まず、本発明を実現する上で本願発明者が考案したフォトマスクによる解像度向上方法、具体的には、孤立スペースパターンの解像度を向上させるための「輪郭強調法」について説明する。
(輪郭強調法)
以下、ポジ型レジストプロセスによりコンタクトパターンを形成する場合を例として説明する。尚、「輪郭強調法」は、ポジ型レジストプロセスにおける微小スペースパターンであれば、その形状に関わらず全く同様に成り立つ原理である。また、「輪郭強調法」は、ネガ型レジストプロセスを用いる場合も、ポジ型レジストプロセスにおける微小スペースパターン(レジスト除去パターン)を微小パターン(レジストパターン)と置き換えて考えれば全く同様に適用できる。
図1(a)〜(g)は、コンタクトパターンを形成するための露光において光の転写像のコントラストを強調するための原理を説明する図である。
図1(a)は、露光光に対して6%以上で且つ15%以下の透過率を持つ半遮光部により、コンタクトパターンと対応する開口部(つまり透光部)が囲まれてなるフォトマスクの平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すフォトマスクを透過した光における線分AA’と対応する振幅強度を示している。
図1(c)は、図1(a)に示す開口部の周辺領域に位相シフターが配置され且つその他の領域に完全遮光部が配置されてなるフォトマスクの平面図であり、図1(d)は、図1(c)に示すフォトマスクを透過した光における線分AA’と対応する振幅強度を示している。ここで、図1(d)に示す光の振幅強度は、該光が位相シフターを透過したものであるため、図1(b)に示す光の振幅強度に対して反対位相の関係にある。
図1(e)は、露光光に対して6%以上で且つ15%以下の透過率を持つ半遮光部により、コンタクトパターンと対応する開口部及びその周辺領域に配置された位相シフターが囲まれてなるフォトマスクの平面図であり、図1(f)及び(g)は、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光における線分AA’と対応する振幅強度及び光強度(光の振幅強度の2乗)を示している。図1(e)に示すフォトマスクは、図1(a)に示すフォトマスクにおける開口部の周辺領域に位相シフターが配置されたフォトマスクである。ここで、図1(e)に示すフォトマスクは、「輪郭強調法」を実現する本発明のフォトマスク(以下、輪郭強調マスクと称する)の一例である。
尚、図1(a)又は(e)に示すフォトマスクにおいて、半遮光部を透過する光と、開口部を透過する光とは同位相(具体的には位相差が(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数))である。また、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光と、開口部を透過する光とは反対位相(具体的には位相差が(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数))である。
図1(e)に示す輪郭強調マスクを透過した光の転写像が強調される原理は次の通りである。すなわち、図1(e)に示すフォトマスクの構造は、図1(a)及び(c)のそれぞれに示すフォトマスクを重ね合わせた構造になっている。従って、図1(b)、(d)、(f)に示すように、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光の振幅強度は、図1(a)及び(c)のそれぞれに示すフォトマスクを透過した光の振幅強度を重ね合わせたような分布になっている。ここで、図1(f)から分かるように、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、開口部の周辺に配置された位相シフターを透過した光は、開口部及び半遮光部のそれぞれを透過した光の一部を打ち消すことができる。従って、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光の強度を、開口部周辺の光が打ち消されるように調整すれば、図1(g)に示すように、開口部周辺と対応する光強度がほぼ0に近い値まで減少した光強度分布の形成が可能となる。
また、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光は、開口部周辺の光を強く打ち消す一方、開口部中央付近の光を弱く打ち消す。その結果、図1(g)に示すように、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光における、開口部中央から開口部周辺に向けて変化する光強度分布のプロファイルの傾きが増大するという効果も得られる。従って、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光の強度分布はシャープなプロファイルを有するようになるので、コントラストの高い像が形成される。
以上が本発明における光学像(光強度の像(イメージ))を強調する原理である。すなわち、低透過率の半遮光部で形成されたマスクにおける開口部の輪郭に沿って位相シフターを配置することにより、図1(a)に示すフォトマスクによって形成される光強度像の中に、開口部の輪郭線と対応する非常に強い暗部を形成することが可能となる。これによって、開口部の光強度と開口部周辺の光強度との間でコントラストが強調された光強度分布を形成できる。本明細書においては、このような原理によってイメージ強調を行なう方法を「輪郭強調法」と称すると共に、この原理を実現するフォトマスクを「輪郭強調マスク」と称する。
ここで、本発明の基本原理となる輪郭強調法と、従来のハーフトーン位相シフトマスクによる原理との違いについて説明する。輪郭強調法の原理において最も重要なことは、半遮光部及び開口部のそれぞれを透過する光の一部が位相シフターを透過する光に打ち消され、それによって光強度分布内に暗部を形成している点である。すなわち、位相シフターがあたかも不透明パターンのごとき振る舞いをするという点である。そのため、図1(f)に見られるように、輪郭強調マスクを透過した光の振幅強度において、同じ位相側での強度変化によって暗部が形成されている。後で詳しく説明するが、この状態のときのみ斜入射露光によってコントラストを向上させることが可能になる。
一方、コンタクトパターンと対応する開口部を有する従来のハーフトーン位相シフトマスクを露光したときの光強度分布においても、図27(g)に示すように、開口部周辺に強い暗部が形成される。しかし、従来のハーフトーン位相シフトマスクを露光したときの光の振幅強度を表す図27(f)と、輪郭強調マスクを露光したときの光の振幅強度を表す図1(f)とを比べると、次のような違いが明らかに存在する。すなわち、図27(f)に示すように、ハーフトーン位相シフトマスクを露光した場合の振幅強度分布においては、位相反転が生じる位相境界が存在する。また、図27(g)に示すように、この位相境界が、位相端による光強度分布の暗部となってイメージ強調が実現されている。但し、位相端による暗部が形成されてコントラストの強調効果を得るためには、フォトマスクに対して垂直に入射する光の成分が必要となる。逆に、斜入射露光によっては位相境界が発生しても位相端による暗部は形成されず、その結果、コントラスト強調効果は得られない。これが、ハーフトーン位相シフトマスクに対して斜入射露光を行なってもコントラスト強調効果が生じない理由である。言い換えると、ハーフトーン位相シフトマスクによりコントラスト強調効果を得るためには、低干渉度の小さな光源を用いて露光を行なう必要がある。
以上のように、コンタクトパターン形成において、ハーフトーン位相シフトマスクと輪郭強調マスクとはよく似た光強度分布を実現する一方、暗部形成原理の違い(輪郭強調マスクを透過した光の振幅強度分布には位相境界が生じない(図1(f)参照))により、輪郭強調法の場合、斜入射露光によっても微小な孤立スペースパターンの形成に必要な光の転写像を高いコントラストで形成できる。
図2(a)は、コンタクトパターンと対応する開口部が位相シフターによって囲まれてなるハーフトーン位相シフトマスクの平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すハーフトーン位相シフトマスクに対して干渉度σ=0.4の小さな光源を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示しており、図2(c)は、図2(a)に示すハーフトーン位相シフトマスクに対して斜入射露光の1つである輪帯照明を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示している。ここで、輪帯照明としては、外径σ=0.75、内径σ=0.5の2/3輪帯と呼ばれるものを用いた。また、露光条件としては、光源波長λ=193nm(ArF光源)、開口数NA=0.6を用いた。さらに、コンタクト寸法は180nm四方であり、位相シフターの透過率は6%である。尚、以下の説明においては、特に断らない限り、光強度を露光光の光強度を1としたときの相対光強度で表す。
図2(b)及び(c)に示すように、ハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合、小さな光源による露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されてコントラストの高い像が形成される一方、斜入射露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されないために非常にコントラストの悪い像が形成される。
図2(d)は、コンタクトパターンと対応する開口部と該開口部を囲む領域に位置する位相シフターとが、完全遮光部となるクロム膜により囲まれてなるエッジ強調型位相シフトマスクの平面図であり、図2(e)は、図2(d)に示すエッジ強調型位相シフトマスクに対して干渉度σ=0.4の小さな光源を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示しており、図2(f)は、図2(e)に示すエッジ強調型位相シフトマスクに対して輪帯照明を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示している。ここで、エッジ強調型位相シフトマスクは、ハーフトーン位相シフトマスクと同様に、開口部と位相シフターとの間に位相端による暗部を形成してイメージ強調を実現するものである。また、輪帯照明の種類、露光条件及び位相シフターの透過率は、図2(a)〜(c)に示すハーフトーン位相シフトマスクの場合と同様である。さらに、コンタクト寸法は220nm四方であり、位相シフターの幅は80nmである。
図2(e)及び(f)に示すように、エッジ強調型位相シフトマスクを用いた場合、ハーフトーン位相シフトマスクと同様に、小さな光源による露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されてコントラストの高い像が形成される一方、斜入射露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されないために非常にコントラストの悪い像が形成される。
次に、輪郭強調法において、斜入射露光成分によって高いコントラストが得られることを詳細に示す前に、図1(e)に示すような輪郭強調マスクの構造であっても、位相シフターの幅が過剰に大きくなると、輪郭強調法の効果が得られなくなることを説明しておく。
図3(a)は、露光光に対して6%以上で且つ15%以下の透過率を持つ半遮光部により、コンタクトパターンと対応する開口部と該開口部を囲む領域に位置する小さい幅の位相シフターとが囲まれてなる輪郭強調マスクの平面図である。また、図3(b)は、図3(a)に示す輪郭強調マスクに対して干渉度σ=0.4の小さな光源を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示しており、図3(c)は、図3(a)に示す輪郭強調マスクに対して輪帯照明を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示している。
また、図3(d)は、露光光に対して6%以上で且つ15%以下の透過率を持つ半遮光部により、コンタクトパターンと対応する開口部と該開口部を囲む領域に位置する大きい幅の位相シフターとが設けられてなる輪郭強調マスクの平面図である。また、図3(e)は、図3(d)に示す輪郭強調マスクに対して干渉度σ=0.4の小さな光源を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示しており、図3(f)は、図3(d)に示す輪郭強調マスクに対して輪帯照明を用いて露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布の計算結果を示している。
ここで、図3(d)に示す輪郭強調マスクにおける位相シフターの幅は輪郭強調法の原理が成り立たないほど過剰に大きく設定されているものとする。具体的には、図3(a)及び図3(d)に示す開口部の寸法は共に220nm四方であり、図3(a)に示す位相シフターの幅は60nmであり、図3(d)に示す位相シフターの幅は150nmである。また、輪帯照明の種類及び露光条件は、図2(a)〜(c)に示すハーフトーン位相シフトマスクの場合と同様である。
