JP3709534B2 - オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法に関する。ピルビン酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸等オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸は医農薬などの合成原料として重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
発酵法によるカルボン酸類の製造は古くから行われていたが、培養液からオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を単離・精製するには、一般に煩雑な操作が必要とされ、効率の良い単離法が待たれていた。抽出による単離法も提案されており、(1)乳酸やピルビン酸を培養液から抽出する方法として、トリオクチルホスフィンオキシドを使用する方法が知られている(ケルテス:Biotech Bioeng.,28,269 (1986))。また、(2)水溶媒中で乳酸を酸化するピルビン酸製造法に於いて、水溶液中のピルビン酸を単離する為に、酢酸イソプロピルで抽出する方法が知られている(特開平1−272548号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記(1)で使用されるトリオクチルホスフィンオキシドは高価であり、沸点が高く設備上の制限がある事、また(2)の方法では僅か46gのピルビン酸を抽出するのに大量の酢酸イソプロピル、3,400gも使用しなければならない等の欠点がある。従って、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液から、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を単離する工業的に有利な方法が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液から、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を単離する方法について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明はオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸および無機塩を含む水溶液から、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を単離する際に、含酸素飽和複素環式化合物を使用してオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を抽出することを特徴とするオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法である。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明では1分子内にカルボキシル基と水酸基とを持つオキシカルボン酸やカルボニル基とカルボキシル基を持つオキソカルボン酸の単離法を提供する。
【0007】
キシカルボン酸としては乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシイソ酪酸、マンデル酸等が挙げられる。オキソカルボン酸としてはピルビン酸、2−ケト酪酸、2−ケトイソ酪酸等が挙げられる。
【0008】
これらオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の25℃における水に対する溶解度(25℃の水100gに溶解するオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の重量)は10g以上であることが好ましい。
【0009】
オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸がアルカリ塩、或いはアルカリ土類塩の形で水溶液中に溶解している場合には、水溶液に硫酸や塩酸等の鉱酸を添加して該オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を系中で遊離状態にし、本発明の方法で抽出することができる。
【0010】
本発明で使用する、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液とは、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む発酵培養液、水溶液中での化学反応で製造したオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液等、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液であれば如何なる水溶液であっても適用できる。オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液中のカルボン酸の濃度は1%以下の濃度でも実施可能であるが、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の濃度は高い方が有利である。
【0011】
本発明における含酸素飽和複素環式化合物とは、酸素原子を含む複素環を有する化合物であり、具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類が挙げられ、特にテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが好ましく用いられる。
【0012】
含酸素飽和複素環式化合物が、水と混合する化合物である場合、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液中に無機塩を含有させて、水層と含酸素複素環式化合物層との界面を形成させる方法を採用する。共存させる無機塩としては、好ましくは水に溶かした時にpH7以下を示す無機塩の中から選択するのがよい。例えば硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、塩化リチウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の中性塩が好ましく用いられる。これらの無機塩を2種以上混合して用いてもよい。共存する無機塩の量は、抽出溶媒に使用する含酸素飽和複素環式化合物が水層と界面を形成させるに足る量以上あればよいが、抽出効率を上げるために、前記無機塩を操作性を低下させない範囲で、積極的に添加することも可能である。
【0013】
含酸素飽和複素環式化合物の使用量は水溶液中のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の濃度によって、また回分抽出、連続抽出によっても異なるが、オキシカルボン酸ま たはオキソカルボン酸を含む水溶液に対して0.1〜5重量倍使用するのが好ましい。さらに好ましくは0.2〜3重量倍使用される。量が少なすぎると抽出・分離が不十分となり、多すぎると抽出したあとの処理に適さない場合がある。
【0014】
抽出温度は水層と有機層が2層分離する状態ならばいかなる温度でもかまわないが、0〜100℃の範囲が好ましく、通常は、使用する溶媒の沸点以下で実施するのが好ましい。抽出は大気圧、減圧、加圧の何れでも構わないが、操作する上からは大気圧が好ましい。
【0015】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
ピルビン酸ナトリウム22重量%の水溶液100gを、液温25〜30℃に保ちながらピルビン酸ナトリウムと当量の98%硫酸10gを加えて、ピルビン酸と硫酸ナトリウムを含有する水溶液とした。
【0017】
次いで、この液に、テトラヒドロフラン110gを加えて充分撹拌した後静置し、上層と下層を分離した。
【0018】
ガスクロマトグラフで上層と下層のピルビン酸濃度を分析した。
【0019】
上層はピルビン酸15.8g含むピルビン酸抽出率90%のテトラヒドロフラン溶液であった。(ここで、抽出率とは上層のピルビン酸量/(ピルビン酸ナトリウム水溶液中の換算ピルビン酸量)×100である。)
なおこのときのピルビン酸の分配係数(上層のカルボン酸濃度/下層のカルボン酸濃度)は3.9であった。(分配係数が大きいほど抽出(分離)の効率が良いことを示す。)
次に、上層のテトラヒドロフラン溶液を、液温約35℃で約4kPaまで徐々に減圧してテトラヒドロフランを除去し、ピルビン酸の純度98%の溶液14.5gを得た。
【0020】
実施例2
実施例1の方法においてピルビン酸ナトリウム22重量%の水溶液を、乳酸ナトリウム15%の水溶液に代えた以外は同様の操作を行ない、乳酸抽出率93%のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0021】
なおこのときの乳酸の分配係数は5.4であった。
【0022】
実施例3
実施例1の方法においてピルビン酸ナトリウム22重量%の水溶液を、4−ヒドロキシn−酪酸ナトリウム24.5%の水溶液に代えた以外は同様の操作を行ない、4−ヒドロキシn−酪酸抽出率98.5%のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0023】
なおこのときの4−ヒドロキシn−酪酸の分配係数は23であった。
【0024】
実施例4
実施例1の方法においてピルビン酸ナトリウム22重量%の水溶液を、プロピオン酸ナトリウム13%の水溶液に代えた以外は同様の操作を行ない、プロピオン酸抽出率96%のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0025】
なおこのときのプロピオン酸の分配係数は14.4であった。
【0026】
実施例5
実施例1の方法においてテトラヒドロフランを、テトラヒドロピランに代えた以外は同様の操作を行ない、ピルビン酸抽出率65%のテトラヒドロピラン溶液を得た。
【0027】
なおこのときのピルビン酸の分配係数は1.4であった。
【0028】
比較例1
実施例1の方法においてテトラヒドロフランを、酢酸エチルに代えた以外は同様の操作を行ない、ピルビン酸抽出率51%の酢酸エチル溶液を得た。
【0029】
なおこのときのピルビン酸の分配係数は0.84であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の方法により、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液から該オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を効率よく分離でき、該オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離コストの低減に大きく貢献できる。

Claims (7)

  1. オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液から、オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を単離する際に、無機塩の存在下で含酸素飽和複素環式化合物を使用してオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を抽出することを特徴とするオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
  2. 抽出を0〜100℃で行うことを特徴とする請求項1記載のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
  3. 無機塩が、水に溶かしたときにpH7以下であることを特徴とする請求項1または2記載のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
  4. 無機塩が、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムおよび塩化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項記載のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
  5. 含酸素飽和複素環式化合物をオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸を含む水溶液に対して0.1〜5重量倍使用することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
  6. オキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の25℃における水に対する溶解度が10g以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
  7. 含酸素複素環式化合物が、テトラヒドロフランおよび/またはテトラヒドロピランであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載のオキシカルボン酸またはオキソカルボン酸の単離法。
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