JP3725383B2 - タンポン用アプリケータ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生理用タンポンを体内に挿入する際に使用されるタンポン用アプリケータに関する。
【０００２】
【従来の技術】
生理用タンポン用のアプリケータは、タンポンが収納される外筒と、この外筒内に挿入されて前記外筒の後端から後方へ突出する押出し用の内筒とを有している。タンポンから延びる取出しコードは、前記外筒内から前記内筒内を経て内筒の後端から後方へ突出している。
【０００３】
タンポンを使用するときには、前記外筒を膣腔内に挿入し、前記内筒を押して内筒によって外筒内のタンポンを押出す。前記タンポンは外筒の先端の変形可能な多数の弁を拡開させながら膣腔内に挿入される。
【０００４】
前記アプリケータの外筒および内筒を紙で形成したものもあるが、最近では外面が平滑で膣腔内への挿入がスムーズに行われるように、前記外筒として合成樹脂を射出成形（インジェクション成形）したものが使用されている。この場合、内筒についても前記射出成形で形成されるが一般的である。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アプリケータの内筒を合成樹脂で射出成形したものでは、射出成形に使用する金型が高価であるため、成形コストが高くなる。また製品の形状変更に伴い内筒の径の変更や内筒の先部の押圧部の径の変更が必要になったときに、金型を作成し直すことが必要になり、設計変更のためのコストが高くなる。
【０００６】
また、前記タンポン用アプリケータは使用後に廃棄されるものであるため、使用する樹脂の量をなるべく少なくすることが環境上好ましい。よって、少なくとも前記内筒を薄肉に形成し、また内筒の外径を小さく形成することで、使用する樹脂量を減らすことができる。しかし、射出成形では以下の理由で内筒の薄肉や小径化を実現できない。
（１）射出成形で内筒を形成する際に、溶融樹脂を１ショットするときに内筒を多数個同時に成形する。よって成形型内での樹脂の流動性を良好にしまた成形された内筒の品質を安定化させるためには、内筒の肉厚をある程度大きくしなくてはならず、肉厚が０．６ｍｍ以下の内筒を射出成形するのは実質的に不可能である。また、内筒の外径を小さくすると、射出成形の際に内筒の内側に位置するコア金型（入子金型）に冷却水の経路を形成することができなくなり、その結果金型冷却に時間がかかり、射出成形のサイクルタイムが長くなり、成形効率が悪くなる。
（２）また、射出成形では樹脂の配向を内筒の軸方向へ揃えるのが難しく、成形後の内筒の軸方向の強度を高くすることができない。よって、内筒の肉厚を薄くしまた外径を小さくすると、射出成形後に型内から内筒を押出すときに軸方向へ座屈変形しやすくなる。また内筒の軸方向の強度が低いと、使用時に内筒でタンポンを押出す際にも内筒が座屈して折れることが有り得る。
【０００７】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、内筒を安価に製造でき、しかも薄肉で外径を小さくした場合にも軸方向への座屈強度を高くでき、さらに外筒の形状変更に内筒の形状変形を容易に追従させることができるタンポン用アプリケータを提供することを目的としている。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先端にタンポンを押出す突出口が基端に開口部が形成された外筒と、前記外筒内から前記開口部を経て後方へ突出するタンポン押出し用の内筒と、が設けられたタンポン用アプリケータにおいて、
前記内筒は円筒状に押出し成形された熱可塑性樹脂製の押出し材により形成されており、前記外筒内に挿入されている前記内筒の前端には、前記押出し材の径を拡大変形させた押圧部が形成され、前記押圧部の先端縁部には、前記押出し材を前記押圧部の外側または内側に向けて曲げ変形させた曲げ部が形成されていることを特徴とするものである。
さらに、前記内筒の後端には後方に向けて径が拡大する拡開部が形成されており、前記拡開部の先端縁部には、前記押出し材を前記拡開部の外側または内側に向けて曲げ変形させた曲げ部が形成されていることを特徴とするものである。
【０００９】
例えば、前記外筒は、タンポンが収納される大径部と、この大径部よりも基部側に延びる小径部とを有しており、前記内筒の押圧部は、前記大径部内に位置し、前記押圧部の外径は前記小径部の内径よりも大きく形成されている。
【００１０】
