JP3720804B2 - クリアランス制御方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、モータもしくはエンジンのファンブレードクリアランスを制御する装置および方法に関し、特に、モータもしくはエンジンのファンブレードクリアランスを制御するために、モータもしくはエンジン部品の熱膨張を特定する装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ターボ機械部品の径方向膨張に関する認識および制御は、ガスタービンエンジン、ポンプ、および圧縮機の設計者が要求するより高い効率や安定性のレベルを達成する上で、長年の障害となっている。この望ましくない状況の原因の一つは、信頼性があり、かつ正確で安価な径方向膨張測定センサがないことである。一方、径方向膨張は、ターボ機械で測定された種々のパラメータおよび別の方法で得られた種々のパラメータと膨張とを関連づけた数学的モデルを使用して計算することができる。このようなアルゴリズムを案出するために、これまで多くの試みがなされてきた。しかし、周知のアルゴリズムは、いずれも要求される定常状態および過渡時における正確さ、すなわちデジタル計算機で実行するのに適した高忠実度データおよび公式へと方程式を較正する能力を提供することができていない。
【0003】
タービンエンジンのファンブレードとケースとの間のクリアランス制御が不完全な場合には、クリアランスが大きすぎるか、またはクリアランスが小さすぎて過度な摩擦が生じることになる。いずれの場合でも、不完全なクリアランスは、(例えば、エンジン効率や推力などの)性能の損失、または(例えば、過剰な排気温度などの)エンジンの動作限界の超過、または圧縮機の安定性の低下などを招く。一般的には、ブレードおよびケースを損傷するおそれがある小さいクリアランスよりは、むしろ大きいクリアランスを選択してクリアランス制御装置が設計されている。例えばPW4000などのエンジンは、開ループクリアランス制御装置を使用しており、このような装置は、“完全な”クリアランス制御装置と比べて有効な性能が犠牲になる。例えばV2500などの他のエンジンは、閉ループ装置を使用しており、このような装置は、粗くモデリングしたクリアランスに依存するので、犠牲となる性能は少ないが、理想的なクリアランス制御には及ばない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さらに、先端部クリアランスの推定の正確さおよび信頼性が向上すれば、運転条件が急激に変化しやすい航空機の飛行区間でもクリアランス制御装置が動作可能となる。例えば、典型的なクリアランス能動制御装置は、急激に変化するエンジン運転条件のために先端部クリアランスを予測することが特に困難となる航空機の離陸時には一般に停止される。この方法は、離陸が航空機の飛行行程の比較的小さな部分を構成しており、かつエンジン安定性マージンが保守的に高く設けられている過去の例ではうまくいっていた。これに対し、例えばA318用途のために設計されたPW6000などの短距離航空機用に設計されたエンジンでは、離陸時における燃料の節約に関する重要度が増している。また、離陸時に能動クリアランス制御を実施する能力によって、そうでなければクリアランスの増加に従って減少してしまう排気温度マージンが高くなるとともに、クリアランスによる安定性低下の防止が補助される。従って、クリアランス制御の正確さをさらに改善し、これにより、全ての運転限界および圧縮機の安定性を維持するとともに、航空機の全飛行行程にわたって確実に摩擦のない運転を確保しながら、エンジン性能を改善することが求められている。
【0005】
閉ループ装置においてクリアランスのモデリングを行うときに最も困難なのは、比較的容易に計算できる機械的なひずみのモデリングではなく、エンジン部品の熱膨張のモデリングである。エンジン部品の物理的形状およびこれらの部品が受ける時間につれて変動する多くの影響(すなわち、スロットルの過渡現象、経時的に変化する異なる温度および流量を有する複数の流体流れなど)によって、熱伝達とエネルギ蓄積現象のモデリングが複雑になるからである。
【0006】
