JP3727048B2 - 光増幅回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大容量光通信ネットワークを実現するために重要となる光増幅回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光増幅器は、大容量光ネットワークを構築するキーデバイスであり、従来から、長距離伝送を行う際の中継増幅器として盛んに検討が行われている。さらに、近年の通信容量の増大に対応するために、全光ルーティングを行う光ノードや、FTTH(ファイバ・ツー・ザ・ホーム)に代表されるアクセス系への光通信技術の導入が検討され、従来とは異なる光増幅器への要求も生まれている。
【0003】
たとえば、光ノードでは、ノード内で生じる損失を補償するために、また、アクセス系では、多数のアクセス系先回線に配置する小型増幅器として、極めて多数の光増幅器が必要になり、従来の光ファイバ光増幅器と較べて、格段に小型・安価かつ低消費電力な光増幅器が必要になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの用途として、半導体光増幅器(SOA)の適用が検討されているが、半導体光増幅器は、光ファイバ増幅器と比較して、ゲインが小さく、かつ飽和出力も小さいので、現実のシステムヘの適用が困難な場合が多いという問題がある。また、半導体光増幅器は、雑音指数が光ファイバ増幅器と比較して大きいという問題がある。
【0005】
小型な光増幅器として、半導体光増幅器自体の検討も盛んであり、ゲイン20dB、飽和出力20dBmを超える報告もなされているが、歩留まりと実装コストとの問題から、高コストになるので、実用化はなされていない。
【0006】
一方、従来、たとえば上り回線と下り回線とのどちらも増幅する必要がある場合、それぞれに1つずつ増幅器を設ける必要がある。しかし、アクセス系回線の場合等は、常時上り信号、下り信号があるわけではなく、増幅器が使用されていないデッドタイムが大きいので、設備、消費電力の使用効率に無駄が生じる。また、それらの一方の増幅器が故障すると、上り、下りのいずれかの回線は完全に遮断されるという問題がある。従来、故障に対する対策としては、故障時の予備系を用意し、故障が発生すると回線の切り替えを行うが、この予備系が、設備、消費電力の使用効率をさらに低下させるという問題がある。
【0007】
本発明は、高ゲイン、高出力、小型、安価、低消費電力、かつ故障に対する信頼性の高い光増幅回路を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力された信号光を複数の経路に分岐する光分岐部と、上記複数の経路のそれぞれの経路に設けられている光増幅器と、上記分岐された信号光が上記光増幅器によって増幅されて出力される複数のポートとを具備する光分配増幅部と、上記光分配増幅部における上記複数の出力ポートが出力した信号光を接続し、再び合波する光合波部とを有し、上記光分配増幅部に入力された信号光が、上記光合波部による光の干渉効果によって低損失に合波されるように、上記光分配増幅部と上記光合波部とを接続する複数の経路の光路長が設定され、上記光合波部は、上記信号光を合波する経路に、光増幅器を有し、上記光増幅器は、少なくとも1段のカスケード状に接続され、また、入力光パワーによらず、増幅後に一定の信号光パワーを出力する光増幅回路である。
【0009】
【発明の実施の形態および実施例】
[第1の実施例]
図1は、本発明の第1の実施例である光増幅回路OA1を示すブロック図である。
【0010】
光増幅回路OA1は、光分配増幅部11と、光合波部21とを有する。
【0011】
光分配増幅部11は、Y分岐群JGと、半導体光増幅器SOA3〜SOA10とを有する。
【0012】
Y分岐群JGは、Y分岐を3段カスケードに接続したものであり、1つの入力信号光を8分岐するものである。
【0013】
半導体光増幅器SOA3〜SOA10は、上記8分岐された入力信号光のそれぞれの経路に1つづつ設けられている。
【0014】
光合波部21は、Y分岐を3段カスケード接続したものであり、8合波機能を実現するものである。
【0015】
