JP3722481B2 - ネジの抜き取り工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にプラスネジ(あるいは十字穴ネジともいわれる)の頭部の十字穴が崩れたネジを抜き取るための、ネジ抜き取り工具とこの工具によるプラスネジの抜き取り方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記したプラスネジはネジ頭部に十字穴を備え、プラスの歯先をもつプラスドライバーにて回転することによりねじ込まれる。プラスネジはマイナスネジに比べて頭部の穴形状がやや複雑で、ドライバーの歯先が係合する範囲が広くて崩れにくい。しかし、ネジ径が小さいものでは、プラスネジの場合でも頭部の十字穴の深さが浅いので、締め付ける際に穴が壊れることがある。
【0003】
こうした十字穴が崩れたネジを抜き取るには、プラスドライバーの先端部の歯の高さを変えて一直線状の2個の高い歯の部分が十字穴の一部に掛るようにし、また、十字穴が全て壊れている場合は一直線状の高い歯を叩き込むことにより、ネジを回すようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
その他、外径の比較的大きなボルトの頭部をスパナ等で回転しながらねじ込む際に、頭部が破損したり折損したりした場合に、ボルトを引き抜くための工具として、柄の一端に下穴を穿孔するためのドリル刃先を設けるとともに、他端に傾斜の緩やかなテーパー部に引き抜き用ボルトと螺旋方向を逆方向にした雄ネジ部を設けた構造のものが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、プラスネジの頭部の十字穴が崩れた場合に、このプラスネジを引き抜くための工具として、図3に示すように柄(工具本体)21の一端部を先尖に形成し、先端の先尖部23よりテーパー状に後部が大径となる左ネジの抜き取り用雄ネジ部22を形成した構造のネジ抜き用ビットが提案されている。そして、同ネジ抜き用ビットを用いて十字穴が壊れたネジのネジ抜きを行なう場合、プラスネジAの頭部の十字穴に専用ドリル31の細径のドリルビット32で下穴をあけ、前記左ネジの抜き取り用雄ネジ部22の先端23を下穴に喰い込ませて左方向に壊れたプラスネジAを回転させて抜き取る方法が合わせて提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特許第2588848号公報
【特許文献2】
特表平8−505819号公報
【特許文献3】
特開2001−260047号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した各公報に記載の従来の抜き取り工具では、つぎのような課題を残している。すなわち、
▲1▼ 特許文献1のプラスドライバーでは、十字穴が全て壊れている場合には叩き込まねばならないが、衝撃に弱い電気組立部品あるいはプラスチック素材や高級木材を用いたものでは打撃力を加えることができず使用できない。
【0008】
▲2▼ 特許文献2の工具は、抜き取る対象がボルトであって頭部が飛び散り比較的外径が太い場合に適用されるので、本願発明の抜き取り対象とする、ネジ部の外径が細くかつ先端に向けてテーパー状に尖ったプラスネジの抜き取りには不向きである。また同工具の雄ネジ部の先端は平坦で、基端に向けて漸次外径が太くなる緩やかなテーパー部になっているために、あらかじめ穿設した下穴にねじ込みにくく、また下穴の軸線と工具の雄ネジ部の軸線との方向が一致しないと、ボルトを破断するおそれもある。
【0009】
