JP3707556B2 - 所望の電子透かしをカバーワークの中に埋め込む方法、符号化する方法、埋め込む装置および記録媒体 - Google Patents

所望の電子透かしをカバーワークの中に埋め込む方法、符号化する方法、埋め込む装置および記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はディジタル電子透かしの分野に関し、特に、電子透かしメッセージを符号化し、それを源データの中に埋め込むための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近数年間に、ブラインド検出を使用する電子透かしが送信機におけるサイド情報との通信と見なすことができることを、何人かの研究者(例えば、非特許文献1〜3参照)が認識している(例えば、非特許文献4参照)。このことは、メッセージを表すために使用されるコードワードあるいは信号が源データに依存する符号化、ならびに、埋め込みの前にカバーワークにしたがって信号が整形される埋め込み技術の発展を導いた(例えば、非特許文献5参照)。
【0003】
何人かの研究者(例えば、非特許文献2,3,6,7参照)は、大きなデータペイロード−−およそ1000ビット以上−−を画像に埋め込むために、インフォームドコーディングを使用したが、彼等の方法はインフォームドエンベッディングの簡単な形式を使用しているにすぎない(例えば、非特許文献8参照)。さらに、これらの方法の大部分は格子量子化の何らかの形式にもとづいているので、これらの方法は画像の明暗度の値、あるいはオーディオの音量の値の変化のような単純な値の増減に対して頑強性が不足している。
【0004】
オリジナルのカバーワークに対する知覚的忠実度の許容範囲を保ちながら、代表的な電子透かし後の影響、たとえば、信号雑音、フィルタリング、スケーリング、及び/または圧縮に対して弾力的な方法で、ディジタルで符号化されたワーク(work)の中に大きなペイロードの電子透かしメッセージを、どのように埋め込むべきかの課題が残っている。
【0005】
【非特許文献1】
I.J. Cox, M.L. Miller, and A. McKellips. Watermarking as communications with side information. Proc. IEEE, 87(7):1127-1141, 1999.
【非特許文献2】
B. Chen and G.W. Wornell. An information-theoretic approach to the design of robust digital watermarking systems. IEEE Transactions on Acoustics, speech, and Signal Processing, 1999.
【非特許文献3】
Jim Chou, S. Sandeep Pradhan, and Kannan Ramchandran. On the duality between distributed source coding and data hiding. Thirty-third Asilomar conference on signals, systems, and computers, 2:1503-1507, 1999.
【非特許文献4】
C.E. Shannon. Channels with side information at the transmitter. IBM Journal of Research and Development, pages 289-293, 1958.
【非特許文献5】
I.J. Cox, M.L. Miller, and J.A. Bloom. Digital Watermarking. Morgan Kaufmann, 2001.
【非特許文献6】
M. Ramkumar. Data hiding in multimedia : Theory and applications. PhD thesis, New Jersey Institute of Technology, 1999.
【非特許文献7】
Joachim J. Eggers, Jonathan K. Su, and Bernd Girod. Public key watermarking by eigenvectors of linear transforms. In EUSIPCO, Tampere, Finland, Sept. 2000.
【非特許文献8】
M.L. Miller, I.J. Cox, and J.A. Bloom. Informed embedding: Exploiting image and detector information during watermark insertion. In IEEE International Conference on Image Processing, September 2000.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各メッセージが複数の別のコードワードによって表されるコードの定義と、所与のメッセージを表すコードワードの集合の識別と、カバーワークの歪みを最少にするであろう前記集合へのコードワードの埋め込みを含む電子透かしメッセージのインフォームドコーディングを達成することである。本発明による修正されたトレリスコーディング技術により、コードは定められる。
【0007】
本発明の他の目的は、カバーワークへの電子透かしメッセージの知覚的影響を最少にするために、所定の知覚的「スラック」に適合するように埋め込み処理においてコードを修正することにより、電子透かしメッセージコードの知覚的整形を達成することである。
【0008】
本発明の他の目的は、カバーワークに対する知覚的影響を制限する一方で、カバーワークの中に電子透かしメッセージコードを効率的かつ確実に埋め込むために、カバーワークの中の電子透かしメッセージコードをインフォームド埋め込みすることを達成することである。カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、正しくない電子透かしメッセージコードがカバーワークから抽出されないであろう確率の基準を計算することによって、これは達成される。この基準が所定の値未満であれば、正しくない電子透かしメッセージが抽出される可能性が高くないことを保証するために、カバーワークは修正される。正しい電子透かしメッセージのみが抽出される可能性が高くなるまで、埋め込み処理は繰り返される。電子透かしメッセージコードの性能を改善するために、これらの技術は組み合わせることができる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の所望の電子透かしメッセージをカバーワーク中に埋め込む方法は、電子透かし抽出器による抽出のために、所望の電子透かしメッセージをカバーワーク中に埋め込む方法であって、
前記方法は、
(a)前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、
(b)前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算することと、
(c)前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正することと、
(d)終了条件が満たされるまで、ステップ(a)−(c)を繰り返すことを含み、
前記頑強性基準は、次式により得られ、
【0010】
【数39】
Figure 0003707556
【0011】
前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
【0012】
【数40】
Figure 0003707556
【0013】
ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、また、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数である。
【0014】
本発明の他の形態による所望の電子透かしメッセージをカバーワーク中に埋め込む方法は、電子透かし抽出器による抽出のために、所望の電子透かしメッセージをカバーワーク中に埋め込む方法であって、
前記方法は、
(a)前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、
(b)前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算することと、
(c)前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正することと、
(d)終了条件が満たされるまで、ステップ(a)−(c)を繰り返すことを含み、
前記頑強性基準は、次式により得られ、
【0015】
【数41】
Figure 0003707556
【0016】
前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
【0017】
【数42】
Figure 0003707556
【0018】
ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、S(d,cw)は知覚的整形関数であり、、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であり、
前記知覚的整形関数は、次式により計算され、
【0019】
【数43】
Figure 0003707556
【0020】
ここで、d’[i]とd[i]はそれぞれd’とdのi番目の要素であり、s[i]はd[i]が知覚的影響なしに変化し得る量を示す知覚的スラック値であり、m及びnは定数である。
【0021】
この場合、前記終了条件は、前記頑強性基準が所定の値を超えることとしてもよい。
【0022】
また、前記終了条件は、前記頑強性基準が所定の値を超えるステップ(a)−(c)の繰り返される回数が所定の限界を超えることとしてもよい。
【0023】
