JP3728923B2 - ハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマゼンタカプラーを含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料に関し、更に詳しくはピラゾロアゾール系マゼンタカプラーを含有することによって、色再現性及び発色性が優れ、更に、熱や光に対して安定な色素画像が得られるハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)において、一般に用いられるカプラーとしては、開鎖ケトメチレン系化合物からなるイエローカプラー、ピラゾロン系化合物、ピラゾロアゾール系化合物からなるマゼンタカプラー、フェノール系化合物、ナフトール系化合物からなるシアンカプラー等が知られている。従来より、5−ピラゾロン化合物がマゼンタカプラーとしてよく使用されている。
【0003】
公知のピラゾロンマゼンタカプラーとしては、米国特許2,600,788号、同3,519,429号、特開昭49−111631号、同57−35858号等に記載されている。しかし、ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the PhotographicProcess),マクミラン社,4版(1977),356〜358頁、ファインケミカル,シー・エム・シー社刊,14巻,8号,38〜41頁、日本写真学会・昭和60年度年次大会講演要旨集,108〜110頁に記載されている如く、ピラゾロンマゼンタカプラーより形成される色素は好ましくない副吸収があり、その改良が望まれている。
【0004】
先の文献にも記載されている如く、ピラゾロアゾール系マゼンタカプラーより形成される色素には副吸収がない。このカプラーが良好なカプラーであることは、先の文献にも米国特許3,725,067号、同3,758,309号、同3,810,761号等に記載されている。
【0005】
しかしながら、これらのカプラーから形成されるアゾメチン色素の光に対する堅牢性は著しく低く、カラー写真感光材料、特にプリント系カラー写真感光材料の性能を著しく損なうものであった。
【0006】
従来から光に対する堅牢性を改良するための研究が行われてきた。例えば特開昭59−125732号、同61−282845号、同61−292639号、同61−279855号にはピラゾロアゾール系マゼンタカプラーに、フェノール系化合物又はフェニルエーテル化合物を併用する技術が、特開昭61−72246号、同62−208048号、同62−157031号、同63−163351号にはアミン系化合物を併用する技術が開示されている。
【0007】
更に特開昭63−24256号には、アルキルオキシフェニルオキシ基を有するピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが提案されている。
【0008】
しかし、上記技術においても、マゼンタ色素画像の光に対する堅牢性は不充分であり、その改良が強く望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、色再現性、発色性に優れ、しかもマゼンタ色素画像の光堅牢性が著しく改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0011】
支持体上に、青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層及び赤感性ハロゲン化銀乳剤層を含む写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該緑感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層に、下記一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーの少なくとも一種を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0012】
【化2】
【0013】
〔式中、R1は置換基を表し、R2は置換又は無置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【0014】
Lは置換又は無置換のアルキレン基を表し、Jは−(C=O)−又は−(O=S=O)−を表す。Xは水素原子、ハロゲン原子又は発色現像主薬の酸化体との反応により脱離可能な基を表し、Zは含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。〕
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の前記一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーについて説明する。
【0016】
前記一般式(M−I)において、R1で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、ヘキシルスルホニルアミノ基、シクロヘキシルスルホニルアミノ基、オクチルスルホニルアミノ基、ドデシルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられ、これらの基は、更に上記の置換基によって置換されていてもよい。これらのうちで、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン原子、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイルスルファモイル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシアシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ウレイド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボニル等の各基が好ましく、更に好ましいものは、アルキル基であり、特に好ましくは、(t)ブチル基である。
