JP3711824B2 - 電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法 - Google Patents

電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力変換装置で駆動される電動機の出力が減少するのに対応して励磁電流を低減させる電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力変換装置として、ベクトル制御により直流電力を交流電力に変換するインバータにより誘導電動機を駆動する場合を例にして、本発明の詳細を以下に記述する。
ベクトル制御インバータは、誘導電動機へ与える一次電流を、当該電動機の二次磁束に平行なM軸電流成分と、これとは垂直なT軸電流成分とに分離し、これら両電流成分を別個に制御することで、当該電動機のトルクを所望の値に制御するインバータであるが、前記の電動機一次電流をM軸電流成分(このM軸電流成分を一般に励磁電流と称する)とT軸電流成分とに分離する部分と、これらM軸電流成分とT軸電流成分とを別個に所望値に制御する部分は、本発明とは無関係であるから、これらの部分の説明は省略する。ところで誘導電動機が発生するトルクは、この励磁電流によって電動機内に発生する二次磁束と、トルクを発生させるT軸電流成分とによって定まる。電動機二次磁束をφ2 ,T軸電流をIT とすると、電動機トルクτは下記の数式1で示すことができる。但しK1 は比例定数である。
【0003】
【数1】
τ=K1 ・IT ・φ2
この数式1から、励磁電流を減少させることにより、この励磁電流とは所定の関係にある二次磁束φ2 が減少し、当該誘導電動機のトルクτは減少することが分かる。
誘導電動機の回転速度をN,電動機のトルクをτとすれば、電動機の出力Pは下記の数式2で示される。但しK2 は比例定数である。
【0004】
【数2】
P=K2 ・N・τ
回転速度Nが一定ならば、数式2から電動機出力Pと電動機トルクτとは比例する。以下では回転速度Nが一定であることを条件にして説明を行うから、電動機トルクと電動機出力とは同じ意味である。
【0005】
ところで誘導電動機は、その二次磁束φ2 が大きくなるのに伴って、発生する磁気騒音も増大する傾向がある。そこで誘導電動機の出力が小さくても良い場合は、二次磁束φ2 を弱めること,すなわち励磁電流を減少させることにより、運転に支障が無い程度まで電動機トルクを低減(数式1参照)させる制御をベクトル制御インバータに行わせて、磁気騒音の発生を抑制する運転方法を採用することが多い。
【0006】
図4は誘導電動機の二次磁束を弱める回路の従来例を示したブロック回路図であって、磁束弱め演算回路10とリミッタ11及び乗算器12で構成している。この従来例回路において、励磁電流を検出してこれとは所定の関係にある二次磁束φ2 を算出すると共にT軸電流IT を検出すれば、運転中の誘導電動機トルクτは前述の数式1により演算できる。このトルク演算値を磁束弱め演算回路10へ与える。
【0007】
磁束弱め演算回路10は関数発生器の一種であって、これに入力するトルク演算値に対応した磁束指令値をリミッタ11へ出力する。例えば、入力するトルク演算値が定格値の50%以上ならば定格値(100%)の磁束指令値を出力するが、トルク演算値が50%以下に低下すれば、その低下の程度に対応して、磁束指令値を最低で定格値の50%まで低減してリミッタ11へ出力する。別途に設定している二次磁束指令値はこのリミッタ11の作用により、磁束弱め演算回路10が出力するトルク演算値に制限されて乗算器12へ入力する。この乗算器12には、二次磁束指令値を励磁電流指令値に変換するための電流変換係数も入力しており、リミッタ11を介して得られる二次磁束指令値と電流変換係数との積をこの乗算器12で演算することにより、従来よりは低減された所望の励磁電流指令値が得られる。
【0008】
ベクトル制御インバータは、この励磁電流指令値に対応した励磁電流を誘導電動機へ与える。従って当該誘導電動機の出力が小さければ、トルク不足にならない程度に励磁電流を減らして磁気騒音を低減させることができるし、出力が大きくなればトルク不足にならないように励磁電流を増大させる。よって当該電動機は常に適切なトルクを発生している。
【0009】
