JP3717254B2 - 供給熱量測定方法、供給熱量測定装置及びガス製造設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ガス製造プラント等で行われている製品ガスを製造するとともに、製造された製品ガスを消費者に販売する場合に必要となる供給熱量の測定技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、所謂、都市ガスを消費者に供給する場合にあっては、熱量調整済の製品ガスを供給するとともに、その供給過程で、供給量(流量)を測定して、ガス消費量に対する請求を求めるものとしている。
一方、例えば、発熱プラント、焼却炉プラント等の大口の消費者に対して、熱量調整済の製品ガスを供給することなく、発熱量がある程度の範囲内にある製品ガスを供給して、需要に供することも提案されている。このような場合にあっても、ガス消費量に対する請求が必要となるが、この場合も、基本的には、供給された熱量単位でこれをおこなうのが合理的である。
このような状況から、供給熱量を測定することが必要であるが、従来、この供給熱量の測定は、製品ガスの発熱量が基準値の範囲内にあることを仮定し、ガスの供給量を測定することで、この量を供給熱量に換算して、これを求めることとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、上記した供給熱量の測定方法にあっては、例えば、発熱量が所定の範囲内にはあるが、厳密な意味で一定と見なせない状態にある測定対象ガスを大口需要者に供給する場合に、的確に対応することが難しい。
【0004】
一方、従来、製品ガスの発熱量の測定は、製品ガスを製造ラインから抜きとり、大気圧状態までサンプルガスの圧力を減圧して、ラウター式比重計を使用して、比重を計測することにより行われている。
従って、このような手法にあっては、以下のような問題があった。
(1) 製造ラインとは別個の比重計を用いた測定となり、製造ラインでのリアルタイムの測定が行えない。従って、発熱量制御は、タイムラグを伴った、断続的な制御となり、改良の余地がある。
(2) 上記の比重計を使用することとなるため、計測が大気圧状態での計測となり、高圧状態にある製造ラインでの実情を代表しにくい場合もある。
(3) さらに、測定に使用した大気圧状態まで減圧したサンプルガスは、放散、廃棄するよりない。
(4) さらに、従来型の上記の比重計を使用する測定方法にあっては、精度に改良の余地があり、発熱量制御には、改善の余地がある。
従って、この手法から確定される発熱量を使用して、供給熱量の確定をおこなうには、サンプリングの回数、タイムラグ、測定精度、サンプルガスの廃棄等の問題があり、事実問題として、この方法で発熱量を、リアルタイム、オンラインで測定しながら、供給熱量を求めるのは、難点が多い。
【0005】
本発明の目的は、上記の様々な問題を解消するとともに、特に、製造ライン上で、リアルタイムの連続的な供給熱量測定を可能とする供給熱量測定方法及び装置を得ることにあり、さらに、製造ライン上で、リアルタイムの連続的な供給熱量測定をおこなうガス製造設備を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明による、メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガス(これが、実施上は製品ガスである)の供給熱量を測定する供給熱量測定方法の特徴手段は、請求項1に記載されているように、前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスとが異なった割合で混合された複数の標準ガスについて各々の音速(ここで音速とはガス中での音波の伝播速度をいい、以下同じ)と発熱量との関係から求まる音速−発熱量関係指標を予め求めておき、
前記測定対象ガスの音速と供給量および温度ならびに圧力を測定し、
求められた前記測定対象ガスの音速、温度、圧力から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求めるとともに、求められた前記測定対象ガスの発熱量と測定された前記供給量とから、前記供給熱量を求めることにある。
【0007】
この手法にあっても、供給熱量の測定にあたって、測定対象ガス固有の物性である発熱量と、供給量とが測定され、例えば、これらの積として供給熱量を求める。 ここで、本願方法にあっては、発熱量の測定方法が独特の手法で行われる。
