JP3720183B2 - 耐銅浸入性等にすぐれた二重巻きパイプ用銅めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐銅浸入性等にすぐれた二重巻きパイプ用銅めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のブレーキチューブや冷蔵庫の放冷管等として使用される二重巻パイプを製造するための耐銅浸入性等にすぐれた銅めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅めっき鋼板を素材とする二重巻きパイプは、所定幅に裁断した銅めっき鋼板のフープを造管用ロールでパイプ状に巻き重ねた後、銅の融点以上(例えば1130℃) に加熱されたDXガス中に適当時間(約1〜2分程度)保持して銅めっき層を溶融し、巻き重ね面間を融着結合させる、いわゆるセルフ・ブレージング処理を施すことにより製造される。図6は、二重巻きパイプの断面を示している。1は素地鋼板(冷延鋼板)、2は銅めっき層,3はセルフ・ブレージングにより形成された銅融着層であり、巻き重ね面間の接合性の良否は、渦流探傷法や曲げ試験などにより検査される。
【0003】
二重巻きパイプの製造に使用される銅めっき鋼板は、セルフ・ブレージングの熱処理で、素地鋼板の結晶組織が粗大化し過ぎないこと(耐粗粒化性)、素地鋼板中への溶融銅の浸入(鋼板の脆化を引き起こす)を生じにくいこと(耐銅浸入性)、および二重巻きパイプ成形後に行われる拡管加工やフレア加工に耐える良好な延性を有すること等が要求される。
上記銅めっき鋼板の素地鋼として、低炭素アルミキルド鋼が使用され、特公平8-14013 号公報には、C: 0.01〜0.15%, Si: 0.1 %以下, Mn: 0.05〜0.6 %, Al: 0.003 〜0.1 %, P: 0.015 %以下,B: 0.0004〜0.004 %,残部はFeおよび不可避不純物からなる素地鋼板に銅めっきを施したものが開示されている。そこには、素地鋼板のB含有効果として、結晶組織が微細化され,耐溶接割れ性が改善されることが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の銅めっき鋼板は、その素地鋼板が、低炭素アルミキルド鋼板の範疇に属するものであっても、耐銅浸入性,耐粗粒化性等の不足により、二重巻きパイプ成形加工後のセルフ・ブレージング熱処理において、溶融銅の浸入による粒界脆化やフェライト組織の針状化・粗大化等による延性の低下を生じ易く、その後の拡管加工やフレア加工で、割れを発生する例が多くみられる。低炭素アルミキルド鋼のB元素の添加は、前記公報に記載されているように、フェライト組織の微細化に有効ではあるが、B添加量や、C,sol.Al,N等の含有量の多寡により、ブレージング熱処理におけるフェライト組織の粗大化・銅の浸入による粒界脆化,あるいはブレージング処理後の冷却過程におけるフェライト組織の過度の微細化や針状化等による硬質化を生じ易い。このため、パイプ造管後の拡管加工やフレア加工に要求される充分な成形加工性を保証することは困難である。
本発明は、二重巻きパイプに関する従来の問題を解消し、拡管加工やフレア加工等に耐え得る良好な加工性を保証するための改良された耐粗粒化性,耐銅浸入性等を備えた銅めっき鋼板およびその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明方法により製造される二重巻パイプ用銅めっき鋼板は、重量%で、
C :0.03〜0.08%,
Si:0.1%以下,
Mn:0.05〜0.5%,
P :0.020%以下,
S :0.015%以下,
Sol.Al:0.03〜0.08%,
N :0.003〜0.008%,
B : 0.0008〜0.002%,
部Feおよび不可避不純物からなる素地鋼板とその表面を被覆するめっき層からなることを特徴としている。
【0006】
本発明の銅めっき鋼板は、前記化学組成を有する鋼のスラブを、熱間圧延し、圧下率40〜90%で冷間圧延した後、冷延鋼板を、水素濃度2vol %以上のN2 −H2 混合ガス中、再結晶温度〜850℃の温度域で焼鈍処理し、ついで該鋼板に銅めっき処理を施す工程により製造される。