図3(b)及び(c)に示すように、輪郭強調法の原理が成り立つ図3(a)に示す輪郭強調マスクを用いた場合、位相シフターの不透明化作用による暗部は光源の種類によらず現れていると共に光強度分布におけるコントラストは輪帯照明によってより高い値が得られている。
一方、位相シフターが過剰に大きい図3(d)に示す輪郭強調マスクを用いた場合、位相シフターを透過する光が強くなりすぎるため、振幅強度分布において反対位相の強度分布が形成されてしまう。このような状況では、ハーフトーン位相シフトマスク又はエッジ強調型位相シフトマスクと同様の原理が作用する。すなわち、図3(e)及び(f)に示すように、小さな光源による露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されてコントラスト強調効果が現れる一方、斜入射露光を行なったときの光強度分布においては位相端による暗部が形成されないために非常にコントラストの悪い像が形成される。
すなわち、輪郭強調法を実現するためには、マスク構造において、半遮光部に囲まれた開口部の周辺に位相シフターが配置されているだけではなく、その位相シフター内を透過する光が制限されている必要がある。後者の方は、原理的なメカニズムによれば、位相シフターを透過する光が、半遮光部及び開口部のそれぞれを透過する光を打ち消す以上の強度を有し、且つその振幅強度分布において一定の大きさ以上の反対位相の強度分布が形成されないことを意味する。
実際に位相シフターを透過する光を制限するために、位相シフターの透過率に応じてその幅に条件(具体的には上限)を設ける方法を用いることができる。以下、この条件について、位相シフターを透過する光によって位相シフター周辺からの光を打ち消すための条件を考察した結果(図4(a)及び(b)参照)を用いて説明する。
図4(a)に示すように、透過性基板上に透過率T、線幅Lの位相シフターが設けられたフォトマスク(位相シフターマスク)を用いた露光において、被露光材料上における位相シフターの中心と対応する位置に生じる光強度をIh(L、T)とする。また、位相シフターマスクの位相シフターに代えて完全遮光部が設けられたフォトマスク(遮光マスク)を用いた露光において、被露光材料上における完全遮光部の中心と対応する位置に生じる光強度をIc(L)とする。また、位相シフターマスクの位相シフターに代えて開口部(透光部)が設けられ、且つ位相シフターマスクの透光部に代えて完全遮光部が設けられたフォトマスク(透過マスク)を用いた露光において、被露光材料上における開口部の中心と対応する位置に生じる光強度をIo(L)とする。
図4(b)は、図4(a)に示す位相シフターマスクを用いた露光において位相シフターの透過率T及び線幅Lを色々変化させた場合における光強度Ih(L、T)のシミュレーション結果を、透過率T及び線幅Lをそれぞれ縦軸及び横軸に取って光強度の等高線で表した様子を示している。ここで、T=Ic(L)/Io(L)の関係を表すグラフを重ね書きしている。また、シミュレーション条件は、露光光の波長λ=0.193μm(ArF光源)、露光機の投影光学系の開口数NA=0.6、露光光源の干渉度σ=0.8(通常光源)である。
図4(b)に示すように、光強度Ih(L、T)が最小となる条件はT=Ic(L)/Io(L)の関係で表すことができる。これは、物理的には、位相シフター内を透過する光の光強度を表すT×Io(L)と、位相シフター外を透過する光の光強度Ic(L)とが釣り合う関係を表している。従って、位相シフター内を透過する光が過剰となって振幅強度分布において反対位相の振幅強度が現れる位相シフターの幅Lは、T×Io(L)がIc(L)よりも大きくなる幅Lということになる。
また、光源の種類によって多少の違いはあるが、透過率1の位相シフター内を透過する光が位相シフター外を透過する光と釣り合うときの幅Lは0.3×λ(光源波長)/NA(開口数)程度(図4(b)の場合で100nm程度)であることが、種々のシミュレーション結果から経験的に得られた。さらに、図4(b)から分かるように、6%(0.06)以上の透過率を有する位相シフター内を光が過剰に透過することを防止するためには、透過率100%(1.0)の位相シフターの場合と比べて幅Lを2倍以下にする必要がある。すなわち、6%以上の透過率を有する位相シフター内を光が過剰に透過することを防止するためには、位相シフターの幅Lの上限は0.6×λ/NA以下でなければならない。
以上の考察を輪郭強調マスクに当てはめると、輪郭強調マスクにおいては位相シフター外を透過する光としては、実質的に位相シフターの両側ではなく片側のみを考慮すればよいので、輪郭強調マスクにおける位相シフターの幅Lの上限は上記の考察による上限の半分と考えればよい。従って、輪郭強調マスクにおける位相シフターの幅Lの上限は、位相シフターの透過率が6%以上の場合で0.3×λ/NA以下である。但し、これは十分条件ではなく、位相シフターの透過率の高さに応じて、位相シフターの幅Lの上限を0.3×λ/NAよりも小さくする必要がある。すなわち、位相シフターの透過率が100%又は50%以上の高透過率である場合、位相シフターの幅Lを0.2×λ/NA以下、好ましくは0.15×λ/NA以下にする必要がある。また、微細なホールパターンの形成においては、位相シフターを透過する光と、ホールパターンと対応する透光部を透過する光との干渉によって光強度分布のプロファイルを強調する効果を得るためには、位相シフターは、透光部つまりホールの中心からの距離が0.5×λ/NA以下の領域に配置されることが好ましい。よって、位相シフターの幅Lを0.3×λ/NA以下にする場合、ホールパターン形成においては、ホールパターンと対応する透光部の中心からの距離が0.5×λ/NA〜0.8×λ/NA以下の範囲に、透光部を囲む位相シフターが存在することが好ましい。
尚、本明細書においては、特に断らない限り、位相シフター幅等の種々のマスク寸法を被露光材料上での寸法に換算して表すこととするが、マスク実寸法は換算寸法に露光機の縮小投影光学系の縮小倍率Mを乗ずることにより簡単に求めることができる。
次に、輪郭強調法において斜入射露光によってイメージ強調が実現されることを、輪郭強調マスクに対して様々な光源位置から露光を行なった場合における光強度分布のコントラストの変化に基づいて詳細に説明する。
図5(a)は輪郭強調マスクの一例の平面図である。ここで、半遮光部の透過率は7.5%であり、位相シフター及び開口部の透過率は100%である。また、開口部の寸法は200nm四方であり、位相シフターの幅は50nmである。
図5(c)は、図5(a)に示す輪郭強調マスクに対して、開口数NAで規格化された様々な光源位置の点光源から露光を行なった場合における図5(a)の線分AA’と対応する光強度分布を光学シミュレーションにより計算して、該計算結果(例えば図5(b)に示されるような光強度分布)における開口部中央に相当する位置の光強度Ioを読み取り、該光強度Ioを各光源位置に対してプロットした結果を示している。ここでは、光源波長λが193nm(ArF光源)、開口数NAが0.6として光学計算によるシミュレーションを行なった結果を示している。尚、以下の説明では特に断らない限り、光学シミュレーションにおいて波長λ=193nm(ArF光源)、開口数NA=0.6の条件で計算を行なうものとする。
図5(c)に示すように、開口部中央の光強度Ioは外側の光源位置(図5(c)の原点から遠い光源位置)の点光源で露光される程大きくなる。すなわち、斜入射成分の強い光源で露光される程、コントラストが強くなることが分かる。図面を参照しながら具体的に説明する。図5(d)、(e)、(f)は、図5(c)に示す各点光源のサンプル点P1、P2、P3のそれぞれにおける、図5(a)の線分AA’と対応する光強度分布をプロットしたものである。図5(d)、(e)、(f)に示すように、点光源の位置が外側になるに従って、言い換えると、大きい斜入射光源位置になるに従って、高いコントラストの像が形成されている。
次に、比較のために、ハーフトーン位相シフトマスクに対して様々な光源位置から露光を行なった場合における光強度分布のコントラストの変化について説明する。図6(a)はハーフトーン位相シフトマスクの一例の平面図である。ここで、位相シフターの透過率は6%であり、開口部の透過率は100%である。また、開口部の寸法(被露光ウェハ上換算)は180nm四方である。
図6(c)は、図6(a)に示すハーフトーン位相シフトマスクに対して、開口数NAで規格化された様々な光源位置の点光源から露光を行なった場合における図6(a)の線分AA’と対応する光強度分布を光学シミュレーションにより計算して、該計算結果(例えば図6(b)に示されるような光強度分布)における開口部中央に相当する位置の光強度Ioを読み取り、該光強度Ioを各光源位置に対してプロットした結果を示している。
図6(c)に示すように、開口部中央の光強度Ioは内側の光源位置(図6(c)の原点に近い光源位置)の点光源で露光される程大きくなる。すなわち、垂直入射成分の強い光源で露光される程、コントラストが強くなることが分かる。図面を参照しながら具体的に説明する。図6(d)、(e)、(f)は、図6(c)に示す各点光源のサンプル点P1、P2、P3のそれぞれにおける、図6(a)の線分AA’と対応する光強度分布をプロットしたものである。図6(d)、(e)、(f)に示すように、点光源の位置が内側になるに従って、言い換えると、垂直入射光源位置になるに従って、高いコントラストの像が形成されている。
以上に説明した、図5(a)〜(f)に示す結果と図6(a)〜(f)に示す結果とを見比べても分かるように、輪郭強調法は、コンタクトパターン等の微小な孤立スペースパターンの形成において、従来方法では実現できなかった、斜入射露光による光強度分布のコントラスト強調を可能とするものである。
ここまで輪郭強調マスクによってコントラストが向上することを説明してきたが、次に、輪郭強調マスクにおける半遮光部の透過率に対するコントラスト及びDOFの依存性について説明する。ここでは、図7(a)に示す輪郭強調マスクを用いて、パターン形成における各種マージンをシミュレーションした結果に基づいた説明を行なう。図7(b)は、図7(a)に示す輪郭強調マスクに対して露光を行なったときに形成される光強度分布を示している。図7(b)においては、図7(a)に示す輪郭強調マスクを用いて幅100nmのホールパターンを形成しようとした場合に定義される各種のマージンに関する値も図中に示している。具体的には、臨界強度Ithはレジスト膜が感光する光強度であり、この値に対して各種のマージンが定義される。例えばIpを光強度分布のピーク値とすると、Ip/Ithはレジスト膜を感光させる感度に比例する値となり、この値が高いほど好ましい。また、Ibを半遮光部を透過する光のバックグラウンド強度とすると、Ith/Ibが高いほどパターン形成時にレジスト膜の膜減り等が発生しないことを意味し、この値が高いほど好ましい。一般にIth/Ibの値は2以上あることが望まれている。以上のことを踏まえて各マージンについて説明する。
図7(c)は、図7(a)に示す輪郭強調マスクを用いたパターン形成時における半遮光部の透過率に対するDOFの依存性について計算した結果を示している。ここで、DOFは、パターンの仕上がり寸法の変化が10%以内に収まるフォーカス位置の幅として定義してある。図7(c)に示すように、DOFの向上には半遮光部の透過率は高いほど好ましい。また、図7(d)は、図7(a)に示す輪郭強調マスクを用いたパターン形成時における半遮光部の透過率に対するピーク値Ipについて計算した結果を示している。図7(d)に示すように、ピーク値Ip、つまりコントラストの向上にも半遮光部の透過率は高いほど好ましい。以上の結果から、輪郭強調マスクにおいては、半遮光部の透過率は高いほど好ましく、具体的には、図7(c)及び(d)に示すように、透過率が0%から6%程度まで上がる間に露光マージンの向上率が大きくなっており、透過率が6%以上の半遮光部を用いることが好ましいことが理解できる。
図7(e)は、図7(a)に示す輪郭強調マスクを用いたパターン形成時における半遮光部の透過率に対するIth/Ibについて計算した結果を示している。図7(e)に示すように、Ith/Ibは半遮光部の透過率が高くなるほど低くなっており、半遮光部の透過率が高くなりすぎるとIth/Ibの向上には好ましくない。具体的には、半遮光部の透過率が15%程度でIth/Ibは2よりも小さくなってしまう。また、図7(f)は、図7(a)に示す輪郭強調マスクを用いたパターン形成時における半遮光部の透過率に対するIp/Ithについて計算した結果を示している。図7(f)に示すように、半遮光部の透過率が15%程度のところにIp/Ithはピークを持っている。
以上に説明したように、輪郭強調マスクにおいては、DOF又はコントラストは半遮光部の透過率を高くするほど向上し、その効果は半遮光部の透過率が6%を越えるとより顕著になる。一方、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り防止、又はレジスト感度の最適化等の観点からは、半遮光部の透過率の最大値は15%程度にしておくことが好ましい。従って、輪郭強調マスクにおける半遮光部の透過率の最適値は6%以上で且つ15%以下であると言える。すなわち、半遮光部は、レジストを感光させない程度に露光光を部分的に透過させるものである。言い換えると、半遮光部は、全露光量のうちの一部分を透過させる。このような半遮光部の材料としては、ZrSiO、CrAlO、TaSiO、MoSiO又はTiSiO等の酸化物を用いることができる。
