JP3726136B2 - ベッセルビーム生成方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザービームプリンタ、バーコードリーダ及びコンパクトディスク等の光ピックアップ等、またレーザー顕微鏡やレーザー加工装置等に用いられる、ベッセルビームに関する。さらに詳しくは、軸上強度の振動が低減された、ベッセルビームに関する。
【0002】
【従来の技術】
J. Durninにより見出された非回折ビーム、無回折ビームあるいは長焦点深度ビームとして知られるベッセルビーム(非特許文献1参照)は、ビーム内の中心ピーク半径を保ったまま長距離伝播できる性質を持ち、レーザービームプリンタ、バーコードリーダ及びコンパクトディスク等の光ピックアップ等並びにレーザー顕微鏡及びレーザー加工装置等への応用が検討されている。
【0003】
Durninが見出したベッセルビームは、ビーム断面内の振幅分布が第1種0次のベッセル関数であり、強度分布は、第1種0次のベッセル関数の二乗で表される(図1参照)。これを第一の種類のベッセルビームと呼ぶことにする。
【0004】
振幅分布を表す第1種0次のベッセル関数をJ0(αr)、rをビーム断面における中心からの距離(動径)、ビームが伝播する媒質(大気中であれば空気)の屈折率をn、ビームの真空中での波長をλとする。
【0005】
波数k=2πn/λを用いると、第一の種類のベッセルビームの伝播方向の伝播定数は(k2−α2)1/2、これと垂直な方向(動径方向)の伝播定数はαである。
【0006】
第二の種類のベッセルビームは、伝播方向の伝播定数が(k2−α2)1/2、動径方向の伝播定数がαであって、ビーム断面内の振幅分布が第1種0次のベッセル関数と伝播距離を変数とする関数の積で表される。
【0007】
第一および第二の種類のベッセルビームの中心ピークの半径(中心ピーク半径は、強度最大の点とこれに最近接の強度が極小の点間の距離とする)はrb=2.405/αである。
【0008】
第一の種類のベッセルビームは、基本的には第1種0次のベッセル関数で表される振幅分布あるいは第1種0次のベッセル関数の二乗で表される強度分布を与えることで生成される。
【0009】
具体的には、均一強度単色平面波を非常に細い円環状スリットに通過させた後コリメートする方法、均一強度単色平面波を第1種0次のベッセル関数の二乗の透過率分布を持つフィルタに通過させる方法などによって、第一の種類のベッセルビームは生成される。
【0010】
第二の種類のベッセルビームは、均一振幅単色平面波を、回転対称で動径方向に位相変化分布Δφ=−rαを持つ位相フィルタ等に通過させることで生成される。そのような位相フィルタには、円錐形状のレンズ(アクシコンレンズ)や回折型光学素子等が用いられる。
【0011】
第1種0次のベッセル関数J0(αr)は、数学的には無限大の(動径)rにおいても収束しないので、第一および第二の種類のベッセルビームは動径rが有限の場合には特性が異なる。生成された第一の種類のベッセルビームの半径が無限大のとき、伝播距離に依らずビーム断面内の強度分布は一定で、従って中心ピークの直径および強度(伝播軸上強度)も伝播距離に依らず一定である(図2実線)。
【0012】
均一振幅単色平面波を回転対称な位相変化分布Δφ=−rαを持つ位相フィルタに通過させることで生成された第二の種類のベッセルビームの半径が無限大のとき、中心ピークの半径は伝播距離に依らず一定で、その強度(伝播軸上強度)は伝播距離の増加に伴い単調に増加する(図3実線)。
【0013】
以下では、説明を明解にするために、次のような光学配置をとるものとする。ベッセルビーム生成光学系に入射するビームは、均一振幅単色平面波で、−z方向から+z方向に伝播し、そのビーム中心はz軸にあるものとする。
【0014】
ベッセルビーム生成光学系は、その光学機能(透過率分布や位相変化分布)がx−y平面内に設置され、回転対称で動径方向に分布しているその光学機能の対称中心はz軸上にあるものとする。
【0015】
ベッセルビームの特性は、主にベッセルビーム生成光学系で与えられる動径方向の伝播定数αと、ベッセルビーム生成装置の開口半径r0によって定まる。ベッセルビーム生成装置の開口半径r0とは、入射ビーム半径、第1種0次のベッセル関数の二乗で表される透過率分布あるいはΔφ=−rαの動径方向の位相変化分布等を持つフィルタの分布が与えられている領域の半径等であるベッセルビーム生成光学系の開口半径、アパーチャが用いられている場合にはアパーチャの半径、の内で最も小さい半径である。
【0016】
ベッセルビーム生成装置の開口半径が有限でr0のとき、第一および第二の種類のベッセルビームは、無限の伝播距離までその中心ピークの直径を一定に保つことができず、近似無回折伝播距離zmax=r0(k2−α2)1/2/αを越えると、中心ピーク直径は伝播距離の増大とともに広がり、伝播軸上強度は急激に減少する(図2破線、図3破線を参照)。