この場合、前記所定の限界は100であるとしてもよい。
【0024】
また、前記正しくない電子透かしメッセージを見出すことは、
(i)前記カバーワークに多量の雑音を加えることと、
(ii)前記正しくない電子透かしメッセージを得るために、前記カバーワークに前記電子透かし抽出器を適用することと、
(iii)前記正しくない電子透かしメッセージが前記所望の電子透かしメッセージと異なるまで、ステップ(i)−(ii)を繰り返すことを含むとしてもよい。
【0025】
この場合、前記多量の雑音は、前記正しくない電子透かしメッセージを得る都度、増加されることとしてもよい。
【0026】
また、前記多量の雑音は、前記頑強性基準が所定の値を超える正しくない電子透かしメッセージを得る都度減少されることとしてもよい。
【0027】
また、m=4であり、n=1/3であるとしてもよい。
【0028】
また、電子透かし抽出器による前記抽出は、
(i)前記カバーワークから抽出されたベクトルを得ることと、
(ii)トレリスコードによって前記抽出されたベクトルを復号することを含むこととしてもよい。
【0029】
また、抽出されたベクトルを得ることは、
1.前記カバーワークをブロックに分割することと、
2.ブロックDCTを得るために、前記ブロックのDCTを計算することと、
3.前記抽出されたベクトルを得るために、前記ブロックDCTの選択された項を所定の順序でトレリス内の各経路、そしてこれらが表す各メッセージは、各経路に含まれる各アークに対して付されたラベルの連鎖である長さL×Nのベクトルの中に配置することを含むとしてもよい。
【0030】
また、アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化される方法であって、
(a)ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することであって、前記経路内の各アークは前記所望のメッセージ内の1つの記号に対応しており、前記ダーティーペーパートレリスは前記アルファベット内の各記号に対応する各ノードから2つ以上のアークを有する、ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することと、
(b)前記経路のベクトル表現を得るために、前記経路内の前記アークを示すベクトルを合成することと、
(c)前記ベクトル表現として前記所望の電子透かしメッセージを符号化すること、
によって、アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化されることとしてもよい。
【0031】
この場合、前記アルファベットは、1と0を含む2進法によるアルファベットであるとしてもよい。
【0032】
また、前記経路を選択することは、
(i)前記メッセージ内の記号以外の記号に対応するアークを除外し、したがってメッセージ特有のトレリスを得ることにより、前記ダーティーペーパートレリスを修正することと、
(ii)前記カバーワークから抽出されたベクトルを得ることと、
(iii)ベクトル表現が前記抽出されたベクトルと類似している前記メッセージ特有のトレリスを介して経路を選択することを含むとしてもよい。
【0033】
この場合、前記抽出されたベクトルを得ることは、
1.前記カバーワークをブロックに分割することと、
2.ブロックDCTを得るために、前記ブロックのDCTを計算することと、
3.前記抽出されたベクトルを得るために、前記ブロックDCTの選択された項を所定の順序でトレリス内の各経路、そしてこれらが表す各メッセージは、各経路に含まれる各アークに対して付されたラベルの連鎖である長さL×Nのベクトルの中に配置することを含むとしてもよい。
【0034】
また、前記メッセージ特有のトレリスを介して経路を選択することは、ビタビ復号器を適用することにより行われることとしてもよい。
【0035】
また、前記ベクトルを合成することは、ベクトルを連結することにより行われるとしてもよい。
【0036】
本発明のカバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置は、電子透かし抽出器による抽出のために、カバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置であって、前記装置は、
前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出す手段と、
前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算する手段と、
前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正する手段を有し、
前記頑強性基準は、次式により得られ、
【0037】
【数44】
Figure 0003707556
【0038】
前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
【0039】
【数45】
Figure 0003707556
【0040】
ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、また、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数である。
【0041】
本発明の他の形態によるカバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置は、電子透かし抽出器による抽出のために、カバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置であって、前記装置は、
前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出す手段と、
前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算する手段と、
前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正する手段を有し、
前記頑強性基準は、次式により得られ、
【0042】
【数46】
Figure 0003707556
【0043】
前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
【0044】
【数47】
Figure 0003707556
【0045】
ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、S(d,cw)は知覚的整形関数であり、また、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であり、
前記知覚的整形関数は、次式により計算され、
【0046】
【数48】
Figure 0003707556
【0047】
ここで、d’[i]とd[i]はそれぞれd’とdのi番目の要素であり、s[i]はd[i]が知覚的影響なしに変化し得る量を示す知覚的スラック値であり、m及びnは定数である。
【0048】
本発明による装置で読み取り可能な記録媒体は、命令プログラムを有する装置で読み取り可能な記録媒体であって、前記命令プログラムは、電子透かし抽出器による抽出のために、カバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む方法をマシンに実行させ、前記方法は、
(a)前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、
(b)前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算することと、
(c)前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正することと、
(d)終了条件が満たされるまで、ステップ(a)−(c)を繰り返し、
すことを含む命令プログラムを有し、
前記頑強性基準は、次式により得られ、
【0049】
【数49】
Figure 0003707556
【0050】
前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
【0051】
【数50】
Figure 0003707556
【0052】
ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、S(d,cw)は知覚的整形関数であり、またR0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であり、
前記知覚的整形関数は、次式により計算され、
【0053】
【数51】
Figure 0003707556
【0054】
ここで、d’[i]とd[i]はそれぞれd’とdのi番目の要素であり、s[i]はd[i]が知覚的影響なしに変化し得る量を示す知覚的スラック値であり、m及びnは定数である。
【0055】
この場合、前記終了条件は、前記頑強性基準が所定の値を超えるステップ(a)−(c)の繰り返される回数が所定の限界を超えることであるとしてもよい。
【0056】
また、前記正しくない電子透かしメッセージを見出すことは、
(i)前記カバーワークに多量の雑音を加えることと、
(ii)前記正しくない電子透かしメッセージを得るために、前記カバーワークに前記電子透かし抽出器を適用することと、
(iii)前記正しくない電子透かしメッセージが前記所望の電子透かしメッセージと異なるまで、ステップ(i)−(ii)を繰り返すことを含むとしてもよい。
【0057】
また、アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化される装置で読み取り可能な記録媒体であって、
(a)ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することであって、前記経路内の各アークは前記所望のメッセージ内の1つの記号に対応しており、前記ダーティーペーパートレリスは前記アルファベット内の各記号に対応する各ノードから2つ以上のアークを有する、ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することと、