以上のことから、本発明の主な目的は、上述の難点を解決するクリアランス制御の装置および方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの形態では、ターボ機械において、ブレードと、ブレードの先端部に隣接かつ対向する壁と、の間のクリアランスを制御する方法は、所望のクリアランスと実際のクリアランスとの差に応じて壁に隣接する空気流を調整することを含む。適切なセンサがないために、リアルタイムで数学的モデルが実行されるエンジン搭載制御装置によって、実際のクリアランスの正確でかつ信頼性のある推定が行われる。上記モデルは、クリアランスの計算の一部として、熱力学の第一の法則の適用により得られた第一階微分方程式の閉じた式の解から導いた差分方程式によって、ターボ機械部品およびそのサブコンポーネントの熱膨張を計算する。部品は、所定の平均比熱と平均質量とを有する均一の材料から製造され、かつその体積全体を通して均一の温度を有するとみなされる。熱伝達現象は、部品境界面の全面積にわたって起こる既知のガスタービン流体流れとの有限な数の熱伝達プロセスの和としてモデリングされる。それぞれの熱伝達プロセスは、局部的な平均熱伝達係数、接触面積、および流体温度によって特徴づけられる。解は、階段状もしくは傾斜状の入力を仮定して、制御ソフトウェアの経過時間に対して定義され、等価時定数、定常状態膨張、および概算係数の組み合わせによって表される。定常状態膨張は、変化する温度、流量、および熱物理的特性を有する流体流れとの熱交換による膨張の重み付き平均値として計算される。重み付けは、局部的な流体流れの接触面積、局部的な熱伝達係数、部品の総質量、および部品の平均比熱の関数として初めに形成される性能パラメータによって達成される。続いて、これらの特性が特定の部品またはそのサブコンポーネントに関して定義を行うには実用的でないという認識に基づいて、性能パラメータは、測定もしくは合成された軸速度、圧力、および温度などのエンジン特性と関連づけられる。最後に、等価時定数の逆数が、同様の性能パラメータの和として計算される。
【0008】
本発明の第二の形態では、ターボ機械において、ブレードと、ブレードの先端部に隣接かつ対向する壁と、の間のクリアランスを制御する装置は、所望のクリアランスと実際のクリアランスとの差に応じて壁に隣接する空気流を調整することを含む。適切なセンサがないために、リアルタイムで数学的モデルが実行されるエンジン搭載制御装置によって、実際のクリアランスの正確でかつ信頼性のある推定が行われる。上記モデルは、クリアランスの計算の一部として、熱力学の第一の法則の適用により得られた第一階微分方程式の閉じた式の解から導いた差分方程式によって、ターボ機械部品の熱膨張を計算する。部品は、所定の平均比熱と平均質量とを有する均一の材料から製造され、かつその体積全体を通して均一の温度を有するとみなされる。熱伝達現象は、部品境界面の全面積にわたって起こる既知のガスタービン流体流れとの有限な数の熱伝達プロセスの和としてモデリングされる。それぞれの熱伝達プロセスは、局部的な平均熱伝達係数、接触面積、および流体温度によって特徴づけられる。解は、階段状もしくは傾斜状の入力を仮定して、制御ソフトウェアの経過時間に対して定義され、等価時定数、定常状態膨張、および概算係数の組み合わせによって表される。定常状態膨張は、変化する温度、流量、および熱物理的特性を有する流体流れとの熱交換による膨張の重み付き平均値として計算される。重み付けは、局部的な流体流れの接触面積、局部的な熱伝達係数、部品の総質量、および部品の平均比熱の関数として初めに形成される性能パラメータによって達成される。続いて、これらの特性が特定の部品に関して定義を行うには実用的でないという認識に基づいて、性能パラメータは、測定もしくは合成された軸速度、圧力、および温度などのエンジン特性と関連づけられる。最後に、等価時定数の逆数が、同様の性能パラメータの和として計算される。
【0009】
第3の形態では、ガスタービンエンジン装置は、ケースと、このケース内で回転可能なブレードを有するディスクと、を含むエンジンを有する。所望のクリアランスと実際のクリアランスとの差に応じて壁に隣接する空気流を調整するために、ターボ機械において、ブレードと、ブレードの先端部に隣接かつ対向する壁と、の間のクリアランスを制御する手段が提供されている。適切なセンサがないために、リアルタイムで数学的モデルが実行されるエンジン搭載制御装置によって、実際のクリアランスの正確でかつ信頼性のある推定が行われる。上記モデルは、クリアランスの計算の一部として、熱力学の第一の法則の適用により得られた第一階微分方程式の閉じた式の解から導いた差分方程式によって、ターボ機械部品の熱膨張を計算する。部品は、所定の平均比熱と平均質量とを有する均一の材料から製造され、かつその体積全体を通して均一の温度を有するとみなされる。熱伝達現象は、部品境界面の全面積にわたって起こる既知のガスタービン流体流れとの有限な数の熱伝達プロセスの和としてモデリングされる。それぞれの熱伝達プロセスは、局部的な平均熱伝達係数、接触面積、および流体温度によって特徴づけられる。