JP3704037B2 - スライディング可能な機能性キメラ分子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スライディング可能な機能性キメラ分子に関する。より具体的には、本発明は、スライディング可能な分子または該分子に対し結合親和性をもつ領域と、任意の機能性領域とを含むキメラ分子に関する。
本発明はまた、上記キメラ分子またはこのキメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクターに関する。
【0002】
本発明はまた、スライディング可能な分子とキメラ分子との複合体に関する。本発明はさらに、上記キメラ分子、複合体または発現ベクターを有効成分として含む医薬組成物に関する。
本発明はさらに、上記キメラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸を切断する方法、あるいは標的核酸の生物学的機能を解明するための方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
1980年代にチェックおよびアルトマンによって発見された、触媒機能をもつRNAを一般にリボザイム(ribozyme: ribonucleic acid + enzyme)と称する。その発見以来様々な種類のリボザイムが見出され、RNAという分子の生物進化上の意義が重要視されることになった。一方、人工的に開発、改良がリボザイムに加えられ、現在ではわずか約30残基ほどのRNAで、任意のRNA鎖を部位特異的に切断できるようになった(O.C. Uhlenbech (1987) Nature 328:596-600; J. Haseloff and W.L. Gerlach (1988) Nature 334:585-591; F. Eckstein and D.M.J. Lilley (eds) (1996) Catalytic RNA, Nucleic Acids and Molecular Biology Vol. 10, Springer-Verlag Pressなど)。リボザイムは基質特異性が非常に高く、アジドチミジンやチオ化アンチセンスDNAなどと違い細胞内での非特異的作用はない。このことから、癌やエイズなどを標的とする遺伝子治療に向けた応用研究が世界中で盛んに行われている(F. Eckstein and D.M.J. Lilley, 上掲; N. Sarver et al., (1990) Science 247:1222-1225; J. Ohkawa et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11302-11306; S. Altman (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10898-10900など)。また、リボザイムを用いて特定の標的遺伝子の発現を制御することで、未知の作用を持つ遺伝子産物の機能を解明したり、細胞内での相互作用を探索する研究上での非常に有効な方法ともなっており、分子生物学の基礎研究においても大きな成果を上げている(H. Kawasaki et al., (1998) Nature 393:284-289など)。
またリボザイム以外にも、アンチセンスやアプタマーなどの機能性核酸を遺伝子治療に役立てるための研究も現在世界中で行われている。
【0004】
ハンマーヘッド型リボザイム(Rz)は最も小さい触媒RNAに属する(Symons, R. H., Ann. Rev. Biochem., 61: 641-671 (1992))。それらは潜在的治療剤として試験されており、またそれらの作用機構も研究されている(Symons, R. H., Ann. Rev. Biochem., 61: 641-671 (1992); Zhou, D.-M. & Taira, K., Chem. Rev. 98: 991-1026 (1998); Eckstein F. & Lilley D. M. J. (eds.) Catalytic RNA, Nucleic Acids and Molecular Biology, vol. 10 (Springer-Verlag, Berlin, 1996))。これらのRNAは特定の部位〔即ち、NUX配列(N及びXはそれぞれA, G, C又はU、及びA, C又はUである。)の後ろ、最も効率的な切断はGUCトリプレットの後ろ〕でオリゴヌクレオチドを切断可能である(Shimayama, T., Nishikawa, S. & Taira, K., Biochemistry 34: 3649-3654 (1995))。したがって、特定のRNA分子を切断できる人工エンドヌクレアーゼとして使用するために、30個程度のヌクレオチドからなるRNA分子を作製できる(Haseloff, J. & Gerlach, W. L., Nature 334: 585-591 (1988))。これまで、リボザイムのin vivo使用に関する数多くの研究が行われ、種々の生物での遺伝子発現の抑制のためにリボザイムを利用することを目的とした多くの成功実験例が報告されている(Sullenger, B. A. & Cech, T. R., Science 262: 1566-1569 (1993); Yu, M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 699-703 (1995); Bertrand, E. et al., RNA 3: 75-88 (1997); Kawasaki, H., et al., Nature 393: 284-289 (1998); Kuwabara, T., et al., Nature Biotechnol. 16: 961-965 (1998); Kuwabara, T., et al., Mol. Cell 2: 617-627 (1998); Plehn-Dujowich, D. & Altman, S., Proc. Natl. Sci. Acad. USA 95: 7327-7332 (1998); Koseki, S., et al., J. Virol. 73: 1868-1877 (1999); Tanabe, T. et al., Nature 406: 473-474 (2000))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
遺伝子治療に期待されるような高い効果を得るためには、細胞内でどれだけ機能性核酸がその活性を発揮できるかどうかにかかっている。細胞内では、mRNAは絡み合った高次構造をとっているが、これは一本鎖のmRNA内に所々で相補的な塩基対(ステム構造)を形成するためである。mRNAを一本の毛糸にたとえると、その高次構造は静電気によって毛糸が所々でくっつき合い絡まっているような構造である。この絡まった毛糸(例えばmRNA)内にリボザイムの切断部位があると、さらにリボザイムと切断部位が結合する確率は低くなる。このため、in vitroで活性が確認されたリボザイムの多くが、in vivoで有効に機能できないという課題を抱えている。標的mRNAのコンピューターによる二次構造予測と、実際のmRNAの高次構造は必ずしも一致せず、長時間かけてリボザイムを構築してアッセイした結果、効率よいリボザイムを得ることに結局失敗することもよくある。mRNAの高次構造を何とかして計算、予測して、アンチセンスが結合しやすい箇所を探索しようとする研究も多く成されてきているが、どんな標的にも対応できる一般的なアプローチの樹立に成功した例は全くない。
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは、リボザイムを含む機能性核酸に、標的核酸との高い結合性、スライディング機能および核酸の高次構造をほどく、即ち巻戻す(unwinding)機能を付与することによって、絡まりあった複雑な核酸構造の内部に埋もれた部分であっても 効率よく標的を探し出して作用しうる高機能性核酸の創製に成功した。
【0007】
すなわち、本発明の一の目的は、スライディング可能な分子に対し結合親和性をもつ領域またはスライディング可能な分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子、あるいはスライディング可能な分子と任意の機能性領域とを含むキメラ分子、を提供することである。このようなキメラ分子を構成する領域は、高分子領域と低分子領域、高分子領域と高分子領域、低分子領域と高分子領域、低分子領域と低分子領域のいずれも包含する。
【0008】
本発明の別の目的は、上記キメラ分子またはこのキメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクターを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、上記キメラ分子とスライディング可能な分子との複合体を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、上記キメラ分子、複合体または発現ベクターを有効成分として含む医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、上記キメラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸を特異的に切断する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、上記キメラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸の生物学的機能を解明するための方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明を以下に要約する。
本発明は、スライディング可能な分子に対し結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供する。
本発明はまた、スライディング可能な分子と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供する。
【0011】
本発明はさらに、スライディング可能な分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供する。ここでスライディング可能な分子と複合体を形成する分子としては、例えばアダプターがある。
【0012】
本発明のキメラ分子は例えば、核酸、ペプチド核酸またはタンパク質あるいはそれらの組合わせである。また機能性領域は例えば、酵素もしくは触媒機能を有するか、または阻害機能もしくは亢進機能を有するものであり、このような機能のいずれかをもつ領域である。
【0013】
本発明の実施態様において、スライディング可能な分子に対し結合親和性をもつ領域またはスライディング可能な分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域は核酸である。スライディング可能な分子がタンパク質である場合、該タンパク質の例はDNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質などを含む。例えばこのようなタンパク質は、(DNAもしくはRNA)ヘリカーゼ、制限酵素、(DNAもしくはRNA)ポリメラーゼ、およびリプレッサーなどであるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の別の実施態様において、上記機能性領域はリボザイム、DNAエンザイム、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAおよびアプタマーからなる群から選ばれる機能性核酸である。リボザイムとしてはハンマーヘッド型リボザイムが好ましい。あるいは、機能性領域は制限酵素、抗体などの機能性タンパク質、生理活性物質、薬剤などの任意の物質を包含する。
【0015】
より具体的には、本発明のキメラ分子は、スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性をもつ核酸または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸と、任意の機能性核酸とを含むキメラ分子である。
【0016】
本発明において、スライディング可能な分子に対し結合親和性をもつ領域または該分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域は上記機能性領域に直接的にまたは間接的に結合している。間接的に結合する場合は、領域間に適する長さのリンカーまたはアダプターが存在しうる。
【0017】
本発明のさらに別の実施態様において、上記スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性をもつ領域または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域は、ヘリカーゼまたはそれと複合体を形成するタンパク質に対し結合親和性を有する核酸である。そのような核酸の具体例は、RNAヘリカーゼまたはそれと複合体を形成するタンパク質に対し結合親和性を有するCTE(constitutive transport element)または該CTEと実質的に同等の機能をもつ核酸、或いはポリ(A)からなる核酸である。ここで該CTEと実質的に同等の機能をもつ核酸の例は、in vitro selection法(SELEX法)で人工的に合成された核酸分子(RNAまたはDNA)である。具体的には、CTEは図2A(または配列番号1)に示される配列または該CTEと実質的に同等の機能をもつその変異体からなる。
【0018】
本発明は、別の態様において、上記のキメラ分子(DNAの場合)またはキメラ分子(RNAまたはタンパク質の場合)をコードするDNAを含む発現ベクターを提供する。
通常、上記キメラ分子または該キメラ分子をコードするDNAはプロモーターによって制御されている。このようなプロモーターの例は、tRNAプロモーター等のポリメラーゼIIIプロモーター、特にtRNAvalプロモーターまたはその変異体である。例えば、下記の二次構造(I)をとるRNAのヌクレオチド配列のヌクレオチド8〜14およびヌクレオチド73〜79の間で水素結合が形成される領域にバルジ構造が導入されたプロモーターまたはその変異体を挙げることができる。
【0019】
【化1】
【0020】
ここでバルジ構造とは、RNAがヘアピン構造をとった場合、塩基対が形成できずに二本鎖構造が突出している部分を指す。
本発明の発現ベクターにおいて、上記キメラ分子の下流にターミネーター配列をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の実施態様において、上記キメラ分子は、機能性RNA配列およびCTE配列を含む。機能性RNA配列は例えば、リボザイム配列、アンチセンスRNA配列およびアプタマー配列からなる群から選ばれるが、これらに限定されない。後述の実施例では機能性核酸としてリボザイムが使用されるが、本発明は、スライディング機能が付与された、任意の機能性領域(または機能性分子)を含むあらゆるキメラ分子を包含することを意図している。
【0022】
本発明は、さらに別の態様において、上記の発現ベクターDNAを鋳型にしてRNAを合成し、生成したRNAを回収することを含む、上記キメラ分子の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、さらに別の態様において、上記のキメラ分子と、上記のスライディング可能な分子との複合体を提供する。スライディング可能な分子の例はRNAヘリカーゼ、DNAヘリカーゼ等のヘリカーゼおよび他のタンパク質(例えば制限酵素、ポリメラーゼ、リプレッサーなど)である。本発明の具体例では該スライディング可能な分子はヘリカーゼであるが、これに限定されない。ヘリカーゼはアダプターを介してキメラ分子と結合しうる。
【0024】
本発明は、さらに別の態様において、上記のキメラ分子、複合体または発現ベクターを有効成分として含む医薬組成物を提供する。
医薬組成物は例えば、ウイルス性疾患、アポトーシス関連疾患または遺伝子発現異常に基づく疾患を予防または治療するためのものである。ウイルス性疾患は、例えばHIV、HCV、HBVを含む種々のウイルスを原因とする疾患である。
【0025】
本発明は、さらに別の態様において、上記のキメラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸を特異的に切断する方法を提供する。標的核酸は例えばRNAウイルス由来遺伝子、癌原遺伝子またはアポトーシス関連遺伝子である。
【0026】
本発明の別の態様において、本発明は、標的核酸の生物学的機能を解明するための、上記のキメラ分子、複合体または発現ベクターの使用を提供する。具体的には、本発明は、上記のキメラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸を特異的に切断するかまたは標的核酸の生物学的機能を特異的に阻害し、必要に応じて該核酸の切断部位およびその近傍の配列を決定し、該切断または該阻害が生物学的活性に及ぼす影響を調べることを含む、標的核酸の生物学的機能を解明するための方法を提供する。
【0027】
上記方法を用いることによって、何らかの表現型(例えば癌化が治癒または抑制されるとか、細胞が分化したとかなどの影響)が得られれば、その効果を発揮したリボザイム等の機能性核酸を単離、クローニングし、その配列を決定し、その配列を基に、その機能性核酸の標的となっていた遺伝子を決定することが可能となる。それにより、その標的遺伝子の機能を解明したり、新規の遺伝子を発見したりすることができる。
【0028】
本発明では、上述のとおり、いかなる機能性核酸も使用可能であるが、機能性核酸としてリボザイム、アンチセンスRNAまたはアンチセンスDNAが使用される場合、それらの基質結合部位はランダム化されていてもよい。例えばハンマーヘッド型リボザイムの場合、その基質結合部位であるステム(stem)IおよびステムIII領域がランダム化することができる。ここで「ランダム化」とは、核酸の基質結合部位の塩基において各塩基に対しA,T,G,Cすべての塩基が導入されたもののプールを作製することである。
【0029】
本明細書で使用する特定の用語について、以下に定義する。
スライディングとは、ある特定の分子がある別の分子上を移動することを意味する。本発明の実施態様では、スライディング機能をもつタンパク質に結合親和性を有するある種のDNAまたはRNA(mRNAを含む)などの核酸に機能性核酸を直接的にまたは間接的に結合することによって、該機能性核酸がスライディング可能なタンパク質を介して核酸上を移動することが可能となる。
【0030】
機能性領域とは、生体内または細胞内で特定の生物学的機能、例えば酵素機能、触媒機能(RNA鎖切断活性など)、(生物学的)阻害機能、(生物学的)亢進機能などの機能を有する領域をいう。そのような領域は例えば、リボザイム、DNAエンザイム、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、アプタマー、DNA酵素(金属を取り込んで酵素活性を発現する酵素)、制限酵素などである。
【0031】
リボザイムとは、触媒機能をもつRNAを指す。触媒機能とはRNAの特定の部位を特異的に切断する働きをいう。リボザイムの一種であるハンマーヘッド型リボザイムは、基質であるRNA(特にmRNA)と相補的塩基対を形成して結合し、NUH(NはA,G,C,Uであり、 HはA,C,Uである。いずれの組み合わせでもよいがGUCがもっともよく切断される。)配列の3’側でそのリン酸ジエステル結合を切断する(図4A)。本発明では、図4Aに示される構造のリボザイムが好ましく使用できるが、基質に相補的な部分の配列の長さおよび塩基配列は表示のものに限定されないものとする。
【0032】