(b)前記経路のベクトル表現を得るために、前記経路内の前記アークを示すベクトルを合成することと、
(c)前記ベクトル表現として前記所望の電子透かしメッセージを符号化することによって、アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化されるとしてもよい。
【0058】
また、前記経路を選択することは、
(i)前記メッセージ内の記号以外の記号に対応するアークを除外し、したがってメッセージ特有のトレリスを得ることにより、前記ダーティーペーパートレリスを修正することと、
(ii)前記カバーワークから抽出されたベクトルを得ることと、
(iii)ベクトル表現が前記抽出されたベクトルと類似している前記メッセージ特有のトレリスを介して経路を選択することを含むとしてもよい。
【0065】
本発明による装置及び方法の以上のまたは他の特徴、態様及び利点は、下記の説明、添付した特許請求の範囲及び添付図面に関連してより良く理解されるであろう。添付図面において、類似の参照番号はいくつかの図面にまたがって同じ構成要素を示す。
【0066】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0067】
図1はインフォームド電子透かしシステム100の基本的概念を示す。ここで、電子透かしの埋め込みは3ステップの処理として示されている。最初に、埋め込まれるソースメッセージ102はエンコーダ104に入力され、メッセージ信号106(wm)として符号化される。続いて、メッセージ信号106は修正器108に入力され、埋め込みの準備のために修正され、修正器108は修正されたメッセージ信号110(wa)を出力する。最後に、修正されたメッセージ信号110はオリジナルのデータであるカバーワーク112(co)に加えられ、電子透かしが埋め込まれた透かし入りワーク114(cw)を得る。
【0068】
メッセージ102はアルファベットから抽出された記号で構成される。2進法の1及び0によるアルファベットが代表的であるが、他の文字を使用することもできる。カバーワーク112としては、画像、ビデオクリップ、オーディオクリップ、あるいは任意の他のディジタルで符号化されたコンテンツとしてもよい。本明細書において、多くの場合に画像が代表的なカバーワークとして説明されるが、本発明は画像の電子透かしに限定されるものではなく、コンテンツ形式の互換性を当業者は認めるであろう。
【0069】
ブラインド埋め込みにおいては、修正ステップはカバーワークとは独立に実行される。そのような場合には、まさに単純な、全体的なスケーリングを使用することができる。対照的に、インフォームド埋め込みにおける修正は、リンク116により示されているカバーワーク112とメッセージ信号106との関数となる。
【0070】
カバーワーク112についての完全な情報を利用できるので、インフォームド電子透かしシステム100は、最終の電子透かしが埋め込まれたワークを完全に制御することができる。すなわち、wa=cw−coとすることにより、インフォームド電子透かしシステム100は、任意のワークを透かし入りワーク114(cw)として選択することができる。
【0071】
タスクは相反する2つの基準を満たすワークを見出すことである。
【0072】
1)透かし入りワーク114(cw)は知覚的に十分区別できないほどカバーワーク112(co)に類似しているべきである。
【0073】
2)後続の処理による歪みの後でも、透かし入りワーク114(cw)は電子透かしを含んでいると検出されるのに十分メッセージ信号106(wm)に類似しているべきである。
【0074】
実際には、インフォームド埋め込みアルゴリズムは、知覚距離と電子透かしの頑強性を評価する方法を使用して実現できる。したがってアルゴリズムは、
1) 一定の知覚距離を維持しながら、推定される頑強性を最大化する。
【0075】
あるいは、
2)一定の頑強性を維持しながら、知覚距離を最小化する。
ことを、試みることができる。
【0076】
大多数の電子透かしアプリケーションは一定の頑強性を維持する埋め込み器によって最も良く機能を果たす、したがって埋め込みアルゴリズムを例示した実施形態は後者の制約条件を使用して説明されている。しかし、一部のアプリケーションは一定の忠実度を要求することがあり、したがって、前者の制約条件による最適化は本発明の範囲から逸脱することなく実現できる可能性がある。
【0077】
本発明による代表的な電子透かし埋め込みアルゴリズムを説明するためには、まず検出アルゴリズムを説明しなければならない。コックス他による「ディジタル電子透かし」に論じられているように、2つ以上の相関ベースの検出方式が適当であることがあるが、しかし、本発明による方法は相関ベースの方式に限定されるものではない。
【0078】
次に、頑強性の基準を定めなければならない。オリジナルのカバーワーク112と電子透かしを埋め込まれた透かし入りワーク114(cw)の間の平均2乗誤差を低く維持しながら、この頑強性基準の特有の値を得ようと試みる埋め込み方法を説明する。
【0079】
平均2乗誤差は、オリジナルのカバーワーク112と電子透かしを埋め込まれた透かし入りワーク114(cw)の間の知覚距離の基準として使用される。本発明はこの基準に限定されるものではなく、ワトソン距離のような当該技術分野において公知の他の基準も同様に適している。これらの2つの方法の第1は一般的であり、さまざまな異なる検出アルゴリズムに適用できる。
【0080】
第2の方法は説明された検出器に特有であり、一般的な方法より非常に高速である。この第2の埋め込み方法は単純なブラインド埋め込み器より非常に良い結果をもたらすことを、実験は示している。
【0081】
検出アルゴリズム
図2に示すように、代表的な電子透かしシステムはトレリスコードにもとづいて構築されている。このトレリスコードは、その全体が参考文献とされるコックス他「ディジタル電子透かし」で定義されたE_TRELLIS8/D_TRELLIS8電子透かしシステムに使用されたコードに類似している。A0とラベルが付されたノード119に始まるトレリス118を通る各経路は、特有のメッセージを表す。2つのアーク120a、120bが各ノードから出るので、2L個の可能な経路がある、Lは経路の長さである。したがって、本システムはLビットを符号化する。代表的な実施形態では、L=1380である。
【0082】
トレリス118内の各アーク120は、ランダムに生成された長さNの基準ベクトルでラベルが付されている。各経路、そしてこれらが表す各メッセージは、各経路に含まれる各アークに対して付されたラベルの連鎖である長さL×Nのベクトルで符号化される。代表的な実施形態では、N=12である。
【0083】
代表的な検出アルゴリズムは次のステップを有する。画像は、図3に示される8×8ブロックDCTドメイン122に変換される。DCTブロック124のすべてのN周波数の交流項は、ランダムな順序で、1つの長さL×Nのベクトルに配置される。これは抽出されたベクトルと呼ばれる。
【0084】
使用されるDCT項を図3に示す。トレリス118を通過する最も可能性のある経路を識別するために、ビタビ復号アルゴリズムが使用される。相関検出器に対しては、これは、抽出されたベクトルに最も高い相関を有するL×Nベクトルを見出すことと等価である。最も高い相関の経路により表されるメッセージは、ソースメッセージ102であると識別される。
【0085】
抽出されたベクトルを得るためのこの代表的な検出アルゴリズムの方法は、唯一の実現可能なものではないことに注目されたい。別の方法には以下が含まれるが以下に限定されない。
【0086】
ピクセル値自体を抽出されたベクトル内の値として使用する、画像と幾つかの予め定義されたパターンの間の相関を使用する、フルイメージDCTからの係数を使用する、画像のウェーブレット分解による係数を使用する、フーリエ係数の大きさを使用する、フーリエ係数の位相を使用する。オーディオ、ビデオ及びソリッドモデルのような画像以外のメディアに対して、同じような範囲が可能性として存在する。
【0087】
この検出アルゴリズムは、ワークが電子透かしを含むか否かを判定しようと試みるものではない。この検出アルゴリズムは、すべての可能性があるワークを、そのワークに電子透かしが埋め込まれているか否かにかかわらず、単にLビットのメッセージに写像する。大きなペイロードのアプリケーションでは、ビット値の組み合わせの多くが有意義ではないので、電子透かしが存在するか否かを判定することは検出器にとって通常重要ではない。たとえば、172個のASCII文字のストリングを埋め込むためにシステムが使用されると仮定する。電子透かしが埋め込まれていないワークは理解できないストリングを生じ、したがってストリングが表示されると、電子透かしが埋め込まれていないと容易に認識できる。
【0088】
あるいは、検出器が電子透かしの存在を判定する必要があれば、誤り検出チェックサムあるいはソースメッセージ102の署名を収容するために、ビットの一部の数を使用することができる。署名がソースメッセージ102と一致しなければ、検出器は電子透かしが無いと知らせる。これはペイロードを少量だけ減少させるが、検出器には容易に予測される誤検出確率をもたらす。たとえば、20ビットを署名のために使用すれば、誤検出の確率は2-20である。
【0089】
頑強性
代表的な検出器は電子透かしの存在は試験しないので、透かしが存在するか否かを試験するための、前述した相関係数を使用して頑強性を測る事は適切ではない。電子透かしを埋め込まれたワークが電子透かしを埋め込まれていないと検出される可能性を評価する代わりに、電子透かしを埋め込まれたワークが間違ったソースメッセージ102を含んでいると検出される可能性の評価が必要である。
【0090】
2つの異なるベクトルにより表される可能性のある2つのメッセージ102のみが存在する簡単なシステムを考える。ベクトルの1方をgで示し、他方をbで示す。ワークcが与えられると、gc>bcであれば、検出器はgに対応するメッセージを返す、ここで、
【0091】