解は、階段状もしくは傾斜状の入力を仮定して、制御ソフトウェアの経過時間に対して定義され、等価時定数、定常状態膨張、および概算係数の組み合わせによって表される。定常状態膨張は、変化する温度、流量、および熱物理的特性を有する流体流れとの熱交換による膨張の重み付き平均値として計算される。重み付けは、局部的な流体流れの接触面積、局部的な熱伝達係数、部品の総質量、および部品の平均比熱の関数として初めに形成される性能パラメータによって達成される。続いて、これらの特性が特定の部品に関して定義を行うには実用的でないという認識に基づいて、性能パラメータは、測定もしくは合成された軸速度、圧力、および温度などのエンジン特性と関連づけられる。最後に、等価時定数の逆数が、同様の性能パラメータの和として計算される。
【0010】
本発明の利点は、ターボ機械部品およびそのサブコンポーネントの熱膨張を正確かつ確実に特定することができ、これをタービンケースの冷却などで一般に使用される閉ループ能動クリアランス制御機構の必須要素であるターボ機械の実際のクリアランスの推定において使用することができる点である。
【0011】
本発明の第二の利点は、正確な数値技術、すなわち基準となる微分方程式の閉じた式の解を制御ソフトウェアの経過時間に対して適用して、熱膨張の一次動力学を実現していることである。
【0012】
第三の利点は、熱膨張の定常状態の特性および過渡時の特性の両方の計算について、複数の流体流れの影響が考慮されている点である。
【0013】
第四の利点は、一次動的要素の和として、有限次数の動力学を適用可能としていることである。よって、複雑な形状および熱伝達現象を有する部品のモデリングを行うために、部品を有限な数のサブコンポーネントに分割して、それぞれのサブコンポーネントを一次動的要素によってモデリングすることができる。
【0014】
第五の利点は、概算係数を使用していることであり、これにより高忠実度モデルとテストデータへの較正が可能となっているとともに、機械寿命にわたって変化しうるターボ機械ハードウェアの特定の組み合わせに対してモデルを定めることが容易になっている。
【0015】
第六の利点は、物理学に基づくモデルによって、機械の動作エンベロープ外の結果が感知される可能性が高まることである。
【0016】
本発明の上記およびその他の利点は、以下の詳細な説明および添付図面によって明らかになる。
【0017】
【発明の実施の形態】
エンジン部品(コンポーネント)の熱膨張に関する独自の合成方法を有する、タービンエンジンファンブレードとエンジンケースとの間のクリアランスを特定して制御する装置および方法は、本発明に従って以下の方程式および図面を参照して説明される。
【0018】
図1,図2を参照すると、ブレードとエンジンケースとの間のクリアランスを制御するガスタービンエンジンおよび装置は、符号10として全体が示されている。本発明は、主にガスタービンエンジンに関して説明するが、本発明の趣旨から逸脱せずに、例えば冷凍装置などのターボ機械を使用する他の種類の装置でも使用することができる。
【0019】
図1,図2に示されているように、ガスタービンエンジン12は、その入口端部14から出口端部16に沿った方向で、ファン18、低圧圧縮機20、高圧圧縮機22、空気流内に燃料を噴射する燃焼器24、高圧タービン26、および低圧タービン28を含んでいる。クリアランス制御装置30は、全閉位置から全開位置へと連続的に調整可能な蝶弁などの弁32を含み、この弁32は、矢印33,33で示す補助的な空気流すなわち冷却空気流をファン流からエンジンケース50へと分流して、ケースとエンジンブレードとの間に所望のクリアランスを提供するためにエンジンケースを冷却する。高圧圧縮機22と高圧タービン26とは、線37で概略的に示すように、高圧圧縮機と高圧タービンとを接続する第1のスプール(高スプール)上に設けられている。同様に、ファン18と、低圧圧縮機20と、低圧タービン28とは、線39で概略的に示すように、低圧圧縮機と低圧タービンとを接続する第2のスプール(低スプール)上に設けられている。
【0020】
例えば図2に示すように、高圧タービン26は、ディスク41とブレード43とを含む。ブレードの先端部45とこれに対向するケースすなわち壁50は、協働して間にクリアランス距離47を定め、この距離47は、ファン流から所望の強さの冷却空気流33を制御可能に分流することで調整される。エンジンセンサ38は、高スプール速度、低スプール速度、および燃焼器圧力を含む。要求される全ての流体温度は、上述のセンサの読みとり値、周囲の条件、および飛行速度の関数として合成することができることが知られている。しかし、流体温度は、直接測定することもできる。制御装置40は、センサ38に接続された入力部42を有する。制御装置40には、所望の高圧タービンクリアランスを決定するロジック、実際のクリアランスを計算する数学的モデル、および所望のクリアランスと実際のクリアランスとの差に応じて弁32の角度を決定する制御アルゴリズムを含む制御ソフトウェアが存在する。
