JP3705385B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットヘッドに関し、さらに詳しく述べると、ピエゾ方式によるインクジェットヘッドに関する。本発明のインクジェットヘッドをプリンタに使用すると、インク滴のクロストークを小さくしかつ駆動時の騒音を低く抑えることができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、ファクシミリ装置、複写機などの電子機器に内蔵、あるいは接続される印刷機として、インクジェットプリンタが広く用いられている。インクジェットプリンタの代表的な印字の方式としては、インクを瞬間加熱し、気化させて気泡を発生させ、その圧力で付属のノズルよりインクの液滴を飛翔させるバブルジェット方式と、圧電素子(ピエゾ素子)の変形を利用し、その変形力でノズルよりインクの液滴を飛翔させるピエゾ方式とがある。印字の高速化、制御の容易性、インクへの対応範囲の広さなどから、ピエゾ方式のほうが、バブルジェット方式よりも大きな期待を寄せられている。しかし、ピエゾ方式のインクジェットプリンタは、構造が複雑であること、価格が高いということ、などを欠点として有している。
【0003】
最近では、しかし、インクの流通路としてかつ圧力室として機能するインク流路を備えたインク流路部材と、1つの面がインク流路の壁面の一部を構成することができる圧電素子部材とを接合させた、構造が単純で、低価格が期待できるピエゾ方式のインクジェットプリンタ用ヘッドが提案されている。
図1は、従来のピエゾ方式のインクジェットプリンタ用ヘッドの一例を示した展開図である。図示されるように、インクジェットヘッド10は、大きく分けて、インク流路部材11、ノズル部材21、そして圧電素子部材1の3つの主たる部材から構成されている。インク流路部材11は、複数本の圧力室を兼ねるインク流路12を有している。図示の例では、6本のインク流路12を装備したインク流路部材11が示されている。また、インク流路部材11の内部では、インク流路が合流してインク供給路14が形成されており、インク供給口15に連通している。インク流路部材11の前面には、それぞれのインク流路12に対応して分布せしめられたノズル22を有するノズル部材21が接合される。ノズル22の孔からは、インク流路12内で加圧されたインクを液滴の形で吐出可能である。インク流路部材11において、インク流路12が形成されている側には、圧電素子部材1が接合されている。圧電素子部材1は、基板2とその上の圧電素子3とからなる。圧電素子3のうちインク流路12に対応する部分には、以下に詳細に説明する圧電素子駆動部13が形成されている。すなわち、インク流路部材11の図面では見えない下側では、インク流路12の下面と圧電素子部材1の圧電素子駆動部13の上面13aが当接している。
【0004】
図2に拡大して示すヘッド要部の断面図から理解されるように、圧電素子部材1は、インク流路12の体積変化を行うための振動板としてのダイアフラム(図示せず)と、ダイアフラムを歪ませるための駆動体としての圧電素子3と、圧電素子の電歪効果を誘導するためのものであって、その中間に圧電素子3を挟み込んだ一対の電極5とを有している。図示の例では、一対の電極、すなわち、1枚の層状圧電素子3をサンドイッチした2枚の層状電極5が示されている。ここで、電極5とそれらによって挟まれた圧電素子3の組の全部を総称して、本願明細書では特に「圧電素子駆動部」13と呼ぶことにする。また、先にも説明したように、この圧電素子部材1には、その圧電素子駆動部13のそれぞれと突き合わせた形でインク流路12を有するインク流路部材11が接合されている。圧電素子駆動部13の電極5の間に電圧を印加すると、中間に挟み込まれている圧電素子3が電歪効果によって伸長させられる。すると、圧電素子3に密着して配置されたダイアフラムが上方に向かって撓み、インク流路12内の体積の減少がそれによって発生する。インク流路12内の体積が減少すると、その流路内に充填されたインクが加圧され、その流路の先端に位置するノズルからインク滴として吐出される。
【0005】
