〈第1の実施形態〉
以下、本発明の第1の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。尚、第1の実施形態において、NAは露光機の縮小投影光学系の開口数(例えば0.6)を示し、λは露光光つまり光源の波長(例えば0.193μm)を示し、Mは露光機の縮小投影光学系の倍率(例えば4又は5)を示すものとする。
図1は、第1の実施形態に係るフォトマスクの基本的な構造を示している。
図1に示すように、透過性基板100上に遮光膜よりなる遮光膜領域101が形成されていると共に、遮光膜領域101の内側に位相シフト領域102が設けられている。このとき、位相シフト領域102を含む遮光膜領域101の幅はL×Mであり、位相シフト領域102の幅はW×Mであり、遮光膜領域101における位相シフト領域102を囲む部分の幅はS×Mである。また、位相シフト領域102は、例えば遮光膜領域101となる遮光膜に位相シフト領域102と同一の外形を有する開口部を設けると共に該開口部の下側の透過性基板100を、透過光の波長(波長λより換算される)の半分の光路差が生じる厚みだけ除去することにより形成されている。これにより、位相シフト領域102を透過する光は、透過性基板100の光透過領域(遮光膜領域101も位相シフト領域102も設けられていない部分)を透過する光に対して約180度の位相差を生じる。
第1の実施形態の特徴は、遮光膜領域101と位相シフト領域102とにより遮光性パターンが構成されていることである。すなわち、例えば図1に示すフォトマスクを用いることによって、ウェハ上に幅Lのパターンを形成することができる。例えば、ウェハ上での所望のパターンの寸法(又は設計値)が0.1μmであるとすると、L=0.1μmであるので、倍率M=4の露光機を用いる場合、フォトマスク上での遮光性パターンの寸法はM×L=0.1×4=0.4μmとなる。
図2は被露光基板上に形成しようとする所望の設計パターンの平面図である。
図3(a)は、図2に示すパターンを形成するための第1の比較例に係るフォトマスクの平面図である。
第1の比較例に係るフォトマスクにおいては、図3(a)に示すように、露光光源に対して高い透過率を有するガラス等よりなる透過性基板110上に、所望のパターンの寸法(通常は設計値)をM倍した寸法を有するクロム膜等の遮光膜のみよりなる遮光性パターン111が形成されている。例えば、所望のパターンの外形幅が1μmである場合、遮光性パターン111の外形幅はMμmである。尚、透過性基板110における遮光性パターン111の外側の領域110aは光透過領域となる。また、露光光源としては、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ光(248nm)、ArFエキシマレーザ光(193nm)、又はF2エキシマレーザ光(157nm)等を用いることができる。
図3(b)は、図3(a)に示すフォトマスクを用いてレジスト膜に対して露光を行なったときにレジスト膜中に投影される光強度分布のシミュレーション結果を示している。尚、光強度分布のシミュレーションにおいて使用した光学条件は、波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8である。また、図3(b)においては、2次元の相対座標系における相対光強度の等高線を用いて光強度分布を示している。
図3(a)に示すフォトマスクを用いた場合、遮光性パターン111のうち、ライン幅の細い部分(例えば領域R1)、ライン端(例えば領域R2)又はパターンコーナー(角部;例えば領域R3)等では回折現象によって光が遮光膜の裏側に回り込むため、遮光性パターン111をマスクとして露光光を十分に遮光することができない。その結果、図3(b)に示すように、光強度分布が、遮光性パターン111つまり所望のパターンと相似した形状から著しく歪んでしまう。また、前記の光学条件より定まる解像度程度以下、具体的には0.13μm程度以下のライン幅を有するパターンを形成しようとする領域(例えば領域R1’又はR2’)においては、光強度分布における相対光強度の等高線間隔が広くなっている。このため、露光量のばらつきに伴うパターン寸法のばらつきが大きくなり、それによってレジスト膜の露光マージンが小さくなるので、安定したパターン形状を得ることが非常に困難になる。
図3(c)は、図3(b)に示す相対光強度の等高線のうちレジスト膜の現像後に形成されるレジストパターンの形状を表すと考えられる等高線の形状と、所望のパターン形状とを比較した結果を示している。
図3(c)に示すように、予想されるレジストパターンの形状においては、ライン端(例えば領域R2’)又はパターンコーナー(例えば領域R3’)が所望のパターン形状から後退していると共に、0.13μm(解像度)程度以下のライン幅を有する部分(例えば領域R1’)が所望のパターン形状よりも細くなっている。
そこで、本件発明者は、遮光性パターンのうち、(M×解像度)程度以下のライン幅を有する部分の内側、ライン端又はパタンコーナー等に、通常の光透過領域の透過光に対して約180度の位相差を有する透過光を発生させる位相シフト領域を設けたフォトマスク、つまり第1の実施形態に係るフォトマスクを作成してみた。
図4(a)は、図2に示すパターンを形成するための第1の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。
第1の実施形態に係るフォトマスクにおいては、図4(a)に示すように、透過性基板120上に、所望のパターンの寸法をM倍した外形寸法を有するクロム膜等の遮光膜よりなる遮光膜領域121が形成されている。例えば、所望のパターンの外形幅が1μmである場合、遮光膜領域121の外形幅はMμmである。尚、透過性基板120における遮光膜領域121の外側の領域120aは光透過領域となる。また、遮光膜領域121の内側に、光透過領域120aの透過光に対して約180度の位相差を有する透過光を発生させ且つ光透過領域120aとほぼ等価な透過率を有する位相シフト領域122が形成されている。さらに、遮光膜領域121と位相シフト領域122とによって遮光性パターンが構成されている。
具体的には、位相シフト領域122は、遮光性パターンのうち、M×0.13μm(解像度)程度以下のライン幅を有する部分(例えば領域r1)の内側、ライン端(例えば領域r2)又はパターンコーナー(例えば領域r3)等に設けられている。また、位相シフト領域122は、例えば遮光膜領域121となる遮光膜に位相シフト領域122と同一の外形を有する開口部を設けると共に該開口部の下側の透過性基板120を、透過光の波長(波長λより換算される)の半分の光路差が生じる厚みだけ除去することにより形成されている。
図4(b)は、図4(a)に示すフォトマスクを用いてレジスト膜に対して露光を行なったときにレジスト膜中に投影される光強度分布のシミュレーション結果を示している。尚、光強度分布のシミュレーションにおいて使用した光学条件は、波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8である。また、図4(b)においては、2次元の相対座標系における相対光強度の等高線を用いて光強度分布を示している。
図4(b)に示すように、図4(a)に示すフォトマスクにより得られる光強度分布は、遮光膜領域121と位相シフト領域122とによって構成される遮光性パターン、つまり所望のパターンと相似した形状を有している。また、光強度分布における相対光強度の等高線間隔も全体的に狭くなっている。このため、露光量のばらつきに伴うパターン寸法のばらつきが小さくなり、それによってレジスト膜の露光マージンが大きくなるので、安定したパターン形状を得ることが容易になる。
図4(c)は、図4(b)に示す相対光強度の等高線のうちレジスト膜の現像後に形成されるレジストパターンの形状を表すと考えられる等高線の形状と、所望のパターン形状とを比較した結果を示している。
図4(c)に示すように、予想されるレジストパターンの形状においては、第1の比較例に係るフォトマスクを用いた場合に生じたような、ライン端(例えば領域r2’)又はパターンコーナー(例えば領域r3’)が所望のパターン形状から後退してしまう事態、又は、0.13μm(解像度)程度以下のライン幅を有する部分(例えば領域r1’)が所望のパターン形状よりも細くなる事態は発生していない。すなわち、第1の実施形態に係るフォトマスクを用いた場合には、所望の形状を有するパターンを形成することができる。
以上に説明した結果から、本件発明者は、フォトマスク上に光透過領域と、光透過領域に対して180度の位相差を有する位相シフト領域とを所定の条件を満たすように配置した場合に、位相シフト領域が遮光膜領域よりも優れた遮光性を発揮するという原理を見出した。
以下、前述の所定の条件を特定するために、まず、遮光性パターンとして遮光膜のみ又は位相シフターのみを用いた構造における遮光特性について図面を参照しながら説明する。
図5(a)は、透過性基板上に遮光膜のみよりなる遮光性パターンが形成されたマスク(以下、第2の比較例に係るフォトマスクと称する)の平面図を示している。図5(a)に示すように、透過性基板130上にクロム膜等の遮光膜よりなる幅(L×M)の孤立ラインパターン131が形成されている。
図5(b)は、透過性基板上に位相シフターのみよりなる遮光性パターンが形成されたマスク(以下、第3の比較例に係るフォトマスクと称する)の平面図を示している。図5(b)に示すように、透過性基板140上に位相シフターよりなる幅(L×M)の孤立ラインパターン141が形成されている。
図5(c)〜(e)は、幅Lをそれぞれ0.06μm、0.10μm、0.16μmと変化させた場合における第2及び第3の比較例に係るフォトマスクの2点AB間を透過した光の光強度(相対光強度)分布のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。尚、図5(c)〜(e)において、第2の比較例に係るフォトマスクの2点AB間を透過した光の光強度分布を破線で示しており、第3の比較例に係るフォトマスクの2点AB間を透過した光の光強度分布を実線で示している。また、図5(c)〜(e)において、横軸の原点、つまり孤立ラインパターン131又は孤立ラインパターン141の中央部分での光強度が小さいほど、各マスクによる遮光効果が大きいと判断することができる。
図5(f)は、幅Lを連続的に変化させた場合における孤立ラインパターン131(第2の比較例に係るフォトマスク)及び孤立ラインパターン141(第3の比較例に係るフォトマスク)のそれぞれの中央部分を透過した光の光強度(相対光強度)変化のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。尚、図5(f)において、孤立ラインパターン131の中央部分を透過した光の光強度変化を破線で示しており、孤立ラインパターン141の中央部分を透過した光の光強度変化を実線で示している。
図5(c)〜(e)及び図5(f)に示すように、幅Lが解像度程度つまり0.13μm程度よりも小さくなると、遮光膜よりも位相シフターの方が遮光効果が高くなる一方、幅Lが0.13μm程度よりも大きくなると、位相シフターによる遮光効果は遮光膜よりも低くなる。すなわち、位相シフターの遮光効果が遮光膜よりも高くなる最大幅Lは0.13μm程度である。
また、図5(f)に示すように、位相シフターによる遮光効果が最大になるのは、幅Lが0.10μm付近である。
図6は、波長λ及び開口数NAを色々変化させた場合における、位相シフターの遮光効果が遮光膜(クロム膜)よりも高くなる最大幅Lのシミュレーション結果をλ/NAに対してプロットした様子を示している。
図6に示すように、位相シフターの遮光効果が遮光膜よりも高くなる最大幅Lとλ/NAとの間にはL=0.4×λ/NAで表される関係が近似的に成り立っている。すなわち、透過性基板上に形成された位相シフターよりなる孤立ラインパターンは、その幅(L×M)が(0.4×λ/NA)×M以下のとき、遮光膜よりなる孤立ラインパターンよりも高い遮光効果を有する。
図7は、波長λ及び開口数NAを色々変化させた場合における、位相シフターの遮光効果が最大となる幅Lのシミュレーション結果をλ/NAに対してプロットした様子を示している。
図7に示すように、位相シフターの遮光効果が最大となる幅Lとλ/NAとの間にはL=(0.8/3)×λ/NAで表される関係が近似的に成り立っている。すなわち、透過性基板上に形成された位相シフターよりなる孤立ラインパターンは、その幅(L×M)が((0.8/3)×λ/NA)×M程度のとき、最大の遮光効果を有する。
以上に説明した結果から、本件発明者は、所定の寸法以下の位相シフターが遮光膜により囲まれた構造によって、つまり位相シフト領域が遮光膜領域により囲まれた構造によって、高い遮光性を有する遮光性パターンを実現できることを見出した。
以下、位相シフターによって遮光膜の遮光性を強調できる条件を特定するために、位相シフト領域と遮光膜領域とが組み合わされた構造を有する遮光性パターンの遮光特性について図面を参照しながら説明する。
図8(a)は、位相シフト領域と遮光膜領域とが組み合わされた構造を有する遮光性パターンが形成されたマスク、つまり第1の実施形態に係るフォトマスクの平面図を示している。図8(a)に示すように、透過性基板150上に遮光膜領域151が位相シフト領域152を囲むように形成されており、遮光膜領域151と位相シフト領域152とによって遮光性パターンが構成されている。また、位相シフト領域152を含む遮光膜領域151の幅は(L×M)であり、位相シフト領域152の幅は(W×M)であり、遮光膜領域151における位相シフト領域152を囲む部分の幅は(S×M)である。すなわち、L=W+2Sである。
図8(b)〜(d)は、幅Lをそれぞれ0.10μm、0.14μm、0.18μmと変化させた場合においてさらに幅Wを色々変化させた場合における、図8(a)に示すマスク上の2点AB間を透過した光の光強度(相対光強度)分布のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。
図8(e)は、幅Lを色々変化させた場合においてさらに幅Wを色々変化させた場合における、図8(a)に示すマスク上の遮光性パターンの中央部分を透過した光の光強度(相対光強度)変化のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。
図9は、図8(b)〜(d)及び図8(e)に基づき得られた、遮光膜(クロム膜)のみを用いた構造(W=0に相当)よりも位相シフト領域と遮光膜領域とが組み合わされた構造の遮光効果が高くなる(光強度が低くなる)最大幅Wのシミュレーション結果を幅Lに対してプロットした様子を示している。