つまり、光分配増幅部11は、入力された信号光を複数の経路に分岐する光分岐部と、上記複数の経路のそれぞれの経路に設けられている光増幅器と、上記分岐された信号光が上記光増幅器によって増幅されて出力される複数のポートとを具備する光分配増幅部の例である。
【0016】
また、光合波部21は、上記光分配増幅部における上記複数の出力ポートが出力した信号光を接続し、再び合波する光合波部の例である。
【0017】
さらに、光増幅回路OA1において、上記光分配増幅部に入力された信号光が、上記光合波部による光の干渉効果によって低損失に合波されるように、上記光分配増幅部と上記光合波部とを接続する複数の経路の光路長が設定されている。
【0018】
次に、光増幅回路OA1の動作について説明する。
【0019】
入力信号光は、まず、分岐群JGによって8分岐され、それぞれの半導体光増幅器で増幅され、その後に合波され、出力される。ここで、Y分岐群JGの入力ポートから光合波部21の出力端子に至る複数の光路のそれぞれの光路長を互いに等しく設計してあるので、光干渉効果による分岐、合成の損失が生じることなく、光信号が出力される。
【0020】
光増幅回路OA1におけるゲインは、光路を分岐せずに、1つの光路中に1つの半導体光増幅器を設けた場合におけるゲインと同等であるが、光増幅回路OA1では、飽和出力の向上を図ることができる。すなわち、個々の半導体光増幅器の飽和出力パワーがたとえば5dBmである場合、光増幅回路OA1における飽和出力は、その8倍(9dB増加)になり、14dBmの飽和出力を得ることができる。
【0021】
なお、入力信号光は、光の干渉によって振幅加算されるので、ロスなく取り出すことができるが、それぞれの半導体光増幅器で発生するASE(自然放出光)ノイズは、各半導体光増幅器間で位相整合がとれていないので、電力加算になり、それぞれ9dBずつロスが発生する。その結果、本回路全体でみると、雑音指数は、半導体光増幅器単独使用の場合よりも劣化することがなく、飽和出力の改善が可能である。
【0022】
また、光増幅回路OA1によれば、故障に対して信頼性が高い。すなわち、従来の半導体光増幅器単独使用の場合には、故障が発生した場合、即座に回線が不通になる。また、これを避けるために予備系の増幅器を用意しておくと、設備の利用効率が低下する。ところが、光増幅回路OA1では、複数の半導体光分配増幅部が増幅機能を分担しているので、光増幅回路OA1を構成する半導体光増幅器の1つが故障しても、若干の出力パワー低下が生じるのみであり、回線が即座に遮断されることはない。
【0023】
つまり、上記実施例によれば、並列配置の増幅器数を増やすだけで、所望の飽和出力が得られる。また、故障に対する信頼性が高い。
【0024】
[第2の実施例]
図2は、本発明の第2の実施例である光増幅回路OA2を示すブロック図である。
【0025】
光増幅回路OA2は、飽和出力のみでなく、ゲイン向上を達成することができる実施例である。
【0026】
光増幅回路OA2は、光増幅回路OA1において、光分配増幅部にY分岐J1〜J7を設ける代わりに、マルチモード干渉型光カプラC1〜C7を設けた回路であり、石英系平面光回路上4に、半導体光増幅器SOA1〜SOA10がハイブリッド集積されているものである。
【0027】
つまり、光増幅回路OA2は、光分配増幅部12と、光合波増幅部22とを有する。
【0028】
光分配増幅部12は、2分岐の光分配増幅部12aと4分岐の光分配増幅部12bとがカスケード状に接続されているものと、半導体光増幅器SOA1〜SOA10とを有する。
【0029】
光合波増幅部22は、Y分岐を3段カスケード接続したものと、マルチモード干渉型光カプラC1〜C7とを有し、8合波機能を実現するものである。
【0030】
次に、光増幅回路OA2の動作について説明する。
【0031】
入力信号光は、まずカプラC1によって2分岐され、初段の2つの半導体光増幅器SOA1、SOA2によって増幅される。また、それぞれの経路は、カプラC2〜C7によって4分岐され、2段目の半導体光増幅器SOA3〜SOA10によって増幅され、光合波増幅部22によって合波され、出力される。
【0032】
光増幅回路OA2において、入力信号光は、半導体光増幅器を2段通過する(半導体光増幅器SOA1、SOA2の段と、半導体光増幅器SOA3〜SOA10の段との2段を通過する)ので、1つの半導体光増幅器のみを通過する場合と比較すると、2倍のゲインを得ることができる。
