JP3728659B2 - 地下階増築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、既設建築物の下に地下階を増築する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地価が高い都心部などの市街地では、建物を建替える際に地上階の増築に加えて地下階も増築したいと希望する人が近年増加している。このような要求に対しては、従来は既設の地下階は全て解体撤去し、一旦土砂などで埋め戻して更地にしたのち、新たに山留め壁を構築し、切梁など支保工を用いた掘削、地下構造躯体の構築と云った手順で施工していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の施工方法では、▲1▼既設地下階を解体する際に騒音・振動・粉塵が発生する、▲2▼既設地下階の解体に伴って産業廃棄物(コンクリートがら)が発生する、▲3▼すぐに掘り返すことになる埋め戻し土の手配・転圧・締固めなどの工事が必要となり、費用の増大と工期の大幅な延びが避けられない、▲4▼既設地下階の解体に伴う原位置地盤の撹乱により土圧が増加する、などと云った問題点があったので、これら問題点を解決する必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、第1の発明は、既設建築物の地下外壁の真下を含む地下外壁下方に止水性を備えた山留め壁を形成し、掘削予定底面より深い揚水穴を掘って揚水し、地下水位を掘削予定底面より深くしたのち既設建築物の解体撤去した底盤部位から掘削して地下階増築空間を形成し、その部分に地下階を増築することを特徴とする地下階増築方法である。
【0005】
第2の発明は、前記第1の発明において山留め壁を、既設建築物の地下外壁に設けた注入穴、または既設建築物の外側地面に設けた注入穴から地中に注入した地盤改良剤により形成するようにしたことを特徴とする地下階増築方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この場合は図5に示したように、地下2階の下に地下3階部分を増築する例である。
【0007】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態を図1と図2に基づいて説明する。この第1の実施形態の地下階増築方法は、地上階を取り壊した既設建築物の地下外壁1が敷地境界線6に接近しているときに有効な増築方法である。
【0008】
既設建築物の残した地下外壁1に適宜の間隔、例えば2m間隔で直径10cm程度の改良剤注入穴7を開設する。そして、この改良剤注入穴7を利用して、例えば高圧ジェットグラウトなどの工法により、セメントやモルタルなどの図示しない地盤改良剤(硬化剤)を掘削予定底面8より深い位置、例えば後述する不透水層11に至るまで注入し、それを硬化させて止水性の山留め壁9を地下外壁1の真下を含む地下外壁1下方に、地下外壁1より幅広く形成する。なお、前記地盤改良剤は、後工程で挿入設置する山留め杭13の下端より深い部分は、その幅を狭めて注入しても良い。
【0009】
そして、既設の底盤3の部分から不透水層11に至る揚水穴(井戸)10を設け、その揚水穴10から地下水を汲み上げて底盤3の下方の水位を掘削予定底面8より下げる。なお、開設する揚水穴10の本数は、地下水位のレベルによって適宜選択する。
【0010】
また、地下外壁1のすぐ内側から底盤3と、その下側に硬化形成した山留め壁9とに掘削予定底面8を超える深さの山留め杭挿入穴12を掘り、そこにH形鋼からなる山留め杭13を挿入し、隙間に図示しないソイルモルタルを充填して山留め杭13を山留め壁9に固着させる。
【0011】
その後、山留めとして使用する部分を除いて既設の底盤3と揚水穴10とを解体撤去し、その部分から掘削予定底面8の深さまで掘削して地下空間を広げ、そこに従来と同様の手法を用いて新たに底盤5と、山留め杭13の内側に配置する新設地下外壁1Aとを築いて地下3階を増築する(図2参照)。
【0012】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態を図3と図4に基づいて説明する。この第2の実施形態の地下階増築方法は、地上階を取り壊した既設建築物の地下外壁1が敷地境界線6から比較的離れているときに有効な増築方法である。
【0013】
既設建築物の残した地下外壁1のすぐ外側の地面に適宜の間隔、例えば2m間隔で直径10cm程度の改良剤注入穴7を地下外壁1の下端部位置まで掘り下げ、その改良剤注入穴7を利用してこの場合も高圧ジェットグラウトなどの工法により、セメントやモルタルなどの図示しない地盤改良剤(硬化剤)を掘削予定底面8より深い位置、例えば不透水層11に至るまで注入し、それを硬化させて止水性の山留め壁9を地下外壁1の真下から外方に、地下外壁1より幅広く形成する。この場合も、後で挿入設置する山留め杭13の下端より深い部分は、その幅を狭めて注入しても良い。