【0017】
前記一般式(M−I)において、R2は置換又は無置換のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【0018】
R2で表されるアルキル基は、炭素数1〜32のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、2−エチルヘキシル基等がその代表例として挙げられる。
【0019】
R2で表されるアルキル基が置換基を有するとき、その置換基としては、前記一般式(M−I)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0020】
R2で表されるシクロアルキル基は、炭素数3〜12のものが好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロプロピル基、アダマンチル基等がその代表例として挙げられる。
【0021】
R2で表されるシクロアルキル基が置換基を有するとき、その置換基としては、前記一般式(M−I)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0022】
R2で表されるアリール基は、炭素数6〜14のものが好ましく、その代表例としてはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0023】
R2で表されるアリール基が置換基を有するとき、その置換基としては、前記一般式(M−I)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0024】
前記一般式(M−I)において、Lは置換又は無置換のアルキレン基を表す。
【0025】
Lで表されるアルキレン基としては例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【0026】
Lで表されるアルキレン基が置換基を有するとき、その置換基としては、前記一般式(M−I)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0027】
以下に、Lで表されるアルキレン基の代表的具体例を示すが、Lはこれらに限定されない。
【0028】
【化3】
【0029】
前記一般式(M−I)において、Lは置換又は無置換のエチレン基が好ましく、特に好ましくは、無置換のエチレン基である。
【0030】
前記一般式(M−I)において、Jは−(C=O)−又は−(O=S=O)−を表す。
【0031】
前記一般式(M−I)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、例えばハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、弗素原子等)、発色現像主薬の酸化体との反応により脱離可能な基としては、例えばアルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、アルキルオキザリルオキシ、アルコキシオキザリルオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、複素環チオ、アルキルオキシチオカルボニルチオ、アシルアミノ、スルホンアミド、N原子で結合した含窒素複素環、アルキルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、カルボキシル、等の各基が挙げられるが、好ましくはハロゲン原子、特に好ましくは塩素原子である。
【0032】
前記一般式(M−I)において、Zにより形成される含窒素複素環としては、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。これらのうちでトリアゾール環が好ましい
前記一般式(M−I)において、好ましい骨格は下記の〔I〕及び〔II〕であり、特に好ましくは〔I〕である。
【0033】
【化4】
【0034】
以下に、本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーの代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
本発明の前記一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーは、ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイアティ(Journal of the Chemical Society),パーキン(Perkin)I(1977),2047〜2052、米国特許3,725,067号、特開昭59−99437号、同58−42045号、同59−162548号、同59−171956号、同60−33552号、同60−43659号、同60−172982号、同60−190779号、同61−189539号、同61−241754号、同63−163351号、同62−157031号、Syntheses,1981年40頁、同1984年122頁、同1984年894頁、特開昭49−53574号、英国特許1,410,846号、新実験化学講座14−III巻,1585〜1594頁(1977),丸善刊、Helv.Chem.Acta.,36巻,75頁(1953)、J.Am.Chem.Soc.,72巻,2762頁(1950)、Org.Synth.,II巻,395頁(1943)等を参考にして、当業者ならば容易に合成することができる。
【0049】
以下に本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーの代表的な合成例を示す。
【0050】
合成例1
【0051】
【化18】
【0052】
