JP3719957B2 - 元素定量分析方法のコンピュータプログラム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオンビームと元素との核反応又は弾性反跳散乱を利用して被分析試料中の目的元素を定量するための定量分析方法及び装置並びにコンピュータプログラムに関し、特に、シリコン半導体ウエハ等の半導体ウエハに積層されたSi膜又はSiGe膜中に含まれる元素の定量分析に適する確度の高い元素定量分析方法のコンピュータプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハ中の元素の定量分析においては、しばしば核反応法および弾性反跳散乱分光法が用いられる。これらの定量分析方法では、通常、真空内に設置された被分析試料にMeVレベルまで加速されたイオンビームを照射し、核反応法では目的元素との核反応により発生した光子や粒子を検出し、弾性反跳散乱分光法では目的元素により弾性反跳散乱された原子を検出し、目的元素の濃度が既知である標準試料において検出されるスペクトル収量と被分析試料におけるスペクトル収量とを対比することで被分析試料における目的元素の濃度を決定する。このような手法は、特に質量数がフッ素以下の軽元素の評価に適しており、原理的には極めて定量精度の高い分析手法である。
【0003】
上記の定量分析方法では、被分析試料及び標準試料に照射するイオンビームの電流量を同一にするために、イオンビーム照射中(つまり、測定中)に試料に流れる電流(試料電流)を測定して積算することによって電荷量を算出し、この電荷量に基づいてイオンビーム照射量を決定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような試料電流の積算によって得られる電荷量に基づいてイオンビーム照射量を決定する場合、試料の設置方法による電流検出効率の違い、ホルダーの位置による二次電子回収効率の違いなどがあると、同一試料に同量のイオンビームを照射しても試料電流から積算した電荷量は異なる。つまり、このような要素によって、試料電流から積算した電荷量は同じであってもイオンビーム照射量が異なる場合が生じる。換言すれば、見かけのイオンビーム照射量と真のイオンビーム照射量との間にずれが生じる。このようなずれは、被分析試料と標準試料との間でのスペクトル収量の対比による目的元素の定量に誤差を生じる。更に、試料固有の伝導度の違いによっても、試料電流からの積算電荷量に相違が生じるので、見かけのイオンビーム照射量が同じであっても、実際のイオンビームの照射量が試料間でしばしば異なる。このような場合、得られる試料間でのスペクトル収量比は試料間での目的元素の濃度比を反映しないため、正確な定量分析が行われていないことになる。
【0005】
本発明は、上記のような試料電流に基づく見かけのイオン照射量と実際のイオン照射量との相違による定量分析の誤差を補正することにより分析誤差の小さい定量分析が可能な定量分析技術を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、目的元素を定量するためのスペクトル測定と共に試料の後方散乱スペクトルを測定することにより、イオンビーム照射量の補正が可能であることを見いだし、本発明に係る元素定量分析技術を成すに至った。
【0008】
本発明の一態様によれば、元素定量分析コンピュータプログラムは、標準試料及び被分析試料にイオンを照射した時に検出される該標準試料の後方散乱スペクトル収量A1及び該被分析試料の後方散乱スペクトル収量A2と、上記イオンを照射した時に該イオンと目的元素との核反応又は弾性反跳散乱によって検出される該標準試料のスペクトル収量B1及び該被分析試料のスペクトル収量B2と、該標準試料中の該目的元素の濃度N1とを取得するプログラムコードと、後方散乱スペクトル収量A1に対するA2の比A2/A1を用いて、前記イオンの該標準試料及び該被分析試料への照射量のずれによる定量誤差を補正するための係数kを得るプログラムコードと、上記係数kと、該標準試料及び該被分析試料におけるスペクトル収量B1及びB2と、該標準試料中の該目的元素の濃度N1とにより、N2=k・N1・(B2/B1)に従って該被分析試料の当該目的元素の濃度N2を得るプログラムコードとを有することを要旨とする。
