JP3718892B2 - ヒト・テロメラーゼ活性の測定方法 - Google Patents

ヒト・テロメラーゼ活性の測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、癌細胞に特徴的なDNAポリメラーゼ(テロメラーゼ)の活性測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動物細胞などの真核細胞染色体の線状 DNAの両末端はテロメアと呼ばれ、特殊な DNA配列とそれに結合する蛋白質からなる複雑な高次構造をとっている。テロメアDNA は、チミン(T) 及びグアニン(G) (反対鎖はアデニン(A) 及びシトシン(C) )の豊富な特徴的繰り返し配列からなり、例えば、脊椎動物細胞染色体のテロメアDNA はTTAGGG(反対鎖はCCCTAA)の6塩基の繰り返しで構成されている。この配列を利用したサザンブロッティング解析により、ヒト体細胞のテロメア繰り返し配列の平均長は7キロ〜10キロベースであることが明らかにされた。
【0003】
テロメア構造は染色体の安定化に重要な機能を有すると考えられている。例えば、テロメアが細胞核の辺縁に位置することが酵母を用いた形態学的研究で明かにされており、テロメアが染色体を核の特定の位置に固定する「錨」として作用し、細胞核内で各染色体間の物理的相互作用を制御している可能性が示唆されている。また、以下のように、真核細胞の線状二本鎖DNA の複製ごとの短縮化による染色体機能の不活化を防ぐ機能を有することが示唆されている。
【0004】
線状二本鎖DNA の両鎖の同時複製の過程では、一方の DNA鎖(リーディング鎖)が3'末端をプライマーとして5'→3'DNA ポリメラーゼにより連続的に複製されるのに対し、他方の DNA鎖(ラギング鎖)では小さい RNAプライマーを用いた断続的なものになる。従って、新生鎖(ラギング鎖)の5'末端のRNA プライマーはDNA に置き換えられないので、細胞分裂を繰り返す毎に一方の娘細胞の5'末端が次第に短縮することになり、最後には染色体が不安定になって細胞が死に至る。しかしながら、生殖細胞系列ではDNA の繰り返し複製によって染色体機能が損なわれるような染色体DNA の短縮化が生じないことが明らかにされており (Allsopp, R.C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, 10114, 1992) 、テロメアやそれに隣接する領域がヘアピン構造を採ったり、短縮化に対する緩衝帯として機能している可能性が示唆されている。
【0005】
テロメアが染色体の短縮化を防ぐ機能を有することは、細胞の老化・不死化とテロメア繰り返し配列の平均長の変化との関係からも強く示唆されている。多細胞生物の線維芽細胞などをイン・ビトロで継代培養すると、継代を経るにつれて増殖能が低下し、最終的には増殖能を失った「老化」細胞となるが、予め細胞内にある種の癌遺伝子を導入しておくと永久増殖能を獲得した不死化細胞が得られる場合がある。これらは細胞レベル(イン・ビトロ)での老化現象及び発癌のモデルと理解されているが、分子レベルでの研究により、正常細胞では分裂回数の増加につれてテロメア繰り返し配列の平均長が短縮化し、その平均長は継代可能回数と相関すること、並びに、不死化細胞ではテロメア繰り返し配列の平均長が短いが、継代中にその平均長が変化しないことが明らかにされた。
【0006】
テロメア繰り返し配列平均長の制御機構の一つとして、テロメア繰り返し配列を伸長させる RNA依存性 DNAポリメラーゼ(テロメラーゼ)が注目されている。この酵素は、原生動物テトラヒメナの大核抽出液中から、テトラヒメナのテロメア繰り返し配列由来の合成オリゴヌクレオチド(TTGGGG)の3'端に同じ6塩基の繰り返し配列を付加する酵素として見い出されたものであり、活性に必要なサブユニットとしてテロメアDNA 配列の5'-TTAGGG-3'に相補的な鋳型RNA を含み、鋳型RNA を基にしてテロメアDNA の一本鎖を延長する一種の逆転写酵素である。テトラヒメナ・テロメラーゼ由来のテロメラーゼが精製され、そのcDNAがクローニングされた (Collins, K, et al., Cell, 81, 677, 1995)。このテロメラーゼは鋳型RNA と結合する80 kD のサブユニット及びプライマーとなるDNA 末端に結合する95 kD のサブユニットからなり、RNA ウイルスの RNAポリメラーゼに比較的類似の一次構造を有することが明かにされた。
【0007】
テロメラーゼの生物学的意義は、テトラヒメナや酵母などの下等真核生物で明らかにされた。すなわち、テトラヒメナ・テロメラーゼRNA 遺伝子のテロメア繰り返し配列の鋳型部分に点突然変異を導入した遺伝子で形質転換された個体では、導入されたある種の点突然変異に対応する変異テロメア繰り返し配列が生合成されると同時に増殖不可能になる。また、パン酵母・テロメラーゼ RNA遺伝子である TLC1 が破壊されると、継代を重ねるにつれてその酵母のテロメア繰り返し配列平均長が短くなり、最終的には増殖不可能となる。従って、単細胞真核生物ではテロメラーゼが細胞増殖に必須の酵素であると理解されている。
【0008】
一方、イン・ビトロでのヒト細胞の不死化過程において、テロメラーゼ活性が癌遺伝子導入後の継代初期には認められず、無限増殖能を獲得した細胞集団において検出されることが明らかにされた。また、実際のヒト癌細胞のほとんどにテロメラーゼ活性が検出される一方で、多くの正常細胞ではテロメラーゼ活性は検出されないと言われている。これらの知見から、癌細胞は、その成立過程においてテロメラーゼ活性の発現によりテロメアDNA の短縮化を免れ、永久増殖能を獲得するのではないかとの推測が可能である。従って、テロメラーゼ阻害剤が選択性の高い抗癌剤として有用であり、テロメラーゼ活性の測定により癌の早期診断が可能になると予測される。
