JP3723479B2 - 反射防止フィルム、およびこれを用いたディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ケイ素化合物からなるシリカ層、及び炭素を含有するシリカ層を積層してなる反射防止積層体を有する反射防止フィルム、およびこれを用いたディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTなどのコンピューター、ワープロ、テレビ、表示板等に使用される各種ディスプレイや、計器等の表示体、バックミラー、ゴーグル、窓ガラスなどには、ガラスやプラスチックなどの透明な基板が使用されているが、それらの透明な基板を通して、文字や図形その他の情報を読み取る場合には、透明な基板の表面で光が反射するとそれらの情報が読み取り難くなるという欠点がある。
【0003】
現在では、上記欠点を解決するために、基材フィルム上に互いに屈折率の異なる層を積層した反射防止積層体を設けて反射防止フィルムを形成し、当該反射防止フィルムを前記透明な基板表面に貼ることにより光の反射を防止することが行われている。
【0004】
そして、このような反射防止積層体の最外層(反射防止フィルムの基材とは反対の表面)には、効率よく光の反射を防止するために屈折率の小さい層を設けることが好ましいことが知られており、当該屈折率の小さい層としては、シリカ層が好適に用いられている。また、前記最外層の内側(反射防止フィルムの基材と前記最外層との間)には、最外層より屈折率の大きい層を複数設けることが好ましいことが知られている。
【0005】
しかしながら、シリカ層の密度と屈折率との関係は一般的に比例関係にあるため、上記最外層として用いるシリカ層の場合においても、その屈折率を小さくするためには、密度を小さくすることが必要であるが、シリカ層の密度を小さくした場合、層内には空隙が多く存在することとなり、長期間にわたり使用した場合や、高温高湿度条件下で使用した場合には、前記シリカ層内の空隙に水分子が入り込み、当該シリカ層の屈折率が変化してしまうという問題があった。
【0006】
また、従来の反射防止フィルムの反射防止積層体においては、前記のように最外層としてはシリカ層を用いている場合が多いが、最外層以外の層(最外層とは屈折率の異なる層)は、それぞれ異なる原料を用いて形成されている場合が多い。例えば、低屈折率層と中屈折率層と高屈折率層とを基材フィルム上に積層してなる反射防止積層体においては、最外層となる低屈折率層としてはシリカ層を用い、中屈折率層と高屈折率層としては酸化チタン層を用いることが多く、当該中屈折率層や高屈折率層は、一般的にはスパッタリング法等により形成されている場合が多い。
【0007】
したがって、従来の反射防止積層体を形成する際には、屈折率の異なる薄層、例えば中屈折率層や高屈折率層をそれぞれ別の原料を用いて別々にスパッタリング法等で形成する必要があったため、歩留まりが悪く、またコスト的にも問題が生じており、またそれぞれの層同士の密着性にも問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、低屈折率でありながら、長期間使用しても、また高温高湿度条件下で使用しても、屈折率に変化を生じないシリカ層を用い、合わせて、反射防止フィルムの反射防止積層体に用いられる薄層において、従来から最外層として用いられているシリカ層と同一の原料である酸化ケイ素によって形成することができ、生産性の高いシリカ層、および当該シリカ層を用いた反射防止フィルム、およびこれを用いたディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1において、少なくとも、反射防止積層体と基材とからなる反射防止フィルムであって、前記反射防止積層体の最外層は、有機ケイ素化合物からなるシリカ層であり、当該最外層の内側には、炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されていることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0010】
本発明の反射防止フィルムは、その反射防止積層体の最外層、つまり当該反射防止積層体において基材と反対側に設けられている層には、有機ケイ素化合物からなるシリカ層を用いている。このように最外層を有機ケイ素化合物からなるシリカ層とすることにより、当該シリカ層は、これを構成するケイ素原子(Si)と酸素原子(O)に加え、メチル基(−CH3)等の有機物との結合も有する構造となるため、当該シリカ層の屈折率を低くすることができる。
【0011】
そして、さらに本発明の反射防止フィルムは、前記最外層の内側、つまり反射防止積層体中において、基材と上記最外層との間に設けられている層には、炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されている。このように炭素を含有するシリカ層は、反射防止積層体の最外層として用いられる有機ケイ素化合物と比較して、屈折率を大きくすることができるため、前記最外層の内側の層として、つまり、前記最外層を低屈折率層とした場合において、当該炭素が含有するシリカ層を中屈折率層、または高屈折率層として好適に用いることができるからである。そして、当該シリカ層を中屈折率層または高屈折率層として用いることにより、前述の最外層を含め、反射防止積層体を形成する層の全てをシリカ層により形成することも可能となり、これにより反射防止積層体全体としての透明性や層同士の密着性を向上せしめることの可能である。
【0012】
さらに、前記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、前記有機ケイ素化合物からなるシリカ層の屈折率が、1.40〜1.46(λ=550nm)であり、その組成がSiOxCy:H(x=1.6〜1.9、y=0.2〜1.0)であることが好ましい。
【0013】