即ち、ここで採用する手法は、ベースガス(メタン)とメタン以外のガスとの混合ガスの発熱量を計測したい場合、この混合ガスの音速を測定すれば、この混合ガスの発熱量を知ることができるという知見に基づいている。この知見は、今般、発明者が新たに見出したものである。
この知見について、簡単に説明すると、単一のガス物質(純ガスと呼ぶ)の音速は、下式に従う。
【0008】
【数1】
【0009】
さらに、複数のガス物質が混合されてなる混合ガスの音速は、下式に従う。
【0010】
【数2】
【0011】
従って、音速は、混合ガスを成す原料物質の組成比に関連した情報となっており、逆に音速を測定することで、混合ガスの分子量を知ることができ、結果的に発熱量を知ることができる。
図4に示すように、本願が具体的に対象とする熱量調整を経た天然ガスにあっては、音速と発熱量は、一次もしくは二次の相関式とできる。そこで、本願にあっては、発熱量の測定にあたっては、予め求められている関係指標に従って、音速から発熱量を求める。
このようにして求められた測定対象ガスの発熱量を使用するとともに、測定対象ガスの供給量とに基づいて、供給熱量を求めるのである。
この方法にあっては、発熱量を、測定対象ガスの音速から求めるものであるため、ガス製造プラントにある測定対象ガスの供給配管内にあるガスを対象として、音速の測定をその状態のままおこなうことができる。さらに、音速から発熱量への変換は非常に短時間に行えるため、発熱量のリアルタイム、連続的な、測定が可能である。さらに、測定に供したサンプルガスを廃棄する必要もない。一方、供給量測定は、比較的確立された技術である流量測定で行えるため、結果的に、供給熱量を本願の目的に合致した状態で測定することができる。
また、音速−発熱量関係指標を予め用意しておく段階で、サンプル数を確保することで、高い測定精度を確保でき、結果的に良好な発熱量測定をおこなうことができ、この点からも、供給熱量測定を精度よくできるようになった。
【0012】
さらに、上述の供給熱量測定方法において、請求項2に記載されているように、 一対の超音波送受信器を備え、一方の超音波送受信器から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガスの流れ内を超音波が伝播する伝播時間を双方向で捕らえ、得られる一対の伝播時間から前記測定対象ガスの流速を測定する超音波流速計を使用して、前記一対の伝播時間を検出し、
検出される前記一対の伝播時間から前記測定対象ガスの音速と流速を求めるとともに、求められた前記音速および前記測定対象ガスの温度、圧力から前記発熱量を、前記流速から前記供給量を求めることが好ましい。
超音波流速計は、流体の流速を超音波を利用して測定する手法として確立された技術であり、この流速計にあっては、超音波を流れ方向に沿う方向と、これに逆行する方向に伝播させて、互いの伝播時間から流速を求める。
ここで得られる一対の伝播時間情報は、流体の音速に関係した情報であり、この一対の伝播時間から流体の音速を求めることができる。従って、この構成の供給熱量測定方法にあっては、超音波流速計からの検出情報に基づいて、音速導出手段が測定対象ガスの音速を求め、制御に有用な情報である発熱量を求める。一方、供給量に関しては、測定される流速から、供給量を求め、これを利用する。
結果、例えば、測定対象ガスの供給流路に、超音波流量計を備え、この超音波流量計の出力情報に基づいて、測定対象ガスの発熱量と供給量を求めることにより、このような機器の追加のみで供給熱量を合理的に求めることができる。
【0013】
さて、本願に係わる、メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガスの供給熱量を測定する供給熱量測定装置の特徴構成は、請求項3に記載されているように、以下のとおりである。
前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスとが異なった割合で混合された複数の標準ガスについて各々の音速と発熱量との関係から求まる音速−発熱量関係指標を備え、
測定対象ガスの音速と供給量とを測定する音速/供給量測定手段および前記測定対象ガスの温度を測定する温度測定手段ならびに前記測定対象ガスの圧力を測定する圧力測定手段を備え、