【数17】
Figure 0003707556
【0092】
はgとcの間の相関である。
【0093】
ベクトルgは、カバーワーク112(co)に埋め込まれるべき好条件のベクトルである。ベクトルbは、電子透かしを埋め込まれたワークが乱されてしまう、避けるべき悪条件のベクトルである。タスクは、後続の処理による変造の後に、提案される電子透かしを埋め込まれた透かし入りワーク114(cw)が、メッセージbではなく、むしろメッセージgを含むものとして、検出される可能性を評価することである。より正確には、電子透かしを埋め込まれたワーク114(cw)の変造されたバージョンの中で、メッセージgが正確に検出される確率に単調に関係する値が必要とされる。
【0094】
電子透かしの埋め込みの後に電子透かしを埋め込まれたワーク114に加えられる歪みは、白色ガウス雑音の加算としてモデル化することができると仮定する。したがって、検出器は透かし入りワークcwn=cw+nを受信すると仮定する、ここでnは、その要素が、分散がσ2 nであるガウス分布から独立して抽出される長さL×Nのベクトルである。透かし入りワークcwnの中にメッセージgが検出される確率は、
【0095】
【数18】
Figure 0003707556
【0096】
であり、ここでrは単位分散ガウス分布から抽出されるランダムなスカラー値である。明らかに、
【0097】
【数19】
Figure 0003707556
【0098】
の値が大きいほど、この値がσnrを超える確率が高く、電子透かしであるメッセージgが透かし入りワークcwnの中に正確に検出される可能性が高い。したがって、R0()は、単純な2メッセージ電子透かしシステムに対する頑強性の基準である。概念的に、R0()は、電子透かしを埋め込まれたカバーワークcwの中から、所与の悪条件のメッセージbが所与の好条件のメッセージgと混同される確率の逆数である。
【0099】
この基準を大きなペイロードに拡張するために、すべての可能性のある誤りのあるメッセージベクトルについて、R0の最小をb1・・・b2 L-1と見なす。したがって、
【0100】
【数20】
Figure 0003707556
【0101】
となる。
【0102】
図4は、R(cw,g)が所与の値より大でなければならないか、あるいは等しくなければならないかを指定するときに帰着する埋め込み領域の幾何学的説明を示す。図は、さまざまなメッセージに対する検出領域を表すボロノイ図を示す。図の上の各点は、いくつかの可能性のあるワークに対応する。領域126、128、130は、それらの領域内に位置している任意のワークから復号されるメッセージベクトル、たとえば、それぞれg、 3 、b 4 を定める。
【0103】
R(cw,g)に対する最小値を指定することにより、cwは領域126、gに対する検出領域、の端から一定の距離に位置していなくてはならない。許容できる頑強性となる領域は、陰影をつけた領域132により示される。
【0104】
図4は、この頑強性基準を使用する理想的な埋め込み器の動作も示している。白丸134は電子透かしを埋め込まれていないカバーワーク112に対応し、黒丸136は許容可能な頑強性を有する可能な限り最も近い電子透かしを埋め込まれたワーク114に対応する。
【0105】
一般的な埋め込みアルゴリズム
実際には、図4に示すように、最適な電子透かしを埋め込まれたワークを見出すためのアルゴリズムを実現することは難しい。その代わりに、次善の反復アルゴリズムを使用することがより実用的である。最初に、さまざまな電子透かしコーディング方式に使用できるこのアルゴリズムの一般的な形態を示す。次に、トレリスコードされた電子透かし用に特別に設計された変形例を示す。
【0106】
一連のビットmを電子透かし信号wmに写像するブラックボックス電子透かしエンコーダW(m)を想定する。さらに、ワークcをワークが最も高い相関を有する電子透かし信号に対応する一連のビットに写像するブラックボックス電子透かし検出器D(c)を想定する。これらの2つの機能が内部でどのように働くかについては、何も想定しない。
【0107】
カバーワーク112(co)、ビットmが埋め込まれるソースメッセージ102、及び目標とする頑強性の値Rtを仮定すると、アルゴリズムは次のように進行する。
1)g=W(m)及びcw=coを設定する。
2)R0(cw,g,b)を極小化する信号b≠gを見出す。
3)R0(cw,g,b)≧Rtであれば、終了する。
4)他の場合には、R0(cw,g,b)=Rtになるようにcwを修正し、ステップ2に進む。
【0108】
wの修正は次のように実行される。
【0109】
【数21】
Figure 0003707556
【0110】
新しいcwは、前のcwから最短のユークリッド距離を有する一方で、R0(cw,g,b)をRtと正確に等しくする。
【0111】
このアルゴリズムの動作を図5に幾何学的に示す。第1の反復において、cwはb3に対する検出領域にある。したがってステップ2ではb=b3であり、cwはgとb3の間の境界線140を越える点に移動される。ここで、仮の点138は、Rtに比例した距離だけオフセットした境界線140に平行な直線142の上に位置していることに注目されたい。
【0112】
第2の反復においては、b=b4であり、gはgに対する検出領域の中に移動される。最後の反復においては、最も近い悪条件のベクトルはまだb4にあるが、R0(cw,g,b4)はすでに条件を満たしており、したがってアルゴリズムは終了する。このアルゴリズムは図4で識別した最適な点136をもたらさないから、図5はこのアルゴリズムが次善であることを明らかに示している。それにもかかわらず、このアルゴリズムは実用的に実現することができる。
【0113】
ステップ2におけるbの識別は、コーディングの方法に依存する。大部分のコードに対しては、それは容易ではない。b=W(D(cw+n))とすることにより、単純なモンテカルロ法が適用できる、ここでnはいくらかのランダムノイズである。少量の雑音がcwに加えられ、検出器がm以外のメッセージを返せば、bは低い値のR0をもたらす可能性が高い。目標値Rt未満のR0の値をもたらす任意のベクトルが存在すれば、bはそれらの1つである可能性が高い。
【0114】
埋め込み処理が進行するにつれて、加えるべき最良の雑音の量は変化する。最初の反復において、cw=coであるとき、D(cw)=mである可能性はない。したがって、最も近い悪条件のベクトルを見出すために、雑音を加える必要はまったくない。D(cw)=mに到るまで、何回かの反復の間これは真である。その時点で、最も近い悪条件のベクトルは非常に低いR0の値をもたらす可能性が高い、したがって最も近い悪条件のベクトルを見出すためには、少量の雑音のみを加える必要がある。これらのベクトルとの混乱に対して頑強であるためにcwが修正されるにつれて、残りの悪条件のベクトルはより高いR0の値をもたらす。したがってより多くの雑音を加える必要がある。一般に、加えられる雑音が少なすぎれば、W(D(cw+n))はgに等しい。加えられる雑音が多すぎれば、W(D(cw+n))はR0()が最小利用可能値よりはるかに大きいベクトルを作る可能性が高い。
【0115】
したがって、加えられる雑音の量は各反復ごとに動的に調整される。始めには、雑音の標準偏差σnは0であり、したがって雑音は加えられない。W(D(cw+n))がgをもたらす場合は、σnは小さい一定量δだけ増加される。W(D(cw+n))は悪条件のベクトルbをもたらすが、R0(cw,g,b)がRt以上の場合は、σnをδだけ減少させる。W(D(cw+n))は悪条件のベクトルbをもたらし、R0(cw,g,b)<Rtであれば、cwを修正し、Dは変化させない。本方法の代表的な実施形態においては、δ=0.1である。
【0116】
このモンテカルロ法は各反復の都度R0(cw,g,b)を極小化するbを見出すことを保証しないから、望ましいアルゴリズムはR0(cw,g,b)が目標値以上の初回に終了するべきではない。R0(cw,g,b)<Rtである他のbがまだ存在する可能性がある。したがって、R0(cw,g,b)>=Rtである発見された連続したbの計数は維持される。この計数が指定された限界に到達すると、アルゴリズムは終了する。本方法の代表的な実施形態において、限界は100に設定された。
【0117】
本発明によるインフォームド埋め込みアルゴリズムの望ましい一般的な形態を図17に示す。
【0118】
スタート154において、g=W(m)、cw=co、σn=0、j=0である。ステップ156において、b=W(D(cw+n))であり、ここでnは各要素が分散σn 2のガウス分布から独立して抽出されたランダムなベクトルである。ステップ158においてb=gであれば、ステップ160においてσn←σn+δであり、スタート156に戻る。頑強性の基準は、ステップ162において計算される。ステップ164においてR0(cw,g,b)<Rtであれば、ステップ166においてcwを数式(1.1)によって修正する。jの値はステップ168において零にリセットされ、本方法はステップ156に戻る。ステップ164においてR0(cw,g,b)>Rtであれば、ステップ170においてjをインクリメントする。ステップ172においてj<100であれば、ステップ174においてσn←σn−δであり、ステップ156に戻る。その他の場合には、ステップ176において終了する。
【0119】
トレリスコード用の埋め込みアルゴリズム
上記に略述した一般的な方法は、多くの場合に終了するまでに何千回という反復を要する恐れがあるので、非常に時間がかかる。本発明によるトレリスコードされた電子透かしシステムを使用して実行すると、各々の反復は全部のワークに対してビタビ復号アルゴリズムの実行を必要とする。これは、その結果として、トレリスの各ステップにおけるアークの数をAとすると、長さNの相関をL×A行うことを必要とすることとなる。
【0120】
したがって、cwに雑音を加え、各反復ごとに検出器を動作させる代わりに、確率的な結果を生み出すビタビ復号アルゴリズムの修正版が使用される。通常ビタビアルゴリズムは、抽出されたベクトルvとトレリスの所与のステップ内のすべての状態までの経路に対するベクトルの間の相関を示す表を保有している。トレリスの次のステップに進む前に、本発明による修正された復号器はこの表の中の各々の値に乱数を加える。これは、復号器が、抽出されたベクトルvに対して最も高い相関をもたらす経路以外の経路を戻す恐れがあることを意味する。
