JP3727934B2 - 絞り装置および光学フィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、被写体からの光の量を調整する絞り装置およびこの絞り装置に用いられる光学フィルタに係り、特に、CCTVなどのビデオカメラに用いられる絞り装置およびこの絞り装置に用いられる光学フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、カラーCCTVカメラは、たとえば、屋外などを監視する監視カメラとして有用である。このようなカラーCCTVカメラには、可視光用レンズに赤外カットフィルタが取り付けられており、可視領域の色再現性を向上させている。
【0003】
ところで近年では、昼間などの比較的明るい時間帯のみならず、色再現性が多少劣化しても夜間などの比較的暗い時間帯でもカラーCCTVカメラを使用したいという要求、換言すれば、カラーCCTVカメラに用いられる可視光用レンズを、可視領域(400[nm]〜700[nm])のみならず近赤外領域(700[nm]〜1000[nm])においても使用したいという要求がある。
【0004】
この場合、単に赤外カットフィルタを外すことにより、夜間などの比較的暗い時間帯でも被写体を捉えることができる。しかし、上述のように赤外カットフィルタを外すと、赤外光の透過光量が増加した場合、この赤外光の透過光量の増加により赤外線の反射が強い被写体が明るくなりすぎて、視覚的に見えづらくなることがあり、赤外光の透過光量を調整することができないこととなっていた。
【0005】
このため、赤外領域の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性を有する樹脂ベースのNDフィルタを絞り羽根に貼り付けたCCTVカメラ用レンズの絞り装置が提案されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0006】
一方、一般的に可視光用レンズは、可視領域である400[nm]〜700[nm]の分光透過率を向上させるため、レンズ面に反射防止コートが施されている。したがって、図2に示すように、550[nm]付近をピーク波長として、1000[nm]まで透過率が低下する。このため、最近では、可視領域と近赤外領域の両方に対応する光学性能を有するレンズが開発されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−49073号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1のような絞り装置や可視領域および近赤外領域においてほぼ均等な透過率を有する従来のNDフィルタを用いた場合、可視光用レンズとNDフィルタの合成透過率特性は、図3の波形ABに示すようになり、可視光用レンズのピーク波長Pより大きい波長領域において透過率が低下することとなる。
【0009】
したがって、可視光用レンズと上述のNDフィルタを用いた場合、可視光用レンズの透過率におけるピーク波長よりも長波長(赤外領域の波長)になるにつれて絞りが開いてしまうこととなり、被写界深度が浅くなって、撮影した画像がピンボケしてしまうという問題があった。
【0010】
また、可視領域と赤外領域の両方に対応するレンズを用いた場合、光が透過する波長範囲が広がっているため色収差が生じてしまうこととなる。したがって、昼間時など周囲が明るい状態で撮影した場合には、夜間撮影に最適な被写界深度が得づらくなり、昼間時に調整された状態の撮像装置を夜間作動させた場合、撮影レンズのピント位置にずれが生じるおそれがある。このように、昼間時に調整を行った撮像装置で夜間撮影すると、得られる画像の品質が劣化したものになるという問題があった。
【0011】