【0033】
光増幅回路OA2において特筆すべき点は、以下▲1▼〜▲2▼の3つの点である。
【0034】
▲1▼ 2つの半導体光増幅器を用いて、単純に縦続接続をするのではなく、特に2段目の半導体光増幅器SOA3〜SOA10において、入力信号光を適切な経路数に分岐した後に、それぞれ増幅し、その後に、光干渉効果を用いて信号光のみを、損失なく合波して取り出す点。
【0035】
▲2▼ 光分岐部として光カプラC1〜C7を用い、光カプラC1〜C7のそれぞれと、半導体光増幅器SOA3〜SOA10のそれぞれの端面との間における2本の経路の光路長を適切に設定することによって、半導体光増幅器前端面からの反射光を、信号光経路と異なる光カプラのポートに出力するように構成されている点。
【0036】
▲3▼ 光増幅回路OA2が石英系ハイブリッド平面回路4で形成されている点である。
【0037】
ところで、上記実施例を用いず、2つの半導体光増幅器を単純に縦続接続をする場合、所望のゲイン向上は望めない。この所望のゲイン向上を望めない第1の理由は、入力信号光が、1段目の半導体光増幅器によってある程度のパワーに増幅されるので、2段目の半導体光増幅器では飽和状態になり、ゲインが得られないという理由である。
【0038】
また、所望のゲイン向上を望めない第2の理由は、、通常、半導体光増幅器素子の端面反射は、無視できない程度存在するので、1段目の半導体光増幅器端面と、2段目の半導体光増幅器端面との合計4つの半導体光増幅器端面で多重反射し、この多重反射によって、大きなゲインリップルが生じるという理由である。
【0039】
ゲインリップルは、ゲインに比例して大きくなるので、ゲインリップルを所望の値以下で使用するためには、結果として、半導体光増幅器の駆動電流値等を調節し、これによって、ゲインが小さい動作条件でしか、半導体光増幅器を使用できない。
【0040】
上記実施例では、上記の問題が解決されている。すなわち、ゲイン向上を望めない上記第1の理由については、1段目の半導体光増幅器SOA1、SOA2によって増幅された入力信号光を複数の経路に分岐し、2段目の各半導体光増幅器SOA3〜SOA10への入力パワーを小さくするので、2段目の各半導体光増幅器SOA3〜SOA10における飽和の影響がなく、所望のゲインを得ることが可能である。
【0041】
さらに、光増幅回路OA1と同様に、回路全体としての飽和出力は、最終段の半導体光増幅器の並列配置数に比例して大きくなり、光増幅回路OA2では、単体の半導体光増幅器における飽和出力の8倍の飽和出力を得ることができる。なお、光増幅回路OA1における説明で記載したように、光増幅回路OA2は、信号光のみを干渉させて合波するので、半導体光増幅器の並列配置数を増やしても、光増幅回路OA2で生じるASEノイズの量は、単体の半導体光増幅器で生じるASEノイズの量と同等であり、半導体光増幅器の縦続接続の段数によってのみ増加する。
【0042】
さらに、ゲイン向上を望めない上記第2の理由については、光分岐部として光カプラC1〜C7を用い、光カプラC1〜C7のそれぞれと半導体光増幅器SOA1〜SOA10のそれぞれの端面との間の2本の経路の光路長を、適切に設定することによって、半導体光増幅器SOA1〜SOA10のそれぞれの前端面からの反射光を、信号光経路と異なる光カプラのポートに出力するように構成している点である。
【0043】
したがって、ゲインを向上するために縦続多段に光分配増幅部を接続しても、各段で生じる反射光が前後段に戻らないので、多重反射が生じない。よって、ゲインリップルが大きく増加することがなく、ゲインを向上させることができる。なお、この反射防止構成は、回路内の各段間の反射の影響を防止するのみでなく、回路外部への反射光防止にも有効である。すなわち、図2において、入力信号光は、初段の半導体光増幅器SOA1、SOA2の端面で反射されるが、反射光は、入力光ポートとは異なるポートに出力される。また、出力ポートに関しても、上記と同様である。
【0044】
さらに、光増幅回路OA2では、石英系ハイブリッド平面回路4によって、回路全体が形成されている。すなわち、パッシブな光経路を、石英系平面回路によって一括形成し、ハイブリッド集積によって半導体光増幅器SOA1〜SOA10を平面回路上に搭載してある。
【0045】