図8(a)〜(f)は、コンタクトパターンと対応する開口部が設けられた輪郭強調マスクにおける、半遮光部と位相シフターとによって構成される遮光性のマスクパターンのバリエーションを示す平面図である。
図8(a)に示す輪郭強調マスク1aは、図1(e)に示す輪郭強調マスクと同じ構成を有している。すなわち、輪郭強調マスク1aは透過性基板2aを用いたフォトマスクであって、露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3aと、半遮光部3aにより囲まれ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4aと、開口部4aの周辺に位置するリング状の位相シフター5aとを備えている。
図8(b)に示す輪郭強調マスク1bは透過性基板2bを用いたフォトマスクであって、露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3bと、半遮光部3bにより囲まれ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4bと、開口部4bの各辺と同一長さを有し且つ該各辺と接する矩形状の4つの位相シフター部からなる位相シフター5bとを備えている。この輪郭強調マスク1bは、孤立パターン形成において輪郭強調マスク1aとほとんど同じ特性を有している。
図8(c)に示す輪郭強調マスク1cは透過性基板2cを用いたフォトマスクであって、露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3cと、半遮光部3cにより囲まれ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4cと、開口部4cの各辺の長さよりも短い長さを有し且つ該各辺と接する矩形状の4つの位相シフター部からなる位相シフター5cとを備えている。位相シフター5cの各位相シフター部の中央と開口部4cの各辺の中央とは位置合わせされている。この輪郭強調マスク1cにおいては、開口部4cの幅(大きさ)を固定して位相シフター5cの各位相シフター部の長さを変更することによって、露光後に形成されるレジストパターンの寸法調整を行なうことができる。例えば、位相シフター5cの各位相シフター部の長さを短くするほど、レジストパターンの寸法は大きくなる。ここで、輪郭強調の作用を保つために位相シフター5cの各位相シフター部の長さを変更できる下限は、光源(露光光)波長の半分程度までに限定される一方、マスク寸法の変更量の半分程度しかパターン寸法が変化しないので、位相シフター部の長さを調整することは、パターン寸法調整方法として非常に優れた方法となる。
図8(d)に示す輪郭強調マスク1dは透過性基板2dを用いたフォトマスクであって、露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3dと、半遮光部3dにより囲まれ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4dと、半遮光部3dと開口部4dとの境界から所定の寸法だけ半遮光部3d側に入った所に位置するリング状の位相シフター5dとを備えている。すなわち、位相シフター5dと開口部4dとの間にはリング状の半遮光部3dが介在している。
図8(e)に示す輪郭強調マスク1eは透過性基板2eを用いたフォトマスクであって、露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3eと、半遮光部3eにより囲まれ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4eと、半遮光部3eと開口部4eとの境界から所定の寸法だけ半遮光部3e側に入った所に位置する位相シフター5eとを備えている。位相シフター5eは、開口部4eの各辺の長さよりも長い矩形状をそれぞれ有し且つ開口部4eの対角線上で互いの角部が接する4つの位相シフター部からなる。ここで、位相シフター5eと開口部4eとの間には、リング状の半遮光部3eが介在している。輪郭強調マスク1eにおいては、位相シフター5eの大きさ及び配置を固定して開口部4eの幅(大きさ)のみを変更することによって、露光後に形成されるレジストパターンの寸法調整を行なうことができる。例えば、開口部4eの幅を大きくするに従ってレジストパターンの寸法も大きくなる。この開口部の幅のみを変更するパターン寸法調整方法によれば、開口部及び位相シフターの両方を同時にスケーリングしてパターン寸法の調整を行なう方法と比べて、MEEF(Mask Error Enhancement Factor :マスク寸法変化量に対するパターン寸法変化量の比)を半分程度まで低減することができる。
図8(f)に示す輪郭強調マスク1fは透過性基板2fを用いたフォトマスクであって、露光光の一部を透過させる透過率を持つ半遮光部3fと、半遮光部3fにより囲まれ且つ孤立コンタクトパターンと対応する開口部4fと、半遮光部3fと開口部4fとの境界から所定の寸法だけ半遮光部3f側に入った所に位置する位相シフター5fとを備えている。位相シフター5fは、開口部4fの各辺の長さと同一長さの矩形状をそれぞれ有し且つ開口部4fの各辺と対向する4つの位相シフター部からなる。ここで、位相シフター5fの各位相シフター部の長さは、開口部4fの各辺の長さよりも長くても短くても良い。輪郭強調マスク1fによれば、図8(c)に示す輪郭強調マスク1cと同様にレジストパターンの寸法調整を行なうことができる。
尚、図8(d)〜(f)に示す輪郭強調マスクにおいて、MEEFの低減効果を大きくするためには、開口部と位相シフターとの間の半遮光部の幅は、λ/NA(λは露光光の波長、NAは開口数)の5分の1程度以下であることが望ましい。また、DOFの向上効果を得るためには、前述の半遮光部の幅は、位相シフターによる光の干渉効果を及ぼすことができる寸法、つまりλ/NAの10分の1程度以下であることが望ましい。また、図8(a)〜(f)に示す輪郭強調マスクにおいて、開口部の形状として正方形を用いたが、例えば8角形のような多角形又は円形等であってもよい。また、位相シフターの形状も、連続したリング形状又は複数個の長方形に限られない。例えば、複数個の正方形の位相シフター部を並べることによって位相シフターを形成してもよい。
また、ここまで、ポジ型レジストプロセスを前提として、輪郭強調マスクにおけるレジスト除去部と対応する部分を開口部と定義して全ての説明を行なってきた。しかし、十分に高い透過率を有する位相シフターを利用できる場合、以上の説明に用いてきた輪郭強調マスクにおいて、開口部と定義してきた部分を透過率の高い位相シフターに置き換え、位相シフターと定義してきた部分を開口部に置き換え、半遮光部と定義してきた部分を透過率の低い位相シフター(例えばハーフトーン位相シフトマスクの位相シフター)に置き換えても、各構成要素間の相対位相差の関係は同じなので、同様の効果を有する輪郭強調マスクを実現できる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るフォトマスク、その作成方法、及びそのフォトマスクを用いたパターン形成方法について、図面を参照しながら説明する。尚、第1の実施形態に係るフォトマスクは、前述の輪郭強調法を実現するための縮小投影露光システムのフォトマスクである。
図9(a)は、第1の実施形態に係るフォトマスクを用いて形成しようとする所望のパターンの一例を示している。
ところで、露光機の縮小投影光学系の縮小倍率をMとすると、通常のフォトマスクにおいては、露光光源に対して完全遮光膜となるクロム等の材料を用いて、所望のパターン(一般にはウェハ上での設計値を持つ)のM倍の大きさのパターンが、露光光源に対して高い透過率を有する材料からなる基板(透過性基板)の上に描かれている。しかしながら、本明細書においては、特に断らない限り、簡単のため、フォトマスクについて説明する場合にも、ウェハ上の寸法をM倍したマスク上の寸法は使わずに、ウェハ上の寸法を用いて説明する。また、本実施形態でパターン形成について説明する場合、特に断らない限り、ポジ型レジストプロセスを使用する場合を想定して説明する。すなわち、レジスト膜の感光部分が除去されるということを想定して説明する。一方、ネガ型レジストプロセスの使用を想定する場合、レジスト膜の感光部分がレジストパターンとなることを除いて、ポジ型レジストプロセスの使用を想定した説明と全く同じことになる。また、本実施形態においては、特に断らない限り、透過率を、透過性基板の透過率を100%としたときの実効透過率で表す。
図9(b)は、第1の実施形態に係るフォトマスク、具体的には、図9(a)に示す所望のパターンを形成するためのフォトマスクの平面図である。図9(b)に示すように、所望のパターンにおけるレジスト除去部に対応するように開口部(透光部)が設けられている。また、開口部を囲む遮光性のマスクパターンとして、露光光を完全に遮光する完全遮光部に代えて、レジスト膜を感光させない程度の低透過率(6〜15%程度)を有し且つ開口部を基準として同位相で露光光を透過させる半遮光部を用いている。第1の実施形態においては、半遮光部の透過率を例えば7.5%に設定する。さらに、開口部の周辺には、開口部を基準として反対位相で露光光を透過させる位相シフター(周辺部)が設けられている。ここで、輪郭強調法の原理に従って、位相シフターを透過する光が、開口部及び半遮光部をそれぞれ透過する光を効果的に打ち消すことができるように、位相シフターの透過率を半遮光部の透過率よりも高い値、例えば20%に設定する。
尚、第1の実施形態においては、位相シフターの配置方法として、例えば図8(b)に示すような、矩形状の開口部の各辺から所定の寸法以下の領域に該各辺と接するように位相シフターを配置する形式を採用している。
図9(c)は、図9(b)におけるAA’線の断面図、つまり第1の実施形態に係るフォトマスクの断面図である。図9(c)に示すように、開口部(透光部)形成領域の透過性基板10の表面は露出している。また、位相シフター(周辺部)形成領域の透過性基板10上に、開口部を基準として露光光を180度(実際には(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数))の位相差(反対位相)で透過させる下層位相シフト膜11が形成されている。さらに、半遮光部形成領域の透過性基板10上に、下層位相シフト膜11と、開口部を基準として露光光を反対位相で透過させる上層位相シフト膜12とが順次積層されている。下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12としては、例えばZrSiO、CrAlO、TaSiO、MoSiO又はTiSiO等の酸化物膜を用いることができる。但し、下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12とは互いに異なる酸化物膜から構成されていることが好ましい。ここで、下層位相シフト膜11は、単体として20%の透過率を有する位相シフト膜である。それに対して、下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12とが積層された構造は、7.5%の透過率を有し且つ開口部(透過性基板10)との間で露光光に対して360度(実際には(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数))の位相差(同位相)を生じる半遮光膜として機能する。言い換えると、下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12との積層構造は、位相反転が発生しないハーフトーン膜として機能する。また、半遮光部と開口部との間には、下層位相シフト膜11の単層構造からなる周辺部つまり位相シフターが形成される。以上のように、本実施形態のフォトマスクは輪郭強調マスクとして機能する。但し、前述のように、輪郭強調法によるコントラスト強調を得るためには、位相シフター幅を所定の寸法以下に制限する必要がある。
ところで、以上の説明においては、図10(a)に示すように、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のそれぞれが単層膜であることを前提としてきた。この場合、各位相シフト膜の光学定数は膜材料によって決まるので、各位相シフト膜の膜厚は位相シフト量によって決まってしまう。一方、透過率は光学定数のみならず膜厚にも依存するので、位相シフト膜の材料として、適切な光学定数を持つ材料、具体的には、開口部を基準として反対位相で露光光を透過させる膜厚において所定の透過率をちょうど実現できる材料が必ずしも存在するとは限らない。従って、第1の実施形態において、図10(b)に示すように、下層位相シフト膜11が第1の透過率調整膜11Aと第1の透過率調整膜11A上に形成された第1の位相調整膜11Bとを有し、且つ上層位相シフト膜12が第2の透過率調整膜12Aと第2の透過率調整膜12A上に形成された第2の位相調整膜12Bとを有する方が、各位相シフト膜において任意の透過率を実現する上では好ましい。ここで、第1の透過率調整膜11A及び第2の透過率調整膜12Aは、開口部を基準として露光光を同位相で透過させると共に露光光に対して相対的に低い透過率を有する。一方、第1の位相調整膜11B及び第2の位相調整膜12Bは、開口部を基準として露光光を反対位相で透過させると共に露光光に対して相対的に高い透過率を有する。第1の透過率調整膜11A及び第2の透過率調整膜12Aとしては、例えばZr、Cr、Ta、Mo若しくはTi等の金属からなる薄膜(厚さ30nm以下)又は例えばTaーCr合金、Zr−Si合金、Mo−Si合金若しくはTi−Si合金等の金属合金からなる薄膜(厚さ30nm以下)を用いることができる。第1の位相調整膜11B及び第2の位相調整膜12Bとしては、例えばSiO2 膜等の酸化膜を用いることができる。