本発明では、アプリケータの内筒を熱可塑性樹脂製の押出し材により形成しているため、内筒の製造コストを低下させることができる。また押出し材は射出成形品に比べて肉厚や外径を自由に選択できるため、薄肉で小径の内筒を形成でき、使用する樹脂量を低下できる。さらに熱可塑性樹脂製の押出し材で形成された内筒は、外筒内に位置する前端に拡開した押圧部を形成するのも容易である。
【００１１】
また、前記押出し材は押出し成形された後に軸方向へ延伸されたものであることが好ましい。
【００１２】
軸方向へ延伸された内筒は樹脂の配向が軸方向へ揃えられるため、内筒の軸方向の強度を高くでき、薄肉で小径に形成したとしても、内筒の座屈強度を高くできる。よって製造工程において、または使用時において内筒に座屈による折れなどが発生しにくくなる。
【００１３】
さらに、前記押圧部は、先端に向って外径が徐々に拡開する形状であることが好ましい。
【００１４】
前記押圧部がこのような形状であると、例えばテーパ部を有する押し型を加熱して内筒の先端に押し付けるだけで、押圧部を簡単に成形することができる。
【００１５】
さらに、前記内筒の後端にも、先端に向って直径が徐々に拡大するように変形させた拡開部を形成することが可能である。
【００１７】
前記内筒の後端に形成された拡開部の縁部が、前記拡開部の外面側または内面側に曲げられているため、アプリケータを使用する場合、使用者は指で内筒の後端を押したときに、このとき拡開部の縁部を曲げ形成しておくことにより、指に内筒の縁のエッジ部が当たることがなく、指への抵抗力を小さくでき、タンポンを膣腔内に挿入しやすくなる。
【００１９】
また、前記内筒の前端に形成された押圧部の縁部は、前記押圧部の外面側または内面側に曲げられているため、アプリケータを使用してタンポンを膣腔内に挿入する際に、前記内筒の前端の前記押圧部の縁部が使用者の体の一部に当たることがあっても、このような場合に、前記縁部を曲げ形成しておくと、体の一部に当たったときの違和感が生じなくなる。
【００２０】
この場合に、前記外面側または内面側に曲げられている部分の曲面部の幅寸法が、前記タンポンから延びる取出しコードの太さよりも小さいことが好ましい。
【００２１】
製造工程において、タンポンの取出しコードは外筒から内筒内に挿入されるが、このとき内筒の前端の曲げ部の幅寸法を取出しコードの太さよりも小さくしておくことにより、前記コードが内筒の前端と外筒の内面との接触部に引っ掛かることがなくなり、アプリケータ内へのタンポンの挿入作業を容易に行えるようになる。
【００２２】
【発明の実施の形態】
図１は本発明のタンポン用アプリケータにタンポンが収納されている状態を示す縦断面図、図２（Ａ）（Ｂ）はアプリケータの内筒の後端と前端を示す拡大断面図、図３は内筒の前端の押圧部の縁部形状を示す拡大断面図、図４（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）はアプリケータの製造工程の一例を示す説明図である。
【００２３】
図１に示すタンポン用アプリケータは、外筒１と内筒２とから構成されている。外筒１の先部の内部にはコットンなどの吸収性繊維を圧縮成形したタンポン３が収納されており、このタンポン３に接続された取出しコード４が、外筒１内から内筒２内を経て後方へ延びている。
【００２４】
前記外筒１は射出成形により形成されたものであり、ＰＥ（ポリエチレン）、ＰＰ（ポリプロピレン）などの熱可塑性樹脂により形成されている。射出成形で形成された外筒１は、表面が平滑でありまた先部の突出口５の周辺の弁６の縁部にエッジが形成されず、体に当たったときに違和感を与えにくい。外筒１を射出成形する際、金型内での樹脂流れを良好にし、表面が平滑で且つ可能な限り薄肉に形成するためには、熱可塑性樹脂としてＬＤＰＥ（低密度ポリエチレン）を使用することが好ましい。射出成形により形成される前記外筒１の肉厚は０．６〜１．０ｍｍの範囲である。
【００２５】
外筒１の先部は、内部に前記タンポン３を収納する大径部７であり、その先部は曲面部７ａとなっている。大径部７の先端にはタンポン３を押出すための突出口５が設けられ、前記曲面部７ａには複数の変形可能な弁６が花弁状に形成されている。図４（Ｄ）に示すように、外筒１が射出成形された直後の状態では、前記大径部７の先端で前記弁６が開いており、前記大径部７内にタンポン３が収納された後に、弁６が形成されている部分が前記曲面部７ａとなるように熱変形させられる。
【００２６】
外筒１の中央よりも基端側には小径部８が形成されており、基端９では外径がやや広がり、端部に開口部１０が形成されている。
【００２７】
