JP3713688B2 - 堤状構造物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、治山ダム、砂防ダム、傾斜地の土留め体等に用いて好適な堤状構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の治山ダムは、重力式コンクリートダムが一般的である。重力式コンクリートダムは、鉄筋を用いないで、セメント、砂及び骨材により縦断面略台形状の堤体に成形したものである。また、小規模なダムの場合や山間奥地では木製ダムが用いられている。この木製ダムは図22に示すように、多数本の木材101、101、・・・をボルト・ナットで連結して柵状に形成したものを堤状に組み立てることにより枠体102を構成し、枠体102内に砕石、栗石、土砂等の中詰物103を充填して構成したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した重力式コンクリートダムは、上流側からの土圧や水圧を重量で受けるために相当程度の大きさに成形しなければならないことから、山間部に大きな構築物を設置することになるし、大量のセメントを必要とするという欠点がある。また、山間部にコンクリート面が剥き出しの状態で設置されるため景観を損なうという批判、小動物の移動や植物の繁殖の妨げになるという欠点がある。そこで、景観を少しでも損なわないための対応策としてコンクリートダムの外面、特に前面と上面に木製パネルを張り付けるといった応急処置が採られているが、後付け作業であるために費用が嵩むという問題がある。
【0004】
また、木製ダムは景観になじむという長所はあるが、木材は5〜6年後には腐朽が始まり、腐朽が始まると強度性が急速に低下するという欠点及びこのために耐用年数が短いという根本的な欠点がある。そして、最後には木製ダム自体が崩壊し、枠体102内の砕石、栗石、土砂等の中詰物103が下流に流出するために、場合によっては人災に繋るという問題がある。このため、木製ダムは人家や施設のない山間奥地にしか設置できないという欠点と、小規模なダムにしか利用できないという欠点がある。また、木材の組み付けは全て現場で行わなければならないことから、施工期間に日数を要するという欠点もある。
【0005】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、木材が腐朽しても鋼材からなる枠状骨格が縦方向に連結して形態を保持するので強度性と耐久性に優れているし、外面は木製であるので景観を損なうことがなく、しかも中詰物の流出や落下を防止することができるし、現場での作業量の削減と施工期間の短縮を図ることができる堤状構造物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために構成された発明の手段は、鉄筋芯材を軸方向に挿通した鉄筋入り木材により木製パネルを多数枚形成し、該木製パネル同士の鉄筋芯材をパネル連結体を介して連結することにより、内部を収容部とする鉄芯木製枠を形成し、該鉄芯木製枠上に更に鉄芯木製枠を形成して前記パネル連結体を介して縦方向に連結することにより地盤から所定の高さに堤体状に積層し、各層の鉄芯木製枠を形成する毎に前記収容部に砕石、土砂、栗石のいずれか1種以上の中詰物を充填したものからなる。
【0007】
そして、前記鉄芯木製枠は、前記パネル連結体を介して縦方向に連結する構成にするとよい。
【0008】
また、前記堤体状に積層した多数の鉄芯木製枠の前側又は後側に前記木製パネルを前記パネル連結体を介して横方向及び縦方向に連結することにより型枠を構成し、該型枠内にコンクリートを打設して堤状中詰体を成形するとよい。
【0009】
また、前記堤状中詰体には、前記鉄芯木製枠側に開口する貫通穴からなる複数の通水口を設けた構成にするとよい。
【0010】
更に、前記鉄芯木製枠は、前記複数枚の木製パネルを前記パネル連結体を介して横方向及び縦方向に連結することにより平面略格子状に形成して積層した構成にするとよい。
【0011】
更に、前記木製パネルは、複数本の前記鉄筋入り木材の各々に軸方向と直交する縦方向にロッド挿通穴を形成し、該複数本の鉄筋入り木材を平面状に配列した状態で該ロッド挿通穴に締結ロッドを一体に挿通して連結することにより構成するとよい。