尚、図10(b)において、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12の両方が2層構造を有する場合を例として示しているが、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のうちの一方が2層構造であり、他方が単層構造であってもよい。
また、本明細書において、透過率調整膜とは、露光光に対する単位厚さ当たりの透過率が相対的に低く、且つ露光光に対する位相変化に影響を与えることなく厚さの調節により露光光に対する透過率を所望値に設定できる膜を意味する。また、位相調整膜とは、露光光に対する単位厚さ当たりの透過率が相対的に高く、且つ露光光に対する透過率変化に影響を与えることなく厚さの調節により透過性基板(開口部)との間での露光光に対する位相差を所望値に設定できる膜を意味する。
次に、第1の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法について説明する。ここで、露光機を用いてマスクパターンの縮小転写を行なうときに、輪郭強調法の原理において説明したように、輪郭強調マスクによってコントラストの高い像を形成するために斜入射露光光源を用いるのがよい。ここで、斜入射露光光源とは、図11(a)に示すような通常露光光源に対して、垂直入射成分が取り除かれた、図11(b)〜(d)に示すような光源のことを意味する。代表的な斜入射露光光源としては、図11(b)に示す輪帯露光光源、及び図11(c)に示す四重極露光光源がある。目的のパターンに若干依存するが、一般に、輪帯露光光源よりも四重極露光光源の方がコントラストの強調又はDOFの拡大において効果的である。しかし、四重極露光においてはパターン形状がマスク形状に対して歪むなどの副作用もあるので、そのような場合には、図11(d)に示す輪帯−四重極混成型露光光源を用いることが望ましい。この輪帯−四重極混成型露光光源の特徴は、光源中心(通常露光光源の中心)を原点としてXY座標で考えたときに、光源中心とXY軸上の光源とが取り除かれていることによって四重極の特徴を有する点と、光源の外形として円形が採用されていることにより輪帯の特徴をも有する点とである。
図12(a)〜(d)は第1の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図12(a)に示すように、基板100上に、金属膜又は絶縁膜等の被加工膜101を形成した後、図12(b)に示すように、被加工膜101の上に、ポジ型のレジスト膜102を形成する。
次に、図12(c)に示すように、下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12との積層構造よりなる半遮光部と、下層位相シフト膜11の単層構造よりなる位相シフターとを備えた、第1の実施形態に係るフォトマスクに対して、斜入射露光光源を用いて露光光103を照射し、該フォトマスクを透過した透過光104によってレジスト膜102を露光する。このとき、マスクパターンとして低透過率の半遮光部を用いているため、レジスト膜102の全体が弱いエネルギーで露光される。しかし、図12(c)に示すように、現像工程でレジスト膜102が溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、レジスト膜102におけるフォトマスクの透光部(開口部)と対応する潜像部分102aのみである。
次に、レジスト膜102に対して現像を行なって潜像部分102aを除去することにより、図12(d)に示すように、レジストパターン105を形成する。このとき、図12(c)に示す露光工程において、開口部周辺の光が打ち消される結果、レジスト膜102における位相シフター(周辺部)と対応する部分にはほとんど露光エネルギーが照射されないので、開口部を透過する光と周辺部を透過する光との間の光強度分布のコントラスト、言い換えると、潜像部分102aに照射される光と潜像部分102aの周辺に照射される光との間の光強度分布のコントラストを強調できる。従って、潜像部分102aにおけるエネルギー分布も急激に変化するので、シャープな形状を有するレジストパターン105が形成される。
次に、第1の実施形態に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
図13(a)〜(e)は第1の実施形態に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図であり、図13(f)は図13(c)の断面図と対応する平面図を示しており、図13(g)は図13(e)の断面図と対応する平面図を示している。
まず、図13(a)に示すように、露光光に対して透過性を持つ材料、例えば石英等よりなる透過性基板10の上に、例えばTaSiOからなる下層位相シフト膜11及び例えばMoSiOからなる上層位相シフト膜12を順次形成する。下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12としてはそれぞれ、例えばZrSiO、CrAlO、TaSiO、MoSiO又はTiSiO等からなる酸化物膜を用いることができる。但し、上層位相シフト膜12を、下層位相シフト膜11に対して選択的に除去できるように、下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12とは互いに異なる酸化物膜から構成されていることが好ましい。また、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12はそれぞれ、透過性基板10の透光部(開口部)との間で露光光に対して(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差(反対位相)を生じる。ここで、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のうちの少なくと一方が、前述のような透過率調整膜と位相調整膜との2層構造を有していてもよい。
次に、図13(b)に示すように、透過性基板10の上に、半遮光部形成領域を覆う第1のレジストパターン13、つまり、開口部(透光部)形成領域及び位相シフター(周辺部)形成領域のそれぞれに除去部を有する第1のレジストパターン13を形成する。その後、第1のレジストパターン13をマスクとして、上層位相シフト膜12に対してエッチングを行なって上層位相シフト膜12をパターン化した後、第1のレジストパターン13を除去する。これにより、図13(c)及び図13(f)に示すように、上層位相シフト膜12における開口部形成領域及び位相シフター形成領域のそれぞれと対応する部分が除去される。
次に、図13(d)に示すように、透過性基板10の上に、半遮光部形成領域及び位相シフター形成領域を覆う第2のレジストパターン14、つまり開口部形成領域に除去部を有する第2のレジストパターン14を形成する。その後、第2のレジストパターン14をマスクとして、下層位相シフト膜11に対してエッチングを行なって下層位相シフト膜11をパターン化した後、第2のレジストパターン14を除去する。これにより、図13(e)及び図13(g)に示すように、下層位相シフト膜11における開口部形成領域と対応する部分が除去されて、第1の実施形態に係るフォトマスクが完成する。すなわち、輪郭強調マスクの平面構造を有する第1の実施形態に係るフォトマスクは、マスクブランクとして、ハーフトーン位相シフト膜を2層堆積させた透過性基板を用意し、その後、上層及び下層の位相シフト膜に対して順次選択的にエッチングを行なうことによって容易に形成できる。
以上に説明したように、第1の実施形態によると、それぞれ露光光を位相反転させて透過させる下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12を透過性基板10上に順次形成した後、開口部(透光部)形成領域及び位相シフター(周辺部)形成領域の上層位相シフト膜12を除去し、その後、開口部形成領域の下層位相シフト膜11を除去する。すなわち、開口部は透過性基板10の露出部分からなり、半遮光部は下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12の積層構造からなり、位相シフターは下層位相シフト膜11の単層構造からなる。ここで、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12の積層構造は開口部を基準として露光光を同位相で透過させる。このため、開口部と、開口部と同位相で露光光を透過させる半遮光部とによって、開口部と反対位相で露光光を透過させる位相シフターを挟むことができる。従って、開口部を透過する光と位相シフターを透過する光との相互干渉により、開口部と位相シフターとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて微細な孤立レジスト除去部(つまり透光部と対応する微細な孤立スペースパターン)を形成する場合にも得られる。すなわち、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。
また、第1の実施形態によると、透過性基板10上に積層された下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12に対してそれぞれ選択的にエッチングを行なうことによって、半遮光部と位相シフター(周辺部)とを有する任意形状のマスクパターンの作成を容易に行なえる。
また、第1の実施形態によると、半遮光部を構成する、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12の積層構造のうちの、上層位相シフト膜12を加工することによって任意の形状の位相シフターを形成できる。このため、輪郭強調マスクのパターンレイアウトとして、図9(b)及び(c)に示すタイプ、つまり図8(b)に示すタイプに限られず、例えば図8(a)〜(f)に示すタイプのいずれをも実現することが可能である。
また、第1の実施形態によると、下層位相シフト膜11の単層構造によって位相シフターの透過率を規定できると共に下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12との積層構造によって半遮光部の透過率を規定できるので、位相シフター及び半遮光部のそれぞれの透過率の組み合わせを任意に設定することができる。
尚、第1の実施形態において、フォトマスクの半遮光部(下層位相シフト膜11と上層位相シフト膜12との積層構造)の透過率は6%以上で且つ15%以下であることが好ましい。このようにすると、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り等を防止しながら、本実施形態によるコントラスト強調効果を確実に得ることができる。
また、第1の実施形態において、ポジ型レジストプロセスの使用を前提として説明を行なったが、言うまでもなくポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを用いてもよい。ここで、いずれのプロセスを用いる場合にも、露光光源として、例えば、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)又はF2 エキシマレーザ光(波長157nm)等が利用できる。
(第1の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係るフォトマスク及びその作成方法について、図面を参照しながら説明する。
第1の実施形態の第1変形例が第1の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第1の実施形態においては、例えば図8(a)〜(c)に示されるような、位相シフター(周辺部)と開口部(透光部)とが隣接するレイアウトの輪郭強調マスクを対象としたが、第1の実施形態の第1変形例においては、例えば図8(d)〜(f)に示されるような、位相シフターと開口部とが離間するレイアウトの輪郭強調マスクを対象とする。
図14(a)〜(e)は第1の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図であり、図14(f)は図14(c)の断面図と対応する平面図を示しており、図14(g)は図14(e)の断面図と対応する平面図を示している。
まず、図14(a)に示すように、露光光に対して透過性を持つ材料、例えば石英等よりなる透過性基板10の上に、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12を順次形成する。下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12はそれぞれ、透過性基板10の透光部(開口部)との間で露光光に対して(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差(反対位相)を生じる。ここで、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のうちの少なくとも一方が、透過率調整膜と位相調整膜との2層構造を有していてもよい(第1の実施形態参照)。
