JP3711878B2 - 推進ヘッド位置方向計測方法及び推進ヘッド位置方向計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非開削で配管を地中に敷設するための推進工法における推進ヘッド位置方向計測方法及び推進ヘッド位置方向計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
非開削で配管を地中に敷設するための推進工法においては、その施工中の推進パイプ先端の位置及びその方向を検出することは、推進方向を修正して管路軌跡を所定の管理範囲内に制御するために重要な情報である。
【0003】
従来、推進ヘッド位置を計測する技術として、地磁気を利用するものがあった。この技術を図7を用いて説明する。図7に示すように、推進ヘッド100の先端に、推進ヘッドに対する地磁気の方位角を求める地磁界検出器701と、水平方向に対する推進方向の傾斜角と推進方向を軸とする回転角を検出できる角度検出器702と、演算器710とから構成されている。この装置では、検出される推進ヘッド100の方位角と傾斜角から推進距離に応じて変位量を計算し、積算することで推進ヘッド位置を求める。なお、推進方向の位置は、推進中の推進パイプの長さを管理することで求まる。したがって、この方式では、推進方向に対して、水平位置と深さ位置が求められることとなる。
【0004】
また、従来、推進ヘッド位置を計測する技術として、特開平9−72192号公報に開示されているような人工磁界を用いたものがあった。この技術を図8を用いて説明する。図8に示すように、推進工事の推進計画線上に磁界発生コイル802を設置し、推進距離を推進距離測定器808により管理し、地中の推進ヘッド801がコイル802真下近傍に達したとき、電源807からコイル802に直流あるいは矩形交番電流を通電し地中に人工磁界を発生させる。コイル802に通電したときの3軸磁界強度から通電しないときの3軸磁界強度を差し引いて求めた3軸磁界強度と、別途測定した先端の姿勢角から、演算器810により、推進ヘッドの水平位置と深さ位置を求める。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図7に示した装置では、地磁気を利用しているが、特に都市部においては、測定場所近傍に存在する磁性体からなる自動車や構造物、他の埋設管の影響を受け、地磁気は空間的に乱れていることが多い。そのため、方位角度は誤差を持つ。この誤差が小さくても、これを用いて求めた変位量を積算してえられる推進ヘッド位置は、大きな誤差を持ち、都市部では実用にならないという問題があった。
【0006】
また、図8に示した装置では、人工磁界から推進ヘッド位置を求めるだけで、推進ヘッドの方向は計測できない。深さ方向については傾斜計などを使用すれば計測できるが、水平方向については不明である。実際の推進工事において、推進方向を修正するときには、推進ヘッド位置のみならず、推進ヘッドの方向についての情報が有効である。したがって、この従来技術では、このような推進工事の修正に対して十分な計測装置とならないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、磁気が空間的に乱れていても、推進ヘッドの位置を正確に測定することが可能な推進ヘッド位置方向計測方法及び推進ヘッド位置方向計測装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
[構成]
本発明は、上記目的を達成するために以下のように構成されている。
【0009】