【0012】
また、前記木製パネルは、軸方向と直交する縦方向にロッド挿通穴を穿設した挟装木材を前記鉄筋入り木材と共に平面状に配列し、該ロッド挿通穴に締結ロッドを一体に挿通して連結することにより構成するとよい。
【0013】
しかも、前記鉄芯木製枠の収容部内面には、網、多孔シート又は多孔板からなる通水性を有する面状防止材を展設した構成にするとよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図1乃至図11は第1の実施の形態を示し、図1は山間部イに設置した治山ダムや砂防ダム用の堤状構造物を示す。図2及び図3において、1は該堤状構造物を構成し、下側を地盤Aに埋設した状態で地盤Aから所望の高さに立設した前側木製堤体、2は該前側木製堤体2の後方に下側を地盤Aに埋設した状態で地盤Aから所望の高さに立設し、前側木製堤体1と一体に構築した後側木製堤体を示す。
【0015】
ここで、該前側木製堤体1は後述する多数の鉄芯木製枠11、11、・・・を横方向に連結して平面略格子状に構成すると共に縦方向に連結し、前側は3段、中間は6段、後側は9段に積層することにより階段状に構築してあり、後側木製堤体2は多数の鉄芯木製枠11、11、・・・を横長長方形に連結して枠体状に構成すると共に縦方向に連結し、11段に積層することにより構築してある。
【0016】
11は鉄芯木製枠で、該鉄芯木製枠11は多数枚の一側木製パネル12、12、・・・及び他側木製パネル18、18、・・・と、これらパネル12、18を連結するパネル連結体1、1、・・とから構成してある。該一側木製パネル12は3本の鉄筋入り木材13、13、13と2本の挟装木材14、14と、これら木材13、14を連結する締結ロッド15とから構成してある。鉄筋入り木材13は間伐材を成形した角材からなる木材本体13Aに、略中心に軸方向に沿って鉄筋挿通穴13Bを穿設し、軸方向に離間して鉄筋挿通穴13Bと直交した状態で縦方向に一対のロッド挿通穴13C、13Cを穿設し、木材本体13Aの両端側に鉄筋挿通穴13Bと直交した状態で横方向に芯材挿通穴13Dを穿設し、鉄筋挿通穴13Bに全周に雄ねじを形成した鉄筋芯材13Eを挿通したものからなっている。また、2本の挟装木材14は前記木材本体13Aと同一の長さに形成した木材本体14Aに、軸方向に離間して縦方向に一対のロッド挿通穴14B、14Bを穿設したものからなっている。
【0017】
そして、上述した3本の鉄筋入り木材13、13、13と2本の挟装木材14、14を交互に平面状に配列し、同軸上にある各ロッド挿通穴13C、14Bに締結ロッド15、15(一方のみ図示)を一体に挿通して図示しないナットを締結することにより、一側木製パネル12は1枚のパネル体に形成してある。
【0018】
次に、図9に他側木製パネル16を示す。該他側木製パネル16も3本の鉄筋入り木材17、17、17と2本の挟装木材18、18とから形成してある。該鉄筋入り木材17は前述した鉄筋入り木材13と同様に木材本体17Aに、略中心に位置して軸方向に鉄筋挿通穴17Bを穿設し、軸方向に離間して鉄筋挿通穴17Bと直交する状態で一対のロッド挿通穴17C、17Cを穿設し、鉄筋挿通穴17Bに全周に雄ねじを形成した鉄筋芯材17Dを挿通したものからなっている。また、2本の挟装木材18、18も前述した挟装木材14と同様に木材本体18Aに一対のロッド挿通穴18B、18Bを穿設したものからなっている。そして、3本の鉄筋入り木材17、17、17と2本の挟装木材18、18は交互に平面状に配列し、同軸上にある各ロッド挿通穴17C、18Bに締結ロッド19、19(一方のみ図示)を一体に挿通して図示しないナットを締結することにより、他側木製パネル16は1枚のパネル体に形成してある。
【0019】
20は一側木製パネル12の幅方向両端側に嵌着した金属製のパネル連結体を示す。該パネル連結体20は一対の挟持片20A、20Aと、該挟持片20A、20Aを略コ字状に連結する連結片20Bと、該連結片20Bから上方に突出する接続片20Cとを一体に形成し、連結片20B及び接続片20Cに芯材通し穴20D、20D、20Dを穿設したものからなっている。そして、端部の一側木製パネル12の一側鉄筋芯材13Eを芯材通し穴20Dに挿通して座金を嵌合し、ナットを螺合することにより締着する。また、一側木製パネル12と他側木製パネル16は略L字状に先端を突き合わせ、他側鉄筋芯材17Dを一対の芯材通し穴20D、20Dに挿通して座金を嵌合し、ナットを螺合することにより、両パネル2、16は強固に連結することができる。