【0009】
ヒト・テロメラーゼ発現の検出法としては、ヒト子宮頸癌由来 HeLa 細胞の細胞質分画とヒト・テロメア繰り返し配列 TTAGGG を数単位繰り返した DNA配列の一本鎖オリゴヌクレオチドに対して基質となるデオキシチミジン三リン酸 (dTTP) 、デオキシアデニン三リン酸 (dATP) 、及び32P 標識デオキシグアニン三リン酸(dGTP)を加えて保温した後、TTAGGGの繰り返し配列が数回〜数百回伸長・付加された様々な長さの一本鎖 DNA生成物を直接ポリアクリルアミド電気泳動で検出・解析する方法が知られている。しかしながら、酵素活性が低いためにこの検出方法は感度が非常に低いという問題を有しており、多量の32P標識 dGTP を使用して電気泳動ゲルをX線フィルムに長時間露光する必要があるので、この方法により多量の検体を迅速に処理して高精度の測定結果を得ることはできない。
【0010】
上記方法によりイン・ビトロで生成したテロメラーゼ繰り返し配列DNA をポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)法で増幅できることが示され(Morin, G.B., Nature, 353, 454, 1991) 、その後、PCR 反応を応用したTRAP (telomeric repeat amplification protocol)アッセイが開発されテロメラーゼ生成物の高感度検出が可能になった (Kim, N.W., et al., Science, 266, 2011, 1995)。この測定方法により様々なヒト癌検体のテロメラーゼ活性が測定され、ヒト組織では生殖巣及び癌組織以外はほぼ陰性であること、培養系では多くの不死化細胞は陽性であるが、有限分裂寿命細胞は陰性であることが明らかにされた。
【0011】
一方、TRAPアッセイにより、正常組織検体にもテロメラーゼ活性が認められること、並びに、正常組織と癌組織の間のテロメラーゼ活性の差は高々数倍であることも示された。しかしながら、TRAPアッセイによって正常組織中に検出されたテロメラーゼ活性はアーティファクトであるとの疑いがもたれている。その理由の一つは、使用する一方のプライマーがテロメア繰り返し配列のみで構成されているため、一旦鋳型より短い PCR産物が形成されるとその後のPCR 産物が元の長さには戻れず、しかも短い PCR産物はそれだけ増幅され易いので、最終の PCR産物が真のテロメラーゼ産物に比べて短いものに偏ることにある。
【0012】
従って、増幅後のDNA の分子数がテロメラーゼ産物の分子数を反映している可能性はあるものの、PCR 産物の DNA長が真のテロメラーゼ産物の長さよりも短く評価されてしまい、正常組織と癌組織との間のテロメラーゼ活性の差が見かけ上小さく見積もられてしまうことになる。また、TRAPアッセイを癌細胞テロメラーゼの阻害剤のスクリーニングに用いるような場合、標識ヌクレオチドの取込み量によって増幅後のテロメラーゼ産物を定量することが困難になり、さらに、テロメラーゼ伸長反応を観察する場合、伸長反応が阻害剤で阻害されてもDNA の長さの差が PCR産物には反映されないので、阻害効果がテロメア繰り返し配列の合成開始効率の阻害によるものか、あるいは伸長効率の阻害に基づくものであるかという判定が困難になる。
【0013】
以上に加えて、TRAPアッセイでは一般的に非特異的バックグラウンドと間違えやすい短サイズの PCR断片の有無で活性を判定せざるを得ないことも精度向上のための障害であり、簡便化のためにテロメラーゼ伸長反応と PCR反応とを連続して1本のチューブ内で行うと、細胞抽出液が PCR反応に混入して正確な測定値が得られないという問題もある(第五回広島がんセミナー国際シンポジウム「テロメラーゼとがん」)。これらの理由から、TRAPアッセイに替えて、高感度かつ高精度なテロメラーゼのアッセイ法の開発が求められている。特に、正確にテロメラーゼ産物の性状を判断でき、かつ広い範囲で活性を簡便に定量できるテロメラーゼ活性測定法の提供が望まれている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高感度かつ高精度にテロメラーゼ活性を測定できるとともに、テロメラーゼ産物の性状を正確に判断でき、かつ、広い範囲で活性を簡便に定量できるテロメラーゼ活性測定法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、テロメラーゼによるテロメア繰り返し配列の伸長反応生成物を PCR法で増幅する工程において、テロメア繰り返し配列由来の DNA配列及びそれとは無関係な DNA配列を'5側上流に配置したオリゴヌクレオチドプライマーを一組または複数組用い、各々の組み合わせに適した反応条件のもとに PCR反応を行うと、テロメラーゼ活性を正確かつ簡便に測定できることを見いだした。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0016】
すなわち本発明は、以下の工程:
(A) 5'側タグ配列-1及びTTAGGG以外のテロメア繰り返し単位の繰り返し配列からなる3'側合成開始配列を含むヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーを用いて、試料中のヒト・テロメラーゼによりヒト・テロメア繰り返し単位 TTAGGG の繰り返しからなるDNA 配列を該プライマーの3'末端に伸長させてヒト・テロメラーゼ産物を調製する工程;及び