また、可視光用レンズに対し、可視領域と赤外領域の両方に対応する光学性能を有するレンズのように、400[nm]〜1000[nm]という広い範囲の分光透過率をもたせようとすると、特殊な反射防止マルチコートを多数のレンズ面に施す必要が生じ、レンズが高価になるという問題があった。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡単な構成により可視領域および赤外領域においても被写体の画質の向上を図ることができる絞り装置および光学フィルタを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる絞り装置は、被写体からの光の透過率が最大となるピーク波長を可視領域内に有し、前記被写体からの光を透過する撮像レンズと、前記被写体からの光の量を絞り調整する絞り羽根と、前記絞り羽根に設けられ、前記被写体からの光を透過する光学フィルタと、を備え、前記ピーク波長から赤外領域の波長までの間における前記撮像レンズの透過率と、前記ピーク波長から前記赤外領域の波長までの間における前記光学フィルタの透過率と、の合成透過率が、前記ピーク波長から前記赤外領域の波長までの間において実質的に一定となることを特徴とする。
【0014】
この請求項1の発明によれば、撮像レンズの赤外領域における透過率の変動を、光学フィルタの透過率によって補正して、赤外領域において、可視領域の透過率と同等の透過率を得ることができる。
【0015】
また、請求項2の発明にかかる絞り装置は、請求項1に記載の発明において、前記光学フィルタは、前記可視領域において所定の透過率Svを有し、前記赤外領域において下記式を満たす透過率Siを有することを特徴とする。
(式)Si=(Tp×Svn)/Ti
ただし、Siは赤外領域の各波長における光学フィルタの透過率、Svは可視領域における光学フィルタの透過率、Tpはピーク波長における撮像レンズの透過率、Tiは赤外領域の各波長における撮像レンズの透過率、nは光学フィルタの枚数。
【0016】
この請求項2の発明によれば、撮像レンズの赤外領域における透過率の変動を、光学フィルタの透過率によって赤外領域の波長ごとに補正して、赤外領域において、可視領域の透過率と同等の透過率を得ることができる。
【0017】
また、請求項3の発明にかかる絞り装置は、請求項2に記載の発明において、前記光学フィルタの赤外領域における透過率Siは、前記光学フィルタの可視領域における透過率Svよりも大きいことを特徴とする。
【0018】
この請求項3の発明によれば、赤外領域における透過光量の低下を抑制することができる。
【0019】
また、請求項4の発明にかかる光学フィルタは、被写体からの光の透過率が最大となるピーク波長を可視領域内に有する撮像レンズとともに前記被写体からの光を透過する光学フィルタであって、前記ピーク波長から赤外領域の波長までの間における前記撮像レンズとの合成透過率が実質的に一定となるように透過率が設定されていることを特徴とする。
【0020】
この請求項4の発明によれば、撮像レンズの赤外領域における透過率の変動を、光学フィルタの透過率によって補正して、赤外領域において、可視領域の透過率と同等の透過率を得ることができる。
【0021】
また、請求項5の発明にかかる光学フィルタは、請求項4に記載の発明において、前記光学フィルタは、可視領域において所定の透過率Svを有し、赤外領域において下記式を満たす透過率Siを有することを特徴とする。
(式)Si=(Tp×Svn)/Ti
ただし、Siは赤外領域の各波長における光学フィルタの透過率、Svは可視領域における光学フィルタの透過率、Tpはピーク波長における撮像レンズの透過率、Tiは赤外領域の各波長における撮像レンズの透過率、nは光学フィルタの枚数。
【0022】
この請求項5の発明によれば、撮像レンズの赤外領域における透過率の変動を、光学フィルタの透過率によって赤外領域の波長ごとに補正して、赤外領域において、可視領域の透過率と同等の透過率を得ることができる。
【0023】
また、請求項6の発明にかかる光学フィルタは、請求項5に記載の発明において、前記光学フィルタの赤外領域における透過率Siは、前記光学フィルタの可視領域における透過率Svよりも大きいことを特徴とする。
【0024】
この請求項6の発明によれば、赤外領域における透過光量の低下を抑制することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる絞り装置およびこの絞り装置に用いられる光学フィルタの好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態1にかかる絞り装置を示す概略図である。
【0026】