シリカ層の屈折率を上記範囲内の値とすることにより、光学特性に優れ、反射防止フィルムにおける反射防止積層体の最外層として好適に利用することが可能となり、さらに、当該シリカ層をSiOxCy:H(x=1.6〜1.9、y=0.2〜1.0)たる組成を有する有機ケイ素化合物から構成することにより、当該シリカ層は、これを構成するケイ素原子(Si)と酸素原子(O)に加え、メチル基(−CH3)等の有機物との結合も有する構造となるため、当該シリカ層の屈折率を低くすることができるからである。
【0014】
従来のシリカ層においては、屈折率を低下させるためには、シリカ層の密度を小さくするために当該層内に空隙を設ける必要があったため、長期間にわたり使用したり、高温高湿度条件下で使用した場合には、層内の空隙に水分子が入り込むことがあり、その結果、屈折率に変化を生じることがあった。しかしながら、本発明のシリカ層においては、有機ケイ素化合物により層を構成することによって、層の組成により屈折率を低下させることができるため、層内に空隙を設ける必要がなく、したがって長期間の使用や、高温高湿度条件下での使用にあっても屈折率に変化を生じることはない。
【0015】
また、前記請求項1または請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、前記炭素を含有するシリカ層の屈折率が、1.55以上2.50以下(λ=550nm)であって、その組成がSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)であり、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることが好ましい。
【0016】
炭素を含有するシリカ層の屈折率を1.55以上2.50以下(λ=550nm)とすることにより、当該シリカ層を屈折率の異なる複数の薄層を積層してなる反射防止積層体を有する反射防止フィルムにおいて、当該反射防止積層体中の中屈折率層または高屈折率層として用いることが可能であり、さらに、層の組成をSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)とすることにより所望の屈折率とすることができるため、一般的に反射防止フィルムの最外層として用いられることが多いシリカ層と同じ酸化ケイ素(SiOx)を原料とすることができる。これにより、反射防止積層体を形成する際の歩留まりを向上することができ、またコストダウンを図ることも可能となる。また、本発明のシリカ層は、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であるため、層の透明度も充分であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される各種ディスプレイにおいて用いられる反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中においても好適に用いることが可能である。
【0017】
前記請求項1乃至請求項3のいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、前記炭素を含有するシリカ層有におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合が1%以下であることが好ましい。
【0018】
従来、中屈折率層や高屈折率層としてのシリカ層を形成するために、SiOXのXの値を小さくして屈折率を調整した場合には、層中のSi−Si結合が増加し、その結果、当該シリカ層の可視光域での光吸収が徐々に増加してしまい、透過率が減少したり、透過色が変化したりする場合があった。しかしながら、シリカ層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合を1%以下とすることにより、層中にはSi−Si結合がほとんど存在していないと考えられ、したがってSi−Si結合の光吸収の影響を受けることがない。その結果、消衰係数を0.018(λ=550nm)以下とすることができる。
【0019】
前記請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項5に記載するように、前記反射防止積層体の層構成が、基材側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層であるか、または基材側から高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層であり、高屈折率層および中屈折率層としては、炭素を含有するシリカ層が用いられ、低屈折率層としては、有機ケイ素化合物を用いていることが好ましい。
【0020】
反射防止積層体の層構成を上記構成とし、それぞれの層として炭素を含有するシリカ層および有機ケイ素化合物を用いることにより、反射防止積層体全体として効率よく反射防止機能を発揮することができるからである。
【0021】
さらに、前記請求項1乃至請求項5のいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項6に記載するように、前記反射防止積層体が、プラズマCVD法により形成されたものであることが好ましい。
【0022】
本発明のシリカ層を形成する際にプラズマCVDを用いることにより、反射防止積層体を形成するそれぞれの層を、一括して効率よく形成することができるからである。
また、請求項7に記載するように、前記基材と前記反射防止積層体との間にハードコート層が設けられていることが好ましく、請求項8に記載するように、前記反射防止積層体において、基材側とは反対側の表面には防汚層が設けられていることが好ましい。
また、請求項9において、前記請求項1乃至請求項8のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とするディスプレイ装置を提供し、請求項10において、前記請求項1乃至請求項8のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とする液晶ディスプレイ装置を提供する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、反射防止積層体中に、有機ケイ素化合物からなるシリカ層、および炭素を含有するシリカ層を用いた本発明の反射防止フィルムについて具体的に説明する。
