JP3724272B2 - 太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池、特に異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層することにより、広い波長域で光電変換効率を向上させたタンデム型太陽電池が知られている。特開平4−226084号公報にも、このようなタンデム型の太陽電池が開示されている。
【0003】
図15には、このような従来のタンデム型太陽電池の断面図が示される。図15において、太陽電池10は、光入射側(図の上側)の単位太陽電池である上部セル12と、裏面側の単位太陽電池である下部セル14とが積層された構造となっており、一般に上部セル12としてバンドギャップ(Eg)の大きい太陽電池が使用され、下部セル14としてバンドギャップの小さい太陽電池が使用されている。また、太陽電池10の光入射側には上部電極18が、裏面側には下部電極20がそれぞれ設けられており、上部セル12及び下部セル14で発生したキャリアである電子は上部電極18から、正孔は下部電極20からそれぞれ取り出される。
【0004】
この場合、上部セル12と下部セル14とでは、それぞれのバンドレベルに隔たりがあるので、上部セル12と下部セル14との接合面で電子及び正孔のキャリア移動が妨げられる。このため、この接合部分にトンネルダイオード16を配置し、接合部分でのキャリアの移動を可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図15に示された従来の太陽電池10においては、上部セル12と下部セル14との間に設けられたトンネルダイオード16及びこれらの界面での抵抗損失やキャリアの再結合損失が多いという問題があった。特に、上記界面では格子の不整合による欠陥密度が高く、この部分でのキャリアの再結合損失が多かった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、キャリア再結合損失を低減し、発電効率の高い太陽電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の前記単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうちの一方が光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、を備え、光入射側の単位太陽電池と裏面側の単位太陽電池との間に、それぞれの単位太陽電池のバンドギャップの中間のバンドギャップを有する半導体中間層を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち正極が光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、を備え、光入射側の単位太陽電池から裏面側の単位太陽電池へ正孔が移動する構成であり、光入射側の単位太陽電池と裏面側の単位太陽電池との間に、それぞれの単位太陽電池の価電子帯のエネルギレベルの中間のエネルギレベルをとる価電子帯を有する半導体中間層を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち負極が光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、を備え、光入射側の単位太陽電池から裏面側の単位太陽電池へ電子が移動する構成であり、光入射側の単位太陽電池と裏面側の単位太陽電池との間に、それぞれの単位太陽電池の伝導帯のエネルギレベルの中間のエネルギレベルをとる伝導帯を有する半導体中間層を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、上記太陽電池において、半導体中間層が、そのバンドギャップが段階的に変化する複数層で構成されることを特徴とする。
【0011】
また、上記太陽電池において、半導体中間層が、その価電子帯のエネルギレベルが段階的に変化する複数層で構成されることを特徴とする。
【0012】
また、上記太陽電池において、半導体中間層が、その伝導帯のエネルギレベルが段階的に変化する複数層で構成されることを特徴とする。
【0013】
また、上記太陽電池において、半導体中間層が、そのバンドギャップが連続的に変化する層で構成されることを特徴とする。
【0014】
また、上記太陽電池において、半導体中間層が、その価電子帯のエネルギレベルが連続的に変化する層で構成されることを特徴とする。
【0015】
また、上記太陽電池において、半導体中間層が、その伝導帯のエネルギレベルが連続的に変化する層で構成されることを特徴とする。
【0016】
また、異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち正極が光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、を備え、光入射側の単位太陽電池から裏面側の単位太陽電池へ正孔が移動する構成であり、光入射側の単位太陽電池の下部の価電子帯のエネルギレベルが裏面側の単位太陽電池の上部の価電子帯のエネルギレベルより低いことを特徴とする。
【0017】
また、異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち負極が前記光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、を備え、光入射側の単位太陽電池から裏面側の単位太陽電池へ電子が移動する構成であり、光入射側の単位太陽電池の下部の伝導帯のエネルギレベルが裏面側の単位太陽電池の伝導帯のエネルギレベルより高いことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0019】
実施形態1.
