JP3705045B2 - ロボット教示データの作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータシミュレーションによるロボット教示データの作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ロボットに所定の動作をさせるためのロボット教示データ(以下、単に、教示データと称する)は、コンピュータシミュレーションにより作成されるようになってきている。コンピュータシミュレーションによる教示データの作成は、ディスプレイにグラフィック表示されたロボットを実際の作業と同じように動作させて作成するものである。したがって、グラフィック表示されたロボットにはどのような動作をさせても安全であり、また、実機による教示と比較して格段に速く教示データを作成することができる。このシミュレーションによる教示データの作成は、特に、数十台もの多くのロボットを稼動させている工場などで、1台1台、実機により教示させるよりも格段に速く教示データを作成することができることから、多く用いられている。なお、コンピュータシミュレーションによる教示データの作成をオフラインティーチングと称する。
【0003】
図5は、従来のオフラインティーチングによるロボットに設けられているエンドエフェクタ先端の動作軌跡の一例を示す図面である。
【0004】
従来のオフラインティーチングでは、ロボットの動作をそのまま教示している。したがって、ロボットに設けられているエンドエフェクタの先端は、図示するように、原点(不図示)から、(1)アプローチ点、(2)作業点A、(3)ニゲ点、(4)アプローチ点、(5)作業点B、(6)ニゲ点(エスケープ点)、の順で移動するように教示される。ここで、作業点AおよびBはワークWと接触する必要がある場合、教示接触点となる。例えばエンドエフェクタとして溶接ガンを持たせた溶接ロボットの場合は、ワークと溶接ガンとが接触する溶接ポイントが教示接触点となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
オフラインティーチングでは、出来上がった教示データを実機に投入して、実機によりその動作を確認する作業が必要である。これはシミュレーションの精度にもよるが、通常、実機において生じる僅かな撓みやずれは、シミュレーション計算だけでは完全に再現できないため、実機によって細かな修正作業を行っている。
【0006】
この実機による動作確認の際、最初にロボットを動作させるときには、ロボットとワークとの干渉を恐れて、当たり方向(図中アプローチ点から作業点へ移動させる方向(矢印III方向))への動作を必要以上に遅くし、多くの時間を要してしまうと言った問題があった。これは、特に図示したように、当たり方向に対して垂直面Wtを持つワークWでは、この垂直面Wtとの干渉を恐れる余り、移動、停止を繰り返しながら極僅かずつ動作させて、当たるか当たらないかを確認しながらの作業となっているのが現状である。
【0007】
このような作業は、作業者に大きな負担となっており、始めから作業者による手動操作で、実機による教示を行った方がよいとまで言われている。しかし、これは1台のロボットを見てのことであり、数十台ものロボットがある場合、1台1台実機により教示していたのでは到底オフラインティーチングによる作業効率にかなうものではない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、オフラインティーチング後の実機での確認作業が容易なものとなる教示データの作成方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記する手段により達成される。
【0010】
(1)ロボット教示データを、コンピュータシミュレーションにより作成するための方法であって、シミュレーションにより教示されたワークとロボットとが接触する教示接触点の代わりに、前記教示接触点の直前の教示点であってワークと干渉しない位置に設定されるアプローチ点または前記教示接触点の直後の教示点であってワークと干渉しない位置に設定されるニゲ点を仮想接触点として設定することを特徴とするロボット教示データの作成方法。
【0013】
(2)前記仮想接触点は、前記コンピュータシミュレーションによりロボットの動作が再現されて教示接触点が教示されたときに、作成されるロボット教示データ内の前記教示接触点に置き代わって設定されることを特徴とする。
【0014】
(3)前記仮想接触点は、任意に解除することができることを特徴とする。
【0015】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、ワークと接触する教示接触点の代わりに、前記教示接触点の直前の教示点であってワークと干渉しない位置に設定されるアプローチ点または前記教示接触点の直後の教示点であってワークと干渉しない位置に設定されるニゲ点を仮想接触点としたので、新たにワーク外の仮想接触点の設定が不要であり、簡単に仮想接触点を設定することができる。そして仮想の接触点を設けたので、実機により教示データを再生するときには、この仮想接触点へロボットが動作するため、実際のワークと接触することはなく、安心して、実機による動作確認作業を行うことができる。
【0018】