【0017】
さらに、r0が無限の場合には滑らかであった伝播軸上強度は、r0が有限の場合には近似無回折伝播距離zmax内で激しく振動する。
このような実際に生成されるベッセルビームの伝播軸上の強度の振動は、実用において支障をきたすため、これを低減することが求められてきている。
【0018】
伝播軸上の強度が振動する原因は、ベッセルビーム生成光学系において、ビーム断面内の強度分布が動径r=r0において打ち切られているために、そこで強度がナイフエッジのように急激に変化していることにある。
【0019】
従って従来技術では、r=r0における強度変化を滑らかにするように、適切な透過率分布特性を持つフィルタを挿入して、ベッセルビームの伝播軸上の強度の振動の抑制が行われてきている(特許文献1参照)。
【0020】
【非特許文献1】
「Exact solutions for nondiffracting beams. I. The scalar theory」 J. Durnin, vol. 4, No. 4/April 1987 / J. Optical Society of America
【特許文献1】
特開平9−64444号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術は、有限の開口半径のベッセルビーム生成装置により生成される、第一および第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度の振動を平滑化するために、適切な透過分布特性を持つフィルタを利用していた。本発明の目的は、適切な透過分布特性を持つフィルタを利用しない、有限の開口半径のベッセルビーム生成装置により生成される、第一および第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度の振動を平滑化する、新規で、簡便な方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本願発明においては、ベッセルビームの出射口において、生成されたベッセルビームの断面の中心と、該断面内の強度分布中心が異なるようにした。
【0023】
【作用】
ベッセルビーム生成装置の出射口における生成されたベッセルビームの断面が(x−ξ)2+y2=r0 2であり、ベッセルビーム断面内の強度分布中心がz軸にある場合で説明する。
【0024】
ベッセルビームとしての主特性は、z軸を中心とする半径r0−ξの円内で与えられ、伝播後のビームの中心ピークはz軸上にある。伝播軸上強度の振動特性は、主にベッセルビーム発生装置の出射口におけるベッセルビームの周縁で与えられる。
【0025】
ベッセルビーム発生装置の出射口において、生成されたベッセルビームの断面中心と、ベッセルビーム断面内の強度分布中心が一致する場合、半径r0のビームの周縁は、z軸から等距離にあり、従ってz軸上で同じ位相を持つので、干渉による振幅の重ね合わせを強く受け、伝播軸上強度が振動する。
【0026】
ベッセルビーム発生装置の出射口において、生成されたベッセルビームの断面中心と、ベッセルビーム断面内の強度分布中心が異なる場合、ビームの周縁はz軸から等距離になく、従ってz軸上で異なる位相を持つので、干渉は振幅を平均化する働きとなり、伝播軸上の強度の振動は低減される。
【0027】
【実施例1】
図4に、本発明の一つのベッセルビーム生成装置の概略図を示す。
真空中での波長が633nmであるHe−Neレーザー(図示せず)からの光は、光学系(図示せず)により均一振幅単色平面波1とされ、z軸に沿って、−z方向から+z方向に伝播する。
【0028】
回転対称で動径r[mm]方向に第1種0次のベッセル関数J0(40.68r)の二乗の透過率分布が動径範囲4.5mmまで与えられた透過率分布フィルタ2を、その透過率分布の中心をz軸と一致させ、透過率分布がx−y平面と平行になるように置く。
【0029】
透過率フィルタの+z側の直後に、半径3.5mmの円が開けられたアパーチャ3を、x−y平面に平行に、円の中心の座標が(x,y)=(0.7[mm],0[mm])となるように置く。この配置における近似無回折伝播距離はzmax=(r0−ξ)(k2−α2)1/2/α=683[mm]である(ξは、開口中心のz軸からの距離)。
【0030】
図5に、このベッセルビーム生成装置で生成される、第一の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布を示す。
【0031】
【比較例1】
図6に、実施例1の装置において、アパーチャ3の円の中心をz軸に一致させ、従来方法により生成した第一の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布を示す。図5と図6の比較から明らかなように、本発明の方法・装置により有限の開口半径のベッセルビーム生成装置により生成される、第一の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度の振動が平滑化されている。