アンチセンスRNAもしくはDNAとは、標的となるRNA(特にmRNA)またはDNAに相補的に結合し、それらの機能を阻害する核酸を言う。標的がmRNAの場合、アンチセンスRNAがmRNAに結合し、これによってタンパク質への翻訳が阻害される。
【0033】
アプタマーとは、ある特定のタンパク質に高い親和性をもって結合するRNA分子をいう。病原性の原因となるタンパク質に特異的に作用するアプタマーは、そのタンパク質の機能を細胞内で阻害できると考えられる。
【0034】
RNAまたはDNAヘリカーゼとは、一本鎖のRNAまたはDNA部分に結合し、RNA(特にmRNA)またはDNAの高次構造をほどく(即ち巻戻す)酵素であり、例えばヒトの場合どの細胞でも発現しているタンパク質である。
【0035】
CTE(constitutive transport element)とは、ウイルス構造タンパク質の発現およびパッケージングのために、スプライシングを受けていないゲノムRNAを細胞質に輸送するためのシス(cis)作用性ウイルスRNAを指す。本明細書中で使用する「CTEと実質的に同等の機能をもつ核酸」とは、CTEのようにRNAを細胞質に輸送する働きを有する核酸分子、およびRNAヘリカーゼ等のスライディングタンパク質と結合親和性をもつように人工的に創製された核酸分子(RNAおよびDNAなど)を意味する。また「CTEと実質的に同等の機能をもつその変異体」とは、RNAを細胞質に輸送する働きを有し、かつCTE配列において1個または複数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入を含むCTE変異体を意味する。CTEにはTAP(Tip-Associated Protein、ここでTipはtyrosine kinase-interacting proteinを意味する。)やRNAヘリカーゼAが結合することができる。
【0036】
ポリメラーゼIII(「pol III」ともいう)プロモーターは、リボザイム等の短いRNA分子の発現に適したプロモーターであり、tRNAプロモーター、レトロウイルス性LTRプロモーター、アデノウイルスVA1プロモーターなどが例示される。
ターミネーターとは、mRNA転写終結部分の遺伝子をいう。
【0037】
tRNAvalプロモーター(「tRNAval」ともいう)とは、pol IIIプロモーターの一種でありtRNA等の短いRNA分子の転写に関与するプロモーターを意味する。tRNAvalプロモーターは、その起源および配列に特に制限はないが、例えば配列番号8に示される配列(ヒト由来)又はその変異体(例えば3'末端側に1以上の塩基の変異を含む配列、例えば配列番号10のヌクレオチド番号(nt)1〜91の配列)、或いはそれらをコードするDNA配列からなることができる。
アダプターとは、物質同士を結合するときにその物質間に介在する1個または複数個の分子を意味する。結合は共有結合または非共有結合のいずれでもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明は、スライディング可能な分子に対し結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子;スライディング可能な分子と任意の機能性領域とを含むキメラ分子;およびスライディング可能な分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供する。
【0039】
具体的には、本発明は、スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性をもつ核酸または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸と、任意の機能性核酸とを含むキメラ分子を提供する。また本発明は、スライディング可能なタンパク質と任意の機能性核酸とを含むキメラ分子を提供する。
【0040】
本明細書中で使用する「機能性核酸」は、上記定義のとおり、生体内または細胞内で特定の生物学的機能を有するいずれの核酸(DNAまたはRNA)でもよく、例えばリボザイム、DNAエンザイム、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、アプタマー、DNA酵素(金属を取り込んで酵素活性を発現する酵素)などがあげられるが、これらに限定されない。後述の具体例では、機能性核酸としてリボザイム、特にハンマーヘッド型リボザイムが例示される。
【0041】
また、スライディング可能なタンパク質の例は、RNAヘリカーゼ、DNAヘリカーゼからなるヘリカーゼ、および、二本鎖DNAを切断するEcoRVなどの制限酵素などであるが、これらに限定されない。このようなタンパク質を機能性核酸に外因的にまたは内因的に結合できれば、機能性核酸をDNAまたはRNA上をスライディング(即ち、移動)させることが可能となる。特にヘリカーゼが機能性核酸に結合するときには、機能性核酸は標的核酸の高次構造をほどきながらその核酸上をスライディングすることができる。本発明においては、スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性をもつ核酸配列を任意の機能性核酸配列と結合したキメラ分子を作り、例えばこのキメラ分子をマイクロインジェクションなどの方法で直接的に細胞内に導入したり、あるいはキメラ分子をカチオン性リポソームに封入し細胞内に導入したり、あるいはウイルスベクター等のベクターに組み込んだものを細胞に感染させ導入することによって、該キメラ分子を宿主細胞内で発現させ標的核酸に作用させることができる。本発明のキメラ分子は、ヘリカーゼ等のスライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性を有しているため、細胞内に導入後、細胞内で該タンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子と複合体を形成し標的核酸上をスライディングし、これにより機能性核酸は標的核酸上のその作用部位で作用することが可能となる(図1参照)。特に該タンパク質がヘリカーゼの場合、標的核酸の高次構造をほどきながら核酸上をスライディングするため、機能性核酸は標的に対し効率的に作用できる。
【0042】
本発明で使用される「スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性を有する核酸」または「スライディング可能なタンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性を有する核酸」は例えば、ヘリカーゼまたはそれと複合体を形成する分子と結合親和性を有する核酸、好ましくはRNAヘリカーゼまたはそれと複合体を形成する分子(アダプター)と結合親和性を有する核酸、例えばRNAヘリカーゼ Aと結合するCTE(constitutive transport element)と呼ばれる約170塩基のRNA配列(図 2A;配列番号1)、ポリ(A)配列、人工的に作られたRNAまたはDNAなどであるが、これらに限定されない。CTEはMason-Pfizer monkey virus (MPLV)などのサルD型レトロウイルスが本来もっているRNAであり、これらのウイルスはスプライシングを受けないRNAを核外輸送するためにこのCTEというRNAモチーフをもっていると考えられている(H. Tang et al., (1997) Science 276:1412-1415; J. Li et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:709-714; H. Tang et al., (1999) Mol. Cell Biol. 19:3540-3550)。本発明の好適な実施態様においては、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性を有するRNAは、上記CTE、または該CTEと実質的に同等の機能をもつRNA、または該CTEと実質的に同等の機能をもつ図2Aに示されるCTE配列の変異体である。ここで「CTEと実質的に同等の機能をもつRNA」とは、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子と結合親和性をもつCTE以外の分子、例えばSELEX法で人工的に作ったヘリカーゼに結合するアプタマーなどの分子を意味する。また「変異体」とは1個または複数個のヌクレオチドの改変(置換、欠失、付加または挿入)を意味する。このような改変は、J. Sambrook et al,Molecular Cloning A Laboratory Mannual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)などの一般的文献に記載される方法によって実施可能である。
【0043】
理論に拘束されるつもりはないが、CTE配列をリボザイムに連結したキメラ分子あるいは該キメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすると、細胞内で発現されたCTE配列にはRNAヘリカーゼ が結合するので、RNAヘリカーゼ結合リボザイムが細胞内で形成され、そのヘリカーゼが標的mRNAの一本鎖部分に結合し、RNA鎖上をスライディングしながら高次構造をほどき、一方リボザイムが標的のRNA鎖の内部に埋もれた切断部位を認識し、その部位を切断すると考えられる。
【0044】
本発明の後述の具体例では、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸がCTE又はポリ(A)であり、機能性核酸がリボザイムである。そして、この場合スライディング可能なタンパク質はRNAヘリカーゼである。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるべきではない。すなわち、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸ならばいかなるものでもよいし、また機能性核酸もリボザイムに加えてアンチセンス、アプタマーなどのいずれの機能性核酸も使用可能である。
【0045】
本発明のキメラ分子は、通常、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸配列と任意の機能性核酸配列とを直接的または間接的に結合したものからなり、例えばDNA/RNA合成機(例えばApplied Biosystems社製のモデル394など)を使用することによって化学合成することができる。両核酸配列の結合の仕方としては、上記スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性をもつ核酸配列が上記機能性核酸配列の上流側にあってもよいしあるいは下流側にあってもよいが、好ましくは機能性核酸配列の下流側に、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸配列が結合される。これによって例えばリボザイム等の機能性核酸の活性効率がより向上する。
【0046】
本発明はまた、上記キメラ分子またはこのキメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクターを提供する。発現系を構築するためのベクターとしては、pUC19(宝酒造、京都)、pGREEN LANTERN(ライフテックオリエンタル(株)、東京)、pHaMDR (HUMAN GENE THERAPY 6:905-915 (July 1995))などのプラスミドベクター、遺伝子治療用ベクターとしてのアデノウイルスベクターやレトロウイルスベクターなどを使用できる。
【0047】
上記ベクターにおいて、キメラ分子の上流にはプロモーター配列を含むことができる。プロモーター配列は、該キメラ分子の発現を調節する要素であり、ウイルスプロモーター(SV40プロモーターなど)、ファージプロモーター(λPLプロモーターなど)、pol IIIプロモーター(ヒトtRNAプロモーター(例えばtRNAvalプロモーター)、アデノウイルスVA1プロモーターなど)などが含まれる。本発明では、pol IIIプロモーター、特にtRNAプロモーターが好ましく使用できる。
【0048】
また本発明のベクターにおいては、キメラ分子の下流にターミネーター配列をさらに含むことができる。ターミネーターは、転写を終結させる配列であれば、いずれの配列も使用できる。後述の実施例では、ターミネーター配列としてUUUUUが使用された。ベクターは、必要に応じて抗生物質耐性遺伝子(例えばAmpr, Neor)、栄養要求性を相補する遺伝子などの選択マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子を含むことができる。
【0049】
さらに本発明のベクターにおいて、機能性核酸配列は機能性RNA(例えばリボザイム、アンチセンス、またはアプタマー)配列が好ましく、またスライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸配列はCTE配列又はポリ(A)配列が好ましく、したがって好ましいキメラ分子は機能性RNA配列およびCTE配列又はポリ(A)配列を含む。
【0050】
本発明のキメラ分子は、DNA/RNA合成機により化学合成してもよいし、あるいは上記発現ベクターDNAを鋳型にしてDNA依存性RNAポリメラーゼ酵素の存在下にRNAを合成し、生成したRNA、即ちキメラ分子、を回収することによっても得ることができる。また、本発明の発現ベクターは細胞内に導入される場合には、相同組換えにより染色体上に組み込まれた後、キメラ分子を発現することができる。相同組換えを起こすために、宿主細胞ゲノムの一部と相同な配列の内部にキメラ分子をコードするDNAを挿入したものをベクターDNAに組み込むことができる。染色体への組込みは、遺伝子治療法で使用されるようなアデノウイルスベクターやレトロウイルスベクターだけでなく、プラスミドベクターによっても行うことができる。
【0051】
本発明はさらに、上記キメラ分子とスライディング可能なタンパク質との複合体も包含する。キメラ分子は好ましくはリボザイム配列とCTE配列又はポリ(A)配列からなるものである。またスライディング可能なタンパク質は好ましくはヘリカーゼ、特にRNAヘリカーゼである。結合は、各成分の機能を損なわない限り、共有結合または非共有結合のいずれでもよい。非共有結合の場合には、ヘリカーゼに特異的に結合するアダプターを介してCTE又はポリ(A)配列に結合することができる。また共有結合の場合には、必要によりリンカーを介して結合することができる。
【0052】
本発明はさらに、上記キメラ分子、上記複合体または上記発現ベクターを有効成分として含む医薬組成物を包含する。該組成物は、必要により医薬上許容される担体(例えば生理食塩水、緩衝液などの希釈剤)を含むことができる。本発明の医薬組成物の適用は、キメラ分子を構成する機能性領域の機能の種類に依存している。例えば機能性分子がリボザイム、アンチセンスおよびアプタマーである場合には、エイズウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス等のウイルスを原因とする疾患、アポトーシス関連疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病など)、癌、自己免疫疾患、炎症、遺伝子疾患などの疾患の予防または治療に有用である。アプタマーであっても、リボザイムと標的は同じである。本発明で使用される機能性核酸は、疾患の原因物質の核酸を切断したりまたは核酸に相補的に結合して機能阻害を起こしたり、病原タンパク質に特異的に結合して機能阻害を起こすことにより、原因物質の正常機能を損なわせることができる。キメラ分子またはそれをコードするDNAを含有するベクターを細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃による方法、リポソームによる方法(例えば中西守ら,タンパク質 核酸 酵素 Vol.44, No.11, 1590-1596 (1999))などの方法がある。ベクターを使用する場合には、ベクターを細胞に上記の方法で導入することができる。例えば疾患部位の細胞を一部取り出し、in vitroで遺伝子導入を行った後、該細胞を再び組織に戻すことも可能であるし、あるいは、疾患部の組織に直接ベクターを導入することもできる。ウイルスベクターで感染させる場合のウイルスタイターは通常約107pfu/ml以上である。
【0053】
本発明はさらに、上記キメラ分子、上記複合体または上記発現ベクターを用いて標的核酸を特異的に切断または標的核酸の生物学的機能を阻害もしくは抑制する方法を提供する。この場合、キメラ分子を構成する機能性核酸はリボザイムまたはアンチセンスである。この方法は、例えば標的核酸の生物学的機能を解明するためにも使用することができる。リボザイムの標的結合部位(stem IおよびIII)の配列をランダム化すると、ある種の生物学的機能に必要な遺伝子を解明することもできる。
【0054】
具体的には、細胞に上記のようなランダム化した標的結合部位をもつリボザイムをスライディングできるようにして導入する。例えば正常な細胞に導入した結果、癌化を引き起こしたり、あるいは異常な癌細胞に導入した結果、正常細胞に戻すことができたりした場合、これにより、癌化に関わる遺伝子を明らかにすることができる。必要に応じて、ジーンバンク等でその配列を調べることにより、その遺伝子の全配列および機能が解明できる。遺伝子が未知であった場合は、標的結合部位の配列を足がかりに標的となっていた遺伝子のクローニングを行うことにより全配列を決定できる。上記のランダムな配列がたとえ重要な遺伝子と相補的であったとしても、相手の高次構造のために、多くは標的と相互作用できず切断できないで終わってしまう。スライディング機能を付加することで、そのようなことが回避され効率が格段に向上する。
【0055】
以下において、機能性核酸としてリボザイム、スライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸としてCTE配列及びポリ(A)配列を例に取り上げて、本発明を説明する。
はじめに、高機能化リボザイムの実際の設計について説明する。
【0056】
まず問題となるのは、リボザイムの細胞内での発現方法である。リボザイムを細胞内に導入するには、大きく分けて二つの方法がある。一つは化学合成したRNA分子をカチオン性の脂質膜(リポソーム)などで包み、直接細胞内に導入する方法である。この方法では、細胞内に存在するRNA分解酵素に対して抵抗性を与えるために、RNAに様々な化学修飾を加える必要がある。もう一つの方法は、リボザイム配列をコードするDNAをプラスミドやウイルスベクター等を用いて導入し、細胞内のRNA転写系を利用してリボザイムを発現させる方法である。この方法では、持続的にリボザイムによる標的遺伝子の発現抑制効果が得られ、前者と比べて修飾が加えられていないので細胞毒性はない。リボザイムによる標的遺伝子の発現抑制効果は、リボザイムの転写量、安定性、転写された後の活性などによって、大きく左右される。そこで、これらと密接に関係している発現系を上手に選択し、効果的なリボザイム発現ベクターを構築することが重要となる。
【0057】
本発明者らは、リボザイムの発現系として、RNAポリメラ−ゼII系に比べて発現量が2〜3桁高いRNAポリメラ−ゼIII系を選択した。その発現のためには、RNAポリメラ−ゼIIIが認識するプロモ−タ−配列を、リボザイムの前に付加する必要がある(J. Ohkawa et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11302-11306など)。好ましいプロモーターとしてtRNAプロモーター、特にtRNAValプロモーターを見出し、これを作動可能にリボザイムに結合した。結合の仕方としては、例えばプロモーターの下流にリボザイムが配置されるように結合するのが好ましい。結合の仕方によってリボザイムの細胞内活性に大きな影響を与えるため、リボザイムの前にどのようにプロモーター配列を結合すればリボザイムの切断活性に影響を及ぼさないかを調べ、効果的なリボザイム発現ユニットの開発を行ってきた(S. Koseki et al., (1999) J. Viol. 73:1868-1877; T. Kuwabara et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891; T. Kuwabara et al., (1998) Mol. Cell 2:617-627)。その工夫により、発現したリボザイムのほとんどが細胞質に局在するように輸送されることが明らかとなっている。これによってリボザイムを標的であるmRNAと同様に細胞質に局在させることが可能となる。