【0020】
なお、一側木製パネル12を3本の鉄筋入り木材13と2本の挟装木材14で構成し、同様に他側木製パネル16も3本の鉄筋入り木材17と2本の挟装木材18で構成したのは、鉄芯木製枠11に必要な強度性を考慮しつつコスト及び組み立て工数の軽減を図ったことによる。従って、鉄芯木製枠により強度性が求められる場合には、一側及び他側木製パネルの全体を鉄筋入り木材で構成してもよいものである。また、一側及び他側木製パネル12、16の構成に使用する鉄筋入り木材13、17並びに挟装木材14、18の本数は実施の形態に限定されるものではなく、構成する鉄芯木製枠11の大きさに応じて使用本数は適宜選択できるものである。
【0021】
かくして、パネル連結体20は平面状に配列した5本の木材13、14をパネル状の形態に一体に支持すると共に、一側木製パネル12同士或は他側木製パネル16を強固に連結することができる。また、パネル連結体20の上端に突出する接続片20Cに上側の一側木製パネル13の一側鉄筋芯材13Eを挿通してナットを螺合することにより、上下の一側木製パネル12同士を連結することができる(図7参照)。
【0022】
次に、上述した一側木製パネル12と他側木製パネル16を連結して堤状構造物を構築する工程について説明する。図6及び図7に示すように、上述した一側木製パネル12同士は先端面を突合わせ、各鉄筋芯材13Eの先端側に高ナット21を螺着して隣接する各鉄筋芯材13Eを螺合することにより直線方向に連結する。また、他側木製パネル16は先端面を一側木製パネル12の側面に突合わせた状態にして鉄筋芯材17Dを一側木製パネル12の芯材挿通穴13Dに挿通し、先端側に高ナット21を螺着して他の他側木製パネル16の鉄筋芯材17Dと連結する。なお、連結が不要な場合は高ナット24に替えてナットを締着する。このようにして多数枚の一側木製パネル12、12、・・・と他側木製パネル16、16、・・・を略格子状に連結することにより、四角形の多数の収容部11A、11A、・・・が画成された鉄芯木製枠11を構成する。
【0023】
22は各収容部11Aの内面に展設した通水性のある面状防止材を示す。該面状防止材22は金網、合成繊維製網、多孔シート、多孔板等の通水性のある素材からなり、後述する中詰物23が鉄芯木製枠11から流出したり落下するのを防止するためのものである。なお、通水性を必要とするのは、鉄芯木製枠11内に沢水や雨水が滞留しないように排水性を持たせるためである。また、面状防止材22は中詰物23の種類により必要に応じて用いればよいものである。
【0024】
23は収容部11Aに充填した中詰物で、該中詰物23には栗石、土砂、砕石等があり、鉄芯木製枠11の設置位置に応じて1種又は複数種を充填している。
【0025】
上述の如く構成される鉄芯木製枠11は先ず、地盤Aを掘削して1段目の鉄芯木製枠11を設置し、各収容部11A内に中詰物23として土砂を充填して上面を均す(図4及び図5参照)。次に、上記と同様にして多数枚の一側木製パネル12、12、・・・と他側木製パネル16、16、・・・をパネル連結体20を介して連結し2段目の鉄芯木製枠11を組み立てる。そして、下段と上段の一側木製パネル12、12はパネル連結体20の連結片20Cを介して連結する。上述の如くして設置した2段目の鉄芯木製枠11の収容部11Aに面状防止材22を展設して中詰物23として玉石を充填する。このようにして、鉄芯木製枠11を必要な高さにまで積層し、各段の収容部11A内に中詰物23の玉石を充填することにより、前側木製堤体1を構築する。
【0026】