【0021】
好ましくはドゥアルチャネルトルクモータであるモータ44が、制御装置40に制御可能に連結されている。ピストン式アクチュエータなどのアクチュエータ46が、モータ44の出力側と駆動可能に連結されている。弁32は、アクチュエータ46に制御可能に連結されている。
【0022】
関連技術で周知のように、ガスタービンエンジンは、飛行速度に等しい相対速度を有する矢印48,48で示す一次空気流を入口端部14から受け入れることによって動作する。一次空気流48は、入口14を通過するときに速度が低下して圧力が増加する。空気流圧力は、圧縮機20,22を通って移動するにつれてさらに高まる。燃焼器24では、安定した燃料流れが一次空気流48内に噴射され、燃料が連続的に燃焼される。高圧の熱ガスは、タービン26,28のノズルを通って移動し、これらのノズルを通して、タービンホイールを回転させるようにホイールのバケットに導かれる。タービンホイールは、軸を介して接続された圧縮機を駆動する。熱ガスは、タービン26,28からの流出時には、高温でかつ大気圧よりかなり高い圧力を有する。熱ガスは、エンジン12の出口端部16から高速で排出され、推力を発生させる。
【0023】
続いて、本発明によるクリアランス制御のための熱膨張の特定に関して、より詳しく説明する。径方向での総膨張は、熱的および機械的な原因による膨張の和として理解することができる。径方向膨張の計算技術を開発する上で最も困難なのは、ターボ機械部品の材料の熱膨張のために、径方向膨張を決定する微分方程式を公式化してこれを解くことである。このような公式は、(タービンケースなどの)複雑な形状を有し、かつ広い範囲にわたる温度および流量を有する複数の流体流れと熱交換を行う部品を正しく表す必要がある。
【0024】
以下では、熱力学の第一の法則に従って、周囲の流体流れから熱伝達を受けるタービン機械部品を含む閉じた系を公式で表している。ターボ部品の温度は、部品全体にわたって一定であると仮定する。また、この装置は、所定の温度でかつ有限な数のガス流に接していると仮定する。上記公式から、部品材料温度に関する一階微分方程式が導かれる。この方程式は、等価流体温度と等価時定数を定義することによってさらに単純化される。一般化された伝達関数が導かれ、続いてラプラス変換によって、等価流体温度の階段状および傾斜状の変化に対するターボ機械部品材料の平均温度の閉じた式の解が得られる。ターボ機械部品温度の解は、熱膨張との線形の関係に基づいて熱膨張の解に変換される。最後に、制御装置で実現される差分方程式が得られる。
【0025】
以下の解析では、ターボ機械部品の密度および材料温度が均一であると仮定している。このターボ機械部品(以下では単に部品と呼ぶ)は、有限な数の流体流れと熱交換をおこなっており、これらの流体流れは、それぞれ金属面の一部と接している。上述した仮定に基づいて、熱力学の第一の法則に基づく方程式は以下のようになる。
【0026】
【数1】
【0027】
方程式(1)は、項を整理して、熱伝達性能パラメータ、等価流体温度、および等価時定数を以下のように定義することでさらに単純化される。
【0028】
【数2】
【0029】
方程式(2a),(2b),(2c)によって与えられた定義を使用すると、基準となる微分方程式は、以下のようになる。
【0030】
【数3】
【0031】
方程式(3)のラプラス変換値に関して、初期条件がゼロであると仮定すると、s領域における部品材料温度と等価温度とを関連づける一般的な一次伝達関数が得られる。
【0032】
【数4】
【0033】
要約すると、方程式(3)の結果は、以下の仮定に基づくものである。
【0034】
(a)部品はいわゆる準平衡過程にあり、すなわちいつでも一定の金属温度を有する。
【0035】
(b)有限な数の流体流れと装置との接触領域が固定されている。
【0036】
(c)それぞれの流体流れの熱交換を特徴づける熱伝達係数は一定である。
【0037】
(d)部品材料の比熱は一定である。
【0038】
(e)周囲との熱交換による系のエネルギの変化は、仕事に関連するエネルギの変化から切り離すことができる。
【0039】