本発明の銅めっき鋼板を使用して製造される二重巻きパイプは、素地鋼板の化学組成、特にC,Al,NおよびBの含有量の規定により、ブレージング熱処理における溶融銅の浸入とそれによる粒界脆化が効果的に抑制防止され、またブレージング熱処理につづく冷却過程でのフェライト組織の細粒化や針状化が防止されるほか、鋼中の固溶N量が低減することにより、パイプの軟質化効果が得られる。これらの効果として改良された加工性が与えられ、拡管加工やフレア加工に必要とされる延性(約25%以上の伸び率が必要とされている)を十分に満たすことが可能となる。
【0007】
本発明の銅めっき鋼板からなる二重巻きパイプの上記材質改善において、Bの適量添加の効果は重要である。二重巻きパイプのブレージング熱処理においては、フェライト結晶粒の粗大化および溶融銅の粒界浸入の抑制防止に寄与し、またブレージングにつづく冷却過程では、フェライト組織の針状化・過度の微細化を抑制防止すると共に、パイプの軟質化, 時効劣化の防止等に奏効する。更には、ブレージング熱処理前の二重巻きパイプ造管加工における成形加工性の向上効果をもたらす。
【0008】
すなわち、鋼中の固溶Bは、固溶Alに比しNに対する親和力が強いことにより、熱延鋼板の巻取り段階や冷延鋼板の焼鈍処理段階で、鋼中の固溶Nと優先的に結合し、窒化硼素(BN)の析出物を形成する。窒化アルミニウム(AlN)が微細な析出物を形成するのに対し、BNはAlNよりも大きな析出物を形成し、従って析出生成する窒化物としてAlN析出物に比し、素地鋼板の軟質化に有利である。このため、降伏点(YP)の低減および延性(El)の向上による素地鋼板の軟質化効果が得られ、ブレージング熱処理前に行われる二重巻きパイプの成形加工性が向上し、パイプの造管生産性が高められる。
【0009】
また、二重巻きパイプのブレージング熱処理(1100〜1150℃)においては、その初期段階(約950〜1050℃)で、BN析出物の一部が分解し、固溶Bと固溶Nを生成する。その固溶Bはパイプの昇温に伴つて、フェライト結晶粒界に析出する。パイプ温度が銅の融点(約1100℃)以上となって銅めっき層が溶融し、巻き重ね面の融着結合を生じる段階においては、すでに固溶Bがフェライト結晶粒界に析出しており、その析出による粒界強化の効果として、溶融銅の粒界浸入を抑制防止しつつ、巻き重ね面の融着結合が達成される。また、粒界に析出したBは、結晶粒の異常成長を抑制し、フェライト組織の粗大化防止に奏効する。
【0010】
更に、ブレージング熱処理につづく冷却過程において、鋼中の固溶Bは固溶Nと結合し、BN析出物を形成する。なお、AlNについても、前記ブレージング熱処理過程でAlとNとに分解し、それぞれ鋼中に固溶されてはいるが、この冷却過程の冷却速度が比較的大きいために、鋼中のAlとNとの反応(AlN析出物の生成)は殆ど生起しない。これに対し、BはNとの親和力がAlに比し強いことにより、BN析出物を形成するのである。このBN析出物の生成反応により、素地鋼中の固溶N量が減少し、その効果としてパイプが軟質化される。しかも、そのBN析出物は比較的大きく、これは素地鋼の軟質化に有利に作用する。これらの効果として、二重巻きパイプの加工(拡管加工,フレア加工等)に要求される高度の加工性(伸び率約25%以上)を確保することが可能となるのである。
【0011】
本発明における素地鋼板の化学組成の限定理由は次のとおりである。
C: 0.03〜0.08%
冷延鋼板の延性を高める点からはC量は少ない程よいが、その量が少な過ぎると、耐粗粒化性の不足をきたす。また、粒界強度の低下に起因して耐銅浸入性も低下する。一方C量が多くなると、炭化物析出量の増加による延性の低下を招き、特に0.08%を越えると、セルフ・ブレージング処理後の冷却過程で、針状のフェライト組織が形成され易く、延性の低下が顕著になる。このため、0.03〜0.08%とする。
【0012】
Si: 0.1%以下
Siは、鋼の溶製工程における脱酸元素として添加される。そのための添加量は0.1%までで十分である。またそれ以上の多量添加は、延性を低下させるので、これを上限とする。
Mn: 0.05〜0.5%
Mnは、鋼の熱間脆性を防止する目的で添加される。0.05%に満たないと、その効果が不足し、他方0.5%を越えると、延性の低下をきたす。
【0013】