前記内筒２は、ＰＥ、ＰＰ、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）などの熱可塑性樹脂が円筒状（ストロー状、パイプ状）に押出し成形された押出し材により形成されている。さらに好ましくは、前記熱可塑性樹脂が押出された後に軸方向へ延伸されたものが使用される。押出し成形され且つ延伸された押出し材は樹脂の軸方向への配向性が良くなり、その結果軸方向の座屈強度が高くなる。したがって、例えば肉厚を０．４ｍｍ以下（下限は０．１ｍｍ程度）、内径を７ｍｍ以下（下限は３ｍｍ程度）の薄肉で且つ小径にしても十分な座屈強度を有するものとなる。したがって、使用時に内筒２を押してタンポン３を外筒２の突出口５から突出させる際に、内筒２が座屈変形しにくく、また折れるようなことがない。
【００２８】
前記内筒２は前記外筒１の小径部８内に進退自在に挿入されているが、その前端には押圧部１１が形成されている。押圧部１１は外径が拡大変形されており、この押圧部１１を設けることにより、タンポン３を後端から押しやすくまた内筒２が外筒１の後端方向へ抜けないようになっている。そのために、押圧部１１の外径Ｄ１（図２（Ｂ）参照）は前記外筒１の小径部８の内径ｄよりも大きくなっている。
【００２９】
また内筒２の後端には拡開部１２が形成されている。この拡開部１２を形成することにより、内筒２が小径であっても後端を指で押圧しやすくなっている。また拡開部１２の外径Ｄ２は、外筒１の後端の開口部１０の内径よりも大きく形成され、拡開部１２が開口部１０から外筒１内に入り込まないようになっている。
【００３０】
前記内筒２の前端に形成された前記押圧部１１の好ましい形状は、図１および図２（Ｂ）に示すように、先端に向うにしたがって外径が徐々に大きくなる形状である。この押圧部１１の拡開壁１１ａの断面形状は、図２（Ｂ）に示すように外径が徐々に大きくなるように直線的に変化し、その結果押圧部１１がテーパ面形状であってもよいし、または拡開壁１１ａの断面形状が先端に向って曲面状に徐々に外径が大きくなるいわゆるラッパ形状であってもよい。
【００３１】
さらに拡開壁１１ａの先端の縁部には曲げ部１１ｂが形成されている。図２（Ｂ）の実施の形態では、前記曲げ部１１ｂにおいて拡開壁１１ａの縁部が外面側へ丸められるように変形させられている。ただしこの曲げ部１１ｂは前記外面側へ二つ折りされていてもよいし、または拡開壁１１ａの内面側へ丸められ、または二つ折りされていてもよい。
【００３２】
前記押圧部１１に曲げ部１１ｂを形成しておくことにより、タンポン３を膣腔内へ押出す際に前記押圧部が膣腔内などに当たったとしてもエッジが体に当たる感触が生じなくなり、体に違和感が生じることがない。
【００３３】
また図３に示すように、前記曲げ部１１ｂを形成することで前記拡開壁１１ａに形成される曲面部分の幅Ｗは、取出しコード４の直径Ｄａよりも小さいことが好ましい。図３に示すように前記曲面部分の幅Ｗは外筒１の内壁との間に隙間を形成するものであるため、前記幅Ｗが大きすぎると、取出しコード４を内筒２内へ挿入するときに、取出しコード４の先端が前記幅Ｗの部分で引っかかりやすくなり、取出しコード４を内筒２内に通しにくくなる。
【００３４】
前記押圧部１１は、内筒２の先部に例えば図２（Ｂ）に示すような押し型１５を加熱状態で押し付けることにより容易に形成できる。前記押し型１５は、中心部にテーパ部１５ａが形成され、このテーパ部１５ａの裾部に円周状に延びる溝１５ｂが形成されている。前記押し型１５を加熱して内筒２の先端に当てることにより、前記テーパ部１５ａで拡開壁１１ａを形成でき、且つ前記溝１５ｂにより拡開壁１１ａの縁部を曲げ形成できる。
【００３５】
図２（Ａ）に示すように、内筒２の後端の拡開部１２も、好ましくはテーパ状またはラッパ形状に形成される。そしてその先端の縁部は拡開壁１２ａの外側または内側へ丸められまたは二つ折りされて曲げ部１２ｂが形成されている。この曲げ部１２ｂを形成することで、この拡開部１２を指で押したときに、指が曲げ部１２ｂに当たることになって指に与えられる抵抗感を低減できる。
【００３６】
前記拡開部１２も、図２（Ｂ）に示す押し型１５と同じ形状で少し小さ目の押し型を内筒２の後端に押し付けることにより容易に形成できる。
【００３７】
なお、前記押圧部１１および拡開部１２は、必ずしもテーパ形状やラッパ形状であることに限られず、例えば内筒２の本体部分よりも外径をほぼ円筒形状のまま拡開させて前記押圧部１１および拡開部１２を形成してもよい。
【００３８】
図４は、前記タンポン用アプリケータの製造方法の一例を工程別に示している。
【００３９】