前記音速/供給量測定手段により測定される前記測定対象ガスの音速および前記温度測定手段により測定される前記測定対象ガスの温度ならびに前記圧力測定手段により測定される前記測定対象ガスの圧力から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求める発熱量導出手段を備えるとともに、前記発熱量導出手段により得られる前記測定対象ガスの発熱量と前記音速/供給量測定手段により得られる前記供給量とから、前記供給熱量を求める供給熱量導出手段を備えるのである。
この供給熱量測定装置は、先に説明した手法に基づいて、供給熱量の測定をおこなうこととなるが、音速/供給量測定手段が測定対象である測定対象ガスの音速と供給量を計測し、発熱量導出手段が、前記音速から予め求められている音速−発熱量関係指標に基づいて、発熱量を導出し、供給熱量導出手段が測定対象ガスの発熱量と供給量とから、供給熱量を求める。
従って、この装置は、上述の方法で供給熱量測定をおこなうこととなるため、供給熱量のリアルタイム、連続的な、測定、監視が可能となる。さらに、その測定精度も優良とでき、非常に有効な供給熱量測定装置を得ることができた。
【0014】
この供給熱量測定装置にあっても、請求項4に記載されているように、一対の超音波送受信器を備え、一方の超音波送受信器から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガス流れ内を超音波が伝播する伝播時間を双方向で捕らえ、得られる一対の伝播時間から前記測定対象ガスの流速を測定する超音波流速計を備え、
前記音速/供給量測定手段が、前記超音波流速計と、前記超音波流速計により得られる前記一対の伝播時間から前記測定対象ガスの音速を導出する音速導出手段と、前記超音波流速計により得られる流速から前記供給量を導出する供給量導出手段とから構成されていることが好ましい。
先にも説明したように、超音波流速計は、流体の流速を超音波を利用して測定する手法として確立された技術であり、この流速計にあっては、超音波を流れ方向に沿う方向と、これに逆行する方向に伝播させて、互いの伝播時間から流速を求める。
ここで得られる一対の伝播時間情報は、流体の音速に関係した情報であり、この一対の伝播時間から流体の音速を求めることができる。
従って、この構成の供給熱量測定装置にあっては、超音波流速計からの検出情報に基づいて、音速/供給量測定手段に備えられる音速導出手段が測定対象ガスの音速を求め、有用な情報である発熱量を求める。一方、供給量に関しては、供給量導出手段が測定される流速から、供給量を求める。そして、これらの情報が供給熱量の導出に使用されるのである。
結果、例えば、測定対象ガスの供給流路に、超音波流量計を備え、この超音波流量計の出力情報に基づいて、測定対象ガスの発熱量と供給量を求めることにより、このような機器の追加のみで供給熱量を合理的に求めることができる。
【0015】
さて、本願に於ける、メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガスを得るガス製造設備を、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスが異なった割合で混合された複数の標準ガスについて各々の音速と発熱量との関係から求まる音速−発熱量関係指標を備え、
供給流路内にある前記測定対象ガスの音速と供給量とを求める音速/供給量測定手段と、前記測定対象ガスの温度を測定する温度測定手段と、前記測定対象ガスの圧力を測定する圧力測定手段と、前記音速/供給量測定手段により求められた前記測定対象ガスの音速および前記温度測定手段により測定される前記測定対象ガスの温度ならびに前記圧力測定手段により測定される前記測定対象ガスの圧力から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求める発熱量導出手段を備え、求められた前記測定対象ガスの発熱量と前記供給量とから、供給熱量を求める供給熱量導出手段を備えるのである。
このガス製造設備は、これまで説明してきた供給熱量測定方法を使用して、供給熱量を、オンライン、リアルタイムで特定できる状態で、製品ガスを製造、供給することができ、好ましいプラントの運転状態を確保できる。
このガス製造設備の場合も、請求項6に記載されているように、一対の超音波送受信器を備え、一方の超音波送受信器から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガス流れ内を超音波が伝播する伝播時間を双方向で捕らえ、得られる一対の伝播時間から前記測定対象ガスの流速を測定する超音波流速計を備え、