次に、図14(b)に示すように、透過性基板10の上に、半遮光部形成領域を覆う第1のレジストパターン13、つまり、開口部(透光部)形成領域及び位相シフター(周辺部)形成領域のそれぞれに除去部を有する第1のレジストパターン13を形成する。ここで、本変形例においては、開口部形成領域と位相シフター形成領域とが離間している。言い換えると、開口部形成領域と位相シフター形成領域との間に第1のレジストパターン13が介在する。その後、第1のレジストパターン13をマスクとして、上層位相シフト膜12に対してエッチングを行なって上層位相シフト膜12をパターン化した後、第1のレジストパターン13を除去する。これにより、図14(c)及び図14(f)に示すように、上層位相シフト膜12における開口部形成領域及び位相シフター形成領域のそれぞれと対応する部分が除去される。
次に、図14(d)に示すように、透過性基板10の上に、位相シフター形成領域を含む半遮光部形成領域を覆い且つ開口部形成領域に除去部を有する第2のレジストパターン14を形成する。その後、第2のレジストパターン14、及びパターン化された上層位相シフト膜12をマスクとして、下層位相シフト膜11に対してエッチングを行なって下層位相シフト膜11をパターン化した後、第2のレジストパターン14を除去する。これにより、図14(e)及び図14(g)に示すように、下層位相シフト膜11における開口部形成領域と対応する部分が除去されて、第1の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクが完成する。
第1の実施形態の第1変形例によると、第1の実施形態の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、パターン化された上層位相シフト膜12をマスクとして、下層位相シフト膜11に対して自己整合的にエッチングを行なうことができるので、フォトマスク加工を正確に行なえる。
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係るフォトマスク及びその作成方法について、図面を参照しながら説明する。
第1の実施形態の第2変形例が第1の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第1の実施形態においては、例えば図8(a)〜(c)に示されるような、位相シフター(周辺部)と開口部(透光部)とが隣接するレイアウトの輪郭強調マスクを対象としたが、第1の実施形態の第2変形例においては、第1の実施形態の第1変形例と同様に、例えば図8(d)〜(f)に示されるような、位相シフターと開口部とが離間するレイアウトの輪郭強調マスクを対象とする。
図15(a)〜(e)は第1の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図であり、図15(f)は図15(c)の断面図と対応する平面図を示しており、図15(g)は図15(e)の断面図と対応する平面図を示している。
まず、図15(a)に示すように、露光光に対して透過性を持つ材料、例えば石英等よりなる透過性基板10の上に、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12を順次形成する。下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12はそれぞれ、透過性基板10の透光部(開口部)との間で露光光に対して(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差(反対位相)を生じる。ここで、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のうちの少なくとも一方が、透過率調整膜と位相調整膜との2層構造を有していてもよい(第1の実施形態参照)。
次に、図15(b)に示すように、透過性基板10の上に、半遮光部形成領域及び開口部(透光部)形成領域を覆う第1のレジストパターン13、つまり、位相シフター(周辺部)形成領域に除去部を有する第1のレジストパターン13を形成する。その後、第1のレジストパターン13をマスクとして、上層位相シフト膜12に対してエッチングを行なって上層位相シフト膜12をパターン化した後、第1のレジストパターン13を除去する。これにより、図15(c)及び図15(f)に示すように、上層位相シフト膜12における位相シフター形成領域と対応する部分が除去される。
次に、図15(d)に示すように、透過性基板10の上に、半遮光部形成領域及び位相シフター形成領域を覆う第2のレジストパターン14、つまり、開口部形成領域に除去部を有する第2のレジストパターン14を形成する。その後、第2のレジストパターン14をマスクとして、上層位相シフト膜12及び下層位相シフト膜11に対して順次エッチングを行なって各位相シフト膜をパターン化した後、第2のレジストパターン14を除去する。これにより、図15(e)及び図15(g)に示すように、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のそれぞれにおける開口部形成領域と対応する部分が除去されて、第1の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクが完成する。
第1の実施形態の第2変形例によると、第1の実施形態の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、本変形例においては、上層位相シフト膜12における位相シフター形成領域と対応する部分を除去する工程(図15(c)参照)と、上層位相シフト膜12における開口部形成領域と対応する部分を除去する工程(図15(e)参照)とを別々に行なう。このため、開口部と位相シフターとが微小幅で離間している場合、言い換えると、開口部と位相シフターとの間に、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12の積層構造よりなる微小幅の半遮光部を介在させる場合、フォトマスク加工のマージンが大きくなる。
尚、第1の実施形態の第2変形例において、上層位相シフト膜12における位相シフター形成領域と対応する部分を除去する工程を行なう前に、下層位相シフト膜11及び上層位相シフト膜12のそれぞれにおける開口部形成領域と対応する部分を除去する工程を行なってもよい。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るフォトマスク、その作成方法、及びそのフォトマスクを用いたパターン形成方法について、図面を参照しながら説明する。尚、第2の実施形態に係るフォトマスクは、輪郭強調法を実現するための縮小投影露光システムのフォトマスクである。
図16(a)は、第2の実施形態に係るフォトマスクを用いて形成しようとする所望のパターンの一例を示している。尚、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、以下、ポジ型レジストプロセスを使用する場合を想定して説明する。また、本実施形態においては、特に断らない限り、透過率を、透過性基板の透過率を100%としたときの実効透過率で表す。
図16(b)は、第2の実施形態に係るフォトマスク、具体的には、図16(a)に示す所望のパターンを形成するためのフォトマスクの平面図である。図16(b)に示すように、所望のパターンにおけるレジスト除去部に対応するように開口部(透光部)が設けられている。また、開口部を囲む遮光性のマスクパターンとして、露光光を完全に遮光する完全遮光部に代えて、レジスト膜を感光させない程度の低透過率(6〜15%程度)を有し且つ開口部を基準として同位相で露光光を透過させる半遮光部を用いている。さらに、開口部の周辺には、開口部を基準として反対位相で露光光を透過させる位相シフター(周辺部)が設けられている。ここで、輪郭強調法の原理に従って、位相シフターを透過する光が、開口部及び半遮光部をそれぞれ透過する光を効果的に打ち消すことができるように、位相シフターの透過率を半遮光部の透過率よりも高い値に設定する。
尚、第2の実施形態においては、位相シフターの配置方法として、例えば図8(b)に示すような、矩形状の開口部の各辺から所定の寸法以下の領域に該各辺と接するように位相シフターを配置する形式を採用している。
図16(c)は、図16(b)におけるAA’線の断面図、つまり第2の実施形態に係るフォトマスクの断面図である。図16(c)に示すように、開口部(透光部)形成領域の透過性基板20の表面は露出している。また、位相シフター(周辺部)形成領域の透過性基板20上に下層位相調整膜21が形成されている。さらに、半遮光部形成領域の透過性基板20上に、下層位相調整膜21と透過率調整膜22と上層位相調整膜23とが順次積層されている。下層位相調整膜21及び上層位相調整膜23はそれぞれ、開口部を基準として露光光を180度(実際には(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数))の位相差(反対位相)で透過させる位相シフト膜となる。透過率調整膜22は、露光光に対して下層位相調整膜21及び上層位相調整膜23よりも低い透過率を有する。下層位相調整膜21及び上層位相調整膜23としては、例えばSiO2 膜等の酸化膜を用いることができる。透過率調整膜22としては、例えばZr、Cr、Ta、Mo若しくはTi等の金属からなる薄膜(厚さ30nm以下)又は例えばTaーCr合金、Zr−Si合金、Mo−Si合金若しくはTi−Si合金等の金属合金からなる薄膜(厚さ30nm以下)を用いることができる。また、下層位相調整膜21は、単体として非常に高い透過率を有し、且つ開口部(透過性基板20)を基準として反対位相で露光光を透過させる位相シフト膜である。また、透過率調整膜22の透過率は、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23の積層構造が露光光に対して所定の透過率(レジスト膜を感光させない程度の低透過率)を持つように設定されている。また、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23の積層構造は、開口部(透過性基板20)を基準として同位相(具体的には位相差が(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数))で露光光を透過させる。すなわち、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23の積層構造によって、開口部を基準として同位相で露光光を透過させ且つ露光光に対して所定の透過率を持つ半遮光部が構成される。このように、半遮光部と開口部との間に下層位相調整膜21の単層構造からなる周辺部つまり位相シフターが形成され、それにより輪郭強調マスクが実現されている。但し、輪郭強調法によるコントラスト強調を得るためには、位相シフター幅を所定の寸法以下に制限する必要がある。
このような第2の実施形態に係るフォトマスクの作成方法は次の通りである。すなわち、露光光に対して透過性を持つ材料(例えば石英等)よりなる透過性基板20の上に、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23を順次形成した後、上層位相調整膜23、透過率調整膜22及び下層位相調整膜21に対して順次選択的にエッチングを行なう。具体的には、下層位相調整膜21を下層位相シフト膜とみなし、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23を上層位相シフト膜とみなせば、第2の実施形態に係るフォトマスクの作成方法においても、例えば図13〜図15に示す第1の実施形態に係るフォトマスクの作成方法をそのまま利用することができる。
次に、第2の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法について説明する。ここで、露光機を用いてマスクパターンの縮小転写を行なうときに、輪郭強調法の原理において説明したように、輪郭強調マスクによってコントラストの高い像を形成するために、例えば図11(b)〜(d)に示すような斜入射露光光源を用いるのがよい。
図17(a)〜(d)は第2の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図17(a)に示すように、基板200上に、金属膜又は絶縁膜等の被加工膜201を形成した後、図17(b)に示すように、被加工膜201の上に、ポジ型のレジスト膜202を形成する。
次に、図17(c)に示すように、下層位相調整膜21と透過率調整膜22と上層位相調整膜23との積層構造よりなる半遮光部と、下層位相調整膜21の単層構造よりなる位相シフターとを備えた、第2の実施形態に係るフォトマスクに対して、斜入射露光光源を用いて露光光203を照射し、該フォトマスクを透過した透過光204によってレジスト膜202を露光する。このとき、マスクパターンとして低透過率の半遮光部を用いているため、レジスト膜202の全体が弱いエネルギーで露光される。しかし、図17(c)に示すように、現像工程でレジスト膜202が溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、レジスト膜202におけるフォトマスクの透光部(開口部)と対応する潜像部分202aのみである。