図４（Ａ）に示すように、溶融押出し機２１により熱可塑性樹脂を溶融して押出し、ダイ２２により円筒状（ストロー状、パイプ状）に形成すると共に、延伸送り出し装置２３により軸方向へ延伸し、冷却して押出し材２ａを形成する。
【００４０】
図４（Ｂ）では、前記押出し材２ａをカッター２４により押し切って、所定長さの内筒２を得る。その後に図４（Ｃ）に示すように、内筒２の前端に前記押し型１５を加熱して押し付け、テーパ形状（ラッパ形状）の押圧部１１を形成する。
【００４１】
一方、外筒１は、図４（Ｄ）に示す形状に射出成形される。内筒２の前記押圧部１１が形成されていない後端を、外筒１の先端の突出口５から挿入し、小径部８内を通過させ後端の開口部１０から後方へ突出させる。その後に内筒２の後端に押し型を加熱して押し付け拡開部１２を形成する。
【００４２】
タンポン３は外筒１の突出口５から大径部７内に挿入され、このとき取出しコード４は内筒２内を通して後方へ引き出される。その後に外筒１の突出口５の周辺の弁６が熱変形させられ、図１に示すように曲面状に変形した弁６により突出口５が塞がれる。
【００４３】
【発明の効果】
以上のように本発明では、アプリケータの内筒を押出し材で形成しているため、射出成形に比べて内筒を低コストで製造できる。また内筒の径の変更や形状の変更に要するコストも削減できる。また押出し材で形成した内筒は肉厚や径を自由に選択できるため、薄肉小径にし使用する樹脂量を低減できる。この場合に、軸方向に延伸された押出し材を使用すると軸方向の座屈強度を高くできる。さらに内筒の前端の押圧部や基端の拡開部の成形も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のアプリケータにタンポンが収納された状態を示す縦断面図、
【図２】（Ａ）は内筒の基端の拡開部を示す拡大断面図、（Ｂ）は内筒の前端の押圧部を示す拡大断面図、
【図３】内筒の前端の押圧部と、外筒の内壁との摺動部を示す拡大断面図、
【図４】（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）はアプリケータの製造方法の一例を示す工程説明図、
【符号の説明】
１ 外筒
２ 内筒
３ タンポン
４ 取出しコード
５ 突出口
６ 弁
７ 大径部
８ 小径部
１０ 開口部
１１ 押圧部
１１ａ 拡開壁
１１ｂ 曲げ部
１２ 拡開部
１２ａ 拡開壁
１２ｂ 曲げ部

Claims (7)

1. 先端にタンポンを押出す突出口が基端に開口部が形成された外筒と、前記外筒内から前記開口部を経て後方へ突出するタンポン押出し用の内筒と、が設けられたタンポン用アプリケータにおいて、
   前記内筒は円筒状に押出し成形された熱可塑性樹脂製の押出し材により形成されており、前記外筒内に挿入されている前記内筒の前端には、前記押出し材の径を拡大変形させた押圧部が形成され、前記押圧部の先端縁部には、前記押出し材を前記押圧部の外側または内側に向けて曲げ変形させた曲げ部が形成されていることを特徴とするタンポン用アプリケータ。
2. 先端にタンポンを押出す突出口が基端に開口部が形成された外筒と、前記外筒内から前記開口部を経て後方へ突出するタンポン押出し用の内筒と、が設けられたタンポン用アプリケータにおいて、
   前記内筒は円筒状に押出し成形された熱可塑性樹脂製の押出し材により形成されており、前記外筒内に挿入されている前記内筒の前端には、前記押出し材の径を拡大変形させた押圧部が形成され、前記内筒の後端には後方に向けて径が拡大する拡開部が形成されており、前記拡開部の先端縁部には、前記押出し材を前記拡開部の外側または内側に向けて曲げ変形させた曲げ部が形成されていることを特徴とするタンポン用アプリケータ。
3. 前記曲げ部では前記押出し材が丸められている請求項１または２記載のタンポンアプリケータ。
4. 前記外筒は、タンポンが収納される大径部と、この大径部よりも基部側に延びる小径部とを有しており、前記内筒の押圧部は、前記大径部内に位置し、前記押圧部の外径は前記小径部の内径よりも大きく形成されている請求項１ないし３のいずれかに記載のタンポン用アプリケータ。
5. 前記押出し材は押出し成形された後に軸方向へ延伸されたものである請求項１ないし４のいずれかに記載のタンポン用アプリケータ。
6. 前記押圧部は、先端に向って外径が徐々に拡開する形状である請求項１ないし５のいずれかに記載のタンポン用アプリケータ。
7. 前記曲げ部の曲面部の幅寸法が、前記タンポンから延びる取出しコードの太さよりも小さい請求項３記載のタンポン用アプリケータ。

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