図1には、本発明に係る太陽電池の実施形態1の構成の断面図が示される。図1において、太陽電池10は、バンドギャップ(Eg)の広い半導体材料で構成される単位太陽電池である上部セル12とバンドギャップの狭い半導体材料で構成される単位太陽電池である下部セル14とが積層されたタンデム型の構造となっている。上部セル12は、n+層、p層、p+層が積層されて構成されており、本発明に係る光入射側の単位太陽電池を構成する。また、その最上部に形成されたn+層に接続されて上部電極18が設けられている。さらに、n+層の上には絶縁膜24が形成されている。絶縁膜24は透明材料で構成されており、太陽光はこの絶縁膜24を介して太陽電池10に入射してくる。
【0020】
また、下部セル14は、基板となるp層の裏面にn+層、p+層が交互に設けられている。各n+層には負極26が、各p+層には正極28がそれぞれ独立して接続されており、本発明に係る裏面電極を構成している。これらの負極26及び正極28は、下部セル14の一対の電極を構成するとともに、正極28が上部セル12の一方の電極である上部電極18に対して他方の電極としても兼用されている。なお、下部セル14が本発明に係る裏面側の単位太陽電池に相当する。
【0021】
上述した上部セル12の材料としては、たとえばAl0.3Ga0.7Asを使用することができる。そのバンドギャップは1.82eVである。また、この場合n+層のドーパント濃度は2×1018cm-3であり、その厚みは0.1μmである。また、p層のドーパント濃度は1×1017cm-3であり、その厚みは0.8μmである。さらに、p+層のドーパント濃度は2×1018cm-3であり、その厚みは0.1μmである。
【0022】
また、下部セル14の材料としては、たとえばSiを使用することができる。そのバンドギャップは1.12eVである。また、この場合n+層のドーパント濃度は1×1019cm-3であり、その厚みは1.0μmである。またp層のドーパント濃度は5×1013cm-3であり、その厚みは100μmである。さらに、p+層のドーパント濃度は1×1019cm-3であり、その厚みは1.0μmである。
【0023】
本実施形態では、上部セル12と下部セル14との間に、中間層30が形成されている。この中間層30の材料としてはGaAsを使用することができる。そのバンドギャップは1.42eVである。また、この場合中間層30のドーパント濃度は1×1018cm-3であり、その厚みは0.01μm〜10μmの範囲とする。なお、上記ドーパントとしてはp+型を使用する。
【0024】
タンデム型の太陽電池において、図1に示された中間層30を設けない場合のエネルギバンド構造の模式図は図16のようになる。図16において、横軸には太陽電池の表面すなわち光入射面からの距離が示され、縦軸には、この距離に対応する伝導帯(Ec)及び価電子帯(Ev)のエネルギレベルが示される。このEcとEvとの差がバンドギャップである。
【0025】
図1に示された太陽電池では、上部セル12、下部セル14の基板がp型であるので、少数キャリアは電子となる。電子は、図16に示されるように、上部セル12と下部セル14の接合部を境にして、上部セル12で発生した電子は上部セル12の上方向に向かって移動し、上部電極18に集められる。また、下部セル14で発生した電子は下部セル14の下方向に向かって移動し、裏面電極のうち負極26に集められる。したがって、上部セル12と下部セル14との接合部を通過する電子はないので、図16のような伝導帯のエネルギバンド構造でも問題が生じない。
【0026】
これに対して、多数キャリアである正孔は、上部セル12と下部セル14との接合部分を通過してすべて下部セル14の裏面に設けられた裏面電極のうち正極28に集められる。このため、図16に示されるような上部セル12と下部セル14との接合面に生じるエネルギのノッチ及びギャップが正孔の移動に対して障害となる。また、上部セル12と下部セル14との界面部における欠陥量が多い場合には、ここを通過するキャリアである正孔が上記エネルギ障壁部分で再結合し消滅する確率も多くなる。したがって、図16に示されたノッチ、ギャップの高さを極力小さくし、正孔の移動に対するエネルギ障壁を極力低くすることが、太陽電池の発電効率を向上させるために重要である。
【0027】
このため、図1に示された中間層30のバンドギャップを上部セル12及び下部セル14のそれぞれのバンドギャップの中間のバンドギャップとなるように調整する。この様子が図2に示される。このように、上部セル12と下部セル14との間にそれらのバンドギャップの中間のバンドギャップを有する中間層30を設ければ、上部セル12と中間層30及び中間層30と下部セル14の接合界面に生じるノッチとギャップの高さを小さくすることができる。この結果、上部セル12と下部セル14とが直接接合している場合よりエネルギ障壁が小さくなり、上部セル12で発生したキャリアである正孔が下部セル14へ移動する際に、上部セル12と下部セル14との界面近傍において発生するキャリアの再結合損失を抑制することができる。このため、図1に示されたタンデム型太陽電池の光発電量を増加させ、発電効率を向上させることができる。