化合物〔A〕20.0gに、β−アラニン7.26g、p−トルエンスルホン酸29.6g及びトルエン300mlを加え生成してくる水を留去しながら4時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、析出している固体を濾過した。得られた固体を酢酸エチル及び水で順次洗浄することで、白色固体の化合物〔B〕28.7gを得た。
【0053】
上記で得られた化合物〔B〕3.01gに、酢酸エチル20ml及び炭酸カリウム1.01gを水10mlに溶解した溶液を加えた。更に、これを激しく攪拌しながら化合物〔C〕2.39gを酢酸エチル4mlに溶解した溶液をゆっくり滴下した。滴下終了時から室温で2時間攪拌し反応を完結させた。反応終了後、水層を取り除き、得られた有機層を食塩水で3回洗浄した。溶媒の酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残留物を酢酸エチル/アセトニトリル混合溶媒から再結晶することで、白色固体の例示化合物(M−3)3.88gを得た。融点84.5〜85.0℃。
【0054】
同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、例示化合物M−3であることを確認した。
【0055】
合成例2
【0056】
【化19】
【0057】
化合物〔B〕2.51gに、アセトニトリル30ml及びトリエチルアミン1.36mlを加えた。これに化合物〔D〕1.76gをゆっくり添加し、添加終了時から室温で5時間攪拌し、反応を完結させた。反応終了後、反応液に酢酸エチル50ml及び水50mlを加えた。水層を取り除いた後、得られた有機層を希塩酸水、希炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で順次洗浄した。溶媒の酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン)により精製することで、白色個体の例示化合物(M−15)3.36gを得た。融点:86.0〜88.0℃
同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、例示化合物M−15であることを確認した。
【0058】
合成例3
【0059】
【化20】
【0060】
化合物〔B〕4.00gに、酢酸エチル30ml及び炭酸カリウム1.35gを水10mlに溶解した溶液を加えた。更に、これを激しく攪拌しながら化合物〔E〕3.08gを酢酸エチル5mlに溶解した溶液をゆっくり滴下した。滴下終了時から室温で2時間攪拌し反応を完結させた。反応終了後、水層を取り除き、得られた有機層を食塩水で3回洗浄した。溶媒の酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残留物をアセトニトリルから再結晶することで、白色固体の例示化合物(M−83)3.73gを得た。融点49℃。
【0061】
同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、例示化合物M−83であることを確認した。
【0062】
合成例4
【0063】
【化21】
【0064】
化合物〔B〕4.00gに、酢酸エチル30ml及び炭酸カリウム1.35gを水10mlに溶解した溶液を加えた。更に、これを激しく攪拌しながら化合物〔F〕3.19gを酢酸エチル5mlに溶解した溶液をゆっくり滴下した。滴下終了時から室温で2時間攪拌し反応を完結させた。反応終了後、水層を取り除き、得られた有機層を食塩水で3回洗浄した。溶媒の酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残留物をアセトニトリルから再結晶することで、白色固体の例示化合物(M−85)4.34gを得た。融点88℃。
【0065】
同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、例示化合物M−85であることを確認した。
【0066】
合成例5
【0067】
【化22】
【0068】
化合物〔B〕4.00gに、酢酸エチル30ml及び炭酸カリウム1.35gを水10mlに溶解した溶液を加えた。更に、これを激しく攪拌しながら化合物〔G〕2.98gを酢酸エチル5mlに溶解した溶液をゆっくり滴下した。滴下終了時から室温で2時間攪拌し反応を完結させた。反応終了後、水層を取り除き、得られた有機層を食塩水で3回洗浄した。溶媒の酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残留物をアセトニトリルから再結晶することで、白色固体の例示化合物(M−92)3.65gを得た。融点64℃。
【0069】
同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、例示化合物M−92であることを確認した。
【0070】
本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーは、下記一般式〔AO−I〕、〔AO−II〕及び/又は〔AO−III〕で表される色素画像安定化剤から選ばれる少なくとも1種の色素画像安定化剤と併せて用いることが好ましい。
【0071】
【化23】
【0072】
式中、R11は水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基又は下記残基を表す。
【0073】
【化24】
【0074】
ここでR11a,R11b及びR11cはそれぞれ一価の有機基を表す。R12,R13,R14,R15及びR16はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、或いはベンゼン環に置換可能な基を表す。またR11〜R16は互いに結合して5〜6員環を形成してもよい。
【0075】
【化25】
【0076】
式中、R21は脂肪族基、芳香族基を表し、Yは窒素原子と共に5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0077】
【化26】
【0078】
式中、R31はアルキル基を表し、R32は置換基を表す。lは0〜5の整数を表すが、lが2以上のとき、複数のR32は同じでも異なっていても良い。