【0014】
そして、既設の底盤3の部分から不透水層11に至る揚水穴10を開設し、その揚水穴10から地下水を汲み上げて底盤3の下方の水位を掘削予定底面8より下げる。この場合も、設置する揚水穴10の本数は地下水位のレベルによって適宜選択する。
【0015】
また、地下外壁1のすぐ外側の地表面から山留め壁9に、掘削予定底面8を超える深さの山留め杭挿入穴12を掘り、そこに山留め杭としてのH形鋼13を挿入し、隙間に図示しないソイルモルタルを充填して山留め杭13を山留め壁9に固着させる。その際、山留め杭挿入穴12の地盤が改良されていない上側土中部分にはケーシング12Aを挿入して、山留め杭13の挿入設置と、ソイルモルタルの充填時に山留め杭挿入穴12が詰まり、▲1▼山留め杭13が底まで挿入できなくなる、▲2▼ソイルモルタルが底まで充填できない、などと云ったことがないようにする。なお、ケーシング12Aは、ケーシング掘削と呼ばれる工法により穴を掘りながら挿入する。
【0016】
そして、山留めとして使用する部分を除いて既設の底盤3と揚水穴10とを解体撤去し、その部分から掘削予定底面8の深さまで掘削して地下空間を広げ、そこに従来と同様の手法を用いて新たに底盤5と、山留め壁9の内側に配置する新設地下外壁1Aとを築いて地下3階を増築する(図4参照)。
【0017】
この第2の実施形態の場合は、山留め壁9を図3に示したように既設地下外壁1の真下から外側に構築したので、増築する地下3階の床面積を前記第1の実施形態の場合より広くすることができる。
【0018】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではないので、特許請求の範囲に記載の趣旨から逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。
【0019】
例えば、地盤がしっかりしている場所に地下階を増築するときや、掘削深さがそれほど深くないときには、山留め杭13の設置を省略して地下階を増築することができる。
【0020】
また、揚水穴10からの地下水の汲み上げは、山留め杭13を山留め杭挿入穴12に挿入設置した後で行うようにしても良い。
【0021】
また、敷地境界線6までの距離が十分あるときには、通常のソイルセメント壁(原位置土とセメント系固化材とを攪拌混合して造成する山留め壁)工法による止水壁(芯材は不要)を形成することも可能である。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は既設建築物の地下階の大部分を残して地下階を増築する方法であるので、既設地下階を全て解体して一旦埋め戻し、その後に地下階を構築する従来工法に比べ、▲1▼騒音・振動・粉塵の発生が少ない、▲2▼産業廃棄物(コンクリートがら)の発生量が少ない、▲3▼埋め戻し土の手配・転圧・締固めなどの工事が不要となり、費用の大幅な削減と工期の大幅な短縮が図れる、▲4▼原位置地盤の撹乱に伴う土圧の増加が少ない、などと云った顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態を示す説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA−A断面図である。
【図2】 第1の実施形態により増築した地下階を示す説明図である。
【図3】 第2の実施形態を示す説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図である。
【図4】 第2の実施形態により増築した地下階を示す説明図である。
【図5】 増築の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
1 (既設)地下外壁
1A (新設)地下外壁
2 (既設)地下1階床
3 (既設)底盤
4 (新設)地下2階床
5 (新設)底盤
6 敷地境界線
7 改良剤注入穴
8 掘削予定底面
9 山留め壁
10 揚水穴(井戸)
11 不透水層
12 山留め杭挿入穴
12A ケーシング
13 山留め杭
Claims (2)
- 既設建築物の地下外壁の真下を含む地下外壁下方に止水性を備えた山留め壁を形成し、掘削予定底面より深い揚水穴を掘って揚水し、地下水位を掘削予定底面より深くしたのち既設建築物の解体撤去した底盤部位から掘削して地下階増築空間を形成し、その部分に地下階を増築することを特徴とする地下階増築方法。
- 山留め壁が既設建築物の地下外壁に設けた注入穴、または既設建築物の外側地面に設けた注入穴から地中に注入した地盤改良剤により形成されたことを特徴とする請求項1記載の地下階増築方法。
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