(B) センス・プライマーである上記ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーとタグ配列-1と相補性のない5'側タグ配列-2及びヒト・テロメア繰り返し単位の相補配列 CCCTAA の繰り返しからなる3'側DNA 配列を含むアンチセンス・プライマーとを用いて工程(A) で得られたヒト・テロメラーゼ産物をポリメラーゼ・チェーン・リアクションにより増幅する工程
を含むヒト・テロメラーゼ活性の測定方法を提供するものである。
【0017】
上記発明の好ましい態様によれば、ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーがテロメア繰り返し単位 TTGGGG の繰り返し配列からなる合成開始配列を含むプライマーである上記方法;ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーがテロメア繰り返し単位 TTGGGG を少なくとも3回繰り返した配列からなる合成開始配列を含むプライマーである上記方法;アンチセンス・プライマーがヒト・テロメア繰り返し単位の相補配列 CCCTAA を少なくとも3回繰り返した配列からなるDNA 配列を含むプライマーである上記方法;及び、ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーがpTG3: 5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3'であり、アンチセンスプライマーがpTAGγ: 5'-CAGGAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3' である上記方法が提供される。
【0018】
また、本発明の別の態様により、上記の方法を含む悪性新生物性疾患の診断方法;5'側タグ配列-1及びTTAGGG以外のテロメア繰り返し単位の繰り返し配列からなる3'側合成開始配列を含み、ヒト・テロメラーゼによりヒト・テロメア繰り返し単位 TTAGGG の繰り返しからなるDNA 配列を3'末端に伸長させるためのヒト・テロメラーゼ伸長用プライマー;上記ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーとタグ配列-1と相補性のない5'側タグ配列-2及びヒト・テロメア繰り返し単位の相補配列 CCCTAA の繰り返しからなる3'側DNA 配列を含むプライマーとを含むヒト・テロメラーゼ活性測定用のプライマーセット;及び、pTG3: 5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3'及びpTAGγ: 5'-CAGGAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3' を含む上記プライマーセットが提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本明細書において、テロメラーゼとはテロメア繰り返し配列を伸長させる機能を有する RNA依存性 DNAポリメラーゼのことである (総説として Shay, J.W., et al., Mol. Cell. Diff., 2, 1, 1994; Harley, C.B., et al., Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol., 66, 1, 1994; Rhyu, M.S., J. Natl. Cancer Inst., 87, 884, 1995; Shay, J.W., et al., Cna. J. Aging, 14, 511, 1995等を参照のこと)。テロメラーゼは、ヒトを含む哺乳類動物等の多細胞真核生物、あるいは酵母や原生動物などの単細胞真核生物由来のものが知られているが、本発明の方法は、これらのテロメラーゼのうちヒト・テロメラーゼの活性測定に好適な方法である。以下、本発明の方法を工程ごとに具体的に説明する。
【0020】
(1) ヒト・テロメラーゼの抽出
ヒト・テロメラーゼの抽出に用いる細胞としては、ヒト由来の細胞であれば特に限定されない。ヒト被検細胞からヒト・テロメラーゼを抽出するために用いる抽出用緩衝液の組成としては、Tris又はHepes などの pH7〜8 付近で緩衝能を有する通常の緩衝液系、及び、それらにEGTA, PMSF, リューペプチン, アプロチニン, ペプスタチンAなどの通常用いられるプロテアーゼ阻害剤を添加したものを用いることができる。また、ヒト・テロメラーゼはRNA を活性に必須のサブユニットとしているので(Morin, G.B., Cell, 59, 521, 1989)、抽出液中に混入する可能性のある RNA分解酵素を不活化するために DTTおよび RNaseインヒビターを添加することが好ましい。さらに、細胞核の破壊による染色体DNA の漏出を防ぐために、1 mM以上のMg2+イオンを含む緩衝液が望ましい。
【0021】
ヒト・テロメラーゼの抽出は、例えば、被検細胞を上記の抽出用緩衝液に懸濁し、NP-40 やトライトン X100 などの非イオン性界面活性剤を適宜添加した後、凍結融解又はホモジナイズなど通常の生化学的手法に従って行うことができる。測定精度の向上のためには、このようにして得られる粗抽出液を 3,000 G以上の遠心分離に付して細胞核を除き、染色体DNA のテロメア繰り返し配列の混入による疑陽性の出現を防ぐことが好ましい。上記工程は氷上または 4℃前後の低温条件下で行うことが望ましい。
【0022】
(2) ヒト・テロメラーゼ産物の調製