請求項2記載の本発明によれば、仮想接触点はコンピュータシミュレーションによりロボットの動作が再現されて教示接触点が教示されたときに、作成されるロボット教示データ内の教示接触点に置き代わって設定されるようにしたので、シミュレーションによりロボットの動作を再現するときに、一々仮想接触点を教示する必要はない。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、仮想接触点は任意に解除することができることとしたので、仮想接触点の解除により、もともと教示されている教示接触点へ、そのまま実機を動作させることも可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、ロボット教示データ作成装置を説明するための機能ブロック図である。
【0022】
この装置は、所定のシミュレーションプログラムによって教示データを作成するシミュレーション部11、シミュレーションに必要なCADデータ(例えば、ロボットのデータ、ワークのデータ、作業現場のレイアウトデータ等)を記憶したCADデータ記憶部12、教示データを記憶しておく教示データ記憶部13よりなる。
【0023】
なお、図1では、本発明の理解のために、装置構成をその機能でブロック化して示したが、このような装置は、実際にはエンジニアリングワークステーション(EWS)などと称されているコンピュータによって実施される。したがって、シミュレーション部11は、EWSが教示データの作成に必要なシミュレーションプログラムを実行することによって実施される。また、各記憶部12、13は、例えばEWSに内蔵または接続されているハードディクやその他の記憶媒体である。
【0024】
図2は、本発明を適用したオフラインティーチングによる教示データの作成手順を示すフローチャートであり、図3はこの手順により作成される教示データの一例を示す図表であり、図4はこの手順により作成された教示データによるロボットのエンドエフェクタ先端の動作軌跡を示す図面である。なお、ここでは6軸ロボットの教示データを作成している。また、図3においては、各教示点ごとのロボット各軸の角度値と作業指示のみを示すが、実際の教示データにおいては、この他に、例えば速度情報なども含まれている。)
オフラインティーチングの手順は、図2に示すように、まず、シミュレーション部11が教示するロボットのデータ、作業を行うワークのデータ、および作業現場のレイアウトデータなどを取り込み(S1)、続けて、実機によるタッチアップデータを取り込む(S2)。タッチアップデータは、作業点と同じような位置にピンを立て、このピンに対して実機ロボットのエンドエフェクタ先端を接触させる動作を、ピンに対して何箇所かの方向から実施して、そのときのロボット各軸の位置データを取得するものである。
【0025】
続いて、取り込んだデータをもとに、シミュレーションによってロボットのキャリブレーションを行う(S3)。このキャリブレーションは、シミュレーションロボットをタッチアップデータを取得したときと同じ姿勢にして、実機での各軸の位置データと、シミュレーションロボット各軸の位置データとを比較して、シミュレーションロボットの位置データを補正をするものである。
【0026】
このような実機によるタッチアップデータの作成とシミュレーションにおけるキャリブレーションは、実際のロボットがその自重やエンドエフェクタの重さなどによって撓みが生じ、それにより位置が微妙にずれたりしたときの状態を、シミュレーションによるロボットで再現するための処理である。
【0027】
キャリブレーション終了後、実際に作業を行わせれるための教示データをシミュレーションにより作成する(S4)。これは、ディスプレイにグラフィック表示されているロボットを動かして、作業をシミュレーションし、そのときの動作経路(アプローチ点、作業点(教示接触点)、ニゲ点など)、作業点における作業指示、および各軸の動作速度などを記憶して教示データとする。なお、ここで教示接触点は作業点のみである。
【0028】
この段階で作成された教示データは、図3Aに示すように、ワークと接触する作業点も含め全ての教示点のデータが作成される。
【0029】
続いて、教示された教示接触点である作業点を、これに代わる仮想接触点としての仮想作業点に置き換える(S5)。ここでは、仮想作業点(仮想接触点)の位置としてアプローチ点の位置をそのまま用いる。また、仮想作業点には、これに対応する実際の作業点での作業指示などを対応させておく。すなわち、仮想接触点は、教示接触点とロボットが動作するための座標位置が異なるのみで、その他の条件や設定は同じになるようにしておく。
【0030】
この段階で作成された教示データは、図3Bに示すように、それぞれ仮想教示点(2´)および(5´)として、作業点の直前の教示点であるアプローチ点(1)および(4)のデータに置き換えられ、かつ、作業点に対する作業指示はそのままである。
【0031】
教示接触点が仮想接触点に置き換えられた教示データは、完成した教示データとして教示データ記憶部13に記憶する。そして、記憶された教示データは、教示データ記憶部13から実機へダウンロード(出力)される(S6)。
【0032】
上記手順により作成された教示データによりロボットを動作させると、図4に示すように、ロボットに取り付けられているエンドエフェクタの動作軌跡は、図示するように、作業原点(不図示)から(1)アプローチ点まで進んだ後、(2´)仮想作業点(仮想接触点)へ移動するが、ここで、仮想作業点はアプローチ点と同じ位置であるので、この位置でロボットは停止した状態となる。そして、仮想作業点において作業指示通りの作業を行う。作業終了後、(3)ニゲ点へ移り(ここではアプローチ点と同じ位置)、次の(4)アプローチ点、(5´)仮想作業点(仮想接触点)、(6)ニゲ点へと順次動作する。
【0033】
実機での動作確認は、この段階で行われる。したがって、この確認作業のときワークとロボットが接触することはない。このため、従来のように、ワークWとの干渉を気にして、動作を極端に遅くしたりせずにすむ。