【0028】
なお、上部セル12と下部セル14との間の中間層30の厚みとしては、0.01μmよりも薄いと上述したエネルギ障壁を小さくする効果を十分得ることができず、また10μmよりも厚くなると下部セル14へ到達する光量を減少させ、いずれも発電効率を向上させることができない。したがって、中間層30の厚みとしては前述したとおり0.01μm〜10μm程度の範囲が望ましい。
【0029】
なお、図1及び図2においては、上部セル12から下部セル14へ移動するキャリアが正孔の場合であったが、図1の構造において各p層、n層を入れ替えれば、上部セル12から下部セル14へ移動するキャリアは電子となる。この場合にも、上部セル12と下部セル14とのそれぞれのバンドギャップの中間のバンドギャップを有する中間層30を設けることにより、電子の移動に対するエネルギ障壁を小さくでき、上述した正孔の場合と同様に再結合損失を小さくでき、発電効率の向上を図ることができる。
【0030】
この場合に用いることのできる材料としては、前述した上部セル12、下部セル14、中間層30の材料に加え、SiC、SiGe、AlP、GaP、AlAs、InP、InAs、GaSb、AlSb、AlxGa(1-x)As、InxGa(1-x)P、InxGa(1-x)As、AlxGa(1-x)AsySb(1-y)、InxGa(1-x)AsyP(1-y)、InxGa(1-x)PySb(1-y)、CdTe、HgTe、ZnTe、CdS、ZnSe、ZnS、CuInSe2、CuInxGa(1-x)Se2等の半導体材料や水素、ハロゲン元素等を含んだ上記半導体材料を主材料とした非晶質半導体材料を用いることができる。これらの材料を、バンドギャップや光吸収係数を考慮し、また、適切なドーパント材料と濃度を用いて組み合わせ、上部セル12、下部セル14,中間層30に用いることができる。
【0031】
図3には、本実施形態に係る太陽電池の変形例のエネルギバンド構造が示される。図3に示された変形例では、上部セル12から下部セル14へ正孔が移動する構成となっている。この場合の中間層30は、上部セル12及び下部セル14のそれぞれの価電子帯のエネルギレベル(Ev)の中間のエネルギレベルを取る価電子帯を有している。このような中間層30を設けることにより、上部セル12と下部セル14との価電子帯のエネルギレベル(Ev)の間に中間層30の価電子帯のエネルギレベルが存在することになる。これによってノッチ、ギャップが低くなり、正孔が上部セル12から下部セル14へ移動する際のエネルギ障壁が小さくなる。このため、上部セル12と下部セル14との接合界面における正孔の再結合損失を小さくすることができ、太陽電池の発電効率を向上させることができる。
【0032】
なお、図3においては、上部セル12で生じた電子は上部セル12の上部電極18から、下部セル14で生じた電子は下部セル14の裏面電極のうち負極26から取り出されるため、上記接合界面を電子が移動することはないので、伝導帯のエネルギレベルEcを調整する必要はない。このため、本変形例のように、価電子帯のエネルギレベルEvのみ調整すれば図2の場合と同じ効果を得ることができる。
【0033】
図4には、本実施形態に係る太陽電池のさらに他の変形例のエネルギバンド構造が示される。図4においては、図3とは逆に、上部セル12、下部セル14、中間層30はn型半導体で構成されている。したがって、上部セル12から下部セル14へ電子が移動する構成となっている。この場合には、上部セル12と下部セル14との界面を通過するのは電子であるので、伝導帯におけるエネルギ障壁を小さくする必要がある。このため、本変形例における中間層30は、上部セル12及び下部セル14のそれぞれの伝導帯のエネルギレベルEcの中間のエネルギレベルを取る伝導帯を有している。
【0034】
このように、上部セル12と下部セル14の伝導帯のエネルギレベルEcの中間に、中間層30のエネルギレベルEcが存在することにより、図4に示されるように、上部セル12と下部セル14との間の接合界面に生じるノッチ、ギャップを小さくでき、エネルギ障壁を小さくすることができる。これは、図2、図3で示された、上部セル12から下部セル14に正孔が移動する構成における価電子帯の接合界面のエネルギ障壁を小さくする場合と同様の効果を得ることができる。このため、図4のように多数キャリアが電子の場合でも中間層30を設けることによりキャリア再結合による損失を抑制でき、発電効率を向上させることができる。
【0035】
実施形態2.