▲3▼ 特許文献3の工具は、プラスネジの抜き取り用であるが、雄ネジ部22の先端23がテーパー状に尖っているため、あらかじめ穿設した下穴の軸線方向と雄ネジ部の軸線方向とが一致しない場合には、雄ネジ部22の先端23が下穴からずれて食い込むので、先端部分が折損するおそれがある。つまり、プラスネジの場合は、ボルトを抜き取る場合とは異なり、ネジ部に比べて外径の大きな頭部が残存しており、頭部の十字穴が崩れてツルツル状態となっている。したがって下穴を穿つ位置が頭部の中心部からずれたり、下穴の中心軸線の方向がプラスネジの中心軸線の方向とずれたりすると、頭部に比べてネジ部の外径はかなり細くなっているから(図1を参照)、プラスネジのネジ部を破損して抜き取り不能の状態になる。またプラスネジのネジ部の部分は細くなっているうえに、とくに雄ネジ部の先端は先行してねじ込まれるため、下穴の中心軸線に一致するようにねじ込むのは、かなりの熟練を要する。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、強い衝撃を与えることなく十字穴が全て崩れている場合でも、熟練の有無に拘わらず容易にかつ確実に抜き取れ、また雄ネジ部の先端部分が折損しにくい、ネジの抜き取り工具を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明にかかるネジの抜き取り工具は、崩れたネジ頭部の中心部に、抜き取り工具の雄ネジ部の下記ガイド用ネジ部と同一口径若しくは僅かに口径の大きいストレート状下穴を穿設し、この穿設した下穴内にネジ抜き取り工具の雄ネジ部の先端部を押し当てて雄ネジ部の螺旋方向に回転し、前記下穴に前記抜き取り工具の雄ネジ部の先端部を喰い込ませたのち、さらに回転を継続し前記下穴よりも外径の大きくなったテーパー状大径部分を食い込ませることにより摩擦回転力で崩れたネジを回転させて抜き取るネジの抜き取り工具であって、
角柱状の工具本体の一端部を先端に向けて漸次外径が縮小するように先細のテーパー部に形成し、その先細のテーパー部の先端部分に抜き取ろうとするネジとは螺旋方向が逆向きの雄ネジ部を刻設するとともに、同雄ネジ部の先端部を所定長にわたり外径が同一のガイド用ネジ部に形成し、そのガイド用ネジ部の先端を平坦面にするか、または先端に向けやや突出する半球体部にするかしたことを特徴としている。
【0012】
上記のネジの抜き取り工具によれば、抜き取ろうとするプラスネジなどの頭部に前記雄ネジ部先端のガイド用ネジ部とほぼ同径のストレート状下穴をあらかじめ穿設しておき、その下穴に沿ってガイド用ネジ部を挿入する。プラスネジ側の下穴と抜き取り工具側のガイド用ネジ部はほぼ同一径であり、両者ともに ストレート形状(円形孔・円柱体)であるから、前記下穴にガイド用ネジ部が挿入された状態で下穴に沿って抜き取り工具を押し込めば、自然に下穴とネジ部の中心軸線が一致する。この状態で、通常、抜き取り工具は先端の雄ネジ部の螺旋方向に回転させているから、ガイド用ネジ部から基端側へ向けて外径が拡大したテーパー状ネジ部(大径部)がプラスネジの下穴の内周面にねじ込まれ、プラスネジは抜き取り工具と一体になって緩み方向に回転し、ねじ込まれた部材から頭部の十字穴が崩れたプラスネジなどが抜き出される。
【0013】
請求項2に記載のように、前記工具本体が六角柱形で、かつ抜け止め用環状溝を形成することができる。
【0014】
請求項2記載のネジの抜き取り工具によれば、一般的なチャックに対応するので、ほとんどの電動ドリルやインパクトドライバーなどに装着できて便利である。
【0015】
請求項3に記載のように、前記工具本体の他端部に、前記ガイド用ネジ部の外径とほぼ同一の口径をもつストレート状下穴を穿設可能なドリルビットを設けることが好ましい。
【0016】