【0121】
修正されたビタビ復号器の動作は、検出器の実行の前にcwに雑音を加えることの結果に類似しているが、同じではない。それにもかかわらず、本発明によるインフォームド埋め込み器の代表的な実施形態の性能は、その相違による影響はなかった。修正されたビタビ復号器を使用することにより、トレリスのアークに対する相関を検出器が使用される都度再計算する必要がないので、実行時間は大幅に減少することが可能である。代わりに、cwが修正されるときにのみ、トレリスのアークに対する相関を再計算することが必要である。
【0122】
以上に説明したように、本発明による埋め込みアルゴリズムは、カバーワークに含まれている情報を修正段階のときに使用する。しかし、各メッセージはワークから独立している固有のコードワードにより表される。コーディング処理自身がカバーワークの関数であれば、より良い結果を得ることができる。したがって、ここでインフォームドコーディングを考える。インフォームドコーディングでは、各メッセージは1組の別のコードワードに写像され、どのコードワードを埋め込むべきかの選択はカバーワークに含まれている情報により決定される。このことが図6、特に、入力カバーワーク112とエンコーダ104の接続を示しているリンク144に概念的にされる。
【0123】
従来のトレリスコードの修正は、ダーティーペーパーコード、すなわち、単一のメッセージに対応する別のコードワードを有するコードとして公知のものを作ることができる。コスタ、「ダーティーペーパー上の書き込み」、IEEE Trans. Inform. Theory, Vol.29,pp.439-442,1983参照。本コードは、以上に説明したインフォームド埋め込み法の直接的な応用を可能にする。
【0124】
図2は従来のトレリス118コードの実施例を示す。このコードにおいて、2つのアーク120a、120bは各状態から出る。太字のアーク120bは符号化されたメッセージ内のビット”1”に対応し、太字ではないアーク120aはビット”0”に対応する。この従来のトレリス118コーディング方式は、いったんスタート状態が選択されると、1つの固有の経路を各メッセージに割り当てる。
【0125】
ダーティーペーパーコードを生成するために、各メッセージに対して複数の別のコードワードが得られるように、トレリスは修正される。基本的な考えは、各状態に出入する2つ以上のアーク120を持ち、しかも1ビットを符号化するためにトレリスの各ステップを今までどおり使用することである。この修正されたトレリス146を図7に示す。
【0126】
アーク120のいくつかのA、及び状態148のいくつかの数Sを想定する。1つのノードを他のノードとは分けて扱う理由はないので、各状態148にはA/S個のアーク120が出入りする。これらのアーク120の半分は、太字ではないアーク120aで示される”0”を符号化する。他の半分は、太字のアーク120bで示される”1”を符号化する。同じメッセージを符号化する修正されたトレリス146の中には、多くの別の経路がある。Lビット長のメッセージmを符号化したいと想定する。スタート条件が課せられなければ、メッセージmを符号化するコードワードnの数は次式で与えられる。
【0127】
【数22】
Figure 0003707556
【0128】
図18に示すように、本方法によるエンコーダは、すべてが埋め込まれるべきメッセージを表す修正されたトレリス146を介する経路の集合から、一般的には178、経路を選択することができる。概念的には、これは2つのステップで行われると考えることができる。第1に、所望のメッセージを符号化しないすべての経路を除外するために、修正されたトレリス146はステップ180において再び抽出される。これは、”0”を符号化するべきステップから太字のアーク120bを除去し、”1”を符号化するべきステップから太字ではないアーク120aを除去する単純な問題である。結果として、示されたすべての可能性のある経路は所望のメッセージを表す。このようなメッセージ特有の修正されたトレリス150の例を図8に示す。
【0129】
第2に、上述のように、完全な修正されたトレリス146の代わりにメッセージ特有の修正されたトレリス150を使用することを除いて、エンコーダは検出アルゴリズムをオリジナルのカバーワーク112に適用する。すなわち、ステップ182に示すように、エンコーダはワークからベクトルを抽出し、次に、ステップ184に示すように、メッセージ特有の修正されたトレリス150を介してその抽出されたベクトルと最も高い相関をもたらす経路を見出すために、ビタビ復号アルゴリズムを使用する。これは、メッセージを表すために、極めて多量のコードのいずれを使用するべきかを識別する。
【0130】
次に、ステップ186に示すように、この経路は構築されたベクトルにより表される。ひとたびメッセージ特有の修正されたトレリス150を介する最も高い相関の経路が識別されると、カバーワーク112の中に電子透かしを埋め込むために、たとえば、上述のインフォームド埋め込みアルゴリズム、あるいは他の適切な埋め込みアルゴリズムを使用することができる。検出処理の間に、復号器はビタビアルゴリズムを全部の修正されたトレリス146に適用する。これは、電子透かしと最も高い相関をもたらす経路を識別する。次に、その経路内のアークにより表されるビットを調べることにより、メッセージは復号される。
【0131】
修正トレリス構造
アルゴリズムの一般的な構造を仮定すると、アークの数A及び状態の数Sは、埋め込みの方法の有効性に影響を与える可能性がある。
【0132】
状態当たりのアークの数が状態の数より大きければ(A/S>S)、トレリスの内部にいくつかの並列なアークがあるであろう、すなわち、同じ1対の状態をリンクするいくつかのアークがあるであろう。単一の状態のみの極端な場合には(S=1)、図9に示すように、すべてのアークは並列なアークである。
【0133】
状態当たりのアークの数が状態の数と等しければ(A/S=S)、トレリスは完全に接続されている、すなわち、各状態はそれ自身に1回と、すべての他の状態に正確に接続されている。
【0134】
状態当たりのアークの数が状態の数より少なければ(A/S<S)、すべての状態が任意の所与の状態から到達できるわけではない。図7(S=8、A=32)にこの場合を示す。
【0135】
トレリスの構造が電子透かし方式の有効性にどのように影響を与えるかを調査するために、2つの実験が行われた。両方の実験において、一様に分布したランダムなベクトルが抽出されたベクトルをシミュレートした。トレリスの各アークは、長さN=64のベクトルで表された。実験はインフォームドコーディングのみの有効性を調べようと努めたので、符号器により出力されたマークは、さまざまな強さαについて盲目的に埋め込まれた。埋め込みのすぐ後に、電子透かしを復号するために検出器が利用され、その結果生ずるビット誤り率(BER:Bit Error Rate)が測定された。
【0136】
いくつかの異なる方法でトレリスの構造により、メッセージ誤り率とは対照的に、ビット誤り率が生じることに注目しなければならない。特に、状態当たりのアークの数が状態の数より少なければ(A/S<S)、エラーが起きる都度、正しい経路に戻るまでにトレリス内でいくつかのステップを必要とする可能性がある。これは、復号されたメッセージ内にバースト誤りを生じさせ、ビット誤り率を増加させるであろう。しかし、複数の誤りは抽出されたベクトルとの相関を減少するはずであるから、複数の誤りは稀にしか発生しないと予想される。それに対して、1つの状態のみのトレリスでは、誤りが起きる都度、次の反復において復号器はただちに正しい経路に戻ることができる。したがって、この構成においては、1つの誤りが連続した誤りを誘起することはない。しかし、1つの誤りのコストはバースト誤りのためのコストに達しないから、したがって1つの誤りが頻繁に起きてもよい。
【0137】
第1の実験において、状態の数を1(S=1)に設定し、アークの数は変化させた。数式(1.2)によれば、これは、同じメッセージを表すコードワードの数が変化することを意味する。結果を図10に示す。アークの数が2から64へ増加するにつれて、ビット誤り率が非常に著しく減少していることが判る。アークの数が64を越えて増加するにつれて、性能は引き続き改善されるが、それほど劇的ではない。アークの数と共に計算コストは増加するので、A=64が良い妥協点であると思われる。しかし、これは単なる直感的な選択である。ビット誤り率と計算をバランスよくするためには、さらなる研究がアークの最適数を決定することができる。1つの状態と64のアークに対して、数式(1.2)がメッセージを符号化するコードワードnの数を与える。
【0138】
第2の実験において、状態の数とアークの数は、同じメッセージを表すコードワードの数がn=102073に保たれるように変えた。
【0139】
結果を図11に示す。再び、状態の数が64を超えて平坦になる前は、状態の数が増加するにつれて誤り率は急速に低下する。したがって、この点を超えて状態の数を増加することは、ほとんど利点がないと思われる。2つの実験は、64の状態と状態当たり64のアークの構成が合理的な妥協であることを示唆している。
【0140】
インフォームドコーディングによる改良を実証するために、2000個の画像が、インフォームドコーディング(64の状態と状態当たり64のアークのトレリスを使用して)及びインフォームド埋め込みを使用して電子透かしを埋め込まれた。埋め込みの直後に、2000個の画像は電子透かし検出器に送られ、メッセージ誤り率(MER:Message Error Rate)が計算された。
【0141】
次に、これらの結果は、ブラインドコーディングとインフォームド埋め込みを利用した結果と比較された。画像の忠実度は、インフォームドコーディングのために大幅に改良されている。これを数量化するために、両方の場合について、ワトソンのモデルによる平均知覚距離(average perceptual distance)が計算された。結果は表1に要約され、メッセージ誤り率は12.5%から零に減少する一方で、同時に画像品質は改善されている。インフォームドコーディングを使用する平均知覚距離は、ブラインドコーディングを使用する平均知覚距離の約半分であることが分かる。