P: 0.020%以下,
Pは、降伏強度および引張強度を高める効果を有するが、多量に添加すると、延性の低下を招き、また結晶粒界に偏析して、粒界の強度を低下させる。このため、0.020%以下とする。好ましくは0.008〜0.015%である。
S: 0.015%
Sは、MnS等の非金属介在物を形成して、加工割れの原因となる。0.015%以下であれば、その実害は回避されるので、これを上限とする。
【0014】
sol.Al: 0.03〜0.08%
Alは、鋼の溶製工程の脱酸剤として添加される元素であるが、本発明では、それにとどまらず、AlNの析出物を形成し、ブレージングにおける耐粗粒化性,耐銅浸入性を高める目的で添加される。これらの効果を得るには、sol.Al量(可溶性Al量)として、少なくとも0.03%を必要とする。しかし、多量に添加すると、AlNの過剰析出により延性が低下し、また非金属介在物の増加による鋼板表面品質の低下(表面疵の増加)をきたすので、0.08%を上限とする。
【0015】
N: 0.003〜0.008%,
Nは、Alと反応し、AlNの微細な析出物を形成して素地鋼板の耐粗粒化性を高め、ブレージング処理におけるフェライト組織の粗大化を防止する。含有量が0.003%に満たないと、AlNの析出量が不足し、耐粗粒化性を確保することができない。他方、あまり多く添加すると、AlNの過剰析出に伴う延性の低下,パイプの硬質化を招く。このため、0.008%を上限とする。
【0016】
B: 0.0008〜0.002%
Bは、前述のように、ブレージング熱処理前の段階においては二重巻きパイプの造管加工性を高め、またブレージング熱処理においては、フェライト結晶粒の粒界に析出して耐粗粒化性を高めると共に、溶融銅の粒界浸入および粒界脆化を抑制防止する。更にブレージング熱処理に続く冷却過程では、素地鋼中の固溶Nと結合して、固溶N量を低減しパイプを軟質化し、かつ時効劣化の防止に奏効する。これらの効果を得るために、少なくとも0.0008%の含有を必要とする。しかし、0.002%を超えると、ブレージング後の冷却過程における素地鋼組織の過度の微細化,針状化による硬質化を招き、パイプの加工性を損なう。このため、0.002%を上限とする。
【0017】
次に本発明の製造工程について説明する。
まず製鋼炉で所定の化学組成に溶製された鋼を、造塊・分解圧延により、または連続鋳造によりスラブとし、スラブ表面手入れを適宜施した後、熱間圧延する。連続鋳造につづいて熱鋳片をそのまま加熱炉に装入して熱間圧延するようにしてもよい。熱間圧延は常法により行なわれる。熱延鋼板品質や熱延効率等の点から、仕上げ温度はAr3変態点直上の温度に調整され、巻取り温度は約500〜700℃の範囲が適当である。
【0018】
熱延鋼板は、酸洗処理の後、冷間圧延に供する。冷間圧延は、結晶粒の粗大化を抑制し、延性の良好な冷延鋼板を得るために、圧下率を40%以上とすることが必要である。圧下率が90%を越えると、結晶粒の微細化効果は飽和し、それ以上の圧下率は圧延負荷の増大による操業面の不利を招くので、90%を上限とする。
【0019】
冷延鋼板は表面浄化されたうえ、焼鈍処理に付される。焼鈍処理において鋼板は再結晶する。この焼鈍処理は、水素濃度が2体積%以上のN2 −H2 混合ガスを雰囲気とし、再結晶温度(約600 ℃)〜850℃の温度域で加熱することにより行われる。
処理温度の上限を850℃としているのは、それ以上の高温度を必要としないだけでなく、高温化により結晶組織の粗大化をきたすからである。焼鈍方式はバッチ焼鈍または連続焼鈍のいずれでもよいが、比較的長い処理時間が与えられるバッチ焼鈍の場合は、焼鈍温度を約650℃〜720℃とし、処理時間の短い連続焼鈍の場合は、約750〜850℃に調節するのが好ましい。
【0020】
また、焼鈍雰囲気として、N2 −H2 混合ガスを適用しているのは、還元作用による鋼板の金属光沢を確保するためであり、H2 濃度を2体積%以上としているのは、それより低い濃度では、還元作用が十分でなく金属光沢の確保が困難となるからである。そのN2 −H2 混合ガスとして、例えばNXガス(H 2 : 2 vol%, CO:3 vol%,残部 N2 ) ,DXガス(H 2 :10 vol%, CO:10 vol%, CO2 :7 vol%,残部 N2 )等を使用することができる(これらの混合ガスはCOやCO2 を含有しているが、それによって焼鈍効果を損なわれることはない)。