図5には、本発明に係る太陽電池の実施形態2の構成が示され、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略する。図5において特徴的な点は、中間層30が複数の層で構成されている点にある。かかる中間層30を構成する各層は、そのバンドギャップが段階的に変化するように構成されている。
【0036】
図6には、上記図5に示された太陽電池のエネルギバンド構造が示される。図6に示されるように、中間層30の伝導帯のエネルギレベルEcと価電子帯のエネルギレベルEvとの差すなわちエネルギギャップは、上部セル12と下部セル14のそれぞれのエネルギギャップの間で段階的に変化している。このように、上部セル12のエネルギギャップと下部セル14のエネルギギャップとの間を一段階ではなく数段階でエネルギギャップが変化する中間層30を設けることにより、図16に示されたようなノッチ、ギャップの高さがより低くなり、正孔が上部セル12から下部セル14に移動する際の各層間のエネルギ障壁をより小さくすることができる。この結果、正孔の再結合損失を小さくすることができ、発電効率を向上させることができる。
【0037】
本実施形態に係る太陽電池においては、上部セル12及び下部セル14の構成は図1の場合と同様である。また中間層30については以下のような構成となっている。まず、中間層30の第1層すなわち上部セル12側の層は、材料としてAl0.15Ga0.85Asを使用し、そのバンドギャップが1.61eVである。この層のドーパント濃度はp+型のドーパントを使用し、2×1018cm-3である。またその厚みは0.1μmである。また、中間層30の第2層は、材料としてGaAsを使用し、そのバンドギャップが1.42eVとなっている。ドーパントとしてはp+型を使用し、ドーパント濃度が2×1018cm-3となっている。また、その厚みは0.1μm程度である。さらに、中間層30の第3層すなわち下部セル14側の層は、材料としてIn0.2Ga0.8Asを使用し、そのバンドギャップが1.22eVとなっている。ドーパントとしてはp+型を使用し、ドーパント濃度が2×1018cm-3である。また、その厚みは0.1μm程度である。
【0038】
このような中間層30の全体の厚みとしては、0.01μm〜10μm程度が望ましい。0.01μmより薄いとエネルギ障壁を小さくする効果が低くなり、10μmより厚くなると下部セル14まで到達する光量が減少するので、いずれも発電量が減少してしまうためである。
【0039】
図7には、本実施形態に係る太陽電池の変形例のエネルギバンド構造が示される。図7においては、中間層30の価電子帯のエネルギレベルEvが、上部セル12と下部セル14のそれぞれの価電子帯のエネルギレベルEvの間で段階的に変化する構成となっている。前述したとおり、上部セル12と下部セル14とをp型半導体で形成した場合には、上部セル12から下部セル14に移動するキャリアは正孔であるので、価電子帯のエネルギレベルEvのみそのエネルギ障壁を小さくすれば、図5の場合と同じ効果を得ることができる。
【0040】
本変形例では、上述のとおり、中間層30の価電子帯のエネルギレベルEvを上部セル12と下部セル14との価電子帯のエネルギレベルEvの間で段階的に変化させているので、各層間におけるノッチ、ギャップを小さくでき、エネルギ障壁を小さくすることができる。このため、キャリア再結合損失を抑制でき、発電効率を向上することができる。
【0041】
図8には、本実施形態に係る太陽電池の他の変形例のエネルギバンド構造が示される。本変形例では、上部セル12、下部セル14、中間層30がいずれもn型半導体で構成されており、上部セル12から下部セル14へ移動するキャリアは電子となっている。図8における中間層30は、その伝導帯のエネルギレベルEcが、上部セル12及び下部セル14のそれぞれの伝導帯のエネルギレベルEcの間で、段階的に変化する構成となっている。これにより、上部セル12から下部セル14に至る各層におけるエネルギ障壁を小さくすることができ、キャリアである電子が上部セル12と下部セル14との接合界面を移動する際のキャリア再結合損失を抑制できる。これによって、本変形例に係る太陽電池の発電効率を向上させることができる。
【0042】
実施形態3.