次に、レジスト膜202に対して現像を行なって潜像部分202aを除去することにより、図17(d)に示すように、レジストパターン205を形成する。このとき、図17(c)に示す露光工程において、開口部周辺の光が打ち消される結果、レジスト膜202における位相シフター(周辺部)と対応する部分にはほとんど露光エネルギーが照射されないので、開口部を透過する光と周辺部を透過する光との間の光強度分布のコントラスト、言い換えると、潜像部分202aに照射される光と潜像部分202aの周辺に照射される光との間の光強度分布のコントラストを強調できる。従って、潜像部分202aにおけるエネルギー分布も急激に変化するので、シャープな形状を有するレジストパターン205が形成される。
以上に説明したように、第2の実施形態によると、透過性基板20の露出部分からなる開口部(透光部)と、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23の積層構造からなる半遮光部とによって、下層位相調整膜21の単層構造よりなる位相シフター(周辺部)が挟まれる。ここで、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23の積層構造は開口部を基準として露光光を同位相で透過させる一方、下層位相調整膜21の単層構造は開口部を基準として露光光を反対位相で透過させる。従って、開口部を透過する光と位相シフターを透過する光との相互干渉により、開口部と位相シフターとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて微細な孤立レジスト除去部(つまり透光部と対応する微細な孤立スペースパターン)を形成する場合にも得られる。すなわち、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。
また、第2の実施形態によると、透過性基板20上に積層された下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23に対してそれぞれ選択的にエッチングを行なうことによって、半遮光部と位相シフター(周辺部)とを有する任意形状のマスクパターンの作成を容易に行なえる。
また、第2の実施形態によると、半遮光部を構成する、下層位相調整膜21、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23の積層構造のうちの、透過率調整膜22及び上層位相調整膜23を加工することによって任意の形状の位相シフターを形成できる。このため、輪郭強調マスクのパターンレイアウトとして、図16(b)及び(c)に示すタイプ、つまり図8(b)に示すタイプに限られず、例えば図8(a)〜(f)に示すタイプのいずれをも実現することが可能である。
また、第2の実施形態によると、下層位相調整膜21と上層位相調整膜23との間に、各位相調整膜よりも透過率が低い透過率調整膜22を設けることによって、半遮光部が形成されている。このため、該半遮光部と、下層位相調整膜21の単層構造よりなる位相シフター(周辺部)との間の透過率の差を大きくすることができるので、開口部(透光部)と周辺部との間の光強度分布のコントラストをより強調できる。
尚、第2の実施形態において、フォトマスクの半遮光部の透過率は6%以上で且つ15%以下であることが好ましい。このようにすると、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り等を防止しながら、本実施形態によるコントラスト強調効果を確実に得ることができる。
また、第2の実施形態において、ポジ型レジストプロセスの使用を前提として説明を行なったが、言うまでもなくポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを用いてもよい。ここで、いずれのプロセスを用いる場合にも、露光光源として、例えば、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)又はF2 エキシマレーザ光(波長157nm)等が利用できる。
また、第2の実施形態において、例えば図16(c)に示すように、半遮光部として、下層位相調整膜21と透過率調整膜22と上層位相調整膜23との積層構造を用いた。しかし、これに代えて、例えば図18(a)に示すように、半遮光部として、下層となる位相調整膜21と上層となる透過率調整膜22との2層構造を用いても、同様の効果を有するフォトマスクを実現できる。具体的には、図18(a)に示す構造において、位相調整膜21と、半遮光部形成領域の位相調整膜21の上のみに形成された透過率調整膜22とは、開口部を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光膜を構成する。また、透過率調整膜22は露光光に対して相対的に低い透過率を有する一方、位相調整膜21は露光光に対して相対的に高い透過率を有する。これにより、位相調整膜21と透過率調整膜22とからなる半遮光膜は、露光光を部分的に透過させる透過率を有する。尚、透過率調整膜22は開口部を基準として露光光を同位相で透過させると共に、半遮光部形成領域の位相調整膜21も開口部を基準として露光光を同位相で透過させる。それに対して、位相シフター(周辺部)形成領域の位相調整膜21は、開口部を基準として露光光が反対位相で透過する厚さを持つように薄膜化されている。図16(c)に示す構造と図18(a)に示す構造とを比較した場合、図16(c)に示す構造は、マスク加工において上層位相調整膜23のエッチングを行なう際に透過率調整膜22をエッチングストッパーとして利用できるという点で、図18(a)に示す構造よりも優れている。一方、図18(a)に示す構造は、単層膜として形成された位相調整膜21の厚さをエッチングにより変化させて位相シフターを形成できるという点で、言い換えると、フォトマスク構造の単純さの点で、図16(c)に示す構造よりも優れている。また、図18(a)に示す構造によると、位相調整膜21と透過率調整膜22とからなる半遮光膜において所望の位相差と所望の透過率との組み合わせを任意に選べると共に、透過率調整膜22の材料と位相調整膜21の材料との組み合わせによって、該半遮光膜を加工するためのエッチング時の選択比を向上させることができる。
また、第2の実施形態において、例えば図16(c)に示すように、位相シフター形成領域の下層位相調整膜21の上には透過率調整膜22が形成されていなかった。しかし、これに代えて、例えば図18(b)に示すように、位相シフター形成領域の下層位相調整膜21の上にも透過率調整膜22が形成されていてもよい。言い換えると、下層位相調整膜21の単層構造よりなる位相シフターに代えて、下層位相調整膜21及び透過率調整膜22の積層構造よりなる位相シフターを用いてもよい。このとき、位相シフターの透過率と半遮光部の透過率とは同程度になる。図16(c)に示す構造と図18(b)に示す構造とを比較した場合、図16(c)に示す構造は、半遮光部よりも位相シフターにおいて高い透過率を実現できるという点で、つまり、輪郭強調法によるコントラスト向上効果の点で、図18(b)に示す構造よりも優れている。一方、図18(b)に示す構造は、位相シフターの透過率が低い分だけ位相シフターの寸法を大きくできるという点で、つまり、マスク加工の容易さの点で、図16(c)に示す構造よりも優れている。
さらに、図18(b)に示す構造に代えて、例えば図18(c)に示すように、半遮光部及び位相シフターとして、下層となる透過率調整膜22と上層となる位相調整膜23との2層構造を用いても、同様の効果を有するフォトマスクを実現できる。具体的には、図18(c)に示す構造において、透過率調整膜22と、半遮光部形成領域の位相調整膜23とは、開口部を基準として露光光を同位相で透過させる半遮光膜を構成する。また、透過率調整膜22は露光光に対して相対的に低い透過率を有する一方、位相調整膜23は露光光に対して相対的に高い透過率を有する。これにより、透過率調整膜22と位相調整膜23とからなる半遮光膜は、露光光を部分的に透過させる透過率を有する。尚、透過率調整膜22は開口部を基準として露光光を同位相で透過させると共に、半遮光部形成領域の位相調整膜23も開口部を基準として露光光を同位相で透過させる。それに対して、位相シフター(周辺部)形成領域の位相調整膜23は、開口部を基準として露光光が反対位相で透過する厚さを持つように薄膜化されている。図18(b)に示す構造と図18(c)に示す構造とを比較した場合、図18(c)に示す構造は、フォトマスク構造の単純さの点で優れている。また、位相調整膜23の材料として、石英等よりなる透過性基板20に対してエッチング選択比を高くしにくい材料が用いられる場合、図18(c)に示す構造は、位相調整膜23のエッチング時に透過率調整膜22を石英のエッチングを防止するためのエッチングストッパーとして利用できるという点でも優れている。さらに、図18(c)に示す構造によると、位相調整膜23と透過率調整膜22とからなる半遮光膜において所望の位相差と所望の透過率との組み合わせを任意に選べると共に、透過率調整膜22の材料と位相調整膜23の材料との組み合わせによって、該半遮光膜を加工するためのエッチング時の選択比を向上させることができる。
ところで、第2の実施形態において、図16(c)に示す構造と図18(b)に示す構造との比較から分かるように、下層位相調整膜21と上層位相調整膜23との間に透過率調整膜22が介在する同じ積層構造であっても、透過率調整膜22の加工方法を変えるだけで異なる透過率の位相シフターを形成することができる。言い換えると、2層の位相調整膜で透過率調整膜を挟んだ構造を採用すると、同じフォトマスク上に、図16(c)に示す構造と図18(b)に示す構造の両方を実現できるので、パターン形状に応じて位相シフター(周辺部)の透過率を変化させることが可能となる。さらには、例えば図18(d)に示すように、位相シフター形成領域の下層位相調整膜21の上に透過率調整膜22が部分的に形成されている構造を採用した場合、位相シフターの実効的な透過率を、透過率調整膜22による位相シフターの被覆面積率(=(位相シフター形成領域の透過率調整膜22の面積)/(位相シフターの面積))によって細かく調整することができる。従って、同一のフォトマスク上においてパターン形状に応じて位相シフターの透過率を任意に変化させることが可能になる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るフォトマスク、その作成方法、及びそのフォトマスクを用いたパターン形成方法について、図面を参照しながら説明する。尚、第3の実施形態に係るフォトマスクは、輪郭強調法を実現するための縮小投影露光システムのフォトマスクである。
図19(a)は、第3の実施形態に係るフォトマスクを用いて形成しようとする所望のパターンの一例を示している。尚、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、以下、ポジ型レジストプロセスを使用する場合を想定して説明する。また、本実施形態においては、特に断らない限り、透過率を、透過性基板の透過率を100%としたときの実効透過率で表す。
図19(b)は、第3の実施形態に係るフォトマスク、具体的には、図19(a)に示す所望のパターンを形成するためのフォトマスクの平面図である。図19(b)に示すように、所望のパターンにおけるレジスト除去部に対応するように開口部(透光部)が設けられている。また、開口部を囲む遮光性のマスクパターンとして、露光光を完全に遮光する完全遮光部に代えて、レジスト膜を感光させない程度の低透過率(6〜15%程度)を有し且つ開口部を基準として同位相で露光光を透過させる半遮光部を用いている。さらに、開口部の周辺には、開口部を基準として反対位相で露光光を透過させる位相シフター(周辺部)が設けられている。ここで、輪郭強調法の原理に従って、位相シフターを透過する光が、開口部及び半遮光部をそれぞれ透過する光を効果的に打ち消すことができるように、位相シフターの透過率を半遮光部の透過率よりも高い値に設定する。
尚、第3の実施形態においては、位相シフターの配置方法として、例えば図8(b)に示すような、矩形状の開口部の各辺から所定の寸法以下の領域に該各辺と接するように位相シフターを配置する形式を採用している。
図19(c)は、図19(b)におけるAA’線の断面図、つまり第3の実施形態に係るフォトマスクの断面図である。図19(c)に示すように、開口部形成領域の透過性基板30の表面は露出している。また、半遮光部形成領域及び位相シフター形成領域の透過性基板30上に、レジスト膜を感光させない程度の低透過率(6〜15%程度)を有する半遮光膜(ハーフトーン膜)31が形成されている。ハーフトーン膜31としては、例えばZrSiO、CrAlO、TaSiO、MoSiO又はTiSiO等の酸化物膜を用いることができる。また、半遮光部形成領域のハーフトーン膜31は、透過性基板30(開口部)との間で露光光に対して360度(実際には(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数))の位相差(同位相)を生じる厚さを持つ。一方、位相シフター形成領域のハーフトーン膜31は、開口部との間で露光光に対して(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差(反対位相)を生じる厚さを持つように薄膜化されている。すなわち、ハーフトーン膜31は、その厚みを変えると、開口部を基準として反対位相で露光光を透過させる。