この工程では、一本鎖オリゴ DNAプライマー(ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマー)を用いて、試料中に存在するヒト・テロメラーゼにより該プライマーの3'末端にヒト・テロメア繰り返し単位(TTAGGG)の繰り返しからなる DNA配列を伸長させて、ヒト・テロメラーゼ産物を調製する。本工程に用いられるヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーは、タグ配列-1(tag 配列-1, 5'側)と合成開始配列(3'側)とを含んでおり、該合成開始配列がヒト・テロメア繰り返し単位(TTAGGG)以外のテロメア繰り返し単位(例えば、テトラヒメナのテロメア繰り返し単位:TTGGGG)の繰り返し配列からなることを特徴としている。このプライマーは、工程(2) に続くPCR 増幅反応(工程(3) )において、PCR 増幅用のセンス・プライマーとして作用する。
【0023】
タグ配列-1としては、例えば M13ファージや pBR322 プラスミドなどのヒト染色体DNA 以外の DNA配列に由来するものを用いることができ、相同性の十分低くなる長さのものが望ましい。例えば、サンガー法において DNAシーケンスを解読する際に汎用される M13ユニバーサル・プライマーなどを用いることができる。合成開始配列としては、ヒト・テロメラーゼによって3'末端にヒト・テロメア単位の繰り返し配列が伸長される機能を有しており、かつ、ヒト・テロメア繰り返し単位(TTAGGG)以外のテロメア繰り返し単位の繰り返し配列からなるものであればいかなるものを用いてもよい。例えば、テトラヒメナのテロメア繰り返し単位(TTGGGG)の繰り返し配列などを用いることができる。合成開始配列中のテロメア繰り返し単位の繰り返し数は特に限定されないが、少なくとも3回以上が好ましく、特に好ましいのは3回である。なお、生成されたテロメア繰り返し DNA配列を精製して後述の PCR増幅工程(工程(3) )に供するための手段として、ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーの5'末端をビオチンやジニトロフェノール等の低分子で標識することが好ましい。
【0024】
ヒト・テロメラーゼ伸長反応は、工程(1) で調製した細胞抽出液に対して、反応基質であるデオキシ TTP、デオキシ ATP及びデオキシ GTP、並びに上記のヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーを適当量加えて、室温〜37℃、好ましくは24℃〜37℃の範囲の温度で保温することにより行うことができ、細胞抽出液中のヒト・テロメラーゼによってヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーの3'末端にヒト・テロメア繰り返し単位(TTAGGG)が繰り返し伸長される。デオキシヌクレオチドは約 0.1〜 1 mM 程度、ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーは約 1μM 程度の濃度で用いることが好ましい。反応を停止するには、高熱処理(例えば90℃で数分)、過剰の EDTA 添加、 RNA分解酵素及び/又は蛋白質分解酵素処理、フェノール/クロロホルム抽出、又はエタノール沈殿などの方法を用いればよい。
【0025】
上記の操作に続いて、得られたヒト・テロメラーゼ産物を精製して以下のPCR 増幅工程(工程(3) )に用いることが好ましい。精製方法としては、例えば、フェノール/クロロホルム抽出及び/又はエタノール沈殿;ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーの配列を利用した核酸ハイブリダイゼーション;ビオチンで標識されたヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーを用いた場合にはアビジンを用いたアフィニティ分離;抗 DNA抗体を用いたアフィニティ分離;あるいはそれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、それぞれの検体についてヒト・テロメラーゼ反応開始前に予め RNA分解酵素による前処理を施してヒト・テロメラーゼを不活化した陰性対照群を設置しておくと、陽性群のうちから染色体DNA の混入などによる疑陽性を排除できるので、そのような工程を含めておくことは本発明の方法の好ましい態様である。
【0026】
(3) ヒト・テロメラーゼ産物の PCR増幅
本発明の方法では、ヒト・テロメラーゼ産物の PCR増幅においてセンス・プライマーとして上記タグ配列-1を用いてもよいが、通常は上記工程(2) で使用したテロメラーゼ伸長用プライマーをそのまま使用し、アンチセンス・プライマーとして、ヒト・テロメア繰り返し配列 (TTAGGG) に相補的な配列 (CCCTAA, 3'端)及びセンス・プライマーのタグ配列-1と相補性のないタグ配列-2を含むプライマーを用いるか、又はこのプライマーとタグ配列-2のみのプライマーの混合物(混合比率は 1:1000 程度)を用いることを特徴としている。本発明の方法に使用可能なセンス・プライマー及びアンチセンス・プライマーの例を下記に示すが、本発明の方法に使用されるプライマーはこれらに限定されることはない。
【0027】
【化1】
Figure 0003718892
これらのプライマーを用いる利点は以下のとおりである。上記のアンチセンス・プライマーの3'端はヒト・テロメア繰り返し配列に相補的な CCCTAACCCT-3'であり、一方、センス・プライマーの3'端はTTGGGGTTG-3'となっているので、それぞれの最も3'端がミスマッチ配列となっており、プライマー同士の相補的結合による複合体(二重鎖DNA)が形成されないので、プライマー由来の短いDNA が増幅されることがない(上記式を参照)。
【0028】