ところで、前述の位相シフターのみによる遮光効果の特性によれば、遮光膜の内側に位相シフターが、光透過領域(透過性基板における遮光性パターンが形成されていない領域)によって0.4×λ/NA以内の距離で囲まれるように、言い換えると、W+S≦0.4×λ/NAを満たすように配置されている場合に、その構造を有する遮光性パターンは遮光膜のみからなる同一寸法の遮光性パターンよりも高い遮光効果を実現すると予想される。尚、W+S≦0.4×λ/NAを満たす場合、L≦(0.8×λ/NA)−Wが成り立つので、L≦(0.8×λ/NA)が成り立つ。
一方、図9に示すように、位相シフト領域と遮光膜領域とが組み合わされた構造の遮光効果が遮光膜のみを用いた構造よりも高くなる最大幅Wと、幅Lとの間にはW=(0.8×λ/NA)−Lで表される関係が近似的に成り立っている。すなわち、例えば幅(L×M)の遮光膜の内側に幅(W×M)の開口部を形成すると共に該開口部を位相シフト領域として用いる場合、W≦(0.8×λ/NA)−Lを満たせば、幅(L×M)の遮光膜をそのまま用いた場合よりも遮光効果を向上させることができる。尚、W≦(0.8×λ/NA)−Lを満たす場合、W+S≦0.4×λ/NAが成り立つので、図9に示す結果は前述の予想と一致する。また、L≦0.4×λ/NAの場合には、W=Lとしても、つまり位相シフターのみによって遮光性パターンを形成しても、遮光膜のみによって遮光性パターンを形成した場合よりも遮光効果を向上させることができる。
以上に説明した結果から、本件発明者は、幅(L×M)が(0.8×λ/NA)×M以下の遮光性パターンにおいては、その内側に、幅(W×M)が((0.8×λ/NA)−L)×M以下の位相シフト領域つまり開口部を設けることによって、遮光性パターンの遮光効果が高くなることを見出した。以下、前述の条件を満たすように遮光性パターンの内側に形成された位相シフト領域をマスクエンハンサーと称するものとする。
図10は、図8(b)〜(d)及び図8(e)に基づき得られた、マスクエンハンサーの遮光効果が最大となる幅Wのシミュレーション結果を幅Lに対してプロットした様子を示している。
図10に示すように、マスクエンハンサーの遮光効果が最大となる幅Wと幅Lとの間にはW=((0.8×λ/NA)−L)/2で表される関係が近似的に成り立っている。すなわち、例えば幅(L×M)の遮光膜の内側に幅(W×M)の開口部を形成すると共に該開口部をマスクエンハンサーとして用いる場合、W=((0.8×λ/NA)−L)/2を満たせば、マスクエンハンサーは最大の遮光効果を発揮する。
また、本件発明者は、遮光膜とその内側に設けられたマスクエンハンサーとから構成される遮光性パターンの幅を(L×M)とし、マスクエンハンサーの幅を(W×M)とすると、W≦(0.8×λ/NA)−Lを満たしていれば、マスクエンハンサーが遮光性パターンの中央部に位置していなくても、マスクエンハンサーによる遮光性向上効果があることを見出した。
図11(a)は、マスクエンハンサーが遮光性パターンの中央部から位置ずれして配置されたマスクの平面図を示している。図11(a)に示すように、透過性基板160上に遮光膜領域161がマスクエンハンサー162を囲むように形成されており、遮光膜領域161とマスクエンハンサー162とによって遮光性パターンが形成されている。また、マスクエンハンサー162を含む遮光膜領域161の幅、つまり遮光性パターンの幅は(L×M)であり、マスクエンハンサー162の幅は(W×M)であり、遮光性パターンの中心線とマスクエンハンサー162の中心線との間のずれ幅は(d×M)である。
図11(b)は、幅Lを0.14μm、幅Wを0.06μmとしてずれ幅dを−0.03μmから0.03μmまで変化させた場合における、図11(a)に示すマスク上の2点AB間を透過した光の光強度(相対光強度)分布のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。
図11(b)に示すように、マスクエンハンサーによる遮光効果は、遮光性パターン上におけるマスクエンハンサーの位置に関わらず略同程度である。また、マスクエンハンサーの位置ずれ量が0.06μm×M(d=−0.03μmの場合とd=0.03μmの場合との間のずれ量)であるのに対して、光強度分布自体の位置ずれ量は0.02μm程度であって、マスクエンハンサーの位置ずれが光強度分布に及ぼす影響は小さい。従って、マスクエンハンサーを用いた遮光性パターン構造においては、マスクエンハンサーの形成位置制御がさほど重要ではないことがわかる。
以上に説明したように、第1の実施形態によると、幅(L×M)が(0.8×λ/NA)×M以下の遮光性パターンの内側に、幅(W×M)が((0.8×λ/NA)−L)×M以下のマスクエンハンサーを設けているため、遮光性パターンのうち遮光膜領域の裏側に回折現象によって回り込んだ透過光が、マスクエンハンサーを透過した光によって打ち消されるので、遮光性パターンの遮光効果が向上する。このとき、W=((0.8×λ/NA)−L)/2を満たすようにマスクエンハンサーを設けることによって、遮光性パターンの遮光効果を最大にすることができる。また、L≦0.4×λ/NAの場合には、W=Lとしても、つまり位相シフターのみによって遮光性パターンを形成しても、遮光膜のみによって遮光性パターンを形成した場合よりも遮光効果を向上させることができる。
以下、マスクエンハンサーの幅を最適化した場合に得られる遮光性について図面を参照しながら説明する。
図12(a)〜(c)は、遮光性パターンの幅を(L×M)としてLを0.26μmから0.10μmまで変化させた場合における、遮光性パターンが遮光膜のみからなる単純遮光膜マスク(以下、第4の比較例に係るフォトマスクと称する)、ハーフトーン位相シフトマスク(以下、第5の比較例に係るフォトマスクと称する)、及び遮光性パターンに含まれるマスクエンハンサーの幅が最適化された本実施形態のマスクのそれぞれを用いたときの光強度分布のシミュレーション結果を示している。
図12(d)〜(f)は、遮光性パターンの幅を(L×M)としてLを0.26μmから0.10μmまで変化させた場合における、第4の比較例、第5の比較例及び本実施形態のフォトマスクを、図13に示すような輪帯露光(露光機の光源の中心に、光源半径の2/3の遮光フィルターが設けられている)と組み合わせて用いたときの光強度分布のシミュレーション結果を示している。
尚、図12(a)〜(f)に示す光強度分布のシミュレーションにおいて使用した光学条件は、波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8であり、0.8×λ/NA≒0.26μm及び(0.8/3)×λ/NA≒0.09μmが成り立つ。また、図12(a)〜(f)に示す光強度分布は遮光性パターンの中央部を原点として遮光性パターンを横断する方向に沿って計算されたものである。
図12(a)に示すように、単純遮光膜マスクを用いた場合には、Lが0.8×λ/NA(0.26μm)よりも小さくなるにつれて、遮光性パターンの遮光効果が弱まって、露光マージンが急激に低下する。
また、図12(b)に示すように、ハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合にも、Lが小さくなるにつれて、遮光性パターンの遮光効果が弱まって、露光マージンが急激に低下する。
一方、図12(c)に示すように、最適化されたマスクエンハンサー構造を有する本実施形態のマスクを用いた場合、Lが0.8×λ/NAから(0.8/3)×λ/NA(約0.10μm)までの全ての範囲において同程度の遮光効果が得られることがわかる。尚、前述のように、Lが0.8×λ/NA以上の場合には、遮光膜のみを用いた通常の遮光性パターンによって十分な遮光効果が得られるので、マスクエンハンサー構造の利用によりLが(0.8/3)×λ/NA以上の任意の寸法において十分な遮光効果を実現することができる。また、本実施形態において、L=(0.8/3)×λ/NAが解像限界を意味するものではなく、Lが(0.8/3)×λ/NA以下の場合にも、マスクエンハンサーを用いることによってパターン形成が可能であることは明らかである。
また、図12(a)及び図12(d)、又は図12(b)及び図12(e)に示すように、単純遮光膜マスク又はハーフトーン位相シフトマスクは輪帯露光と組み合わせて用いることによって遮光性の低下を生じてしまう。それに対して、図12(c)及び図12(f)に示すように、本実施形態のマスクを輪帯露光と組み合わせて用いても遮光性の低下は生じない。
尚、本実施形態のマスクを輪帯露光と組み合わせることによって生じる効果については後述する。
以下、マスクエンハンサーを含む遮光性パターンの幅を(L×M)とし、マスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときのLとWの関係について図面を参照しながら説明する。
図14(a)は、横軸をL、縦軸をWとして、W=L及びW=α×(A−L)/2(但し、A=0.8×λ/NAであり、α=0.5、1.0、1.5及び2.0である)のそれぞれと対応するグラフを示したものである。ここで、W=α×(A−L)/2は、マスクエンハンサーの幅(W×M)に関する条件W≦(0.8×λ/NA)−L=A−L(但し、W≦L)を満たしている。また、フォトマスク上に形成できる最小寸法を無視すると、マスクエンハンサーの幅(W×M)に関してW≦Lの条件が成り立つ。
図14(a)において、W=LとW=α×(A−L)/2との交点に●を示しており、該交点におけるLの値はα×A/(2+α)である。
前述のようにマスクエンハンサーはL<Aの条件を満たす遮光性パターンに設けられる一方、図14(a)に示すように、L<Aなる条件でLが小さくなるにつれてW=α×(A−L)/2の値は大きくなって、●の点でWとLとが一致する。すなわち、これよりも小さいLについては遮光性パターンを位相シフターのみで形成することができる。例えばα=1のとき、L=A/3未満の遮光性パターンを位相シフターのみで形成してもよい。
図14(b)は、横軸をL、縦軸をWとして、W=L−2E及びW=α×(A−L)/2(但し、A=0.8×λ/NAであり、α=0.5、1.0、1.5及び2.0である)のそれぞれと対応するグラフを示したものである。ここで、(E×M)はフォトマスク上に形成できる最小寸法であり、例えばフォトマスク描画装置の重ね合わせ精度程度の値を意味している。また、マスクエンハンサーを含む遮光性パターンの幅(L×M)、及びマスクエンハンサーの幅(W×M)が最小寸法(E×M)以上であることはいうまでもない。また、このとき、マスクエンハンサーの両側には、幅が少なくとも(E×M)以上の遮光膜を残す必要があるので、マスクエンハンサーの幅(W×M)に関してW≦L−2Eの条件が成り立つ。
図14(b)において、W=L−2EとW=α×(A−L)/2との交点に●を示しており、該交点におけるLの値は(α×A+4×E)/(2+α)である。
図14(a)と同じく図14(b)に示すように、L<Aなる条件でLが小さくなるにつれてW=α×(A−L)/2の値は大きくなって、●の点でWとL−2Eとが一致する。すなわち、これよりも小さいLについてはマスクエンハンサーの両側に幅が(E×M)の遮光膜を必ず残すようにして、Lが小さくなるにつれてマスクエンハンサーの幅のみを小さくしていく。例えばα=1のとき、L=(A+4×E)/3未満の遮光性パターンにおいては、マスクエンハンサーの幅のみを変化させる。
また、図14(a)及び図14(b)に示すように、マスクエンハンサーの幅(W×M)が、W≦2×(A−L)/2=A−Lの条件とW≦L又はW≦L−2Eの条件とが満たされる範囲内で決定されていれば、マスクエンハンサーによって遮光性を向上させることができる。また、W=(A−L)/2の条件とL≧A/3の条件とが満たされるときにマスクエンハンサーの遮光性が最大になるが、0.5×(A−L)/2≦W≦1.5×(A−L)/2の条件とW≦L又はW≦L−2Eの条件とが満たされていれば、マスクエンハンサーによる遮光性向上効果は十分に得られる。
以下、マスクエンハンサーの透過率及び位相と、マスクエンハンサーによる遮光効果との関係について説明する。
図15は、遮光性パターンの幅を(L×M)としてL=0.10μmでマスクエンハンサーの幅が最適化された本実施形態のマスクにおいて、マスクエンハンサーとしての位相シフト領域の透過率及び位相を変化させたときの遮光効果の変化をシミュレーションした結果を示している。尚、遮光効果の評価式としては(F(X、Y)−F(180、1.0))/F(180、1.0)を用いている(但し、Xは位相、Yは透過率強度(位相透過率を2乗した値であって、光透過領域の透過率強度が1である)、F(X、Y)は遮光性パターン中心での光強度を表している)。また、図15において、遮光効果の評価式が1.0、2.0及び3.0となるときの透過率及び位相の値をそれぞれプロットしている。
ここで、遮光効果の評価式が1となるところ、つまり透過率及び位相の変化に伴う光強度変化が最小光強度F(180、1.0)と等しくなるところを、マスクエンハンサーによる遮光効果の許容限界とすると、図15に示すように、マスクエンハンサーの光透過領域に対する位相差は、(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)であることが好ましい。また、マスクエンハンサーの透過率強度は光透過領域の80%以上であることが好ましい。
尚、以上の説明においては、遮光性パターンがラインパターンとして形成されている場合を前提としてきたが、遮光膜の内側にマスクエンハンサーが少なくとも2方向から光透過領域によって0.4×λ/NA以内の距離で囲まれるように配置されている場合にマスクエンハンサーによる遮光性向上効果が生じる。従って、遮光性パターンの角部若しくはその内側、又はラインパターンとして形成された遮光性パターンの端部若しくはその内側にマスクエンハンサーを配置した場合にも、マスクエンハンサーによる遮光効果の向上が生じ、それによって所望の遮光性パターンに忠実に相似した形状を有する微細パターンの形成が可能となる。
〈第2の実施形態〉
以下、本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法について図面を参照しながら説明する。尚、第2の実施形態に係るパターン形成方法は、第1の実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法である。また、第2の実施形態において、Mは露光機の縮小投影光学系の倍率を示すものとする。
図16(a)〜(e)は、第2の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図16(a)に示すように、基板200上に金属膜又は絶縁膜よりなる被エッチング膜201を形成する。このとき、基板200上には予め下地絶縁膜、下地配線又はトランジスタ等の能動素子等が形成されていてもよい。
次に、図16(b)に示すように、被エッチング膜201上にレジスト膜202を形成する。