次に、後側木製堤体2を構築する工程について説明する。該後側木製堤体2を構成する鉄芯木製枠31は、多数枚の一側木製パネル12、12、・・・と他側木製パネル16、16、・・・を図2に示すように横長の四角形に連結して地盤Aに埋設した状態で設置し、鉄筋芯材13Eにより前側木製堤体1の鉄芯木製枠11と連結する。そして、形成される収容部31Aに面状防止材22を展設して中詰物23として土砂を充填することにより1段目を形成する。同様にして2段目以降の鉄芯木製枠31を設置し、パネル連結体20の連結片20Cを介して1段目の鉄芯木製枠31と連結する。このようにして各段の鉄芯木製枠31を形成する毎に収容部31Aに面状防止材22の展設と中詰物23として玉石の充填を行って所望の高さにまで積層することにより後側木製堤体2を構築する。なお、後側木製堤体3は前側木製堤体2の略2列の奥行を有する大きな形状に鉄芯木製枠31を形成してあるので、収容部31Aは鉄芯木製枠11の収容部11Aのように複数に区画していない。
【0027】
本実施の形態からなる堤状構造物は、鉄芯木製枠11を構成する一側木製パネル12及び他側木製パネル16には間伐材を用いることにより、少ない費用で構築することができる。また、鉄芯木製枠11を構成する一側木製パネル12と他側木製パネル16の鉄筋芯材13E、17D及びパネル連結体20、20、・・によって鋼材からなる枠状骨格を構成しているから、図10及び図11に示すように、木材本体13A、14A、17A、18Aが腐朽しても、鉄芯木製枠11、31は枠体状の形態を保持することにより、中詰物23が流出したり落下するのを可及的に防止することができる。
【0028】
しかも、鉄芯木製枠11を構成するパネル連結体20は上側の鉄芯木製枠11のパネル連結体20と連結することにより、前側及び後側木製堤体1、2の全長にわたって多数本の鉄柱を立設したのと同様の構造になるから、極めて高い強度性を有する。また、収容部11Aに面状防止材22を展設することにより、比較的小さい中詰物23が流出したり落下するのを防止して堤状構造物が経年による脆弱化を防止することができる。
【0029】
更に、本実施の形態によれば、一側木製パネル12と他側木製パネル16をパネル連結体20を介して連結することにより鉄芯木製枠11、31は容易に形成することができ、この鉄芯木製枠11、31を横方向、前後方向及び高さ方向に順次列設することにより、所望の形態の堤状構造物を容易に構築することができる。
【0030】
なお、上述した実施の形態では前側木製堤体1と後側木製堤体2は格別に構築するものとして述べたが、両者を初めから一体に構築してもよいものである。
【0031】
次に、第2の実施の形態について図12乃至図21に基づき詳述する。なお、前述した第1の実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して援用し、その説明を省略する。図において、41は堤状構造物を構成し、地盤Aに埋設した状態で成形したコンクリート製の基礎、42は該基礎41上に構築した前側木製堤体、43は該前側木製堤体42から後方、換言すれば山間部イの上流側に離間して基礎41上に構築した後側木製堤体で、該後側木製堤体43と前側木製堤体42との間には連結材として複数本の鉄筋芯材13E、13E、・・・が幅方向及び高さ方向に離間して架設してあり、両堤体42、43は一体化して構築してある。44は後側木製堤体43と前側木製堤体42を型枠としてコンクリートを打設して成形した堤状中詰体である。
【0032】
前記前側木製堤体42は後述する多数の鉄芯木製枠51、51、・・・を横方向に連結して平面略格子状に構成すると共に縦方向に連結し、前側は2段、中間は5段、後側は8段に階段状に積層し、各鉄芯木製枠51の収容部51A内に面状防止材22を展設し、中詰物23を充填することにより構築してある。また、後側木製堤体43は多数の鉄芯木製枠51、51、・・・を横方向と縦方向に連結して10段に積層し、各収容部51A内に面状防止材22を展設し、中詰物23を充填することにより構築してある。
【0033】
ここで、鉄芯木製枠51は複数枚の一側木製パネル52と他側木製パネル16を連結して構成したものからなるので、先ずこの一側木製パネル52について説明する。一側木製パネル52は、図17に示すように3本の鉄筋入り木材53、53、53と2本の挟装木材54、54とから形成してある。そして、鉄筋入り木材53は間伐材を成形した角材からなる木材本体53Aに、略中心に軸方向に沿って鉄筋挿通穴53Bを穿設し、軸方向両端側に位置して鉄筋挿通穴52Bと直交した状態で縦方向に一対の連結体収容穴53C、53Cを穿設し、該一対の連結体収容穴53C、53Cの内側寄りに位置して軸方向に離間して鉄筋挿通穴53Bと直交した状態で縦方向に一対のロッド挿通穴53D、53Dを穿設し、木材本体53Aの両端側に鉄筋挿通穴53Bと直交した状態で横方向に芯材挿通穴53Eを穿設し、木材本体53Aの鉄筋挿通穴53Bに全周に雄ねじを形成した鉄筋芯材53Fを挿通したものからなっている。