等価流体温度の階段状の変化に対して、方程式(3)の閉じた式の解を得ることができる。ラプラス変換技術を用いるとともに代数的操作をいくらか行うと、時間の関数として部品材料温度に関する以下の式が導かれる。
【0040】
【数5】
【0041】
方程式(5)の結果は、制御装置で使用される差分方程式を得るために、経過時間(time step)に対して適用することができる。
【0042】
【数6】
【0043】
ここで、等価流体温度と等価時定数とは方程式(2)に従って定義される。
【0044】
等価流体温度の傾斜状の変化に関する同様の解析では、部品材料温度に関する以下の式が得られる。
【0045】
【数7】
【0046】
同様に、方程式(7)から以下の差分方程式が導かれる。
【0047】
【数8】
【0048】
方程式(6),(8)は、続いて、部品材料の熱膨張による部品の径方向膨張に関する式に変換することができる。部品温度は、熱膨張(dR)に直接置き換えられる。一方、等価流体温度は、膨張過程を引き起こす力を示し、定常状態膨張と呼ばれる値に置き換えられる。定常状態膨張とは、流体と無期限に接していた場合に部品が到達したであろう径方向膨張のことである。
【0049】
従って、階段状の入力に対する閉じた式の解に基づく熱膨張に関する式は、以下のようになる。
【0050】
【数9】
【0051】
また、傾斜状の入力に対する閉じた式の解に基づく熱膨張に関する式は、以下のようになる。
【0052】
【数10】
【0053】
同様に、方程式(2a),(2b),(2c)が、定常状態熱膨張および等価時定数に関する式を得るために使用される。
【0054】
【数11】
【0055】
タービンケースの冷却制御装置で使用されるクリアランスモデルなどの実際の用途では、タービン機械部品の熱膨張は、方程式(9)によって正確に表される。これは、ガスタービンエンジンのFADECなどのような近代的なデジタルコンピュータにおける(例えば、一般に0.1秒以下の)比較的速いモデル実行速度によるものである。
【0056】
続いて、方程式(9)に概算係数を当てはめることにより、径方向熱膨張に関する以下の搭載過渡モデルが得られる。
【0057】
【数12】
【0058】
この式からわかるように、概算係数“a”は、(例えば、部品の特定の種類のハードウェアにより良好に適合するように)部品の定常状態膨張の調整を可能とする便利な調整係数として方程式(12)に含まれている。このような理由、および他の理由のために、定常状態膨張および等価時定数に関する追加の概算係数が式に導入される。
【0059】
定常状態膨張の概算方程式は、方程式(11)に2種類の概算係数“k”,“z”を導入することによって以下のように得られる。
【0060】
【数13】
【0061】
熱膨張の等価時定数の概算方程式は、方程式(11)に2種類の概算係数“b”,“z”を導入することによって以下のように得られる。
【0062】
【数14】
【0063】
上記方程式中の係数“a”,“k”,“z”,“b”は、部品熱膨張モデルを較正して高忠実度モデルおよび/またはテストデータを得るために使用される。これによって、方程式を導くときになされた仮定の悪影響を一部相殺することができる。同時に、機械の寿命にわたって変更されうるターボ機械ハードウェアの特定の組み合わせに対して、モデルを定めることが容易になる。
【0064】
得られたモデルは、1よりも高次数の動力学をモデリングするために用いることができる。これは、上記モデルによってそれぞれ表される有限の数のサブコンポーネントの和として、ターボ機械部品のモデリングを行うことによって達成される。例えば、タービンケースの冷却制御装置では、(ディスク、ブレード、およびケースの)各タービン部品は、3つまでのサブコンポーネントを有すると考えられる場合が多いので、動力学の次数が3に引き上げられる。これにより、高圧タービン部品の複雑な形状を適切に考慮することができる。
【0065】
以下は、3つのサブコンポーネントを有するターボ機械部品の径方向熱膨張をモデリングする制御ソフトウェアで使用可能な差分方程式の性能パラメータの例である。差分方程式は、以下のように与えられる。
【0066】
【数15】
【0067】
性能パラメータは、以下のように与えられる。
【0068】
【数16】
【0069】
ケース部品の他は、単一の性能パラメータが使用される。
【0070】
ディスクとブレードとの定常状態熱膨張は、以下のように関連している。
【0071】
【数17】
【0072】
方程式(17)におけるそれぞれの影響温度の寄与には、一定の概算係数が割当てられる。これは、方程式(11)の基本的な関係とは異なる。上述のように、係数は、エンジンの動作パラメータに応じて変化し、このことは方程式(11)に反映されている。しかし、ディスクおよびブレードに関して結果的に生じる誤差は少なく、方程式(17a),(17b)は、これらの部品の定常状態熱膨張を充分に表していると考えられる。