【0079】
前記一般式〔AO−I〕において、R11の表すアルキル基、アリール基、複素環基としては、前記一般式(M−I)において、R1等で表されるアルキル基、アリール基として説明した基が、複素環基としては例えばピラゾール基、2−イミダゾリル基、3−ピリジル基、2−フリル基等が挙げられる。また、R11a,R11b,R11cの表す一価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。R11としては水素原子、アルキル基が好ましい。R12〜R16で表されるベンゼン環に置換可能な基としては、前記一般式(M−I)において、R1等で表されるアルキル基、アリール基等が更に置換されている場合の置換基として説明した基が挙げられる。R12,R13,R15,R16としては水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が好ましく、R14はアルキル基、ヒドロキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。またR11とR12は互いに閉環し5員又は6員環を形成してもよく、その時のR14はヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。またR11とR12が閉環し、メチレンジオキシ環を形成してもよい。更にまた、R13とR14が閉環して5員の炭化水素環を形成してもよく、その時のR11はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましい。
【0080】
以下に一般式〔AO−I〕で表される化合物の具体例を示す。
【0081】
【化27】
【0082】
【化28】
【0083】
以上の具体例の他に、前記一般式〔AO−I〕で表される化合物の具体例としては、特開昭60−262159号公報の第11頁〜13頁に記載された例示化合物A−1〜A−28、同61−145552号公報の第8頁〜10頁に記載された例示化合物PH−1〜PH−29、特開平1−306846号公報の第6頁〜7頁に記載された例示化合物B−1〜B−21、同2−958号公報の第10頁〜18頁に記載された例示化合物I−1〜I−13、I′−1〜I′−8、II−1〜II−12、II′−1〜II′−21、III−8〜III−14、IV−1〜IV−24、V−13〜V−17、同3−39956号公報の第10頁〜11頁に記載された例示化合物II−1〜II−33等を挙げることができる。
【0084】
次に、前記一般式〔AO−II〕において、R21は脂肪族基、芳香族基を表すが、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基であり、最も好ましくはアリール基である。Yが窒素原子と共に形成する複素環としては、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、チオモルホリン−1,1−ジオン環、ピロリジン環等が挙げられる。
【0085】
以下に一般式〔AO−II〕で表される化合物の具体例を示す。
【0086】
【化29】
【0087】
以上の具体例の他に、前記一般式〔AO−II〕で表される化合物の具体例としては、特開平2−167543号公報の第8頁〜11頁に記載された例示化合物B−1〜B−65、特開昭63−95439号公報の第4〜7頁に記載された例示化合物(1)〜(120)等を挙げることができる。
【0088】
前記一般式〔AO−III〕において、R31で表されるアルキル基としては、前記一般式(M−I)において、R1等で表されるアルキル基として説明した基が挙げられる。R32で表される置換基としては、前記一般式(M−I)において、R1の置換基として説明した基が挙げられる。
【0089】
上記R31で表されるアルキル基としては、炭素数1〜16の無置換のアルキル基が好ましく、R32としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
【0090】
以下に、一般式〔AO−III〕で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化30】
【0092】
【化31】
【0093】
前記一般式〔AO−I〕、一般式〔AO−II〕及び一般式〔AO−III〕で表される色素画像安定化剤の使用量は、本発明の一般式(M−I)で示されるマゼンタカプラーに対して、それぞれ5〜400モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜250モル%である。
【0094】
本発明の一般式(M−I)で示されるマゼンタカプラーと前記色素画像安定化剤は同一層中で用いられるのが好ましいが、該カプラーが存在する層に隣接する層中に色素画像安定化剤を用いてもよい。
【0095】
本発明の一般式(M−I)で示されるマゼンタカプラーは、通常ハロゲン化銀当たり1×10-3mol〜8×10-1mol、好ましくは1×10-2mol〜8×10-1molの範囲で用いることができる。
【0096】
本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーは他の種類のマゼンタカプラーと併用することができる。
【0097】
本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーを含有させるためには、従来の方法、例えば公知のジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の如き高沸点溶媒と酢酸ブチル、酢酸エチル等の如き低沸点溶媒の混合液或いは低沸点溶媒のみの溶媒に一般式(M−I)で示されるマゼンタカプラーをそれぞれ単独で、或いは併用して溶解せしめた後、界面活性剤を含むゼラチン水溶液と混合し、次いで高速度回転ミキサー又はコロイドミルもしくは超音波分散機を用いて乳化分散させた後、乳剤中に直接添加する方法を採用することができる。又、上記乳化分散液をセットした後、細断し、水洗した後、これを乳剤に添加してもよい。
【0098】