【0142】
【表1】
Figure 0003707556
【0143】
この性能改善のどれだけがインフォームドコーディングのみによるものであるかを調べるために、2000個の画像にインフォームドコーディングとブラインド埋め込みを使用して電子透かしを埋め込む第2の実験が行われた。ブラインド埋め込みの強度は、平均ワトソン距離が101、すなわち、インフォームドコーディングとインフォームド埋め込みを使用した前述の実験とほぼ同じであるように選択された。再び、埋め込み器の有効性が測定された。これらの結果は表2に要約される。これは、本発明者等によるインフォームドコーディングアルゴリズムのみが、ブラインドコーディングに対して著しく改良されていることを示しているが、その有効性はインフォームド埋め込み無しでは満足ではない。
【0144】
【表2】
Figure 0003707556
【0145】
インフォームドコーディングとインフォームド埋め込みの組み合わせが有望である。しかし、結果として生ずる電子透かしを埋め込まれたワークの多くの忠実度、特に画像についての忠実度は依然として許容できない。この課題を緩和するために、ワトソンの知覚基準にもとづく知覚的整形ステップが提案するアルゴリズムに加えられる。
【0146】
知覚的整形は、コックス他「ディジタル電子透かし」に説明されているE-PERC-OPTアルゴリズムにもとづいている。基本的な考えは、前述の一般的なインフォームド埋め込みアルゴリズムにおけるステップ4で使用される差分パターンdを整形することである。代表的な実施形態において、本システムにおける電子透かしベクトルの各要素は、画像の8×8ブロックDCTからの単一の係数である。しかし、電子透かしベクトルの要素は、本発明の範囲から逸脱することなく、たとえば、ピクセル値、ウェーブレット値、あるいはフーリエ変換係数であってもよい。ワトソンのモデルは各要素に知覚的「スラック」を割り当てる。知覚的「スラック」は、知覚的に目に見えて分かるようになる前に、その要素をどれだけ変えることができるかを示す。DCTブロック124の低周波交流項に対するスラックは、i番目の構成要素s[i]が抽出されたベクトルのi番目の要素に対するスラックであるように、ベクトルsに配列することができる。次にdの知覚的整形は次式のように行われる。
【0147】
【数23】
Figure 0003707556
【0148】
これは、最大の類似性をもたらすベクトルd’[i]に帰する。類似性の1つの基準は所与の知覚距離に対してd[i]を有する相関であることになる。
【0149】
0(cw,g,b)≧Rtを保証するためにcwが修正される一般的なインフォームド埋め込みアルゴリズムのステップ4において、数式(1.1)はもはや使用されない。正確に言えば、ここではcwは次のように修正される。
【0150】
【数24】
Figure 0003707556
【0151】
ここで、S(d、cw)は、数式(1.3)によって計算された知覚的整形関数である。
【0152】
頑強性はインフォームド埋め込みアルゴリズムにより本質的に保証されるので、アルゴリズムのこの修正は、電子透かし方式の性能に影響を与えることは予想されない。
【0153】
この知覚的整形の効果を評価するために、インフォームドコーディング(64の状態、状態当たり64のアーク)、インフォームド埋め込み、及び知覚的整形を使用して2000個の画像が電子透かしとして埋め込まれた。次にオリジナルの画像と電子透かしが埋め込まれた画像との間のワトソン距離が計算された。2000個の画像による電子透かしを埋め込まれた画像に、電子透かし検出器がただちに適用され、メッセージ誤り率が計算された。
【0154】
結果は表3に要約される。メッセージ誤り率はほんの僅かに増加したが、電子透かしが埋め込まれた画像と電子透かしが埋め込まれていない画像との間の知覚距離は3分の1に減少した。
【0155】
【表3】
Figure 0003707556
【0156】
しかし、ワトソンのモデルには限界がある。いくつかの望ましくない余計な生成物が、特に薄く黒い境界がある場合に画像の右側に、輪郭のはっきりした境界に沿って現れる。これは、ワトソンのモデルがブロックベースであり、各ブロックが独立して調べられるためである。輪郭のはっきりした境界を含むブロックはすべての周波数のエネルギーを含んでおり、電子透かしパターンを隠す恐れのある多くのテクスチャを含んでいると誤って判定される。
【0157】
頑強性
上述した実験は、電子透かし埋め込み器の埋め込みの有効性、すなわち、電子透かしが埋め込まれた画像が、埋め込みの時点と検出の時点との間に歪んでいない場合の性能のみを調べている。実際には、電子透かしが埋め込まれたコンテンツは、検出器に到達する前に、さまざまな歪みの影響を受ける。適切かつ日常的に使用されるコンテンツについての、たとえば、低域濾波、雑音、JPEG圧縮に耐えるように設計された電子透かしは、頑強な電子透かしと呼ばれる。
【0158】
実験は、3つの異なる電子透かしアルゴリズムに対する広範囲な歪みの影響を測定するために行われた。
(i)ブラインドコーディング、インフォームド埋め込み、整形無し(BCIENS)。
(ii)インフォームドコーディング、インフォームド埋め込み、整形無し(ICIENS)。
(iii)インフォームドコーディング、インフォームド埋め込み、整形有り(ICIES)。
【0159】
ブラインド埋め込みを使用するアルゴリズムは、画像の歪みが無くても許容しにくい性能であることが判明したので、試験されなかった。本発明者等は、ガウス雑音の付加、低域濾波、値の増減、及びJPEG圧縮に対する頑強性の結果を報告する。各種類の歪みに対して、2000個の電子透かしを埋め込まれた画像が、さまざまな大きさの歪みで修正された。次に、メッセージ誤り率を計算した。本発明者等は、電子透かし方式は少なくとも80%の電子透かしが正確に検索されると、すなわちメッセージ誤り率が20%未満であれば頑強であるとみなした。
【0160】
ガウス雑音
平均値=0で標準偏差がσの正規分布雑音が、電子透かしを埋め込まれた画像のそれぞれに加えられた。異なる標準偏差σに対して実験は繰り返され、メッセージ誤り率が計算された。結果は図12に要約される。インフォームドコーディングを使用する2つの方式−ICIENS(知覚的整形無し)及びICIES(知覚的整形有り)−は非常に類似の性能を有することに、注目されたい。これは、既に説明したように、知覚的整形がインフォームド埋め込みに干渉しないからである。しかし、ICIESアルゴリズムを使用して埋め込まれた画像は、かなり良い忠実度を有することを記憶されたい。
【0161】
インフォームドコーディングを導入することにより得られる利得は、非常に注目に値する。20%のメッセージ誤り率に閾値を固定すれば、インフォームド埋め込み及び整形無しを使用するブラインドコーディング(BCIENS)は、3.25以下の標準偏差σを有する付加ガウス雑音に対してしか頑強ではない。それに対して、2つのインフォームドコーディング法は、6.5までの標準偏差に対して頑強である。
【0162】
低域濾波
試験された3つの電子透かし方式のすべては、低周波DCT係数のみを使用する。結果として、3つの電子透かし方式のすべては、低域濾波に対して非常に弾力的であると予想できる。これを検証するために、電子透かしを埋め込まれた画像は、帯域幅σgのガウスフィルタを使用して濾波された。実験は異なる値のσgに対して繰り返され、メッセージ誤り率が計算された。
【0163】
結果は図13に要約される。再び、インフォームドコーディング法は類似の性能を有し、ブラインドコーディングとインフォームドコーディングの間の改善は明らかである。ブラインドコーディングでは、帯域幅σg=0.7のガウスフィルタを使用してメッセージ誤り率は20%に達する。それに対して、インフォームドコーディングでは、同じメッセージ誤り率に達するまでに、帯域幅σg=1.5のガウスフィルタを使用して画像を濾波できる。
【0164】
値の増減
他の単純ではあるが重要な歪みは、振幅の変化である。すなわち、
n=vc
であり、ここでcは画像であり、vはスケーリング因子である。これは、画像及びビデオに対する輝度とコントラストの変化に対応する。本発明者等にとって、この作用は特に重要であり、従来のインフォームド電子透かし方式の主な弱点であった。
【0165】
2つのテストが行われた。第1のテストは画像強度を減少させた、すなわちvを1から0.1まで変化させた。第2のテストは、vが1から2まで増加するように、画像強度を増加させた。
【0166】
第1のテストの結果は図14に要約される。例によって、2つのインフォームドコーディング法は、非常に類似の性能を示し、ブラインドコーディング法より優れている。この結果は、本明細書において説明する電子透かし方式が、値の減少に対して弾力的であることを明らかに示している。どの電子透かし方式が選択されても、その性能はスケーリング因子0.1までは同じである。
【0167】
スケーリング因子0.1では、重大な画像劣化が発生した。このようなスケーリング因子を使用して拡大縮小した画像の例は、ほとんど完全に黒い。しかし、たとえ歪んだ画像が非常に暗くても、隠されたメッセージは依然として正確に抽出される。これは、値の増減は、すべての相関スコアに同じスケーリング因子を乗算するからである(何らかの丸めを法として)。結果として、トレリスに沿った最良の経路は同じままである。
【0168】
第2のテストは、1≦ν≦2に対する 値の増減の本発明者による電子透かし法の頑強性を調査した。結果は図15に要約される。再び、2つのインフォームドコーディング法は類似の性能を有し、ブラインドコーディング法より著しく優れている。ブラインドコーディング法はスケーリング因子ν≒1.1まで残るが、2つのインフォームドコーディング法はスケーリング因子ν=1.3まで頑強である。
【0169】