【0058】
CTE 結合リボザイム
RNA 結合、スライディングおよびRNA 高次構造の巻戻し機能をもったRNAヘリカーゼをリボザイムと細胞内で結合させるために、CTEというRNA配列を導入することはすでに前述した。本発明者らはこのCTE配列をリボザイム配列の3'側とターミネーター配列との間に、短いリンカー配列を介して挿入した(図 2B)。 HIV-1のLTR領域を標的とした、このCTE付加型リボザイムおよび非付加型リボザイム発現ベクターを作成し、HeLa細胞中におけるルシフェラーゼを用いたモデル系でその効果を比較した。
【0059】
本発明者らは先に、HIV-1のTAR(trans activating region)を含んだLTR領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだLTR-ルシフェラーゼキメラ分子(配列番号2)を作成し、この遺伝子をゲノム中に組み込んだ形質転換HeLa細胞株(LTR-Luc HeLa)の樹立を行っている(図3A)(S. Koseki et al., (1998) J. Control. Release 53:159-173)。このLTR-ルシフェラーゼキメラ分子では、LTR領域中のTAR領域にTat(Trans-activating protein)タンパク質が結合することでその転写が促進され、その結果、下流にコードされているルシフェラーゼの発現が促進される(図3B)。つまり、このキメラ分子は、HIVの増殖に必須であるTARおよびTatを介したHIVの転写制御系をモデル化したものであり、実際のウイルスを用いなくてもウイルス増殖阻害効果を評価することができる簡易アッセイ系である。この細胞ではTatタンパク質発現ベクター(pCD-SRα/tat; Y. Takebe et al., (1988) Mol. Cell Biol. 8:466-472)を外から加えることで染色体中に含まれるLTR-ルシフェラーゼ遺伝子の発現が誘導される。この時、LTR-ルシフェラーゼ遺伝子またはTat遺伝子を狙ったリボザイムの発現ベクターを同時に加えると、その発現阻害効果をルシフェラーゼ活性により測定することができる。このようなレポーター遺伝子を用いたアッセイ系は、リボザイム等の阻害剤の効果をより定量的に測定することが可能であり、本発明者らの高機能化リボザイムの能力を評価するのに適していると考えられる。
【0060】
リボザイムの切断部位については、ハンマーヘッド型リボザイムは基質mRNAと相補的塩基対を形成して結合し、NUH(N: A, G, C, U; H: A, C, U, どの組み合わせでもよいがGUCをもっとも効率よく切断する。)配列の3'側でそのリン酸ジエステル結合を切断する(図 4A)。LTR-ルシフェラーゼキメラ分子中にはハンマーヘッド型リボザイムの切断可能部位がいくつも含まれている。前述の通り、リボザイムは基質RNA中の堅い高次構造の間に割って入り内部にあるNUH配列を切断する能力は非常に乏しく、比較的容易に相補的塩基対を形成できるループまたはステムループ中にあるNUH配列をその切断部位として好む。そこで、二次構造を比較的予測しやすい、転写開始点から300塩基について、LTR-ルシフェラーゼmRNAの構造をコンピューターを用いて予測した(図3B)。この5'領域のうち、アクセスし易いループまたはステムループ中にあるNUH配列を標的としたリボザイムと、およそリボザイムの切断部位にはむかない堅いステム中にあるNUH配列を標的としたリボザイムをそれぞれ設計した(実施例1及び2、図4Bなど)。それぞれの標的部位は図3B中に示した(配列番号22〜26)。LTR領域からの転写物にはTARと呼ばれるRNAモチーフが含まれている。TARはステムループ構造をしたRNAモチーフで、その機能および高次構造において非常によく研究されている。そのステムループ領域には20塩基対以上からなる長いステム領域が存在し、非常に強固な構造をとっていることが知られている。今回設計したリボザイムの内、TAR GUU Rz(図9のTAR Rz4と同一)、TAR Rz5 はこのTARの堅いステム領域にあるGUU配列、CUA配列を狙ったものである。これまでのリボザイムの常識では、このリボザイムは切断部位に結合できず、その切断効率は非常に低いものであると予測される。しかしながら、CTE配列をリボザイムにつなげることでRNAヘリカーゼがリボザイムに結合し、本発明者らの予想した通りにRNAヘリカーゼ結合リボザイムが機能するとすれば、TARの堅いステム領域を狙ったTAR GUU Rz、TAR Rz5も高い切断活性を示すことが期待される。そこで、本発明者らはこの5種類のリボザイムについて、CTEを付加したもの(CTE-Rz)と付加しないのも(Rz)の両方をそれぞれ図2Bに示したように作成し、細胞内で切断活性の比較検討を行った。
【0061】
CTE 結合リボザイムによる LTR- ルシフェラーゼキメラ分子の阻害活性
LTR-ルシフェラーゼmRNAに対するCTE付加型または非付加型リボザイムの細胞内活性は、前述の通りそれぞれのリボザイムを導入した細胞中におけるルシフェラーゼ活性を測定することで評価した。
【0062】
アッセイの方法は、まず無血清培地(OPTI-MEM-1)中のLTR-Luc HeLa 細胞(図 3A)に、Tat タンパク質発現ベクター(pCD-SRα/tat;Y. Tanabe et al., Mol. Cell Biol. 8:466-472 (1998)とCTE付加型または非付加型リボザイム発現ベクター(pCTE-Rz または pRz;図3A)を、リポフェクチン試薬を用いてトランスフェクションした。これらの細胞をCO2インキュベーター中で12時間インキュベートした後、血清入り培地(DMEM, 10% FCS)に培地交換し、さらに24時間インキュベートした。24時間経過後、細胞を溶解し、その細胞抽出液のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0063】
Tat タンパク質発現ベクターだけを細胞にトランスフェクションした場合のルシフェラーゼ活性を100%とし、測定結果を図5、図9に示した。結果は、図から明らかなように、CTEを付加したリボザイムはどれも非付加型リボザイムよりも高い阻害効果を示した。特に、TAR GUU Rz 、TAR Rz5は、TAR のステム領域を標的としており、野生型ではほとんどLTR-ルシフェラーゼ遺伝子の発現を阻害することができなかったのに対し、CTEを付加することでその活性が飛躍的に増加し高い阻害効果を示すようになった。TARの様に、堅い高次構造を形成しているRNAを効果的に切断するには、単なるRNA結合能の増加だけでなく、その高次構造をほどいてあげるサポートが必要である。TARを狙ったCTE-Rzにおける高い阻害効果は、RNA ヘリカーゼの巻戻し(unwinding)能がサポーターとしてリボザイムに加わったと考えれば説明しやすい。また、コントロールとしてリボザイムに変異を入れて不活性化したもの(TAR GUU IRz;図4A)やLTR-ルシフェラーゼmRNAを標的とはしていないリボザイム(No target Rz)についても同様にしてアッセイを行ったが、有意な阻害効果は得られなかった。このことから、CTE付加による副作用はほとんどなく、その作用はリボザイムに特異的であるといえる。
【0064】
またこの実験とは別に、本発明者らは他の数種類の遺伝子に対してもこのCTE-Rzを作成し、その切断効果を評価したところ、上記と同様の結果を得ることができた。図6、図10はその一例であるが、アポトーシス関連の重要な遺伝子の一つであるプロカスパーゼ(Procaspase)-3〔CPP32とも呼ばれ、Caspase-3の前駆体である。そのCaspase-3はアポトーシスで起こるクロマチンの断片化に関わるヌクレアーゼを活性化すると言われている。この例で使用したCPP32はマウス由来であるが、本発明ではヒトを含む他の動物由来のものも包含する。〕を標的としたリボザイムにCTEを導入したものである。この遺伝子に対しても10個のリボザイム(CPP Rz1〜CPP Rz10)を構築し、NIH3T3細胞にそれぞれのリボザイムを導入し、Procaspase-3タンパク質の発現量をウエスタンブロットで調べたものである。図6A、図10BはFITCラベルした二次抗体を用いたウエスタンブロットをフルオロイメージャーで読みとった結果で、図 6B、図10Cはその結果を定量化したものである。いずれの場合においてもCTEを付加することでその遺伝子発現阻害効果に著しい増加が見られた。この場合も、野生型のCPP-Rz5ではほとんど切断できなかったのに対して、CTEを付加することで高い阻害活性を示すようになった。一方、コントロールとして用いたActinの発現量には何ら影響が見られなかった(図6A、図10B)。このことから、CTE付加型および非付加型リボザイムによる副作用の問題は無く、この効果がProcaspase-3に特異的であるであることがわかる。
【0065】
ポリ( A )結合リボザイム
本発明の第二の例は、ハンマーヘッド型リボザイムの部位特異的切断活性と、内因性RNAヘリカーゼeIF4AIのスライディング及び巻戻し活性(Jankowsky, E. et al., Nature 403:447-451 (2000))とを組み合わせた新規のポリ(A)結合リボザイムである。
【0066】
ヘリカーゼにリボザイムを結合するために、リボザイムの3'末端に天然のRNAモチーフであるポリ(A)配列を付加した。このポリ(A)配列はポリ(A)結合タンパク質(PABP)及びPABPと相互作用するプロテイン-1(PIAP)との相互作用を介してRNAヘリカーゼeIF4AIと相互作用する(Craig, A. W. et al., Nature 392: 520-523 (1998); Gallie, D. R., Gene 216: 1-11 (1998); De Gregorio, E. et al., EMBO J. 18: 4865-4874 (1999))。
【0067】
リボザイムは特定の遺伝子の発現の抑制のための潜在的に有用なツールであるのは明らかである。多くの実験的試行がうまくいっているが(Kawasaki, H., et al., Nature 393: 284-289 (1998); Kuwabara, T., et al., Nature Biotechnol. 16: 961-965 (1998); Kuwabara, T., et al., Mol. Cell 2: 617-627 (1998); Koseki, S., et al., J. Virol. 73: 1868-1877 (1999); Tanabe, T. et al., Nature 406: 473-474 (2000))、in vivoで使用可能な有効なリボザイム-発現系を設計することは依然として難しい。多くの場合、in vivoでのリボザイムの効力はin vitroでの実験から予想されるものよりは低いことが証明されているが、これは、リボザイムをその標的RNAと接触させることが難しいこと、また細胞内でその標的部位を位置付けることが難しいことによるだろう。多数の研究がリボザイムやアンチセンスオリゴヌクレオチドの最良の標的部位を同定するための方法を開発しようとしてきたが、これまで、アクセス可能な標的配列の選択が標的遺伝子の有効な抑制の成功のために不可欠であった。
【0068】
本出願において、本発明者らは、新規のハイブリッドリボザイムであるtRNAVal-Rz-A60を構築し、この種のリボザイムが強力な切断活性と基質巻戻し活性とをもつことを実証した。この構築物は2つの主要な利点をもつように思われる。その1つは、これらのリボザイムがRNAヘリカーゼeIF4AIとの結合を介して巻戻し活性を示すことであり、2つめは、このヘリカーゼが通常の翻訳に利用されているので、これらのリボザイムが高い効率でそれらの標的mRNAと同時局在可能であるらしいことである。
【0069】
本発明者らのハイブリッドリボザイムは、親リボザイムよりも効率的に標的mRNAの発現を抑制した。さらに、それらは、標的部位の近傍における推定二次もしくは三次構造に関係無く、任意の選択部位で標的mRNAを切断することが可能であった。本発明者らのデータは全て、おそらくPABPおよびPAIP(Craig, A. W. et al., Nature 392: 520-523 (1998); Gallie, D. R., Gene 216: 1-11 (1998); De Gregorio, E. et al., EMBO J. 18: 4865-4874 (1999))などのアダプター分子を介したポリ(A)尾部とRNAヘリカーゼとの相互作用に由来する種々のハイブリッドリボザイムの効率が向上したことを示している。本発明者らが構築したポリ(A)を含有するリボザイムは全て、細胞において有意な活性を示した(データは示していない)。多くの場合、親ハンマーヘッド型リボザイムでなくポリ(A)含有リボザイムのみが、目的の遺伝子の発現を抑制した。本発明者らはまた、別のヘリカーゼ結合モチーフである構成的輸送エレメント(CTE)を用いても同様の結果を得た。CTEは、RNAヘリカーゼAおよびDbp5などの他のタイプのRNAヘリカーゼと結合するものである。有用なRNAモチーフは、ポリ(A)尾部およびCTEに限らず、巻き戻し機能を有する様々なハイブリッドリボザイムも一般的かつ広範な適用性を有することが判明するであろう。
【0070】
リボザイムを使用する機能性遺伝子の同定
これらのリボザイムを用いて特定の既知の標的mRNAを切断することに加えて、細胞において特定の表現型に関連する遺伝子を同定することもできる。これは、ランダム化結合アームを有するリボザイムを作製することにより達成し得る。ヒトゲノム配列はまもなく利用可能になるであろうし、それは重要な遺伝子の迅速な同定方法の開発にとって極めて価値あるものとなるであろう(Q.-X. Li et al., Nucleic Acids Res.,28: 2605-2612 (2000); P. J. Welch et al., Genomics, 66: 274-283 (2000); M. Kruger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 8566-8571 (2000))。本発明者らのハイブリッドリボザイムは任意の部位を攻撃できるので、それらは任意のmRNAを攻撃できることになる。ランダム化結合アームを有するハイブリッドリボザイムのライブラリーを細胞に導入すれば、表現型における任意の変化に関連する遺伝子を、特定のリボザイムクローンの配列決定により容易に同定することができる(図17a〜d)。
【0071】
巻戻し活性と切断活性とを結合させる手段としての内因性ヘリカーゼの加入は、他のリボザイムやアンチセンス分子にも応用可能である。これらの研究は、リボザイムの単純で一般的に応用可能な改変、すなわちtRNA駆動リボザイムへのCTEやポリ(A)配列の付加により、以前にはアクセス不能であった配列を切断の標的とすることが可能になることを実証するものである。さらに、このリボザイム技術は、治療的および一般的に重要な遺伝子不活性化試薬の開発ならびにポストゲノム時代における機能遺伝子の迅速な同定にとって強力なツールの代表的なものとなるはずである。
【0072】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲および技術的思想はこれらの実施例に限定されないものとする。
<実施例1> CTE 結合リボザイム( I )
材料と方法
CTE 結合リボザイム発現ベクターの構築
S. Kosekiら, (1999) J. Virol. 73:1868-1877に記載の方法に従って、哺乳類細胞内で活性リボザイムを生成できるリボザイム発現ベクターpUC-dtを構築した。リボザイムの発現はtRNAvalプロモーターの制御下にあった。リボザイム配列をヒト遺伝子のtRNAval部分の3’改変部位に結合して非常に活性なtRNAvalプロモーター連結リボザイムを得た。元のプラスミドpUC-dtは、tRNAvalをコードするヒト遺伝子のプロモーターを有し、かつリボザイムを挿入するためのクローニング部位Csp 45IとSalIを有していた。
【0073】
プラスミドpUC-dtを制限酵素CspIとSalIで二重消化し、このプラスミド断片に、KpnIおよびEcoRV部位をもつリボザイム配列と、該リボザイム配列の3’末端にターミネーター配列UUUUUをクローン化した。その後、上記KpnIおよびEcoRV部位にCTE配列を挿入した(図2B)。挿入されたCTE配列は、サルD型レトロウイルス由来のSRV CTE-1であり、その構造は図2Aに示した。また、対照として、CTE配列を含まず、リボザイム配列とターミネーター配列を含むプラスミドも構築した。
【0074】
上記の手順によって、図4Bに示す、CTE配列をもつまたはCTE配列をもたない4組みのリボザイム(TAR AUC Rz; LTR CUC Rz; Luc GUA Rz; TAR GUU Rz(それぞれ配列番号4〜7))をpUC-dtにクローン化した。TAR GUU RzおよびTAR GUU CTE-Rzを具体例として、その発現カセット部位のDNA配列をそれぞれ配列番号10および11に示す。
(配列番号10):
5'-accgttggtttccgtagtgtagtggttatcacgttcgcctaacacgcgaaaggtccccggttcgaaaccgggcactacaaaaaccaactttatctggtctctgatgaggccgaaaggccgaaaccagagagggtaccccggatatcttttt-3'
(配列番号11):
5'-accgttggtttccgtagtgtagtggttatcacgttcgcctaacacgcgaaaggtccccggttcgaaaccgggcactacaaaaaccaactttatctggtctctgatgaggccgaaaggccgaaaccagagagggtaccagaccacctccctgcgagctaagctggacagccaatgacgggtaagagagtgacattgttcactaacctaagacaggagggccgtcagagctactgcctaatccaaagacgggtaaaagtgataaaaatgtatcactccaacctaagacaggcgcagcttccgagggatttggatatcttttt-3'
【0075】
LTR-Luc HeLa 細胞における tRNA val リボザイム活性の測定用アッセイ系
S. Kosekiら, (1998) J. Control. Release 53:159-173に記載の方法で作製されたLTR-Luc HeLa細胞(図3A)は、HIV-1の長末端反復配列(LTR)とルシフェラーゼ遺伝子とからなるキメラ分子を安定にコードしている。HIV-1のLTRはTAR(HIVのtrans activating region)領域を含む調節要素を有している(図3B)。HIV-1調節タンパク質であるTatはTARに結合することによって実質的に転写を刺激する。ルシフェラーゼ活性の測定は、tRNAvalプロモーター連結リボザイムがキメラLTR-Luc遺伝子の発現に与える影響をモニターして行なわれた(図3A)。
【0076】