本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーは、高沸点溶媒と前記分散法によりそれぞれ別々に分散させてハロゲン化銀乳剤に添加してもよいが、両化合物を同時に溶解せしめ、分散し、乳剤に添加する方法が好ましい。
【0099】
前記高沸点溶媒の添加量は、本発明の一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラー1gに対して好ましくは0.01〜10g、更に好ましくは0.1〜3.0gの範囲である。
【0100】
本発明の感光材料に用いるハロゲン化銀乳剤としては、通常のハロゲン化銀乳剤の任意のものを用いることができる。該乳剤は、常法により化学増感することができ、増感色素を用いて、所望の波長域に光学的に増感できる。
【0101】
ハロゲン化銀乳剤には、カブリ防止剤、安定剤等を加えることができる。該乳剤のバインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利である。
【0102】
乳剤層、その他の親水性コロイド層は、硬膜することができ、又、可塑剤、水不溶性又は難溶性合成ポリマーの分散物(ラテックス)を含有させることができる。カラー写真感光材料の乳剤層にはカプラーが用いられる。
【0103】
更に色補正の効果を有しているカラードカプラー、競合カプラー及び現像主薬の酸化体とのカップリング反応により現像促進剤、漂白促進剤、現像剤、ハロゲン化銀溶剤、調色剤、硬膜剤、カブリ剤、カブリ防止剤、化学増感剤、分光増感剤及び減感剤のような写真的に有用なフラグメントを放出する化合物を用いることができる。
【0104】
また、本発明の感光材料には、色素画像の劣化を防止する目的で画像安定剤及び紫外線吸収剤を用いることができる。
【0105】
支持体としては、ポリエチレン等をラミネートした紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、バライタ紙、三酢酸セルロース等をもちいることができる。
【0106】
本発明の感光材料を用いて色素画像を得るには露光後、通常知られているカラー写真処理を行うことができる。
【0107】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されない。
【0108】
実施例1
紙支持体の片面にポリエチレンを、もう一方の面に酸化チタンを含有するポリエチレンをラミネートした支持体上に、以下の表1、表2に示す構成の各層を酸化チタンを含有するポリエチレン層の側に塗設し、多層カラー写真感光材料試料101を作製した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
塗布液は下記の如く調製した。
【0112】
第1層塗布液
イエローカプラー(EY−1)26.7g、色素画像安定化剤(ST−1)10.0g、色素画像安定化剤(ST−2)6.67g、ステイン防止剤(HQ−1)0.67g及び高沸点有機溶媒(DNP)6.67gに酢酸エチル60ccを加え溶解し、この溶液を20%界面活性剤(SU−2)水溶液7ccを含有する10%ゼラチン水溶液220ccに超音波ホモジナイザーを用いて乳化分散させてイエローカプラー分散液を作製した。
【0113】
この分散液を下記に示す青感性ハロゲン化銀乳剤(銀8.67g含有)と混合し、更にイラジエーション防止染料(AIY−1)を加え第1層塗布液を調製した。
【0114】
第2層〜第7層塗布液も第1層塗布液と同様に調製した。又、硬膜剤として第2層及び第4層に(HH−1)を、第7層に(HH−2)を添加した。塗布助剤としては、界面活性剤(SU−1)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。
【0115】
以下に前述の各層中に使用される化合物の構造式を示す。
【0116】
【化32】
【0117】
【化33】
【0118】
【化34】
【0119】
【化35】
【0120】
【化36】
【0121】
第1層、第3層、第5層に使用したハロゲン化銀乳剤は以下の通りである。尚、各乳剤で使用した化学増感剤、安定剤及び増感色素も以下に示す。
【0122】
青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)
平均粒径0.85μm、変動係数=0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体塩臭化銀乳剤
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤 STAB―1 6×10-4モル/モルAgX
増感色素 BS―1 4×10-4モル/モルAgX
増感色素 BS―2 1×10-4モル/モルAgX
緑感性ハロゲン化銀乳剤(Em−G)
平均粒径0.43μm、変動係数=0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体塩臭化銀乳剤
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤 STAB―1 6×10-4モル/モルAgX
増感色素 GS―1 4×10-4モル/モルAgX
赤感性ハロゲン化銀乳剤(Em−R)
平均粒径0.50μm、変動係数=0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体塩臭化銀乳剤
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤 STAB―1 6×10-4モル/モルAgX
増感色素 RS―1 1×10-4モル/モルAgX
【0123】
【化37】
【0124】
次に試料101の第3層のマゼンタカプラーEM−1を、マゼンタカプラーEM−1の添加量と等モルの下記表3に示す本発明のマゼンタカプラーに替えた以外は試料101と同様にして試料102〜110を作製した。
【0125】
このようにして作製した各試料を、常法に従って緑色光によってウエッジ露光後、下記の処理工程に従って処理を行った。