図1に示すように、この絞り装置1は、上下一対の絞り羽根2,3と、光学フィルタ4と、撮像レンズ5と、から構成されている。この上下一対の絞り羽根2,3は、たとえば撮像レンズ5の手前に設けられている。そして、一対の絞り羽根2,3の間には光軸Lに交差する絞り開口6が形成されており、被写体Oからの光を取り込むようになっている。そして、絞り開口6から取り込まれた光は撮像レンズ5を透過して像面7に像Iを形成するようになっている。
【0027】
また、上下一対の絞り羽根2,3は、図示しないアクチュエータによって、上下に駆動することができる。すなわち、上下一対の絞り羽根2,3は、絞り開口6を絞る場合は図中、矢印a方向に駆動され、絞りを開放する場合は図中b方向に駆動される。
【0028】
また、下絞り羽根3の表面には、光学フィルタ4が設けられている。光学フィルタ4は、絞り開口6の一部または全部を覆うように取り付けられており、絞り開口6に取り込まれる被写体Oからの光を透過するようになっている。この光学フィルタ4は、光線の可視および近赤外スペクトル部分の各波長に対してほぼ均等な透過をするようにNDフィルタまたは透明フィルタの表面に、Cr、TiO2、SiO2などの材料を多層状にコーティングしたフィルタである。
【0029】
この光学フィルタ4としては、たとえば、従来からある一般的なNDフィルタであり、たとえば、ND1.2(透過率6.31%)のNDフィルタを用いることができる。これにより、この光学フィルタ4は、可視領域(およそ360[nm]〜700[nm]程度)から近赤外領域(およそ700[nm]〜1000[nm]程度)までの間において、下記の表1に示す透過率を有する。また、表1の数値をプロットしたグラフを図2および図3に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003727934
【0031】
図2は、可視領域(およそ360[nm]〜700[nm]程度)から近赤外領域(およそ700[nm]〜1000[nm]程度)までの間における、撮像レンズとNDフィルタの透過率を示している。図中、波形Aは撮像レンズ5の透過率特性を、波形Bは従来のND1.2のNDフィルタの透過率特性を示す。この撮像レンズ5は、被写体Oからの光の透過率が最大となるピーク波長Pを可視領域内に有する。本例では、図2に示すように、透過率が最大となるピーク波長Pは550[nm]である。
【0032】
また、この撮像レンズ5の表面には反射防止コートが施されているため、ピーク波長Pから連続的に近赤外領域の波長、たとえば1000[nm]まで透過率が低下するようになっている。なお、NDフィルタは、従来からある一般的なNDフィルタであり、たとえば、ND1.2(透過率6.31%)のNDフィルタである。
【0033】
つぎに、可視領域(およそ360[nm]〜700[nm]程度)から近赤外領域(およそ700[nm]〜1000[nm]程度)までの間における、本実施の形態の絞り装置を適用した透過率と、上述した従来のNDフィルタ(ND1.2)を適用した場合の透過率と、を図3に示す。
【0034】
なお、図中、波形Bは従来のND1.2のNDフィルタの透過率特性を、波形Cは本実施の形態にかかる光学フィルタ4の透過率特性を、波形ABは撮像レンズ5と従来のND1.2のNDフィルタとの合成透過率特性を、波形ACは撮像レンズ5と本実施の形態にかかる光学フィルタ4との合成透過率特性を示す。
【0035】
本実施の形態にかかる光学フィルタ4の透過率は、撮像レンズ5のピーク波長Pから赤外領域の波長までの間においては、下記式(1)によって決定することができる。
Si=(Tp×Sv)/Ti・・・(1)
【0036】
ここで、Siは、赤外領域の各波長における光学フィルタ4の透過率である。また、Svは、可視領域における光学フィルタ4(または、上述した従来のND1.2のNDフィルタ)の透過率である。さらに、Tpは、ピーク波長Pにおける撮像レンズ5の透過率である。また、Tiは、赤外領域の各波長における撮像レンズ5の透過率である。
【0037】
図3に示すように、従来のNDフィルタ(ND1.2)と撮像レンズ5との合成透過率の波形ABについて、撮像レンズ5のピーク波長Pである550[nm]における合成透過率は、5.74[%]であり、近赤外領域の最長波長(1000[nm])の合成透過率は、3.19[%]となっており、ピーク波長Pから1000[nm]にかけて合成透過率が低下する。
