JP3716697B2 - イオンビーム発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば半導体基板へのイオン注入等に用いられる装置であって、常温で液体または固体の原料物質を加熱して原料ガスを発生させてイオン源に供給する構成のイオンビーム発生装置に関し、より具体的には、所望のイオン種のイオンビームを効率良く、かつ安定して、しかも広いダイナミックレンジで発生させる手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
原料ガスを電離させてイオンビームを発生させるイオン源において安定したイオンビーム発生を行うためには、イオン源に供給するガスの圧力および流量を安定化する必要がある。
【0003】
ところが、常温で液体または固体の原料物質、例えば常温で液体または固体の有機金属(例えばトリメチルインジウム、トリエチルインジウム)等を加熱して原料ガスを発生させてそれをイオン源に供給する場合、加熱温度を一定に制御するだけではイオン源に供給する原料ガスの流量および圧力を一定に制御することが難しいので、従来は、原料ガスを水素やヘリウム等のキャリヤガスに混合してイオン源に供給していた。これは、原料物質の加熱温度が少しでも変動すると、発生する原料ガスの圧力は大きく変動し、それに伴って原料ガスの流量も大きく変動するので、これらの変動をキャリヤガスによって補償するためである。原料物質が低蒸気圧の場合は、そのガスの圧力および流量の安定化はより難しくなる。
【0004】
キャリヤガスを用いる従来のイオンビーム発生装置の一例を図2に示す。このイオンビーム発生装置は、上述したような常温で液体または固体の原料物質が収納された原料ガス源2と、この原料ガス源2を設定温度T0 に加熱してその内部の原料物質を気化させて原料ガス4を発生させる温度調節器10と、上述したようなキャリヤガス14を供給するキャリヤガス源12とを備えており、原料ガス4をキャリヤガス14に混合した混合ガス16を流量調節器18によって流量調節してイオン源20に供給して、イオン源20において当該混合ガス16を電離させてイオンビーム22を引き出す構成をしている。温度調節器10は、原料ガス源2を加熱するヒータ6と、その加熱温度調節を行う制御器8とを備えている。
【0005】
イオン源20は、例えば特開平9−35648号公報に記載されているようなバーナス(Bernus)型イオン源、あるいは周知のフリーマン型イオン源等である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記イオンビーム発生装置においては、原料ガス4をキャリヤガス14に混合してイオン源20に供給するので、原料ガス4をキャリヤガス14で薄めたことになり、そのぶんイオンビーム22中に含まれる所望のイオン種(例えばインジウムイオン)が減ることになる。即ち、所望のイオン種のイオンビームを効率良く発生させることができない。
【0007】
また、原料ガス4をキャリヤガス14で薄めたとしても、原料ガス源2から供給される原料ガス4自体の流量が変動すると、所望のイオン種のビーム量が変動することは避けられない。
【0008】
更に、原料ガス4をキャリヤガス14で薄めているので、イオン源20に許容される混合ガス16の流量範囲が制限されている中で、イオン源20に供給する原料ガス4自体の流量を変化させることのできる範囲は狭く、従って所望のイオン種のビーム量の可変範囲が狭い。即ちビーム量のダイナミックレンジが狭い。原料ガス4を多くするために混合ガス16の流量を単に多くしたのでは、イオン源20内の所定の真空度維持が困難になり、イオンビーム発生が困難になる。
【0009】
そこでこの発明は、常温で液体または固体の原料物質を用いてイオンビームを発生させるものであって、所望のイオン種のイオンビームを効率良く、かつ安定して、しかも広いダイナミックレンジで発生させることのできるイオンビーム発生装置を提供することを主たる目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明のイオンビーム発生装置は、常温で液体または固体の原料物質が収納された原料ガス源と、この原料ガス源を設定温度に加熱してその内部の前記原料物質を気化させて原料ガスを発生させる温度調節器と、前記ガス源から供給される前記原料ガスを通すものであって二次側の原料ガスの圧力を設定圧力に保持する圧力調節器と、この圧力調節器から供給される原料ガスを通すものであって当該原料ガスの流量を設定流量に保持する流量調節器と、この流量調節器から供給される前記原料ガスを電離させてイオンビームを発生させるイオン源と、前記原料ガス源から導出される前記原料ガスの圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサからの圧力信号に応答して前記温度調節器の設定温度を変化させて、前記原料ガス源から導出される前記原料ガスの圧力を設定値に対して一定範囲内に保持する制御装置とを備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、温度調節器によって原料ガス源を設定温度に加熱するだけでなく、原料ガスの圧力を検出する圧力センサおよびそれに応答して温度調節器を制御する制御装置によって、原料ガス源から導出される原料ガスの圧力を設定値に対して一定範囲内に保持することができる。
【0012】
このようにして圧力が一定範囲内に保持された原料ガスが圧力調節器に供給されるので、当該圧力調節器における圧力調節が正確になる。即ち、二次側の原料ガスの圧力を正確に設定圧力に保持することができる。
【0013】
このようにして正確に設定圧力に保持された原料ガスが流量調節器に供給されるので、当該流量調節器における原料ガスの流量調節が正確になる。即ち、原料ガスの流量を正確に設定流量に保持することができる。
【0014】
このようにして、従来例のようにキャリヤガスを用いなくても、イオン源に圧力および流量の安定した原料ガスを供給することができる。その結果、常温で液体または固体の原料物質を用いてイオンビームを発生させる場合に、所望のイオン種のイオンビームを、ビーム量の変動を抑えて安定して発生させることができる。
【0015】
しかも、キャリヤガスを用いずに原料ガスだけをイオン源に供給するので、キャリヤガスイオンがイオンビーム中に混じることはなく、従って所望のイオン種のイオンビームを効率良く発生させることができる。
【0016】