このようなピエゾ方式のインクジェットヘッドは、その構造が極めて単純で、また、組立に必要とされる部品の数が少ないので、バブル方式のヘッドに比較可能な低価格で提供することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のピエゾ方式のインクジェットヘッドは、しかし、2つの解決されるべき問題点を有している。1つの問題点は、クロストークが大きいこと、すなわち、印字の時にノズルから吐出されるインク滴の量にばらつきがあること(インク粒量の変化)である。いまひとつの問題点は、印字の時に発生する騒音が大きいことである。このような問題点は、図3を参照した次のような説明から理解されるであろう。
【0007】
従来のピエゾ方式のインクジェットヘッドでは、圧電素子駆動部13において2つの相対する電極5に電圧を印加すると、その中間に挟まれている圧電素子3に歪みが生じ、圧電素子3が上方に向かって変形するとともに、その体積が膨張する。さらに、圧電素子駆動部13に隣接する非圧電部31が圧電素子駆動部13の圧電素子3に向けて引っ張られ、図中矢印で示すように横方向の応力が生じる。ここで、インクジェットヘッドに配備されるノズルは通常複数個であるので、それらの複数個のノズルからインクを吐出させるために個々のノズルに対応する圧電素子駆動部を同時的に作動させることが必要である。この場合に、圧電素子駆動部13の作動とともに非圧電部31の横方向の応力も強くなり圧電素子3の変位を妨げようとするため、圧電素子3の変形が単ノズル駆動よりも小さくなり、インク粒量が低下する。また、圧電素子駆動部13のうちインク流路のインク12と接する面13aでは、縮もうとする力が強くなり、バイモルフ効果で圧電素子3が反るため、インク流路12の体積が大きくなることの結果として、さらにインク粒量が低下する。さらにまた、反りに原因して圧電素子が振動するので、不快な騒音もあわせて発生する。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決して、クロストークが小さく、音の静かなインクジェットプリンタ用ヘッド(インクジェットヘッド)を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的は、本発明によれば、隔壁によって互いに隔離された複数本のインク流路を有するインク流路部材と、前記インク流路部材の端面に接合されたものであって、それぞれのインク流路に連通したインク噴射のためのノズルを有するノズル部材と、前記インク流路部材の1つの主たる表面に接合されたものであって、印字時、含まれる圧電素子の変位により前記インク流路内のインクに圧力をかけて前記ノズルから噴射させることが可能な圧電素子部材とを含み、その際、前記圧電素子部材が、前記インク流路に対応して配置された複数個の圧電素子駆動部を含みかつそれぞれの圧電素子駆動部が、少なくとも1個の、一対の電極に挟まれた圧電素子を有しているようなインクジェットヘッドにおいて、
前記圧電素子部材が、前記インク流路部材の隔壁の下方の前記圧電素子駆動部が含まれない領域において、追加の圧電素子駆動部をさらに有していることを特徴とするインクジェットヘッドによって達成することができる。
【0010】
本発明では、インク流路の下に従来の技法に従って圧電素子駆動部を配置することの他に、今までは非圧電部として利用されていなかった、インク流路どうしを分離する隔壁の下の領域にも電極を配置して追加の圧電素子駆動部を形成したので、圧電素子領域の全体において圧電素子の変形のバランスをとることができ、よって、ノズル駆動数による変位のばらつきをなくすことができ、さらに、素子の反りをなくすことで、インク粒量の変化及び発生音を低減することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好ましい実施形態について説明する。
本発明によるインクジェットヘッドは、前記したように、隔壁によって互いに隔離された複数本のインク流路を有するインク流路部材と、前記インク流路部材の端面に接合されたものであって、それぞれのインク流路に連通したインク噴射のためのノズルを有するノズル部材と、前記インク流路部材の1つの主たる表面に接合されたものであって、印字時、含まれる圧電素子の変位により前記インク流路内のインクに圧力をかけて前記ノズルからインク滴として吐出させることが可能な圧電素子部材とを含んで構成されるものである。
【0012】