また、このようなプライマーの組み合わせを用いてヒト・テロメラーゼ産物を PCR増幅すると、合成されたヒト・テロメラーゼ産物由来の2本鎖DNA の5'端及び3'端にはそれぞれセンス及びアンチセンスプライマー由来のタグ配列-1及びタグ配列-2が導入される。従って、第二回以降のPCR 増幅においてタグ配列を含むプライマーの全領域でハイブリダイズするように反応条件を選択すると、タグ配列を含んだ DNA(第一回PCR 産物の全長)を選択的に増幅することができ、鋳型DNA の途中からコピーが開始された短いPCR 産物の生成を防ぐことができる(下記式を参照)。
【化2】
Figure 0003718892
【0029】
そのようなPCR 増幅条件は、例えば、アニール温度、塩化カリウム濃度、及び/又は塩化マグネシウム濃度などを適宜変化させることにより達成することができるが、これらは当業者に周知かつ慣用の手段である。なお、タグ配列-2は、タグ配列-1と相補性を有しないように、例えば M13ファージや pBR322 プラスミドなどのヒト染色体DNA 以外の DNA配列から選択することができる。例えば、M13 ファージ由来のリバース・プライマーなどを好適に用いることができる。
【0030】
以上の工程(2) 及び(3) についてより具体的に説明すると、ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーとして、上記のpTG3〔M13 ファージ由来ユニバーサル・プライマー(17bp)の3'側に合成開始配列としてテトラヒメナ・テロメア繰り返し配列(21bp)を結合したもの〕を 1μM の濃度で用いてヒト・テロメラーゼ伸長反応を行った後、ヒト・テロメラーゼ産物を精製し、続いて、センスプライマーとして上記 pTG3 (4μM)と、アンチセンスプライマーとして pTAG γ〔M13 ファージ由来のリバース・プライマー(17bp)の3'側にヒト・テロメア繰り返し配列(TTAGGG に相補的なCCCTAA, 22bpを結合したもの〕(1μM)とを用いてPCR 増幅を行うことができる。もっとも、本発明の範囲はこの例に限定されることはない。
(4) PCR 産物の検出
上記の工程(3) に従ってPCR 増幅を行う際に、 PCR産物の長さ及び量を検出・測定するために、PCR 増幅時に基質となるデオキシリボヌクレオチド(dTTP、dATP、dGTP、dCTP:以下 dNTP と総称する場合がある)のうちの一種または二種以上について、対応の放射性ラベル化合物を適当な割合で加えて PCR産物を標識することができる。また、ジゴキシゲニン、フルオレッセイン、又はビオチンなどの低分子化合物で標識した dNTP を用いてPCR 産物を非放射性標識することも可能である。あるいは、プライマーの5'端を32P-ATP 及びポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン酸化したもの、または上記低分子化合物で化学修飾してPCR 産物を標識してもよい。
【0031】
放射性標識されたPCR 産物については、必要に応じて精製処理を施した後、尿素変性または非変性ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動し、オートラジオグラフィやイメージアナライザーで産物の長さ及び生産量の解析を行うことができる。また、非放射性標識されたPCR 産物については、電気泳動後、例えばナイロン膜に転写したものを各々の標識化合物に対するプローブ(例えばジゴキシゲニンに対しては抗ジゴキシゲニン抗体)を用いて可視化し、同様に解析することができる。
【0032】
さらに、本発明の方法は、 PCR産物への標識基質の総取込み量がテロメラーゼ産物の分子数及び長さに正確に反映するという特徴を有しているので、多数の被験者から分離した生体試料の分析や阻害剤の一斉スクリーニングなど迅速かつ大量処理が必要な場合には、PCR 産物への標識基質の総取込み量を指標としてヒト・テロメアーゼ伸長反応の程度を評価することが可能である。例えば、標識された PCR産物と取り込まれていない余剰の標識基質とを適当な精製法で分離した後、 RI 標識の場合は液体シンチレーション・カウンターで、非 RI 標識の場合は各々の標識化合物に対するプローブ(例えばジゴキシゲニン -dUTPで標識した場合には、抗ジゴキシゲニン抗体)を用いた ELISAによって PCR産物への標識基質の総取込み量を測定し、各検体間の相対的な差を評価することが可能である。
【0033】
本発明のテロメラーゼ活性測定方法を用いると、例えば、ヒトから分離・採取した組織や血液などに含まれるテロメラーゼの活性を正確かつ簡便に測定することができる。組織や細胞中のテロメラーゼ活性が細胞の癌化の程度を示す指標として利用できるので、本発明の方法はヒトの癌の早期診断や予後判定に有用である。また、本発明の方法は、テロメラーゼ産物の性状(テロメア繰り返しの長さなど)についての正確な情報を与えるので、制癌剤としての有用性が期待されるテロメラーゼ阻害剤のスクリーニング手段としても有用である。
【0034】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:ヒト白血病由来細胞株 U937 細胞のテロメラーゼ活性の測定
(1) U937 S100 抽出液の調製
ヒト白血病由来細胞株 U937 (アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション (ATCC) より購入;コード:CRL 1593)を 2×107 個/ml の割合で低張緩衝液 (10 mM HEPES, pH 8.0, 3 mM KCl, 1 mM MgCl2, 1 mM DTT, 0.1 mM PMSF, 1 μg/ml leupeptin, 2 μg/ml Pepstatin A, 0.5% MEGA-9, 10 U/ml RNasin)に懸濁し、氷上で20分間インキュベイトした。細胞のデブリスを低速遠心で除いた後、その上清に最終濃度 0.1 Mの NaCl を加え 4℃で20分間おだやかに混和した。さらに100,000 G の遠心分離により得られた上清に 1/4容量のグリセロールを加えてS100検体とし、 -80℃で凍結保存した。