【0009】
前記係数kを得るプログラムコードは、前記標準試料及び前記被分析試料の母材構成成分が同じであるとき、前記補正係数kとして1/(A2/A1)を得るプログラムコードと、前記標準試料及び前記被分析試料の母材構成成分が異なるときに、該標準試料及び該被分析試料の各母材成分の後方散乱断面積値σ1,σ2の比及び原子密度U1,U2の比を取得して、前記補正係数kとして1/[(A2/A1)(σ1/σ2)(U1/U2)]を得るプログラムコードとを有してよい。
【0010】
また、前記被分析試料中の前記目的元素に同位体元素が存在するときに、該目的元素の存在比αを取得して、1/αと前記補正係数kとの積を該同位体元素を含む前記目的元素の定量のための新たな補正係数として得るプログラムコードを有してよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
核反応スペクトルまたは弾性反跳散乱スペクトル(以下、これらを定量スペクトルと称する)を用いた目的元素の定量では、既知濃度の目的元素を含有する標準試料と被分析試料とに同量のイオンビームを照射することによって、標準試料及び被分析試料で検出される定量スペクトルのスペクトル収量の比率がこれらにおける目的元素の濃度比率に等しくなり、スペクトル収量の比率から被分析試料の目的元素の濃度が導かれる。しかし、前述のように、イオン照射量を決定するために用いる試料電流(試料に流れる電流)は、実際には、試料の設置方法による電流検出効率の違い、ホルダーの位置による二次電子回収効率の違い、試料固有の伝導度の違い等によってずれを生じるため、試料電流の積算電荷量を用いてイオン照射量(見かけの照射量)が同一になるように設定しても、実際のイオン照射量は標準試料と被分析試料とで一致しない。従って、被分析試料と標準試料との対比において見かけのイオン照射量と真のイオン照射量とのずれの補正が行われなければ、正確な定量はできない。
【0013】
本発明の元素定量分析方法では、実際のイオン照射量のずれに応じた補正を行うために、上述の定量スペクトルの測定と共に後方散乱スペクトルの測定を行い、標準試料及び被分析試料の後方散乱スペクトル収量の対比によって実際のイオン照射量の比を求める。後方散乱スペクトルは、試料を構成する母材元素によるもので、例えば、試料がシリコンウエハである場合にはウエハを構成するシリコンによる後方散乱スペクトルが測定される。この後方散乱スペクトル収量を用いて、試料間でのイオン照射量のずれに関する補正を行う。
【0014】
後方散乱スペクトル収量Aは、次式(1)のように、後方散乱断面積σ、検出器立体角Ω、入射イオン総数(イオン照射量)Q、標的の原子密度U、標的の厚さtによって示される。
【0015】
A=σ・Ω・Q・U・t …(1)
検出角度や試料寸法が同じで、且つ、標準試料及び被測定試料の母材が同じである時には、標準試料の後方散乱スペクトル収量A1に対する被測定試料の後方散乱スペクトル収量A2の比率(=A2/A1)は、イオンビームの実際の照射量比X、つまり、標準試料のイオン照射量に対する被測定試料のイオン照射量の比率に等しく、この照射量比Xで被測定試料の定量スペクトル収量B2を除した値(=B2/X)は、イオン照射量が標準試料と同量である時の被測定試料の定量スペクトル収量B2’となる。このスペクトル収量B2’の標準試料の定量スペクトル収量B1に対する割合は、標準試料の目的元素濃度N1に対する被分析試料の目的元素濃度N2の割合に等しいので、被分析試料の目的元素濃度N2が下記式(2)、(3)に従って定量される。
【0016】
Figure 0003719957
従って、照射量ずれによる定量誤差の補正は、照射量比Xの逆数1/Xを補正係数kとして、従来式:N2=N1(B2/B1)と補正係数との積を計算することによって行うことができる。
【0017】
また、試料を構成する母材が標準試料と被分析試料とで異なる時は、その測定条件における標準試料母材元素の被分析試料母材元素に対する後方散乱断面積値比(σ1/σ2)及び原子密度比(U1/U2)を求め、これらの値と後方散乱スペクトル収量A1,A2とから、前記式(1)に基づいてイオン照射量の比率X’を式(4)のように求めることができ、被分析試料の目的元素濃度N2’が式(5)のように決定される。