ここで、インク流路を有するインク流路部材は、好ましくは、この技術分野において一般的に用いられているようにインク流路板の形をとることができる。すなわち、インク流路部材は、例えば、PES、PET、PENなどのプラスチック材料、熱硬化性樹脂、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼などの金属材料あるいは感光性ガラス、例えばフォトセラム(商品名)などのその他の材料から成形あるいはその他の技法、例えばエッチング、電鋳、サンドブラスト、レーザ加工などによって形成することができる。また、インク流路部材は、半導体装置の製造に広く用いられているレジストプロセスを利用して、適当な感光性樹脂(レジスト材料)のパターニングにより形成することができる。インク流路部材のインク流路は、互いに平行な複数本の溝から構成されるものであり、その溝の本数及び大きさはヘッドの構成などのファクタに応じて広く変更することができる。一般的に、インク流路の本数は、約4〜60本、それぞれのインク流路の大きさは、約100〜500μm の幅、約50〜500μm の深さ、そして約0.1〜20mmの長さである。なお、本願明細書の下記の実施例では、理解を容易にするため、4本のインク流路を有するインク流路部材を図示して説明する。
【0013】
インク流路部材の端面に接合されるノズル部材も、従来常用のノズル板と同様に構成することができる。ノズル部材は、例えば、上記したインク流路部材と同様なプラスチック材料、金属材料などから成形あるいはその他の技法によって形成することができ、その大きさならびにノズルの分布及び大きさは、例えば、組み合わせて用いられるインク流路部材などに応じて変更することができる。例えば、ノズル部材の大きさは、約1〜50mmの幅、約0.1〜1mmの厚さ、そして約5〜50mmの長さである。インク流路部材に対するノズル部材の接合は、好ましくは、接着剤などを使用して行うことができる。
【0014】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記インク流路部材の1つの主たる表面に接合されたものであって、印字時、インク流路内のインクに圧力をかけて前記ノズルからインク滴として吐出させることが可能な圧電素子部材の構成が重要である。本発明で用いられる圧電素子部材は、インク流路に対応して配置された圧電素子駆動部(本願明細書では、特に「第1の圧電素子駆動部」とも呼ぶ)の他に、インク流路部材の隔壁の領域(ここには、第1の圧電素子駆動部が含まれない)において、追加の圧電素子駆動部(本願明細書では、特に「第2の圧電素子駆動部」とも呼ぶ)をさらに有しているところに特徴がある。
【0015】
本発明の圧電素子部材及びそれに含まれる第1及び第2の圧電素子駆動部は、好ましくは、圧電素子形成性セラミック材料のグリーンシートから、その複数枚を積層することにより所望の厚さとした後、得られた積層体を高められた温度で焼成することにより形成することができる。ここで使用する圧電素子形成性セラミック材料は、圧電素子の形成に一般的に用いられているもの、例えば、PNN:Pb(Ni,Nb)O3 系セラミック材料などを包含する。例えば、好ましいグリーンシートの組成と焼成温度の一例を示すと、次の通りである。
圧電素子部材に含まれる第1及び第2の圧電素子駆動部は、同一の構成を有していてもよく、あるいは異なる構成を有していてもよく、それぞれ、少なくとも1個の、一対の電極に挟まれた圧電素子を有するように構成することができる。また、圧電素子及び電極は、好ましくは層状である。それぞれの電極は、この技術分野において通常行われているように、各種の導電性材料、例えば、金、銅、ニッケル、パラジウムなどの金属又は合金材料から、さもなければ導電性のプラスチック材料から形成することができる。電極の形成は、通常、圧電素子のグリーンシートを形成した後、その所定の領域に電極材料のペーストなどをスクリーン印刷やその他の技法により所定のパターンで適用することにより実施することができる。圧電素子駆動部、すなわち、圧電素子層とそれを挟んだ2枚の電極層の組は、本発明の実施においては何組であってもよいというものの、通常、1〜5組である。また、それぞれの組に含まれる圧電素子層及び電極層の膜厚は、特に限定されないというものの、通常、圧電素子層が約10〜500μm 、そして電極層が約0.5〜10μm である。