【0034】
また、2本の挟装木材54、54は前記木材本体53Aと同一の長さに形成した木材本体54Aに、軸方向両端側に位置して縦方向に一対の連結材収容穴54B、54Bを穿設し、該一対の連結体収容穴54B、54Bの内側寄りに位置して軸方向に離間して縦方向に一対のロッド挿通穴54C、54Cを穿設したものからなっている。
【0035】
そして、上述した3本の鉄筋入り木材53、53、53と2本の挟装木材54、54を交互に平面状に配列し、同軸上にある各ロッド挿通穴53D、54Bに締結ロッド15、15(一方のみ図示)を一体に挿通して締結することにより、一側木製パネル52は1枚のパネル体に形成してある。
【0036】
55は上述の如くして形成した一側木製パネル52と他側木製パネル16を連結するためのパネル連結体を示す。該パネル連結体55は図18及び図19に示すように、一側片55A及び他側片55Bを有するL型鋼材片からなり、該一側片55Aには鉄筋芯材53Fを挿通するための3個の長孔55C、55C、55Cを長手方向に離間して穿設し、他側片56Bには鉄筋芯材17Dを挿通するための3個の長孔55D、55D、55Dを長手方向に離間して穿設したものからなっている。そして、パネル連結体55はパネル体に一体化した状態の鉄筋入り木材53と挟装木材54の連結体収容穴53C、54Bにかけて挿通し、各長孔55Cに鉄筋芯材53F、各長孔55Dに鉄筋芯材17Dを挿通して先端側に座金を嵌合してナットを螺着することにより、鉄芯木製枠51が形成してある。
【0037】
上述の如くして鉄芯木製枠51を形成し、各段の鉄芯木製枠51の収容部51Aに面状防止材22を展設して中詰物23を充填する工程を繰り返して積層することにより前側木製堤体42を基礎41上に構築する。この場合、下側と上側に位置する鉄芯木製枠51、51同士の連結には金属製の連結プレート56を用いる。該連結プレート56は縦長長方形のプレート本体56Aに、下側と上側の両鉄筋芯材53F、53Fが嵌入する一対の嵌合穴56B、56Bを形成したものである(図16参照)。なお、嵌合穴56Bは縦方向の長穴に形成してあり、鉄筋芯材53Fの若干の屈曲変形や木材本体53Aの収縮等による嵌合位置のずれに対応できるようにしてある。
【0038】
次に、前記前側木製堤体42から後方に離間して基礎A上に構築する後側木製堤体43は、前側木製堤体42と同様の工程で構築してある。そして、前側木製堤体42と後側木製堤体43との間には、堤体連結材として複数本の鉄筋芯材53F、53F、・・・が幅方向及び高さ方向に適宜の間隔で架設してある。なお、該各鉄筋芯材53Fは両端が前側木製堤体42及び後側木製堤体43を構成する鉄筋芯材53Fと高ナット21を介して連結してある。また、前側木製堤体42及び後側木製堤体43を構成し、基礎41上に設置する鉄芯木製枠51、51は基礎41に植設した固定ロッド57、57、・・・に各締結ロッド15、19を高ナットを介して連結することにより、前側木製堤体42及び後側木製堤体43を基礎41に対して固定してある。
【0039】
上述の如くして構築した前側木製堤体42と後側木製堤体43の間には、両堤体42、43を型枠としてコンクリート製の堤状中詰体44が成形してある。該コンクリート製の堤状中詰体44は堤状構造物の強度性を高めるためのもので、前側木製堤体42と後側木製堤体43の両側を一側木製パネル52、52、・・・で閉塞することにより形成した型枠61内に基礎41から多数本の縦筋44A、44A、・・・を適宜の間隔で立設し、該縦筋44Aと直交した状態で複数本の横筋44B、44B、・・・を配設し、コンクリート44Cを後側木製堤体43と同じ高さまで打設することにより成形してある。そして、堤状中詰体44には、前側木製堤体42と後側木製堤体43に向けて開口する複数の通水口45、45、・・・が幅方向及び高さ方向に離間して形成してあり、堤状中詰体44によって上流側からの排水性が損なわれないようにしてある。