図5は図4に図示の従来例回路で電動機出力変動に対応して変化する電動機の励磁電流と回転速度の変動状態を示したタイムチャートであって、図5▲1▼は電動機出力の変化,図5▲2▼は電動機励磁電流の変化,図5▲3▼は電動機回転速度の変化,をそれぞれが示している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
図5のタイムチャートで明らかなように、電動機出力が変化(すなわち回転速度一定につきトルクが変化)する時点で励磁電流が変化するのと同時に回転速度も変動するのであるが、注意しなければならないのは、低出力運転中であるために励磁電流が減少している状態のときに、励磁電流を元の大きな値に戻すことで電動機出力を増大させようとしても、電動機二次時定数のために励磁電流は素早く増加することができないから、磁束の立ち上がりに遅れを生じる。すなわちトルクが素早く増大できないために、電動機回転速度の低下量が大きくなることである。図5▲3▼に図示のように、電動機が低出力から高出力に変化するt0 時点における電動機の回転速度低下量N0 は大であるが、t1 時点(電動機が低出力から高出力に変化する時点)でも同様にN0 なる大きな回転速度低下量を生じる。特に低出力と高出力とが頻繁に且つ急激に交互に出現するような負荷(例えば工作機械で角形形状の被加工物の角部分を切削するような場合)では、大きな回転速度変動が頻繁に発生することになるから、不良製品が発生したり、装置に不具合を発生するなどの不都合を生じることにがある。
【0011】
そこでこの発明の目的は、磁気騒音を低減するべく励磁電流を減少させて運転する電動機の出力変動が頻繁に且つ急激に発生する場合でも、当該電動機の回転速度変動を抑制できるようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、この発明の電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法は、
電力変換装置で駆動される電動機の出力量が所定値以下になれば、この出力低下量に対応して前記電動機の励磁電流を減少させるあたって、この電動機出力が前記所定値以下になった時点から一定時間経過後でなければ、前記励磁電流の減少を開始させないものとする。
電動機出力が前記所定値以下になった時点から励磁電流減少開始までの時間は、変更できるものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1実施例を表したブロック回路図であるが、この第1実施例回路に図示の磁束弱め演算回路10,リミッタ11および乗算器12の名称・用途・機能は、図4で既述の従来例回路の場合と同じであるから、これらの説明は省略する。
【0014】
この第1実施例回路では、トルク演算値はディレイタイマ処理回路21を介して磁束弱め演算回路10へ入力するように回路を構成している。このディレイタイマ処理回路21は、入力するトルク演算値が所定値以下(例えば定格値の50%以下)であるか否かを判定する比較回路と,遅れ時間を設定するタイマ回路とを備えていて、このディレイタイマ処理回路21へ入力するトルク演算値が前述した所定値より大きい場合は、この入力トルク演算値を時間遅れを生じること無く直ちに磁束弱め演算回路10へ出力するのであるが、このトルク演算値が所定値よりも低下している場合は、前述した比較回路とタイマ回路の作用で、一定時間か経過した後でなければこの入力信号を磁束弱め演算回路10へ与えないように動作する。
【0015】
図3は図1に図示の第1実施例回路の動作を表したタイムチャートであって、図3▲1▼は電動機出力の変化,図3▲2▼は電動機励磁電流の変化,図3▲3▼は電動機回転速度の変化,をそれぞれが表している。
図3のタイムチャートにおいて、t11時点からt12時点までと、t13時点からt14時点までは電動機出力が所定値よりも小さい低出力期間(すなわち回転速度一定につきトルクが所定値よりも小さい期間)であるが、この期間はディレイタイマ処理回路21で設定した遅れ時間Tよりは短いから、これらの低出力期間では励磁電流は減少しない。それ故、電動機出力が低出力から高出力へ移行するt12時点やt14時点での電動機回転速度の落ち込み量はN1 (図3▲3▼参照)であって、図4で既述の従来例回路での回転速度落ち込み量N0 (図5▲3▼参照)と比較すれば、大きく改善されていることが分かる。励磁電流は、高出力から低出力へ移行するt15時点からTなる時間が経過した後(図3▲2▼参照)でなければ減少しない。