【0016】
本発明の実施において、印字時、インク流路に対応する第1の圧電素子駆動部及びインク流路の隔壁に対応する第2の圧電素子駆動部を交互に駆動して、これらの2つの圧電素子駆動部の駆動による圧電素子の変位量を前記第1の圧電素子駆動部の駆動による圧電素子の変位量よりも小さくすることが好ましい。また、これに関連して、第1及び第2の圧電素子駆動部の駆動を行う時、それらの駆動部に含まれる電極を同一の電源に接続して電圧を印加するのが好ましい。さらに、第1の圧電素子駆動部の駆動波形と第2の圧電素子駆動部の駆動波形が、それらを合成した時、一定電圧の波形を示すように電圧の印加をコントロールするのが好ましい。
【0017】
本発明によるインクジェットヘッドは、上記したような主たる部材のそれぞれにおいて、必要に応じて、その他の一般的に用いられている構成要素を有することができ、また、記載した主たる部材に加えて、その他の一般的に用いられている部材を有していてもよい。
本発明のインクジェットヘッドは、低クロストーク及び低騒音であるので、広くプリンタに搭載して有利に利用することができる。また、本発明のヘッドを搭載したプリンタは、例えばパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、ファクシミリ装置、複写機などの電子機器に内蔵してもよく、あるいはそれらの機器に接続してもよい。
【0018】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照しながらさらに詳細に説明する。なお、添付の図面を参照した以下の説明において、特に断りのない限り、同一の参照番号は同一の要素、部材等を意味し、したがって、同様な組成等を有したり、同様な手法に従って形成等を行うことができる。
【0019】
図4は、本発明によるインクジェットヘッドの好ましい1例を示したヘッド要部の断面図である。圧電素子部材は、基板(図示せず)と、その上に積層して形成された圧電素子3とからなる。圧電素子3は、図示の例の場合、可動圧電素子としての、第1の圧電素子駆動部13及び追加駆動部としての第2の圧電素子駆動部23を有している。第2の圧電素子駆動部23の配置された場所は、従来のインクジェットヘッドでは、非圧電部としてあったところである。本例では、圧電素子駆動部13及び23の両方とも、1枚の層状圧電素子3を一対の層状電極13でサンドイッチした構成を有している。また、図示しないけれども、圧電素子3の最上層にはダイアフラムが配置されている。圧電素子部材の上面には、その第1の圧電素子駆動部13の上にインク流路12を位置決めしたうえで、インク流路部材11が接着剤層(図示せず)を介して接合されている。
【0020】
上記したようなインクジェットヘッドの要部は、例えば、次のようにして製造することができる。先ず、圧電素子部材の形成のためのグリーンシート(その典型的な組成は前記した)を用意する。ここで使用するグリーンシートは通常柔軟性に富むものであるので、スリット加工後における搬送の便のため、予め適当なプラスチックフィルム、例えばPETフィルムなどの搬送用フィルムに密着固定してから、その後の積層工程に供してもよい。引き続いて、グリーンシートの所定の領域に電極を被着する。電極の被着は、使用する電極材料などの条件によって変更し得るというものの、通常、スクリーン印刷などの印刷法を使用して有利に実施することができる。さらに、必要に応じて、グリーンシートを基板に張り付けてから電極を施してもよい。
【0021】
グリーンシートに電極を被着した後、必要枚数のグリーンシートを基板の上に積層し、プレスで密着する。ここで使用する基板の材料は、圧電素子の材料と同じであってもよく、さもなければ、それと異なる材料であってもよい。後者の材料の場合、引き続く焼成工程を考慮して、圧電素子の材料と同等もしくはそれ以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0022】
引き続いて、得られた積層体を焼成する。ここで使用する焼成温度は、圧電素子部材の形成に使用したグリーンシートの組成に応じて変更し、通常、約1000℃の前後である。さらに続けて、形成された圧電素子部材の上にインク流路部材を正確に位置決めして載置し、接着剤層で強固に接合する。図4に示すような圧電素子セグメントが得られる。ここでは図示して説明しないけれども、得られたセグメントの必要数を専用のホルダに装着した後、ヘッドユニットの所定の部位に取り付けると、目的とするインクジェットヘッドが完成する。