【0073】
一方、ケース部品に関しては、特にタービンケースの冷却流の変化によって影響係数がかなり変化する。この影響を適切に考慮するために、ケース部品の定常状態膨張に関する式は、物理的な関係(11)まで戻ったところから立て始める。続いて、タービンケースの冷却流がない状態では、影響係数が一定であると仮定する。この解析では、続いて、ケース冷却流がゼロでない場合における上記係数の補正値を確立する。上述したように、式を立てるときに行った追加の仮定は、もとの結果(1)からは離れる。しかし、ケース冷却流の変化の主な影響は、よく捉えられており、予備の回帰分析によって許容できる結果が得られると考えられる。詳細な導出を省略することによって、ケース部品の定常状態膨張は以下のように表される。
【0074】
【数18】
【0075】
要約すると、上述の解析は、エンジン部品の熱膨張の正確な特定および制御が達成可能であることを示している。
【0076】
本発明の好適実施例を開示および説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、種々の改良を行うことができる。よって、本発明は、限定的にではなく、説明的に開示および説明されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクリアランス制御装置を有するタービンエンジンの概略説明図である。
【図2】図1のクリアランス制御装置を有するタービンエンジンの部分説明図である。
【符号の説明】
12…ガスタービンエンジン
14…入口端部
16…出口端部
18…ファン
20…低圧圧縮機
22…高圧圧縮機
24…燃焼器
26…高圧タービン
28…低圧タービン
30…クリアランス制御装置
32…弁
33…冷却空気流
38…エンジンセンサ
40…制御装置
42…入力部
44…トルクモータ
46…アクチュエータ
48…一次空気流
Claims (19)
- ターボ機械(10)において、ターボ機械部品ブレード(43)と、前記ブレードの先端部(45)に隣接かつ対向する壁(50)と、の間のクリアランスを制御するクリアランス制御方法であって、この制御方法は、
それぞれの部品またはサブコンポーネントの熱膨張が、部品材料温度に関する一階微分方程式によって決定されるように、ターボ機械(10)の部品(41,43,50)および必要に応じてサブコンポーネントを特定し、
それぞれ異なる温度および流量によって特徴づけられ、かつ各々の前記部品もしくはサブコンポーネントと熱交換を行う流体流れ(48)を特定し、
測定および/または合成によって、前記各々の部品もしくはサブコンポーネント(41,43,50)に関して特定した前記流体流れ(48)の温度および流量を求め、
測定および/または合成によって、温度、圧力、および軸速度を含む、性能パラメータに関連するパラメータを求め、
軸速度、圧力、および温度を含む測定もしくは合成されたエンジン特性の関数として、ターボ機械部品(41,43,50)の熱伝達性能パラメータをそれぞれ求め、
種々の温度、流量、および熱物理的特性を有する流体流れ(48)との熱交換によって生じる重み付けされた平均膨張として、ターボ機械部品(41,43,50)の定常状態膨張をそれぞれ求め、重み係数は、前記熱伝達性能パラメータを含んでおり、
対応する性能パラメータの和として、ターボ機械部品(41,43,50)の等価時定数の逆数をそれぞれ求め、
力関数の特定の変化が生じる所定の経過時間に対して、基準となる一階微分方程式の閉じた式の解を適用することにより、ターボ機械部品(41,43,50)の熱膨張を差分方程式によってそれぞれ求め、力関数には、対応するタービン部品の定常状態膨張と、等価時定数を含む時定数と、が含まれ、
定常状態膨張と等価時定数とに関する方程式、および熱膨張の差分方程式に、回帰分析で決定された概算係数を導入して、熱膨張モデルと高忠実度モデルおよび/またはテストデータとの間の誤差を最小化し、
前記熱膨張モデルから得られるターボ部品(41,43,50)とサブコンポーネントの全膨張の和からターボ機械の先端部クリアランスを求め、
タービン機械部品(41,43,50)の所望のクリアランスと、タービン機械部品の熱膨張によって求められた実際のクリアランスと、の差に基づいて、ターボ機械の先端部クリアランスを制御(40)するステップをそれぞれ含むことを特徴とするクリアランス制御方法。 - 前記制御するステップは、前記熱膨張に応じて前記壁(50)に隣接する空気流(33)の量を調整することを含むことを特徴とする請求項1記載のクリアランス制御方法。