【0018】
Figure 0003719957
従って、照射量ずれによる定量誤差の補正は、照射量比X’の逆数1/X’を補正係数kとして、従来式:N2=N1(B2/B1)と補正係数との積を計算することによって行うことができる。
【0019】
更に、目的元素に同位体が存在する場合には、同位体の1つのみが測定されて上記目的元素濃度N2’として定量されるので、測定される同位体の存在比αを用いて全同位体の濃度N2”が算出される。従って、下記式(6)のようになる。
【0020】
Figure 0003719957
従って、この場合には、照射量比X’の逆数と存在比αの逆数との積1/(α・X’)を補正係数kとすることができる。
【0021】
母材が同じであって、同位体が存在する場合には、照射量比Xの逆数と存在比αの逆数との積1/(α・X)が補正係数kとなる。
【0022】
このように、標準試料及び被測定試料のイオンビーム照射量が同量である時の定量スペクトル収量に変換してイオンビーム照射量のずれを補正し、対比することによって、誤差の少ない定量が行われる。
【0023】
上記のように測定データを用いて定量を行うための定量処理プログラムは、以下のように構成される。
【0024】
まず、標準試料を選択して標準試料及び被分析試料の測定が行われると、標準試料の目的元素の濃度N1が入力され、更に、測定によって得られるデータ、つまり、標準試料及び被分析試料の定量スペクトル収量A1,A2、後方散乱スペクトル収量B1,B2が演算装置に入力される。
【0025】
次に、測定条件が演算装置に入力される。入力される測定条件としては、標準試料及び被分析試料の母材構成成分、入射イオンビームエネルギーなどがある。
【0026】
更に、以下の判断に従って、追加データの入力が行われる。まず、試料の母材構成成分が標準試料と被分析試料とで同一か異なるかを判断し、異なる場合は母材構成元素の後方散乱断面積σ及び原子密度Uが入力される。更に、目的元素について同位体元素の有無を判断し、ある場合には検出される同位体元素の存在比αが入力される。
【0027】
上記の入力データを用いて、次の様なデータ処理が行われる。
【0028】
母材構成成分が同一である場合は、演算装置により標準試料の後方散乱スペクトル収量を被分析試料の後方散乱スペクトル収量で除すことで、イオンビーム照射量比Xの逆数、1/Xを導出し、この値を被分析試料の定量スペクトル収量(核反応スペクトル収量または弾性反跳散乱スペクトル収量)B2に掛けた値を出力する。この出力値を標準試料の定量スペクトル収量B1で除し、入力済みの標準試料の目的元素濃度N1を掛けた値が被分析試料の目的元素濃度N2として最終的に出力される。これは、前記式(3)に相当する。
【0029】
母材構成成分が異なる場合は、前記式(4)によるイオンビーム照射量比X’の逆数、1/X’を導出し、前記式(5)に従って計算された目的元素濃度N2’が出力される。同位体がある場合は、前記式(6)に従って、存在比αを用いて算出した全同位体の総濃度N2”が出力される。
【0030】
以上の定量プログラムに従って定量が行われる本発明の元素定量分析方法は、例えば、図1に示すような構成の装置によって実施することができ、その工程をフローチャートとして記載すると図2のようになる。
【0031】
図1の装置は、後方散乱分光法用の検出器DAと定量スペクトル用の検出器DBとを有し、同一のチャンバー1内に配置される。定量スペクトル用の検出器DBとして核反応法もしくは弾性反跳散乱分光法用のスペクトル検出器が用いられる。チャンバー1内に設置される試料ホルダー3にイオンビーム5が照射されると、照射されている間は常に、試料の後方散乱スペクトルが検出器DAで検出され、試料からの核反応スペクトルまたは弾性反跳散乱スペクトルが検出器DBで検出される。つまり、イオンビームが試料に照射されている間は常に2種のスペクトルが検出される。検出されるスペクトルは、各々、前置増幅器7A,7B、増幅器9A,9Bを介してマルチチャンネルアナライザー11に送られてデータ処理することにより、スペクトルデータが得られる。得られたそれぞれのスペクトルデータを演算装置13において積算処理することによりスペクトル収量が得られ、前述の定量プログラムに従って演算装置13において定量処理に用いられる。試料ホルダー3には、試料電流を測定するための電流測定器(図示省略)が備えられており、測定される試料電流の値に基づいて標準試料及び比測定試料に照射されるイオンの照射量が決定される。