【0023】
図5は、図4に示したインクジェットヘッドの要部の1変更例を示したものである。第2の圧電素子駆動部23は図4のそれに同じであるけれども、インク流路12の下の第1の圧電素子駆動部13は、3枚の圧電素子3のそれぞれを一対の電極5によってサンドイッチした構成に変更してある。圧電素子セグメントの製造は、前記した例と同様にして行うことができる。
【0024】
図6及び図7は、図4に示した圧電素子セグメントにおける電圧印加の効果について説明したものである。本発明では、前記した通り、第1の圧電素子駆動部13と第2の圧電素子駆動部23の駆動を交互に行い、両者の合計の変位体積の駆動時の変化率を、第1の圧電素子駆動部13のみの変位体積の変化率よりも低くすることが好ましく、実際、そのようにして圧電素子駆動部の駆動を行うことができる。
【0025】
先ず、第2の圧電素子駆動部23の駆動を行うと、図6に示されるように、圧電素子3がインク流路12を隔離する隔壁に向かって変形する。このとき、駆動波形は、図8(B)に示すようになる。次いで、第1の圧電素子駆動部13の駆動を行うと、図7に示されるように、圧電素子3がインク流路12に向かって変形する。このとき、駆動波形は、図8(A)に示すようになる。図8(A)及び(B)の駆動波形のグラフから理解されるように、これらの2つの駆動波形を合成すると、それぞれの電圧のロスが相殺され、本発明の効果につながるところの一定の電圧を得ることができる。
【0026】
次いで、本発明による圧電素子セグメントを実際に製造した例について説明する。
【0027】
例1
PNN系セラミック材料を成形して膜厚30μm の圧電素子形成性グリーンシートを得る。次いで、得られたグリーンシートの一部について、その両面のうち第1及び第2の圧電素子駆動部となる部分に銀−パラジウム系合金のペーストを選択的に印刷して電極パターンを形成した。それぞれの面において、64個の、幅70μm 、長さ2mm及びピッチ140μm の電極が形成された。このようにして形成された電極付きのグリーンシートを4枚と電極を有しないグリーンシートをアルミナ基板上に積層し、プレス加工した。得られた積層体を大気中で1000℃で焼成した後、切断及び研磨した。所望とする圧電素子部材が得られた。
【0028】
別に、ステンレス鋼板をプレス加工して、32本の、幅150μm 、深さ150μm 、長さ2.2mm及びピッチ280μm の溝(インク流路+圧力室)をその鋼板の片面に形成した。先に作製した圧電素子部材と組み合わせて使用可能なインク流路部材が得られた。
引き続いて、上記のようにして作製した圧電素子部材とインク流路部材を圧電素子駆動部とインク流路を突き合わせて接合し、圧電素子セグメントとした。本例の接合には、膜厚30μm のドライフィルムレジストを部材間に介在させて熱溶着を行う技法を採用した。
【0029】
得られた圧電素子セグメントの前面にノズル部材(厚さ80μm 、ノズル径30μm 、ノズル数32)を接着剤で接合し、さらに、インク供給系及び配線を取り付けた。このようにして、目的とするノズル数32のインクジェットヘッドが完成した。
さらに、上記した手法を繰り返して、ノズルの数が1個、3個、5個、10個、そして20個のインクジェットヘッドも製造した。得られた都合6種類のインクジェットヘッドについて、クロストークの発生の程度をノズルから噴射されるインクの粒量の比を基準として評価した。単ノズル駆動と32ノズル駆動とで、インクの粒量の変化は約8%であり、無視し得る程度であることが判明した。参考のため、それぞれのノズルについて得られた結果を添付の図9にプロットする。また、最も騒音が大きくなる可能性のある32ノズル駆動時の発生音をノズルから1m離れた距離で測定したところ、80デシベルであり、静音化が達成されたことが判明した。
【0030】
例2(比較例)