【0032】
【実施例2】
図7に、本発明の別のベッセルビーム生成装置の概略図を示す。
真空中での波長が514.5nmであるArレーザーからの光は、光学系により均一振幅単色平面波1とされ、z軸に沿って、−z方向から+z方向に伝播する。回転対称で動径r[mm]方向にΔφ[rad]=−60 rの位相変化分布が動径範囲5mmまで与えられた位相変化分布フィルタ4を、その位相変化分布の中心をz軸と一致させ、位相変化分布がx−y平面と平行になるように置く。
【0033】
位相フィルタの−z側の直前に、半径4mmの円が開けられたアパーチャ3を、x−y平面に平行に、円の中心の座標が(x,y)=(0.8[mm],0[mm])となるように置く。この配置における近似無回折伝播距離はzmax=(r0−ξ)(k2−α2)1/2/α=650[mm]である。
【0034】
図8に、このベッセルビーム生成装置で生成される、第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布を示す。
【0035】
【比較例2】
図9に、実施例2の装置において、アパーチャ3の円の中心をz軸に一致させ、従来方法により生成した第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布を示す。図8と図9の比較から明らかなように、本発明の方法・装置により有限の開口半径のベッセルビーム生成装置により生成される、第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度の振動が平滑化されている。
【0036】
【実施例3】
図10に、本発明のさらに別のベッセルビーム生成装置の概略図を示す。
真空中での波長が633nmであるHe−Neレーザーからの光は、光学系によりビーム半径が3.5mmの均一振幅単色円形断面ビーム5とされ、ビームの中心がx−y平面上の座標(x,y)=(0.7[mm],0[mm])を通り、z軸に沿って、−z方向から+z方向に伝播する。
【0037】
回転対称で動径r[mm]方向に第1種0次のベッセル関数J0(40.68 r)の二乗の透過率分布が動径範囲4.5mmまで与えられた透過フィルタ2を、その透過率分布の中心をz軸と一致させ、透過率分布がx−y平面と平行になるように置く。このベッセルビーム生成装置で生成される、第一の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布は、実施例1と同じ図5の分布が得られた。
【0038】
【実施例4】
図11に、本発明のさらに別のベッセルビーム生成装置の概略図を示す。
真空中での波長が514.5nmであるArレーザーからの光は、光学系により均一振幅単色平面波1とされ、z軸に沿って、−z方向から+z方向に伝播する。回転対称で動径r[mm]方向にΔφ[rad]=−60 rの位相変化分布与えられた位相フィルタ4を、その位相変化分布の中心をz軸と一致させ、位相変化分布がx−y平面と平行になるように置く。この位相フィルタ4の位相変化分布が与えられている領域は(x[mm]−0.8)2+y[mm]2=42で表される円の内部であり、その外側は光を透過しない材料で作られている。
【0039】
このベッセルビーム生成装置で生成される、第一の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布は、実施例2と同じ図8の分布が得られた。
【0040】
【実施例5】
真空中での波長が633nmであるHe−Neレーザーからの光は、光学系により均一振幅単色平面波とされ、z軸に沿って、−z方向から+z方向に伝播する。回転対称で動径r[mm]方向にΔφ[rad]=−40.68 rの位相変化分布が動径範囲7mmまで与えられた位相フィルタを、その位相変化分布の中心をz軸と一致させ、位相変化分布がx−y平面と平行になるように置く。位相フィルタの−z側の直前に、半径3.5mmの円が開けられたアパーチャを、x−y平面に平行に置く。
【0041】
図12に、アパーチャの円の中心の座標(x,y)=(ξ[mm],0[mm])のξを、0から3.15mmの範囲で変化させたときの、このベッセルビーム生成装置で生成される、第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度分布のξによる変化を示す。ξは、ベッセルビーム生成装置の出射口における、生成されたベッセルビームの断面中心と、ベッセルビーム断面内の強度分布中心の間の距離である。
【0042】
ξが、ベッセルビーム生成装置の出射口における生成されたベッセルビームの断面半径r0の5%未満の場合には、生成されたベッセルビームの伝播軸上強度の平滑化が十分でない。
【0043】