【0024】
図1は、本発明の反射防止フィルムの概略断面図の一例を示したものである。図1に示すように、本発明の反射防止フィルム1は、基材2と、反射防止積層体3とにより構成されており、当該反射防止フィルム1の用途等に応じて、前記基材2と反射防止積層体3との間にハードコート層を設けたり、反射防止積層体の上に防汚層8等を設けたりすることが可能である。
【0025】
以下に本発明の反射防止フィルム1の各構成について詳しく説明する。
【0026】
[1]反射防止積層体
図1に示すように、本発明の反射防止フィルム1における反射防止積層体3は、その最外層に有機ケイ素化合物からなるシリカ層4を有しており、かつ当該最外層の内側には、炭素を含有するシリカ層(図1においては、符号5および6)が少なくとも一層形成されていることを特徴とするものである。ここで、反射防止積層体3の最外層とは、いわゆる光学層(反射防止を目的として形成されている層)からなる反射防止積層体中において最も外側に位置する層、つまり基材2と反対側に位置する層のことをいい、当該反射防止積層体には、光学層以外の層、例えばハードコート層7や防汚層8は含まれない。
【0027】
反射防止フィルムにおける反射防止積層体の最外層を有機ケイ素化合物からなるシリカ層とすることにより、当該層の屈折率を小さくすることができる。また当該最外層の内側に、炭素を含有するシリカ層を形成することにより、反射防止積層体中における中屈折率層、または高屈折率層として好適に用いることができる。
【0028】
(1)有機ケイ素化合物からなるシリカ層
本発明の反射防止フィルム1の反射防止積層体3においては、上記のように有機ケイ素化合物からなるシリカ層が最外層4として用いられている。そして、具体的には、当該最外層4は以下に列記する特徴を有していることが好ましい。
【0029】
ア.屈折率が1.40〜1.46であり、層の組成がSixCy:H(x=1.6〜1.9、y=0.2〜1.0)である。
イ.C−Hストレッチング振動の赤外線吸収が0.1〜1cm-1であり、O−Hストレッチング振動の赤外線吸収が1〜30cm-1である。
ウ.耐湿熱試験後の屈折率の変化が0.01以下である。
【0030】
以上ア〜ウの特徴について具体的に説明する。
【0031】
上記アの特徴について
当該シリカ層4は、基材2と、反射防止積層体3とを有する反射防止フィルム1において、前記反射防止積層体3の最外層として用いられる層であるため、その屈折率は小さいほどよく、当該範囲内の屈折率であれば、当該シリカ層4を反射防止積層体3の最外層として好適に用いることができるからである。
【0032】
また、当該シリカ層4は、SiOxCy:H(x=1.6〜1.9、y=0.2〜1.0)なる組成を有する有機ケイ素化合物により形成されていることが好ましい。
【0033】
ここで、上記のように、当該シリカ層4中の酸素原子(O)の数xは1.6〜1.9であることが好ましい。これは、酸素原子の数が1.6より少なくなると、当該シリカ層4の屈折率が大きくなり、反射防止フィルム1における反射防止積層体3の最外層として好適に用いることができなくなるからである。一方、酸素原子の数xを1.9より多くすることは、ケイ素原子の構造上不可能である。したがって、酸素原子(O)の数xは1.6〜1.9であることが好ましい。
【0034】
また、当該シリカ層4中の炭素原子(C)の数yは0.2〜1.0であることが好ましい。これは、炭素原子の数が0.2より少ないと、当該シリカ層4の組成のみで屈折率を低くすることが不可能となり、反射防止積層体3の最外層として使用することができる屈折率とするためには、シリカ層中に空隙を設ける必要性が生じてしまい、そうすると、高温高湿度条件下等で使用した場合には屈折率に変化を生じてしまう(高屈折率になってしまう。)こととなり安定した反射防止フィルムを提供することができないからである。一方、炭素原子の数yを1.0より多くすると、当該シリカ層4全体が脆くなり、層の形成自体が不可能となるからである。
【0035】
このように、屈折率を1.40〜1.46とし、かつその組成がSiOxCy:H(x=1.6〜1.9、y=0.2〜1.0)である有機ケイ素化合物からなるシリカ層4を最外層とすることにより、当該シリカ層4は、低屈折率であるため反射防止フィルム1における反射防止積層体の最外層として好適に用いることができる。
【0036】
そして、さらに、当該シリカ層4を構成する酸化ケイ素(SiOx)、つまりケイ素原子(Si)と酸素原子(O)に加え、有機物(炭素(C)と水素(H))が結合されているため、当該シリカ層4に空隙を設けなくても低屈折率とすることができ、したがって、当該シリカ層4は、長期間にわたり使用したり高温多湿条件下で使用した場合であっても、当該シリカ層4の屈折率が変化することがないといった特徴をも有している。
【0037】
上記イの特徴について
当該シリカ層4においては、C−Hストレッチング振動の赤外線吸収が0.1〜1cm-1であり、O−Hストレッチング振動の赤外線吸収が1〜30cm-1であることが好ましい。
【0038】
上述したように、当該シリカ層4は、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)に加え、有機物(炭素(C)と水素(H))が結合されている構造となっていることが好ましい。本発明においては、前記結合されている有機物の構造を限定するものではなく、当該シリカ層4の屈折率が1.40〜1.46の範囲内であり、層の組成が前記の範囲内であればいかなる構造を有する有機物であってもよい。
【0039】
しかしながら、シリカ層の組成が前記▲1▼の範囲内にあるシリカ層の中でも特に、シリカ層内のC−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収が0.1〜1cm-1であり、O−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収が1〜30cm-1であることが好まく、さらには、C−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収が0.3〜1cm-1であり、O−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収が3〜15cm-1であることが好ましい。