基本的に、ルシフェラーゼ活性の測定はS. Kosekiら,J. Control Release, 1998(上掲)に記載される方法に従った。80%成長率のLTR-Luc HeLa細胞を12ウエルプレート中に接種し、CO2インキュベーター中37℃でインキュベートした。この培養細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、300μLの無血清培地(OPTI-MEM-1, Gibco BRL)中に入れ、(同時)トランスフェクションを行った。図9に示されるアッセイでは、2μgのリボザイム発現プラスミドと150ngのTat発現プラスミド(pCD-SRα/tat)を、300μLのOPTI-MEM -1培地中3μLのLipofectin試薬(Gibco-BRL, Rockville, MD)と混合し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、混合物をゆっくりOPTI-MEM -1培地中の細胞に加えた。12時間後、培地を10%FCS含有成長培地(DMEM)と置換し、細胞をさらに24時間培養した。
【0077】
ルシフェラーゼ活性は、S. Kosekiら,J. Control Release, 1998 (上掲)に記載されるとおり、PicaGeneキット(東京インキ、東京)を用いて測定された。LTR-Luc HeLa培養細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄後、150μLの1×細胞溶解緩衝液(Promega, Madison, WI)の中に入れた。室温で30分間インキュベーション後、細胞をかき取り、沈殿物を遠心分離によって除去した。上清から適量のアリコートを取り出し、100μLのLuciferin(東京インキ、東京)と混合した後、ルミノメータでルシフェラーゼ活性を測定した。β−ガラクトシダーゼ活性を参照することによりトランスフェクション効率を標準化するために、細胞を50μgのpSV-β-ガラクトシダーゼコントロールベクター(Promega, Madison, WI)により同時トランスフェクトし、ついでβ−ガラクトシダーゼによる化学発光シグナルをルミネッセントβ−ガラクトシダーゼジェネティックレポーター系(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて添付の使用説明書に記載のとおりに測定した(S. Kosekiら,J. Control Release, 1998(上掲)参照)。
【0078】
図8に示すアッセイについては、12ウエルプレートに接種した80%成長率のLTR-Luc HeLa細胞を1μgのリボザイム発現ベクターと1μgのCTE発現ベクターとにより同時トランスフェクトした。
【0079】
CPP32(procaspase-3) mRNA を標的とする tRNA val プロモーター−リボザイムの活性を測定するためのアッセイ系
CPP32を標的とするリボザイムの活性を検出するために、ウエスターンブロッティング分析を行い、NIH 3T3細胞中のCPP32のレベルを検出した(図6)。上述のリボザイム発現ベクターでトランスフェクトしたNIH 3T3細胞を収穫した。1レーンあたり50μgのタンパク質を15%SDS PAGEにロードし、電気泳動後、タンパク質バンドをPVDF膜(Amersham Co., Buckinghamshire, UK)に転写した。膜を、ウサギポリクローナルαCPP32抗体とウサギポリクローナルアクチン抗体を用いてプローブした。膜を、第二抗体であるFITC結合IgG抗体を用いてプローブした後、Fluoro-Image Analyzer (Molecular Dynamics)でバンドを検出した。基本的に、L. Dubrezら,(1998) Blood 7:2415-2422に記載されるとおりにブロッキングおよび検出を行った。
【0080】
ノーザンブロティング分析
LTR-Luc HeLa細胞中のリボザイムの発現量と細胞内局在を測定するために、ノーザンブロッティングを行った。各発現ベクターでトランスフェクトしたLTR-Luc HeLa細胞からの全RNAを核画分(N)と細胞画分(C)に分けた。
【0081】
図7に示す各リボザイム発現ベクターをLipofectin(Gibco-BRL, Rockville, MD)と組み合わせて用いてLTR-Luc HeLa細胞にトランスフェクトした。37℃で36時間培養後、全RNAをISOGEN(登録商標;日本ジーン、富山)を用いて単離した。細胞質RNAと核RNAを、Y. Huang とG.G. Carmichael (1996) Mol. Cell Biol. 16:1534-1542に記載される手法で単離した。レーンあたり30μgの全RNAを3.0%NuSieve(登録商標)(3:1)アガロースゲル(FMC Inc., Rockland, ME)上にロードし、ついでRNAバンドをHybond-N(登録商標)ナイロン膜(Amersham Co., Buckinghamshire, UK)に転写した。膜を、個々のリボザイムの配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いてプローブした。CTEの配列に相補的な合成プローブは、tRNAvalプロモーター駆動のCTE RNAの局在と定常状態レベルの測定に使用された。すべてのプローブは、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造、京都)を用いて32Pで標識した。プローブの配列は以下のとおりである。
TRNA用プローブ(配列番号12):
5'-aagatatccggggtaccaaagttggtttttgtagtgcccg-3'
tRNA-CTE用プローブ(配列番号13):
5'-aagatatccaaatccctcggaagctgcgcctgtcttaggt-3'
TAR AUC-RzおよびTAR AUC CTE-Rz用プローブ(配列番号14):
5'-agaccagatttcggcctttcggcctcatcagtgagcctgg-3'
TAR GUU-RzおよびTAR GUU CTE-Rz用プローブ(配列番号15):
5'-ctctctggtttcggcctttcggcctcatcagagaccagat-3'
【0082】
以下に、図面を参照しながら本発明の具体例を説明する。
図1に、ハンマーヘッド型リボザイムへのCTE配列の付加、該リボザイムへの可能なスライディング機能の付加、CTE連結リボザイムによる隠れた標的部位の切断を模式的に示した。
【0083】
一般に、EcoRVのような制限酵素のDNA相互作用領域は正に荷電されており、これによって該制限酵素はポリヌクレオチド鎖にそってスライディング(移動)して標的部位を探し出すことができる(図1A;線形拡散とスライディング機構については、A. Jeltsch et al., (1996) EMBO J., 15:5104-5111参照)。この機構においては、標的部位の探索の間に動力学的に好ましくない会合/解離の反復事象が回避される。これに反して、RNAを切断するリボザイムは、それらのRNA基質と同様に負に荷電されているため、リボザイムはRNA鎖に沿って移動することができず、したがってそれらは動力学的に好ましくない会合/解離の反復事象によって標的部位を探し出す必要がある(図1A)。その結果、リボザイムの標的部位を含むRNA鎖が長いほど、リボザイムによる切断効率は低い。さらに標的部位の中にはin vitroだけでなくin vivoでもリボザイムに近づくことができないものもあるが、これはそのような標的部位が安定なステム構造の内部に隠れていることに起因する。
【0084】
この状況を改善するために、本発明者らはリボザイムにスライディング機能をもたせることを計画した。翻訳機構に生じるRNAヘリカーゼは天然酵素であり、mRNAに沿って移動しmRNAの三次構造をほどくことができる(C.−G.Lee et al.(1993)J.Biol.Chem.268:13472−13478)。したがって、本発明者らは、直接的または間接的相互作用によりリボザイムをCTEに連結することによって、リボザイムとRNAヘリカーゼを結合することを試みた(図1B)。RNAヘリカーゼは、その非特異的なRNA結合とスライディング活性のために、構造化されたmRNAをほどく間にリボザイムをその標的部位に導くことができる。RNAヘリカーゼとCTEとの直接的相互作用は、リボザイムにスライディング機能を付与しin vivoでリボザイム活性が高まることができる限り、必要に応じてアダプター分子を介してもよいし、または他のRNAヘリカーゼの関与を伴ってもよい。
図2Aは、MulFoldに基づいたCTEの予測二次構造を示す。また図2BはtRNAvalプロモーターによって制御されるリボザイム発現カセットの概略図である。
【0085】
In vivoでリボザイムが特定の遺伝子をうまく不活性化できるかどうかは、標的部位の選択だけでなく発現ベクターの設計に依存している。発現ベクターの設計は、発現量と発現されたリボザイムの半減期を決定する。Pol IIプロモーター(例えば脾臓細胞で特異的に機能するインスリンプロモーター)は組織特異的なまたは調節可能な発現を可能にするが、pol III転写体はかなり高レベルで発現されるようである。pol IIIプロモーターの制御下での高レベル発現が有利であるが、これはリボザイムとその標的mRNAとの会合が細胞中でのリボザイム仲介反応の律速段階であるからである。このために本発明者らは、tRNAvalプロモーターの制御下でリボザイムを発現することを選択した。このプロモーターは従来リボザイムによる標的遺伝子の抑制にうまく使用されてきたものである(M. Yu et al., (1999) Proc. Ntl. Acad. Sci. USA 92:699-703; E. Bertrans et al., (1997) RNA 3:75-88)。
【0086】
tRNAvalプロモーター連結リボザイム酵素の設計は特に本発明者らの研究成果に基づいているが、それは、リボザイム配列をヒト遺伝子のtRNAvalプロモーター部分の3’改変部位に結合して非常に高いリボザイム活性を得ることからなる(H. Kawasaki et al., (1998) Nature 393:284-289; T. Kuwabara et al., (1998) Nature Biotechnology 961-965; T. Kuwabara et al., (1998) Mol. Cell 2:617-627; S. Koseki et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891)。すべての場合に、ヒト遺伝子のtRNAval部分の3’部位が、(i)転写体がRNase Pによってプロセシングを受けない、(ii)転写体の構造がtRNAに十分に類似しており、そのため細胞質に輸送するための輸送レセプターによる認識を可能とするし、またその標的との同時局在を確実にする、および(iii)基質−認識アームが分子内ステムの破壊の際により接近可能になるように、改変された。
【0087】
CTE連結リボザイム(CTE-Rz)の構築のために、図2Aに示されるCTE配列が、tRNA連結リボザイムのリボザイム配列の下流のKpnI部位とEcoRV部位との間に挿入された。
図3Aは、LTR-Luc HeLa細胞におけるtRNAval-リボザイム活性の測定のためのアッセイ系を示す。また図3Bは、リボザイムが標的とするLTR-ルシフェラーゼ mRNAの5’領域のMulFoldに基づいて予測された二次構造である。
【0088】
本発明者らは、S. Kosekiら, (1998) J. Control Release 53:159-173に記載されるアッセイ方法で、HIV-1のLTRとルシフェラーゼ遺伝子とからなるキメラ分子を安定にコードするLTR-Luc HeLa細胞を用いて、tRNAvalプロモーター連結リボザイムとtRNAvalプロモーター連結CTE結合リボザイムの細胞内活性を評価した。HIV-1のLTRはTAR領域を含む調節要素を含んでいる。HIV-1調節タンパク質であるTatはTARに結合することによって、実質的に転写を刺激する。ルシフェラーゼ活性の測定は、tRNAvalプロモーター連結リボザイムがキメラLTR-Luc遺伝子の発現に与える影響をモニターすることを可能にする。LTR-Luc HeLa細胞はtRNAvalプロモーター駆動のリボザイム発現ベクターとTat発現ベクター(pCD-SRα/tat)(Y. Takebe et al., (1988) Mol. Cell Biol. 8:466-472)とにより同時トランスフェクトされた。TatリボザイムおよびtRNAval連結リボザイムの一時的発現後に、本発明者らはルシフェラーゼ活性を測定することによって各tRNAval-リボザイムの細胞内活性を評価した(図3A)。
【0089】
図3Bに、LTR駆動のルシフェラーゼmRNAの300ntの5’部分配列の予測二次構造を示す。in vivoでのリボザイムによる特定遺伝子の不活性化がうまく行くかどうかは標的部位の選択に依存している。標的部位の中には安定なステム構造内部に隠れているものもあり、そのような標的部位はin vitroでもin vivoでもリボザイムに接近できない。本発明者らは、比較的接近可能な部位を標的とするリボザイムによる遺伝子不活性化の効率を、比較的接近できない部位を標的とするリボザイムによる効率と比較するために、4組のCTE結合リボザイムとCTE非結合リボザイムを設計した。3つのリボザイム、即ちTAR AUC Rz, LTR CUC RzおよびLuc GUA Rz(それぞれ橙色、青色、緑色)を設計し、図3Bの対応する色で下線を引いて示したように、LTR-ルシフェラーゼキメラmRNAのループ領域に位置する比較的接近可能な部位を標的化するように設計した。これに対して、残りのTAR GUU Rz(赤色)は、TAR領域内部の安定なステム構造中に位置する接近できない部位を標的化するように設計された。TAR領域は安定なステム−ループ構造をもつため、このリボザイムは十分な阻害作用を示すことができないと予測した。図3B中、ハンマーヘッド型リボザイムによる切断に必須のトリプレットは赤い文字で示されている。
【0090】
図4Aは、ハンマーヘッド型リボザイムの二次構造を示す。また図4BはHIV-1駆動のルシフェラーゼmRNAを標的とする一連のリボザイムを示す。
ハンマーヘッド型リボザイムは最小の触媒RNAである。その二次構造がハンマーヘッドの形に類似しているため、ハンマーヘッドと名付けられた。自己切断反応(シス作用)に起因する配列モチーフがはじめある特定のウイルスのサテライトRNA中で認識されたが、本発明者らは、治療等に汎用可能なように、トランスに作用するハンマーヘッド型リボザイムへの変換を行った。このリボザイムは、アンチセンス部位と、フランキングステム−ループ部位をもつ触媒コアとからなっている(図4A)。これらのリボザイムは、オリゴヌクレオチドを特定の部位NUH(ここで、NはA, G, CまたはUであり、HはA, CまたはUである。)で切断可能であり、GUCトリップレットをもっとも効率的に切断する。
【0091】
4つのリボザイムの基質−認識アームの配列は図4Bに示し、図3Bに対応する色で色づけされている。
図5は、tRNAval連結リボザイムによるLTR駆動のルシフェラーゼ活性の抑制を示す。
【0092】
Tat発現ベクター(pCD-SRα/tat)のみを用いた場合に記録されたルシフェラーゼ活性を100%(レーン1)とした。リボザイム発現ベクターおよびTat発現ベクターを10:1のモル比で用いてLTR-Luc HeLa細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクションの36時間後に、各細胞内のルシフェラーゼ活性を分析した。図5に示された結果は2回の実験の平均結果である。図から判るように、tRNAおよびCTE連結tRNAはLTR−ルシフェラーゼ遺伝子の発現に対しほとんど阻害作用をもたない(レーン2と3)。このことは、CTEや、tRNAvalプロモーターが機能するヒト遺伝子を用いる酵素−発現系に起因した副作用がほとんどないことを示す。さらに、比較的接近可能な部位を標的とするように設計された3つのタイプのリボザイム(TAR AUC Rz, LTR CUC Rz, Luc GUA Rz; それぞれレーン4, 6および8)は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現にかなりの阻害作用を有することが判る。これに対し、ステム構造化されたTAR領域内の接近できない部位を標的とするように設計されたTAR GUU Rzはほとんど阻害作用をもたない(レーン10)。
【0093】
驚くべきことに、リボザイム配列の3’側にCTE配列を結合した場合(即ち、CTE-Rzを使用した場合)には、いずれの場合にも、リボザイムの効率は同レベルに顕著に改善されることが判った(レーン5, 7, 9, 11)。リボザイムは、接近可能な部位であろうが接近できない部位であろうがいずれの部位に対しても同等のかなりの程度の効率で標的指向した。特に、TAR GUU CTE-Rz(レーン11)は、その親であるTAR GUU Rz(レーン10)がほとんど阻害作用をもたないという事実にも拘らず、他のCTE-Rzと同様にかなりの阻害作用を示した。この場合、ルシフェラーゼ活性の有効な阻害を示すうえで、ステム構造化されたTAR領域の巻戻しが必須である。したがって、この阻害作用の改善は、リボザイムをその基質に結合するのを促進し、高度に構造化されたmRNAをほどくことができるある特定のエフェクター分子の関与を強く示唆している。その1つの強力な候補はRNAヘリカーゼAである。この酵素はRNA結合、スライディング、巻戻しのいずれの酵素活性も有している。対照としてTAR GUU Rzの不活性化変異体(TAR GUU IRz)を使用したが、この変異体は、触媒上重要な保存されたヌクレオチドG5→A5の単一変異を有している。また別の対照としてLTR-Luc mRNAの内部に局在しない標的部位をもつリボザイム(No target Rz)を用いた。CTE配列の有無に拘らず、これらの対照リボザイムはLTR-ルシフェラーゼ遺伝子の発現に対しほとんど阻害作用を示さなかった(レーン12, 13, 14 および15)。このことは、CTEや、tRNAvalプロモーターが機能するヒト遺伝子を用いる酵素−発現系に起因した副作用がほとんどないことを示す。
【0094】
図6は、CTE連結リボザイムおよびCTE非連結リボザイムによるCPP32
(Procaspase-3)遺伝子の発現阻害を示す。
LTR-Luc mRNAを標的とするリボザイムとは別に、CTE連結リボザイムの効果の普遍性を調べるために、本発明者らはいくつかの他の遺伝子に標的指向するCTE連結リボザイムを設計した。多くの場合、本発明者らはCTE連結リボザイムの同様に高い効能を知見した。そのような実験結果の一例をこの図に示した。即ち、本発明者らは、周知のアポトーシス関連遺伝子であるマウスCPP32(Procaspase 3)遺伝子の発現の阻害を試験した。その際、CPP32 mRNA中の異なる部位に作用する5種類のリボザイム、即ちCPP Rz1(配列番号49), CPP Rz2(配列番号50), CPP Rz3(配列番号51), CPP Rz4(配列番号52), CPP Rz5(配列番号53)を設計した。特にCPP Rz5は、ステム構造化されたCPP32 mRNA中の比較的接近できない部位に標的指向するように設計された。マウス由来のNIH3T3細胞をこれらのリボザイム発現プラスミドでトランスフェクトし、36時間後、各細胞内の蛋白含量をα−CPP32抗体を用いるウエスタンブロッティングによって調べた。またα−アクチン抗体を対照として使用した。第二抗体としてFITC標識α−IgG抗体を使用し、バンドの強さをFluoro-imager (Molecular Dynamics)により分析(図6A)しかつ定量(図6B)した。
【0095】
図6Aおよび6Bに示されるように、CTEをリボザイムに結合することによって、図5に示した実験と同様に、阻害効果が甚だしく増強されることが判る。この例でさえ、CTE連結CPP Rz5は、その親リボザイムがTAR GUU CTE-Rzのように阻害効果をほとんど示すことができないという事実にも拘らず、十分な阻害効果を示した。一方、リボザイムはアクチン遺伝子の発現を非特異的に阻害することはなかった。このことから、CTE連結リボザイムの高い特異性が示される。
【0096】