- 熱膨張を求めるステップは、第1の積を第2の積で割ることによって、それぞれの熱伝達性能パラメータを求めることを含み、第1の積は、流体流れ(48)とターボ機械部品(41,43,50)との接触面積を流体流れの熱伝達係数で乗算したものを含み、第2の積は、ターボ機械部品の比熱とターボ機械部品の質量とを乗算したものを含むことを特徴とする請求項1記載のクリアランス制御方法。
- 重み付けされた平均熱膨張値は、ターボ機械(10)の複数のサブコンポーネントを基準としていることを特徴とする請求項1記載のクリアランス制御方法。
- ターボ機械(10)は、ガスタービンエンジンであり、ブレード(43)の先端部(45)に対向する壁(50)は、前記エンジンのケースであることを特徴とする請求項1記載のクリアランス制御方法。
- ターボ機械(10)は、タービンエンジンであり、タービン機械部品には、前記エンジンのブレード(43)、ディスク(41)、およびケース(50)が含まれることを特徴とする請求項1記載のクリアランス制御方法。
- 前記ディスク(41)のサブコンポーネントには、ボア、ウェブ、およびリムが含まれることを特徴とする請求項6記載のクリアランス制御方法。
- 空気流(33)の量を調整するステップは、蝶弁(32)を調整することを含むことを特徴とする請求項2記載のクリアランス制御方法。
- 空気流(33)の量を調整するステップは、さらにトルクモータ(44)によって蝶弁(32)に制御可能に連結されたピストン式アクチュエータ(46)を動作させることを含むことを特徴とする請求項8記載のクリアランス制御方法。
- ターボ機械(10)において、ターボ機械部品ブレード(43)と、前記ブレードの先端部(45)に隣接かつ対向する壁(50)と、の間のクリアランスを制御するクリアランス制御装置であって、この制御装置は、
それぞれの部品またはサブコンポーネントの熱膨張が、部品材料温度に関する一階微分方程式によって決定されるように、ターボ機械(10)の部品(41,43,50)および必要に応じてサブコンポーネントを特定する手段と、
それぞれ異なる温度および流量によって特徴づけられ、かつ各々の前記部品もしくはサブコンポーネントと熱交換を行う流体流れ(48)を特定する手段と、
測定および/または合成によって、前記各々の部品もしくはサブコンポーネント(41,43,50)に関して特定した前記流体流れ(48)の温度および流量を求める手段と、
測定および/または合成によって、温度、圧力、および軸速度を含む、性能パラメータに関連するパラメータを求める手段と、
軸速度、圧力、および温度を含む測定もしくは合成されたエンジン特性の関数として、ターボ機械部品(41,43,50)の熱伝達性能パラメータをそれぞれ求める手段と、
種々の温度、流量、および熱物理的特性を有する流体流れ(48)との熱交換によって生じる重み付けされた平均膨張として、ターボ機械部品(41,43,50)の定常状態膨張をそれぞれ求める手段と、を有し、重み係数は、前記熱伝達性能パラメータを含んでおり、
さらに、対応する性能パラメータの和として、ターボ機械部品(41,43,50)の等価時定数の逆数をそれぞれ求める手段と、
力関数の特定の変化が生じる所定の経過時間に対して、基準となる一階微分方程式の閉じた式の解を適用することにより、ターボ機械部品(41,43,50)の熱膨張を差分方程式によってそれぞれ求める手段と、を有し、力関数には、対応するタービン部品の定常状態膨張と、等価時定数を含む時定数と、が含まれ、
さらに、定常状態膨張と等価時定数とに関する方程式、および熱膨張の差分方程式に、回帰分析で決定された概算係数を導入して、熱膨張モデルと高忠実度モデルおよび/またはテストデータとの間の誤差を最小化する手段と、
前記熱膨張モデルから得られるターボ部品(41,43,50)とサブコンポーネントの全膨張の和からターボ機械の先端部クリアランスを求める手段と、
タービン機械部品(41,43,50)の所望のクリアランスと、タービン機械部品の熱膨張によって求められた実際のクリアランスと、の差に基づいて、ターボ機械の先端部クリアランスを制御(30)する手段と、をそれぞれ有することを特徴とするクリアランス制御装置。 - 前記制御する手段(30)は、前記熱膨張に応じて前記壁(50)に隣接する空気流(33)の量を調整する手段(32,44,46)を含むことを特徴とする請求項10記載のクリアランス制御装置。