図9には、本実施形態に係る太陽電池のエネルギバンド構造が示される。図9においては、図1に示された太陽電池の中間層30のバンドギャップが、上部セル12と下部セル14のそれぞれのバンドギャップの間で、連続的に変化する構成となっている。このように、中間層30のバンドギャップを連続的に変化させることにより、バンドギャップを段階的に変化させる実施形態2の中間層30の場合よりも、キャリアの移動(図9の場合には正孔の移動)に対するエネルギ障壁をより小さくすることができる。これにより、より発電効率の向上を図ることができる。なお、本実施形態の場合にも、中間層30の厚みとしては0.01μm〜10μm程度が望ましい。
【0043】
本実施形態における中間層30の材料としては、たとえばInxGa(1-x)AsyP(1-y)を使用することができる。この中間層30を形成するには、たとえばガスソースを用い、MOCVD(メタルオーガニックCVD)法により形成することができる。この際、上記化学式における各成分組成すなわちx、yの割合を連続的に変化させるようにして中間層30の積層を行えば、図9に示されるように、エネルギバンドギャップが連続的を変化させることができる。この場合、上部セル12側でのエネルギバンドギャップは1.80eVであり、下部セル14側では1.15eVとなっている。
【0044】
図10には、本実施形態の変形例のエネルギバンド構造が示される。図10においては、上部セル12、下部セル14、中間層30がp型基板で形成されているため、上部セル12から下部セル14に移動するキャリアは正孔である。このため図10における中間層30は、価電子帯のエネルギレベルEvが、上部セル12及び下部セル14のそれぞれの価電子帯のエネルギレベルEvの間を連続的に変化する構成となっている。上部セル12から下部セル14に移動するキャリアが正孔であるので、このように価電子帯におけるエネルギ障壁を小さくできれば、図9の場合と同じ効果を得ることができる。
【0045】
図10に示された中間層30を形成する場合にも、図9の場合と同様に、中間層30の成分組成を連続的に変化させながら積層することにより、価電子帯のエネルギレベルを連続的に変化させることができる。
【0046】
図11には、本実施形態に係る太陽電池の他の変形例のエネルギバンド構造図が示される。図1においては、上部セル12、下部セル14、中間層30がn型基板により形成されているので、上部セル12から下部セル14に移動するキャリアは電子となっている。したがってこの場合には、伝導帯のエネルギレベルEcを中間層30において連続的に変化させれば図10の場合と同様の効果を得ることができる。この場合にも、中間層30を構成する材料の成分組成を連続的に変化させながら積層することにより、伝導帯のエネルギレベルEcを連続的に変化させることができる。
【0047】
実施形態4.