【0032】
検出器DA,DBは、核反応や後方散乱による生じた粒子もしくは光子を検出できるものであれば良く、エネルギー分解能が高いものが望ましい。これらの検出器のイオンビームに対する角度は、検出可能な角度であれば任意である。
【0033】
本発明の元素定量分析方法の一実施形態として、シリコン母材中の元素定量分析を例に挙げて、図1のフローチャートに沿って説明する。ここでは、核反応法によってシリコン半導体ウエハに注入されたホウ素を定量する。
【0034】
[試料の測定]
まず、被分析試料と近い濃度でホウ素がシリコン基板に注入された既知の注入濃度の標準試料を選択(工程S1)する。従って、この例では標準試料と被分析試料の基板(母材)は同一である。
【0035】
核反応法用の検出器DB及び後方散乱分光法用の検出器DAの両者が設置されたチャンバー1内の試料ホルダー3に標準試料および被分析試料を設置し、検出器の設定を行ってポンプによりチャンバーを1×10-5Torr以下まで真空引きをすることにより測定環境を整えた後、試料にイオンビームとしてプロトンビームを照射し、発生した核反応由来のα粒子および後方散乱由来のプロトンをそれぞれ検出器DA、DBで検出して核反応スペクトル及び後方散乱スペクトルを測定する(工程S2)。プロトンビームの照射により試料中のホウ素に対して選択的に、次式で表される核反応:11B(p,α)8Beが誘起される。このときのプロトンのエネルギーは共鳴エネルギーである0.65MeVが望ましいが、核反応が誘起されるエネルギーであれば任意である。検出された粒子は、演算装置により随時カウントされる。また、ここでは試料電流を計測しながら電荷を積算し、積算値があらかじめ設定した値に達したらプロトンビームの照射を停止する。ここで設定する電荷の積算値はできるだけ高いほうが望ましい。
【0036】
[データ入力]
標準試料の濃度N1が演算装置へ入力される(工程S3)。
【0037】
測定によって得られるスペクトルデータの演算処理によって算出される標準試料及び被分析試料の定量スペクトル収量A1,A2、後方散乱スペクトル収量B1,B2が演算装置に取得される(工程4)。
【0038】
測定条件を演算装置に入力する(工程S5)。入力される測定条件としては、標準試料及び被分析試料の母材構成成分、入射イオンビームエネルギーなどがある。
【0039】
[データ解析]
標準試料及び被分析試料の母材の構成成分が同じであるか否かを判断し(工程S6)、同じであれば、目的元素の同位体が試料中に有るか否かを判断する(工程S7)。工程S6において母材の構成成分が同じでなければ、標準試料及び被分析試料の母材の構成成分の後方散乱断面積及び原子密度が入力されて後方散乱断面積比及び原子密度比が演算装置によって計算され(工程S8)、この後に工程S7を行う。工程S7において、目的元素について同位体元素がなければ、被分析試料の目的元素の定量計算を行う(工程S9)。工程S7において同位体元素がある場合には、測定で検出される同位体元素の存在比αが入力され(工程S10)、工程S9を行う。
【0040】
工程S9では、標準試料及び被分析試料の定量スペクトル収量A1,A2からA2/A1を計算して、実際に照射されたプロトンビームの標準試料に対する被分析試料の照射量比Xが導出される。被分析試料の核反応スペクトル収量B2にXの逆数1/Xを掛けることにより、ビーム照射量を標準試料と同量に補正した条件での核反応スペクトル収量B2’=B2/Xが得られる。さらに、このB2/Xを標準試料の核反応スペクトル収量B1で除すことにより、標準試料に対する被分析試料の濃度比Yが得られる。そして、このYに標準試料の濃度であるN1を掛け、最終的に被分析試料の濃度としてN2を出力する(工程S11)。このときの濃度は、面濃度、体積濃度またはイオン注入ドーズ量のいずれでも良い。
【0041】
上記の方法において、母材の構成成分が異なる場合には、工程S8において入力される値から計算される比を用いて、前記式(5)により被分析試料の目的元素の定量値が算出され出力される。