尚、本実施形態においては、レジスト膜202の材料として、感光した箇所が現像によって除去されるポジ型レジストを用いるが、ホールパターン等のように微細なレジスト除去領域を形成するためにはネガ型レジストを用いれば良い。
次に、図16(c)に示すように、第1の実施形態に係るフォトマスク、つまりマスクエンハンサー構造を有する遮光性パターン203aが形成されたフォトマスク203を用いて、レジスト膜202に対してパターン露光を行なう。具体的には、露光光204をフォトマスク203に照射することによって生じた透過光205をレジスト膜202の所定箇所に照射する。
次に、図16(d)に示すように、パターン露光されたレジスト膜202を現像してレジストパターン202Aを形成する。
次に、図16(e)に示すように、レジストパターン202Aをエッチングマスクとして、被エッチング膜201に対してエッチングを行なって、被エッチング膜201よりなるパターン201Aを形成する。
第2の実施形態によると、第1の実施形態に係るフォトマスクを用いてパターン露光を行なうため、解像度程度以下の寸法を有するレジストパターン202A又はパターン201Aを形成する場合にも、解像度程度以上の寸法を有するパターンを形成する場合と同程度の遮光性パターン203aによる遮光効果が得られるので、第1の実施形態に係るフォトマスクのみを用いた露光によって、解像度程度以下の寸法を含む任意の寸法のレジストパターン202A又はパターン201Aを任意の形状について形成することができる。
ところで、本件発明者はマスクエンハンサーを用いることによって、遮光性向上効果に加えて、フォーカス特性等のプロセスマージンを向上させる特有の効果が得られることを見出した。以下、このプロセスマージン向上効果について図面を参照しながら説明する。
図17(a)〜(c)は、通常露光、輪帯露光及び四重極露光のそれぞれにおける光源形状を示している。ここで、輪帯露光及び四重極露光はそれぞれ斜入射露光の一つである。
図18(a)は、遮光性パターンの幅を(L×M)としてLを0.10μmから0.25μmまで変化させながら図17(a)に示す通常露光を行なった場合における、単純遮光膜マスク(第4の比較例に係るフォトマスク)、ハーフトーン位相シフトマスク(第5の比較例に係るフォトマスク)、及びマスクエンハンサーの幅が最適化された第1の実施形態に係るフォトマスク(以下、本発明のフォトマスクと称する)のそれぞれを用いたときのDOF(Depth of Focus:焦点深度)値のシミュレーション結果を示している。
図18(b)は、遮光性パターンの幅を(L×M)としてLを0.05μmから0.25μmまで変化させながら図17(b)に示す輪帯露光を行なった場合における、第4の比較例、第5の比較例及び本発明のフォトマスクのそれぞれを用いたときのDOF値のシミュレーション結果を示している。
図18(c)は、遮光性パターンの幅を(L×M)としてLを0.05μmから0.30μmまで変化させながら図17(c)に示す四重極露光を行なった場合における、第4の比較例、第5の比較例及び本発明のフォトマスクのそれぞれを用いたときのDOF値のシミュレーション結果を示している。
尚、図18(a)〜(c)においては、フォーカス位置に依存して変化する線幅(Critical Dimension:以下、CDと称する)の値を任意のLを実現する条件下でシミュレーションすることによって、フォーカス位置が0のときのCDに対するCD変動幅が10%以内になるフォーカス位置の許容幅をDOF値として求めている。
図18(a)〜(c)に示すように、ハーフトーン位相シフトマスクにおいては、輪帯照明法又は四重極照明法等の斜入射照明法を用いることによる焦点深度の向上効果(通常露光を基準としての)が、単純遮光膜マスクと同程度しか見られない。それに対して、マスクエンハンサー構造を有する本発明のフォトマスクにおいては、Lが小さくなるに伴って、斜入射照明法を用いることによる焦点深度の向上効果が顕著に見られる。
すなわち、マスクエンハンサーは遮光性向上効果を有するのみならず、斜入射照明法と組み合わせることによって焦点深度等のプロセスマージン向上効果も有するようになる。言い換えると、遮光効果が最大になるように調整されたマスクエンハンサーは斜入射照明法と組み合わせることにより非常に優れた露光量特性とフォーカス特性とを有する。従って、0.8×λ/NA以下の任意の寸法を有するパターンを形成するときには、フォトマスク上の遮光性パターンにマスクエンハンサーを設けると共に斜入射露光を行なうことによって、従来のフォトマスクでは作成できない微細パターンを実現することができると共に、高いプロセスマージンを確保してLSI製造において高い歩留りを実現することができる。
〈第3の実施形態〉
以下、本発明の第3の実施形態に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。尚、第3の実施形態に係るフォトマスクの作成方法は、第1の実施形態に係るフォトマスク、つまり透過性基板上に形成された遮光膜領域とマスクエンハンサーとから構成されている孤立した遮光性パターンを備えたフォトマスクの作成方法である。また、第3の実施形態において、NAは露光機の縮小投影光学系の開口数を示し、λは露光光つまり光源の波長を示し、Mは露光機の縮小投影光学系の倍率を示すものとする。
図19(a)〜(g)は、第3の実施形態に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図19(h)〜(l)は、それぞれ図19(b)、(c)、(e)、(f)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図19(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板300上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜301を堆積した後、遮光膜301の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜302を形成する。
次に、電子線(EB)描画機等のマスク描画装置を用いて第1のレジスト膜302に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜302を現像して、図19(b)又は図19(h)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第1のレジストパターン302Aを作成する。
次に、第1のレジストパターン302Aをマスクとして遮光膜301に対してエッチングを行なって、図19(c)又は図19(i)に示すように、遮光膜301よりなるマスクパターン301Aを形成した後、第1のレジストパターン302Aを除去する。図19(c)に示す工程が終了した段階で、マスクパターン301Aに欠陥が存在する場合には、従来用いられているマスク製造方法における修復工程等を行なう。
次に、図19(d)に示すように、マスクパターン301Aが形成された透過性基板300上にレジストを塗布して第2のレジスト膜303を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜303に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜303を現像して、図19(e)又は図19(j)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第2のレジストパターン303Aを形成する。尚、マスクエンハンサー形成領域は必ずマスクパターン301Aの内側に存在するので、第2のレジストパターン303Aの開口部は必ずマスクパターン301A上に存在する。
次に、図19(f)又は図19(k)に示すように、第2のレジストパターン303Aをマスクとしてマスクパターン301Aに対してエッチングを行なって、マスクパターン301Aに開口部304を形成する。
次に、第2のレジストパターン303Aをマスクとして透過性基板300に対してエッチングを行なって、図19(g)又は図19(l)に示すように、透過性基板300における開口部304の下側の部分を、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さだけ除去した後、第2のレジストパターン303Aを除去する。このとき、マスクパターン301Aがわずかにオーバーハングするように透過性基板300を彫り込んでおく。
以上に説明したように、第3の実施形態によると、透過性基板300上の遮光膜301をパターン化してマスクパターン301Aを形成した後、マスクパターン301Aにマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部304を形成し、その後、透過性基板300における開口部304の下側の部分を彫り込む。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン301Aの外側の透過性基板300つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部304の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
ところで、第1の実施形態に係るフォトマスクにおいて重要なパラメータは、マスクエンハンサーを含む遮光性パターンの幅、つまり開口部304を含むマスクパターン301Aの幅(L×M)と、マスクエンハンサーの幅つまり開口部304の幅(W×M)である(図19(g)参照)。
一方、第3の実施形態によると、マスクパターン301Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部304を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、遮光性パターンの寸法及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
尚、第3の実施形態において、透過性基板300の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第3の実施形態において、遮光膜301の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第3の実施形態において、開口部304の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。このようにすると、マスクエンハンサーの遮光性が、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べて確実に同程度以上になる。
また、第3の実施形態において、開口部304を含むマスクパターン301Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このようにすると、マスクパターン301Aに開口部304つまりマスクエンハンサーを設けることによって、遮光性向上効果が生じる。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L又はW≦L−2E(但し、(E×M)はフォトマスク上に形成できる最小寸法)であると、遮光性向上効果が確実に生じる。また、0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L又はW≦L−2Eであると、遮光性向上効果を大きくすることができる。さらに、W=((0.8×λ/NA)−L)/2(但しL≧(0.8×λ/NA)/3)であると、遮光性向上効果を最大にすることができる。
また、第3の実施形態において、透過性基板300における開口部304の下側の部分を、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さだけ除去したが、これに代えて、透過性基板300における開口部304の下側の部分を、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる厚さだけ除去してもよい。
また、第3の実施形態において、透過性基板300の光透過領域の表面状態と、透過性基板300のマスクエンハンサー部分の表面状態とを等価にして透過率の調整を行なえるようにするために、図19(g)に示す工程の後に、透過性基板300の全面に対してエッチングを行なってもよい。
また、第3の実施形態において、マスクパターン301Aを形成するためのパターンニング工程(図19(c))の後に開口部304を形成するためのパターンニング工程(図19(f))を行なったが、これに代えて、開口部304を形成するためのパターンニング工程の後にマスクパターン301Aを形成するためのパターンニング工程を行なってもよい。
以下、第3の実施形態に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点について説明する。
第1に、従来のフォトマスクの作成方法においては、透過性基板を彫り込むことによって位相シフターとなる溝を形成する場合に、該溝の壁面を垂直にすることが困難であるため、光透過領域と位相シフターとの境界で透過光に急激な位相変化を発生させられず、その結果、十分な位相シフト効果が得られなかった。それに対して、第3の実施形態においては、開口部304の下側の透過性基板300を彫り込むことによってマスクエンハンサーとなる溝を形成する一方、マスクエンハンサーの寸法は開口部304の幅によって制御することができる。このため、図19(g)に示すように、開口部304の下側の透過性基板300を、マスクパターン301Aがわずかにオーバーハングするように彫り込むことによって、言い換えると、マスクエンハンサーとなる溝をマスクパターン301Aの下側に潜り込むように設けることによって、開口部304の下側にマスクエンハンサーとなる溝をその壁面が完全に垂直になるように形成するのと同等の効果が得られる。すなわち、透過性基板300に対するエッチングによって形成される溝の壁面形状の影響を受けることなく、マスクエンハンサーによる遮光効果を実現することができる。
第2に、位相シフトマスクを作成する場合、一般的に、位相シフターを形成するための基板エッチングを行なうときに発生したエッチング残り又は欠陥等を修復できないため、位相シフト効果が十分に得られないという問題がある。それに対して、第3の実施形態においても、マスクエンハンサーを形成するための基板エッチングを行なうときに欠陥等が発生する場合がある一方、マスクエンハンサーは遮光性向上効果を発生させるためのものであって、遮光性向上効果にマスクエンハンサー内の欠陥が大きな影響を及ぼすことは少ない。従って、マスクエンハンサー内の欠陥を修復する必要が生じにくくなるので、位相シフトマスク作成上の歩留り低下が起こりにくい。