請求項3記載のネジの抜き取り工具によれば、下穴穿設用の専用の工具が不要であり、1本で下穴を穿設し抜き取りでき、また雄ネジ部のガイド用ネジ部に適合したドリルビットを備えているので、下穴が小さかったり大きかったりすることがない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のネジの抜き取り工具にかかる実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1はネジの抜き取り工具の第1実施形態を示す正面図と下穴を穿設したプラスネジの一部を断面で表し、両者の関係を説明した図面である。図1に示すように、ネジの抜き取り工具1は、たとえば多用途に用いられているインパクトドライバーあるいは電動ドライバーのチャックに装着して使用可能な横断面六角柱形の工具本体2を備え、この工具本体2の基部寄りに直径方向の周囲に沿って断面U字形に窪ませた抜け止め用環状溝3が形成されている。
【0020】
工具本体2の一端部には、先端に向けて漸次外径が縮小するように先細のテーパー部4を形成している。この先細のテーパー部4の先端部分に、抜き取ろうとするプラスネジAとは螺旋方向が逆向き(左ネジ)の雄ネジ部5を刻設するとともに、同雄ネジ部5の先端部の所定長(Smm)にわたり外径を同一にしたガイド用ネジ部6を形成している。また、このガイド用ネジ部6の先端6aは図1のような平坦面にするか、後述する図2のような先端に向けやや突出する半球体部6bに形成する。これは、プラスネジAに穿設されるストレート状の下穴Bにガイド用ネジ部6が挿入された際に、下穴Bの中心軸線方向に対しガイド用ネジ部6の中心軸線の方向が一致していない場合に下穴Bの内側面に食い込むのを防止するためである。
【0021】
ガイド用ネジ部6の長さSは、通常1.0〜1.5mmにする。また、ネジ部6の基端からさらに基端方向に向けてテーパー状に拡径する雄ネジ部5のテーパー角αは、本実施形態では15°前後にしている。
【0022】
以上のような構成からなる本実施形態の抜き取り工具1について、その使用方法を図1に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すように、ある部材Cにねじ込まれたり、あるいはねじ込み途中のプラスネジAの頭部の、プラスドライバーの歯先を嵌合する十字穴が崩れたときに、プラスネジAを抜き取るには、プラスネジAの頭部の中心部にドリル(図示せず)により抜き取り工具1のガイド用ネジ部6とほぼ同口径のストレート穴Bを下穴として穿設する。つまり、ガイド用ネジ部6のネジ径と同一径のドリルで下穴を穿つことにより、ガイド用ネジ部6のネジ径(たとえば2mm)より僅かに大きな(たとえば口径2.1〜2.2mmmの)下穴Cが形成される。
【0024】
つぎに、抜き取り工具1を電動ドリルのチャック部に装着した状態で、左ネジ方向に回転させながら先端のガイド用ネジ部6を、プラスネジAの下穴B内に押し込むようにして挿入する。ガイド用ネジ部6と下穴Bとは互いに断面形状が共通で直線状に連続するから、ガイド用ネジ部6が下穴Bに沿って案内される。この結果、抜き取り工具1の雄ネジ部5とプラスネジAの下穴Bの中心軸線が一致する。したがって、そのまま抜き取り工具1を下穴B内に押し込めば、ガイド用ネジ部6の基端側に位置する雄ネジ部5のテーパー状ネジ部がプラスネジAの下穴B内にねじ込まれる。抜き取り工具1はプラスネジAと一体になり、プラスネジAに回転力が伝達され、プラスネジAは緩む方向に回転して部材Cから抜き出される。
【0025】
図2は本発明の抜き取り工具の第2実施形態を示す正面図である。同図に示すように、本実施形態の抜き取り工具11は、雄ネジ部5の先端に設けられるガイド用ネジ部6の長さを上記の第1実施形態に比べて短くしている。また、工具本体2の他方の端部側に、下穴Cを穿設するためのドリルビット7の取付部8を設け、この取付部8にドリルビット7を着脱可能に止めネジ9で固定している。工具本体2の雄ネジ部5側にも抜け止め用環状溝3を形成し、電動ドリル等に逆向けに抜き取り工具1を装着できるようにしている。さらに上記したとおり、ガイド用ネジ部6の先端をb半球形状に突出させている。このため、下穴Bへの挿入がよりスムーズに行える。なお、ドリルビット7はガイド用ネジ部6とほぼ同口径の下穴Bが穿設できるものを使用している。その他の構成については共通するので、共通する部材には同一の符号を用いて示し、説明を省略する。