【0040】
本実施の形態によれば、多数の鉄芯木製枠51、51、・・・で構成する前側木製堤体42と後側木製堤体43の間にコンクリート製の堤状中詰体44を設けたから、従来技術の重力式コンクリートダムとは異なって景観を損なうことがないし、水圧や土圧を受承するから高い強度性に優れている。
【0041】
また、堤状中詰体44は、内部に多数本の鉄筋芯材53F、53F、・・・、縦筋44A、44A、・・・及び横筋44B、44B、・・・が埋設した状態になっているので、前側木製堤体42及び後側木製堤体43と一体化することにより高い強度性と安定性を有している。
【0042】
また、図20に示すように、鉄芯木製枠51の木材本体53A、17Aが腐朽しても、鉄筋芯材53F、53F、・・・とパネル連結体55、55、・・からなる枠状骨格の形態を保持するから、第1の実施の形態と同様に中詰物23が流出したり落下したりすることがないし、堤状中詰体44が水圧や土圧を受承するから強度性と耐久性に優れている。
【0043】
なお、第1及び第2の実施の形態において、鉄芯木製枠11、31、51を構成する一側木製パネル12、52及び他側木製パネル16の挟装木材14、18、54は鉄筋入り木材13、17、53と同じ長さに設定したが、ブロック状の木材を締結ロッド15、19で固定して鉄筋入り木材52、52間に横方向に間隔を設けて挟装し、複数の開口を有する一側木製パネル12、52及び他側木製パネル16に構成してもよい。このように構成することにより、当該開口に植物が定着して繁殖することによるパネル全体の緑化に有効であるし、鳥や小動物の棲息場ともなるので自然環境の保全に有効である。
【0044】
【発明の効果】
本発明は以上詳述した如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)堤状構造物は、鉄芯木製枠を形成して中詰物を充填する工程を繰り返すことにより積層する構成にしたから、所望の横幅、奥行及び高さの任意の形態の堤状構造物を大規模な工事によらずに構築することができる。
(2)堤状構造物を構成する鉄芯木製枠は木製パネルの鉄筋芯材をパネル連結体で連結する構成にしたから、木材本体が腐朽しても枠状骨格が残ることにより中詰物の流出や落下を防止することができるし、この中詰物が流出や落下することによって堤状構造物が経年により脆弱化するのを防止することができる。
(3)木製パネルを連結して鉄芯木製枠を組み立てるパネル連結体によって、鉄芯木製枠を縦方向に連結する構成にすることにより、堤状構造物は高さ方向の全長にわたって多数本の鉄柱を立設したのと同様の構造になるから、極めて高い強度性を有することができる。
(4)鉄芯木製枠は、予め工場で成形した木製パネルを現場で連結することにより形成するだけであるから、現場での施工期間を短くできるし、工事費を低減することができる。
(5)堤状構造物は短期間で構築することができるから、土砂崩れや地滑り地帯等の災害の応急復旧に用いたり、仮設の堤体として用いることができる。
(6)堤状構造物を構成する中詰物は多数の鉄芯木製枠に区々に充填してあるから、仮に一部の鉄芯木製枠が損壊した場合でも中詰物の流出や崩落が起きても被害を最小限にすることができるから安全性に優れている。
(7)コンクリート製の堤状中詰体を、堤体状に積層した鉄筋木製枠の前側又は後側に成形する構成にすることにより、土圧や水圧に対する強度性が高く、また耐久性に優れている堤状構造物にすることができる。また、堤状中詰体の前側又は後側を鉄芯木製枠で覆った形態になるから、景観を損なうことがないし、小動物の棲息に適した環境を維持することができる。
(8)コンクリート製の堤状中詰体に多数の通水口を設けて上流側からの水を下流側に逃がすようにしたから、コンクリート製堤体に過剰な水圧が掛かることがないので安全性に優れていると共に、小動物に適応した棲息環境を提供することができる。
(9)木製パネルは、鉄筋入り木材のみから構成することも、鉄筋入り木材と木材単体を複合して構成することも可能に構成してあるから、構築する堤状構造物の強度性を考慮して木製パネルに適宜使い分けることができる。