図20(a)は、第1の実施形態に係るフォトマスクにおいてマスクエンハンサー内に位相反転しない欠陥(白欠陥)が生じている様子を示す図である。図20(a)に示すように、透過性基板350上に遮光膜領域351がマスクエンハンサー352を囲むように形成されており、遮光膜領域351とマスクエンハンサー352とによって遮光性パターンが構成されている。また、マスクエンハンサー352内には位相反転しない欠陥353が生じている。また、マスクエンハンサー352を含む遮光膜領域351の幅は(L×M)であり、マスクエンハンサー352の幅は(W×M)であり、欠陥353の幅は(P×M)である。
図20(b)〜(d)は、幅Lをそれぞれ0.10μm、0.14μm、0.18μmと変化させた場合においてマスクエンハンサー352の遮光効果が最大となる幅Wに対して幅Pを色々変化させた場合における、図20(a)に示すマスク上の2点AB間を透過した光の光強度(相対光強度)分布のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。
図20(b)〜(d)に示すように、幅Pが0.05μm程度以下の欠陥353がマスクエンハンサー352内に存在していても、欠陥353が存在していない場合と同程度の光強度分布が得られており、遮光性向上効果の劣化は生じていない。つまり、マスクエンハンサー構造は幅0.05μm程度までの位相反転しない欠陥に対して強い構造を有している。
図21(a)は、第1の実施形態に係るフォトマスクにおいてマスクエンハンサー内に遮光膜よりなるエッチング残り(黒欠陥又はゴミ欠陥)が生じている様子を示す図である。図21(a)に示すように、透過性基板360上に遮光膜領域361がマスクエンハンサー362を囲むように形成されており、遮光膜領域361とマスクエンハンサー362とによって遮光性パターンが構成されている。また、マスクエンハンサー362内には遮光膜よりなるエッチング残り363が生じている。また、マスクエンハンサー362を含む遮光膜領域361の幅は(L×M)であり、マスクエンハンサー362の幅は(W×M)であり、エッチング残り363の幅は(P×M)である。
図21(b)〜(d)は、幅Lをそれぞれ0.10μm、0.14μm、0.18μmと変化させた場合においてマスクエンハンサー362の遮光効果が最大となる幅Wに対して幅Pを色々変化させた場合における、図21(a)に示すマスク上の2点AB間を透過した光の光強度(相対光強度)分布のシミュレーション結果(光学条件:波長λ=0.193μm、開口数NA=0.6、干渉度σ=0.8)を示している。
図21(b)〜(d)に示すように、幅Pが0.05μm程度以下のエッチング残り363がマスクエンハンサー362内に存在していても、エッチング残り363が存在していない場合と同程度の光強度分布が得られており、遮光性向上効果の劣化は生じていない。つまり、マスクエンハンサー構造は幅0.05μm程度までのエッチング残りに対して強い構造を有している。
第3に、一般的に、EB描画機等のマスク描画装置を用いて直接形成可能な遮光膜パターンの最小線幅には限界が存在している。それに対して、第3の実施形態においては、マスクパターン301Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部304つまりマスクエンハンサーを形成するためのパターンニング工程とを独立して行なう。このため、開口部304を囲むマスクパターン301Aの線幅、つまりマスクエンハンサーを囲む遮光膜パターン(遮光膜領域)の線幅として、マスク描画装置の重ね合わせマージンまでの微小な線幅を使用することができる。このとき、例えばEB描画機の重ね合わせマージンは、EB描画機により形成可能な最小パターン幅よりも小さいので、マスクパターンとマスクエンハンサーとを2回のパターンニング工程において別々に形成する第3の実施形態によって、従来よりも細い遮光膜パターンを形成することができる。但し、第3の実施形態においては、マスクパターンとマスクエンハンサーとをそれぞれ別のパターンニング工程において形成する結果、マスクエンハンサーがマスクパターンの中央部に配置されないという位置ずれが起こりうる。しかし、第1の実施形態において図11を用いて説明したように、マスクエンハンサーが位置ずれしたフォトマスクを用いた露光を行なっても、光強度分布に生じる影響は小さい。
〈第3の実施形態の第1変形例〉
以下、本発明の第3の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
尚、第3の実施形態の第1変形例が第3の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第3の実施形態においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程の後に行なうのに対して、第3の実施形態の第1変形例においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程よりも前に行なうことである。
図22(a)〜(g)は、第3の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図22(h)〜(k)は、それぞれ図22(b)、(c)、(f)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図22(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板310上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜311を堆積した後、遮光膜311の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜312を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜312に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜312を現像して、図22(b)又は図22(h)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン312Aを形成する。
次に、第1のレジストパターン312Aをマスクとして遮光膜311に対してエッチングを行なって、図22(c)又は図22(i)に示すように、遮光膜311に開口部313を形成した後、第1のレジストパターン312Aを除去する。
次に、図22(d)に示すように、開口部313が形成された遮光膜311をマスクとして透過性基板310に対してエッチングを行なって、透過性基板310における開口部313の下側の部分を、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さだけ除去する。このとき、遮光膜311がわずかにオーバーハングするように透過性基板310を彫り込んでおく。
次に、図22(e)に示すように、開口部313を含む遮光膜311の上にレジストを塗布して第2のレジスト膜314を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜314に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜314を現像して、図22(f)又は図22(j)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第2のレジストパターン314Aを作成する。
次に、第2のレジストパターン314Aをマスクとして遮光膜311に対してエッチングを行なって、図22(g)又は図22(k)に示すように、遮光膜311よりなり開口部313を有するマスクパターン311Aを形成した後、第2のレジストパターン314Aを除去する。
以上に説明したように、第3の実施形態の第1変形例によると、透過性基板310上の遮光膜311にマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部313を形成した後、透過性基板310における開口部313の下側の部分を彫り込み、その後、遮光膜311をパターン化して、開口部313を有するマスクパターン311Aを形成する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン311Aの外側の透過性基板310つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部313の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第3の実施形態の第1変形例によると、マスクパターン311Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部313を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部313を含むマスクパターン311Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第3の実施形態の第1変形例によると、開口部313を形成するためのパターンニング工程を、マスクパターン311Aを形成するためのパターンニング工程よりも先に行なうため、開口部313が形成された遮光膜311をマスクとして透過性基板310に対してエッチングを行なうことができる。このため、マスクパターンを形成した後に開口部を形成する場合(例えば第3の実施形態)のようにレジストパターンを用いて開口部形成と基板エッチングとを連続的に行なう必要がないので、第1の実施形態に係るフォトマスクを簡単に作成することができる。
また、第3の実施形態の第1変形例によると、マスクパターン311Aを形成する前に基板エッチングを行なうため、マスクパターン311Aを形成するときに、マスク描画装置の重ね合わせずれに起因して、開口部313を囲む遮光膜領域が消失しても問題が生じない。その理由は、重ね合わせずれによって遮光膜領域が消失する可能性がある寸法においては、遮光性パターンが位相シフターのみによって形成されていても、遮光性向上効果が生じるからである。
また、第3の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第3の実施形態の第1変形例において、透過性基板310の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第3の実施形態の第1変形例において、遮光膜311の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第3の実施形態の第1変形例において、開口部313の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第3の実施形態の第1変形例において、開口部313を含むマスクパターン311Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
また、第3の実施形態の第1変形例において、透過性基板310における開口部313の下側の部分を、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さだけ除去したが、これに代えて、透過性基板310における開口部313の下側の部分を、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる厚さだけ除去してもよい。
また、第3の実施形態の第1変形例において、透過性基板310の光透過領域の表面状態と、透過性基板310のマスクエンハンサー部分の表面状態とを等価にして透過率の調整を行なえるようにするために、図22(g)に示す工程の後に、透過性基板310の全面に対してエッチングを行なってもよい。
〈第3の実施形態の第2変形例〉
以下、本発明の第3の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
尚、第3の実施形態の第2変形例が第3の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第3の実施形態においては、透過性基板における開口部の下側の部分を除去するのに対して、第3の実施形態の第2変形例においては、透過性基板におけるマスクパターンの外側の部分を除去することである。
図23(a)〜(h)は、第3の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図23(i)〜(m)は、それぞれ図23(b)、(c)、(f)、(g)及び(h)と対応する平面図である。
まず、図23(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板320上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜321を堆積した後、遮光膜321の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜322を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜322に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜322を現像して、図23(b)又は図23(i)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第1のレジストパターン322Aを作成する。
次に、第1のレジストパターン322Aをマスクとして遮光膜321に対してエッチングを行なって、図23(c)又は図23(j)に示すように、遮光膜321よりなるマスクパターン321Aを形成した後、第1のレジストパターン322Aを除去する。
次に、図23(d)に示すように、マスクパターン321Aを用いて透過性基板320に対してエッチングを行なって、透過性基板320におけるマスクパターン321Aの外側の部分を、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さだけ除去する。このとき、マスクパターン321Aがわずかにオーバーハングするように透過性基板320を彫り込んでおく。
次に、図23(e)に示すように、マスクパターン321Aを含む透過性基板320の上にレジストを塗布して第2のレジスト膜323を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜323に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜323を現像して、図23(f)又は図23(k)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第2のレジストパターン323Aを作成する。