【0026】
本実施形態にかかる抜き取り工具11は、下穴Bの穿設用工具が不要であり、1本で下穴Bを穿設し抜き取りできる。また、雄ネジ部5のガイド用ネジ部6に適合したドリルビット7を備えているので、下穴Bが小さかったり大きかったりすることがない。
【0027】
以上に本発明の2つの実施形態を示したが、たとえば工具本体2はかならずしも六角柱形に限定されるものではなく、使用する工具のチャックに適合した形状である四角柱、円柱にしてもよい。また、抜き取るネジの種類としては主にプラスネジを対象とするが、あらかじめ下穴を穿設して抜き取り作業を行うので、マイナスネジについても同様に抜き取ることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明にかかるネジの抜き取り工具には、次のような優れた効果がある。
【0029】
ネジの頭部の嵌合部が崩れたプラスネジ等を抜き取る場合に、あらかじめ下穴を穿設したうえで抜き取り工具により抜き取るから、強い衝撃を与えることなく十字穴等の嵌合部が全て崩れている場合でも、熟練の有無に拘わらず容易にかつ確実に抜き取ることができ、失敗がない。
【0030】
とくに本発明の抜き取り工具は、雄ネジ部の先端部分にガイド用ネジ部を設けて、下穴に沿ってスムーズに挿入できるようにしているから、位置ずれや挿入方向と下穴の中心軸線方向のずれが起こりにくく、従来の工具(特許文献3)と違って雄ネジ部の先端部分が折損することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるネジの抜き取り工具の第1実施形態を示す正面図と下穴を穿設したプラスネジの一部を断面で表し、両者の関係を説明した図面である。
【図2】本発明の抜き取り工具の第2実施形態を示す正面図である。
【図3】上記した従来(特許文献3)のネジの抜き取り工具の一部と下穴の穿孔用ドリルの一部をそれぞれ示す正面図および抜き取ろうとするプラスネジの平面図である。
【符号の説明】
1・11 抜き取り工具
2 工具本体
3 抜け止め用環状溝
4 テーパー部
5 雄ネジ部
6 ガイド用ネジ部
7 ドリルビット
8 取付部
9 止めネジ
A プラスネジ
B 下穴

Claims (3)

  1. 崩れたネジ頭部の中心部に、抜き取り工具の雄ネジ部の下記ガイド用ネジ部と同一口径若しくは僅かに口径の大きいストレート状下穴を穿設し、この穿設した下穴内にネジ抜き取り工具の雄ネジ部の先端部を押し当てて雄ネジ部の螺旋方向に回転し、前記下穴に前記抜き取り工具の雄ネジ部の先端部を喰い込ませたのち、さらに回転を継続し前記下穴よりも外径の大きくなったテーパー状大径部分を食い込ませることにより摩擦回転力で崩れたネジを回転させて抜き取るネジの抜き取り工具であって、
    角柱状の工具本体の一端部を先端に向けて漸次外径が縮小するように先細のテーパー部に形成し、
    その先細のテーパー部の先端部分に抜き取ろうとするネジとは螺旋方向が逆向きの雄ネジ部を刻設するとともに、同雄ネジ部の先端部を所定長にわたり外径が同一のガイド用ネジ部に形成し、そのガイド用ネジ部の先端を平坦面にするか、または先端に向けやや突出する半球体部にするかしたこと
    を特徴とするネジの抜き取り工具。
  2. 前記工具本体が六角柱形で、かつ抜け止め用環状溝を形成していること
    を特徴とする請求項1記載のネジの抜き取り工具。
  3. 前記工具本体の他端部に、前記ガイド用ネジ部の外径とほぼ同一の口径をもつストレート状下穴を穿設可能なドリルビットを設けたこと
    を特徴とする請求項1記載のネジの抜き取り工具。
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