に記載の発明によれば、加速度検出素子が車両の衝突を早期に検出し、この検出値に基づいて加速度データが起動制御装置へ供給されるので、簡単な構成で早期の乗員保護を実現できる乗員保護装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である乗員保護装置の要部構成を示した図である。
【図2】図1の乗員保護装置が車両に搭載されたときの様子を例示した図である
【図3】起動制御装置を実現する電子制御ユニット(ECU)を例示した図である。
【図4】実施例の左加速度検出部から送信される1つのデータ例を示した図である
【図5】実施例の左送信制御回路から受信制御回路へ送信されたデジタル加速度データが処理され、最終的に受信データが確定されるまでついて示した図である。
【図6】実施例の左送信制御回路から受信制御回路へ送信したデータに異常が発生した場合の処理について示した図である。
【符号の説明】
1 車両
10 乗員保護装置
20、30 加速度データ生成手段
(20左加速度データ生成部、30右左加速度データ生成部)
21、31 加速度検出素子
(21左フロントセンサ、31右フロントセンサ)
22、32 A/D変換部
(22左A/D変換器、32右A/D変換器)
23、33 送信制御部
(23左送信制御回路、33右送信制御回路)
40 起動制御装置(ECU)
41 受信制御部(受信制御回路)
50 エアバッグ装置
Claims (7)
- 車両の加速度を検出し、デジタル化した加速度データを生成する加速度データ生成手段と、前記デジタル加速度データに基づいて乗員保護装置の起動を制御する起動制御装置とのデータ処理方法であって、
前記加速度データ生成手段は1つのデータを2回繰返しながら前記起動制御装置へ送信し、前記起動制御装置では同一のデータを連続して2回受信したときに当該データを真のデータとして確定する処理を順次行うと共に、連続して3回以上異なるデータを受信したときには異常データとして処理するようにした、ことを特徴とする乗員保護装置のデータ処理方法。 - 請求項1に記載の乗員保護装置のデータ処理方法において、
前記加速度データ生成手段と前記起動制御装置との通信に単方向2線式電流通信を用いた、ことを特徴とする乗員保護装置のデータ処理方法。 - 請求項2に記載の乗員保護装置のデータ処理方法において、
前記加速度データ生成手段と前記起動制御装置との通信に調歩同期式を用いた、ことを特徴とする乗員保護装置の通信方法。 - 車両の加速度を検出し、デジタル化した加速度データを複数回繰返して生成する加速度データ生成手段と、
前記デジタル加速度データを受信し、同一のデジタル加速度データを繰り返し受信したときに当該デジタル加速度データを真のデータとして処理し、同一のデジタル加速度データを繰り返し受信できないときには異常データとして処理して得た確定データに基づいて起動を制御する起動制御装置と、を含み、
前記加速度データ生成手段は、前記車両の加速度を検出する加速度検出素子と、該加速度検出素子による加速度値をデジタル化した加速度データに変換するA/D変換部と、前記デジタル加速度データを複数回繰り返して送信する送信制御部と、を有し、
前記起動制御装置は、前記送信制御部から同一のデジタル加速度データを繰り返し受信したときに当該デジタル加速度データを真のデータとして処理し、同一のデジタル加速度データを繰り返し受信できないときには異常データとして処理する受信制御部を有し、
前記送信制御部は1つのデータを2回繰り返しながら前記受信制御部へ送信し、前記受信制御部は同一のデータを連続して2回受信したときに当該デジタル加速度データを真のデータとして確定する処理を順次行うと共に、連続して3回以上異なるデータを受信したときには異常データとして処理するように設定されている、ことを特徴とする乗員保護装置。 - 請求項4に記載の乗員保護装置において、
前記送信制御部と前記受信制御部との通信に単方向2線式電流通信を用いた、ことを特徴とする乗員保護装置。 - 請求項5に記載の乗員保護装置において、
前記送信制御部と前記受信制御部との通信に調歩同期式を用いた、ことを特徴とする乗員保護装置。 - 請求項4から6のいずれかに記載の乗員保護装置において、
前記加速度検出素子は、車両の前部側に少なくとも1つ配設され、該車両の前後方向の加速度を検出する、ことを特徴とする乗員保護装置。
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