【0040】
ここで、上記赤外線の吸収は、公知のIRスペクトル透過法により測定したものであり、各ストレッチング振動の赤外線吸収における∫(α/f)dfの値を算出したものである(α:吸収係数、f:周波数)。そして、C−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収は、波長2800〜3100cm-1の吸収スペクトルから、O−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収については、波長3000〜3800cm-1の吸収スペクトルから吸光度を用いて算出したものである。
【0041】
シリカ層内のC−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収、及びO−H結合のストレッチング振動の赤外線吸収がそれぞれ上記範囲内である当該シリカ層4は、有機ケイ素化合物からなることが明らかであり、低屈折率で、かつ耐湿熱性を有するシリカ層ということができ、本発明の反射防止フィルム1における反射防止積層体3の最外層として好適に用いることができるからである。
【0042】
上記ウの特徴について
また、当該シリカ層4においては、耐湿熱試験後の屈折率の変化が0.01以下であることが好ましい。
【0043】
ここで、耐湿熱試験とは、環境試験機内で80℃、相対湿度90%の条件に1000時間保存することにより行われる試験のことである。
【0044】
当該シリカ層4においては、上述してきたような構成を有し、当該耐湿熱試験前の屈折率と試験後の屈折率とを比較した場合にその変化が0.01以下であるため、充分に実施に耐えうるシリカ層であるということができる。
【0045】
(2)炭素を含有するシリカ層
本発明の反射防止フィルム1の反射防止積層体3においては、上記のように有機ケイ素化合物からなるシリカ層が最外層4として用いられ、かつ、その内側には炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されていることに特徴有しており、具体的には、当該炭素を含有するシリカ層5、6は、屈折率が1.55〜2.50(λ=550nm)であり、層の組成がSiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)であり、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることが好ましい。
【0046】
これは、当該シリカ層5、6は、反射防止フィルム1を構成する反射防止積層体3中の一層として、より具体的には中屈折率層または高屈折率層として利用されるものであり、そのためには、当該シリカ層5,6の屈折率は上記の範囲であることが好ましいからである。
【0047】
また、当該シリカ層5、6は、SiOxCy(x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)なる組成、つまり、単なる酸化ケイ素(SiOx)による層ではなく、炭素(C)を含有するシリカ層で形成されていることが好ましい。このように、炭素を含有することにより、当該シリカ層5、6を所望の屈折率とすることができるからである。
【0048】
ここで、当該シリカ層5、6中の酸素原子(O)の数xは0.5〜1.7であることが好ましい。これは、酸素原子の数が0.5より少なくなると、それだけケイ素原子(Si)とケイ素原子(Si)とが結合する割合、つまりSi−Si結合の割合が増加することになり、消衰係数が増加し、その結果、当該シリカ層5、6の透明度が低下してしまい、反射防止フィルム1の反射防止積層体3中の一層として好適に用いることができなくなるからである。一方、酸素原子の数xを1.7より多くすると、単なるシリカ層(SiO2)と同様の屈折率(1.46〜1.55)になってしまい、反射防止フィルム1の反射防止積層体3を構成する中屈折率または高屈折率層として好適に用いることができないからである。
【0049】
また、当該シリカ層5、6中の炭素原子(C)の数yは0.2〜2.0であることが好ましい。これは、炭素原子の数が0.2より少ないと単なるシリカ層(SiO2)と同様の屈折率(1.46〜1.55)となってしまい、反射防止フィルム1の反射防止積層体3中の一層として好適に用いることができなくなるからである。また一方、炭素原子の数yを2.0より多くすると、当該シリカ層5、6の透明度が低下してしまい、反射防止フィルム1の反射防止積層体3中の一層として好適に用いることができなくなると同時にシリカ層の内部応力が増加して、層へのクラック発生や、層剥がれなどが発生しやすくなるからである。
【0050】
ここで、当該シリカ層5、6においては、上記炭素原子の数(C)yは0.2〜1.0であることが特に好ましい。
【0051】
さらに当該シリカ層5、6においては、その消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることが好ましい。当該炭素を含有するシリカ層5、6は、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であるため、層の透明度も充分であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される各種ディスプレイにおいて用いられる反射防止フィルム1を構成する反射防止積層体3中においても好適に用いることが可能だからである。
【0052】
ここで上記消衰係数とは、層の各波長における吸収割合を示す数値であり、屈折率の虚数部分にあたる。具体的には、分光器で測定した透過、反射スペクトルにCaughyの式を適用することにより算出できる。また、光学異方性のない基材(例えば、ケイ素、ポリカーボネート、ガラス等)上へ作製した薄層を、エリプソメトリ(偏光解析法)を用いる方式でも算出することができる。