前記音速/供給量測定手段が、前記超音波流速計と、前記超音波流速計により得られる前記一対の伝播時間から前記測定対象ガスの音速を導出する音速導出手段と、前記超音波流速計により得られる流速から前記供給量を導出する供給量導出手段とから構成されていることが好ましい。
この場合も、超音波流速計を利用して、音速と流速を求め、この音速から、発熱量を求めるとともに、流速から供給量を求め、供給熱量測定をおこなうこととなり、既存の技術を利用して、供給熱量を容易に測定するガス製造設備を得ることができた。当然、この供給熱量の、監視、制御も良好におこなうことができる。
さらに、上述のガス製造設備の場合、請求項7に記載されているように、前記測定対象ガスが、熱量調整されたガスであることが好ましい。
本願の供給熱量測定方法は、基本的には、測定対象ガスが熱量調整されたガスであるかどうかを問題としないが、ガス製造設備にあっては、ラフな意味で熱量調整をおこなう場合もある。このような場合にあっても、本願のガス製造設備にあっては、供給熱量を的確に計測把握して、製品ガスの供給をおこなうことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本願の実施の形態を、以下、図面に基づいて説明する。
図1は、本願の供給熱量測定装置1を備えたガス製造設備2の構成を模式的に描いたものである。
このガス製造設備2は、LNGタンク3、LNG気化器4を上流側に備えた供給流路5を備えるとともに、この供給流路5に、熱量調整用の石油ガスを添加する調整用ガス添加機構6と、この調整用ガス添加機構6よりも下流側に備えられる製品ガス(これが測定対象ガスとなる)の発熱量と供給量との測定用の測定部7を備えて構成されている。
そして、測定部7において得られた測定情報に基づいて、製品ガスの発熱量及び供給量を求め、この発熱量と供給量から、供給状態にある製品ガスの供給熱量を求めることができるようになっている。さらに、求められた発熱量と製品ガスに求められる発熱量である目標発熱量との関係から、前記調整用ガス添加機構6に、調整制御指令が発生されるように構成されている。従って、このガス製造設備2は、発熱量に関してフィードバックがかかる様に構成されており、製品ガスの発熱量品質を良好に保つことができるとともに、供給流路5から供給される製品ガスの供給熱量を求めることができる。
ここで、本願の供給熱量測定、監視、さらに発熱量制御は、オンライン、オンタイムの連続測定、監視、制御であることに特徴がある。
【0017】
さて、上記の測定、制御を可能とするために、前述の供給流路5で、前記調整用ガス添加機構6の合流部8より上流側に、天然ガスの流量を測定する天然ガス流量測定器9が備えられている。一方、前述の調整用ガス添加機構6は、LPGタンク10、LPG気化器11を上流側に備えた添加用流路12を備えるとともに、この添加用流路12に流量制御弁13と石油ガス流量測定器14を備えている。
従って、この設備2にあっては、天然ガスの流量、これに対する石油ガスの流量が常時モニターされ、供給流路下流側に混合状態で送り出される両者の量比を検出することができる。製品ガスの発熱量を制御する必要がある場合、この量比が問題となるが、天然ガスの供給量を検出しながら、流量制御弁13の開度を適切に調整することで、両者の流量比(引いては発熱量)を調整することができる。この調整をおこなう場合に、前記測定部7において測定される情報から、前記調整用ガス添加機構6への調整制御指令を発生される。
さらに、発熱量の制御系とは別に、供給熱量の測定系が設けられている。
この系は、発熱量の測定と同時に、測定部7を通過する製品ガスの流量(これが供給量)を測定し、この発熱量と供給量の積として供給熱量を求め、出力装置30(具体的には表示装置)に出力するものである。
【0018】
以上要約すると、本願のガス製造設備2は、メタンを主成分とするベースガス原料(この例では天然ガス)が流れる供給流路5を備え、この供給流路内にあるベースガス原料に、メタンより発熱量の大きい熱量調整用ガス原料(この例では石油ガス)を、添加量を調整しながら添加する調整用ガス添加機構6を備え、熱量調整された製品ガスを得る構成となっている。