【0035】
(2) 伸長反応
2 μM pTG3 (伸長反応用プライマー: 5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3') を含む2倍濃度の反応液 (2 mM dTTP, 2 mM dATP, 2 mM dGTP, 100 mM Tris-acetate(pH 8.0), 100 mM KOAc, 10 mM 2- メルカプトエタノール, 2 mM MgCl2, 2 mM EGTA, 2 mM Spermidine, 0.2 mM Spermine)にヒト白血病由来細胞株 U937 の S100 検体を等量混合し、30℃で60分保温した後、 5μg の RNaseを加えて37℃で15分処理した。さらに0.15μg のプロテイネースK を加えて37℃で15分保温し、ヒト・テロメラーゼを不活化した。 5μg の RNAをキャリアーとして加えた後、等容量の10 mM Tris-HCl(pH 8.0)/1 mM EDTA を飽和させたフェノール/クロロホルム(1:1) で除蛋白し、伸長用プライマーを含むDNA 及びRNA をエタノール沈殿して分離した。沈殿物を 70 % エタノールで洗浄後に乾燥し、さらに蒸留水に溶解して PCR増幅反応に供した。
【0036】
(3) PCR 増幅
20 mM Tris-HCl(pH 8.3), 75 mM KCl, 1.5 mM MgCl2, 0.005 % W-1, 50μM dTTP, 50μM dATP, 50μM dGTP, 50μM dCTP, 37 kBq α-[32P]-dCTP, 4μM 伸長用プライマー(上記工程(2) からの持ち込み), 1μM アンチセンスプライマー pTAG γ (5'-CAGGAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3')、及び1ユニットのユニット・タックポリメラーゼを含む反応液中で工程(2) で得たヒト・テロメラーゼ産物をホット・スタート PCR増幅した。反応は、1サイクルを93℃で1 分;69℃で1 分;72℃で2 分のサイクルとして計25サイクル行った後、最後に72℃、10分間インキュベイトした。
【0037】
(4) 電気泳動
PCR 増幅反応終了後、エタノール沈殿で得られた反応液中の DNAをホルムアミドで変性した後、7 M 尿素を含む 7% ポリアクリルアミド変性ゲル中で電気泳動した。乾燥した泳動ゲルを用いてフジ・バイオイメージアナライザー・BAS 2000によりPCR 増幅産物の解析を行った。その結果、図2Aに示すようにテロメラーゼ産物に特徴的な 6塩基対(bp)間隔の DNAの連続的なバンドが 180〜200 bpの長さをピークとして観察された。このバンドは、反応液から S100 検体又は伸長用プライマーを除いて反応を行った場合(各々レーン 8、6 )、予めS100検体を RNase、プロテイネースK、または熱処理して反応を行った場合(各々レーン 3、4 、5 )、及び PCR反応時のアンチセンスプライマーを除いた場合(レーン7 )には観察されなかったことから、ヒト・テロメラーゼ産物が PCR増幅されたものと考えられた。また、 PCR産物のDNA を pBlueScriptベクター(東洋紡)にクローニングして DNA配列を解読したところ、TTAGGGの6塩基の繰り返しで構成されていることが確認された。各レーンの試料は以下の通りである。
レーン1:4×104 個相当 U937 S100 検体による反応。
レーン2:4×103 個相当 U937 S100 検体による反応。
レーン3:4×104 個相当 U937 S100 検体をRNaseA(5μg)処理したものを用いた結果。
レーン4: 4×104 個相当 U937 S100 検体をプロテイネースK(0.15μg)処理したものを用いた結果。
レーン5:4×104 個相当 U937 S100 検体を熱処理(95℃、5分間)処理したものを用いた結果。
レーン6:4×104 個相当 U937 S100 検体による反応系から pTG3 を除いて実施した結果。
レーン7:4×104 個相当 U937 S100 検体による反応の後、 pTAGγを除いた PCR反応を行った結果。
レーン8:S100 検体を除いて伸長反応を行った場合。
【0038】
(5) ヒト・テロメラーゼ活性の測定感度検討及び TRAP アッセイとの比較
4 ×105 個の U937 細胞由来の S100 検体を10倍連続希釈して、各希釈濃度の検体を用いて反応させて得られたテロメラーゼ産物の量を、フジ・バイオイメージアナライザー BAS 2000 を用いてα-[32P] - dCTP の取り込みを指標にして定量した。結果を図2Bに示す。U937細胞数 4×100 〜 4×105 個の範囲でヒト・テロメラーゼ活性が検出され、105 のダイナミックレンジが得られた。
【0039】
また、上記の希釈系列について、本発明による方法及びTRAPアッセイで評価を行った結果を図3に示す。RNase 処理した試料と未処理試料とのシグナルの差をテロメラーゼ活性とし、図中の縦軸はBAS 2000で定量化した値、横軸はアッセイに用いた抽出液に含まれる細胞数を示す。本発明の方法では5分間の露光で十分な強さのシグナルが得られたが、TRAPアッセイでは弱いシグナルしか得られなかったため12時間の露光を行った。本発明の方法では103 倍量のテロメラーゼ活性の差が104 倍のシグナルの差として評価できるのに対し、TRAPアッセイでは10倍のシグナルの差として検出されたのみであった。