図12には、本発明に係る太陽電池の実施形態4の構成が示され、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略する。図12に示された例では、上部セル12と下部セル14とはp型半導体で形成されているので、上部セル12から下部セル14に移動するキャリアは正孔となる。このようなタンデム型の太陽電池において、上部セル12と下部セル14のエネルギバンド構造が図17に示されるような場合すなわち上部セル12の価電子帯のエネルギレベルEvよりも下部セル14の価電子帯のエネルギレベルEvの方が低い場合には、上部セル12と下部セル14との接合界面を移動するキャリアである正孔にとって、エネルギ障壁が高い状態となる。このため、上部セル12から下部セル14へのスムーズなキャリア移動が妨げられる。したがって、下部セル14の価電子帯のエネルギレベルを上部セル12の価電子帯のエネルギレベルより高く維持する必要がある。
【0048】
そこで、図12に示されたタンデム型の太陽電池10においては、その材料を適宜選択することにより、上部セル12の最下層の価電子帯のエネルギレベルが、下部セル14の最上層の価電子帯のエネルギレベルよりも低くなるように設定されている。具体的には、上部セル12には、GaAsが使用され、そのバンドギャップは1.42eVである。また、下部セル14には、Siが使用され、そのバンドギャップは1.12eVである。このような構成により、図12に示された太陽電池10のエネルギバンド構造は図13のようになる。図13に示されるように、上部セル12の最下層の価電子帯のエネルギレベルは、下部セル14の最上層の価電子帯のエネルギレベルよりも低くなっている。また、この場合、上部セル12と下部セル14との間に発生するノッチ、ギャップは図16のものより小さくなっている。
【0049】
上記のような構成をとることにより、上部セル12から下部セル14へスムーズに正孔を移動させることができ、上部セル12と下部セル14との接合界面でのキャリア再結合損失を抑制することができる。このため、太陽電池10における発電効率を向上させることができる。
【0050】
図14には、本実施形態に係る太陽電池の変形例のエネルギバンド構造が示される。図14においては、上部セル12及び下部セル14がn型半導体で形成されているので、上部セル12から下部セル14に移動するキャリアは電子となっている。この場合には、上部セル12及び下部セル14を構成する材料を適宜選択し、上部セル最下層の伝導帯のエネルギレベルEcが、下部セル14の最上層の伝導帯のエネルギレベルEcよりも高くなるように設定されている。
【0051】
上記構成により、上部セル12から下部セル14への電子の移動がスムーズになり、上部セル12と下部セル14との接合界面におけるキャリア再結合損失を抑制できる。このため、本変形例においても太陽電池10における発電効率を向上させることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上部セルと下部セルとの間に上部セルと下部セルのバンドギャップの中間のバンドギャップをとり、あるいは上部セルと下部セルの価電子帯のエネルギレベルまたは伝導帯のエネルギレベルの中間のエネルギレベルを取る中間層を設けているので、上部セルと下部セルとの間のエネルギ障壁が小さくなり、キャリア再結合損失を抑制できる。
【0053】
また、上記中間層を複数層とすることにより、よりエネルギ障壁を小さくすることができる。
【0054】
さらに、中間層のバンドギャップあるいはエネルギレベルの変化を連続的に行わせれば、さらにエネルギ障壁を小さくすることができる。
【0055】
また、上部セルと下部セルとの価電子帯あるいは伝導帯のエネルギレベルを調整することにより、上部セルから下部セルへのキャリア移動をよりスムーズに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る太陽電池の実施形態1の構成を示す図である。
【図2】 図1に示された太陽電池のエネルギバンド構造を示す図である。
【図3】 実施形態1の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図4】 実施形態1の他の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図5】 本発明に係る太陽電池の実施形態2の構成を示す図である。
【図6】 図5に示された太陽電池のエネルギバンド構造を示す図である。
【図7】 実施形態2の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図8】 実施形態2の他の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図9】 本発明に係る太陽電池の実施形態3の太陽電池のエネルギバンド構造を示す図である。
【図10】 実施形態3の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図11】 実施形態3の他の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図12】 本発明に係る太陽電池の実施形態4の構成を示す図である。
【図13】 図12に示された太陽電池のエネルギバンド構造を示す図である。
【図14】 実施形態4の変形例のエネルギバンド構造を示す図である。
【図15】 従来におけるタンデム型太陽電池の構造を示す断面図である。
【図16】 中間層を設けないタンデム型太陽電池のエネルギバンド構造を示す図である。
【図17】 中間層を設けないタンデム型太陽電池のエネルギバンド構造を示す図である。
【符号の説明】
10 太陽電池、12 上部セル、14 下部セル、16 トンネルダイオード、18 上部電極、20 下部電極、24 絶縁膜、26 負極、28 正極、30 中間層。
Claims (11)
- 異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、