光増幅回路OA2は、分岐、合成間における各経路の光路長を、精密かつ安定に設定する必要があり、この場合、光ファイバを用いて回路を構成すると、ファイバの余長と光路長とを安定化するための温調装置による大型化、大消費電力化につながり、したがって、実装コストによる低価格化の限界がある。
【0046】
ところが、光増幅回路OA2では、ハイブリッド集積によって半導体光増幅器SOA1〜SOA10を平面回路上に搭載しているので、光路長を精密かつ安定に設定可能であり、したがって、回路の小型化、低コスト化、低消費電力化が可能である。
【0047】
光増幅回路OA2において、光分配増幅部のカスケード段数と、各段の分岐数とを適切に設定することによって、所望のゲイン、飽和出力を得ることができる。たとえば、単体でゲイン9dB、飽和出力5dBmの半導体光増幅器を用いた場合、単体の半導体光増幅器の後に、各段の光分配増幅部を8分岐し、8つの半導体光増幅器で構成すれば、前段で得られるゲイン9dBを8分岐することによってキャンセルでき、各段の半導体光増幅器とも、同一の入力パワーレベルに設定することができる。このようにすれば、後段の半導体光増幅器の飽和によるゲインのリミットを避けることができる。また、たとえば、光分岐増幅部を3段で構成すれば、27dBのゲインを達成でき、光分岐増幅部を4段で構成すれば36dBのゲインを達成できる。
【0048】
[第3の実施例]
図3は、本発明の第3の実施例である光増幅回路OA3を示すブロック図である。
【0049】
光増幅回路OA3は、回路構成自体は、光増幅回路OA2とほぼ同様であるが、半導体光増幅器端面SOA1〜SOA10の反射光を逃がすためだけに光カプラC1〜C7を使用するのではなく、モニタ用として光カプラC1〜C7を用いている点が、光増幅回路OA2とは異なる。
【0050】
すなわち、光カプラC1〜C7の信号光経路とは異なるポートから光出力を得、この光出力をモニタリングすることによって、各半導体光増幅器SOA1〜SOA10のそれぞれの動作状態や、故障の発生を調べることができる。また、このモニタリングによって得た値を、各半導体光増幅器SOA1〜SOA10の動作電流をセットする場合に使用できる。
【0051】
さらに、光増幅回路OA3では、最終段における光カプラの信号光出カポートと異なるポートからの信号光出力をモニタリングし、この信号光出力が最小になるように、石英系光導波路上に形成したヒータ5ヘの印加電力を調節し、この印加電圧の調整によって、光位相を微調整することができる。このように、各光カプラの空きポートをモニタリングすることによって、光干渉、光パワー等の動作状態を微調整することができる。つまり、ヒータ5で発生する熱の量を変えることによって屈折率が変化し、光位相が変化し、カプラC17における2つの出力ポートから出力される光の比率が変化する。
【0052】
光増幅回路OA3では、ヒータ5を1箇所だけに設けてあるが、全てのパスにヒータ5を設けるようにしてもよい。また、ヒータ5で導波路をアクティブに調整するのではなく、初期段階で導波路を過熱処理または、UV照射する等によって位相調整を行うようにしてもよい。
【0053】
[第4の実施例]
図4は、本発明の第4の実施例である光増幅回路OA4を示すブロック図である。
【0054】
光増幅回路OA4は、第2の光増幅回路OA2とほぼ同様であるが、光合波増幅部24に半導体光増幅器SOA11、SOA12が設けられている点が、第2の光増幅回路OA2とは異なる。このように、光増幅回路OA4は、光合波増幅部24に光分配増幅部を設けたものである。
【0055】
光増幅回路OA4の目的は2つある。第1の目的は、入力光パワーによらず、増幅後に、一定の信号光パワーを出力するいわゆるリミッタアンプを実現することであり、第2の目的は、故障に対する信頼性の高い増幅回路を実現することである。
【0056】
つまり、システム設計を行う際には、ゲインを一定にする増幅器よりも、むしろ、出力パワーを一定にするリミッタアンプの機能が望ましい場合が多い。この光リミッタアンプを構成するためには、増幅器の飽和を用いる方法があるが、単体の増幅器において、飽和を利用するためには、ある程度大きな入力信号パワーが必要であり、かつ、飽和領域は、必然的にゲインが小さくなる。ゲインを大きくし、しかも、ある程度小さな入力信号光パワーから使用できるすなわちダイナミックレンジを大きくとるためには、増幅器の多段接続が必要になる。しかし、光増幅回路OA2の上記説明で記載したように、単純な多段接続では、ゲインを向上させることが困難である。