雰囲気ガスのH2 濃度を高めると共に、還元作用は増強されるが、約80体積%を超えると、その効果は飽和し、それ以上の高濃度化はコスト高などの操業面での不利を伴う。従って約80体積%を上限とするのがよい。処理効率およびコスト等の面から、H2 濃度: 10〜75体積%、焼鈍雰囲気の露点: −10℃以下の条件で焼鈍処理するのが適当である。
【0021】
焼鈍処理された鋼板は、常法に従って、調質圧延および連続電気めっき等による銅めっき(めっき層厚: 例えば1〜5μm/片面当たり)を施されて二重巻きパイプ用銅めっき鋼板に仕上げられる。得られた銅めっき鋼板は、二重巻きパイプに成形加工されたうえ、巻き重ね面間を融着するブレージング熱処理(処理温度: 約1100〜1150℃,処理時間: 約1〜2分)に付される。
【0022】
次に、二重巻きパイプの延性・加工性に及ぼす素地鋼板の化学組成の影響について具体的に説明する。
図1は二重巻きパイプの延性に及ぼす素地鋼板のC含有量の影響を示している。供試鋼板およびパイプ(管径: 4.76mm)の製造条件は下記のとおりである。
(1)素地鋼板の化学組成(wt %)
C:0.01 〜0.12, Si:0.008, Mn:0.25. P:0.013, S:0.006, sol Al:0.035, N:0 .0040, B:0.0015, Fe:Bal。
(2)冷間圧延: 圧下率 83 %,板厚: 0.335 mm。
【0023】
(3)焼鈍処理(バッチ焼鈍)
雰囲気: N 2 −12 vol% H 2
処理温度・時間: 660℃×12 hr
(4)調質圧延: 圧下率 1%
(5)銅めっき: 連続電気めっき,層厚 3.5μm(片面当り)
(6)二重巻き成形後のセルフ・ブレージング処理
雰囲気: DXガス(10vol% H2 -10vol% CO- 6vol% CO2 -N2,露点:+ 5℃)
処理温度・時間: 1130℃×1min
【0024】
図1に示したように、二重巻きパイプは、素地鋼板のC量0.03〜0.08%の範囲において、伸び率25%以上の高い延性が与えられている。C量0.03%未満の領域で延性が低いのは、鋼板のフェライト組織が過度に粗大化したことによるものである。他方、C量0.08%を越える領域での延性低下は、鋼中の炭化物(Fe3 C)の増量、および針状のフェライト組織の生成に起因してパイプが硬質化したことによる。二重巻きパイプの拡管加工・フレア加工性には、伸び率約25%以上の延性が必要とされており、図1は、その要求を充足するために、素地鋼板のC量を0.03〜0.08%の範囲に調整する必要があることを示している。
【0025】
図2は、素地鋼板のAl量, N量と二重巻きパイプの伸び値の関係を示している。供試鋼板およびパイプ(管径:4.76 mm)の製造条件は次のとおりである。
(1)素地鋼板の化学組成(wt%)
C:0.05, Si:0.009, Mn:0.35. P:0.013, S:0.006, sol Al:0.010 〜0.090, N: 0.0010〜0.0090, B:0.0014, Fe:Bal
(2)冷間圧延: 圧下率 83 %,板厚: 0.335 mm
【0026】
(3)焼鈍処理(バッチ焼鈍)
雰囲気:N2 -12 vol% H 2混合ガス
処理温度・時間: 670 ℃×10hr
(4)調質圧延: 圧下率 1%
(5)銅めっき: 連続電気めっき, 層厚 4.0μm(片面当たり)
(6)二重巻き成形後のセルフ・ブレージング処理
雰囲気: DXガス(10vol% H2 -10vol% CO- 6vol% CO2 -N2,露点:+ 5℃)
処理温度・時間: 1130℃×1min
【0027】
図2中の各記号は下記のとおりである。
○…伸び率 25 %以上
△…AlN の過剰析出により、伸び率 25 %未満
×…AlN の析出不足(フェライト粒粗大化)により、伸び率 25 %未満
この図より、二重巻きパイプの拡管加工・フレア加工に要求される延性(伸び率約25%以上)を満たすためには、Al量は0.03〜0.08%、N量は0.003〜0.008%の範囲に調整すべきことがわかる。
【0028】