(1)本発明(請求項1)に係わる推進ヘッド位置方向計測方法は、推進ヘッド内に推進方向に沿って設けられた複数の磁界検出器を用いて、各磁界検出器が設置された位置での前記推進方向に対する磁界方位角をそれぞれ求めるステップと、求められた複数の磁界方位角を用いて、複数の磁界検出器から選択された磁界検出器から前記推進方向前方に距離L’離れた仮想位置Pにおける、前記推進方向に対する磁界方位角φpを推定するステップと、前記推進ヘッドの推進距離を測定するステップと、測定された推進距離が距離L’になった時点で、前記選択された磁界検出器を用いて、前記推進ヘッドの推進方向に対する磁界方位角φβを求めるステップと、前記磁界方位角φpと磁界方位角φβとを比較して、前記推進ヘッドの水平方向の変化を演算するステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
さらに、磁界検出器が2個の場合の本発明(請求項2)に係わる推進ヘッド位置方向計測方法は、推進ヘッドに設けられた第1の磁界検出器を用いて、第1の磁界方位角を求めるステップと、前記推進ヘッドの推進距離を測定するステップと、前記推進ヘッドに設けられた第1の磁界検出器の後方に位置する第2の磁界検出器を用いて、第2の磁界方位角を求めるステップと、第1の磁界方位角と第2の磁界方位角から第1の磁界検出器付近の仮想位置における第3の磁界方位角を推定するステップと、第1の磁界方位角および第2の磁界方位角から第3の磁界方位角を推定してから、測定された前記推進ヘッドの推進距離が第2の磁界検出器と仮想位置との間隔距離になった時点で、再び第2の磁界検出器で求めた主磁界方位角と前記第3の磁界方位角とを比較して、前記推進ヘッドの水平方向の変化を演算するステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい実施様態を以下に示す。
磁界方位角測定時に、磁界検出器が設けられた推進ヘッドの傾斜角を測定し、測定された傾斜角に基づいて前記推進ヘッドの深さ方向の変化を測定すること。
【0012】
複数回測定された前記推進ヘッドの水平方向の変化を積算して、前記推進ヘッドの水平方向の位置を計測すること。
主磁界方位角が測定されるたびに、磁界検出器が設けられた推進ヘッドの傾斜角を測定し、測された傾斜角に基づいて前記推進ヘッドの深さ方向の変化を複数回測定し、複数回測定された前記推進ヘッドの水平方向および深さ方向の変化をそれぞれ積算して推進ヘッドの位置を計測すること。
磁界検出器は、前記推進ヘッドに固定され、磁界検出器で磁界を検出すると共に、前記推進ヘッドの回転角および傾斜角を測定し、測定された磁界、回転角、傾斜角に基づいて、磁界方位角を求めること。
磁界方位角として、地磁気の方位角を検出すること。
地表に設置された磁場発生器により人工磁場を発生させ、磁界方位角として、前記人工磁場の方位角を検出ること。
【0013】
(2)本発明に係わる推進ヘッド位置方向計測装置は、地中の推進ヘッドに推進方向に設けた複数の磁界検出器と、前記推進距離を測定する推進距離検出器と、それぞれの検出結果に基づいて、前記推進ヘッドの水平方向の変化を算出する演算処理器とを具備してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい実施様態を以下に記す。
磁界検出器は前記推進ヘッドに固定され、前記推進ヘッドの回転角および傾斜角を検出する姿勢検出器と、磁界検出器で測定された磁界と、姿勢検出器で検出された回転角及び/又は傾斜角に基づいて磁界方位角を求める演算処理器とをさらに具備してなること。
地表に設けられた人工磁場発生手段をさらに具備してなること。
【0015】
[作用]
本発明は、上記構成によって以下の作用・効果を有する。
【0016】
ほぼ同じ場所で、複数回磁場を測定すると共に、推進ヘッドの傾斜角を測定することにより、近傍の磁性構造物による地磁気の乱れが存在しても、その空間の乱れによらず推進ヘッド部の地磁気あるいは人工磁場の方位角を求めることができ、これを推進距離に応じて変位に変換し、積算することで、推進ヘッド部の位置が正確に測定することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、推進ヘッド100は、高剛性の柱状体からなり、先端が掘削機能を有し地中を推進する。推進ヘッド100は、推進パイプ103の先端に取り付けられる。推進パイプ103はパイプ又はロッドよりなり、推進ヘッド100に回転と推進力を伝達する。推進パイプ103は推進ヘッド100より柔軟性を有する。