【0126】
処理工程 温 度 時 間
発色現像 35.0±0.3℃ 45秒
漂白定着 35.0±0.5℃ 45秒
安定化 30〜34℃ 90秒
乾 燥 60〜80℃ 60秒
各処理液の組成を以下に示す。尚、各処理液の補充量はカラー写真感光材料1m2当たり80ccである。
【0127】
水を加えて全量を1000ccとし、タンク液においてはpHを10.10に、補充液においてはpHを10.60に調整する。
【0128】
漂白定着液(タンク液と補充液は同一)
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム二水塩 60g
エチレンジアミン四酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100cc
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5cc
水を加えて全量を1000ccとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpHを5.7に調整する。
【0129】
水を加えて全量を1000ccとし、硫酸又は水酸化カリウムでpHを7.0に調整する。
【0130】
連続処理後の試料を用いて以下の評価を行った。
【0131】
《Dmax》
最大発色濃度を測定した。
【0132】
《耐光性》
得られた試料をキセノンフェードメータで10日間照射し、初濃度1.0における色素画像の残存率(%)を求めた。
【0133】
また、試料101〜110の反射分光吸収スペクトルを測定し、分光吸収特性λmax及びΔλl0.2を評価した。
【0134】
<λmax>
反射光学濃度1.0におけるウエッジの極大吸収波長を表す。
【0135】
<Δλl0.2>
反射光学濃度1.0のウエッジにおける吸収度0.2を与える極大吸収波長よりも長波長側の波長と極大波長との差(λmaxの吸光度を1.0とする。この値が小さいほど吸収がシャープである。)を表す。
【0136】
これらの結果を表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
表3から明らかなように、本発明のマゼンタカプラーを用いた試料102〜110は比較カプラーを用いた試料101に比して発色性、耐光性双方に優れていることが分かる。
【0139】
更に、本発明のマゼンタカプラーを用いた試料102〜110は比較カプラーを用いた試料101に比してΔλl0.2の値が減少して(吸収がシャープになって)おり色再現性が向上している。
【0140】
上記の評価項目における、本発明の試料102〜109と試料110との比較では、試料102〜109が優れており、本発明においては、前記骨格〔I〕を有するマゼンタカプラーが更に優れていることが分かる。
【0141】
実施例2
試料101の第3層中のマゼンタカプラー及び色素画像安定化剤を、下記表4に示す添加量のマゼンタカプラー及び色素画像安定化剤の組み合わせに替え、更に第3層中のDNPを当重量のオレイルアルコール及びジブチルフタレートの混合物(重量比=1:1)に替えた以外は試料101と同様にして試料201〜207を作製した。
【0142】
このようにして作製した各試料を、常法に従って緑色光によってウエッジ露光後、実施例1と同様の処理工程に従って処理を行った。
【0143】
連続処理後の各試料を用いて、実施例1と同様の評価を行った。
【0144】
《Dmax》
最大発色濃度を測定した。
【0145】
《耐光性》
得られた試料をキセノンフェードメータで15日間照射し、初濃度1.0における色素画像の残存率(%)を求めた。
【0146】
また、試料201〜207の反射分光吸収スペクトルを測定し、分光吸収特性λmax及びΔλl0.2を評価した。
【0147】
<λmax>
反射光学濃度1.0におけるウエッジの極大吸収波長を表す。
【0148】
<Δλl0.2>
反射光学濃度1.0のウエッジにおける吸収度0.2を与える極大吸収波長よりも長波長側の波長と極大波長との差(λmaxの吸光度を1.0とする。この値が小さいほど吸収がシャープである。)を表す。
【0149】
これらの結果を表4に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
表4から明らかなように、本発明のマゼンタカプラーを用いた試料202〜207は比較カプラーを用いた試料201に比して発色性、耐光性双方に優れていることが分かる。
【0152】
更に、本発明のマゼンタカプラーを用いた試料202〜207は比較カプラーを用いた試料201に比してΔλl0.2の値が減少して(吸収がシャープになって)おり色再現性が向上している。
【0153】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明によるハロゲン化銀カラー写真感光材料は、色再現性、発色性に優れ、しかもマゼンタ色素画像の光堅牢性が著しく改良され、優れた効果を有する。
Claims (1)
- 支持体上に、青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層及び赤感性ハロゲン化銀乳剤層を含む写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該緑感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層に、下記一般式(M−I)で表されるマゼンタカプラーの少なくとも一種を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
Lは置換又は無置換のアルキレン基を表し、Jは−(C=O)−又は−(O=S=O)−を表す。Xは水素原子、ハロゲン原子又は発色現像主薬の酸化体との反応により脱離可能な基を表し、Zは含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。〕
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