図7は、LTR-Luc HeLa細胞内の、tRNAプロモーター連結リボザイムおよびCTE連結リボザイムの有効な発現と細胞内局在を示す。
LTR-Luc HeLa細胞内での各リボザイムの発現レベルとその細胞内局在を決定するために、ノーザンブロッティング分析を行った。各発現ベクターでトランスフェクトされたLTR-Luc HeLa細胞からの全RNAは核画分(N)と細胞質画分(C)に分けた。転写された各酵素の量を、各転写体に特異的なプローブ(配列番号12〜15)を用いるノーザンブロッティングによって調べた。先に、本発明者らは、調べた全ての例において、tRNAvalプロモーターの制御下の発現系からの転写体は個々に細胞質に輸送されることを確認した(S. Koseki et al., (1999) J. Viol.,73:1868-1877)。図7に示されるように、またtRNAvalプロモーター発現系の性質から予測されるように、tRNAvalプロモーター連結酵素のいずれも同様の相当程度に細胞質画分に見出され、核画分には有意な程度に検出されなかった。リボザイムとCTE連結リボザイムはともに、CTE配列の有無に拘らず、類似の発現レベルで細胞質に局在した。
【0097】
CTE配列は、細胞質へのD型レトロウイルスRNAの輸送用シグナルであることが知られているので、CTEと連結することによるリボザイムの阻害効果の上昇は細胞質へのリボザイム転写体の輸送と、該リボザイムと標的mRNAとの共存とに起因するものと推定される。しかし、リボザイムの効能に及ぼすCTE関連経路を介する輸送の影響は無視することができる。これは、本発明の発現系に関する限り、転写体のすべてが個々に細胞質に輸送され得たからである。また各リボザイムの発現レベルに違いはなかった。したがって、CTEを連結することによるリボザイムの効能の増加は、他の影響、おそらくRNAヘリカーゼAの機能に起因する影響によるものであることを強く支持している。
【0098】
図8は、CTE連結リボザイムに対する有力なマイナス作用の検討結果を示す。
CTE−リボザイムによる効力の増加がCTE配列によるものかどうかを調べるために、CTE連結リボザイムに対するCTEの有力なマイナス作用を検討した。図8に示すように、TAR GUU Rz発現ベクターとトランス作用のCTE発現ベクターとによる同時トランスフェクションは、TAR GUU Rzの効力に影響を与えなかった(レーン3, 4)。TAR GUU RzをシスにCTEに連結したときのみ、かなりの効果が観察された(レーン5)。しかし、CTE-Rzの増大された効果は、CTE-Rz発現ベクターとCTE発現ベクターとによる同時トランスフェクションによって失われた(レーン6)。CTEによるこの有力なマイナス作用は、リボザイム効力の改善におけるシスに連結したCTEの参加を強く示している。
【0099】
<実施例2> CTE 結合リボザイム( II )
材料及び方法
プラスミドの構築
先に記載したようにして、プラスミドpUC-dtから誘導したリボザイム発現ベクターを構築した(Koseki, S., et al., J. Virol., 73:1868-1877 (1999); Kuwabara, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891 (1999))。CTE-Rz発現ベクターを作製するために、サルD型レトロウイルス由来のCTE(SRV CTE-1;Tang, H. et al., Science 276:1412-1415 (1997)など)配列を挿入した(図2A)。pUC-dtをCsp 45IとSal Iとで二重消化し、Kpn I及びEcoR V部位と3'末端に終結配列UUUUUをもつ各リボザイム配列を、得られた上記プラスミドにクローン化した(図2A)。Kpn IとEcoR V部位は、その後のCTE配列の挿入に使用された。ベクターpRcCMV-mychDbp5は、N末端にmycタグをもつヒトDbp5ヘリカーゼ(hDbp5)遺伝子をコードしている(Schmitt, C. et al., EMBO J. 18:4332-4347 (1999))。ベクターpcDNA3 RHA-HAは、N末端にHAタグをもつヒトRNAヘリカーゼA遺伝子をコードしている(Li, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:709-714 (1999)など)。
【0100】
LTR-Luc HeLa 細胞中のリボザイム活性の測定
ルシフェラーゼ活性は、基本的には文献記載に従ってモニターした(Kuwabara, T. et al.(1999), 上掲)。LTR-Luc HeLa細胞を12ウエルプレート中80%コンフルエンスにプレーティングし、CO2インキュベータ中で37℃でインキュベートした。(同時)トランスフェクション前にリン酸緩衝塩水(PBS)で細胞を二度洗浄した。各リボザイム発現プラスミド4μg及びTat発現用プラスミド(pCD-SRα/tat;Koseki, S. et al., Journal of Controlled Release 53:159-173 (1998))150ngを、低血清培地(OPTI-MEM I; Gibco-BRL)400μL中、Lipofectin試薬(Gibco-BRL, Rockville, MD)4μLと混合し、製造業者の使用説明書の記載に従って室温で30分インキュベートした。優性陰性活性のアッセイの場合には、指示した量のプラスミドをトランスフェクションに用いた(図10B)。ついで、混合物を静かに細胞に加えた。12時間後、培地を10%牛胎児血清を補充した成長培地(DMEM)と置換し、細胞をさらに24時間培養した。
【0101】
ルシフェラーゼ活性はPicaGeneキット(東洋インキ)を用いて文献記載のとおり行った(Kuwabara, T. et al.(1999),上掲)。β-ガラクトシダーゼ活性を参照してトランスフェクション効率を標準化するため、細胞を50ngのpSV-β-ガラクトシダーゼ対照ベクター(Promega, Madison, WI)により同時トランスフェクトし、β-ガラクトシダーゼによる化学発光シグナルを、発光性β-ガラクトシダーゼGenetic Reporter System (Clontech, Palo Alto, CA)を用いて測定した(Kuwabara,T. et al.(1999),上掲)。
【0102】
in vitro での個々のリボザイムの切断活性の分析
CTE配列を有する又は有さない各リボザイム及び基質RNA、即ちLTR-Luc mRNAの5'領域(300 nt)(図2B)、をT7 RNAポリメラーゼを用いてin vitroで調製した。リボザイム活性のin vitroアッセイを酵素飽和(シングルターンオーバー)条件下、10mM MgCl2、50mM Tris-HCl(pH7.5)中37℃で行った(Kuwabara, T. et al. Mol. Cell 2:617-627 (1998))。各リボザイム(10μM)を2nMの5'-32P標識基質を用いてインキュベートした。基質と各反応生成物を電気泳動(5%ポリアクリルアミド/7M尿素変性ゲル)によって分離し、オートラジオグラフィーによって検出した。
【0103】
ウエスターンブロッティング分析
各リボザイム発現ベクターでトランスフェクトされたNIH3T3細胞を回収した。レーンあたり50μgのタンパク質を15%SDSポリアクリルアミドゲル上にロードした。電気泳動後、タンパク質バンドを二フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(Amersham, Buckinghamshire, UK)に転写した。CPP32に対するウサギポリクローナル抗体とアクチンに対するウサギポリクローナル抗体を用いて膜をプローブした(Kuwabara, T. et al.(1998),上掲)。二次抗体であるFITC結合抗IgG抗体と一緒に膜をインキュベートした後、FluoroImage Analyzer(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)にて検出した。ブロッキングと検出は基本的に文献記載のとおり行った(Kuwabara, T. et al.(1998),上掲)。
【0104】
ノーザンブロッティング分析
細胞質RNAと核RNAを各リボザイム発現ベクターでトランスフェクトしたLTR-Luc HeLa細胞から単離した(Kuwabara, T. et al.(1998),上掲;Koseki, S. et a.,上掲;Kuwabara, T. et al.(1999),上掲)。レーンあたり30μgの全RNAを3.0%NuSieve 3:1アガロースゲル(FMC, Rockland, ME)上にロードした。電気泳動後、RNAのバンドをHybond-NTMナイロン膜(Amersham)に転写した。種々のリボザイムの配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて膜をプローブした。CTE配列に相補的な合成プローブを用いてCTE RNAの局在位置と定常レベルを測定した。
【0105】
細胞内での CTE-Rz と RNA ヘリカーゼとの相互作用の検出
CTE-Rz RNA及びRNAヘリカーゼhDbp5若しくはRNAヘリカーゼAの同時免疫沈降を、CTE-Rz発現ベクターとpRcCMV-mychDbp5(Schmitt, C. et al., EMBO J. 18:4332-4347 (1999))若しくはpcDNA3 RHA-HA(Li, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:709-714 (1999))のいずれかとを用いてHeLa S3細胞を一過的にトランスフェクトすることによって行った。c-myc-hDbp5又はHA-RNAヘリカーゼAを一過的に、指示した型のTAR Rz4発現ベクターをもつHeLa S3細胞中に同時トランスフェクトした。トランスフェクションの36時間後、細胞抽出物を集めた。C-myc-tag(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)又はHA(hemagglutinin)-tag(Boehringer Mannheim GmbH)のいずれかに特異的な抗体を免疫沈降に用いた。50μlのプロテインA-アガロースビーズ(Amersham)に結合させた各抗体10μlを一緒に4℃一晩インキュベートした。ビーズを溶解バッファー(50mM Hepes-KOH, pH7.5, 60mM KCl, 2.5 mM EDTA, 0.1% Triton X-100)を用いて3回洗浄した。フェノール抽出、エタノール沈殿、DNase Iでの処理(37℃3時間)、フェノール抽出、エタノール沈殿によってビーズから抽出し、定量した。抽出されたRNAをリボザイム特異的プライマーを用いるRT-PCRに掛け、PCR産物をアガロースゲル上UV光下で視覚化した。
【0106】
in vitro 合成された CTE-Rz と相互作用する RNA ヘリカーゼ hDbp5 及び RNA ヘリカーゼ A の沈殿
in vitro合成されたCTE-Rzと相互作用するタンパク質の沈殿を基本的に文献記載のとおり行った(Li, J. et a.,上掲)。ビオチン標識RNAをAmpliScribeTM T7転写キット(Epicentre Technologies, Madison, WI)を用いて合成した。反応中のBiotin-21-UTP(Clontech)対UTPのモル比は1:5であった。対照として、tRNA,Rz又はCTE配列を含まないビオチニル化転写体(MCS;multi cloning site)をpBS(Stratagene)を鋳型とし、かつT7 RNAポリメラーゼを用いて調製した。pRcCMV-mychDbp5又はpcDNA3 RHA-HAのいずれかでトランスフェクトされたHeLa S3細胞2×107からの細胞抽出液200μlを70μgのビオチニル化RNAと混合し、10分間氷上でインキュベートし、結合バッファーで1mlに調整した。このサンプルに70μlのストレプトアビジン結合アガロースビーズ(Gibco BRL)を加えた。このビーズは前もって、結合バッファー(20 mM Tris-HCl, pH7.5, 60 mM KCl, 2.5 mM EDTA, 0.1% Triton X-100)で2回洗浄し、結合バッファー100μl中に懸濁し、氷上に放置した。4℃で一晩インキュベーション後、ビーズを3回洗浄バッファー(20 mM Tris-HCl, pH7.5, 350 mM KCl, 0.01% NP-40)で洗浄し、20μlの結合バッファー中に再懸濁した。煮沸によりタンパク質を溶離し、SDS-PAGE(7%ポリアクリルアミド)によって分離した。各RNAヘリカーゼの免疫沈降のために、標準法によってタンパク質をPVDF膜に転写し、上記の抗体でプローブした。対照として、pRcCMV-mychDbp5又はpcDNA3 RHA-HAでトランスフェクトされたHeLa細胞からの全細胞溶解物もウエスタンブロッティングに掛けた。
【0107】
結果
ハイブリッド - リボザイム( CTE-Rz )の設計及び LTR- ルシフェラーゼキメラ遺伝子の発現に対するリボザイムの作用
CTE配列を従来のtRNA駆動リボザイムの3'末端に結合した(図2A, B)。HIV-1由来のLTRのTAR領域に対するリボザイム(Rz)及びCTE-リボザイム(CTE-Rz)の細胞内活性を定量的に評価した。チャレンジング標的を選択したが、これは、それが広い二次構造をもつためであった(図3B)。標的遺伝子はHeLa細胞中で安定に発現し、HIV-1の長末端反復配列(LTR)とルシフェラーゼ遺伝子とからなっている(Koseki, S. et a.(1998),上掲)。このレポーターはTat依存性であるため、Tat用の発現プラスミドを一過的に、リボザイム発現ベクターと一緒にトランスフェクションした。
【0108】
CTE-Rz設計物の効力を試験するため、特異的標的用に5つのCTE結合及び非結合リボザイムを作製した。3つのリボザイム、即ちTAR Rz1(実施例1のTAR AUC Rzと同一), LTR Rz2(実施例1のLTR CUC Rzと同じ)及びLuc Rz3(実施例1のLuc GUA Rzと同一)、を、LTR-ルシフェラーゼキメラmRNAの予測されるループ領域に位置する比較的アクセス可能な部位にターゲッティングするように設計した(図3B)。明らかなように、これらのリボザイムは有意にレポーターの発現を減少した(図9、レーン4、6及び8)。
【0109】
TAR Rz4(実施例1のTAR GUU Rzと同一)とTAR Rz5(配列番号16)を、LTRルシフェラーゼmRNA5'領域の予測される切断部位(図3B、それぞれnt5〜23、nt42〜60)にターゲッティングするように設計し、後に、TAR領域の公知の安定なステム構造内にアクセス不能であることを確認した(下記参照)。CTEをもたないこれらのリボザイムはルシフェラーゼレポーター活性レベルに影響を及ぼすことができなかった(図9、レーン10及び12)。CTEが結合された場合には、これらのリボザイムは、切断を触媒することにおいて著しく有効になり、その結果レポーター活性の80%を減少させた(図9、レーン11および13)。さらにまた、これらのCTE結合リボザイムは、開かれた標的部位を切断するように設計された従来のリボザイム(TAR Rz1, LTR Rz2, Luc Rz3)について認められるものと比べてより良いレベルに達した。他のリボザイムへのCTEの結合もまた、それらの活性を高めた。重要なことには、TAR CTE-Rz4及びTAR CTE-Rz5は、TAR CTE-Rz1, LTR CTE-Rz2及びLuc CTE-Rz3について認められるものと類似の抑制レベルを達成した(図9、レーン5、7及び9)。このことから、全てのリボザイムが選択した標的部位を効率的に攻撃することをCTE部分が可能にしていることが示された。
【0110】
in vivo での標的 RNA の巻戻しとヘリカーゼの関与
TAR領域のステムが切断されるためには巻戻しされねばならないこと、及びCTEが切断に必要であることが判明したことから、CTEが巻戻しを容易にすることが分かる。Tatや多くの他のタンパク質はTAR領域に結合することも知られている。TAR CTE-Rz4やTAR CTE-Rz5が切断活性をもつことから、Tatの存在は干渉しなかったことが示されたが、これはおそらく、TARの二次構造を緩和するプロセスの一部としてTatが除去されたためであろう。
【0111】
観察された阻害作用が実際リボザイム仲介切断によるものであることを実証するために、本発明者らは、触媒部位に単一の変異を含む不活性化TAR Rz4を試験した(図9、レーン14及び15)。切断の欠如は、TAR CTE-Rz4による阻害がリボザイム仲介切断によるもので、アンチセンス作用によらないものであることが示された。また、豊富に発現されたtRNAと融合する場合には、CTEはルシフェラーゼレポーター活性に対し非特異的な作用をしなかった(図9、レーン3及び15)。
【0112】
TAR領域がin vivoでアクセスするのが難しいのはRNAの折り畳みによるもので、RNA-結合タンパク質に起因するものでないことをコンピュータ構造予測で証明するために、in vitro切断アッセイを行った。TAR基質の非常に僅かな切断が(従来のリボザイムかまたはCTE融合リボザイムのいずれかである)TAR Rz4とTAR Rz5について観察されたが、これは、TAR領域の固有の折り畳みがリボザイムのアクセス不能性の原因であることを示している。さらにまた、アクセス可能であると予想される部位に向けられる、従来の及びCTE結合型のリボザイム(TAR Rz1, LTR Rz2及びLuc Rz3)はともに、類似した有意のin vitro活性レベルを示した。したがって、細胞中で起こるCTE仲介による増強は細胞性因子、おそらくRNAの二次構造を分離できるヘリカーゼに依存しているように思われる。
【0113】
ハイブリッドリボザイムの一般的応用
CTEリボザイムの一般的応用を調べるために、内因性マウスプロカスパーゼ3(CPP32)の5つの部位をターゲットとした(図10A;配列番号39〜43(それぞれSite 6〜Site 10))。リボザイムCPP Rz6、CPP Rz7、CPP Rz8、CPP Rz9、CPP Rz10の配列をそれぞれ配列番号44〜48に示す。ターゲットの中にはアクセス不能であることが予想される部位を含む。マウスNIH3T3細胞をリボザイム発現プラスミドでトランスフェクトし、ウエスタンブロッティングによってプロカスパーゼ3の発現レベルを測定し定量した(図10B)。アクチン発現レベルを対照として用いた。LTR-lucレポーターについて先述したように、CTE結合リボザイムは従来の相当物よりも有効であった。特にCPP CTE-Rz10はかなりの阻害作用(図10C、レーン13)を示したが、その親リボザイムは実際全く作用しなかった(レーン12)。CTEリボザイムのいずれもアクチンの発現を妨げなかった。同様の結果は、数個の他の内因性標的についても得られた(データを示さず)。
【0114】
上記の実験では一過性のトランスフェクションを用いたため(つまり、トランスフェクション効率が100%でなかったため)、完全な抑制は観察されなかった。しかし、CTE-Rzを用いて安定な細胞系が樹立される場合には、標的遺伝子のほぼ100%抑制が達成される。これらの結果はCTE-リボザイムの特異性、強力な活性及び一般的な有用性を実証している。
【0115】
ハイブリッドリボザイムの発現レベルと局在