【0019】
地中の推進ヘッド100内に第1の磁界検出器101と第2の磁界検出器102とが設置されている。第1の磁界検出器101は推進ヘッド100に設置され、第2の磁界検出器102は第1の磁界検出器101の後方Lだけ離れた位置に設置されている。高い精度を得るためには、第1の磁界検出器101は先端に近い位置に設置することが好ましい。推進ヘッド100内には、重力加速度方向検出器110が設置されている。重力加速度方向検出器110により測定された3軸方向の重力加速度から、推進ヘッドの傾斜角と回転角とが求められる。更に、この求められた傾斜角と回転角を用いて、3軸方向の地磁気の測定値を座標変換することで、推進ヘッド100の推進方向に対する地磁気の方位角を測定することができる。なお、以下では推進ヘッド100の推進方向に対する地磁気の方位角を地磁気の方位角と略記する。
【0020】
推進ヘッド100の推進距離を測定する推進距離測定器120が地上に設けられている。第1及び第2の磁界検出器101,102、重力加速度方向検出器110、並びに推進距離測定器120に、それぞれの測定結果から推進ヘッドの水平位置と深さ位置を算出する演算処理器130が設けられている。ここで推進ヘッドの位置とは、推進ヘッドの先端部や中央部等、工事を進めるのに必要な部位の位置のことである。必要に応じて任意に設定する。通常は推進ヘッドの先端位置を用いる。任意に設定された位置は、推進ヘッドと第1の磁界検出器及び/又は第2の磁界検出器(及び必要に応じて重力加速度方向検出器)との位置関係を用いて、算出された第1の磁界検出器又は第2の磁界検出器の水平位置、深さ位置を補正することで求めることができる。第1の磁界検出器が充分推進ヘッド先端に近ければ、第1の磁界検出器の水平位置、深さ位置を推進ヘッドの先端位置として用いても良い。
【0021】
以下の記述では、簡略化するため、第1の磁界検出器の位置を推進ヘッド位置とした場合について説明するが、この推進ヘッド位置は第1の磁界検出器の位置に限るものではない。
【0022】
第1及び第2の磁界検出器101,102としては、半導体型の高感度磁界検出器を使用した。第1及び第2の磁界検出器101,102は、推進方向(Z’軸)及び推進方向に垂直な平面における水平方向(Y’軸)及び鉛直方向(X’軸)の3軸方向の磁界強度(Hx',Hy',Hz')の直交する3軸方向の磁界を検出する。
【0023】
また、3軸重力方向検出器12は、推進方向(Z’軸)及び推進方向に垂直な平面における水平方向(Y’軸)及び鉛直方向(X’軸)の3軸方向の重力加速度の大きさ(gx',gy',gz')を検出し、推進ヘッドの姿勢に対する重力加速度を計測する。3軸加速度計5はサーボ型加速度計を使用した。これらの検出器は非磁性体であるSUS材で作られた剛性のある推進ヘッド部ケーシング内部に設けられている。
【0024】
本装置では、第1及び第2の磁界検出器101,102で磁界を検出してから、推進ヘッドが一定距離Lだけ推進するたびに、第2の磁界検出器102により地磁気140を検出する。そして、二つの磁界検出器で検出された地磁気140の方位角を比較することによって、推進ヘッドの推進方向の変化を計測する。また、推進方向の変化と、推進距離とから、水平方向の変位量に変換して推進ヘッドの水平位置を求める。また、前記の重力加速度方向検出器110から得られる傾斜角と推進距離とから、深さ方向の変位量に変換し積算して推進ヘッドの深さを求める。
【0025】
本実施形態では、非開削工法において地中の推進ヘッドに設けられた第1の磁界検出器101と、同じ推進ヘッド内で第1の磁界検出器101から一定間隔Lだけ後方に離れた位置に設けた第2の磁界検出器102と、同じ推進ヘッドに設けられた重力加速度方向検出器と、推進距離の測定手段9と、これらの検出器からの情報から推進ヘッドの水平位置と深さ位置を算出する演算処理器130を用いる。