以上のように、本実施形態のフォトマスクにおいては、ハーフトーン膜31の厚膜部分よりなる半遮光部と開口部(透光部)との間に、ハーフトーン膜31の薄膜部分よりなる周辺部つまり位相シフターが形成されており、それによって輪郭強調マスクの機能が実現されている。但し、この位相シフターにおいては、ハーフトーン膜31を薄膜化することによって位相反転が生じていると共に、ハーフトーン膜31の厚膜部分よりなる半遮光部と比べて露光光に対する透過率が増大している。また、輪郭強調法によるコントラスト強調を得るためには、位相シフター幅を所定の寸法以下に制限する必要がある。
このような第3の実施形態に係るフォトマスクの作成方法は次の通りである。すなわち、露光光に対して透過性を持つ材料(例えば石英等)よりなる透過性基板30の上に、ハーフトーン膜31を形成した後、ハーフトーン膜31に対して選択的にエッチングを行なう。
次に、第3の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法について説明する。ここで、露光機を用いてマスクパターンの縮小転写を行なうときに、輪郭強調法の原理において説明したように、輪郭強調マスクによってコントラストの高い像を形成するために、例えば図11(b)〜(d)に示すような斜入射露光光源を用いるのがよい。
図20(a)〜(d)は第3の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図20(a)に示すように、基板300上に、金属膜又は絶縁膜等の被加工膜301を形成した後、図20(b)に示すように、被加工膜301の上に、ポジ型のレジスト膜302を形成する。
次に、図20(c)に示すように、ハーフトーン膜31の厚膜部分よりなる半遮光部と、ハーフトーン膜31の薄膜部分よりなる位相シフターとを備えた、第3の実施形態に係るフォトマスクに対して、斜入射露光光源を用いて露光光303を照射し、該フォトマスクを透過した透過光304によってレジスト膜302を露光する。このとき、マスクパターンとして低透過率の半遮光部を用いているため、レジスト膜302の全体が弱いエネルギーで露光される。しかし、図20(c)に示すように、現像工程でレジスト膜302が溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、レジスト膜302におけるフォトマスクの透光部(開口部)と対応する潜像部分302aのみである。
次に、レジスト膜302に対して現像を行なって潜像部分302aを除去することにより、図20(d)に示すように、レジストパターン305を形成する。このとき、図20(c)に示す露光工程において、開口部周辺の光が打ち消される結果、レジスト膜302における位相シフター(周辺部)と対応する部分にはほとんど露光エネルギーが照射されないので、開口部を透過する光と周辺部を透過する光との間の光強度分布のコントラスト、言い換えると、潜像部分302aに照射される光と潜像部分302aの周辺に照射される光との間の光強度分布のコントラストを強調できる。従って、潜像部分302aにおけるエネルギー分布も急激に変化するので、シャープな形状を有するレジストパターン305が形成される。
以上に説明したように、第3の実施形態によると、透過性基板30の露出部分からなる開口部(透光部)と、ハーフトーン膜31の厚膜部分よりなる半遮光部とによって、ハーフトーン膜31の薄膜部分よりなる位相シフター(周辺部)が挟まれる。ここで、ハーフトーン膜31の厚膜部分は開口部を基準として露光光を同位相で透過させる一方、ハーフトーン膜31の薄膜部分は開口部を基準として露光光を反対位相で透過させる。従って、開口部を透過する光と位相シフターを透過する光との相互干渉により、開口部と位相シフターとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて微細な孤立レジスト除去部(つまり透光部と対応する微細な孤立スペースパターン)を形成する場合にも得られる。すなわち、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。
また、第3の実施形態によると、半遮光部がハーフトーン膜31の単層構造から構成されているため、マスク構造が非常に単純になる。また、ハーフトーン膜31を部分的に薄膜化するだけで、言い換えると、ハーフトーン膜31に凹部を設けるだけで位相シフター(周辺部)を簡単に形成できる。
また、第3の実施形態によると、透過性基板30上に形成されたハーフトーン膜31に対して選択的にエッチングを行なうことによって、半遮光部と位相シフターとを有する任意形状のマスクパターンの作成を容易に行なえる。
また、第3の実施形態によると、半遮光部となるハーフトーン膜31を加工することによって任意の形状の位相シフターを形成できるので、輪郭強調マスクのパターンレイアウトとして、図19(b)及び(c)に示すタイプ、つまり図8(b)に示すタイプに限られず、例えば図8(a)〜(f)に示すタイプのいずれをも実現することが可能である。
尚、第3の実施形態において、フォトマスクの半遮光部の透過率は6%以上で且つ15%以下であることが好ましい。このようにすると、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り等を防止しながら、前述のコントラスト強調効果を確実に得ることができる。
また、第3の実施形態において、ポジ型レジストプロセスの使用を前提として説明を行なったが、言うまでもなくポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを用いてもよい。ここで、いずれのプロセスを用いる場合にも、露光光源として、例えば、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)又はF2 エキシマレーザ光(波長157nm)等が利用できる。
また、第3の実施形態において、ハーフトーン膜31の構造として、低透過率の透過率調整膜と高透過率の位相調整膜とが積層された2層構造を用いてもよい(図18(a)及び(c)参照)。このようにすると、ハーフトーン膜31において所望の位相差と所望の透過率との組み合わせを任意に選べると共に、透過率調整膜の材料と位相調整膜の材料との組み合わせによって、ハーフトーン膜31を加工するためのエッチング時の選択比を向上させることができる。
また、第3の実施形態において、例えば図21(a)の平面図及びそれと対応する図21(b)の断面図に示すように、ハーフトーン膜31の薄膜部分からなる位相シフター(周辺部)を開口部(透光部)と接するように設けた。しかし、これに代えて、例えば図21(c)の平面図及びそれと対応する図21(d)の断面図に示すように、ハーフトーン膜31の薄膜化部分を開口部から所定の寸法だけ離して設けてもよい。言い換えると、位相シフターと開口部とを離間させ、両者の間にハーフトーン膜31の厚膜部分よりなる半遮光部を設けてもよい。このとき、図21(c)及び(d)に示すように、ハーフトーン膜31を部分的に薄膜化するだけで、言い換えると、ハーフトーン膜31に凹部を設けるだけで位相シフターを形成できる。その結果、多層膜構成の半遮光部を用いる場合と比べて、位相シフターと開口部との間に微小幅の半遮光部を介在させたときにも、該微小幅の半遮光部を構成する膜の剥離を抑制できる。一方、位相シフターと開口部との間に、多層膜構成を有する微小幅の半遮光部を設けた場合、該半遮光部は、下層膜上に形成された上層膜の微小な孤立領域として存在するので、上層膜の加工時に該孤立領域が剥離しやすくなる。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るフォトマスク、その作成方法、及びそのフォトマスクを用いたパターン形成方法について、図面を参照しながら説明する。尚、第4の実施形態に係るフォトマスクは、輪郭強調法を実現するための縮小投影露光システムのフォトマスクである。
図22(a)は、第4の実施形態に係るフォトマスクを用いて形成しようとする所望のパターンの一例を示している。尚、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、以下、ポジ型レジストプロセスを使用する場合を想定して説明する。また、本実施形態においては、特に断らない限り、透過率を、透過性基板の透過率を100%としたときの実効透過率で表す。
図22(b)は、第4の実施形態に係るフォトマスク、具体的には、図22(a)に示す所望のパターンを形成するためのフォトマスクの平面図である。図22(b)に示すように、所望のパターンにおけるレジスト除去部に対応するように開口部(透光部)が設けられている。また、開口部を囲む遮光性のマスクパターンとして、露光光を完全に遮光する完全遮光部に代えて、レジスト膜を感光させない程度の低透過率(6〜15%程度)を有し且つ開口部を基準として同位相で露光光を透過させる半遮光部を用いている。さらに、開口部の周辺には、開口部を基準として反対位相で露光光を透過させる位相シフター(周辺部)が設けられている。ここで、輪郭強調法の原理に従って、位相シフターを透過する光が、開口部及び半遮光部をそれぞれ透過する光を効果的に打ち消すことができるように、位相シフターの透過率を半遮光部の透過率よりも高い値に設定する。
尚、第4の実施形態においては、位相シフターの配置方法として、例えば図8(b)に示すような、矩形状の開口部の各辺から所定の寸法以下の領域に該各辺と接するように位相シフターを配置する形式を採用している。
図22(c)は、図22(b)におけるAA’線の断面図、つまり第4の実施形態に係るフォトマスクの断面図である。図22(c)に示すように、開口部形成領域の透過性基板40の表面は露出している。また、半遮光部形成領域の透過性基板40上に、レジスト膜を感光させない程度の低透過率(6〜15%程度)を有する半遮光膜(ハーフトーン膜)41が形成されている。ハーフトーン膜41は、透過性基板40(開口部)との間で露光光に対して360度(実際には(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数))の位相差(同位相)を生じる。また、位相シフター形成領域の透過性基板40は、開口部との間で露光光に対して(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差(反対位相)を生じる厚さを持つように掘り下げられている。すなわち、位相シフター形成領域の透過性基板40には掘り下げ部40aが設けられている。
尚、ハーフトーン膜41としては、例えばZr、Cr、Ta、Mo若しくはTi等の金属からなる薄膜(厚さ30nm以下)又は例えばTaーCr合金、Zr−Si合金、Mo−Si合金若しくはTi−Si合金等の金属合金からなる薄膜(厚さ30nm以下)を用いることができる。本実施形態においては、ハーフトーン膜41として、例えば、開口部との間での位相差が僅少値になるように薄膜化され、且つそれによりレジスト膜を感光させない程度の低透過率を持つに至った遮光膜(通常のフォトマスクの遮光膜として用いられるクロム膜等)の単層構造を用いる。
このように、本実施形態のフォトマスクによると、ハーフトーン膜41よりなる半遮光部と開口部(透光部)との間に、透過性基板40の掘り下げ部40aよりなる位相シフター(周辺部)が形成されており、それにより輪郭強調マスクの機能が実現されている。但し、輪郭強調法によるコントラスト強調を得るためには、位相シフター幅を所定の寸法以下に制限する必要がある。
次に、第4の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法について説明する。ここで、露光機を用いてマスクパターンの縮小転写を行なうときに、輪郭強調法の原理において説明したように、輪郭強調マスクによってコントラストの高い像を形成するために、例えば、図11(b)〜(d)に示すような斜入射露光光源を用いるのがよい。
図23(a)〜(d)は第4の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図23(a)に示すように、基板400上に、金属膜又は絶縁膜等の被加工膜401を形成した後、図23(b)に示すように、被加工膜401の上に、ポジ型のレジスト膜402を形成する。
次に、図23(c)に示すように、ハーフトーン膜41よりなる半遮光部と、透過性基板40の掘り下げ部40aよりなる位相シフター(周辺部)とを備えた、第4の実施形態に係るフォトマスクに対して、斜入射露光光源を用いて露光光403を照射し、該フォトマスクを透過した透過光404によってレジスト膜402を露光する。このとき、マスクパターンとして低透過率の半遮光部を用いているため、レジスト膜402の全体が弱いエネルギーで露光される。しかし、図23(c)に示すように、現像工程でレジスト膜402が溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、レジスト膜402におけるフォトマスクの透光部(開口部)と対応する潜像部分402aのみである。