リボザイムの発現レベル、安定性および局在性は、in vivoでのリボザイム効率の重要な決定要素である(Sullenger, B.A. et al., Science 262:1566-1569 (1993)など)。CTEはD-型レトロウイルスRNAの細胞質への輸送のためのシグナルであることが知られているので(Tang, H. et al., Science 276:1412-1415 (1997)など)、CTEはリボザイムの細胞質への輸送を促進し、それにより高活性を導くことができると考えられる。または、CTEがステム構造を有するので、CTEはリボザイム含有転写体を安定化させ得る。CTE-リボザイムの細胞発現レベルおよび局在を測定するために、本発明者らは、TAR Rz4およびTAR CTE-Rz4でトランスフェクトし、分画した細胞に由来するRNAのノーザンブロット分析を行った(図11A)。本発明者らの以前の研究においては、試験した全ての場合に、高活性を有する従来のリボザイムは、ヒトtRNA Valプロモーターの制御下で専ら細胞質(C)中にのみ見出された(Kawasaki, H. et al., Nature 393:284-289 (1998)など)。期待通りに、TAR Rz4およびTAR CTE-Rz4は同程度のレベルで発現され、細胞質に分画され、核には分画されなかった(図11A)。従って、CTE仲介によるリボザイム活性の増強は、発現レベルが増加したために生じるものではなく、増加した安定性または輸送効率のいずれかの結果である。
【0116】
増強された効率に関する CTE 配列の重要性
CTE-Rzの改善された効力が、増強された転写体の安定性と細胞内輸送以外の特性に帰せられるように思われたため、CTEのヘリカーゼとの相互作用能力が原因であると考えられた。ヘリカーゼの関与に関して調べるために、本発明者らは競合実験を行った。リボザイムを含まないtRNA-CTE とTAR CTE-Rz4との共発現の結果、TAR CTE-Rz4の、LTR-luc基質の切断効率は減少した(図11B、レーン6および7)。過剰のtRNA-CTE(図11B、レーン7)、および過剰ではないtRNA単独(リボザイムを含まず、CTEも含まないもの)(図11B、レーン6)がTAR CTE-Rz4切断に干渉することは、tRNA-CTEとTAR CTE-Rz4が、いくつかの制限因子に関して競合していることを示唆している。
【0117】
さらに、TAR CTE-Rz4の野生型CTEが、2つのCTEの突然変異型である△CTE(Tang,H. et al., Science276:1412-1415(1997)など)またはM36CTE(Braun, I. et al., EMBO J. 18:1953-1965 (1999); Mol. Cell 1:649-659 (1998)など)のいずれかで置換された場合には、リボザイム増強活性は消失した(図11B、レーン8および9)。2つの公知のRNAヘリカーゼは、CTEと相互作用することが示されている(Tang, H. et al.,上掲など)。△CTE突然変異体はRNAヘリカーゼAとは相互作用せず (Westberg, C. et al., J. Biol. Chem. 275:21396-21401 (1999)など)、そして前述のM36CTEはhDbp5 RNAヘリカーゼと相互作用しないことが知られている(Braun,I.C., 上掲)。これらのCTE突然変異体に関して得られた結果は、CTEの重要性を強調し、CTE-Rz活性の効率の向上におけるRNAヘリカーゼの関与を強く支持している。
【0118】
ハイブリッド - リボザイムと RNA ヘリカーゼとの in vivo での相互作用
これらのRNAヘリカーゼのいずれかが本発明のCTE-Rzと相互作用するか否かを直接的に試験するために、hDbp5およびRNAヘリカーゼAを用いて同時免疫沈降を行った。最初に、TAR CTE-Rz4を、c-myc-タグ付hDbp5(Schmitt, C. et al., EMBO J. 18:4332-4347 (1999))またはHA-タグ付RNAヘリカーゼA(Tang, H. et al., Science 276:1412-1415 (1997))のいずれかとともにHeLa細胞中に同時トランスフェクトした。次に、細胞溶解物を、c-myc抗体またはHA抗体のいずれかを用いる免疫沈降に付した。その結果得られた沈殿物を、TAR CTE-Rz4の存在に関してRT-PCRにより評価した。TAR CTE-Rz4は、hDbp5沈殿物中に明らかに見出され、それによりTAR CTE-Rz4とhDbp5がin vivoで相互作用することが示された(図12A)。TAR CTE-Rz4は、RNAヘリカーゼAとも結合していたが、この相互作用はhDbp5に関して観察されたものよりも弱く見受けられた(図12A)。TAR Rz4、TAR M36CTE-Rz4及びTAR △CTE-Rz4が用いられた場合には、hDbp5とRNAヘリカーゼAとの相互作用は観察されず、それによりTAR CTE-Rz4およびヘリカーゼのいずれかとの相互作用が、機能性CTEの存在に依存することが確認された。
【0119】
相互沈殿により上記の結果を確認した。この場合には、in vitroで転写されたビオチニル化リボザイムを、c-myc-hDbp5(Schmitt, C.,上掲)またはHA-RNAヘリカーゼA(Westberg, C. et al.,上掲など)のいずれかでトランスフェクトしたHeLa細胞から誘導した細胞溶解物と混合した。使用した4つのリボザイム構築物はTAR Rz4、TAR CTE-Rz4、TAR M36CTE-Rz4およびTAR △CTE-Rz4であった。非特異的相互作用を抑制するために、tRNA、RzまたはCTE配列を有しないビオチニル化転写体を用いた(図12B、MCS)。ビオチンを認識するアビジン結合アガロースビーズを用いてタンパク質を沈殿させた。沈殿物を、c-myc-hDbp5またはHA-RNAヘリカーゼAに関して、ウエスタンブロッティングにより探索した。TAR CTE-Rz4のみがc-myc-hDbp5およびHA-RNAヘリカーゼAと複合体形成することが見出され、CTEが、hDbp5および/またはRNAヘリカーゼAと優先的に相互作用することによりCTE-Rz活性を増強していることが証明された。
【0120】
考察
tRNA-RzへCTE配列を付加することにより、本発明者らは、局所的RNA折り畳みが原因で以前は手におえなかった部位を、効率的に切断できるようにした。またCTEの存在は、既に機能的であったリボザイムについての切断活性を改良した。TAR CTE-Rz4およびTAR CTE-Rz5が、Tat(TARに結合することが知られたタンパク質)の存在下であってもTARを切断できることもまた注目すべきである。RNAヘリカーゼ相互作用を欠損しているCTE突然変異体を野生型CTEに代えて置換した場合には、その結果得られるTAR △CTE-Rz4およびTAR M36CTE-Rz4は、完全に活性を失った。従って、効果的であるためには、CTEはcisで存在しなければならず、RNAヘリカーゼと相互作用する能力を維持していなければならない。
【0121】
CTE仲介による活性の増加は、リボザイムの増加された安定性、発現または輸送とは関連していないように見られる。むしろ、CTEは、RNAヘリカーゼと相互作用することにより、リボザイムの作用を仲介していると思われる。2つのRNAヘリカーゼ(hDbp5およびRNAヘリカーゼA)がCTEと相互作用することがこれまでに見出されている。本発明者らは、本発明のCTE-Rzが実際に、これらのRNAヘリカーゼと(少なくともRNAヘリカーゼhDbp5と、そしてより少ない程度でRNAヘリカーゼAと(図12A))哺乳動物細胞において相互作用することを示した。RNAヘリカーゼhDbp5は、TAP(Tip-関連タンパク質)として知られたアダプタータンパク質と相互作用することが示されている(Gruter, P. et al., Mol. Cell 1:649-659 (1998);Kang, Y et al., Genes Dev 13:1126-1139 (1999))。この相互作用はhDbp5-CTEの相互作用に関して重要である。TAPを欠いた細胞(QCl-3;Kang Y. et al., Genes Dev. 13:1126-1139 (1999))を用いることにより、本発明者らは、TAPがCTE-Rz活性に関して必要不可欠であること、そしてそれによりさらにCTE-Rz活性においてhDbp5と関連していることを示唆する予備的な証拠を得た(データは示さず)。hDbp5を含むRNAヘリカーゼはRNA巻戻し活性を有することが知られているので(Lee, C.-G. et al., J. Biol. Chem. 268:16822-16830など)、本発明者らはCTEがこのヘリカーゼを、それらが抑制的構造を巻戻す標的部位へ補充しているとの仮説を立てた。ヘリカーゼが、いくつかのRNAヘリカーゼについて示されたスライド作用機構と一致して、tRNA-Rzを転写に沿ってスライドさせる能力さえ有し得ることを考慮するのは魅力的である(図1B)。本発明のCTE-リボザイムの鍵となる面とは、それがリボザイム利用の主要な障害を克服し、それによりリボザイムの一般的な有用性を顕著に増加させたことである。特に、CTEの結合により、以前にはリボザイム切断に対して抵抗性であることが見出されていた遺伝子の発現を抑制することが可能となった。
【0122】
リボザイムの有用性を一般的に改善したリボザイム技術の近年の進歩にもかかわらず、リボザイムの設計は問題点を有するものであり続けている(Kawasaki, H. et al., Nature 393:284-289 (1998); Plehn-Dujowich, D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:7327-7332 (1998); Tanabe, T. et al., Nature 406:473-474 (2000)など)。リボザイムに関して成功するためには、リボザイムは容易にアクセス可能な標的配列を有していなければならない。現在まで、そのような標的部位は、コンピュータによって支援される標的RNAの構造的予測に基づいて、または実用的でない試行錯誤実験によって検索されてきた。この制限を克服するために、本発明者らは、局所的二次構造または三次構造に関係なく、いずれの標的部位にもアクセスする能力を有し得るリボザイムの構築を探求した。RNA構造を調節するためのRNAヘリカーゼの本質的能力を利用することを希望しつつ、本発明者らはリボザイムをRNAヘリカーゼへ結合することを決定した。このことは、本発明のリボザイムを、RNAヘリカーゼと相互作用することが示された配列である、構成的輸送エレメント(CTE) 配列と結合することによって実現した。
【0123】
試験した全てのmRNAに関して、本発明のCTE-リボザイムは、親の非-CTEリボザイムと比較して、遥かに効率的に発現を抑制する。最も重要なことは、本発明のCTE-リボザイムは、予測された二次構造または三次構造に関係なく、いずれの部位においても標的mRNAを切断する能力を有していることである。全てのCTE-リボザイムは、細胞培養物中で強力な活性を示し、多くの場合に、親の非-CTEリボザイムが不活性であった場合でも作用した。従って本発明者らは、CTE-リボザイムは幅広い用途を有するものと確信する。なぜなら、本発明のCTE-リボザイムは設計および使用が非常に容易であるが、他方、従来のリボザイム技術では専門的能力が要求されるからである。
【0124】
<実施例3> ポリ (A) 結合リボザイム
材料および方法
ポリ (A) 結合リボザイムをコードするベクターの構築
プラスミドpUC-dtから誘導されたリボザイム発現ベクターの構築に関しては、先述した(Koseki, S., et al., J. Virol. 73: 1868-1877 (1999))。ポリ(A)結合Rz発現ベクターを作製するために、60ヌクレオチドのポリ(A)配列を挿入した(図13b)。Csp 45IおよびSal Iを用いてpUC-dtを二重消化し、Kpn IおよびEcoR V部位ならびに3'末端にターミネーター配列UUUUUを有する個々のリボザイム配列を前記プラスミド中にクローニングした(図13b)。該Kpn IおよびEcoR V部位は、後のポリ(A)配列の挿入のために用いた。
【0125】
HeLa 細胞の培養およびトランスフェクション
10% FCSを添加したダルベッコ改良イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's medium: DMEM)中でHeLa細胞を増殖した。ヒトFas遺伝子を安定的に発現したHeLa細胞(HeLa-Fas細胞)を、Wajant, H. et al., Current Biology 8: 113-116 (1998)に記載の如く調製した。LipofectinTM試薬(GIBCO-BRL)を用いて、Kawasaki, H., et al., Nature 393: 284-289 (1998)に記載の如くトランスフェクションを実施した。リボザイムをトランスフェクトされたHeLa-Fas細胞系の各々を、3週間、G418と共にインキュベートすることにより選別した。
【0126】
RT-PCR による分析
製造業者のプロトコルに従ってIsogenTM(日本ジーン)を用いて、HeLa-Fas細胞から全RNAを単離した。RNA PCR Kit ver.2(寶酒造)を用いて、FADD上流(nt.110-134)および下流(nt. 589-610)プライマーまたはCBP上流(nt. 442-467)および下流(nt. 632-655)プライマーを対照としてRT-PCRを実施した。2%アガロースゲル上の電気泳動により、PCR産物を分析した。
【0127】
ウェスタンブロット分析
個々のリボザイム発現ベクターでトランスフェクトしたHeLa-Fas細胞を回収した。タンパク質をSDS-PAGE(5%または10.0%ポリアクリルアミド)により分離し、Kawasaki, H., et al., Nature 393: 284-289 (1998)に記載の如くエレクトロブロッティングによりPVDF膜(フナコシ薬品)に転写した。ヒトFADD(Santa Cruz)、ヒトCBP(Santa Cruz)、ヒトFLASH(Santa Cruz)、ヒトCaspase 9(Santa Cruz)、またはヒトPTEN(Santa Cruz)に対する特異抗体を用いて、Amplified AP-immunblot kit(Bio Rad)により免疫複合体を可視化した。
【0128】
in vitro におけるビオチン標識 RNA 「プル−ダウン」アッセイ
ポリ(A)結合リボザイムとRNAヘリカーゼeIF4AIとの結合を、記載(Rodgers, J. T. et al., Anal. Biochem. 277: 254-259 (2000); Li, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 709-714 (1999))の如くin vitroにおけるビオチン標識RNA「プル−ダウン」アッセイによって検出した。各ビオチン標識リボザイムは、Biotin RNA Labeling Mix Kit(Boehringer Mannheim)を用いて合成された。
【0129】
免疫沈降− RT-PCR(IP-RT-PCR) による分析
ポリ(A)結合リボザイムとRNAヘリカーゼeIF4AIとのin vivoにおける結合を、記載(Rodgers, J. T. et al., Anal. Biochem. 277: 254-259 (2000); Li, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 709-714 (1999))の如くIP-RT-PCR分析によって検出した。
【0130】
ヘリカーゼ活性の ELISA
ポリ(A)結合リボザイム−タンパク質複合体のヘリカーゼ活性を、Hsu, C. C. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 253: 594-599 (1998)に記載の如くELISAによって測定した。
【0131】
ポリ (A) 結合または非結合リボザイム−タンパク質複合体の in vitro における活性の検定
ポリ(A)結合または非結合リボザイム−タンパク質複合体については、本明細書中に記載されている。FADDの部分mRNA(図13cにおいて、それぞれ緑および紫色のラインで示されたnt. 60-134およびnt. 140-206)を基質として用いて、T4ポリヌクレオチドキナーゼにより[γ‐32P]-ATPで標識した。このアッセイにおいて使用された基質は、Hsu, C.C.ら(Biochem. Biophys. Res. Comm. 253:594-599 (1998))の方法に従ってそれぞれの32P標識mRNAをハイブリダイズすることにより二本鎖に調製した。各リボザイムによるin vitroにおける巻き戻しおよび切断アッセイについては、Kuwabara, T.ら(Mol. Cell 2: 617-627 (1998))に記載の方法に従って行った。
【0132】
アポトーシスの検出
アポトーシスした細胞の割合を、「TUNEL」アッセイ(Kawasaki, H., et al., Nature 393: 284-289 (1998))によって測定した。4%パラホルムアルデヒド中で15分間、細胞を固定し、0.1% Triton X-100で透過性し、PBSで洗浄し、TUNEL kit(Boehringer-Mannheim, Mannheim, Germany)の製造業者によるプロトコルに従って37℃で60分間、1×ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)(300 U/ml TdTおよび40μMビオチン‐dUTPを含有する)中でインキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄した。37℃で30分間、FITCにコンジュゲートさせたストレプトアビジンと共にインキュベートすることにより、TUNEL陽性細胞を検出した。DAPI染色によるアポトーシス小体の検出については、Kawasaki, H.ら(Nature 393: 284-289 (1998))の方法に従って行った。
【0133】
ランダム化 Rz-A60 ライブラリーを用いた機能性遺伝子のスクリーニング
各基質結合アーム中に10個のランダムヌクレオチドを有するランダム化Rz-A60ライブラリー(ここで、A60は、60ヌクレオチドからなるポリ(A)配列を表す。)を、レトロウイルス発現系(Kuwabara, T., et al., Mol. Cell 2: 617-627 (1998))を用いて構築した。ランダム化Rz-A60ライブラリーを発現するレトロウイルスに感染させた後、ランダム化Rz-A60ライブラリーを発現したHeLa-Fas細胞を、Fasに特異的な抗体で処理した。24時間後、生存クローンを取得し、そのゲノムDNAを精製した。直接配列決定法によりRz-A60の配列を決定し、Rz-A60の標的遺伝子を遺伝子データベース(BLAST検索)から同定した。
【0134】
結果
内因性RNAヘリカーゼeIF4AIのスライディング及び巻戻し活性(Jankowsky, E. et al., Nature 403: 447-451 (2000))とハンマーヘッド型リボザイムの切断活性とを組合わせることによって、新規のリボザイムを創製した(図13a)。ヘリカーゼにリボザイムを結合するために、リボザイムの3'末端に天然のRNAモチーフであるポリ(A)配列を付加した。このポリ(A)配列はポリ(A)結合タンパク質(PABP)及びPABPと相互作用するプロテイン-1(PIAP)との相互作用を介してRNAヘリカーゼeIF4AIと相互作用する(Craig, A. W. et al., Nature 392: 520-523 (1998); Gallie, D. R., Gene 216: 1-11 (1998); De Gregorio, E. et al., EMBO J. 18: 4865-4874 (1999))。
【0135】