【0026】
本発明では以下に述べるように、2つの磁界検出器101,102の距離Lと1回の推進距離L’とが必ずしも一致して無くても、地磁気の乱れを補正しながら、真の推進ヘッドの水平方向変化を求めることができる。
【0027】
第1の磁界検出器101から第1の磁界方位角φαを検出し、第2の磁界検出器102から第2の磁界方位角φβを検出し、第1の磁界方位角φαと第2の磁界方位角φβから、第1の磁界検出器101の前方の仮想位置Pにおける磁界方位角を推定する。このとき、仮想位置Pと第2の磁界検出器102との距離をL’とする。
【0028】
仮想位置Pにおける磁界方位角φpの推定方法は、第1の磁界方位角φαと第2の磁界方位角φβから次式のごとく、直線近似する方法を適用した。
【0029】
【数1】
【0030】
推進ヘッド100が一定間隔L’だけ推進するたびに、前回の測定において推定された仮想位置Pの磁界方位角φpと今回の測定における第2の磁界方位角φβを比較しながら推進ヘッド100の推進方向の変化を計測し、これを掘進距離L’とともに水平方向の変位量に変換し、積算して推進ヘッド100の水平位置を求め、また、前記の重力加速度方向検出器110から得られる傾斜角を推進距離とともに深さ方向の変位量に変換し積算して推進ヘッドの深さを求める。
【0031】
図2,3を用いて、図1に示す装置を用いた検出方法について説明する。図2,3は、地磁気140が近傍の磁性体の影響で歪んでいるため磁力線が平行でない状態の中を本発明の測定方法によって推進ヘッド位置位置を計測しながら、推進する様子を平面図で示したものである。
【0032】
先ず、図2では、直線部を推進する場合を示している。推進ヘッドが図2(a)の位置のとき、第1の磁界検出器101で地磁気の方位角(推進ヘッド方向に対する地磁気の方位角)φα、および第2の磁界方位角φβを計測し、これらから第1の磁界検出器の近傍且つ前方に位置する仮想位置における磁界方位角φpを推定する。
【0033】
次に仮想位置と第2の磁界検出器の間隔L’だけ推進して図2(b)の位置に到達したとき、第2の磁界検出器102で地磁気の方位角φβを測定する。φβ−φpを演算するとこの場合は直線的に掘進しているので、φβ−φp=0となりこの角度の差と掘進距離から演算される水平方向の変位はゼロとなり直線推進していることが測定される。従ってこの動作を繰り返せば、推進に伴う推進ヘッドの先端位置を連続的に計測できる。
【0034】
一方、図3では、推進ヘッドが曲線部を掘進している場合を示している。推進ヘッド100が図3(a)の位置のとき、第1の磁界検出器101で地磁気の方位角φαおよび第2の磁界方位角φβを計測し、これらから第1の磁界検出器101の近傍かつ前方に位置する仮想位置における磁界方位角φpを推定する。次に仮想位置Pと第2の磁界検出器102の間隔L’だけ推進して図3(b)の位置に到達したとき、第2の磁界検出器102で地磁気の方位角φβを測定する。φβ−φpを演算すると、この場合は曲線的に掘進しているので、φβ−φp≒φとなりこの角度の差φと掘進距離から演算される水平方向の変位は丁度曲線推進した時の水平位置変位となり曲線推進していることが測定される。従ってこの動作を繰り返せば、推進に伴う推進ヘッドの位置を連続的に計測できる。
【0035】
直線推進(図2)の場合も、曲線推進(図3)の場合も、近傍の磁性体による地磁気の歪みに関わらず正しい推進管水平位置が計測できる。深さ方向の位置については、傾斜角度計により計測される傾斜角と推進距離から深さ変位を算出できる。
【0036】
次に、本装置の構成をより詳細に示すブロック図(図4)を参照しながら、本装置の推進ヘッド位置方向計測方法を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