【0042】
また、上記の方法はホウ素の同位体元素11Bの面濃度を算出する方法であるが、他の同位体、例えば10Bが被分析試料に含まれており、その同位体存在比が天然同位体存在比と同じであることが判っている場合は、その同位体比が工程S10においてあらかじめ演算装置に入力され、前記式(6)に従って被分析試料の目的元素の定量値が算出され出力される。
【0043】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0044】
(実施例1) 核反応法によるホウ素の定量分析
8インチのシリコン半導体ウエハに膜厚5nmのSiO2膜を成膜し、このSiO2膜中に0.2keVのエネルギーで、およそ1.0×1015/cm2のドーズ量をねらって11Bをイオン注入した試料を準備した。この11Bイオンを注入したシリコンウエハの中央部をダイヤモンドカッターを用いて約1cm×1cmに切断した。この後、切削屑を取り除くために2片の試料に対して窒素ブローを行った。
【0045】
また、標準試料として、シリコン半導体ウエハの表面に5keVのエネルギーで1.00×1015/cm2のドーズ量で11Bが注入してある標準試料を用意し、同様に約1cm×1cmに切断して切削屑を取り除いた。
【0046】
切り出された1cm角の被分析試料および標準試料を核反応分析チャンバー内に配置し、同チャンバーを真空ポンプにより1×10-6Torrになるまで真空引きをした。 次に、タンデム型加速器により0.65MeVに加速されたプロトンビームを標準試料に照射すると、試料中に含まれる11Bの一部とプロトンにより核反応が誘起され、α粒子が試料外へ放出された。また、同時に、照射されたプロトンの一部は基板を構成するSi原子との弾性散乱により後方散乱された。核反応により放出されたα粒子は、入射イオンビームに対して160°の位置に設置された半導体検出器により検出し、後方散乱されたプロトンはイオンビームに対して150°の位置に設置された半導体検出器によりそれぞれ検出された。また、これらの検出器と試料との距離は8cmとした。試料電流を測定し、その電荷量が50μC(マイクロクーロン)になったところでイオンビームの照射を停止した。被分析試料に対しても上記と同じ条件で測定を行った。
【0047】
標準試料及び被分析試料の後方散乱スペクトルは図3のようであった。両試料の共通のピークであるシリコン基板からのピークのうち、100〜200チャンネルのカウントを演算装置によって計算したところ、標準試料で48325カウント、被分析試料で47228カウントとなった。さらに、これらの値から、実際に照射された電荷量の標準試料に対する被分析試料の比は0.977と導出された。標準試料と被分析試料の核反応スペクトルは図4のようであった。同様に、演算装置によって100〜300チャンネルのカウントを計算したところ、標準試料で1642カウント、被分析試料で1570カウントとなった。これらの値と上記で得られた値0.977から、標準試料に対する被分析試料のドーズ量比は0.979と出力された。この値に標準試料のドーズ量1.00×1015/cm2を掛けることで、最終的に被分析試料の11Bのドーズ量は9.79×1014/cm2と出力された。
【0048】
(比較例1) 従来法による定量
実施例1の測定結果について、従来法によって図4の核反応スペクトルのみで定量評価を行った。
【0049】
標準試料の1642カウント、被分析試料の1570カウントおよび標準試料の既知濃度1.00×1015/cm2から、被分析試料の濃度は(1570カウント/1642カウント)×1.00×1015/cm2の計算により、9.56×1014/cm2となる。この値は、図3の後方散乱スペクトルにみられるように、両試料の実際のイオンビーム照射量のずれによって真値との誤差が含まれることが明らかである。
【0050】
(実施例2) 弾性反跳散乱分光法による窒化珪素膜中の水素の定量分析
シリコン半導体ウエハに膜厚20nmの窒化珪素(SiN)膜を成膜したウエハ試料を準備した。このシリコンウエハの中央部をダイヤモンドカッターを用いて約1cm×4cmに切断した。この後、切削屑を取り除くために2片の試料に対して窒素ブローを行った。