【0053】
また、当該炭素を含有するシリカ層にあっては、その屈折率が1.55以上1.80未満(λ=550nm)であって、層の組成をSiOaCb(a=0.7〜1.7、b=0.2〜1.4)とすることができ、a=1.0〜1.7、b=0.2〜1.0とすることが特に好ましい。このような屈折率および組成とすることにより、反射防止フィルム1を構成する反射防止積層体3中の中屈折率層6として好適に用いることができるからである。
【0054】
さらに、当該炭素を含有するシリカ層にあっては、その屈折率が1.80以上2.50以下(λ=550nm)であって、層の組成をSiOdCe(d=0.5〜0.9、e=1.0〜2.0)とすることもでき、d=0.5〜1.2、e=0.2〜1.0とすることもできる。この場合には、反射防止フィルム1を構成する反射防止積層体3中の高屈折率層5として好適に用いることができるからである。
【0055】
ここで、前記中屈折率層6および高屈折率層5とは、反射防止積層体3を構成する薄層をそれぞれの屈折率により相対的に比較した場合において、それぞれの薄層を区別するための名称であり、比較的屈折率の高い層を高屈折率層、比較的屈折率の低い層を低屈折率層とし、前記高屈折率層と低屈折率層の中間の屈折率を有する層を中屈折率層としている。一般的には、屈折率が1.80以上を高屈折率層、1.55以上1.80未満を中屈折率層、1.55未満を低屈折率層とする場合が多い。
【0056】
さらに、高屈折率層5や中屈折率層6として用いられる炭素を含有するシリカ層にあっては、当該層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合が1%以下であることが好ましい。シリカ層中のSi−Si結合は可視光領域で光を吸収するので、この結合が層中に多く存在していると、当該層の透過率が低下したり、透過色の変化が生じる場合があるからである。ここで、当該層中におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合とは、つまりSi−Si結合とSi−O結合とSi−C結合を全体とした場合のSi−Si結合の占める割合のことである。
【0057】
本発明におけるシリカ層中のSi−Si結合の割合は、光電子分光測定における波形分離に基づくものである。具体的には、高分子分光測定装置(VG Scientific製:ESCALAB 220i-XL)を用い、以下の条件でSiの2pスペクトルを測定した際の割合である。なお、測定は、Arイオンにより約数nmをエッチング後に行い、結合エネルギーの補正は、C−C結合の1sピークを284.6eVとして補正した。また、波形分離にあっては、各結合の結合エネルギーを、Si−Oは103.5eV、Si−Siは99.0eV、Si−Cは100.5eVとして分離した。
【0058】
(測定条件)
X線源:単色化Al Kα線
X線出力:10KV,20mA
測定領域:0.7mmφ
光電子脱出深度:90度
【0059】
(3)反射防止積層体の層構成について
上述してきたように、本発明の反射防止フィルムにおける反射防止積層体の層構成については、その最外層が有機ケイ素化合物からなるシリカ層であり、その内側には、炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されているものであればよく、特に限定するものではなく、反射防止積層体全体として、反射防止効果を奏するように自由に積層することが可能である。
【0060】
中でも、本発明における反射防止積層体の層構成としては、図1に示すように、最外層には、有機ケイ素化合物からなるシリカ層4を低屈折率層として用い、その直下の層(基材方向に隣接する層)には、上述してきた炭素を含有するシリカ層5を高屈折率層として用い、さらに前記高屈折率層の直下の層にも、炭素を含有するシリカ層6を中屈折率層として用いる構成が好ましい。
【0061】
また、反射防止積層体の層構成としては、図2に示すように、最外層には、有機ケイ素化合物からなるシリカ層4を低屈折率層として用い、その直下の層(基材方向に隣接する層)には、上述してきた炭素を含有するシリカ層5を高屈折率層として用い、前記高屈折率層の直下の層には、前記有機ケイ素化合物からなるシリカ層4を用い、さらにその直下の層には、前記炭素を含有するシリカ層5を高屈折率層として用いる構成とすることも好ましい。
【0062】
反射防止積層体3の層構成を上述のようにすることにより、効率よく反射防止をすることができるとともに、反射防止積層体を構成する各層は、全てシリカ層とすることができるため、各層間の密着性を向上することができるからである。
【0063】
ここで、前記低屈折率層として用いられる有機ケイ素化合物からなるシリカ層4の厚さについては、本発明の反射防止フィルムにおいては特に限定されるものではなく、反射防止の効果を奏する程度の厚さであれば特に限定されるものではないが、好ましくは10〜1000nm、特に、50〜150nmの範囲内が好ましい。上記範囲より層厚が薄い場合には、反射防止効果を奏しない場合があるためであり、また、上記範囲より厚い場合には、層全体がもろくなってしまい成形性に欠ける場合があるからである。
【0064】
また、前記高屈折率層として用いられる炭素を含有するシリカ層5の厚さについても、特に限定されるものではなく、反射防止効果を奏することができればいかなる厚さでもよいが、0.005〜0.3μmが特に好ましく、0.01〜0.15μmがさらに好ましい。層の厚さが0.005μmより薄いと、反射防止効果をほとんど期待できないからであり、逆に層の厚さが0.3μmより厚いと、層の応力による基材変形や層剥れを発生するからである。
【0065】
また、前記中屈折率層として用いられる炭素を含有するシリカ層6の厚さについても、上述した高屈折率層と同様の理由により、0.005〜0.3μmが特に好ましく、0.01〜0.15μmがさらに好ましい。
【0066】