ポリ(A)結合リボザイムを構築するために、tRNAValプロモーター駆動のリボザイムの3'末端にポリ(A)配列(60ヌクレオチド)を結合(図13b;tRNAVal-Rz-A60という。)し、アポトーシス因子FADD(Fas-associated death domain protein)(Chinnaiyan, A. M. et al., Cell 81, 505-512 (1995); Muzio, M. et al., Cell 85: 817-27 (1996))のmRNAにターゲッティングする種々のリボザイム及びポリ(A)結合リボザイム(Rz-A60)の細胞内活性を評価した。FADD mRNAの300ヌクレオチド(nt)からなる5'配列の二次構造をMulFoldプログラム(Jaeger, J. A., Turner, D. H. and Zuker, M., Methods in Enzymology 183: 281-306 (1989))を用いたコンピュータシュミレーションにより予測し、その二次構造図を図13c(配列番号17)に示した。in vivoでのリボザイムによる特定遺伝子の不活化がうまくいくかどうかは、アクセス可能な標的部位の選択に通常依存している。ポリ(A)結合リボザイムの効力を調べるために、特定の標的に対する4種類のポリ(A)結合リボザイム、ポリ(A)非結合リボザイムを設計した。3つのリボザイム、即ちFADD-Rz1, FADD-Rz2, FADD-Rz3(図13d;それぞれ配列番号18〜20)を、安定なステム構造内に局在するアクセス不能部位(配列番号27〜29)をターゲッティングするように設計した(図13c)。これに対して、FADD-Rz4(図13d;配列番号21)は、対照として設計され、FADD mRNAのループ領域内に位置する比較的アクセス可能な部位(配列番号30)をターゲッティングするようにした(図13c)。本発明者らは、ポリ(A)配列を含む若しくはそれを含まない種々のリボザイムを、図13bに示すように、親tRNAVal発現ベクターであるpUCdt中にクローン化した。
【0136】
RNAヘリカーゼeIF4Aがin vitroでtRNAVal-Rz-A60と結合するかどうかを調べるために、本発明者らは、T7ポリメラーゼによりin vitroで転写されたビオチン標識tRNAVal-Rz又はtRNAVal-Rz-A60を用いてビオチン-ストレプトアビジン「プルダウン」アッセイを実施した。ビオチン標識tRNAVal-Rz又はtRNAVal-Rz-A60と一緒にインキュベートしたHeLa細胞の抽出物をストレプトアビジンビーズとインキュベートした。ビーズを良く洗い、結合タンパク質をビーズから溶離した。ついで、溶離したタンパク質をSDS-PAGE及びeIF4AI特異抗体を用いるウエスタンブロッティングによって分析した。イムノブロットにより、ポリ(A)配列をもたないtRNAVal-Rz転写体はeIF4AIに結合しなかったことが示された(図14a、レーン2〜5)。これに対して、tRNAVal-Rz-A60転写体はeIF4AIに結合した(図14a、レーン6〜9)が、このことは、tRNAVal-Rz-A60転写体と内因性eIF4AIとの間の明らかな相互作用を示している。陰性対照として、poly(C)(60ヌクレオチド)を結合したtRNAVal-Rz (tRNAVal-Rz2-C60)も試験したが、これらはeIF4AIに結合しなかった(図14a、レーン10)。これらの結果から、内因性RNAヘリカーゼeIF4AIがin vitroでtRNA-Rz-A60と結合することを示した。
【0137】
種々の形態のtRNA-Rz-A60と内因性eIF4AIとの間のin vivoでの相互作用を確認するために、免疫沈降-RT-PCR(IP-RT-PCR)を行った。tRNA-Rz-A60をコードするプラスミドを用いてHeLa細胞にトランスフェクションした。36時間後、eIF4AI結合タンパク質及びRNAをeIF4AI抗体-プロテインA-セファロースビーズを用いて沈降させた。ついで、eIF4AI結合RNAを精製し、適するリボザイム特異的プライマーを使用するRT-PCRによる分析にかけた。はじめに、RT-PCRによって細胞中のtRNA-Rz又はtRNA-Rz-A60転写体を調べた。図14bに示すように、発現レベルは、実験誤差の限界内で、8つの各リボザイムについてほぼ同一であることが判った(レーン1〜9)。IP-RT-PCR分析では、eIF4AIはtRNA-Rz-A60転写体の全てと相互作用した(図14c、レーン5〜8)。これに対して、ポリ(A)尾部をもたないリボザイム、たとえばtRNA-Rz及びtRNA-Rz-C60転写体、はeIF4AIと共沈降しなかった(図14c、レーン1〜4、9)。これらの結果は、eIF4AIがtRNA-Rz-A60とin vivoで相互作用することを示している。
【0138】
tRNAVal-Rz-A60に結合するたタンパク質がヘリカーゼ活性をもつかどうかを調べるために、RNAヘリカーゼ活性についてELISAを行った(Hsu, C. C. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 253: 594-599 (1998))。はじめに、センス鎖、即ちビオチン標識した部分FADD mRNA(図13c中の緑色ラインで示される、nt60-134)、をビオチン-UTPとT7ポリメラーゼを用いて作製した。つぎに、対応するDIG(ジゴキシゲニン)標識相補鎖であるDIG標識した部分FADD相補RNA(nt140-206、紫色ライン)を、DIG-UTPを用いてT7ポリメラーゼによって転写した(図15a)。これらのRNAを互いにハイブリダイズさせて、ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートのウエルに結合し、これによってヘリカーゼが巻戻し反応を触媒することを可能にした。可能なヘリカーゼ活性の供給源として使用するために、本発明者らはDIG標識tRNAリボザイム-タンパク質複合体を単離した(図15a)。もし基質RNAが巻戻しされなかった場合、DIG標識FADD mRNA(nt 140-206)がプレート上に保持されると予測し、またアルカリホスファターゼ(AP)を結合したDIG特異抗体(α-DIG)により検出可能であると予測した。吸光度の測定により、巻戻しの効率の決定を可能にした。図15bに示すように、tRNAVal(対照)及びtRNAVal-リボザイムに結合したタンパク質は巻戻し活性をもたなかったが、一方、tRNAVal-Rz-A60の各々に結合したタンパク質はヘリカーゼ活性を有していた。さらに、tRNAVal-Rz-C60に結合したタンパク質はいかなるヘリカーゼ活性ももたなかった。したがって、これらの結果は、tRNAVal-Rz-A60複合体は基質にそってスライドし、内因性RNAヘリカーゼeIF4AIと相互作用する結果として基質を巻戻しすることを示唆している。
【0139】
さらに、tRNAVal-Rz-A60-タンパク質複合体がアクセス不能な標的部位を切断できるかどうかを調べるために、これらのリボザイム-タンパク質複合体によるin vitro切断アッセイを行った。はじめに、FADDの部分mRNA(図15aに示されるものであるが、DIG若しくはビオチンラベルがないもの)をハイブリダイズすることによって基質である二重鎖を作製し、上記のとおりポリ(A)結合若しくは非結合リボザイム-タンパク質複合体と混合した。図15cに示されるように、ポリ(A)非結合FADD-Rz1, -Rz2, -Rz3及び-Rz2-C60は二重鎖を巻戻しせず(レーン2、4、6及び8)、したがってそれらは基質を切断できなかった。これに対して、FADD-Rz1-A60, -Rz2-A60及び-Rz3-A60は明らかに基質の巻戻しと切断を可能にした(レーン3、5及び7)。しかし、FADD-Rz2-A60(触媒的に重要な保存ヌクレオチドに単一のG→A突然変異をもつ「I-FADD-Rz-A60」)は二重鎖を巻戻しすることができるが、基質を切断しなかった(レーン9)。これらの結果は明らかに、tRNAVal-Rz-A60-タンパク質複合体がin vitroにおいて巻戻しと切断のような2つの活性を有することを示した。このように、重要なことには、ポリ(A)結合リボザイムは、従来のリボザイムによって切断できなかったアクセス不能な標的部位を切断可能にした。
【0140】
プロアポトーシス因子FADDのmRNAにターゲッティングされたハイブリッドリボザイムの作用を調べるために、Fas遺伝子を発現するHeLa細胞(J. Exp. Med. 103:273 (1956))を使用した。RT-PCRによって、ポリ(A)結合及び非結合リボザイムを発現する細胞中のFADD mRNAのレベルを調べた。図16aに示すように、従来のリボザイムであるFADD-Rz1, -Rz2又は-Rz3を発現するHeLa細胞中のFADD mRNAのレベルは、トランスフェクトされていない(WT)HeLa細胞中のFADD mRNAのものと比較されるとおり変化しなかった(レーン1、2,4及び6)。ここでWTは野生型(wild type)を示す。しかしながら、FADD mRNAのレベルは、FADD-Rz1, -Rz2又は-Rz3を発現する細胞及びWT HeLa細胞におけるレベルと比較して、ポリ(A)結合リボザイム、即ちFADD-Rz1-A60, -Rz2-A60又は-Rz3-A60、を発現するHeLa細胞中で劇的に減少した(レーン3、5及び7)。アクセス可能な標的部位をターゲッティングするときには、ポリ(A)非結合FADD-Rz4もまた基質を切断することができ、FADD mRNAのレベルはFADD-Rz4及びFADD-Rz4-A60の両方によって減少した(レーン8及び9)。さらに、観察された阻害作用が実際にリボザイム仲介切断によるものであることを示すために、不活性型FADD Rz2-A60を使用した。不活性Rz2-A60(I-Rz2-A60、レーン10)はFADD mRNAのレベルに影響を及ぼさなかった。これらの結果から明らかに、本ポリ(A)結合リボザイムは、それらとRNAヘリカーゼeIF4AIとの結合の結果、標的mRNAを切断することにおいて非常に有効であった。
【0141】
つぎに、ポリ(A)結合又は非結合リボザイムを発現するHeLa細胞中のFADD自体のレベルをウエスタンブロッティングによって調べた。FADD-Rz1-A60, -Rz2-A60又は-Rz3-A60を発現するHeLa細胞では、FADDのレベルはWT HeLa細胞又はFADD-Rz1, -Rz2若しくは-Rz3を発現する細胞中のものよりかなり低かった(図16b、レーン3、5及び7)。種々の細胞系で対照として使用されるCBPタンパク質(CREB結合タンパク質)のレベルは、WT HeLa細胞中のものと同じままであった。これらの結果は、RT-PCRの結果と同様に、Rz-A60の作用が従来の親リボザイムのものよりかなり大きかったことを示している。さらに、不活性Rz2-A60は阻害作用をもたなかった(図16b、レーン11)。これらの結果は、阻害作用がリボザイム仲介切断によるものであるという初期の結論に支持を与えるものである。減少したFADDレベルは減少したFADD mRNAレベルを反映した。
【0142】
Fasは腫瘍壊死因子受容体ファミリーの一員であり、Fas特異抗体と架橋するとアポトーシスを誘導する(Yonehara, S. et al., J. Exp. Med. 169: 1747-1756 (1989); Trauth, B. C. et al., Science 245: 301-305 (1989); Suda, T. et al., Cell 75:1169-1178 (1993))。該抗体と架橋すると、Fasは死を誘導するシグナル伝達複合体の形成を誘導する。この複合体はアダプター分子であるFADDとカスパーゼ8からなる。その結果、活性なカスパーゼ8が放出されアポトーシス過程を開始する(Chinnaiyan, A. M. et al., Cell 81: 505-512 (1995); Muzio, M. et al., Cell 85: 817-27 (1996))。しかしながら、エフェクターカスパーゼの活性化に細胞を引き渡す後続の段階の後には、Fas誘導性アポトーシスが起こるだけである。Fas誘導アポトーシスの機序の完全なる詳細は依然として不明である。FADDのレベルが、FADD-Rz-A60を発現するがFADD-Rzを発現しない細胞中で低下するため、FADD-Rz-A60を発現する細胞の表現型が変化したかどうかを調べた。Fas特異抗体(α-Fas)によって誘導されるアポトーシスの間に種々のリボザイムを発現する細胞の生存を調べた。α-Fasで処理を開始してから24時間後に生存細胞数をカウントした。
【0143】
図16cに示すように、α-Fasでの処理の後、アポトーシスが野生型細胞中で生じた。これに対して、ポリ(A)結合リボザイムであるFADD-Rz-A60はアポトーシスを起こさなかった。通常のリボザイムを発現する細胞は、その標的部位へのアクセスが巻戻しなしに可能であるFADD-Rz4を発現する細胞を除いて、アポトーシスを生じた(図16a、レーン8及び図16b、レーン8)。FADD-Rz-A60を発現する細胞の表現型はFADD-Rz4を発現する細胞のものと同じであるため、ポリ(A)モチーフはあらゆる他の遺伝子の発現に影響しなかった。類似の結果は4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩・n水和物(DAPI)による、その場(in situ)での染色によって得られた(図16d)。高レベル活性をもつFADD-Rz-A60は、アポトーシスへのFas誘導経路の詳細な研究のために有用であろう。
【0144】
本発明者らはさらに、ランダム化Rz-A60発現ライブラリーを用いたFas誘導性アポトーシスのシグナル経路に関する新規な機能性遺伝子のスクリーニングシステムを確立した。このシステムでは、本発明者らはRz-A60の各基質結合アームにおいて10個のヌクレオチドをランダム化し、次いで、ランダム化Rz-A60発現ライブラリーを担持するレトロウイルスベクターによりHeLa-Fas細胞を形質導入した(図17a)。ランダム化Rz-A60を導入したHeLa-Fas細胞を、Fasに特異的な抗体で処理し、生存した細胞を回収し、各クローンからそれぞれのゲノムDNAを単離した。各ゲノムDNA中のRz-A60のランダム化領域の配列決定により、アポトーシス経路において重要な役割を果たす遺伝子の迅速な同定が可能となった(図17b)。この一次スクリーニングにおいて、本発明者らは、ヒト由来のFLASH、カスパーゼ 9、FADDおよびPTENなどの、Fas誘導性アポトーシスシグナリングの間にプロアポトーシス機能を有する多くの興味ある遺伝子を同定し(図17b;配列番号31〜34)、特異的なRz〔FLASH-Rz(配列番号35)、Caspase 9-Rz(配列番号36)、FADD-Rz(配列番号37)、PTEN-Rz(配列番号38)〕およびそれらのRz-A60(Rzの3'末端に60ヌクレオチドからなるポリ(A)が結合したもの)を作製することにより、これらの因子の発現レベルおよびそのアポトーシス機能を確認した(図17c、d)。現在、本発明者らは、一次スクリーニングにおいてプロアポトーシス機能を有すると同定された他の未知の遺伝子(Gene Bankに未だに寄託されていないもの)の分析を進めている。理論的には、ポリ(A)尾部を持たない従来のリボザイムを用いても同様のライブラリーを作製することは可能であるが、本発明のハイブリッドリボザイムは任意のmRNA中の任意の部位を攻撃できるため、ランダム化Rzs-A60ライブラリーを用いることによって偽陽性のレベルが有意に減少する(データは示していない)ということには触れておかねばならない。この見解に一致して、図17dに示したように、ポリ(A)尾部の非存在下においては、本発明者らは、従来のリボザイムを有する同様のライブラリーの一次スクリーニングにおいてFADDおよびPTEN(およびその他の未知の遺伝子)を同定することができなかった。このことは、本発明のハイブリッドリボザイムの応用が、遺伝子発見のための一般的な方法として有利であることを実証するものである。
【0145】
【発明の効果】
リボザイムは、部位特異的にRNAを切断することができる、いわゆるRNA制限酵素である。その上、理論上どんな遺伝子(mRNA)にも適用が可能であり、抗ウイルス剤、癌遺伝子発現抑制剤、機能解析を目的とした特異的遺伝子発現阻害剤等、その応用性は計り知れない。これまで、リボザイムを用いた遺伝子発現制御に多くの研究者が取り組んできた。少しずつ進歩はしてきており、最近ではリボザイムを用いた発現阻害の成功例がいくつも論文として発表されるようになってきている。しかしながら、成功するかどうかは未だ不確かなもので、より一般性のあるリボザイム法(リボザイムを用いた遺伝子発現制御法)の確立が切望されていた。本発明者らは、これまでにリボザイムの発現系に改良を加え、高い確立で発現抑制が期待できるリボザイム法の開発に成功してきた。しかしながら、その方法でもリボザイムによる抑制効果は切断部位の選択に非常に影響され、そのために1つの遺伝子に対しいくつものリボザイムを設計しなければならない。アンチセンスの分野でも同様の問題が起こっており、効果的な作用部位の選択法の開発に関する研究も盛んに行われている。本発明者らが構築したCTE付加型及びポリ(A)結合付加型リボザイムは、細胞内で発現されているRNAヘリカーゼと直接的又は間接的に結合しその力を借りることによって、これまでリボザイムなどの機能性核酸が標的にできなかった高次構造を作っているRNAも容易に標的にできる。それは、切断部位の選択がリボザイムによる発現制御に影響しなくなることを示している。この方法を利用することで、リボザイム法の成功率が上がることは間違いなく、また、そのリボザイム開発にかかる時間も飛躍的に縮小されることが期待される。
【0146】
上記の実施例ではリボザイムとRNA ヘリカーゼとのアダプターにCTEを使ったが、このCTEに結合するタンパク質はRNA ヘリカーゼ Aが有力な候補ではあるが、他のタンパク質質の候補も報告されている(P. Gruter et al., (1998) Mol. Cell 1:649-659; I.C. Braun et al., (1999) EMBO J. 18:1953-1965; Y Kang and B.R. Cullen (1999) Genes Dev. 13:1126-1139)。ただ、この候補タンパク質に関しても細胞内で別のRNA ヘリカーゼと強く結合していることが分かっている(S.S. Tseng et al., (1998) EMBO J. 17:2651-2662; C.A. Snay-Hodge et al., (1998) EMBO J. 17:2663-1676)。また、RNA ヘリカーゼと結合できるRNAモチーフはCTE、ポリ(A)配列に限った訳ではなく(H.J. Liao et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8514-8519)、幅広い構築方法が考えられる。しかし重要なことは、いかにしてRNAヘリカーゼの機能をリボザイムに付加できるかということと、その有用性であり、本発明はそのいずれも達成可能とする点で極めて価値が高い。
【0147】
遺伝子解析プロジェクトの成果として2003年までにはヒトの遺伝子の解読が終了するといわれているが、これらの情報を利用するためには個々の遺伝子がそれぞれいかなる機能を有しているかを調べる必要がある。本発明のキメラ分子であるスライディングリボザイムは細胞内で極めて有効に標的mRNAを切断することが可能である。そこで、このリボザイムの標的認識配列をランダム化して細胞内で機能させ、ある着目した表現型が現れた細胞を回収して、そこで発現しているリボザイムの標的認識配列を解析すると、その着目した表現型と細胞内でリボザイムに切断された遺伝子の配列との関係を知ることができる。これは新規の遺伝子機能探索技術、すなわちジーンディスカバリィーシステムであり、本発明によって可能となる技術である。
【0148】
上記の実施例ではCTE又はポリ(A)配列とリボザイムとのキメラ分子について説明したが、本発明は、このような特定の分子に限定されず、他のスライディング可能な分子と、あるいはこの分子またはこの分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域と、他の任意の機能性領域を含む種々のキメラ分子をも包含することは上記の発明の詳細な説明から明らかであろう。
【0149】
【配列表】
【0150】
【配列表フリーテキスト】
配列番号2-人工配列の説明:LTR−ルシフェラーゼキメラ分子の5’−塩基配列。
配列番号3-人工配列の説明:ハンマーヘッド型リボザイム(Rz)の塩基配列。