【0038】
また、本実施の形態の光学フィルタ4の透過率は、波形Cに示すように、可視領域の最短波長である360[nm]からピーク波長P(550[nm])までは、従来のNDフィルタと同様、一定の透過率(6.31[%])となっている。一方、ピーク波長Pから近赤外領域の最長波長(1000[nm])までの透過率は、上記式(1)にしたがって、長波長になる程上昇する。
【0039】
したがって、この光学フィルタ4と撮像レンズ5との合成透過率は、波形ACに示すように、可視領域の最短波長である360[nm]からピーク波長Pまでは、従来のNDフィルタと撮像レンズ5との合成透過率と同一となる。一方、ピーク波長Pから近赤外領域の最長波長(1000[nm])までの透過率は、一定の透過率(5.74[%])となる。これにより、近赤外領域においても可視領域の透過率と同等の透過率を維持することができる。
【0040】
以上説明したように、上述した実施の形態にかかる絞り装置1によれば、光学フィルタ4の近赤外領域の透過率を可視領域の透過率よりも大きくし、撮像レンズ5と光学フィルタ4との合成透過率が可視領域および近赤外領域とで一定になるようにしたため、近赤外光の透過率の低下を防止することができる。これにより、たとえば、昼間撮影用に絞り羽根2,3を絞ってピントを合わせた場合であっても、夜間撮影時になっても絞り開口6が自動開放されることなく、被写界深度も浅くならないため、ピンボケしない被写体Oの映像を得ることができる。
【0041】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2にかかる絞り装置および光学フィルタについて説明する。なお、実施の形態1における構成と同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図4(a)および(b)に示すように、本実施の形態の絞り装置10には、上下一対の絞り羽根2,3にそれぞれ光学フィルタ8,9が設けられている。すなわち、この光学フィルタ8,9は、絞り開口6の一部または全部を覆うように、上絞り羽根2の裏面および下絞り羽根3の表面に取り付けられており、絞り開口6に取り込まれる被写体Oからの光を透過するようになっている。光学フィルタ8,9はともに同一透過率特性を有する。
【0043】
そして、絞り装置10を絞り駆動することにより、上絞り羽根2および下絞り羽根3が矢印a方向に駆動されて、絞り開口6が絞られる。そして、図4(b)に示すように、2枚の光学フィルタ8,9が光軸L方向に重なると、下記の表2に示す光学特性が表れる。また、表2の数値をプロットしたグラフを図2および図5に示す。
【0044】
【表2】
Figure 0003727934
【0045】
図5は、可視領域(およそ360[nm]〜700[nm]程度)から近赤外領域(およそ700[nm]〜1000[nm]程度)までの間における、本実施の形態の絞り装置を適用した透過率と、上述した従来のNDフィルタ(ND1.2)を適用した場合の透過率と、を示すグラフである。
【0046】
なお、図中、波形Bは従来のND1.2のNDフィルタの透過率特性を、波形Dは本実施の形態にかかる光学フィルタ8(または9)の透過率特性を示す。また、波形ABは、従来のND1.2のNDフィルタが光軸L方向に重なっていない場合における撮像レンズ5と従来のND1.2のNDフィルタ1枚との合成透過率特性を示す。さらに、波形ADは、本実施の形態にかかる光学フィルタ8および9が光軸L方向に重なっていない場合における撮像レンズ5と光学フィルタ8(または9)との合成透過率特性を示す。
【0047】
また、波形ABBは、従来の2枚のND1.2のNDフィルタが光軸L方向に重なっている場合における撮像レンズ5と従来のND1.2のNDフィルタ2枚との合成透過率特性を示す。さらに、波形ADDは、本実施の形態にかかる光学フィルタ8および9が光軸L方向に重なっていない場合における撮像レンズ5と光学フィルタ8と光学フィルタ9との合成透過率特性を示す。
【0048】
本実施の形態にかかる光学フィルタ8(または9)の透過率は、図4(b)に示すように2枚の光学フィルタが光軸方向に重なった場合、撮像レンズ5のピーク波長Pから赤外領域の波長までの間においては、下記式(2)によって決定することができる。