次に、図23(g)又は図23(l)に示すように、第2のレジストパターン323Aをマスクとしてマスクパターン321Aに対してエッチングを行なって、マスクパターン321Aに開口部324を形成した後、図23(h)又は図23(m)に示すように、第2のレジストパターン323Aを除去する。
以上に説明したように、第3の実施形態の第2変形例によると、透過性基板320上の遮光膜321をパターン化してマスクパターン321Aを形成した後、透過性基板320におけるマスクパターン321Aの外側の部分を彫り込み、その後、マスクパターン321Aにマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部324を形成する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン321Aの外側の透過性基板320つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部324の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第3の実施形態の第2変形例によると、マスクパターン321Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部324を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部324を含むマスクパターン321Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第3の実施形態の第2変形例によると、透過性基板320におけるマスクパターン321Aの外側の部分を彫り込むことによって、マスクエンハンサーと光透過領域との間に位相差を設けるため、該位相差を、微小面積の開口部の下側の透過性基板を彫り込むことによって設ける場合(第3の実施形態又は第3の実施形態の第1変形例)と比べて、第1の実施形態に係るフォトマスクを簡単に作成できる。
また、第3の実施形態の第2変形例によると、開口部324の形成前に基板エッチングを行なうため、開口部324を形成するときに、マスク描画装置の重ね合わせずれに起因して、開口部324を囲む遮光膜領域が消失しても問題が生じない。その理由は、重ね合わせずれによって遮光膜領域が消失する可能性がある寸法においては、遮光性パターンが位相シフターのみによって形成されていても、遮光性向上効果が生じるからである。
また、第3の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第3の実施形態の第2変形例において、透過性基板320の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第3の実施形態の第2変形例において、遮光膜321の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第3の実施形態の第2変形例において、開口部324の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第3の実施形態の第2変形例において、開口部324を含むマスクパターン321Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
また、第3の実施形態の第2変形例において、透過性基板320におけるマスクパターン321Aの外側の部分を、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さだけ除去したが、これに代えて、透過性基板320におけるマスクパターン321Aの外側の部分を、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる厚さだけ除去してもよい。
また、第3の実施形態の第2変形例において、透過性基板320の光透過領域の表面状態と、透過性基板320のマスクエンハンサー部分の表面状態とを等価にして透過率の調整を行なえるようにするために、図23(h)に示す工程の後に、透過性基板320の全面に対してエッチングを行なってもよい。
〈第4の実施形態〉
以下、本発明の第4の実施形態に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。尚、第4の実施形態に係るフォトマスクの作成方法は、第1の実施形態に係るフォトマスク、つまり透過性基板上に形成された遮光膜領域とマスクエンハンサーとから構成されている孤立した遮光性パターンを備えたフォトマスクの作成方法である。また、第4の実施形態において、NAは露光機の縮小投影光学系の開口数を示し、λは露光光つまり光源の波長を示し、Mは露光機の縮小投影光学系の倍率を示すものとする。
図24(a)〜(g)は、第4の実施形態に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図24(h)〜(l)は、それぞれ図24(b)、(c)、(e)、(f)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図24(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板400上に、例えばSOG(Spin on Glass)膜等よりなり且つ透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さを有する位相シフター層401を形成する。その後、位相シフター層401の上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜402を堆積した後、遮光膜402の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜403を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜403に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜403を現像して、図24(b)又は図24(h)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第1のレジストパターン403Aを作成する。
次に、第1のレジストパターン403Aをマスクとして遮光膜402に対してエッチングを行なって、図24(c)又は図24(i)に示すように、遮光膜402よりなるマスクパターン402Aを形成した後、第1のレジストパターン403Aを除去する。
次に、図24(d)に示すように、マスクパターン402Aが形成された透過性基板400上にレジストを塗布して第2のレジスト膜404を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜404に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜404を現像して、図24(e)又は図24(j)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第2のレジストパターン404Aを形成する。
次に、図24(f)又は図24(k)に示すように、第2のレジストパターン404Aをマスクとしてマスクパターン402A及び位相シフター層401に対して順次エッチングを行なって、マスクパターン402Aに開口部405を形成すると共に、位相シフター層401における開口部405の下側の部分を除去する。その後、図24(g)又は図24(l)に示すように、第2のレジストパターン404Aを除去する。
以上に説明したように、第4の実施形態によると、透過性基板400上に形成された位相シフター層401上の遮光膜402をパターン化してマスクパターン402Aを形成した後、マスクパターン402Aにマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部405を形成し、その後、位相シフター層401における開口部405の下側の部分を除去する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン402Aの外側の透過性基板400つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部405の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第4の実施形態によると、マスクパターン402Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部405を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部405を含むマスクパターン402Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第4の実施形態によると、位相シフター層401における開口部405の下側の部分を除去することによって、光透過領域とマスクエンハンサーとの間に位相差を設けるので、該位相差を設けるために透過性基板400を彫り込む場合と比べて、エッチング工程の管理が簡単になって位相エラーが低減すると共に、位相シフター層401のエッジ部分を垂直にすることが簡単になる。
また、第4の実施形態によると、位相シフター層401に対するエッチングにおいては、透過性基板400に対するエッチングと異なって、遮光膜パターンの存在が必須ではないので、開口部405を形成するときに、マスク描画装置の重ね合わせずれに起因して、開口部405を囲む遮光膜領域が消失しても問題が生じない。
また、第4の実施形態に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第4の実施形態において、透過性基板400の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第4の実施形態において、位相シフター層401の材料として、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じるSOG膜を用いたが、これに限られず、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる任意の透過性膜を用いることができる。
また、第4の実施形態において、遮光膜402の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第4の実施形態において、開口部405の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第4の実施形態において、開口部405を含むマスクパターン402Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
〈第4の実施形態の第1変形例〉
以下、本発明の第4の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
尚、第4の実施形態の第1変形例が第4の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第4の実施形態においては、位相シフター層における開口部の下側の部分を除去するのに対して、第4の実施形態の第1変形例においては、位相シフター層におけるマスクパターンの外側の部分を除去することである。
図25(a)〜(h)は、第4の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図25(i)〜(n)は、それぞれ図25(b)、(c)、(d)、(f)、(g)及び(h)と対応する平面図である。
まず、図25(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板410上に、例えばSOG膜等よりなり且つ透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さを有する位相シフター層411を形成する。その後、位相シフター層411の上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜412を堆積した後、遮光膜412の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜413を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜413に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜413を現像して、図25(b)又は図25(i)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第1のレジストパターン413Aを作成する。
次に、第1のレジストパターン413Aをマスクとして遮光膜412に対してエッチングを行なって、図25(c)又は図25(j)に示すように、遮光膜412よりなるマスクパターン412Aを形成した後、第1のレジストパターン413Aを除去する。
次に、図25(d)又は図25(k)に示すように、マスクパターン412Aを用いて位相シフター層411に対してエッチングを行なって、位相シフター層411におけるマスクパターン412Aの外側の部分を除去する。
次に、図25(e)に示すように、マスクパターン412Aを含む透過性基板410上にレジストを塗布して第2のレジスト膜414を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜414に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜414を現像して、図25(f)又は図25(l)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第2のレジストパターン414Aを形成する。
次に、図25(g)又は図25(m)に示すように、第2のレジストパターン414Aをマスクとしてマスクパターン412Aに対してエッチングを行なって、マスクパターン412Aに開口部415を形成する。その後、図25(h)又は図25(n)に示すように、第2のレジストパターン414Aを除去する。