図3は、素地鋼板のB含有量と二重巻きパイプの伸び値との関係、図4は、素地鋼板のB含有量とパイプのフェライト結晶粒度番号(FGS.NO) との関係を示し、また図5は、素地鋼板のB含有量とパイプの素地鋼への銅浸入深さとの関係を示している。これらの供試鋼板および二重巻きパイプ(管径:4.76 mm) の製造条件は次のとおりである。
(1)素地鋼板の化学組成(wt%)
C:0.07, Si:0.010, Mn:0.45. P:0.018, S:0.005, sol Al:0.040, N: 0.0050, B:0.0004〜0.004, Fe:Bal
(2)冷間圧延: 圧下率 80 %,板厚: 0.335 mm
【0029】
(3)焼鈍処理(バッチ焼鈍)
雰囲気:N2 -12 vol% H 2混合ガス
処理温度・時間: 660 ℃×12hr
(4)調質圧延: 圧下率 1%
(5)銅めっき: 連続電気めっき, 層厚 4.0μm(片面当たり)
(6)二重巻き成形後のセルフ・ブレージング処理
雰囲気: DXガス(10vol% H2 -10vol% CO- 6vol% CO2 -N2,露点:+ 5℃)
処理温度・時間: 1130℃×1min
【0030】
図3に示したように、二重巻きパイプは、素地鋼板のB量が0.0008〜0.002%の範囲において、伸び率25%以上の高い延性を有している。
また、図4は、素地鋼板のB量の増加と共に、フェライト組織が細粒化することを示している。B量が0.0008%未満では、ファライト粒度番号(FGS.NO)が6.0 以下の粗粒組織となり、これは粒界強度の不足をきたし、溶融銅の粒界浸入を充分に抑制防止することができない。他方、B量が0.002%を超えると、FGS.N0 8.5以上の細粒組織となり、またブレージング処理後の冷却過程でフェライト組織の針状化を生じることになる。
【0031】
更に、図5に示したように、Bの添加効果として、パイプの素地鋼への銅の浸入深さは小さくなる。銅浸入深さが約20μmを超えると、粒界の脆化に起因する延性不足等の実害が生じる。B量を0.0008%以上とすることにより、銅の浸入深さを20μm以下に抑え、粒界脆化とそれによるパイプ延性の低下を防止することができる。
このように、図3〜図5は、B量を0.0008%〜0.002%とすることにより、フェライト結晶粒の粗大化とそれに伴う溶融銅の浸入・粒界脆化、およびフェライト組織の過度の微細化を防止し得ることを示している。
【0032】
【実施例】
〔1〕供試材の製造
転炉および脱ガス処理装置により溶製・成分調整を行った溶鋼を連続鋳造に付してスラブとし、熱間圧延→熱延板の酸洗処理→冷間圧延→冷延板の電解清浄処理→焼鈍処理→調質圧延→銅めっき→二重巻き成形加工・ブレージング処理の工程を経由して二重巻きパイプ(管径4.76mm)を得る。
(1)鋼組成: 表1,表2参照
No.1〜14は発明例、No.51 〜66はいずれかの元素の含有量(表中,下線付記)が本発明の規定から外れている比較例である。
(2)熱間圧延
加熱温度: 1230℃、熱延仕上げ温度: 890 ℃、熱延巻取り温度: 510 ℃
(3)冷間圧延
圧下率: 80%、冷延板板厚: 0.335 mm
【0033】
(4)焼鈍処理(バッチ焼鈍)
雰囲気: N2 −H2 混合ガス(H2 濃度 2〜75vol%)
処理温度: 650 〜700 ℃, 処理時間: 8 〜15 hr
(5)調質圧延: 圧下率1%
(6)銅めっき(連続電気めっき): めっき層厚 3.5μm(片側当たり)
(7)二重巻き成形加工
・成形加工法: ロール造管(フープ幅 27.5 mm)
・セルフ・ブレージング処理:
雰囲気: DXガス(10vol% H2 -10vol% CO- 6vol% CO2 -N2,露点:+ 5℃)
処理温度・時間: 1130℃×1 min
【0034】
〔2〕パイプの特性評価
(a)引張試験: JIS Z 2241(11号試験片使用) による。
(b)フェライト粒度: パイプの断面を5 %ナイタールで腐食し、切断法(JIS G 0552)により粒度番号(FGS.N0)を判定(倍率: ×200 )。
(c)パイプの素地鋼への銅の浸入深さ: パイプの断面を5 %ナイタールで腐食した後、XMA分析装置により、銅の溶着部(倍率: ×500 )のCu特性X線像を撮影して浸入深さ(μm)を測定。