本装置では、推進距離測定器120により推進ヘッド100の推進距離を管理し、推進ヘッド100が1m推進するたびごとに、次のような測定および信号の処理をおこなう。
【0038】
ここでは、i番目の掘進とi+1番目の掘進との掘進管の水平方向位置変化及び深さ方向位置変化を求める方法について説明する。
【0039】
推進ヘッド100に設けられた第1の磁界検出器101と、磁界検出器101と同じ推進ヘッドに設けられ0.8m離れた第2の磁界検出器102とで測定された地磁気の測定値φα,φβは、それぞれ第1の磁界測定値記憶部201と第2の磁界測定値記憶部202に記憶させる。また、その時の重力加速度方向検出器110の測定値は、加速度測定値記憶部203に記憶させる。
【0040】
第1及び第2の磁界測定値記憶部201,202に記憶された地磁気測定値と、加速度測定値記憶部203に記憶された加速度測定値とから、それぞれの地磁気の方位角φα ,iとφβ ,iを算出し、第1及び第2の地磁気方位角記憶部221,222にそれぞれ記憶させる。
【0041】
ここでの地磁気の方位角の算出をより具体的に説明する。
傾斜角・回転角演算部213により、加速度測定値記憶部203に記憶された重力の推進方向成分gZ'と垂直方向成分gx'とから、推進計画線に対して直行する平面において、推進計画線に対する傾斜角θy,iを演算すると共に、垂直方向成分gx'と水平方向成分gy'とから推進計画方向を軸とする回転角θr,iを演算し、演算結果を傾斜角・回転角演算部223に記憶させる。
【0042】
そして、第1及び第2の地磁気方位角演算部211,212により、第1及び第2の磁界測定値記億部201,202にそれぞれ記憶された磁界の測定値φα,φβに対して、傾斜角・回転角演算部223に記憶された推進ヘッド100の回転角θr,i及び傾斜角θy,iを用いて座標変換を行うことによって、地磁気の方位角φα ,i,φβ ,iを演算する。そして、それぞれ地磁気方位角演算部211,212の演算結果φα ,i,φβ ,iを第1及び第2の地磁気方位角記憶部221,222に記憶させる。
【0043】
次いで、磁界方位角推定部224は、i+1番目の掘進により第2の磁界検出器102が位置する仮想地点Piにおける地磁気の方位角φp,iを推定する。なお、地磁気の方位角φα ,i,φβ ,i掘進距離L’,磁界検出器設置間隔Lとから、仮想地点Piにおける地磁気の方位角φp,iは次式を用いて求められる。
【0044】
【数2】
【0045】
次いで、i+1番目の掘進により推進ヘッド100を一定間隔L’=1mだけ推進させる。第2の磁界検出器102と仮想地点Piとの距離は、推進ヘッドの1回の掘進距離分に設定されているので、推進ヘッドを1m掘進させることにより、第2の磁界検出器102は仮想位置Pi付近まで進むことになる。
【0046】
推進ヘッド100を掘進させた後、第1及び第2の磁界検出器101,102で3軸方向の地磁気、重力加速度方向検出器110で3軸方向の加速度の検出を行う。そして、先ほどと同様に、3軸方向の加速度から推進ヘッド100の回転角θr,i+1及び傾斜角θy,i+1を求め、求められた回転角θr,i+1及び傾斜角θy,i+1から地磁気の3軸成分の座標変換を行って、地磁気の方位角φα ,i+1,φβ ,i+1を求め、第1及び第2の地磁気方位角記憶部221,222に記憶させる。
【0047】
水平位置方向演算部230では、次の演算をおこなう。すなわち、第i+1番目の測定時点で得られた地磁気の方位角φβ ,i+1から、前回の第i番目の測定時点で得られた地磁気の方位角φp,iを減算して、i+1番目の掘進による推進ヘッドの方位角変化分φi+1=φβ ,i+1 − φp,iを求める。
【0048】
第j番目の掘進を終えた時点での掘進の計画線方向に対するヘッドの方位角θjは、
θj=φ0+φ1+φ2+…+φj-1+φj
となる。
【0049】
第j番目における掘進距離L[m]分に対するヘッド先端の水平方向の位置変化XjはXj=L・tan(θj)となる。そこで、これまでの掘進回数mにおける水平方向の先端位置Xは、X0を初期値とすればXiの積算すなわち次式を用いて求められる。