ここで、本発明の反射防止フィルムにおける反射防止積層体においては、最外層が有機ケイ素化合物からなり、その内側に炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されていればよく、当該構成を有するものであれば、反射防止積層体全体をシリカ層で形成する必要はなく、たとえば、上記高屈折率層としては、酸化チタン層を用いることも可能であり、さらに中屈折率層としては、例えば、Al2O3、SiN、SiONや、ZrO2、SiO2、ZnO2の微粒子を有機ケイ素化合物等に分散したもの等を用いることも可能である。また、中屈折率層6は必ずしも一層である必要はなく複数の異なった層を積層して全体として上記の屈折率となるような層構成とすることにより当該層を中屈折率層とすることも可能である。
【0067】
[2]基材
次に基材2について説明する。本発明の反射防止フィルム1において、基材2は、前記の反射防止積層体3と反対側に位置するものであり、当該反射防止フィルム1の土台となる部分である。基材2は、可視光域で透明な高分子フィルムであれば特に限定されるものではない。
【0068】
前記高分子フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、トリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、アクリロニトリルフィルム、メタクリロニトリルフィルム等が挙げられる。さらには、無色のフィルムがより好ましく使用できる。中でも、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムが透明性、耐熱性に優れていることから好適に用いられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。また、光学異方性のない点でトリアセチルセルロースも好適に用いられる。高分子フィルムの厚みは、通常は6μm〜188μm程度のものが好適に用いられる。
【0069】
[3]ハードコート層
さらに、本発明の反射防止フィルム1においては、前述してきた反射防止積層体3、および基材2に加えて、ハードコート層7を設けることも可能である。
【0070】
本発明に用いられるハードコート層7は、反射防止フィルム1に強度を持たせることを目的として形成される層である。従って、反射防止フィルム1の用途によっては必ずしも必要なものではない。
【0071】
ハードコート層7を形成するための材料としては、同様に可視光域で透明な材料であり反射防止フィルムに強度をもたせることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばUV硬化型アクリル系ハードコートや熱硬化型シリコーン系ハードコート等を用いることができる。また、当該ハードコート層の肉厚は、通常1〜30μmの範囲内であり、このようなハードコート層7の製造方法は、通常のコーティング方法を用いることも可能であり、特に限定されるものではない。
【0072】
また、ハードコート層7を設ける位置であるが、ハードコートを設ける目的は、反射防止フィルム1に強度を持たせることであり、反射防止機能を向上せしめるためのものではないため、最外層の有機ケイ素化合物からなるシリカ層4から離れた位置に設置することが好ましく基材2のすぐ上に設置することが好ましい。
【0073】
[4]その他の層
本発明の反射防止フィルム1においては、前述してきた反射防止積層体3、基材2、ハードコート層7の他にも、当該反射防止フィルムの用途等に応じて任意に他の層を積層することが可能である。
【0074】
例えば、当該反射防止フィルムをコンピュータなどのディスプレイに用いる場合においては、当該ディスプレイ表面が汚れることを防止するために防汚層8を設けることも可能である。当該防汚層8としては、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物、アルキル基含有有機ケイ素化合物等を挙げることができる。
【0075】
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。
【0076】
本発明においては、上述してきたような反射防止積層体を形成することが可能であれば、その製造方法について特に限定するものではなく、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、熱CVD法、あるいは、ゾルゲル法等によるウェットコーティングなどの方法を用いることができる。
【0077】
上記製造方法の中でも、本発明のシリカ層及び反射防止フィルムを製造する際には、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
【0078】
ここで、プラズマCVD法とは、所定のガスが導入された反応室内でプラズマ生成することにより原子または分子ラジカル種が生成されて固体表面に付着し、多くの場合、表面反応によってさらに揮発性分子を放出して固体表面に取り込まれる現象を利用した成層方法である。プラズマCVD法を用いて本発明の反射防止フィルムを形成することにより、複数の層を一括して効率よく形成することができる。また、当該プラズマCVD法には、プラズマを発生するために用いる電力の印加方法の違いにより、容量結合型プラズマCVD法と、誘導結合型のプラズマCVD法の2種類があるが、本発明においてはどちらのプラズマCVD法を用いることも可能である。
【0079】
ここで、本発明においては上記のようなプラズマCVD法の中でも、図3に示すようなプラズマCVD装置を用いることが特に好ましい。当該プラズマCVD装置により本発明の反射防止フィルムを連続的に製造でき、かつ基材となる高分子フィルムの温度制御も正確に行うことができるからである。
【0080】
図3に示すプラズマCVD装置30は、容量結合型のプラズマCVD装置であり、ウエッブ状の高分子フィルム31は基材巻き出し部32より巻きだされて、真空容器33中の反応室(a,b,c)に導入される。そして、当該反応室内の成層用ドラム34上で所定の層が形成され、基材巻き取り部36により巻き取られる。
【0081】