次に、レジスト膜402に対して現像を行なって潜像部分402aを除去することにより、図23(d)に示すように、レジストパターン405を形成する。このとき、図23(c)に示す露光工程において、開口部周辺の光が打ち消される結果、レジスト膜402における位相シフター(周辺部)と対応する部分にはほとんど露光エネルギーが照射されないので、開口部を透過する光と周辺部を透過する光との間の光強度分布のコントラスト、言い換えると、潜像部分402aに照射される光と潜像部分402aの周辺に照射される光との間の光強度分布のコントラストを強調できる。従って、潜像部分402aにおけるエネルギー分布も急激に変化するので、シャープな形状を有するレジストパターン405が形成される。
次に、第4の実施形態に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
図24(a)〜(e)は第4の実施形態に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図であり、図24(f)は図24(c)の断面図と対応する平面図を示しており、図24(g)は図24(e)の断面図と対応する平面図を示している。
まず、図24(a)に示すように、露光光に対して透過性を持つ材料、例えば石英等よりなる透過性基板40の上にハーフトーン膜41を形成する。ここで、ハーフトーン膜41としては、前述のように、薄膜化された単層遮光膜を用いる。
次に、図24(b)に示すように、透過性基板40の上に、半遮光部形成領域及び開口部(透光部)形成領域のそれぞれを覆う第1のレジストパターン42、つまり、位相シフター(周辺部)形成領域に除去部を有する第1のレジストパターン42を形成する。その後、第1のレジストパターン42をマスクとして、ハーフトーン膜41及び透過性基板40のそれぞれに対してエッチングを行なった後、第1のレジストパターン42を除去する。これにより、図24(c)及び図24(f)に示すように、ハーフトーン膜41における位相シフター形成領域と対応する部分が除去される。また、位相シフター形成領域の透過性基板40が、開口部を基準として露光光が反対位相で透過する厚さを持つように掘り下げられる。具体的には、透過性基板40における位相シフター形成領域と対応する部分に、180度(具体的には(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数))の位相反転を生じる掘り下げ部40aが形成される。
次に、図24(d)に示すように、透過性基板40の上に、ハーフトーン膜41における半遮光部形成領域と対応する部分を覆う第2のレジストパターン43を形成する。その後、第2のレジストパターン43をマスクとして、ハーフトーン膜41に対してエッチングを行なった後、第2のレジストパターン43を除去する。これにより、図24(e)及び図24(g)に示すように、ハーフトーン膜41における開口部形成領域と対応する部分が除去されて、第4の実施形態に係るフォトマスクが完成する。すなわち、輪郭強調マスクの平面構造を有する第4の実施形態に係るフォトマスクは、マスクブランクとして、薄膜化された遮光膜を堆積させた透過性基板を用意し、その後、該遮光膜及び透過性基板に対して順次エッチングを行なうことによって容易に形成できる。
以上に説明したように、第4の実施形態によると、透過性基板40の露出部分からなる開口部(透光部)と、ハーフトーン膜41よりなる半遮光部とによって、透過性基板40の掘り下げ部40aよりなる位相シフター(周辺部)が挟まれる。ここで、ハーフトーン膜41は開口部を基準として露光光を同位相で透過させる一方、掘り下げ部40aは開口部を基準として露光光を反対位相で透過させる。従って、開口部を透過する光と位相シフターを透過する光との相互干渉により、開口部と位相シフターとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて微細な孤立レジスト除去部(つまり透光部と対応する微細な孤立スペースパターン)を形成する場合にも得られる。すなわち、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。
また、第4の実施形態によると、半遮光部がハーフトーン膜41の単層構造から構成されているため、マスク構造が非常に単純になる。
また、第4の実施形態によると、透過性基板40上にハーフトーン膜41を形成した後、ハーフトーン膜41及び透過性基板40に対してそれぞれ選択的にエッチングを行なうことによって、半遮光部と位相シフター(周辺部)とを有する任意形状のマスクパターンの作成を容易に行なえる。
また、第4の実施形態によると、例えば図24(a)〜(e)に示すフォトマスク形成方法を用いて、透過性基板40及びハーフトーン膜41の積層構造を加工することによって任意の形状の位相シフターを形成できるので、輪郭強調マスクのパターンレイアウトとして、図22(b)及び(c)に示すタイプ、つまり図8(b)に示すタイプに限られず、例えば図8(a)〜(f)に示すタイプのいずれをも実現することが可能である。
また、第4の実施形態によると、ハーフトーン膜41として、通常のフォトマスクの遮光膜を薄膜化して用いているため、マスクブランクとして用意すべき基板の構造を単純にできる。すなわち、透過性基板上に単層薄膜が形成されたマスクブランクを用意して、単層薄膜及び透過性基板のそれぞれに対してエッチングを行なうだけで、フォトマスク加工を容易に行なえる。例えば、通常のハーフトーン位相シフトマスク用のマスクブランクとして、位相調整膜と透過率調整膜との2層構造が形成された透過性基板が用いられているが、本実施形態においては、ハーフトーン位相シフトマスク用のマスクブランクのうち位相調整膜が堆積されていないもの、言い換えると、透過率調整膜のみが透過性基板上に形成されたマスクブランクを用いてもよい。すなわち、ハーフトーン膜41として、薄膜化された遮光膜を用いることにより、マスクブランク製造において従来技術を利用できるという実用的なメリットが生じる。
ここで、薄膜化された遮光膜をハーフトーン膜41つまり半遮光部として使用したことに起因する位相変化(開口部と半遮光部との間に生じる位相差)がパターン形成に及ぼす影響をシミュレーションにより検討した結果について、図25(a)〜(c)を参照しながら説明する。シミュレーション条件は、露光光の波長λ=0.193μm(ArF光源)、露光機の投影光学系の開口数NA=0.6、輪帯照明である。
図25(a)は、シミュレーションに用いた輪郭強調マスクの平面図を示している。図25(a)に示すように、開口部及び位相シフターのそれぞれの幅は200nm及び50nmであり、開口部、位相シフター及び半遮光部のそれぞれの透過率は100%、100%及び7.5%である。また、位相シフターは、開口部との間で180度の位相差を生じ、半遮光部は、開口部との間で0〜30度の位相差を生じる。
図25(b)は、半遮光部が開口部との間で0度、10度、20度及び30度の位相差を生じるような、図25(a)に示す輪郭強調マスクに対して露光を行なった場合における線分AA’と対応する光強度分布のシミュレーション結果を示している。図25(b)に示すように、半遮光部と開口部との間の位相差が30度程度までであれば、光強度分布におけるコントラストはほとんど影響を受けないことが分かる。
図25(c)は、半遮光部が開口部との間で0度、10度、20度及び30度の位相差を生じるような、図25(a)に示す輪郭強調マスクに対して露光を行なった場合におけるパターン仕上がり寸法(CD:Critical Dimension)のフォーカス依存性のシミュレーション結果を示している。図25(c)に示すように、半遮光部と開口部との間の位相差が変化すると、CDがピークとなるベストフォーカス位置が変化する。しかし、前述の位相差が変化しても、フォーカス変動に対するCDの変化しにくさ、つまり焦点深度はほとんど変化していない。ところで、フォトマスク上の全ての部分に対応して、同様のベストフォーカス位置の変動が発生することは、パターン形成において全く問題を生じない。パターン形成で問題となるのは焦点深度の値のみである。すなわち、半遮光部と開口部との間の位相差が30度程度までであれば、フォーカス特性上、特に問題がないと言える。
従って、本実施形態において、半遮光部となるハーフトーン膜41として、薄膜化された遮光膜を用いた場合、厳密な意味での輪郭強調マスク(半遮光部と開口部との間の位相差が0度)を実現することはできないが、薄膜によって生じる位相差が30度程度以下であれば、輪郭強調法による効果が失われないことが分かる。具体的には、遮光膜の材料としてTa、Cr又はそれらを含む合金等を用いた場合、ArF光源に対して開口部との間で30度程度の位相差を発生する遮光膜の厚さは概算で30nm以上である。そして、この厚さは、10%程度以下の透過率を実現するために十分な厚さである。
尚、第4の実施形態において、フォトマスクの半遮光部の透過率は6%以上で且つ15%以下であることが好ましい。このようにすると、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り等を防止しながら、本実施形態によるコントラスト強調効果を確実に得ることができる。
また、第4の実施形態において、ポジ型レジストプロセスの使用を前提として説明を行なったが、言うまでもなくポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを用いてもよい。ここで、いずれのプロセスを用いる場合にも、露光光源として、例えば、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)又はF2 エキシマレーザ光(波長157nm)等が利用できる。
また、第4の実施形態において、ハーフトーン膜41の構造として、低透過率の透過率調整膜と高透過率の位相調整膜とが積層された2層構造を用いてもよい。このようにすると、ハーフトーン膜41において所望の位相差(具体的には(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下の位相差)と所望の透過率との組み合わせを任意に選べると共に、透過率調整膜の材料と位相調整膜の材料との組み合わせによって、ハーフトーン膜41を加工するためのエッチング時の選択比を向上させることができる。また、例えば、本実施形態でハーフトーン膜41として用いた、遮光膜の単層薄膜の上に、位相調整膜を堆積することによって、開口部と半遮光部との間の位相差を0度としてもよいことは言うまでもない。
また、第4の実施形態において、例えば図22(b)の平面図及びそれと対応する図22(c)の断面図に示すように、透過性基板40の掘り下げ部40a、つまり位相シフターを開口部と接するように設けた。しかし、これに代えて、例えば図26(a)の平面図及びそれと対応する図26(b)の断面図に示すように、半遮光部としてハーフトーン膜41を用いると共に、透過性基板40の掘り下げ部40aを開口部から所定の寸法だけ離して設けてもよい。言い換えると、位相シフター(周辺部)と開口部(透光部)とを離間させ、両者の間に半遮光部を設けてもよい。また、図26(b)に示すフォトマスクにおけるハーフトーン膜41のみからなる半遮光部に代えて、低透過率の単層薄膜の上に位相調整膜が堆積されてなる半遮光部を用いたフォトマスクの断面構成を図26(c)に示す。図26(c)に示すフォトマスクにおいては、半遮光部として、低透過率の透過率調整膜41Aと高透過率の位相調整膜41Bとが積層された2層構造を用いており、それによって、半遮光部と開口部との間の位相差を0度としている。ここで、透過率調整膜41Aとしては、例えばZr、Cr、Ta、Mo若しくはTi等の金属からなる薄膜(厚さ30nm以下)又は例えばTaーCr合金、Zr−Si合金、Mo−Si合金若しくはTi−Si合金等の金属合金からなる薄膜(厚さ30nm以下)を用いることができる。また、位相調整膜41Bとしては、例えばSiO2 膜等の酸化膜を用いることができる。
ところで、図26(c)に示すフォトマスクのように、位相シフターと開口部とを離間させる微小幅の半遮光部が厚い多層膜構成を有している場合、具体的には、位相シフターと開口部との間に、下層の透過率調整膜41A上に形成された厚い位相調整膜41Bの微小な孤立領域が存在する場合、位相調整膜41Bの加工時に該孤立領域が剥離しやすくなる。それに対して、位相シフターと開口部との間に30度程度までの位相差が生じてもよいことを利用して、フォトマスクの断面構成を図26(d)のようにしてもよい。すなわち、位相シフターと開口部との間の微小幅の半遮光部としては、位相調整膜41Bのない薄い透過率調整膜41Aの単層構造を用いてもよい。透過率調整膜41Aの単層構造は、その厚さに応じて、開口部との間で僅少な位相差を生じる。このようにすると、位相シフターと開口部との間に微小幅の半遮光部を介在させたときにも、該微小幅の半遮光部を構成する膜の剥離を抑制しつつ、輪郭強調法による効果が得られるフォトマスク作成が可能となる。例えば、本実施形態においては、半遮光部形成領域の全体に亘って、遮光膜の単層薄膜よりなるハーフトーン膜41を用いたが、これに代えて、位相シフターと開口部との間の半遮光部としては、ハーフトーン膜41の単層構造を用い、その他の領域の半遮光部としては、ハーフトーン膜41とその上に形成された位相調整膜との積層構造を用いてもよい。
また、第1〜第4の実施形態において、フォトマスクにおける開口部(透光部)及び位相シフター(周辺部)以外の部分が全て半遮光部であることを前提としてきた。しかし、フォトマスクにおける開口部及び位相シフターのそれぞれから十分離れた部分、つまり、フォトマスクにおける、開口部及び位相シフターのそれぞれから光学的な干渉効果の影響がほとんど無視できる距離(=2×λ/NA(λは露光光の波長であり、NAは露光機の縮小投影光学系の開口数である))以上離れた部分は完全遮光部であってもよい。