そして、この供給熱量測定をおこなうために、前述の供給熱量測定装置1が設けられているのであるが、この供給熱量測定装置1は、図1、2に示すように、測定部7に備えられる超音波流速計15、温度計16a、圧力計16bと、これらの計器からの測定情報に従って、供給熱量を求める手段とから構成されている。この手段は、マイクロコンピュータや半導体メモリ等を主要な機器として構築される。さらに、発熱量制御用に、導出される発熱量から前記調整制御指令を生成して、調整用ガス添加機構6にこの指令を発令する調整制御指令生成手段21も備えられている。
この構成について説明すると、図1に示すように、記憶手段17a、この記憶手段17aと共に働く指標生成手段17bを備え、さらに前記超音波流速計15及び音速導出手段18aと供給量導出手段18bを備えた音速供給量測定手段19、発熱量導出手段20、供給熱量導出手段22、先に説明した調整制御指令生成手段21が備えられている。
ここで、記憶手段17aは発熱量の導出に必要な情報を記憶したものであり、指標生成手段17bは後述する図4に示すような音速−発熱量指標を生成するものであり、音速供給量測定手段19は製品ガスの音速及び供給量を求めるものであり、前記発熱量導出手段20は求められた音速から発熱量を導出するものであり、供給熱量導出手段22は、求められた発熱量と供給量から供給熱量を求めるものであり、前記調整制御指令生成手段21は、求められた発熱量から調整制御指令を生成するものである。
【0019】
以下、それぞれの手段の構成、働きについてさらに詳細に説明する。
前記記憶手段17aは、メタンとメタン以外の炭化水素ガスが異なった割合で混合された複数の標準ガス各々の音速と発熱量との関係から求まる音速−発熱量関係指標を導出できる情報を記憶している。このような音速−発熱量関係指標の一例を図4に示した。同図において、実線及び破線で示されている相関線(1次相関式及び2次相関式として表すことができる)が、このような指標に相当する。
この音速−発熱量関係指標の自動生成は前述の指標生成手段17bによって行われるが、まずこれに関して説明する。この自動生成には、測定対象ガスの温度と圧力が必要であるが、これらの情報は、温度計16a及び圧力計16bから得ることができる。
前述の記憶手段17aには、予め発熱量の判明した複数の標準ガスの音速−温度−圧力の関係指標(図3に示す)が記憶されている。
そして、指標生成手段17bによる処理にあっては、図3に示す音速−温度−圧力の関係パネル上から、各発熱量を有するガスに対する音速が求められ、これが、発熱量と音速に関して整理されて、図4に示すような音速−発熱量関係指標が生成される。
この指標を使用することにより、例えば、音速が求まった場合、同図矢印付一点鎖線で示すように、音速から、ガスの発熱量を導き出すことができる。
【0020】
前記音速/供給量測定手段19は、前述の超音波流速計15及び音速導出手段18aと供給量導出手段18bとを備えている。
前記超音波流速計15からは、測定部7を流れる測定対象ガスの流速vが得られるとともに、この流速の測定にあたって、測定される一対の伝播時間T21、T12が得られる。
超音波流速計15の詳細構成について、図2、図5に基づいて説明すると、これは、一対の超音波送受信器15aを供給流路5を斜めに横断して備えている。ここで、一対の超音波送受信器15aは、流路の軸Z方向で異なった位置に配設されるため、両者間を渡る超音波は流速vの影響を受け、上流側から下流側に伝播される超音波に伝播時間は加速され、逆の場合は減速される。この流速計15においては、一方の超音波送受信器15aから他方の超音波送受信器15aへ超音波が前記製品ガスの流れ内を伝播する伝播時間を双方向で捕らえ(上流側にあるものから下流側にあるものへの超音波の伝播時間T21と、逆方向で伝播する超音波の伝播時間T12)、得られる一対の伝播時間から製品ガスの流速を測定する。従って、この超音波流速計15においては、その測定情報として、流速vと、前記一対の伝播時間T21、T12を得ることができる。
上記の音速導出手段18aは、測定された製品ガスの一対の伝播時間から、製品ガスの音速を導出できる構成とされている。
この導出過程は、前記一対の伝播時間T21、T12から音速Cを求めるものである。図5に示すように、前述の超音波流速計15に備えられる一対の超音波送受信器15aの位置関係が固定されているため、相互に送受信器間を伝播する伝播時間T12、T21は、図5、式1、式2のように記載できる。ここで、Lは図5に示す伝播経路の半分の距離であり、Cは音速を、vは製品ガスの流速を、θは、伝播経路の流路軸からの傾きを示している。