当該プラズマCVD装置30は、複数(3つ)の反応室を有している点に特徴を有し、夫々の反応室(a,b,c)は隔離壁35で隔離されることで形成されている。ここで、以下の説明の便宜上、当該3つの反応室を右側から反応室a、反応室b、反応室cとする。そして、各反応室には、夫々電極版a1、b1、c1及び原料ガス導入口a2、b2、c2が設置されている。各反応室(a,b,c)は、成層用ドラム34の外周に沿って設置されている。これは、反射防止積層体が形成される高分子フィルムは、成層用ドラム34と同期しながら反応室内に挿入され、かつ成層用ドラム上において反射防止積層体を形成するものであることから、このように配置することにより連続して各層を積層することができるからである。
【0082】
上述したようなプラズマCVD装置によれば、各反応室へ導入する原料ガスを変化させることにより、夫々の反応室内で独立して層を形成することが可能である。
【0083】
例えば、図1に示す反射防止フィルム1においては、まず、基材として例えばPETフィルム2上にハードコート層7を従来からのウェットコーティングにより形成して、その後、炭素を含有するシリカ層からなる中屈折率層6、および高屈折率層5、さらに最外層として用いられる有機ケイ素化合物からなるシリカ層4を当該プラズマCVD装置30により形成することができる。つまり、反応室a、b、cには、それぞれの層の原料となるケイ素を含むガスを導入することにより、高分子フィルム31が成層用ドラム34を経て基材巻き取り部36へ巻き取られるまでに当該高分子フィルム31上に中屈折率層、高屈折率層及び最外層としてのシリカ層(低屈折率層)とが形成された反射防止フィルム1を形成することが可能となる。
【0084】
本発明の反射防止フィルム1を上記図3に示すプラズマCVD装置で製造する場合において、反射防止積層体3を構成するそれぞれのシリカ層(低屈折率層、有屈折率層、高屈折率層)を形成するための原料としては、有機シリコーンが好ましく、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、テトラメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラエトキシシラン等である。
【0085】
なお、本発明は、上述してきた反射防止フィルム及びその製造方法に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的範囲と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
また、本発明の反射防止フィルムはディスプレイ装置、例えば、液晶ディスプレイ装置に好適に用いることが可能である。
【0086】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0087】
(実施例)
本発明の実施例として図3の装置を使用して、図1に示す反射防止フィルム1を形成した。この際、反応室aにおいては、中屈折率層としての炭素を含有するシリカ層6を形成し、反応室bにおいては、高屈折率層としての炭素を含有するシリカ層5を形成し、さらに反応室cにおいては、最外層としての有機ケイ素化合物からなるシリカ層を形成することにより、前記3つの層を同時に積層した。以下にそれぞれの反応室の条件を示す。
【0088】
(反応室a:中屈折率層の形成)
原料ガス :(CH3)3SiOSi(CH3)3とO2
原料ガスの流量 :1slm
O2ガスの流量 :0.2slm
Heガスの流量 :1slm
電力 :3kW
プラズマ生成手段 :13.56MHzのRF波
【0089】
(反応室b:高屈折率層の形成)
原料ガス :(CH3)3SiOSi(CH3)3とO2
原料ガスの流量 :1slm
O2ガスの流量 :0slm
Heガスの流量 :1slm
プラズマ生成手段 :13.56MHzのRF波
【0090】
(反応室c:最外層の形成)
原料ガス:(CH3)3SiOSi(CH3)3とO2
原料ガスの流量:1.0slm
O2ガスの流量:3.0slm
成層速度:0.25μm・m/min
プラズマ生成手段:13.56MHzのRF波
【0091】
また、基材2には、PETフィルム(商品名:ルミラーT60 東レ製)を用い、プラズマCVD装置により、反射防止積層体を積層する前にウェットコーティングによりハードコート層を積層した。
【0092】
(反射防止フィルムの特性)
上記条件により、図1に示す反射防止フィルム1を形成することができた。
【0093】
当該反射防止フィルム1における反射防止積層体3の最外層としての有機ケイ素化合物からなるシリカ層4(上記反応室cで積層)の特性は以下のようであった。
【0094】
屈折率:1.43
組成:SiO1.6C0.5:H
C−Hストレッチング振動の赤外線吸収:0.7cm-1
O−Hストレッチング振動の赤外線吸収:5.2cm-1
【0095】
なお、上記の組成分析には光電子分光分析装置を用い、赤外線吸収の測定には赤外吸収分光分析装置を用い、光学特性測定には紫外可視分光分析装置とエリプソメーターを用いた。
【0096】
また、当該反射防止フィルム1を、環境試験機を用いて、80℃、相対湿度90%の条件下に1000時間保存した(耐湿熱試験)後、再度前記有機ケイ素化合物からなるシリカ層4の屈折率を測定した。その結果を以下に示す。
耐湿熱試験後の屈折率:1.43
【0097】
上記より、本発明の反射防止フィルム1における反射防止積層体3の最外層である有機ケイ素化合物からなるシリカ層4は、屈折率が小さく最外層として好適であり、かつ耐湿熱性をも有していることが明らかとなった。
【0098】
また、反射防止フィルム1の反射防止積層体3における中屈折率層としての炭素を含有するシリカ層6(上記反応室aで積層)の特性は以下のようであった。
屈折率:1.76(λ=550nm)
組成:SiO0.9C1.2H
消衰係数:0.0042(λ=550nm)
【0099】
なお、上記の組成分析には光電子分光分析装置を用い、シリカ層中の結合状態の把握に赤外吸収分光分析装置を用い、光学特性測定には紫外可視分光分析装置とエリプソメーターを用いた。
【0100】