【0040】
例2:健常人白血球及び白血病細胞検体におけるテロメラーゼ活性の測定
(1) 健常人
例1の方法に従って23歳から98歳までの健常人8名より得られた末梢血白血球を用いて S100 検体を作製し、ヒト・テロメラーゼ活性を測定した。図4は、各検体の活性を U937 細胞の活性を1としたときの相対値として示したものである。この結果から明らかなように、健常人白血球のテロメラーゼ活性は U937 細胞の 0.05 % 以下であった。
【0041】
(2) 急性白血病症例
例1の方法に従って20歳から71歳までの急性白血病患者13名より得られた末梢血白血球を用いて S100 検体を作製し、ヒト・テロメラーゼ活性を測定した。図5は、各検体の活性を U937 細胞の活性を1としたときの相対値として示したものである。この結果から明らかなように、急性白血病発病初期の10名より得られた検体は U937 細胞の7%以下のテロメラーゼ活性を示したが、同再発例3例においては、20〜29% という高い活性が認められた。
【0042】
(3) 慢性白血病症例
例1の方法に従って52歳から85歳までの慢性白血病患者10名より得られた末梢血白血球を用いて S100 検体を作製し、ヒト・テロメラーゼ活性を測定した。図6は、各検体の活性を U937 細胞の活性を1としたときの相対値として示したものである。この結果から明らかなように、慢性白血病慢性期の2検体においてはほとんど活性は認められなかったが、急性転化の8例では1例のみ低活性であったが、他の7例は U937 細胞の 4〜40 %という高い活性を示した。
【0043】
(4) 以上のようなヒト検体を用いた試験により、(a) 健常人末梢血球のヒト・テロメラーゼ活性は極めて低く、高いものでもヒト白血病由来細胞株の2000分の1程度であること;並びに(b) 白血病症例においては、急性白血病の再発例及び慢性白血病の急性転化例などの悪性の症例で、健常人に比べて 100〜1000倍程度の活性が認められることが明らかになった。これらの結果は、本発明のテロメラーゼ測定方法が、ヒトの白血病の診断や、白血病の病態の特定などの診断に有用であることを示すものである。
【0044】
例3: ELISA法によるヒト・テロメラーゼ活性の測定
(1) ヒト・テロメラーゼ反応
例1の方法に従ってヒト白血病由来細胞株 U937 細胞から調製した S100 検体を用いてヒト・テロメラーゼ反応を行った。伸長反応用プライマーとして pTG3 の5'端をビオチン標識した bpTG3 (ビオチン化 5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3')を用いた。
【0045】
(2) アビジン/ビオチン・システムによるテロメラーゼ産物の単離・精製
0.05 M炭酸ナトリウム緩衝液 (pH 9.6) に溶解したストレプトアビジン(BRL, 5 μg/ml) をポリカーボネート製96穴マイクロタイタープレート(タカラ)に100 ul/well の割合で分注し、37℃で1時間保温してストレプトアビジンをコーティングした。ストレプトアビジン溶液を捨てた後、20 mM Tris-HCl (pH 7.5)/150 mM NaCl(TBS)に溶解したブロッキング剤(ベーリンガーマンハイム山之内, 4 mg/ml) 150μl/wellの割合で分注し、37℃で2時間ブロッキングした。TBS で希釈したテロメラーゼ伸長反応産物を25μl 加えて37℃で30分間保温し、プレート上のストレプトアビジンに結合させた。サンプル溶液を捨てた後、 TBSで 6 mg/mlに調製したビオチンを 100μl/well加えて30℃で30分保温し、余剰のストレプトアビジンをブロッキングした後、プレートを蒸留水(150μl/well) で5回洗浄した。
【0046】
(3) PCR 増幅反応
洗浄後のウェルに 20 mM Tris-HCl(pH 8.3), 75 mM KCl, 0.005 % W-1, 1.5 mM MgCl2, 4μM bpTG3(センス・プライマー), 1μM pTAGγ(アンチセンス・プライマー), 50μM dATP, 50μM dCTP, 50μM dGTP, 25μM dTTP, 1 μM ジゴキシゲニン-dUTP, 1ユニットのタックポリメラーゼを含む PCR反応液を25μl/wellとなるように加え、タカラ・ PCRサーマルサイクラーを用いて PCR増幅を行った (93℃・1分、69℃・1分、72℃・2分として28サイクル)。
【0047】
(4) ELISA
上記(2) と同様にして、ストレプトアビジンをポリカーボネート製96穴マイクロタイタープレートにコーティングしてブロッキングを行った。TBS で20倍に希釈した PCR産物を100 μl/wellとなるように加えて、37℃で30分保温してプレートに結合させた。各ウェルを0.05 % Tween 20/PBS (150μl/well) で5回洗浄した後、TBS で5,000 倍に希釈したアルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(ベーリンガーマンハイム山之内)を加えて37℃で30分保温した。プレートを 0.05% Tween 20/PBS (150μl/well) で5回洗浄し、0.1 M ジエタノールアミン緩衝液 (pH 9.5) で100 倍希釈したCSPD [Disodium 3-(4-methoxyspiro(1,2-dioxetane-3,2'-(5'-chloro)tricycro[3.3.1.13.7]decan)-4-yl)phenyl phosphate]を加えて室温で30分間化学発光を行い、ルミノメーター(ベルトールド・ジャパン)で発光量を定量した。その結果、図7に示したように基質である dNTP の濃度に依存したヒト・テロメラーゼの30℃における酵素反応の経時的変化を ELISA法を用いて測定することができた。