【0057】
光増幅回路OA4のように、光合波増幅部24に増幅器SOA11、SOA12を設けることによって、上記問題を解決することができる。つまり、光分配増幅部の最終段に設けられている半導体光増幅器の数よりも、少ない数の半導体光増幅器を、光合波増幅部24の内部の経路に設けることによって、必然的に飽和出力を得ることができるので、リミッタアンプの機能を実現することができる。この場合も、各段の分岐数、段数、光合波増幅部の半導体光増幅器数を、適切に決めることによって、所望のゲイン、出力レベルを得ることができる。
【0058】
さらに、光増幅回路OA4は、故障に対する信頼性が高い。すなわち、光増幅回路OA4の内部に設けられている半導体光増幅器SOA1〜SOA12の故障確率が全て同じであると仮定すると、半導体光増幅器SOA1〜SOA12の故障は、光合波増幅部24よりも、半導体光増幅器数が多い光分配増幅部12において発生する確率が高い。光増幅回路OA2のように、光合波部22に半導体光増幅器を設けない構成である場合、いずれかの半導体光増幅器が故障すると、ゲイン、出力信号レベルの変動につながる。しかし、光増幅回路OA4を用いれば、光分配増幅部12において、少数の半導体光増幅器が故障しても、光合波増幅部24の最終段における半導体光増幅器の飽和入力パワーレベルを下回らない限り、回路全体としてみた場合のゲイン、出力レベルは変動しない。
【0059】
一方、光増幅回路OA2に示した回路構成でも、光分配増幅部12の最終段における半導体光増幅器の並列配置数を適切に決めることによって、リミッタアンプを構成することができる。すなわち、最終段の各半導体光増幅器への入力信号光パワーが、飽和入力パワー以上になるように、前段の半導体光増幅器からの分岐数を少なく決めればよい。
【0060】
しかし、このようにした場合には、半導体光増幅器使用数の最も多い光分配増幅部最終段の半導体光増幅器が出力レベルを決めるので、光増幅回路OA4における故障確率よりも、故障確率が高くなる。
【0061】
[第5の実施例]
図5は、本発明の第5の実施例である光増幅回路OA5を示すブロック図である。
【0062】
光増幅回路OA5における回路構成と機能とは、光増幅回路OA2とほぼ同様であるが、光分配増幅部15として、半導体光増幅器12の代わりに、導波路型増幅器を用いている点が、光増幅回路OA2とは異なる。
【0063】
すなわち、光増幅回路OA5において、光分配増幅部15は、導波路型増幅器を有し、この導波路型増幅器は、希土類を添加することによって増幅機能を有する希土類添加石英系平面光回路41で形成され、光合波増幅部24は、希土類添加のない通常の平面光回路4で形成し、これら2つの導波路基板4、41が、接着剤によって接続されている。
【0064】
光増幅回路OA5では、光カプラC21〜C31における光信号経路と異なるポートを用いて、外部からポンプ光を入力している。各光カプラC21〜C31に挟まれた2本のアーム導波路の光路長を等しくしているので、ポンプ光は、信号光経路と異なるポートに出力される。
【0065】
光増幅回路OA5のように、本発明における光分配増幅部は、半導体光増幅器である必要はない。
【0066】
[第6の実施例]
図6は、本発明の第6の実施例である光増幅回路OA6を示すブロック図である。
【0067】
光増幅回路OA6が、光増幅回路OA1〜OA5と異なる点は、光カプラとして、スターカプラSC1、SC2、SC3を用いている点である。
【0068】
光増幅回路OA6は、光分配増幅部16と、光合波部26とを有する。
【0069】
光分配増幅部16は、光分配増幅部15aと、8つの光分配増幅器15bとを有する。光分配増幅部15aは、スターカプラSC1と8つの半導体光増幅器SOAとを有し、 光分配増幅部15bは、スターカプラSC2と8つの半導体光増幅器SOAとを有する。なお、光分配増幅部15aを構成する1つの半導体光増幅器に1つの光分配増幅部15bが接続されている。また、光合波部26は、スターカプラSC3を有する。
【0070】