上記の結果より、当該実施例で形成した炭素を含有するシリカ層6は、その屈折率が反射防止フィルムにおける反射防止積層体の中屈折率層として好適に用いることができるとともに、消衰係数も小さため透明性に優れていることが明らかとなった。
【0101】
さらに、反射防止フィルム1の反射防止積層体3における高屈折率層としての炭素を含有するシリカ層5(上記反応室aで積層)の特性は以下のようであった。
【0102】
屈折率:2.10(λ=550nm)
組成:SiO0.7C1.5H
消衰係数:0.0008(λ=550nm)
【0103】
なお、上記の組成分析には光電子分光分析装置を用い、シリカ層中の結合状態の把握に赤外吸収分光分析装置を用い、光学特性測定には紫外可視分光分析装置とエリプソメーターを用いた。
【0104】
上記の結果より、前記中屈折率層としてのシリカ層6と同様に、当該実施例で形成した炭素を含有するシリカ層5は、その屈折率が反射防止フィルムにおける反射防止積層体の高屈折率層として好適に用いることができるとともに、消衰係数も小さため透明性に優れていることが明らかとなった。
【0105】
また、上記実施例のように反射防止フィルム1における反射防止積層体3を構成するそれぞれの層を全てシリカ層とすることにより反射防止効果を奏し、かつ透明性があり、それぞれの層同士の密着性のよい反射防止フィルムを得ることができた。
【0106】
【発明の効果】
本発明の反射防止フィルムにおける反射防止積層体においては、その最外層として有機ケイ素化合物からなるシリカ層を用い、かつ当該最外層の内側には、炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されているため、最外層にあっては、これを構成するケイ素原子(Si)と酸素原子(O)に加え、メチル基(−CH3)等の有機物も結合している構造となるため、層内に空隙を設けることなく低屈折率とすることができる。また、本発明のシリカ層は、上記のように層内に空隙がないため、耐湿熱性にも優れている。
【0107】
さらに、前記反射防止積層体を形成する炭素を含有するシリカ層は、その屈折率が1.55以上2.50以下(λ=550nm)とすることにより、いわゆる中屈折率層または高屈折率層として用いることが可能であり、さらに、前記最外層として用いられているシリカ層と同じ酸化ケイ素(SiOx)を原料としているため、反射防止積層体を形成する際の歩留まりを向上することができ、またコストダウンを図ることも可能となるだけでなく、反射防止積層体を形成するそれぞれの層の密着度を向上することもできる。また、当該炭素を含有するシリカ層は、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であるため、層の透明度も充分であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に使用される各種ディスプレイにおいて用いられる反射防止フィルムを構成する反射防止積層体中においても好適に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の反射防止フィルムを製造するためのプラズマCVD装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1…反射防止フィルム
2…基材
3…反射防止積層体
4…有機ケイ素化合物からなるシリカ層(最外層)
5…炭素を含有するシリカ層(高屈折率層)
6…炭素を含有するシリカ層(中屈折率層)
7…ハードコート層
8…防汚層
30…プラズマCVD装置
Claims (8)
- 少なくとも、反射防止積層体と基材とからなる反射防止フィルムであって、
前記反射防止積層体の最外層は、有機ケイ素化合物からなるシリカ層であり、当該シリカ層の屈折率が、1.40〜1.46(λ=550nm)、その組成がSiO x C y :H(x=1.6〜1.9、y=0.2〜1.0)、かつ、
前記最外層の内側には、炭素を含有するシリカ層が少なくとも一層形成されており、当該シリカ層の屈折率が、1.55以上2.50以下(λ=550nm)、その組成がSiO x C y (x=0.5〜1.7、y=0.2〜2.0)、消衰係数が0.018(λ=550nm)以下であることを特徴とする反射防止フィルム。 - 前記炭素を含有するシリカ層有におけるケイ素原子(Si)の全結合に対するSi−Si結合の割合が1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
- 前記反射防止積層体の層構成が、基材側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層であるか、または基材側から高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層であり、高屈折率層および中屈折率層としては、炭素を含有するシリカ層が用いられ、低屈折率層としては、有機ケイ素化合物を用いていることを特徴とする前記請求項1又は請求項2に記載の反射防止フィルム。
- 前記反射防止積層体が、プラズマCVD法により形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
- 前記基材と前記反射防止積層体との間にハードコート層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
- 前記反射防止積層体において、基材側とは反対側の表面にはプラズマCVD法により形成された防汚層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
- 前記請求項1乃至請求項6のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とするディスプレイ装置。
- 前記請求項1乃至請求項6のいずれかの請求項に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
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