【0050】
X=X0+X1+…+Xj+…+Xm
この様にして、求まった推進ヘッドの先端位置の水平方向位置は、水平方向位置表示部240に表示される。
【0051】
一方、深さ方向位置演算部250では次の演算を行い、深さ方向の位置Yを求める。第i番目における掘進距離[m]分に対するヘッド先端の深さ方向の位置変化Yjは、傾斜角・回転角記憶部に記憶された傾斜角θy,jを用いて、Yj=L・tan(θy,j)となる。そこで、これまでの掘進回数mにおける深さ方向の位置Yは、Y0を初期値とすればYjの積算すなわち次式に用いて求められる。
【0052】
Y=Y0+Y1+…+Yj+…+Ym
この様にして、深さ方向位置演算部250により求められた推進ヘッド位置の深さ方向位置は、深さ方向位置表示260に表示される。
【0053】
以上説明したように、推進ヘッド内に第1及び第2の磁界検出器を設け、二つの磁界検出器を用いて求められた地磁気の方位角φα ,i,φβ ,iから、第2の磁界検出器より1回の掘進距離分L[m]離れた仮想位置Piにおける地磁気の方位角φp,iを推定し、推進ヘッドをL[m]掘進させた位置での第2の磁界検出器で検出された磁界を用いて地磁気の方位角φβ ,i+1を求め、求められたφβ ,i+1とφp,iとの差から、i+1番目の掘進による推進ヘッドの方位角変化分φi+1を求めることによって、推進ヘッドの水平方向の変位を知ることができる。また、1回の掘進毎の推進ヘッドの水平方向の変位を積算することで推進ヘッドの水平方向の位置を正確に知ることができる。
【0054】
また、推進ヘッド内に磁界検出器を取り付ける位置に関して制約条件が少なくなり、1回掘進距離と2つの磁界検出器の距離は互いに独立して決定できるので推進ヘッド設計上有効となる。
【0055】
推進ヘッドの先端の方向変化が正確に測定できるので、実際の推進工事で生じる推進方向の修正作業に資する有効な情報が測定できる。このように、本発明は特に都市部のように近傍、鉄骨製の建造物あるいは他の埋設配管が存在して地磁場が歪んでいるような状況でも、実用的な工事が可能となる。
【0056】
また、推進ヘッドが一定距離進む毎に推進ヘッドの傾斜角を測定することによって、傾斜角と前記一定距離との積から推進ヘッドの深さ方向の変位を知ることができ、深さ方向の変位を積算することによって、推進ヘッドの深さ方向の位置を正確に知ることができる。
【0057】
本実施形態では、2つの磁界検出器の設置間隔Lが1回の掘進距離L’よりも小さい場合であったが、2つの磁界検出器の設置間隔Lが1回の掘進距離L’よりも大きい場合には、仮想地点Pを2つの磁界検出器の間に設ければ、同様に実施できる。
【0058】
(第2の実施形態)
本実施形態では、磁界検出器の個数を3個にして精度をさらに向上させた例を示す。
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図である。
磁界検出器301と磁界検出器302との距離をL1=0.3m、磁界検出器302と磁界検出器303との距離をL2=0.5mだけ離して推進ヘッド100内に設置する。仮想位置Pは、磁界検出器303の前方1m(=L’)離れた位置とする。すなわち、1回の推進距離を1mとした場合の実施例である。
【0059】
まず、ある掘進位置iにおいて、磁界検出器301、磁界検出器302、磁界検出器303のそれぞれで地磁気を測定しそれぞれの地磁気の方位角を求める。仮想位置Pにおける、地磁気の方位角φp,iは、磁界検出器301の地磁気方位角φα ,i、磁界検出器302の地磁気方位角φβ ,i、磁界検出器303の地磁気方位角φγ ,i、を用いて次式で推定する。
【0060】
【数3】
【0061】