前記例1に記載の手法を繰り返した。しかし、本例では、比較のため、圧電素子部材に第2の圧電素子駆動部を組み込むことを省略した。得られた都合6種類のインクジェットヘッドについて、クロストークの発生の程度をノズルから噴射されるインクの粒量の比を基準として評価した。単ノズル駆動と32ノズル駆動とで、インクの粒量の変化は約35%であり、前記例1の評価結果に比較して大幅なクロストークの増加のあることが判明した。参考のため、それぞれのノズルについて得られた結果を添付の図9にプロットする。また、最も騒音が大きくなる可能性のある32ノズル駆動時の発生音をノズルから1m離れた距離で測定したところ、90デシベルであり、これも前記例1の結果に比較して著しく劣ることが判明した。
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、ノズル部材及び圧電素子部材とともにヘッドを構成するインク流路部材のインク流路の下に従来の技法に従って圧電素子駆動部を配置することの他に、今までは非圧電部として利用されていなかった、インク流路どうしを分離する隔壁の下の領域にも、電極、すなわち、追加の圧電素子駆動部を配置したので、圧電素子領域の全体において圧電素子の変形のバランスをとることができ、よって、ノズル駆動数による変位のばらつきをなくすことができ、さらに、素子の反りをなくすことで、インク粒量の変化及び発生音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のインクジェットヘッドの構成を示す展開図である。
【図2】図1に示したインクジェットヘッドの要部を示す断面図である。
【図3】図2に示したインクジェットヘッドにおけるインク吐出のメカニズムを示す断面図である。
【図4】本発明によるインクジェットヘッドの好ましい1例を示したヘッド要部の断面図である。
【図5】本発明によるインクジェットヘッドのもう1つの好ましい例を示したヘッド要部の断面図である。
【図6】図4に示したヘッド要部における第2の圧電素子駆動部の電圧印加時の挙動を示した断面図である。
【図7】図4に示したヘッド要部における第1の圧電素子駆動部の電圧印加時の挙動を示した断面図である。
【図8】図6及び図7に示した電圧印加時の挙動を駆動波形に関して示したグラフである。
【図9】本発明のヘッドと従来技術のヘッドとをクロストークに関して比較した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…圧電素子部材
2…基板
3…圧電素子
5…電極
10…インクジェットヘッド
11…インク流路部材
12…インク流路
13…圧電素子駆動部
14…インク供給路
15…インク供給口
21…ノズル部材
22…ノズル
23…追加の圧電素子駆動部
30…圧電素子駆動部
31…非圧電部
Claims (2)
- 隔壁によって互いに隔離された複数本のインク流路を有するインク流路部材と、前記インク流路部材の端面に接合されたものであって、それぞれのインク流路に連通したインク噴射のためのノズルを有するノズル部材と、前記インク流路部材の1つの主たる表面に接合されたものであって、印字時、含まれる圧電素子の変位により前記インク流路内のインクに圧力をかけて前記ノズルから噴射させることが可能な圧電素子部材とを含み、その際、前記圧電素子部材が、前記インク流路に対応して配置された複数個の圧電素子駆動部を含みかつそれぞれの圧電素子駆動部が、少なくとも1個の、一対の電極に挟まれた圧電素子を有しているようなインクジェットヘッドにおいて、
前記圧電素子部材が、前記インク流路部材の隔壁の下方の前記圧電素子駆動部が含まれない領域において、追加の圧電素子駆動部をさらに有し、
印字時、前記インク流路に対応する圧電素子駆動部及び前記インク流路の隔壁に対応する追加の圧電素子駆動部を交互に駆動して、
これらの2つの圧電素子駆動部の駆動による前記圧電素子の変位量を前記インク流路に対応する圧電素子駆動部の駆動による前記圧電素子の変位量よりも小さくすることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記インク流路に対応する圧電素子駆動部の駆動波形と前記インク流路の隔壁に対応する追加の圧電素子駆動部の駆動波形が、それらを合成した時、一定電圧の波形を示すことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
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