【0034】
このようにして動作確認が行われた後は、仮想作業点の位置を実際の作業点まで変更するために、教示データの修正が必要である。この修正は、オフラインティーチングによる教示データによってロボットをアプローチ点まで動作させ、そこから、通常の実機を用いたティーチング作業と同じように、接触点である作業点までロボットを移動させる。このとき、作業指示などは仮想作業点として既に指令されているので、変更する必要はなく、あくまで位置の修正のみでよい。
【0035】
この修正作業後の教示データは、図3Cに示すように、作業点のデータが実際の作業点位置に修正されている。
【0036】
これで、完全な教示データが完成するが、通常、このあと動作確認作業は不要となる。なぜなら、ロボットの全体的な動作は、接触点への教示前に行われており、また、接触点への教示は、実機によるティーチング作業であるため、ティーチング中に最適な動作とされているためである。
【0037】
以上のように、本実施形態では、オフラインティーチングによって作成された教示データは、教示接触点をワーク外に位置する仮想接触点へ置き換えているため、必ず実機による修正作業が必要となる。しかし、この作業は、従来のように、ワークと干渉するかしないか分からない状態でロボットが自動で動いてしまうのと比較すると、作業者にとっては作業者自信がロボットを手動操作しているため、非常にやり易く、不安感や負担が少ない。このため、作業スピードは従来の確認作業よりも速くなる。また、その他の動作軌跡はオフラインティーチングにより行われているため、教示するロボットの台数が多い場合でも、全ての動作を実機で教示した場合と比較して、格段に速く教示データの作成が可能である。
【0038】
以上、本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0039】
例えば上述した手順においては、オフラインティーチングの際に、実際の作業点である教示接触点を入力したうえで、これを仮想接触点へ置き換えているので、入力された教示接触点を使用するか、または仮想接触点を使用するかを選択するようにしてもよい。これにより、例えばワークとの干渉の心配がなければ、仮想接触点を用いることなくオフラインティーチングのデータをそのまま実機で再生して、後から修正しなくてもよいようにできる。
【0040】
上述した手順では、仮想接触点としてアプローチ点を用いたが、ニゲ点を用いてもよい。これは、実機での修正作業を考慮した場合、修正作業が一方向のみの移動で済むようにすることが好ましい。すなわち、図3においてIII方向の移動のみで、実際の作業点へ移動できるような位置に設けることが好ましい。その意味で、アプローチ点またはニゲ点が設定されている場合、通常、これらの点は、ワークとの接触点となる作業点に対し一方向に平行移動する位置にあるため最も好ましい。
【0041】
さらに、上述の手順では、オフラインティーチング後、教示データの中の教示接触点をアプローチ点へ移動する処理(ステップS5)を一連の処理として含んでいるが、このステップS5の処理は別個に行われてもよい。例えば従来からある方法によりオフラインティーチングによって教示データを作成し、または既に作成されたオフラインティーチングによる教示データを用いて、実機での動作の前に、これら教示データの中の教示接触点をアプローチ点へ移動する処理を実施する。これにより、上記実施形態同様に、実機による動作確認作業ではワークとの干渉を避けることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、エンドエフェクタに溶接ガンの用いた例を説明したが、本発明は、このような例に限定されるものでないことはいうまでもなく、例えばワークを把持するハンドや、各種計測に使用するプローブなどを取り付けたロボットなどでも好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ロボット教示データ作成装置の機能ブロック図である。
【図2】 本発明を適用した実施形態に係るロボット教示データの作成手順を示すフローチャートである。
【図3】 上記ロボット教示データの作成手順によって作成されるロボット教示データ(ロボット各軸の角度値と作業指示)の一例を示す図表である。
【図4】 上記ロボット教示データの作成手順によって作成された教示データによるロボットの動作経路を示す図面である。
【図5】 従来の方法により作成されたロボット教示データによるロボットの動作経路を示す図面である。
【符号の説明】
11 シミュレーション部
12 CADデータ記憶部
13 教示データ記憶部
W ワーク
Wt ワークの垂直面
Claims (3)
- ロボット教示データを、コンピュータシミュレーションにより作成するための方法であって、
シミュレーションにより教示されたワークとロボットとが接触する教示接触点の代わりに、前記教示接触点の直前の教示点であってワークと干渉しない位置に設定されるアプローチ点または前記教示接触点の直後の教示点であってワークと干渉しない位置に設定されるニゲ点を仮想接触点として設定することを特徴とするロボット教示データの作成方法。 - 前記仮想接触点は、前記コンピュータシミュレーションによりロボットの動作が再現されて教示接触点が教示されたときに、作成されるロボット教示データ内の前記教示接触点に置き代わって設定されることを特徴とする請求項1記載のロボット教示データの作成方法。
- 前記仮想接触点は、任意に解除することができることを特徴とする請求項1または2記載のロボット教示データの作成方法。
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