次に、1[m](=L’)だけ掘進し、磁界検出器301、磁界検出器302、磁界検出器303のそれぞれで地磁気を測定し、それぞれの地磁気の方位角を求める。このとき、地磁気の方位角をφp,i+1、磁界検出器301の地磁気方位角をφα ,i+1、磁界検出器302の地磁気方位角をφβ ,i+1、磁界検出器303の地磁気方位角をφγ ,i+1とする。これらの方位角から、推進ヘッドの方位角の変化分はφi+1=φγ ,i+1−φp,iとして求まる。推進ごとの推進ヘッドの方位角の変化分が測定できれば、これらを推進距離に応じて、順次積算してゆけば、推進ヘッドの水平位置が求められる。
【0062】
本実施形態では、磁界検出器の個数が3個の場合について述べたが、磁界検出器の個数は一般的に4個以上であっても、本実施形態と同様に実施することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図である。図6において、図1と同一な部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図6に示す装置が、第1の実施形態で説明した装置と異なるのは、人工磁場発生手段601が更に設けられていることである。人工磁場発生手段601としては、半径2m、起磁力100ATの円形コイルを使用した。
【0064】
本装置の測定方法は第1の実施形態と同様なので、その説明を省略する。但し、人工磁場を用いる場合、コイル中心部近傍の人工磁場方向は、鉛直方向のみとなるので、実際の現場適用に際しては、図7のように、計画線に対してコイルの中心部は水平方向に少しずらして設置して、推進ヘッドの人工磁場測定場所付近では、人工磁場の水平方向成分が存在する場所を適用する。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、主磁界検出器を含む複数の磁界検出器を用いて検出されたそれぞれの磁界から、前記推進ヘッドの推進方向に対する磁界の方位角を求め、求められた複数の磁界方位角から、前記主磁界検出器の推進方向前方に距離L’離れた位置に設定された仮想位置Pにおける、前記推進方向に対する磁界方位角φpを推定し、推進ヘッドの推進距離が距離L’になった時点で、前記主磁界検出器を用いて、前記推進ヘッドの推進方向に対する磁界方位角φβを求め、前記磁界方位角φpと磁界方位角φβとを比較して、前記推進ヘッドの水平方向の変化を演算することによって、近傍の磁性体構造物による地磁気の乱れが存在しても、その空間的な乱れによらず推進ヘッドの真の方位角を求めることができる。また、方位角を掘進距離に応じて変位に変換し、積算することで推進ヘッドの位置が正確に測定することができる。
【0067】
特に、2つの磁界検出器の距離Lと1回の推進距離L’とが必ずしも一致して無くても、地磁気の乱れを補正しながら、真の推進ヘッドの水平方向変化を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の測定方法の説明に用いる図。
【図3】本発明の測定方法の説明に用いる図。
【図4】図1に示す推進ヘッド位置方向計測装置をより詳細に示すブロック図。
【図5】第2の実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図。
【図6】第3の実施形態に係わる推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図。
【図7】従来の推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図。
【図8】従来の推進ヘッド位置方向計測装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
100…推進ヘッド
101…第1の磁界検出器
102…第2の磁界検出器
103…推進パイプ
110…重力加速度方向検出器
120…推進距離測定器
130…演算処理器
140…地磁気
201…第1の磁界測定値記憶部
202…第2の磁界測定値記憶部
203…加速度測定値記憶部
213…傾斜角・回転角演算部
221…第1の地磁気方位角記憶部.