更に、キャリヤガスを用いずに原料ガスだけをイオン源に供給するので、イオン源に供給することのできるガス流量の範囲が従来例のようにキャリヤガスによって左右されることはなく、イオン源に供給する原料ガスの流量範囲を広く取ることができる。従って、所望のイオン種のビーム量の可変範囲が広くなる。即ちビーム量のダイナミックレンジが広くなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るイオンビーム発生装置の一例を示す図である。図2に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0018】
このイオンビーム発生装置は、前述したような原料ガス源2、温度調節器10およびイオン源20に加えて、原料ガス源2から供給される原料ガス4を通すものであってその二次側の原料ガス4の圧力P2 を所定の設定圧力に保持する圧力調節器24と、この圧力調節器24から供給される原料ガス4を通すものであって当該原料ガス4の流量Qを所定の設定流量に保持してイオン源20に供給する流量調節器26と、原料ガス源2から導出される原料ガス4の圧力を検出する圧力センサ28と、この圧力センサ28からの圧力信号PSに応答して温度調節器10(より具体的にはその制御器8)を制御してその設定温度T0 を変化させて、原料ガス源2から導出される原料ガス4の圧力P1 を所定の設定値に対して一定範囲内に保持する制御装置30とを備えている。原料ガス源2には、前述したような常温で液体または固体の原料物質が収納されている。この例では従来例のようなキャリヤガス14の供給系は不要であるので設けていない。
【0019】
このイオンビーム発生装置によれば、温度調節器10によって原料ガス源2を設定温度T0 に加熱するだけでなく、原料ガス4の圧力を検出する圧力センサ28およびそれに応答して温度調節器10を制御する制御装置30によって、原料ガス源2から導出される原料ガス4の圧力P1 を設定値に対して一定範囲内に保持することができる。
【0020】
このようにして圧力P1 が一定範囲内に保持された原料ガス4が圧力調節器24に供給されるので、当該圧力調節器24における圧力調節が、一次側圧力P1 を上記のように制御しない場合に比べて正確になる。即ち、二次側の原料ガス4の圧力P2 を正確に設定圧力に保持することができる。
【0021】
このようにして正確に設定圧力に保持された原料ガス4が流量調節器26に供給されるので、入力ガス圧の変動による流量変動がなく、従って当該流量調節器26における原料ガス4の流量調節が正確になる。即ち、原料ガス4の流量Qを正確に設定流量に保持してそれをイオン源20に供給することができる。
【0022】
このようにして、従来例のようにキャリヤガスを用いなくても、イオン源20に圧力および流量の安定した原料ガス4を供給することができる。その結果、常温で液体または固体の原料物質を用いてイオンビームを発生させる場合に、所望のイオン種のイオンビーム22を、ビーム量の変動を抑えて安定して発生させることができる。
【0023】
しかも、キャリヤガスを用いずに原料ガス4だけをイオン源20に供給するので、キャリヤガスイオンがイオンビーム22中に混じることはなく、従って所望のイオン種のイオンビーム22を効率良く発生させることができる。
【0024】
更に、キャリヤガスを用いずに原料ガス4だけをイオン源20に供給するので、イオン源20に供給することのできるガス流量の範囲が従来例のようにキャリヤガスによって左右されることはなく、イオン源20に供給する原料ガス4の流量範囲を広く取ることができる。即ち、イオン源20に許される最低流量から最大流量までを原料ガス4のみで実現することができる。従って、所望のイオン種のビーム量の可変範囲が広くなる。即ちビーム量のダイナミックレンジが広くなる。
【0025】
なお、圧力調節器24における二次側の設定圧力を制御装置30によって設定するようにしても良い。同様に、流量調節器26における設定流量を制御装置30によって設定するようにしても良い。この実施例ではどちらも制御装置30によって設定するようにしている。
【0026】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、従来例のようにキャリヤガスを用いなくても、イオン源に圧力および流量の安定した原料ガスを供給することができる。その結果、常温で液体または固体の原料物質を用いてイオンビームを発生させる場合に、所望のイオン種のイオンビームを、ビーム量の変動を抑えて安定して発生させることができる。
【0027】
しかも、キャリヤガスを用いずに原料ガスだけをイオン源に供給するので、所望のイオン種のイオンビームを効率良く発生させることができる。更に、キャリヤガスを用いずに原料ガスだけをイオン源に供給するので、イオン源に供給する原料ガスの流量範囲を広く取ることができ、従って所望のイオン種のイオンビームを広いダイナミックレンジで発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るイオンビーム発生装置の一例を示す図である。
【図2】従来のイオンビーム発生装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
2 原料ガス源
4 原料ガス
10 温度調節器
20 イオン源
22 イオンビーム
24 圧力調節器
26 流量調節器
28 圧力センサ
30 制御装置
Claims (1)
- 常温で液体または固体の原料物質が収納された原料ガス源と、この原料ガス源を設定温度に加熱してその内部の前記原料物質を気化させて原料ガスを発生させる温度調節器と、前記ガス源から供給される前記原料ガスを通すものであって二次側の原料ガスの圧力を設定圧力に保持する圧力調節器と、この圧力調節器から供給される原料ガスを通すものであって当該原料ガスの流量を設定流量に保持する流量調節器と、この流量調節器から供給される前記原料ガスを電離させてイオンビームを発生させるイオン源と、前記原料ガス源から導出される前記原料ガスの圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサからの圧力信号に応答して前記温度調節器の設定温度を変化させて、前記原料ガス源から導出される前記原料ガスの圧力を設定値に対して一定範囲内に保持する制御装置とを備えることを特徴とするイオンビーム発生装置。
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