以上に説明したように、第4の実施形態の第1変形例によると、透過性基板410上に形成された位相シフター層411上の遮光膜412をパターン化してマスクパターン412Aを形成した後、位相シフター層411におけるマスクパターン412Aの外側の部分を除去し、その後、マスクパターン412Aにマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部415を形成する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン412Aの外側の透過性基板410つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部415の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第4の実施形態の第1変形例によると、マスクパターン412Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部415を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部415を含むマスクパターン412Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第4の実施形態の第1変形例によると、位相シフター層411におけるマスクパターン412Aの外側の部分を除去することによって、光透過領域とマスクエンハンサーとの間に位相差を設けるので、該位相差を設けるために透過性基板410を彫り込む場合と比べて、エッチング工程の管理が簡単になって位相エラーが低減すると共に、位相シフター層411のエッジ部分を垂直にすることが簡単になる。また、前述の位相差を設けるために微小面積の開口部415の下側の位相シフター層411を除去する場合と比べて、第1の実施形態に係るフォトマスクを簡単に作成することができる。さらに、開口部415が形成される前のマスクパターン412Aを用いて位相シフター層411に対してエッチングを行なうため、開口部を形成した後にマスクパターンを形成する場合のようにレジストパターンを用いてマスクパターン形成とシフター層エッチングとを連続的に行なう必要がないので、第1の実施形態に係るフォトマスクを簡単に作成することができる。
また、第4の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第4の実施形態の第1変形例において、透過性基板410の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第4の実施形態の第1変形例において、位相シフター層411の材料として、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じるSOG膜を用いたが、これに限られず、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる任意の透過性膜を用いることができる。
また、第4の実施形態の第1変形例において、遮光膜412の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第4の実施形態の第1変形例において、開口部415の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第4の実施形態の第1変形例において、開口部415を含むマスクパターン412Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
〈第4の実施形態の第2変形例〉
以下、本発明の第4の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
尚、第4の実施形態の第2変形例が第4の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第4の実施形態においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程の後に行なうと共に位相シフター層における開口部の下側の部分を除去するのに対して、第4の実施形態の第2変形例においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程よりも前に行なうと共に位相シフター層におけるマスクパターンの外側の部分を除去することである。
図26(a)〜(g)は、第4の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図26(h)〜(k)は、それぞれ図26(b)、(c)、(e)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図26(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板420上に、例えばSOG膜等よりなり且つ透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さを有する位相シフター層421を形成する。その後、位相シフター層421の上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜422を堆積した後、遮光膜422の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜423を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜423に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜423を現像して、図26(b)又は図26(h)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン423Aを形成する。
次に、第1のレジストパターン423Aをマスクとして遮光膜422に対してエッチングを行なって、図26(c)又は図26(i)に示すように、遮光膜422に開口部424を形成した後、第1のレジストパターン423Aを除去する。
次に、図26(d)に示すように、開口部424を含む遮光膜422上にレジストを塗布して第2のレジスト膜425を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜425に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜425を現像して、図26(e)又は図26(j)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第2のレジストパターン425Aを作成する。
次に、図26(f)に示すように、第2のレジストパターン425Aをマスクとして遮光膜422及び位相シフター層421に対して順次エッチングを行なって、遮光膜422よりなり開口部424を有するマスクパターン422Aを形成すると共に、位相シフター層421におけるマスクパターン422Aの外側の部分を除去する。その後、図26(g)又は図26(k)に示すように、第2のレジストパターン425Aを除去する。
以上に説明したように、第4の実施形態の第2変形例によると、透過性基板420上に形成された位相シフター層421上の遮光膜422にマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部424を形成した後、遮光膜422をパターン化して、開口部424を有するマスクパターン422Aを形成し、その後、位相シフター層421におけるマスクパターン422Aの外側の部分を除去する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン422Aの外側の透過性基板420つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部424の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第4の実施形態の第2変形例によると、マスクパターン422Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部424を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部424を含むマスクパターン422Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第4の実施形態の第2変形例によると、位相シフター層421におけるマスクパターン422Aの外側の部分を除去することによって、光透過領域とマスクエンハンサーとの間に位相差を設けるので、該位相差を設けるために透過性基板420を彫り込む場合と比べて、エッチング工程の管理が簡単になって位相エラーが低減すると共に、位相シフター層421のエッジ部分を垂直にすることが簡単になる。また、前述の位相差を設けるために微小面積の開口部424の下側の位相シフター層421を除去する場合と比べて、第1の実施形態に係るフォトマスクを簡単に作成することができる。
また、第4の実施形態の第2変形例によると、位相シフター層421に対するエッチングにおいては、透過性基板420に対するエッチングと異なって、遮光膜パターンの存在が必須ではないので、マスクパターン422Aを形成するときに、マスク描画装置の重ね合わせずれに起因して、開口部424を囲む遮光膜領域が消失しても問題が生じない。
また、第4の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第4の実施形態の第2変形例において、透過性基板420の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第4の実施形態の第2変形例において、位相シフター層421の材料として、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じるSOG膜を用いたが、これに限られず、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる任意の透過性膜を用いることができる。
また、第4の実施形態の第2変形例において、遮光膜422の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第4の実施形態の第2変形例において、開口部424の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第4の実施形態の第2変形例において、開口部424を含むマスクパターン422Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
〈第4の実施形態の第3変形例〉
以下、本発明の第4の実施形態の第3変形例に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
尚、第4の実施形態の第3変形例が第4の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第4の実施形態においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程の後に行なうのに対して、第4の実施形態の第3変形例においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程よりも前に行なうことである。
図27(a)〜(g)は、第4の実施形態の第3変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図27(h)〜(l)は、それぞれ図27(b)、(c)、(d)、(f)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図27(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板430上に、例えばSOG膜等よりなり且つ透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さを有する位相シフター層431を形成する。その後、位相シフター層431の上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜432を堆積した後、遮光膜432の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜433を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜433に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜433を現像して、図27(b)又は図27(h)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン433Aを形成する。
次に、第1のレジストパターン433Aをマスクとして遮光膜432に対してエッチングを行なって、図27(c)又は図27(i)に示すように、遮光膜432に開口部434を形成した後、第1のレジストパターン433Aを除去する。
次に、図27(d)又は図27(j)に示すように、開口部434が形成された遮光膜432をマスクとして位相シフター層431に対してエッチングを行なって、位相シフター層431における開口部434の下側の部分を除去する。
次に、図27(e)に示すように、開口部434を含む遮光膜432の上にレジストを塗布して第2のレジスト膜435を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜435に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜435を現像して、図27(f)又は図27(k)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第2のレジストパターン435Aを作成する。
次に、第2のレジストパターン435Aをマスクとして遮光膜432に対してエッチングを行なって、図27(g)又は図27(l)に示すように、遮光膜432よりなり開口部434を有するマスクパターン432Aを形成した後、第2のレジストパターン435Aを除去する。