222…第2の地磁気方位角記憶部
223…傾斜角・回転角演算部
224…磁界方位角推定部
230…水平位置方向演算部
240…水平方向位置表示部
250…方向位置演算部
260…方向位置表示
303…磁界検出器
Claims (11)
- 推進ヘッド内に推進方向に沿って設けられた複数の磁界検出器を用いて、各磁界検出器が設置された位置での前記推進方向に対する磁界方位角をそれぞれ求めるステップと、
求められた複数の磁界方位角を用いて、複数の磁界検出器から選択された磁界検出器から前記推進方向前方に距離L’離れた仮想位置Pにおける、前記推進方向に対する磁界方位角φpを推定するステップと、
前記推進ヘッドの推進距離を測定するステップと、
測定された推進距離が距離L’になった時点で、前記選択された磁界検出器を用いて、前記推進ヘッドの推進方向に対する磁界方位角φβを求めるステップと、
前記磁界方位角φpと磁界方位角φβとを比較して、前記推進ヘッドの水平方向の変化を演算するステップとを含むことを特徴とする推進ヘッド位置方向計測方法。 - 推進ヘッドに設けられた第1の磁界検出器を用いて、第1の磁界方位角を求めるステップと、
前記推進ヘッドに設けられた第1の磁界検出器の後方に位置する第2の磁界検出器を用いて、第2の磁界方位角を求めるステップと
第1及び第2の磁界方位角を用いて、第2の磁界検出器から距離L’離れた第1の磁界検出器付近の仮想位置における第3の磁界方位角を推定するステップと、
前記推進ヘッドの推進距離を測定するステップと、
第1及び第2の磁界方位角を求めた後、測定された推進距離が前記距離L’になった時点で、第2の磁界検出器を用いて検出された磁界から第4の磁界方位角を求めるステップと、
第3の磁界方位角と第4の磁界方位角とを比較して、前記推進ヘッドの水平方向の変化を演算するステップとを含むことを特徴とする推進ヘッド位置方向計測方法。 - 測定された推進距離が前記距離L’になった時点で、前記推進ヘッドの傾斜角を測定し、測定された傾斜角に基づいて前記推進ヘッドの深さ方向の変化を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の推進ヘッド位置方向計測方法。
- 前記推進ヘッドの水平方向の変化を複数回測定し、複数回測定された変化を積算して、前記推進ヘッドの水平方向の位置を計測することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の推進ヘッド位置方向計測方法。
- 前記推進ヘッドの深さ方向及び水平方向の変化を複数回測定し、複数回測定された水平方向および深さ方向の変化をそれぞれ積算して推進ヘッドの位置を計測することを特徴とする請求項4に記載の推進ヘッド位置方向計測方法。
- 磁界検出器は、前記推進ヘッドに固定され、磁界検出器で磁界を検出すると共に、前記推進ヘッドの回転角および傾斜角を測定し、測定された磁界、回転角、傾斜角に基づいて、磁界方位角を求めることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の推進ヘッド位置方向計測方法。
- 磁界方位角として、地磁気の方位角を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の推進ヘッド位置方向計測方法。
- 地表に設置された磁場発生器により人工磁場を発生させ、磁界方位角として、前記人工磁場の方位角を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の推進ヘッド位置方向計測方法。
- 同じ推進ヘッドに推進方向に沿って設けられた複数の磁界検出器と、
前記推進ヘッドの推進距離を測定する推進距離検出器と、
前記磁界検出器によりそれぞれ測定された磁界方位角から推進方向前方の仮想地点での磁界方位角を推定する磁界方位角推定部と、
この磁界方位角推定部により推定された磁界方位角と、前記磁界検出器により求められた磁界方位角とに基づいて、前記推進ヘッドの水平方向の変化を算出する演算処理器とを具備してなることを特徴とする推進ヘッド位置方向計測装置。 - 前記磁界検出器は前記推進ヘッドに固定され、
前記推進ヘッドの回転角及び傾斜角の少なくとも一方を検出する姿勢検出器と、
前記磁界検出器で測定された磁界と、姿勢検出器で検出された回転角及び傾斜角のに基づいて磁界方位角を求める演算処理器とをさらに具備してなることを特徴とする請求項9に記載の推進ヘッド位置方向計測装置。 - 地表に設けられた人工磁場発生手段をさらに具備してなることを特徴とする請求項9又は10に記載の推進ヘッド位置方向計測装置。
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