- 前記制御する手段(30)は、第1の積を第2の積で割ることによって、それぞれの熱伝達性能パラメータを求める手段を含み、第1の積は、流体流れ(48)とターボ機械部品(41,43,50)との接触面積を流体流れの熱伝達係数で乗算したものを含み、第2の積は、ターボ機械部品の比熱とターボ機械部品の質量とを乗算したものを含むことを特徴とする請求項10記載のクリアランス制御装置。
- ターボ機械(10)は、ガスタービンエンジンであり、ブレード(43)の先端部(45)に対向する壁(50)は、前記エンジンのケースであることを特徴とする請求項10記載のクリアランス制御装置。
- 前記調整する手段は、
前記制御する手段と連絡するトルクモータ(44)と、
前記トルクモータに駆動可能に連結されたピストン式アクチュエータ(46)と、
前記アクチュエータに制御可能に連結された蝶弁(32)と、を含むことを特徴とする請求項11記載のクリアランス制御装置。 - タービンエンジン装置(10)であって、
ケース(50)と、このケース内で回転可能なブレード(43)と、を含むタービンエンジンと、
それぞれの部品またはサブコンポーネントの熱膨張が、部品材料温度に関する一階微分方程式によって決定されるように、タービンエンジンの部品(41,43,50)および必要に応じてサブコンポーネントを特定する手段と、
それぞれ異なる温度および流量によって特徴づけられ、かつ各々の前記部品もしくはサブコンポーネントと熱交換を行う流体流れ(48)を特定する手段と、
測定および/または合成によって、前記各々の部品もしくはサブコンポーネント(41,43,50)に関して特定した前記流体流れ(48)の温度および流量を求める手段と、
測定および/または合成によって、温度、圧力、および軸速度を含む、性能パラメータに関連するパラメータを求める手段と、
軸速度、圧力、および温度を含む測定もしくは合成されたエンジン特性の関数として、タービンエンジン部品(41,43,50)の熱伝達性能パラメータをそれぞれ求める手段と、
種々の温度、流量、および熱物理的特性を有する流体流れ(48)との熱交換によって生じる重み付けされた平均膨張として、タービンエンジン部品(41,43,50)の定常状態膨張をそれぞれ求める手段と、を有し、重み係数は、前記熱伝達性能パラメータを含んでおり、
さらに、対応する性能パラメータの和として、タービンエンジン部品(41,43,50)の等価時定数の逆数をそれぞれ求める手段と、
力関数の特定の変化が生じる所定の経過時間に対して、基準となる一階微分方程式の閉じた式の解を適用することにより、タービンエンジン部品(41,43,50)の熱膨張を差分方程式によってそれぞれ求める手段と、を有し、力関数には、対応するタービン部品の定常状態膨張と、等価時定数を含む時定数と、が含まれ、
さらに、定常状態膨張と等価時定数とに関する方程式、および熱膨張の差分方程式に、回帰分析で決定された概算係数を導入して、熱膨張モデルと高忠実度モデルおよび/またはテストデータとの間の誤差を最小化する手段と、
前記熱膨張モデルから得られるタービンエンジン部品(41,43,50)とサブコンポーネントの全膨張の和からタービンエンジンの先端部クリアランスを求める手段と、
前記熱膨張に応じて、前記壁(50)に隣接する空気流の量を調整する手段(32,44,46)と、を有することを特徴とするタービンエンジン装置。 - エンジン回転速度を測定する少なくとも1つのセンサ(38)と、
バーナ圧力を測定する少なくとも1つのセンサ(38)と、をさらに有し、
これらのセンサによって生成される測定値により、タービンエンジン部品(41,43,50)の温度、流体流れの温度、および流体流量が特定されることを特徴とする請求項15記載のタービンエンジン装置。 - 前記調整する手段(32,44,46)は、第1の積を第2の積で割ることによって、それぞれの熱伝達性能パラメータを求める手段を含み、第1の積は、流体流れ(48)とタービンエンジン部品(41,43,50)との接触面積を流体流れの熱伝達係数で乗算したものを含み、第2の積は、タービンエンジン部品の比熱とタービンエンジン部品の質量とを乗算したものを含むことを特徴とする請求項15記載のタービンエンジン装置。
- 前記タービンエンジン(10)は、ガスタービンエンジンであることを特徴とする請求項15記載のタービンエンジン装置。
- 前記調整する手段は、
制御手段と連絡するトルクモータ(44)と、
前記トルクモータに駆動可能に連結されたピストン式アクチュエータ(46)と、
前記アクチュエータに制御可能に連結された蝶弁(32)と、を含むことを特徴とする請求項15記載のタービンエンジン装置。
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