スケーリング強度を上げたときの頑強性は、スケーリング強度を下げたときの頑強性より非常に悪い。これは、丸めに加えて、値を増加させると若干のクリッピングを導入する、すなわち、スケーリング後に255を超えるすべてのピクセル値は255に切り捨てられるからである。これは丸めより厳しい影響がある。ν=1.3倍に拡大した画像は大域的に明るいが、そのようなスケーリングの後には、テクスチャーが施された領域の一部が一様に白くなることに気付くことがある。
【0170】
損失の多い圧縮
DCTドメインに量子化を適用することにより、JPEG圧縮の効果をシミュレートした。各々の電子透かしを埋め込まれた画像に対して、ブロックDCT変換が計算された。次に、次式によりDCT係数が量子化された。
【0171】
【数25】
Figure 0003707556
【0172】
ここでqは、64項のそれぞれに対して異なる量子化因子を使用する一定の量子化因子である。量子化因子qは、全体的な量子化レベルQに表4に示すDCT項特有の量子化因子のマトリックスを乗算することにより、得られる。たとえば、Q=2であれば、DC項はq=32で量子化され、最も高い周波数の項はq=198で量子化される。画像が圧縮されるほど、大域的な量子化レベルQは大きくなる。量子化の後に、逆ブロックDCTが適用される。電子透かしを埋め込まれた画像は、パラメタQに対して異なる値を使用して量子化され、メッセージ誤り率が計算された。
【0173】
【表4】
Figure 0003707556
【0174】
結果は図16に要約される。再び、2つのインフォームドコーディング法は類似の性能を有し、ブラインドコーディング法より著しく優れている。ブラインドコーディング法は0.75未満のQの値に対してのみ頑強であるが、インフォームドコーディング法はQ≦1.5に対して頑強である。後者の値は、33%のJPEGクォリティファクタに対応する。大域的な量子化レベルQ=1.5の損失の多い圧縮は、画像の忠実度を非常に劣化させる。
【0175】
ワーク内の電子透かし信号のインフォームドコーディング及びインフォームド埋め込みの方法を開示した。この開示された電子透かしシステムの利点及び利益は、電子透かしを埋め込まれたワークがアナログドメインに伝達されても、損なわれないことに注目されたい。
【0176】
本方法は、通常のコンピュータ装置を使用して、あるいはモジュール式または組み込み式の専用装置を使用しても、実行することができる。さらに本方法は、マシン実行のためにプログラムし、装置で読み取り可能な媒体に蓄積することが可能である。
【0177】
本明細書において、特定の代表的な実施形態を参照して、本発明を説明した。本発明の範囲から逸脱することなく、ある程度の改変及び修正は、当業者に明白である。代表的な実施形態は、添付した特許請求の範囲により定められる本発明の範囲を制限するものではない。
【0178】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
【0179】
各メッセージが複数の別のコードワードによって表されるコードの定義と、所与のメッセージを表すコードワードの集合の識別と、カバーワークの歪みを最少にするであろう前記集合へのコードワードの埋め込みを含む電子透かしメッセージのインフォームドコーディングを達成することができる。
【0180】
また、カバーワークへの電子透かしメッセージの知覚的影響を最少にするために、所定の知覚的「スラック」に適合するように埋め込み処理においてコードを修正することにより、電子透かしメッセージコードの知覚的整形を達成することができる。
【0181】
さらに、カバーワークに対する知覚的影響を制限する一方で、カバーワークの中に電子透かしメッセージコードを効率的かつ確実に埋め込むために、カバーワークの中の電子透かしメッセージコードをインフォームド埋め込みすることを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インフォームド埋め込み器の略図である。
【図2】従来のトレリスコード構造を示す。
【図3】本発明による代表的な実施形態に使用した画像の8×8ブロックDCTの項を示す。
【図4】電子透かしの埋め込み領域の幾何学的説明を例示するボロノイ図である。
【図5】図4のボロノイ図における本発明による埋め込みアルゴリズムの行動を例示する。
【図6】インフォームドコーダの略図である。
【図7】本発明による修正トレリスコード構造を示す。
【図8】本発明によるメッセージ特有の修正トレリスコード構造を示す。
【図9】複数の並列な経路を有する単一状態トレリスコード構造を示す。
【図10】一定数の状態を使用した、ビット誤り率対アーク数の実験結果のグラフである。
【図11】一定数のコードワードを使用した、ビット誤り率対状態数の実験結果のグラフである。
【図12】メッセージ誤り率対付加されたガウス雑音の標準偏差の実験結果のグラフである。
【図13】メッセージ誤り率対ガウシアンフィルタリングの標準偏差の実験結果のグラフである。
【図14】メッセージ誤り率対減少するスケーリング因子の実験結果のグラフである。
【図15】メッセージ誤り率対増加するスケーリング因子の実験結果のグラフである。
【図16】量子化行列乗算器により測定した、メッセージ誤り率対JPEG圧縮の増加するレベルの実験結果のグラフである。
【図17】本発明によるインフォームド埋め込み法を例示するフローチャートである。
【図18】本発明によるインフォームドコーディング法を例示するフローチャートである。
【符号の説明】
100 インフォームド電子透かしシステム
102 ソースメッセージ
104 エンコーダ
106 メッセージ信号
108 モディファイア
110 修正された信号
112 オリジナルカバーワーク
114 電子透かしを埋め込まれたワーク
116 リンク

Claims (24)

  1. 電子透かし抽出器による抽出のために、所望の電子透かしメッセージをカバーワーク中に埋め込む方法であって、
    前記方法は、
    (a)前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、
    (b)前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算することと、
    (c)前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正することと、
    (d)終了条件が満たされるまで、ステップ(a)−(c)を繰り返すことを含み、
    前記頑強性基準は、次式により得られ、
    Figure 0003707556
    前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
    Figure 0003707556
    ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、また、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数である所望の電子透かしメッセージをカバーワークの中に埋め込む方法。
  2. 電子透かし抽出器による抽出のために、所望の電子透かしメッセージをカバーワーク中に埋め込む方法であって、
    前記方法は、
    (a)前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、
    (b)前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算することと、
    (c)前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正することと、
    (d)終了条件が満たされるまで、ステップ(a)−(c)を繰り返すことを含み、
    前記頑強性基準は、次式により得られ、
    Figure 0003707556
    前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
    Figure 0003707556
    ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、S(d,cw)は知覚的整形関数であり、、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であり、
    前記知覚的整形関数は、次式により計算され、
    Figure 0003707556
    ここで、d’[i]とd[i]はそれぞれd’とdのi番目の要素であり、s[i]はd[i]が知覚的影響なしに変化し得る量を示す知覚的スラック値であり、m及びnは定数である所望の電子透かしメッセージをカバーワークの中に埋め込む方法。
  3. 前記終了条件は、前記頑強性基準が所定の値を超えることである請求項1または2記載の方法。
  4. 前記終了条件は、前記頑強性基準が所定の値を超えるステップ(a)−(c)の繰り返される回数が所定の限界を超えることである請求項1または2記載の方法。
  5. 前記所定の限界は100である請求項4記載の方法。
  6. 前記正しくない電子透かしメッセージを見出すことは、
    (i)前記カバーワークに多量の雑音を加えることと、
    (ii)前記正しくない電子透かしメッセージを得るために、前記カバーワークに前記電子透かし抽出器を適用することと、
    (iii)前記正しくない電子透かしメッセージが前記所望の電子透かしメッセージと異なるまで、ステップ(i)−(ii)を繰り返すことを含む請求項1または2記載の方法。
  7. 前記多量の雑音は、前記正しくない電子透かしメッセージを得る都度、増加される請求項6記載の方法。
  8. 前記多量の雑音は、前記頑強性基準が所定の値を超える正しくない電子透かしメッセージを得る都度減少される請求項6記載の方法。
  9. m=4であり、n=1/3である請求項2記載の方法。
  10. 電子透かし抽出器による前記抽出は、
    (i)前記カバーワークから抽出されたベクトルを得ることと、
    (ii)トレリスコードによって前記抽出されたベクトルを復号することを含む請求項1または2記載の方法。