Si=(Tp×Sv×Sv)/Ti・・・(2)
【0049】
ここで、Siは、赤外領域の各波長における光学フィルタ8(または9)の透過率である。また、Svは、可視領域における光学フィルタ8(または9)(または、上述した従来のND1.2のNDフィルタ)の透過率である。さらに、Tpは、ピーク波長Pにおける撮像レンズ5の透過率である。また、Tiは、赤外領域の各波長における撮像レンズ5の透過率である。
【0050】
図5に示すように、従来における光軸L方向に重なった2枚のNDフィルタ(ND1.2)と撮像レンズ5との合成透過率の波形ABBについては、ピーク波長P(550[nm])である550[nm]における合成透過率は、0.36[%]であり、近赤外領域の最長波長(1000[nm])の合成透過率は、0.20[%]となっており、ピーク波長Pから1000[nm]にかけて合成透過率が低下する。
【0051】
また、本実施の形態の光学フィルタ8(または9)の透過率は、図5に示すように、可視領域の最短波長である360[nm]からピーク波長Pまでは、従来のNDフィルタと同様、一定の透過率(6.31[%])となっている。一方、ピーク波長Pから近赤外領域の最長波長(1000[nm])までの透過率は、上記式(2)にしたがって、長波長になる程上昇する。
【0052】
したがって、この光学フィルタ8および9が光軸L方向に重なっている場合、2枚の光学フィルタ8および9と撮像レンズ5との合成透過率は、波形ADDに示すように、可視領域の最短波長である360[nm]からピーク波長Pまでは、従来の光軸L方向に重なっている2枚のNDフィルタと撮像レンズ5との合成透過率と同一となる。一方、ピーク波長Pから近赤外領域の最長波長(1000[nm])までの透過率は、一定の透過率(0.36[%])となる。これにより、近赤外領域においても可視領域の透過率と同等の透過率を維持することができる。
【0053】
なお、図4(a)に示すように2枚の光学フィルタ8,9が光軸方向に重なっていない場合、撮像レンズ5のピーク波長Pから赤外領域の波長までの間においては、光学フィルタ8,9ごとに、上記式(1)によって合成透過率が決定される。この場合でも、図5に示すように、従来におけるNDフィルタ1枚と撮像レンズ5との合成透過率と、本実施の形態にかかる1枚の光学フィルタ8(または9)と撮像レンズ5との合成透過率とを比較すると、可視領域の最短波長である360[nm]からピーク波長までは、両合成透過率は一致する。
【0054】
一方、撮像レンズ5のピーク波長Pから赤外領域の最長波長までの間においては、本実施の形態にかかる1枚の光学フィルタ8(または9)と撮像レンズ5との合成透過率の方が、大きくなっている。したがって、絞り開口6の状態から、絞り羽根2,3を絞り駆動した場合、2枚の光学フィルタ8,9が光軸L方向に重ならない場合であっても、従来の2枚のNDフィルタを設けた絞り装置よりも、赤外領域における透過率を増加することができる。
【0055】
以上説明したように、上述した実施の形態にかかる絞り装置10によれば、光学フィルタ8(または9)の近赤外領域の透過率を可視領域の透過率よりも大きくし、撮像レンズ5と光学フィルタとの合成透過率が可視領域および近赤外領域とで一定になるようにしている。
【0056】
したがって、光学フィルタ8および9が光軸L方向に重なっている場合、近赤外光の透過率の低下を防止することができる。これにより、たとえば、昼間撮影用に絞り羽根を絞ってピントを合わせた場合であっても、夜間撮影時になっても絞り開口6が自動開放されることなく、被写界深度も浅くならないため、ピンボケしない被写体Oの映像を得ることができる。
【0057】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、光学フィルタ4,8,9は、従来のNDフィルタに多層コーティングしてND1.2としたフィルタを適用したが、フィルタはND1.2に限定されることはなく、使用する撮像レンズや絞り羽根の数に応じて、上述した式(1)および式(2)にしたがって、他のNDフィルタを適用することとしてもよい。
【0058】