【0035】
表1および表2に、素地鋼板の化学組成,銅めっき鋼板および二重巻きパイプの製造条件と併せて製品パイプの試験結果を示す。
発明例No.1〜14のパイプは、耐銅浸入性が高く、銅の浸入深さは約3〜9μmと少ない。フェライト組織も、FGS.NO 約7〜8と適度の結晶粒径を有している。このように銅の浸入が抑制され、かつフェライト組織が適度の粒径を有する効果として、拡管加工やフレア加工に必要とされる25%以上の伸び率を有している。
【0036】
他方、比較例No.51 〜66において、No.51 およびNo.52 のパイプの延性が低いのは、鋼板のC量の不足のため、フェライト粒が粗大化し、銅の浸入深さが大きく、粒界の脆化が生じたことによる。
No.53 およびNo.54 のパイプの延性が劣るのは、素地鋼板のC量が多すぎるため、鋼中の炭化物(Fe3 C)量が過剰に析出したこと、および針状のフェライト組織が形成されたことにより硬質化しているのである。
No.55 とNo.56 (素地鋼板Al量不足)およびNo.59 とNo.60 (素地鋼板N量不足)のパイプの延性が劣るのは、AlNの析出量が不足してフェライト粒が粗大化し、このため銅の浸入深さが大きくなり、粒界が脆化したからである。
【0037】
No.57 とNo.58 (素地鋼板Al量過剰)およびNo.61 とNo.62 (素地鋼板N量過剰)のパイプの延性が劣るのは、鋼中にAlNが過剰に析出して硬質化したことによる。
No.63 とNo.64 (素地鋼板B量不足)のパイプの延性が低いのは、素地鋼板のB量が少ないため、フェライト粒が粗大化し、銅の浸入深さが大きくなり、粒界の脆化が生じたことによる。
No.65 とNo.66 (素地鋼板B量過剰)のパイプ延性が低いのは、素地鋼板のB量が多過ぎるため、固溶B量が過剰に析出して、フェライト粒が過度に微細化したこと、および針状のフェライト組織が形成されたことにより、硬質化しているのである。
【0038】
【表1】
Figure 0003720183
【0039】
【表2】
Figure 0003720183
【0040】
【発明の効果】
本発明の二重巻きパイプ用銅めっき鋼板は、セルフ・ブレージング処理における耐銅浸入性が高く、銅の浸入およびそれに起因する粒界脆化を抑制防止し、またブレージング処理後のフェライト組織の粗大化や針状化とそれに付随するパイプの硬質化も抑制防止される。従って得られる二重巻きパイプは、高い延性を有し、拡管加工やフレア加工等における加工割れが抑制防止され、製造歩留りの向上,パイプ品質の向上安定化等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】二重巻きパイプの伸び値と素地鋼板のC量との関係を示すグラフである。
【図2】二重巻きパイプの伸び値と素地鋼板のAl,N量との関係を示すグラフである。
【図3】二重巻きパイプの伸び値と素地鋼板のB量との関係を示すグラフである。
【図4】二重巻きパイプの素地鋼板のフェライト粒度番号(FGS.NO)とB量との関係を示すグラフである。
【図5】二重巻きパイプの素地鋼への銅の浸入深さと素地鋼板のB量との関係を示すグラフである。
【図6】二重巻きパイプを示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1: 素地鋼板
2: 銅めっき層
3: 銅の融着層

Claims (1)

  1. 重量%で、
    C :0.03〜0.08%,
    Si:0.1%以下,
    Mn:0.05〜0.5%,
    P :0.020%以下,
    S :0.015%以下,
    Sol.Al:0.03〜0.08%,
    N :0.003〜0.008%,
    B : 0.0008〜0.002%,
    残部Feおよび不可避不純物からなるスラブを熱間圧延し、圧下率40〜90%で冷間圧延した後、冷延鋼板を、水素濃度2vol%以上のN−H混合がス中、再結晶温度〜850℃の温度域で焼鈍処理し、ついで該鋼板に銅めっき処理を施すことを特徴とする耐銅浸入性等にすぐれた二重巻きパイプ用銅めっき鋼板の製造方法。
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