このように、本発明で言う光カプラは、特に形態や入出力端子数を問わない。すなわち、光カプラとして、方向性結合器、マルチモード干渉型光カプラ、スターカプラのいずれを使用するようにしてもよい。
【0071】
[第7の実施例]
図7は、本発明の第7の実施例であるマルチポート光増幅回路OA7を示すブロック図である。
【0072】
マルチポート光増幅回路OA7では、光カプラとして、8入力8出力のスターカプラSC11、SC12を用い、初段のスターカプラSC11における出力端子のそれぞれが、8つの半導体光増幅器SOAに接続され、その半導体光増幅器が、後段のスターカプラ12の入力端子に接続されている。
【0073】
光増幅回路OA7が、光増幅回路OA1〜OA6と異なる点は、その使用方法である。すなわち、複数の信号光を、互いに異なる入力ポートに入力することによって、全ての信号が増幅され、互いに異なる出力ポートに取り出すことが可能である。このような機能は、2つのスターカプラを接続する半導体光増幅器を含む光経路の光路長を適切に設定することによって、可能である。
【0074】
なお、回路全体としての飽和出力は、光増幅回路OA1〜OA6について記載したことと同様に、並列配置する半導体光増幅器の数を調節することによって、所望の値に設定することができる。ゲインに関しては、光増幅回路OA7では、光分配増幅部として半導体光増幅器SOAを用いているが、これを、光増幅回路OA1〜OA6について記載したような光増幅回路を用いて所望の値に設定すればよい。このように、本発明に記載する光分配増幅部とは、本発明自身の光増幅回路であってもよい。
【0075】
光増幅回路OA7によれば、複数の光信号を一括して増幅し、また異なる経路に出力することができる。このような機能は、たとえば上り回線、下り回線のどちらにも光増幅器を設けなければならない場合等、複数の光経路を同時に増幅する用途に有効である。すなわち、従来は、複数の経路のそれぞれに個別に増幅器を設ける必要があったが、経路毎に信号トラフィックが異なると、信号の少ない経路の増幅器は、使用効率が低く、全体として設備、消費電力の使用効率が低いという問題があり、これに対して、マルチポート光増幅回路OA7は、どの入力ポートからの光信号も、均等に複数の増幅器に分配して増幅するので、各経路間のトラフィックのばらつきが大きい場合でも、設備、消費電力の無駄が小さいという利点がある。
【0076】
また、光増幅回路OA7は、双方向の信号入力が可能である。つまり、入出力ポートを各信号毎に任意に決めるようにしてもよい。このような機能は、たとえば、テープファイバのようなペアケーブルの一部が上り回線、また他のものが下り回線という場合にも、単純に接続することができるので、実用上有用である。
【0077】
[第8の実施例]
図8は、本発明の第8の実施例であるマルチポート光増幅回路OA8を示すブロック図である。
【0078】
マルチポート光増幅回路OA8は、マルチポート光増幅回路OA7とほぼ同様であるが、半導体光増幅器SOAの端面で生じる反射光が、光信号の入出力経路に入れないように、2つのスターカプラSC21、SC22と半導体光増幅器SOAとの間の光路長が調整されている点が、マルチポート光増幅回路OA7とは異なる。
【0079】
すなわち、マルチポート増幅回路OA8では、半導体光増幅器SOAの端面で生じる反射光が、それ自身が入力されたポートでなく、他のポートに出力される場合にも、他の経路の信号に対する雑音となるので、全ての入出力ポートに、反射光が混入しないようにする必要がある。
【0080】
マルチポート光増幅回路OA8では、上記課題を、2つのスターカプラSC21、SC22と、8個の半導体光増幅器SOAのそれぞれとの間の光路長を調整し、これによって、入出力ポート以外に漏洩光となって逃げるように設計されている。
【0081】
なお、これとは異なる方法として、入出力信号光ポートとは別に、反射光用のポートを設けるようにしてもよい。たとえば、スターカプラの入出力ポートと反射光用ポートとを交互に配置し、半導体光増幅器端面からの反射光が、もとの入力ポートと隣接するいずれかのポートに出力されるように、スターカプラと半導体光増幅器との間の光路長を設計すればよい。
【0082】
上記各実施例は、複数の光分配増幅部と、光分岐部と、光合波部とを組み合わせて構成した光増幅回路であり、光干渉を利用したものである。具体的には、次の利点がある。