またξが、ベッセルビーム生成装置の出射口における生成されたベッセルビームの断面半径r0の50%を越える場合には、生成されたベッセルビームの伝播軸上の最大強度が著しく低下するとともに、中心ピーク直径が維持される近似無回折伝播距離も短くなってしまう。
【0044】
ベッセルビーム生成装置の出射口における、生成されたベッセルビームの断面中心と、ベッセルビーム断面内の強度分布中心の間の距離は、ベッセルビーム生成装置の出射口におけるベッセルビームの断面半径r0の、5%以上50%以下が望ましい。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、有限の開口半径のベッセルビーム生成装置により生成される、第一および第二の種類のベッセルビームの伝播軸上の強度の振動を簡便に平滑化することができる。
従来法が、ベッセルビーム生成時のビーム周縁の強度分布を補正する追加のフィルタを必要とするのに対して、本発明ではこれを必要としないので、安価にかつ容易にこれを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)第1種0次ベッセル関数、(b)第1種0次ベッセル関数の二乗
【図2】従来の方法により生成される第一の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布(実線:無限開口半径、破線:有限開口半径)
【図3】従来の方法により生成される第二の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布(実線:無限開口半径、破線:有限開口半径)
【図4】実施例1のベッセルビーム生成装置の概念図
【図5】実施例1のベッセルビーム装置により生成される第一の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布
【図6】比較例1の従来法による第一の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布
【図7】実施例2のベッセルビーム生成装置の概念図
【図8】実施例2のベッセルビーム装置により生成される第二の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布
【図9】比較例2の従来法による第二の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布
【図10】実施例3のベッセルビーム生成装置の概念図
【図11】実施例4のベッセルビーム生成装置の概念図
【図12】実施例5のベッセルビーム装置により生成される第二の種類のベッセルビームの伝搬軸上強度分布の、ベッセルビーム生成装置出射口におけるベッセルビームの断面中心と断面内強度分布中心の距離ξによる変化
【符号の説明】
1・・均一振幅単色平面波
2・・透過率分布フィルタ
3・・アパーチャ
4・・位相変化分布フィルタ
5・・均一振幅単色円形断面ビーム
Claims (4)
- ベッセルビームの生成方法であって、ベッセルビームの出射口において、生成されたベッセルビームの断面の中心と、該断面内の強度分布中心が異なることを特徴とするベッセルビームの生成方法。
- 生成されたベッセルビームの断面の半径がr0であるとき、生成されたベッセルビームの断面中心とベッセルビーム断面内の強度分布中心の間の距離が、0.05r0以上であり、0.5r0以下であることを特徴とする請求項1に記載のベッセルビームの生成方法。
- ベッセルビームの生成装置であって、装置の出射口において、生成されたベッセルビームの断面の中心と、該断面内の強度分布中心が異なることを特徴とするベッセルビームの生成装置。
- 生成されたベッセルビームの断面の半径がr0であるとき、生成されたベッセルビームの断面中心とベッセルビーム断面内の強度分布中心の間の距離が、0.05r0以上であり、0.5r0以下であることを特徴とする請求項3に記載のベッセルビームの生成装置。
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JP2002339520A JP3726136B2 (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | ベッセルビーム生成方法および装置 |
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JP2004170874A JP2004170874A (ja) | 2004-06-17 |
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- 2002-11-22 JP JP2002339520A patent/JP3726136B2/ja not_active Expired - Lifetime
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