式1、式2は、2元連立方程式であるため、式3、式4に示すように、音速C及び流速vを、一対の伝播時間T12、T21から求めることができる。即ち、前述の音速導出手段は、式3の処理を行うことにより、一対の伝播時間T12、T21から音速Cを求めることができる。
一方、上記の供給量導出手段18bは、先に説明した超音波流速計15から得られる流速vに基づいて、測定部7を流れる製品ガスの供給量を求める。一般に、このような測定部7の供給流路5断面の断面積は予め判明しているため、この部位を通過する流速vが判明すると、この流速と断面積の関係から、供給圧力、温度における供給量を求めることができ、この処理をおこなうのである。さらに、温度、圧力情報から予め決められた基準状態に於ける供給量を導出する。
【0021】
次に、発熱量導出手段20の役割について説明する。
図4に矢印付一点鎖線で示すように、別途、音速測定手段20により求められる測定対象ガスの音速から、指標生成手段17bにより記憶手段17aに記憶された情報から自動生成される音速−発熱量相関指標に基づいて、この製品ガスの発熱量を求める(図4、矢印付一点鎖線参照)。
このようにして求められた製品ガスの発熱量は、供給熱量の導出に利用されるとともに、製品ガスの目標発熱量と比較され、先に説明した調整制御指令の生成に利用される。
即ち、前記供給熱量導出手段22は、求められた発熱量と供給量との積と関連した値(補正が加えられる場合もある)として、供給熱量を割り出し、これを出力装置側に送りだし、以後の用に供する。
一方、調整制御指令生成手段21は、発熱量と製品ガスの目標発熱量とを比較し、この関係(例えば差)に基づいて、先に説明した調整制御指令を生成するとともに、指令を発令する。
以上が、本願のガス製造設備2の基本構成である。
【0022】
従って、この設備2の供給熱量測定は、メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガス(具体的には製品ガス)の供給熱量を測定する場合に、前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスとが異なった割合で混合された複数の標準ガス各々の音速と発熱量との関係から求まる音速−発熱量関係指標を予め求めておき、
前記測定対象ガスの音速と供給量とを測定し、
求められた前記測定対象ガスの音速から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求めるとともに、求められた前記測定対象ガスの発熱量と測定された前記供給量とから、前記供給熱量を求めるものとなっている。
【0023】
以下、本願の手法を採用するにあたり、発明者らが行った実験及び実際の制御結果について以下説明する。
1 音速−温度−圧力の関係指標(テーブル)
この指標は、図3に示すような関係指標であり、この関係指標を求めるのに、パラメータとしての発熱量に関しては、原則的に9種のガスを標準ガスとして使用した。
これらの標準ガスの組成(%)、発熱量及び比重を表1に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
この標準ガスは、主成分として80%程度以上のメタンをベースガスとして含有するものであり、このベースガスに発熱量の調整用に熱量調整用ガス(炭素数2以上の炭化水素ガス)が添加、混合された混合ガスである。これらの混合ガスを使用することにより、所定の状態(温度・圧力状態)での音速が求められる。
上記の標準ガスを利用して、温度に関しては4状態(5、15、25、35℃)、圧力に関しても4状態(10、20、30、40kgf/cm2)の各状態(16状態)について、音速を求めた。
結果、図3、各テーブルに示すように、音速は、圧力をパラメータとして、温度の一次関係式で表現できるものであった。
従って、以下の表2に示すように、この音速と温度の一次関係の係数a、bを各標準ガス、各圧力に関して記憶することで、図3に相当する関係指標を記憶格納され、音速−発熱量関係指標の導出に使用することができる。
【0026】
【表2】
【0027】
2 音速−発熱量関係指標(テーブル)
この音速−発熱量関係指標は、先に説明した指標生成手段17bにより、記憶手段17aに記憶された情報から自動生成される。この生成にあたっては、上記のようにして得られている音速−温度−圧力の関係指標(テーブル)において、特定の温度・圧力を指定することで、発熱量の異なった各テーブルから、音速を呼び出す。即ち、図3の各テーブル間に渡って(テーブルの重なり方向で)、特定の温度・圧力での音速を読み取ることで、図4の関係指標を得る。