(10)鉄芯木製枠の収容部内面に通水性の面状防止材を展設したから、小石等の中詰物の流出や落下をより確実に防止することができると共に、堤状構造物の経年による脆弱化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1乃至図11は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は山間に設置した堤状構造物の正面図である。
【図2】堤状構造物の部分断面斜視図である。
【図3】堤状構造物の縦断面図である。
【図4】堤状構造物を構成する鉄芯木製枠の設置工程を示す説明図である。
【図5】堤状構造物を構成する鉄芯木製枠の他の設置工程を示す説明図である。
【図6】鉄芯木製枠の部分平面図である。
【図7】鉄芯木製枠の部分側面図である。
【図8】一側木製パネルの一部を破断にして示す斜視図である。
【図9】他側木製パネルの一部を破断にして示す斜視図である。
【図10】経年に伴う鉄芯木製枠の腐朽状態を示す説明図である。
【図11】鉄芯木製枠の木材本体が完全に腐朽した状態を示す説明図である。
【図12】図12乃至図21は第2の実施の形態に係り、図12は堤状構造物の部分断面斜視図である。
【図13】堤状構造物の縦断面図である。
【図14】図13中のI−I矢示方向部分断面図である。
【図15】鉄芯木製枠の部分平面図である。
【図16】鉄芯木製枠の部分側面図である。
【図17】一側木製パネルの一部を破断にして示す斜視図である。
【図18】一側木製パネルの部分平面図である。
【図19】鉄筋芯材とパネル連結体の結合状態を示す部分拡大図である。
【図20】経年に伴う鉄芯木製枠の腐朽状態を示す説明図である。
【図21】鉄芯木製枠の木材本体が完全に腐朽した状態を示す説明図である。
【図22】従来技術に係る木製ダムの外観斜視図である。
【符号の説明】
11、31、51 鉄芯木製枠
11A、31A、51A 収容部
12、52 一側木製パネル
13、17、53 鉄筋入り木材
13E、17D、53F 鉄筋芯材
16 他側木製パネル
20、55 パネル連結体
22 面状防止材
23 中詰体
41 基礎
44 堤状中詰体
45 通水口

Claims (8)

  1. 鉄筋芯材を軸方向に挿通した鉄筋入り木材により木製パネルを多数枚形成し、該木製パネル同士の鉄筋芯材をパネル連結体を介して連結することにより、内部を収容部とする鉄芯木製枠を形成し、該鉄芯木製枠上に更に鉄芯木製枠を形成して相互に連結することにより地盤から所定の高さに堤体状に積層し、各層の鉄芯木製枠を形成する毎に前記収容部に砕石、土砂、栗石のいずれか1種以上の中詰物を充填してなる堤状構造物。
  2. 堤体状に積層する多数の前記鉄芯木製枠は、前記パネル連結体を縦方向に連結することにより相互に連結してあることを特徴とする請求項1記載の堤状構造物。
  3. 前記堤体状に積層した多数の鉄芯木製枠の前側又は後側に前記木製パネルを前記パネル連結体を介して横方向及び縦方向に連結することにより型枠を構成し、該型枠内にコンクリートを打設して堤状中詰体を成形したことを特徴とする請求項1記載の堤状構造物。
  4. 前記堤状中詰体には、前記鉄芯木製枠側に開口する貫通穴からなる複数の通水口を設けてあることを特徴とする請求項3記載の堤状構造物。
  5. 前記鉄芯木製枠は、前記複数枚の木製パネルを前記パネル連結体を介して横方向及び縦方向に連結することにより平面略格子状に形成して積層してあることを特徴とする請求項1記載の堤状構造物。
  6. 前記木製パネルは、複数本の前記鉄筋入り木材の各々に軸方向と直交する縦方向にロッド挿通穴を形成し、該複数本の鉄筋入り木材を平面状に配列した状態で該ロッド挿通穴に締結ロッドを一体に挿通して連結することにより構成してあることを特徴とする請求項1記載の堤状構造物。
  7. 前記木製パネルは、軸方向と直交する縦方向にロッド挿通穴を穿設した挟装木材を前記鉄筋入り木材と共に平面状に配列し、該ロッド挿通穴に締結ロッドを一体に挿通して連結することにより構成してあることを特徴とする請求項6記載の堤状構造物。
  8. 前記鉄芯木製枠の収容部内面には、網、多孔シート又は多孔板からなる通水性を有する面状防止材を展設してあることを特徴とする請求項1記載の堤状構造物。
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