以上に説明したように、第4の実施形態の第3変形例によると、透過性基板430上に形成された位相シフター層431上の遮光膜432にマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部434を形成した後、位相シフター層431における開口部434の下側の部分を除去し、その後、遮光膜432をパターン化して、開口部434を有するマスクパターン432Aを形成する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン432Aの外側の透過性基板430つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部434の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第4の実施形態の第3変形例によると、マスクパターン432Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部434を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部434を含むマスクパターン432Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第4の実施形態の第3変形例によると、位相シフター層431における開口部434の下側の部分を除去することによって、光透過領域とマスクエンハンサーとの間に位相差を設けるので、該位相差を設けるために透過性基板430を彫り込む場合と比べて、エッチング工程の管理が簡単になって位相エラーが低減すると共に、位相シフター層431のエッジ部分を垂直にすることが簡単になる。
また、第4の実施形態の第3変形例によると、開口部434を形成するためのパターンニング工程を、マスクパターン432Aを形成するためのパターンニング工程よりも先に行なうため、開口部434が形成された遮光膜432をマスクとして位相シフター層431に対してエッチングを行なうことができる。このため、マスクパターンを形成した後に開口部を形成する場合(例えば第4の実施形態)のようにレジストパターンを用いて開口部形成と基板エッチングとを連続的に行なう必要がないので、第1の実施形態に係るフォトマスクを簡単に作成することができる。
また、第4の実施形態の第3変形例に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第4の実施形態の第3変形例において、透過性基板430の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第4の実施形態の第3変形例において、位相シフター層431の材料として、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じるSOG膜を用いたが、これに限られず、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる任意の透過性膜を用いることができる。
また、第4の実施形態の第3変形例において、遮光膜432の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第4の実施形態の第3変形例において、開口部434の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第4の実施形態の第3変形例において、開口部434を含むマスクパターン422Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
〈第5の実施形態〉
以下、本発明の第5の実施形態に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。尚、第5の実施形態に係るフォトマスクの作成方法は、第1の実施形態に係るフォトマスク、つまり透過性基板上に形成された遮光膜領域とマスクエンハンサーとから構成されている孤立した遮光性パターンを備えたフォトマスクの作成方法である。また、第5の実施形態において、NAは露光機の縮小投影光学系の開口数を示し、λは露光光つまり光源の波長を示し、Mは露光機の縮小投影光学系の倍率を示すものとする。
図28(a)〜(g)は、第5の実施形態に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図28(h)〜(l)は、それぞれ図28(b)、(c)、(e)、(f)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図28(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板500上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜501を堆積した後、遮光膜501の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜502を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜502に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜502を現像して、図28(b)又は図28(h)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン502Aを形成する。
次に、第1のレジストパターン502Aをマスクとして遮光膜501に対してエッチングを行なって、図28(c)又は図28(i)に示すように、遮光膜501に開口部503を形成した後、第1のレジストパターン502Aを除去する。
次に、図28(d)に示すように、開口部503を含む遮光膜501上に、例えばSOG膜等よりなり且つ透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さを有する位相シフター層504を形成する。その後、位相シフター層504上に、レジストを塗布して第2のレジスト膜505を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜505に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜505を現像して、図28(e)又は図28(j)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第2のレジストパターン505Aを作成する。
次に、第2のレジストパターン505Aをマスクとして位相シフター層504に対してエッチングを行なって、図28(f)又は図28(k)に示すように、位相シフター層504におけるマスクパターン形成領域の外側の部分を除去した後、第2のレジストパターン505Aを除去する。
次に、図28(g)又は図28(l)に示すように、パターン化された位相シフター層504をマスクとして遮光膜501に対してエッチングを行なって、遮光膜501よりなり開口部503を有するマスクパターン501Aを形成する。このとき、開口部503を含むマスクパターン501Aは位相シフター層504により覆われている。
以上に説明したように、第5の実施形態によると、透過性基板500上の遮光膜501にマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部503を形成した後、透過性基板500上に位相シフター層504を形成し、その後、位相シフター層504におけるマスクパターン形成領域の外側の部分を除去した後、遮光膜501をパターン化して、開口部503を有するマスクパターン501Aを位相シフター層504により覆われるように形成する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン501Aの外側の透過性基板500つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部503の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第5の実施形態によると、マスクパターン501Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部503を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部503を含むマスクパターン501Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第5の実施形態によると、位相シフター層504におけるマスクパターン501Aの外側の部分を除去することによって、光透過領域とマスクエンハンサーとの間に位相差を設けるので、該位相差を設けるために透過性基板500を彫り込む場合と比べて、エッチング工程の管理が簡単になって位相エラーが低減すると共に、位相シフター層504のエッジ部分を垂直にすることが簡単になる。
また、第5の実施形態によると、位相シフター層504に対するパターニング工程で欠陥が発生した場合、該欠陥を位相シフター層504を再形成することによって修復できるため、位相シフター層形成工程よりも前の工程を繰り返す必要がないので、スループットが向上する。
また、第5の実施形態に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第5の実施形態において、透過性基板500の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第5の実施形態において、遮光膜501の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第5の実施形態において、位相シフター層504の材料として、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じるSOG膜を用いたが、これに限られず、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる任意の透過性膜を用いることができる。
また、第5の実施形態において、開口部503の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第5の実施形態において、開口部503を含むマスクパターン501Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
〈第5の実施形態の変形例〉
以下、本発明の第5の実施形態の変形例に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
尚、第5の実施形態の変形例が第5の実施形態と異なっている点は次の通りである。すなわち、第5の実施形態においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程よりも前に行なうと共に位相シフター層におけるマスクパターンの外側の部分を除去するのに対して、第5の実施形態の変形例においては、開口部を形成するためのパターニング工程を、マスクパターンを形成するためのパターニング工程の後に行なうと共に位相シフター層における開口部の下側の部分を除去することである。
図29(a)〜(g)は、第5の実施形態の変形例に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図である。また、図29(h)〜(l)は、それぞれ図29(b)、(c)、(e)、(f)及び(g)と対応する平面図である。
まず、図29(a)に示すように、例えば石英ガラス等よりなる透過性基板510上に例えばクロム化合物等よりなる遮光膜511を堆積した後、遮光膜511の上にレジストを塗布して第1のレジスト膜512を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第1のレジスト膜512に対してパターン描画を行なった後、第1のレジスト膜512を現像して、図29(b)又は図29(h)に示すように、マスクパターン形成領域を覆う第1のレジストパターン512Aを作成する。
次に、第1のレジストパターン512Aをマスクとして遮光膜511に対してエッチングを行なって、図29(c)又は図29(i)に示すように、遮光膜511よりなるマスクパターン511Aを形成した後、第1のレジストパターン512Aを除去する。
次に、図29(d)に示すように、マスクパターン511Aを含む透過性基板510上に、例えばSOG膜等よりなり且つ透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じる厚さを有する位相シフター層513を形成する。その後、位相シフター層513上に、レジストを塗布して第2のレジスト膜514を形成する。
次に、マスク描画装置を用いて第2のレジスト膜514に対してパターン描画を行なった後、第2のレジスト膜514を現像して、図29(e)又は図29(j)に示すように、マスクエンハンサー形成領域に開口部を有する第2のレジストパターン514Aを形成する。
次に、第2のレジストパターン514Aをマスクとして位相シフター層513に対してエッチングを行なって、図29(f)又は図29(k)に示すように、位相シフター層513におけるマスクエンハンサー形成領域に位置する部分を除去した後、第2のレジストパターン514Aを除去する。
次に、図29(g)又は図29(l)に示すように、パターン化された位相シフター層513をマスクとしてマスクパターン511Aに対してエッチングを行なって、マスクパターン511Aに開口部515を形成する。
以上に説明したように、第5の実施形態の変形例によると、透過性基板510上の遮光膜511をパターン化してマスクパターン511Aを形成した後、透過性基板510上に位相シフター層513を形成し、その後、位相シフター層513におけるマスクエンハンサー形成領域に位置する部分を除去した後、マスクパターン511Aにマスクエンハンサー形成領域に位置する開口部515を形成する。このため、マスクエンハンサーと、マスクパターン511Aの外側の透過性基板510つまり光透過領域との間に位相差を設けることができるので、開口部515の幅つまりマスクエンハンサーの幅を、同一の幅を有する遮光膜の遮光性と比べてマスクエンハンサーの遮光性が同程度以上になるように設定することによって、第1の実施形態に係るフォトマスクを形成することができる。
また、第5の実施形態の変形例によると、マスクパターン511Aを形成するためのパターンニング工程と、開口部515を形成するためのパターンニング工程とを独立して行なうため、開口部515を含むマスクパターン511Aの寸法つまり遮光性パターンの寸法、及びマスクエンハンサーの寸法をそれぞれ正確に制御できるので、第1の実施形態に係るフォトマスクを確実に作成することができる。
また、第5の実施形態の変形例によると、位相シフター層513におけるマスクエンハンサー形成領域に位置する部分を除去することによって、光透過領域とマスクエンハンサーとの間に位相差を設けるので、該位相差を設けるために透過性基板510を彫り込む場合と比べて、エッチング工程の管理が簡単になって位相エラーが低減すると共に、位相シフター層513のエッジ部分を垂直にすることが簡単になる。
また、第5の実施形態の変形例によると、位相シフター層513に対するパターニング工程で欠陥が発生した場合、該欠陥を位相シフター層513を再形成することによって修復できるため、位相シフター層形成工程よりも前の工程を繰り返す必要がないので、スループットが向上する。