そして、音速と発熱量とに関してその相関線(図4の実線(一次相関式)、破線(二次相関式))を得ることで、特定の温度・圧力状態での両者の関係指標が得られる。
【0028】
この手法により、測定対象ガスの温度、圧力、音速が判明すれば、このガスの発熱量を求めることができることが判る。
このような手法によって得られた発熱量の誤差は、発熱量が9500〜10500kcal/Nm3の範囲にあるもので、15kcal/Nm3程度とすることができ、従来の比重計を使用する手法に対して、同等以上の精度を得ることができた。
【0029】
本願の供給熱量測定にあっては、上記のような手法で求められる発熱量と、別途、供給量導出手段18bにより得られる供給量を使用して、供給熱量を、オンライン、リアルタイム、連続的に測定することができる。結果、たとえ、発熱量のばらつきの比較的ある測定対象ガスを供給する場合にあっても、その供給熱量を合理的に求めることができるようになった。
ただし、これまで説明してきた図1に示すガス製造設備2の設備構成にあっては、発熱量制御の系も備えるため、このようなばらつきは非常に小さいものである。
【0030】
〔別実施の形態〕
(イ) 上記の実施の形態においては、天然ガス、石油ガス共に、気化器を経て、ガス状態になった状態で、混合する例を示したが、添加混合にあたっては、両者の一方以上が液状態にあっても良い。
但し、発熱量の測定は、ガス状態でおこなう必要がある。
このような生産設備の例を図6、図7に示した。
図6は、LNG気化器40において,LPGの添加混合が行われていることを示している。
図7は、気化器4の上流側で、LPGの添加混合が行われていることを示している。
即ち、本願において、ベースガスに対する熱量調整用ガスの添加混合にあたっては、これらのガスが気相状態にあるか液相状態にあるかを問うものではない。
即ち、いずれかの状態にあるベースガス原料熱量調整用ガス原料が、混合状態で目標発熱量を満たすように添加制御すれは良い。
(ロ) さらに、ベースガスとしてのメタンを主成分とするガスに、添加される炭化水素ガスは、その炭素数が2以上であればよい。
(ハ) 上記の実施の形態にあっては、特定構成の超音波流速計を使用したが、本願にあっては、その出力情報からガスの供給量とガスの音速を求められるものであれば、任意の構成の超音波流速計を使用することができる。
また、超音波流速計の設置方式についても、所謂、シングル反射法を示したが、他の従来行われてきた方式も使用できる。
さらに、この供給量と音速とを別々の手段で計測するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願のガス製造設備のブロック構成図
【図2】測定部の詳細構造を示す図
【図3】発熱量をパラメータとする圧力−温度−音速の関係指標を示す図
【図4】音速から発熱量を導出する場合の音速−発熱量関係指標を示す図
【図5】音速の測定原理図
【図6】ガス製造設備の別構成例を示す図
【図7】ガス製造設備の別構成例を示す図
【符号の説明】
1 供給熱量測定装置
2 ガス製造設備
15 超音波流速計
15a 超音波送受信器
17a 記憶手段
17b 指標生成手段
18a 音速導出手段
18b 供給量導出手段
19 音速/供給量測定手段
20 発熱量導出手段
22 供給熱量導出手段
Claims (7)
- メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガスの供給熱量を測定する供給熱量測定方法であって、
前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスとが異なった割合で混合された複数の標準ガスで予め発熱量が判明した標準ガスについて各々の音速−温度−圧力の関係指標から、前記測定対象ガスの温度、圧力に於ける音速と発熱量との関係として求まる音速−発熱量関係指標を予め求めておき、
前記測定対象ガスの音速と供給量および温度ならびに圧力を測定し、