(1)単独では性能の低い増幅器であっても、これを複数用いることによって、所望のゲイン、飽和出力を実現することができる。
(2)複数の増幅器によって構成されているので、故障に対する信頼性が高い。
(3)光合波部にも増幅器を設けることによって、所望のゲイン、飽和出力を有し、かつ、入力信号光パワーが変化しても出力パワーレベルを一定に保つことができるリミッタアンプを実現できる。
(4)平面光回路とハイブリッド光回路とを用いることによって、良好な光干渉機能が得られるとともに、従来問題となっていた実装コストを大幅に減少できるので、高性能、安価な光増幅器を実現することができる。
(5)上記マルチポート光増幅器は、複数の入力信号を一括して増幅可能であるので、設備、消費電力の使用効率を各段に改善することができる。
【0083】
なお、上記各実施例において、光合波部における信号光を合波する経路に、光合波増幅部が設けられ、上記光合波増幅部は、少なくとも1段のカスケード状に接続されていればよい。
【0084】
また、上記実施例は、光分配増幅部が、1段の光分配増幅部によって構成され、上記光分配増幅部における光分岐部、光合波部が、複数の入出力ポートを有する光カプラによって構成され、N番目の入力ポートから入力された信号光は、上記入力ポートと1対1に対応するN番目の出力ポートヘ出力されるように、2つの光カプラを接続する経路の光路長が設定されている光増幅回路の例である。
【0085】
さらに、光増幅器OA2〜OA5のそれぞれにおいて、光分配増幅部を構成する複数の光分岐部の全てに光カプラが設けられているが、そのうちの少なくとも1つに光カプラを設けるようにしてもよい。また、光増幅器OA2〜OA5のそれぞれにおいて、光合波部を構成する複数の光合波器(上記光分岐部と同様のもの)の全てに光カプラが設けられているが、そのうちの少なくとも1つに光カプラを設けるようにしてもよい。つまり、上記光分配増幅部を構成する複数の光分岐部のうちの少なくとも1つ、または、上記光合波部を構成する複数の光合波器のうちの少なくとも1つに、複数の入出力ポートを有する光カプラを設けるようにしてもよい。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、高ゲイン、高出力、小型、安価、低消費電力、かつ故障に対する信頼性の高い光増幅器を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である光増幅回路OA1を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施例である光増幅回路OA2を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施例である光増幅回路OA3を示すブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施例である光増幅回路OA4を示すブロック図である。
【図5】本発明の第5の実施例である光増幅回路OA5を示すブロック図である。
【図6】本発明の第6の実施例である光増幅回路OA6を示すブロック図である。
【図7】本発明の第7の実施例であるマルチポート光増幅回路OA7を示すブロック図である。
【図8】本発明の第8の実施例であるマルチポート光増幅回路OA8を示すブロック図である。
【符号の説明】
OA1〜OA8…光分配増幅部、
JG…Y分岐群、
J1〜J7,J11〜J17…Y分岐、
SOA1〜SOA12…半導体光増幅器、
11〜16…光分配増幅部、
21、25、26…光合波部、
22〜24…光合波増幅部、
C1〜C7、C11〜C17、C21〜C31、C41〜C43…マルチモード干渉型光カプラ、
4…石英系ハイブリッド平面光回路、
41…希土類添加石英系平面光回路、
5…ヒータ、
SC1〜SC3、SC11、SC12、SC21、SC22…スターカプラ。
Claims (8)
- 入力された信号光を複数の経路に分岐する光分岐部と、上記複数の経路のそれぞれの経路に設けられている光増幅器と、上記分岐された信号光が上記光増幅器によって増幅されて出力される複数のポートとを具備する光分配増幅部と;
上記光分配増幅部における上記複数の出力ポートが出力した信号光を接続し、再び合波する光合波部と;