また、第5の実施形態の変形例に係るフォトマスクの作成方法が、マスクエンハンサーの特性によって、従来のフォトマスクの作成方法と比べて有利になる点については、第3の実施形態と同様である。
尚、第5の実施形態の変形例において、透過性基板510の材料として石英ガラスを用いたが、これに限られず、弗化カルシウム等を用いてもよい。
また、第5の実施形態の変形例において、遮光膜511の材料としてクロム化合物を用いたが、これに限られず、クロム、シリコン若しくはジルコニウム等の金属又はそれらの化合物等を用いてもよい。
また、第5の実施形態の変形例において、位相シフター層513の材料として、透過光が露光光に対して180度の位相反転を生じるSOG膜を用いたが、これに限られず、透過光が露光光に対して(170+360×n)〜(190+360×n)度(但し、nは整数)の位相反転を生じる任意の透過性膜を用いることができる。
また、第5の実施形態の変形例において、開口部515の幅つまりマスクエンハンサーの幅を(W×M)としたときに、W≦0.4×λ/NAであることが好ましい。
また、第5の実施形態の変形例において、開口部515を含むマスクパターン511Aの幅、つまり遮光性パターンの幅を(L×M)としたときに、L≦0.8×λ/NAであることが好ましい。このとき、W≦(0.8×λ/NA)−L且つW≦L若しくはW≦L−2Eであること、又は0.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)≦W≦1.5×(((0.8×λ/NA)−L)/2)且つW≦L若しくはW≦L−2Eであることが好ましい。
〈第6の実施形態〉
以下、本発明の第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法及びマスク描画データ作成方法について図面を参照しながら説明する。尚、第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法及びマスク描画データ作成方法は、第1の実施形態に係るフォトマスク、つまりマスクエンハンサー構造を有するフォトマスクを用いたパターン形成方法(第2の実施形態に係るパターン形成方法)を想定した、マスクエンハンサー構造を有するフォトマスクを作成するためのパターンレイアウト作成方法及びマスク描画データ作成方法である。また、第6の実施形態において、NAは露光機の縮小投影光学系の開口数を示し、λは露光光つまり光源の波長を示し、Mは露光機の縮小投影光学系の倍率を示すものとする。
図30は、第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法及びマスク描画データ作成方法のフロー図である。
まず、パターンレイアウト作成方法について説明する。
ステップS1において、フォトマスク上に形成しようとするマスクパターン(遮光性パターン)のパターンレイアウトを作成する。
ステップS2において、ステップS1で作成したパターンレイアウトのうちから、(Q×λ/NA)×M(但し、Qは0.8以下の所定値)以下の幅L×Mを有するラインパターンを抽出する。このとき、パターンレイアウトのうちから、パターン端部、パターンコーナー又はその他必要な部分も合わせて抽出してもよい。
ステップS3において、ステップS2で抽出されたラインパターン、パターン端部又はパターンコーナー等のそれぞれの内側を、マスクエンハンサーを表すパターン(以下、単にマスクエンハンサーと称する場合がある)の配置位置として決定する。
ステップS4において、ステップS3で決定された配置位置にそれぞれ配置されるマスクエンハンサーの寸法を、各マスクエンハンサーを含有するラインパターン等の寸法に基づき設定する。このとき、幅L×Mを有するラインパターンであれば、該ラインパターンの内側に配置されるマスクエンハンサーの幅をW×Mとして、W=((0.8×λ/NA)−L)/2(但し、L≧(0.8×λ/NA))に設定する。また、マスクエンハンサー同士が所定の間隔(例えば隣り合うマスクエンハンサー同士を分離して形成するために最低限必要な間隔)よりも狭い間隔で配置されている場合、又はマスクエンハンサー同士が重なり合って配置されている場合等には、該マスクエンハンサー同士を一つに結合する。さらに、所定の寸法(例えばマスク描画装置の解像度)よりも小さいマスクエンハンサーを消滅させる。
次に、マスク描画データ作成方法について説明する。
ステップS5において、ステップS4でマスクエンハンサーが配置されたパターンレイアウトを有するマスクパターンによって、露光後に所望の寸法を有するパターン形成が実現できるように、マスクエンハンサーの寸法調整を行なう。
ステップS6において、ステップS5で寸法調整されたパターンレイアウトに基づき、マスクパターンと対応したマスクパターン形成用データ、マスクエンハンサーを表すパターンと対応したマスクエンハンサー形成用データ、及びマスクパターンからマスクエンハンサーを表すパターンを引き去った残りのパターンと対応した遮光膜領域形成用データを出力する。
以下、ステップS1〜S4(パターンレイアウト作成段階)について図31(a)〜(d)を参照しながら具体的に説明する。
図31(a)は、ステップS1で作成されたパターンレイアウトの一例を示している。
図31(b)は、ステップS2で図31(a)に示すパターンレイアウトのうちから抽出されたラインパターン、パターン端部及びパターンコーナーを示している。図31(b)に示すように、パターンレイアウト600のうちから、(0.8×λ/NA)×M以下の幅L×Mを有するラインパターン601及び602、並びにパターン端部603及びパターンコーナー604を抽出する。
図31(c)は、ステップS3で図31(b)に示すラインパターン等の内側に配置されたマスクエンハンサーを示している。図31(c)に示すように、ラインパターン601の中央部にはライン用マスクエンハンサー611aが配置されていると共にラインパターン601の端部には端部用マスクエンハンサー611bが配置されている。また、ラインパターン602の中央部にはライン用マスクエンハンサー612が配置されており、パターン端部603には端部用マスクエンハンサー613が配置されており、パターンコーナー604にはコーナー用マスクエンハンサー614が配置されている。
図31(d)は、ステップS4で図31(c)に示すラインパターン等の寸法に基づいて決定された寸法を有するマスクエンハンサーが配置されたパターンレイアウトを示している。
具体的には、パターンレイアウト600のうち(0.8×λ/NA)×M以下の幅L×Mを有するラインパターン601及び602のそれぞれの中央部に対しては、まず、例えばW=((0.8×λ/NA)−L)/2で定義される幅W×Mを有するライン用マスクエンハンサー611a及び612を配置する。但し、Lが(0.8×λ/NA)/3未満である場合、又は、W=((0.8×λ/NA)−L)/2で定義される幅のマスクエンハンサーつまり開口部を作成するときに該開口部を囲む遮光膜領域の線幅がマスク描画装置によって作成可能な所定の最小線幅よりも小さくなる場合には、マスクエンハンサーを囲む遮光膜領域の線幅を前述の所定の最小線幅として、該所定の最小線幅をラインパターンの幅から差し引くことによってマスクエンハンサーの幅を決定する。また、マスクエンハンサーの幅が、遮光膜領域の内側にマスクエンハンサーを作成するために最低限必要な寸法、つまり前述の所定の最小線幅よりも小さい場合には、マスクエンハンサーを消滅させる。
尚、第3〜第5の実施形態(変形例を含む)に係るフォトマスクの作成方法を用いる場合には、前述の所定の最小線幅はマスク描画装置の重ね合わせマージン程度の寸法となる。
また、第3の実施形態の第1変形例及び第2変形例に係るフォトマスクの作成方法を用いる場合、Lが(0.8×λ/NA)/3未満のラインパターンについては、遮光膜領域のない位相シフターのみの構造で形成しても、マスクエンハンサー構造を用いる場合と同等の効果が得られる。
一方、パターンレイアウト600のうちラインパターン601の端部、パターン端部603及びパターンコーナー604のそれぞれに対しては、まず、(0.8×λ/NA)/3×M四方の寸法を有する端部用マスクエンハンサー611b及び613並びにコーナー用マスクエンハンサー614を、各マスクエンハンサーが少なくとも前述の所定の最小線幅を有する遮光膜領域によって囲まれるように配置する。その後、配置されたマスクエンハンサー同士がオーバーラップする場合、又はマスクエンハンサー間のギャップがマスクエンハンサーを分離して形成するために最低限必要な距離よりも小さい場合には、マスクエンハンサー同士を結合する。このとき、マスクエンハンサーの寸法が(0.5×λ/NA)×Mよりも大きくなる場合には、該寸法が(0.5×λ/NA)×M以下になるように再設定する。
以上に説明したように、ステップS1〜S4によって、遮光性が弱まるラインパターンの中央部に遮光性を最大にするマスクエンハンサーが配置され、且つパターンコーナ及びパターン端部にもマスクエンハンサーが配置されたパターンレイアウトを作成することができる。これによって、パターンレイアウトのうち少なくとも(0.8×λ/NA)/3×M程度以上の幅を有する部分によって、同程度の遮光性を実現することができる。
続いて、ステップS1〜S4でマスクエンハンサー及びそれを含有するパターンレイアウトが作成された後のステップS5及びS6(マスク描画データ作成段階)について図31(e)〜(g)を参照しながら具体的に説明する。
図31(e)は、ステップS5で図31(d)に示すマスクエンハンサーの寸法調整が行なわれたパターンレイアウトを示している。
具体的には、図31(e)に示すように、試験露光を行なって露光後に形成されるパターンの幅が設計値よりも小さくなる部分(例えば領域R1)に対しては、対応するマスクエンハンサー(例えばライン用マスクエンハンサー611a)の幅を拡大する一方、露光後に形成されるパターンの幅が設計値よりも大きくなる部分(例えば領域R2)に対しては、対応するマスクエンハンサー(例えばライン用マスクエンハンサー612)の幅を縮小する。このとき、マスクエンハンサーの寸法調整と共に、パターンレイアウトの外形寸法つまりマスクパターンの寸法調整を行なってもよい。尚、図31(e)において、オリジナルのパターンレイアウト600の外形を破線で示し、寸法調整されたパターンレイアウト600Aの外形を実線で示している。
図31(f)は、ステップS6で図31(e)に示す寸法調整後のパターンレイアウトに基づき決定されたマスクパターン形成用データを示し、図31(g)は、ステップS6で図31(e)に示す寸法調整後のパターンレイアウトに基づき決定されたマスクエンハンサー形成用データを示している。
尚、最終的に作成されるフォトマスクにおいては、マスクパターンからマスクエンハンサーを表すパターンを引き去ったパターンが遮光膜領域に相当し、マスクエンハンサーを表すパターンは遮光膜に設けられる開口部に相当する。
以上に説明したように、第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法によると、遮光性パターンと対応するパターンレイアウト600のうちから(0.8×λ/NA)×M以下の幅L×Mを有するラインパターンを抽出した後、ラインパターンの内側に((0.8×λ/NA)−L)×M以下の幅W×Mを有するマスクエンハンサーを配置する。このため、遮光性パターンにおける遮光効果が弱くなる部分に、遮光効果を強調できるマスクエンハンサーを配置することができるので、ウェハ上に投影される光強度分布をパターンレイアウトに対して歪みの少なくない形状で形成することができる。従って、解像度程度以下の寸法を含む任意の寸法のパターンを任意の形状について形成できるフォトマスクのパターンレイアウトの作成が可能となる。
また、第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法によると、マスクエンハンサーの幅W×Mについて、W=((0.8×λ/NA)−L)/2に設定しているので、マスクエンハンサーの遮光効果が最大になる。
また、第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法によると、ラインパターンを抽出するときに、パターン端部及びパターンコーナーを抽出すると共に、パターン端部及びパターンコーナーのそれぞれの内側に(0.5×λ/NA)×M四方以下の寸法を有するマスクエンハンサーを配置する。このため、遮光性パターンのパターン端部又はパターンコーナーの裏側に回折現象によって回り込んだ透過光を、マスクエンハンサーを透過した光によって確実に打ち消すことができる。
また、第6の実施形態に係るマスク描画データ作成方法によると、マスクエンハンサーを遮光性パターンの遮光効果が最大となるように配置した後に、つまり第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法を実施した後に、試験露光の結果に基づいてマスクエンハンサーの寸法を調整するため、露光後に形成されるパターンの寸法が設計値と等しくなるようにマスクエンハンサーの寸法を調整することができる。このため、パターンの後退等を防止できるマスク描画データを作成できるので、該マスク描画データに従って形成されたフォトマスクを用いて露光を行なうことによって、微細パターンを高精度で形成することができる。
また、第6の実施形態に係るマスク描画データ作成方法によると、露光後に形成されるパターンの幅が設計値よりも大きくなる部分と対応するマスクエンハンサーの幅を縮小すると共に、露光後に形成されるパターンの幅が設計値よりも小さくなる部分と対応するマスクエンハンサーの幅を拡大する。このため、露光後に形成されるパターンの幅を設計値と確実に等しくすることができる。
尚、第6の実施形態に係るパターンレイアウト作成方法において、ラインパターンの幅をL×M、マスクエンハンサーの幅をW×Mとしたときに、W=((0.8×λ/NA)−L)/2に設定することによって、マスクエンハンサーを含むラインパターンの遮光効果を最大にしたが、これに代えて、0.5×((0.8×λ/NA)−L)/2≦W≦1.5×((0.8×λ/NA)−L)/2(但し、W≦L又はW≦L−2E;(E×M)はフォトマスク上に形成できる最小寸法)に設定してもマスクエンハンサーによる遮光性向上効果は十分に得られる。また、少なくともW≦(0.8×λ/NA)−L(但し、W≦L又はW≦L−2E)に設定すれば、マスクエンハンサーによる遮光性向上効果が生じる。
また、第6の実施形態に係るマスク描画データ作成方法において、試験露光を行なった結果に基づきマスクエンハンサーの寸法調整を行なったが、これに代えて、露光シミュレーションを行なった結果に基づきマスクエンハンサーの寸法調整を行なってもよい。