【0048】
【発明の効果】
本発明のテロメラーゼ活性測定方法により、例えば、ヒトから分離・採取した組織や血液などに含まれるテロメラーゼの活性を正確かつ簡便に測定することができる。特に、本発明の方法では、PCR プライマー同士の結合による短い二本鎖DNA の複製や鋳型DNA の部分的複製を防止することができるので、従来のTRAPアッセイに比較して測定感度及び精度が著しく優れており、大量迅速スクリーニング系に応用可能であるという特徴がある。従って、本発明の方法はヒトの癌の早期診断及び予後の正確な判定、並びにテロメラーゼ阻害剤のスクリーニングなどに応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法の概念をスキームで示した図である。
【図2】 テロメラーゼ活性とPCR 産物との関係を示す図である。図中、(A) はPCR 増幅産物についてのポリアクリルアミドゲル電気泳動のパターンを示す図である。(B) はテロメラーゼ活性とPCR 産物との関係をグラフで示した図であり、横軸は細胞数(対数値)を示し、縦軸はテロメラーゼ活性(対数値)を示す。
【図3】 本発明の方法及びTRAPアッセイで評価を行った結果を比較した図である。図中、縦軸はRNase 処理した試料と未処理試料とのシグナルの差をテロメラーゼ活性としてBAS 2000で定量化した値を示し、横軸はアッセイに用いた抽出液に含まれる細胞数を示す。
【図4】 8名の健常人から採取した末梢白血球のテロメラーゼ活性を示した図である。横軸下の数値は各被験者の年齢を示し、縦軸は U937 細胞の活性を1とした場合のテロメラーゼ活性(相対値)を示す。
【図5】 13名の急性白血病患者から採取した末梢血白血球のテロメラーゼ活性を示した図である。横軸下の数値は各被験者の番号、年齢、病期分類(FAB) を示し、縦軸は U937 細胞の活性を1とした場合のテロメラーゼ活性(相対値)を示す。
【図6】 10名の慢性白血病患者から採取した末梢血白血球のテロメラーゼ活性を示した図である。横軸下の数値は各被験者の年齢を示し、縦軸は U937 細胞の活性を1とした場合のテロメラーゼ活性(相対値)を示す。
【図7】 ヒト・テロメラーゼの30℃における酵素反応の経時的変化を ELISA法を用いて測定した結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 以下の工程:
    (A) 5'側タグ配列-1及びテロメア繰り返し単位 TTGGGG の繰り返し配列からなる3'側合成開始配列を含むヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーを用いて、試料中のヒト・テロメラーゼによりヒト・テロメア繰り返し単位 TTAGGG の繰り返しからなるDNA 配列を該プライマーの3'末端に伸長させてヒト・テロメラーゼ産物を調製する工程;及び
    (B) センス・プライマーである上記ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーとタグ配列-1と相補性のない5'側タグ配列-2及びヒト・テロメア繰り返し単位の相補配列 CCCTAA の繰り返しからなる3'側DNA 配列を含むアンチセンス・プライマーとを用いて工程(A) で得られたヒト・テロメラーゼ産物をポリメラーゼ・チェーン・リアクションにより増幅する工程を含むヒト・テロメラーゼ活性の測定方法。
  2. ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーがテロメア繰り返し単位 TTGGGG を少なくとも3回繰り返した配列からなる合成開始配列を含むプライマーである請求項1に記載の方法。
  3. アンチセンス・プライマーがヒト・テロメア繰り返し単位の相補配列 CCCTAA を少なくとも3回繰り返した配列からなるDNA 配列を含むプライマーである請求項1又は2に記載の方法。
  4. ヒト・テロメラーゼ伸長用プライマーがpTG3: 5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3'であり、アンチセンスプライマーがpTAGγ: 5'-CAGGAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3' である請求項1に記載の方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法により、ヒトから分離採取した細胞、組織、又は血液中のヒト・テロメラーゼ活性を測定する工程を含む癌化細胞の検出方法。
  6. 5'側タグ配列-1及びテロメア繰り返し単位 TTGGGG の繰り返し配列からなる3'側合成開始配列を含み、ヒト・テロメラーゼによりヒト・テロメア繰り返し単位 TTAGGG の繰り返しからなるDNA 配列を3'末端に伸長させるためのヒト・テロメラーゼ伸長用プライマー。
  7. 請求項6に記載のプライマーとタグ配列-1と相補性のない5'側タグ配列-2及びヒト・テロメア繰り返し単位の相補配列 CCCTAA の繰り返しからなる3'側DNA 配列を含むプライマーとを含むヒト・テロメラーゼ活性測定用のプライマーセット。
  8. pTG3: 5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3'及びpTAGγ: 5'-CAGGAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3' を含む請求項7に記載のプライマーセット。
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