配列番号4-人工配列の説明:TAR AUC Rzの塩基配列。
配列番号5-人工配列の説明:LTR CUC Rzの塩基配列。
配列番号6-人工配列の説明:LUC GUA Rzの塩基配列。
配列番号7-人工配列の説明:TAR GUU Rzの塩基配列。
配列番号8-人工配列の説明:ヒト胎盤tRNAvalの転写体の塩基配列。
配列番号9-人工配列の説明:Rzの基質の配列。
配列番号10-人工配列の説明:tRNAvalを結合したTAR GUU Rzの配列。塩基番号1−91は3'末端に改変をもつtRNAval、塩基番号92−131はTAR GUU Rz、塩基番号132−137はKpnI認識部位、塩基番号138−140はリンカー、塩基番号141−146はEcoRV認識部位、塩基番号147−151はターミネーターの各配列である。
配列番号11-人工配列の説明:tRNAval-TAR GUU Rz-CTEの配列。塩基番号1−91は3'末端に改変をもつtRNAval、塩基番号92−131はTAR GUU Rz、塩基番号132−137はKpnI認識部位、塩基番号138−309はCTE、塩基番号310−315はEcoRV認識部位、塩基番号316−320はターミネーターの各配列である。
配列番号12-人工配列の説明:ノーザンブロティングのためのプローブの配列。
配列番号13-人工配列の説明:ノーザンブロティングのためのプローブの配列。
配列番号14-人工配列の説明:ノーザンブロティングのためのプローブの配列。
配列番号15-人工配列の説明:ノーザンブロティングのためのプローブの配列。
配列番号16-人工配列の説明:TAR Rz5の塩基配列。
配列番号18-人工配列の説明:FADD‐Rz1の塩基配列。
配列番号19-人工配列の説明:FADD‐Rz2の塩基配列。
配列番号20-人工配列の説明:FADD‐Rz3の塩基配列。
配列番号35-人工配列の説明:FLASH‐Rzの塩基配列。
配列番号36-人工配列の説明:Caspase 9‐Rzの塩基配列。
配列番号37-人工配列の説明:FADD‐Rzの塩基配列。
配列番号38-人工配列の説明:PTEN‐Rzの塩基配列。
配列番号44-人工配列の説明:CPP Rz6の塩基配列。
配列番号45-人工配列の説明:CPP Rz7の塩基配列。
配列番号46-人工配列の説明:CPP Rz8の塩基配列。
配列番号47-人工配列の説明:CPP Rz9の塩基配列。
配列番号48-人工配列の説明:CPP Rz10の塩基配列。
配列番号49-人工配列の説明:CPP Rz1の塩基配列。
配列番号50-人工配列の説明:CPP Rz2の塩基配列。
配列番号51-人工配列の説明:CPP Rz3の塩基配列。
配列番号52-人工配列の説明:CPP Rz4の塩基配列。
配列番号53-人工配列の説明:CPP Rz5の塩基配列。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aおよび1Bは、パネルAに、タンパク質酵素とリボザイムのRNAスライディングの容易性の相違を荷電の仕方に基づいて模式的に説明し、またパネルBに、ハンマーヘッド型リボザイムへのCTE配列の付加、該リボザイムへの可能なスライディング機能の付加、CTE連結リボザイムによる隠れた標的部位の切断を模式的に示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、パネルAに、MulFoldに基づいたCTEの予測二次構造を示し、またパネルBに、tRNAvalプロモーターによって制御されるリボザイム発現カセットの概略図を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、パネルAに、LTR-Luc HeLa細胞におけるtRNAval-リボザイム活性の測定のためのアッセイ系を示し、またパネルBに、リボザイムが標的とするLTR-Luciferase mRNAの5’領域のMulFoldに基づいて予測された二次構造を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、パネルAに、ハンマーヘッド型リボザイムの二次構造を示し、またパネルBに、LTR融合のルシフェラーゼmRNAを標的とする一連のリボザイムを示す。
【図5】この図は、tRNAvalプロモーター連結リボザイムによるLTR駆動のルシフェラーゼ活性の抑制を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、CTE連結リボザイムおよびCTE非連結リボザイムによるCPP32(Procaspase-3)遺伝子の発現阻害を示す。第二抗体としてFITC標識α−IgG抗体を使用し、バンドの強さをFluoro-imager (Molecular Dynamics)によりウエスタンブロッティング分析(パネルA)し、かつ定量(パネルB)した結果である。
【図7】図7Aおよび7Bは、LTR-Luc HeLa細胞内の、tRNA連結リボザイムおよびCTE連結リボザイムの有効な発現と細胞内局在を示す。パネルAは、tRNA連結CTEの局在を示し、またパネルBはtRNA連結リボザイムおよびCTE-Rzの局在を示す。Nは核画分、Cは細胞質画分である。
【図8】この図は、CTE連結リボザイムに対する有力なマイナス作用の検討結果を示す。
【図9】この図は、CTE-RzによるLTR-駆動ルシフェラーゼ活性の抑制を示す。赤色の星印は、TARの比較的アクセス不能な部位にターゲッティングするリボザイムを用いて得られた結果を示す。LTR-Luc HeLa細胞を一過的にTatのみ(レーン1)でトランスフェクトするか、あるいは指示したtRNAベースのリボザイム構築物でトランスフェクトした(Kuwabara, T., et al.(1999),上掲;Koseki, S. et al., Journal of Controlled Release 53:159-173 (1998))。リボザイム活性を示すルシフェラーゼ活性をTatのみの対照に対する割合(%)として記載する。示された値は少なくとも3つのデータ点の平均である。アッセイは一過性のトランスフェクションを用いたため、統計的変動がある。誤差バーは、同日にデータを取ったときには10%以内であり、違った日に取ったときには10%〜25%であった。しかし、いずれの場合にもCTE-リボザイムは常に従来のリボザイムよりも有意に大きな活性を有していた。
【図10】図10A、10Bおよび10Cは、CTE-Rzによるプロカスパーゼ3(CPP32)遺伝子発現の阻害を示す。パネルAは、リボザイムがターゲッティングするプロカスパーゼ3 mRNAの5'領域のMulFold(Kuwabara, T. et al., Proc. Ntl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891 (1999))により予測された二次構造を示す(Kuwabara,T. et al., Mol. Cell 2:617-627(1998))。パネルBは、ウエスタンブロッティングによるプロカスパーゼ3及びアクチンタンパク質の検出を示す。マウスNIH3T3細胞が指示したリボザイム構築物でトランスフェクトされた。パネルCは、パネルBの結果を棒グラフで示したものである。二次抗体としてウサギIgGに対するフルオレセインイソチオシアナート(FITC)標識抗体を用いた。また、アクチン及びプロカスパーゼ3のバンド強度を定量した。プロカスパーゼ3蛋白レベルはアクチン蛋白レベルに対し標準化された。細胞がリボザイム発現ベクターでトランスフェクトされていない場合に記録された標準化された蛋白レベルを100%とした(レーン1)。
【図11】図11Aおよび11Bは、リボザイム発現に対するCTEの作用及びリボザイム活性に対する変異体CTEの作用を示す。パネルAは、HeLa細胞内でのリボザイム転写体の発現、安定性及び細胞内局在を示す。指示した発現構築物でトランスフェクトされたHeLa細胞から調製されたRNAを分画した。N及びCはそれぞれ、核画分、細胞質画分を示す。パネルBは、CTE-Rzの活性に対するCTE配列内の変異(レーン8と9の比較)及びtRNA-CTEのみの優性陰性作用(レーン6と7の比較)を示す。トランスフェクションに使用した各RNAをコードするプラスミドの量(μg)を示している。提示される値は少なくとも3つのデータ点の平均である。アッセイは一過性のトランスフェクションを用いたため、統計的変動がある。誤差バーは、同日にデータを取ったときには10%以内であり、異なる日に取ったときには10%〜25%であった。
【図12】図12Aおよび12Bは、tRNAVal駆動CTE-RzとRNAヘリカーゼとの細胞内相互作用を示す。パネルAは、RNAヘリカーゼhDbp5及びRNAヘリカーゼA(Li, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:709-714 (1999))によるCTE-Rz RNAの同時免疫沈降を示す。C-myc-hDbp5ヘリカーゼ(Schmitt, C. et al., EMBO J. 18:4332-4347 (1999))又はHA-RNAヘリカーゼ(Tang, H. et al., Science 276:1412-1415 (1997); Schmitt, C. et al.,上掲)は一過的に、指示した型のTAR Rz4発現ベクターをもつHeLa S3細胞中に同時トランスフェクトされた。適当なタグを用いて得られた免疫沈降物をRT-PCR((+)RT(+)PCR)に掛けた。野生型CTEが存在する場合にのみ、CTE-Rzが検出された。対照として、RT-PCR(2μg RNA)前、及びRT処理のないPCR((+)PCR)に掛けた後に、RNAを分析した。パネルBは、RNAヘリカーゼhDbp5及びRNAヘリカーゼAがCTE-Rzと相互作用することを示す。指示した型のTAR Rz4はビオチニル化UTPを用いてin viroにて合成し、c-myc-hDbp5又はHA-RNAヘリカーゼAによってトランスフェクトされた細胞からのHeLa S3細胞と混合した。ストレプトアビジンビーズを用いてビオチニル化RNA及び関連蛋白を沈殿させた。適当なタグを認識する抗体を用いるウエスタンブロッティングにより、TAR CTE-Rz4のみがヘリカーゼと相互作用することが示された。図中、Control(対照)はトランスフェクトされた細胞からの全細胞溶解物を示す。
【図13】図13a〜13dは、ポリ(A)結合ハイブリッドリボザイムの概念およびFADD遺伝子に対するリボザイムの設計を示す。パネルaは、通常ではアクセス不能な標的部位の本発明ハイブリッドリボザイムによる切断の模式図を示す。ポリ(A)配列の付加により、eIF4AI RNAヘリカーゼの加入が可能になり、ヘリカーゼの巻き戻し活性をハンマーヘッドリボザイムの切断活性と結合させる。パネルbは、tRNAValプロモーターの制御下にあるポリ(A)結合リボザイムからなる発現カセットを示す。パネルcは、矢印を付した種々のリボザイムの標的であるFADDのmRNAの5'領域の二次構造(MulFoldにより推定)を示す。後の研究で用いたFADDのmRNAの一部は、緑(nt. 60-134)および紫(nt. 140-206)の線で示した。パネルdは該mRNAを標的とするために用いた種々のリボザイムを示す。パネルdは、4つのリボザイムの基質認識アームの配列を示した。切断は、ピンクで示されたトリプレットの後で起こる。
【図14】図14a〜14cは、in vitroおよびin vivoにおける、種々のタイプのtRNAVal駆動ポリ(A)結合リボザイムとRNAヘリカーゼeIF4AIとの相互作用を示す。パネルaは、RNAヘリカーゼeIF4AIが、各ポリ(A)結合リボザイムと相互作用することを示す。示されたリボザイムは、ビオチニル化UTPを用いてin vitroで合成され、次いでHeLa-Fas細胞抽出物と混合された。ストレプトアビジンビーズを用いて、ビオチニル化RNAおよび結合したタンパク質を沈降させた。eIF4AIに対する特異抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、4つのポリ(A)結合リボザイムのみがeIF4AIと相互作用することが示された。詳細については本文を参照されたい。パネルbは、RT-PCRにより検出された、HeLa細胞における種々のリボザイムの発現を示す。パネルcは、ポリ(A)結合リボザイムとRNAヘリカーゼeIF4AIとの免疫沈降を示す。HeLa S3細胞を、示されたリボザイム発現ベクターで一過的にトランスフェクトした。免疫沈降物をRT-PCRにかけた。4つのポリ(A)結合リボザイムがRNAヘリカーゼeIF4AIと同時免疫沈降した。
【図15】図15a〜15cは、ポリ(A)結合リボザイム‐タンパク質複合体に結合したヘリカーゼの活性のELISAによる検出を示す。パネルaは、本文中に記載の如く実施したELISAの模式図を示す。緑(nt. 60-134)および紫(nt. 140-206)の線で示したFADDの基質mRNAの配列は、図13cに示してある。APとはアルカリフォスファターゼを示し、450 nmとはAPにより触媒される反応生成物の450 nmでの検出を示す。パネルbは、ハイブリッドリボザイムによる巻戻し活性を示す。試験した4つのポリ(A)結合リボザイム‐タンパク質複合体は全て、ヘリカーゼ活性を有していた。値は、各ケースにつき3回繰り返して得られた結果の標準偏差付き平均である。パネルcは、ポリ(A)結合または非結合リボザイム‐タンパク質複合体のin vitroにおける切断活性を示す。
【図16】図16a〜16dは、ポリ(A)結合ハイブリッドリボザイムによるFADD遺伝子発現の抑制を示す。パネルaは、ポリ(A)結合または非結合リボザイムを発現した細胞におけるFADD mRNAのレベルを示す。パネルbは、ポリ(A)結合または非結合リボザイムを発現した細胞におけるFADDのレベルを示す。パネルcは、ポリ(A)結合または非結合リボザイムを発現した細胞におけるアポトーシスの度合い(%)を示す。値は、各ケースにつき3回繰り返して得られた結果の標準偏差付き平均である。パネルdは、ポリ(A)結合または非結合リボザイムの発現に関連したアポトーシス小体の検出を示す。
【図17】図17a〜17cは、ポリ(A)結合ハイブリッドリボザイムライブラリーによるFas誘導性アポトーシスのための遺伝子発見システムを示す。パネルaは、遺伝子発見システムの模式図を示す。ランダム化Rz-A60ライブラリーを発現したHeLa-Fas細胞を、Fas特異的抗体で処理した。生存クローンから単離したゲノムDNAの分析から、該リボザイムのランダム化アームの配列を取得した。アポトーシス経路において重要な役割を果たす遺伝子を、遺伝子データベースから取得することが可能である。パネルbは、該遺伝子発見システムによる標的遺伝子の同定を示す。大文字は、Rz-A60のランダム化アームに相補的であった標的配列を示す。パネルcは、ポリ(A)結合もしくは非結合のFLASH‐、Caspase 9-、FADD-、またはPTEN‐Rzを発現した細胞における標的遺伝子の発現レベルを示す。ヒトFLASH、ヒトCaspase 9、ヒトFADDまたはヒトPTENを、これらの因子に対する特異的な抗体を用いたウェスタンブロット分析により検出した。パネルdは、FLASH、Caspase 9、FADD、またはPTENの遺伝子に対するポリ(A)結合もしくは非結合リボザイムを発現した細胞におけるアポトーシスの度合い(%)を示す。値は、各ケースにつき3回繰り返して得られた結果の標準偏差付き平均である。
Claims (26)
- 核酸上を移動することができるタンパク質であるスライディング可能な分子であるヘリカーゼに対し結合親和性をもつ領域である CTE ( constitutive transport element )またはポリ( A )とリボザイムとを含むキメラ分子。
- 前記リボザイムの基質結合部位がランダム化されている、請求項1記載のキメラ分子。
- 前記リボザイムがハンマーヘッド型リボザイムである、請求項1または2に記載のキメラ分子。
- ハンマーヘッド型リボザイムの基質結合部位であるステムIおよびステムIII領域がランダム化されている、請求項3に記載のキメラ分子。
- 前記CTEが配列番号1に示される配列または配列番号1に示される配列において1個または数個のヌクレオチドが置換、欠失、付加または挿入された配列からなり、CTEの機能を有する変異体からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキメラ分子。
- 前記CTEまたはその変異体が、人工的に合成されたRNAまたはDNAである、請求項5に記載のキメラ分子。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子を含む発現ベクター。
- 前記キメラ分子がプロモーターによって制御されている、請求項7に記載の発現ベクター。
- 前記プロモーターがポリメラーゼIIIプロモーターである、請求項8に記載の発現ベクター。
- 前記ポリメラーゼIIIプロモーターがtRNAプロモーターである、請求項9に記載の発現ベクター。
- 前記tRNAプロモーターがtRNAvalプロモーターまたはその変異体である、請求項10に記載の発現ベクター。
- 前記キメラ分子の下流にターミネーター配列をさらに含む、請求項7に記載の発現ベクター。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクター。
- 前記キメラ分子をコードするDNAがプロモーターによって制御されている、請求項13に記載の発現ベクター。
- 前記プロモーターがポリメラーゼIIIプロモーターである、請求項14に記載の発現ベクター。
- 前記ポリメラーゼIIIプロモーターがtRNAプロモーターである、請求項15に記載の発現ベクター。
- 前記tRNAプロモーターがtRNAvalプロモーターまたはその変異体である、請求項16に記載の発現ベクター。
- 前記キメラ分子または該キメラ分子をコードするDNAの下流にターミネーター配列をさらに含む、請求項13に記載の発現ベクター。
- 請求項7〜18のいずれか1項に記載の発現ベクターDNAを鋳型にして従来の方法でRNAを合成し、生成したRNAを回収することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子と、核酸上を移動することができるタンパク質でありスライディング可能な分子であるヘリカーゼとの複合体。
- 前記キメラ分子と前記ヘリカーゼがアダプターを介して結合している、請求項20に記載の複合体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子、請求項7〜18のいずれか1項に記載の発現ベクター、または請求項20もしくは21に記載の複合体を用いて標的核酸をin vitroで特異的に切断する方法。
- 前記標的核酸がウイルス由来遺伝子、癌原遺伝子またはアポトーシス関連遺伝子である、請求項22に記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子、請求項7〜18のいずれか1項に記載の発現ベクター、または請求項20もしくは21に記載の複合体を用いて標的核酸の生物学的機能をin vitroで特異的に阻害または抑制する方法。
- 標的核酸の生物学的機能を解明するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子、請求項7〜18のいずれか1項に記載の発現ベクター、または請求項20もしくは21に記載の複合体のin vitroでの使用方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキメラ分子、請求項7〜18のいずれか1項に記載の発現ベクター、または請求項20もしくは21に記載の複合体を用いて標的核酸を特異的に切断するかまたは標的核酸の生物学的機能を特異的に阻害し、必要に応じて該核酸の切断部位およびその近傍の配列を決定し、該切断または該阻害が生物学的活性に及ぼす影響を調べることを含む、標的核酸の生物学的機能をin vitroで解明するための方法。
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