【0016】
なお、この遅れ時間Tは、低出力が継続する時間や、低出力や高出力の大きさや交互に発生する頻度などを考慮して、適切な値に変更することができる。
図2は本発明の第2実施例を表したブロック回路図であるが、この第2実施例回路に図示の磁束弱め演算回路10,リミッタ11および乗算器12の名称・用途・機能も、図4で既述の従来例回路の場合と同じであるから、これらの説明は省略する。
【0017】
この第2実施例回路では、トルク演算値を磁束指令値に変換する磁束変換器33が出力する磁束指令値を、信号切換え器32を介してリミッタ11へ与える回路と、トルク演算値をこれに対応して変化する磁束指令値に変換する磁束弱め演算回路10が出力する磁束指令値を、信号切換え器32を介してリミッタ11へ与える回路とを備えている。信号切換え器32は、これら両回路のいずれか一方のトルク演算値のみを選択してリミッタ11へ与える構成である。
【0018】
ディレイタイマ処理回路31はトルク演算値を入力して、電動機出力が高出力から低出力へ急激に変化してから一定時間が経過したときにのみ、前記の信号切換え器32が磁束弱め演算回路10の出力する磁束指令値を選択するが、常時は磁束変換器33の出力する磁束指令値を選択する。それ故、電動機出力が急激に減少しても一定時間は磁束を強めた状態を継続するから、間欠的に電動機出力が急変しても、当該電動機のトルク不足状態が発生する恐れを解消することができる。
【0019】
【発明の効果】
電動機の磁気騒音を低減するために、電動機出力が小さい時にはトルク不足にならない程度に励磁電流を減少させるのであるが、電動機出力を急激に大きく変化させるような負荷が当該電動機に結合されている場合には、電動機出力が低出力から高出力に急変するときに、励磁電流の立ち上がりに時間遅れがあるのが原因でトルク不足状態を発生し、回転速度の落ち込みが大きくなる欠点がある。これに対して本発明では、電動機出力が低下してから一定時間は従前の励磁電流を維持するように回路を構成しているので、高出力と低出力とが交互に急激に変化する場合でも電動機トルクが不足する恐れが無く、電動機回転速度の落ち込みを抑制できる効果が得られる。
【0020】
更に出力変動の間隔や電動機が駆動する負荷の性質に対応して前記の励磁電流を維持する時間を適切な値に変更できる構成にすることで、磁気騒音の低減と回転速度の低下抑制の効果をより一層発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を表したブロック回路図
【図2】本発明の第2実施例を表したブロック回路図
【図3】図1に図示の第1実施例回路の動作を表したタイムチャート
【図4】誘導電動機の二次磁束を弱める回路の従来例を示したブロック回路図
【図5】図4に図示の従来例回路で電動機出力変動に対応して変化する電動機の励磁電流と回転速度の変動状態を示したタイムチャート
【符号の説明】
10 磁束弱め演算回路
11 リミッタ
12 乗算器
21 ディレイタイマ処理回路
31 ディレイタイマ処理回路
32 信号切換え器
33 磁束変換器

Claims (2)

  1. 電力変換装置で駆動される電動機の出力量を検出し、この出力量が所定値以下になれば、この出力の低下量に対応して前記電動機の励磁電流を減少させている電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法において、
    前記電動機の出力量が前記所定値以下になった時点から一定時間経過後に、当該電動機の励磁電流の減少を開始させることを特徴とする電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法。
  2. 請求項1に記載の電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法において、
    前記電動機の出力量が所定値以下に低下してから前記励磁電流が減少を開始するまでの時間を変更できることを特徴とする電力変換装置駆動電動機の磁束弱め制御方法。
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