  11. 抽出されたベクトルを得ることは、
    1.前記カバーワークをブロックに分割することと、
    2.ブロックDCTを得るために、前記ブロックのDCTを計算することと、
    3.前記抽出されたベクトルを得るために、前記ブロックDCTの選択された項を所定の順序でトレリス内の各経路、そしてこれらが表す各メッセージは、各経路に含まれる各アークに対して付されたラベルの連鎖である長さL×Nのベクトルの中に配置することを含む請求項10記載の方法。
  12. アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化される方法であって、
    (a)ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することであって、前記経路内の各アークは前記所望のメッセージ内の1つの記号に対応しており、前記ダーティーペーパートレリスは前記アルファベット内の各記号に対応する各ノードから2つ以上のアークを有する、ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することと、
    (b)前記経路のベクトル表現を得るために、前記経路内の前記アークを示すベクトルを合成することと、
    (c)前記ベクトル表現として前記所望の電子透かしメッセージを符号化すること、
    によって、アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化される請求項1または2記載の方法。
  13. 前記アルファベットは、1と0を含む2進法によるアルファベットである請求項12記載の方法。
  14. 前記経路を選択することは、
    (i)前記メッセージ内の記号以外の記号に対応するアークを除外し、したがってメッセージ特有のトレリスを得ることにより、前記ダーティーペーパートレリスを修正することと、
    (ii)前記カバーワークから抽出されたベクトルを得ることと、
    (iii)ベクトル表現が前記抽出されたベクトルと類似している前記メッセージ特有のトレリスを介して経路を選択することを含む請求項12記載の方法。
  15. 前記抽出されたベクトルを得ることは、
    1.前記カバーワークをブロックに分割することと、
    2.ブロックDCTを得るために、前記ブロックのDCTを計算することと、
    3.前記抽出されたベクトルを得るために、前記ブロックDCTの選択された項を所定の順序でトレリス内の各経路、そしてこれらが表す各メッセージは、各経路に含まれる各アークに対して付されたラベルの連鎖である長さL×Nのベクトルの中に配置することを含む請求項14記載の方法。
  16. 前記メッセージ特有のトレリスを介して経路を選択することは、ビタビ復号器を適用することにより行われる請求項14記載の方法。
  17. 前記ベクトルを合成することは、ベクトルを連結することにより行われる請求項12記載の方法。
  18. 電子透かし抽出器による抽出のために、カバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置であって、前記装置は、
    前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出す手段と、
    前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算する手段と、
    前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正する手段を有し、
    前記頑強性基準は、次式により得られ、
    Figure 0003707556
    前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
    Figure 0003707556
    ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、また、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であるカバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置。
  19. 電子透かし抽出器による抽出のために、カバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置であって、前記装置は、
    前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出す手段と、
    前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算する手段と、
    前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正する手段を有し、
    前記頑強性基準は、次式により得られ、
    Figure 0003707556
    前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
    Figure 0003707556
    ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、S(d,cw)は知覚的整形関数であり、また、R0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であり、
    前記知覚的整形関数は、次式により計算され、
    Figure 0003707556
    ここで、d’[i]とd[i]はそれぞれd’とdのi番目の要素であり、s[i]はd[i]が知覚的影響なしに変化し得る量を示す知覚的スラック値であり、m及びnは定数であるカバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む装置。
  20. 命令プログラムを有する装置で読み取り可能な記録媒体であって、前記命令プログラムは、電子透かし抽出器による抽出のために、カバーワークの中に所望の電子透かしメッセージを埋め込む方法をマシンに実行させ、前記方法は、
    (a)前記電子透かし抽出器により前記カバーワークから抽出されそうな正しくない電子透かしメッセージを見出すことと、
    (b)前記正しくない電子透かしメッセージが前記カバーワークから抽出されないであろう確率を示す頑強性基準を計算することと、
    (c)前記頑強性基準が所定の値未満であれば、前記頑強性基準を大きくするために前記カバーワークを修正することと、
    (d)終了条件が満たされるまで、ステップ(a)−(c)を繰り返し、
    すことを含む命令プログラムを有し、
    前記頑強性基準は、次式により得られ、
    Figure 0003707556
    前記カバーワークの修正は、次式により実行され、
    Figure 0003707556
    ここで、dはインフォームド埋め込みで使用される差分パターン、αはさまざまな強さ、gは前記所望の電子透かしメッセージを表すベクトルであり、bは前記正しくない電子透かしメッセージを表すベクトルであり、Rtは前記所定の値であり、cwは前記カバーワークであり、S(d,cw)は知覚的整形関数であり、またR0(cw,g,b)は前記頑強性基準をもたらす関数であり、
    前記知覚的整形関数は、次式により計算され、
    Figure 0003707556
    ここで、d’[i]とd[i]はそれぞれd’とdのi番目の要素であり、s[i]はd[i]が知覚的影響なしに変化し得る量を示す知覚的スラック値であり、m及びnは定数である装置で読み取り可能な記録媒体。
  21. 前記終了条件は、前記頑強性基準が所定の値を超えるステップ(a)−(c)の繰り返される回数が所定の限界を超えることである請求項20記載の装置で読み取り可能な記録媒体。
  22. 前記正しくない電子透かしメッセージを見出すことは、
    (i)前記カバーワークに多量の雑音を加えることと、
    (ii)前記正しくない電子透かしメッセージを得るために、前記カバーワークに前記電子透かし抽出器を適用することと、
    (iii)前記正しくない電子透かしメッセージが前記所望の電子透かしメッセージと異なるまで、ステップ(i)−(ii)を繰り返すことを含む請求項20記載の装置で読み取り可能な記録媒体。
  23. アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化される装置で読み取り可能な記録媒体であって、
    (a)ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することであって、前記経路内の各アークは前記所望のメッセージ内の1つの記号に対応しており、前記ダーティーペーパートレリスは前記アルファベット内の各記号に対応する各ノードから2つ以上のアークを有する、ダーティーペーパートレリスを介して経路を選択することと、
    (b)前記経路のベクトル表現を得るために、前記経路内の前記アークを示すベクトルを合成することと、
    (c)前記ベクトル表現として前記所望の電子透かしメッセージを符号化することによって、アルファベットから抽出された一連の記号の形式の前記所望の電子透かしメッセージは、ベクトルとして符号化される請求項20記載の装置で読み取り可能な記録媒体。
  24. 前記経路を選択することは、
    (i)前記メッセージ内の記号以外の記号に対応するアークを除外し、したがってメッセージ特有のトレリスを得ることにより、前記ダーティーペーパートレリスを修正することと、
    (ii)前記カバーワークから抽出されたベクトルを得ることと、
    (iii)ベクトル表現が前記抽出されたベクトルと類似している前記メッセージ特有のトレリスを介して経路を選択することを含む請求項20記載の装置で読み取り可能な記録媒体。
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