求められた前記測定対象ガスの音速、温度、圧力から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求めるとともに、求められた前記測定対象ガスの発熱量と測定された前記供給量とから、前記供給熱量を求める供給熱量測定方法。 - 一対の超音波送受信器を備え、一方の超音波送受信器から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガスの流れ内を超音波が伝播する伝播時間を双方向で捕らえ、得られる一対の伝播時間から前記測定対象ガスの流速を測定する超音波流速計を使用して、前記一対の伝播時間を検出し、検出される前記一対の伝播時間から前記測定対象ガスの音速と流速を求めるとともに、求められた前記音速および前記測定対象ガスの温度、圧力から前記発熱量を、前記流速から前記供給量を求める請求項1記載の供給熱量測定方法。
- メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガスの供給熱量を測定する供給熱量測定装置であって、
前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスとが異なった割合で混合された複数の標準ガスで予め発熱量が判明した標準ガスについて各々の音速−温度−圧力の関係指標から、前記測定対象ガスの温度、圧力に於ける音速と発熱量との関係として求まる音速−発熱量関係指標を備え、
前記測定対象ガスの音速と供給量とを測定する音速/供給量測定手段および前記測定対象ガスの温度を測定する温度測定手段ならびに前記測定対象ガスの圧力を測定する圧力測定手段を備え、
前記音速/供給量測定手段により測定される前記測定対象ガスの音速および前記温度測定手段により測定される前記測定対象ガスの温度ならびに前記圧力測定手段により測定される前記測定対象ガスの圧力から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求める発熱量導出手段を備えるとともに、前記発熱量導出手段により得られる前記測定対象ガスの発熱量と前記音速/供給量測定手段により得られる前記供給量とから、前記供給熱量を求める供給熱量導出手段を備えた供給熱量測定装置。 - 一対の超音波送受信器を備え、一方の超音波送受信器から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガス流れ内を超音波が伝播する伝播時間を双方向で捕らえ、得られる一対の伝播時間から前記測定対象ガスの流速を測定する超音波流速計を備え、
前記音速/供給量測定手段が、前記超音波流速計と、前記超音波流速計により得られる前記一対の伝播時間から前記測定対象ガスの音速を導出する音速導出手段と、前記超音波流速計により得られる流速から前記供給量を導出する供給量導出手段とから構成されている請求項3の供給熱量測定装置。 - メタンを主成分とし、メタン以外の炭化水素ガスを含む混合ガスである測定対象ガスを得るガス製造設備であって、
前記メタンと前記メタン以外の炭化水素ガスが異なった割合で混合された複数の標準ガスで予め発熱量が判明した標準ガスについて各々の音速−温度−圧力の関係指標から、前記測定対象ガスの温度、圧力に於ける音速と発熱量との関係として求まる音速−発熱量関係指標を備え、
供給流路内にある前記測定対象ガスの音速と供給量とを求める音速/供給量測定手段と、前記測定対象ガスの温度を測定する温度測定手段と、前記測定対象ガスの圧力を測定する圧力測定手段と、前記音速/供給量測定手段により求められた前記測定対象ガスの音速および前記温度測定手段により測定される前記測定対象ガスの温度ならびに前記圧力測定手段により測定される前記測定対象ガスの圧力から、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記測定対象ガスの発熱量を求める発熱量導出手段を備え、求められた前記測定対象ガスの発熱量と前記供給量とから、供給熱量を求める供給熱量導出手段を備えたガス製造設備。 - 一対の超音波送受信器を備え、一方の超音波送受信器から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガス流れ内を超音波が伝播する伝播時間を双方向で捕らえ、得られる一対の伝播時間から前記測定対象ガスの流速を測定する超音波流速計を備え、
前記音速/供給量測定手段が、前記超音波流速計と、前記超音波流速計により得られる前記一対の伝播時間から前記測定対象ガスの音速を導出する音速導出手段と、前記超音波流速計により得られる流速から前記供給量を導出する供給量導出手段とから構成されている請求項5のガス製造設備。 - 前記測定対象ガスが、熱量調整されたガスである請求項5または6記載のガス製造設備。
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