【0051】
また、標準試料として、シリコン半導体ウエハに膜厚20nmの窒化珪素膜を成膜してあるもので、その膜中に5.00×1016/cm2の面濃度で水素が含まれる試料を用意した。切り出された被分析試料および標準試料を弾性反跳散乱分光法用分析チャンバー内に配置し、同チャンバーを真空ポンプにより1×10-6Torrになるまで真空引きをした。 次に、タンデム型加速器により2.4MeVに加速されたヘリウムイオン(He++)ビームを標準試料に照射すると、試料中に含まれる水素と入射ヘリウムイオンとの弾性反跳散乱によって水素は試料外へ放出された。また、同時にヘリウムイオンビームの一部は基板を構成する珪素原子との弾性散乱により後方散乱された。また、同時に、照射されたヘリウムイオンの一部は基板を構成する珪素原子との弾性散乱により後方散乱された。弾性反跳散乱により放出された水素原子は、入射イオンビームに対して20°の位置に設置された半導体検出器によって検出し、そこでは後方散乱されるヘリウムイオンが検出器に入射するのを防ぐために検出器前方に10μmのマイラー膜を設置した。また、後方散乱されたプロトンはイオンビームに対して160°の位置に設置された半導体検出器により検出した。また、これらの検出器と試料との距離は8cmとした。試料電流を測定してその電荷量が30μC(マイクロクーロン)になったところでイオンビームの照射を停止した。また、被分析試料に対しても上記と同じ条件で測定を行った。
【0052】
標準試料と被分析試料の後方散乱スペクトルを図5のようになった。両試料の共通のピークであるシリコン基板からのピークのうち、150〜250チャンネルのカウントを演算装置によって計算したところ、標準試料で548547カウント、被分析試料で519938カウントとなった。さらに、これらの値から、実際に照射された電荷量の標準試料に対する被分析試料の比は0.948と導出された。標準試料と被分析試料の弾性反跳散乱スペクトルは図6のようになった。同様に、演算装置によって180〜220チャンネルのカウントを計算したところ、標準試料で8317カウント、被分析試料で5836カウントとなった。これらの値と上記で得られた値0.948から、標準試料に対する被分析試料のドーズ量比は0.740と出力された。この値に標準試料の水素面濃度5.00×1016/cm2を掛けることで、最終的に被分析試料の水素面濃度は3.70×1016/cm2と出力された。
【0053】
(比較例2) 従来法による定量
実施例2の測定結果について、従来法によって図6の弾性反跳散乱スペクトルのみで定量評価を行った。
【0054】
標準試料の8317カウント、被分析試料の5836カウントおよび標準試料の既知面濃度5.00×1016/cm2から、被分析試料の水素面濃度は、(5836カウント/8317カウント)×5.00×1016/cm2の計算により、3.51×1016/cm2となる。この値は、図5の後方散乱スペクトルにみられるように、両試料の実際のイオンビーム照射量のずれによって真値との誤差が含まれることが明らかである。
【0055】
(実施例3) 同位体を含む試料の定量分析
核反応法によるホウ素の定量分析において、標準試料と異なる母材中に天然存在比でホウ素の同位体10Bを含む試料について
被分析試料として、Ge半導体ウエハ中にホウ素が表面から2μmの深さに均一な濃度で存在し、且つ、天然存在比で同位体10Bを含むものを用意した。また、標準試料といてシリコン半導体ウエハ中に11Bが表面から2μmの深さに均一に原子比1.00%の濃度で存在しているものを用意した。
【0056】
測定は、入射エネルギーを1.0MeVで行った以外は、実施例1と同じ条件で行った。測定の後、測定条件及び試料条件として、シリコン及びゲルマニウムの各々の原子密度USi=5.00×1022atoms/cm3、UGe=4.42×1022atoms/cm3、入射エネルギー=1.0MeV、検出角150°における1MeVのプロトンに対するシリコン及びゲルマニウムの各々の後方散乱断面積σSi=0.2909barns、σGe=1.523barnsを入力した。更に、標準試料及び被分析試料について測定データから、表面から50nmまでの後方散乱スペクトル収量ASi=1305カウント、AGe=5439カウントが算出され、母材からの後方散乱スペクトル収量によるイオンビーム照射量のずれの補正を行った。この際、被分析試料に対する標準試料のイオンビーム照射量比Xは、下記の式に従って、シリコン及びゲルマニウムの各々の原子密度USi、UGe、後方散乱断面積σSi、σGe及び後方散乱スペクトル収量ASi、AGeにより算出される値とした。