前記太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の前記単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、
前記太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の前記単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうちの一方が前記光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、
を備え、
前記光入射側の単位太陽電池と前記裏面側の単位太陽電池との間に、それぞれの単位太陽電池のバンドギャップの中間のバンドギャップを有する半導体中間層を設けたことを特徴とする太陽電池。 - 異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、
前記太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の前記単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、
前記太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の前記単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち正極が前記光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、
を備え、
前記光入射側の単位太陽電池から前記裏面側の単位太陽電池へ正孔が移動する構成であり、前記光入射側の単位太陽電池と前記裏面側の単位太陽電池との間に、それぞれの単位太陽電池の価電子帯のエネルギレベルの中間のエネルギレベルをとる価電子帯を有する半導体中間層を設けたことを特徴とする太陽電池。 - 異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、
前記太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の前記単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、
前記太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の前記単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち負極が前記光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、
を備え、
前記光入射側の単位太陽電池から前記裏面側の単位太陽電池へ電子が移動する構成であり、前記光入射側の単位太陽電池と前記裏面側の単位太陽電池との間に、それぞれの単位太陽電池の伝導帯のエネルギレベルの中間のエネルギレベルをとる伝導帯を有する半導体中間層を設けたことを特徴とする太陽電池。 - 請求項1記載の太陽電池において、前記半導体中間層が、そのバンドギャップが段階的に変化する複数層で構成されることを特徴とする太陽電池。
- 請求項2記載の太陽電池において、前記半導体中間層が、その価電子帯のエネルギレベルが段階的に変化する複数層で構成されることを特徴とする太陽電池。
- 請求項3記載の太陽電池において、前記半導体中間層が、その伝導帯のエネルギレベルが段階的に変化する複数層で構成されることを特徴とする太陽電池。
- 請求項1記載の太陽電池において、前記半導体中間層が、そのバンドギャップが連続的に変化する層で構成されることを特徴とする太陽電池。
- 請求項2記載の太陽電池において、前記半導体中間層が、その価電子帯のエネルギレベルが連続的に変化する層で構成されることを特徴とする太陽電池。
- 請求項3記載の太陽電池において、前記半導体中間層が、その伝導帯のエネルギレベルが連続的に変化する層で構成されることを特徴とする太陽電池。
- 異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、
前記太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の前記単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、
前記太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の前記単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち正極が前記光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、
を備え、
前記光入射側の単位太陽電池から前記裏面側の単位太陽電池へ正孔が移動する構成であり、前記光入射側の単位太陽電池の下部の価電子帯のエネルギレベルが前記裏面側の単位太陽電池の上部の価電子帯のエネルギレベルより低いことを特徴とする太陽電池。 - 異なるバンドギャップを有する単位太陽電池を積層したタンデム型の太陽電池であって、
前記太陽電池の光入射面に設けられ、光入射側の前記単位太陽電池の一方の電極となる上部電極と、
前記太陽電池の裏面に設けられ、この裏面側に形成されたn層とp層とにそれぞれ独立して接続されて裏面側の前記単位太陽電池の一対の電極を形成するとともに、この一対の電極のうち負極が前記光入射側の単位太陽電池の他方の電極にも兼用される裏面電極と、
を備え、
前記光入射側の単位太陽電池から前記裏面側の単位太陽電池へ電子が移動する構成であり、前記光入射側の単位太陽電池の下部の伝導帯のエネルギレベルが前記裏面側の単位太陽電池の伝導帯のエネルギレベルより高いことを特徴とする太陽電池。
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