また、上述したいずれの実施の形態においても、光学フィルタ4,8,9が取り付けられる絞り羽根2,3は上下2枚とされているが、2枚に限定されることはなく、複数枚、たとえば3枚の絞り羽根を用いることとしてもよい。この場合、絞り羽根は、周方向に駆動することとしてもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の絞り装置によれば、簡単な構成により可視領域のみならず赤外領域においても被写体の画質の向上を図ることができるという効果を奏する。また、この発明の光学フィルタによれば、絞り装置に備えられている撮像レンズの透過率特性に応じた可視領域および近赤外領域の透過率特性を備えているため、絞り羽根に取り付けるだけで、可視領域および赤外領域においても被写体の画質の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる絞り装置の構成を示す概略側面図である。
【図2】撮像レンズおよびND1.2のNDフィルタ透過率特性を示すグラフである。
【図3】この発明の実施の形態1にかかる絞り装置および光学フィルタの透過率特性を示すグラフである。
【図4】この発明の実施の形態2にかかる絞り装置の構成を示す概略側面図である。
【図5】この発明の実施の形態2にかかる絞り装置および光学フィルタの透過率特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1,10 絞り装置
2 上絞り羽根
3 下絞り羽根
4,8,9光学フィルタ
5 撮像レンズ
O 被写体

Claims (6)

  1. 被写体からの光の透過率が最大となるピーク波長を可視領域内に有し、前記被写体からの光を透過する撮像レンズと、
    前記被写体からの光の量を絞り調整する絞り羽根と、
    前記絞り羽根に設けられ、前記被写体からの光を透過する光学フィルタと、を備え、
    前記ピーク波長から赤外領域の波長までの間における前記撮像レンズの透過率と、前記ピーク波長から前記赤外領域の波長までの間における前記光学フィルタの透過率と、の合成透過率が、前記ピーク波長から前記赤外領域の波長までの間において実質的に一定となることを特徴とする絞り装置。
  2. 前記光学フィルタは、前記可視領域において所定の透過率Svを有し、前記赤外領域において下記式を満たす透過率Siを有することを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
    (式)Si=(Tp×Svn)/Ti
    ただし、Siは赤外領域の各波長における光学フィルタの透過率、Svは可視領域における光学フィルタの透過率、Tpはピーク波長における撮像レンズの透過率、Tiは赤外領域の各波長における撮像レンズの透過率、nは光学フィルタの枚数。
  3. 前記光学フィルタの赤外領域における透過率Siは、前記NDフィルタの可視領域における透過率Svよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の絞り装置。
  4. 被写体からの光の透過率が最大となるピーク波長を可視領域内に有する撮像レンズとともに前記被写体からの光を透過する光学フィルタであって、
    前記ピーク波長から赤外領域の波長までの間における前記撮像レンズとの合成透過率が実質的に一定となるように透過率が設定されていることを特徴とする光学フィルタ。
  5. 前記光学フィルタは、可視領域において所定の透過率Svを有し、赤外領域において下記式を満たす透過率Siを有することを特徴とする請求項4に記載の光学フィルタ。
    (式)Si=(Tp×Svn)/Ti
    ただし、Siは赤外領域の各波長における光学フィルタの透過率、Svは可視領域における光学フィルタの透過率、Tpはピーク波長における撮像レンズの透過率、Tiは赤外領域の各波長における撮像レンズの透過率、nは光学フィルタの枚数。
  6. 前記光学フィルタの赤外領域における透過率Siは、前記光学フィルタの可視領域における透過率Svよりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の光学フィルタ。
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