【0057】
X=(ASi・σGe・UGe)/(AGe・σSi・USi
この結果、X=1.11が出力された。他方、標準試料及び被分析試料の核反応スペクトル収量BSi、BGeは、測定データから、各々、BSi=892カウント、BGe=731カウントと算出され、被分析試料に含まれる11Bの濃度は、(731カウント/892カウント)×1.11×1.00%=0.91%と算出された。この値から、更に11Bの天然存在比α=0.81を用いて、0.91%/αを計算することにより、最終的に被分析試料のホウ素濃度が1.12%と定量された。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成によれば、イオン照射量のずれの補正により誤差の少ない定量を可能とするものであり、従来困難であった半導体ウエハ中の元素定量分析を極めて高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の元素定量分析装置の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】本発明の元素定量分析方法の一実施形態を示すフローチャート。
【図3】本発明の元素定量分析方法の一実施形態における標準試料および被分析試料の後方散乱スペクトルを示すスペクトル図。
【図4】図3の後方散乱スペクトルが得られる標準試料および被分析試料の核反応スペクトルを示すスペクトル図。
【図5】本発明の元素定量分析方法の他の実施形態における標準試料および被分析試料の後方散乱スペクトルを示すスペクトル図。
【図6】図5の後方散乱スペクトルが得られる標準試料および被分析試料の弾性反跳散乱スペクトルを示すスペクトル図。
【符号の説明】
1 試料チャンバ、 3 試料ホルダー、 5 イオンビーム、
DA,DB 検出器、 7A,7B 前置増幅器、 9A,9B 増幅器、
11 マルチチャンネルアナライザー、 13 演算装置

Claims (2)

  1. 標準試料及び被分析試料にイオンを照射した時に検出される該標準試料の後方散乱スペクトル収量A1及び該被分析試料の後方散乱スペクトル収量A2と、上記イオンを照射した時に該イオンと目的元素との核反応又は弾性反跳散乱によって検出される該標準試料のスペクトル収量B1及び該被分析試料のスペクトル収量B2と、該標準試料中の該目的元素の濃度N1とを取得するプログラムコードと、後方散乱スペクトル収量A1に対するA2の比A2/A1を用いて、前記イオンの該標準試料及び該被分析試料への照射量のずれによる定量誤差を補正するための係数kを得るプログラムコードと、上記係数kと、該標準試料及び該被分析試料におけるスペクトル収量B1及びB2と、該標準試料中の該目的元素の濃度N1とにより、N2=k・N1・(B2/B1)に従って該被分析試料の当該目的元素の濃度N2を得るプログラムコードとを有し、前記係数kを得るプログラムコードは、前記標準試料及び前記被分析試料の母材構成成分が同じであるとき、前記補正係数kとして1/(A2/A1)を得るプログラムコードと、前記標準試料及び前記被分析試料の母材構成成分が異なるときに、該標準試料及び該被分析試料の各母材成分の後方散乱断面積値σ1,σ2の比及び原子密度U1,U2の比を取得して、前記補正係数kとして1/[(A2/A1)(σ1/σ2)(U1/U2)]を得るプログラムコードとを有することを特徴とする元素定量分析コンピュータプログラム。
  2. 前記被分析試料中の前記目的元素に同位体元素が存在するときに、該目的元素の存在比αを取得して、1/αと前記補正係数kとの積を該同位体元素を含む前記目的元素の定量のための新たな補正係数として得るプログラムコードを有することを特徴とする請求項記載の元素定量分析コンピュータプログラム。
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