を有し、上記光分配増幅部に入力された信号光が、上記光合波部による光の干渉効果によって低損失に合波されるように、上記光分配増幅部と上記光合波部とを接続する複数の経路の光路長が設定され、上記光合波部は、上記信号光を合波する経路に、光増幅器を有し、上記光増幅器は、少なくとも1段のカスケード状に接続され、また、入力光パワーによらず、増幅後に一定の信号光パワーを出力することを特徴とする光増幅回路。 - 請求項1において、
上記光増幅回路は、基板上に形成された平面光回路、または平面光回路上に上記光増幅器が搭載されているハイブリッド平面光回路に構成されていることを特徴とする光増幅回路。 - 入力された信号光を複数の経路に分岐する光分岐部と、上記複数の経路のそれぞれの経路に設けられている光増幅器と、上記分岐された信号光が上記光増幅器によって増幅されて出力される複数のポートとを具備する光分配増幅部と;
上記光分配増幅部における上記複数の出力ポートが出力した信号光を接続し、再び合波する光合波部と;
を有し、上記光分配増幅部に入力された信号光が、上記光合波部による光の干渉効果によって低損失に合波されるように、上記光分配増幅部と上記光合波部とを接続する複数の経路の光路長が設定され、
上記光分配増幅部を構成する複数の光分岐部のうちの少なくとも1つ、または、上記光合波部を構成する複数の光合波器のうちの少なくとも1つに、複数の入出力ポートを有する光カプラが設けられていることを特徴とする光増幅回路。 - 入力された信号光を複数の経路に分岐する光分岐部と、上記複数の経路のそれぞれの経路に設けられている光増幅器と、上記分岐された信号光が上記光増幅器によって増幅されて出力される複数のポートとを具備する光分配増幅部と;
上記光分配増幅部における上記複数の出力ポートが出力した信号光を接続し、再び合波する光合波部と;
を有し、上記光分配増幅部に入力された信号光が、上記光合波部による光の干渉効果によって低損失に合波されるように、上記光分配増幅部と上記光合波部とを接続する複数の経路の光路長が設定され、
上記光分配増幅部を構成する複数の光分岐部のうちの少なくとも1つ、または、上記光合波部を構成する複数の光合波器のうちの少なくとも1つに、複数の入出力ポートを有する光カプラが設けられ、
上記光分配増幅部の内部に存在する複数の反射点で生じる反射光を、光の干渉効果によって、信号光の経路とは異なるポートに導くように、上記光カプラと上記反射点とを接続する経路の光路長が設定されていることを特徴とする光増幅回路。 - 入力された信号光を複数の経路に分岐する光分岐部と、上記複数の経路のそれぞれの経路に設けられている光増幅器と、上記分岐された信号光が上記光増幅器によって増幅されて出力される複数のポートとを具備する光分配増幅部と;
上記光分配増幅部における上記複数の出力ポートが出力した信号光を接続し、再び合波する光合波部と;
を有し、上記光分配増幅部に入力された信号光が、上記光合波部による光の干渉効果によって低損失に合波されるように、上記光分配増幅部と上記光合波部とを接続する複数の 経路の光路長が設定され、
上記光分配増幅部は、1段の光分配増幅部によって構成され、
上記光分配増幅部における光分岐部、上記光合波部が、複数の入出力ポートを有する光カプラによって構成され、
N番目の入力ポートから入力された信号光は、上記入力ポートと1対1に対応するN番目の出力ポートヘ出力されるように、2つの上記光カプラを接続する経路の光路長が設定されていることを特徴とする光増幅回路。 - 請求項4において、
上記光分配増幅部の内部に存在する複数の反射点で生じる反射光を、光の干渉効果によって、信号光の経路とは異なるポートに導くか、または放射モードとして逃がすように、2つの上記光カプラのうちの少なくとも一方と上記反射点とを接続する経路の光路長が設定されていることを特徴とする光増幅回路。 - 請求項3または請求項4において、
上記光増幅回路は、基板上に形成された平面光回路、または平面光回路上に上記光増幅器が搭載されているハイブリッド平面光回路に構成されていることを特徴とする光増幅回路。 - 請求項3または請求項4において、
上記光合波部は、上記信号光を合波する経路に、光増幅器が設けられ、
上記光増幅器は、少なくとも1段のカスケード状に接続されていることを特徴とする光増幅回路。
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