JP2001190282A - スライディング可能な機能性キメラ分子 - Google Patents

スライディング可能な機能性キメラ分子

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JP2001190282A JP2000336082A JP2000336082A JP2001190282A JP 2001190282 A JP2001190282 A JP 2001190282A JP 2000336082 A JP2000336082 A JP 2000336082A JP 2000336082 A JP2000336082 A JP 2000336082A JP 2001190282 A JP2001190282 A JP 2001190282A
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知子 桑原
Hiroaki Kawasaki
広明 川崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リボザイム等の機能性分子にスライディング
機能を付与することによって、絡まりあった複雑な核酸
構造の内部に埋もれた部分であっても 効率よく標的を
探し出して作用しうる高機能性キメラ分子を提供する。 【解決手段】 スライディング可能な分子と、またはこ
の分子に対しもしくはこの分子と複合体を形成する分子
に対し結合親和性をもつ領域と、機能性領域とを含むキ
メラ分子、このキメラ分子をコードするDNAを含む発現
ベクター、並びにこのキメラ分子または発現ベクターを
有効成分として含む医薬組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スライディング可
能な機能性キメラ分子に関する。より具体的には、本発
明は、スライディング可能な分子または該分子に対し結
合親和性をもつ領域と、任意の機能性領域とを含むキメ
ラ分子に関する。本発明はまた、上記キメラ分子または
このキメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクターに
関する。
【0002】本発明はまた、スライディング可能な分子
とキメラ分子との複合体に関する。本発明はさらに、上
記キメラ分子、複合体または発現ベクターを有効成分と
して含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、上記キ
メラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸
を切断する方法、あるいは標的核酸の生物学的機能を解
明するための方法に関する。
【0003】
【従来の技術】1980年代にチェックおよびアルトマンに
よって発見された、触媒機能をもつRNAを一般にリボザ
イム(ribozyme: ribonucleic acid + enzyme)と称す
る。その発見以来様々な種類のリボザイムが見出され、
RNAという分子の生物進化上の意義が重要視されること
になった。一方、人工的に開発、改良がリボザイムに加
えられ、現在ではわずか約30残基ほどのRNAで、任意のR
NA鎖を部位特異的に切断できるようになった(O.C. Uhle
nbech (1987) Nature 328:596-600; J. Haseloff and
W.L. Gerlach (1988) Nature 334:585-591; F. Eckstei
n and D.M.J. Lilley(eds) (1996) Catalytic RNA, Nuc
leic Acids and Molecular Biology Vol. 10, Springer
-Verlag Pressなど)。リボザイムは基質特異性が非常に
高く、アジドチミジンやチオ化アンチセンスDNAなどと
違い細胞内での非特異的作用はない。このことから、癌
やエイズなどを標的とする遺伝子治療に向けた応用研究
が世界中で盛んに行われている(F. Eckstein and D.M.
J. Lilley, 上掲; N. Sarver et al., (1990) Science
247:1222-1225; J. Ohkawa et al., (1993) Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA 90:11302-11306; S. Altman (1993)
Proc. Natl. Acad. Sci.USA 90:10898-10900など)。
また、リボザイムを用いて特定の標的遺伝子の発現を制
御することで、未知の作用を持つ遺伝子産物の機能を解
明したり、細胞内での相互作用を探索する研究上での非
常に有効な方法ともなっており、分子生物学の基礎研究
においても大きな成果を上げている(H. Kawasaki et a
l., (1998)Nature 393:284-289など)。またリボザイム
以外にも、アンチセンスやアプタマーなどの機能性核酸
を遺伝子治療に役立てるための研究も現在世界中で行わ
れている。
【0004】ハンマーヘッド型リボザイム(Rz)は最も
小さい触媒RNAに属する(Symons, R.H., Ann. Rev. Bioc
hem., 61: 641-671 (1992))。それらは潜在的治療剤と
して試験されており、またそれらの作用機構も研究され
ている(Symons, R. H., Ann.Rev. Biochem., 61: 641-6
71 (1992); Zhou, D.-M. & Taira, K., Chem. Rev.98:
991-1026 (1998); Eckstein F. & Lilley D. M. J. (ed
s.) Catalytic RNA,Nucleic Acids and Molecular Biol
ogy, vol. 10 (Springer-Verlag, Berlin,1996))。これ
らのRNAは特定の部位〔即ち、NUX配列(N及びXはそれぞ
れA, G, C又はU、及びA, C又はUである。)の後ろ、最
も効率的な切断はGUCトリプレットの後ろ〕でオリゴヌ
クレオチドを切断可能である(Shimayama, T., Nishikaw
a, S.& Taira, K., Biochemistry 34: 3649-3654 (199
5))。したがって、特定のRNA分子を切断できる人工エン
ドヌクレアーゼとして使用するために、30個程度のヌク
レオチドからなるRNA分子を作製できる(Haseloff, J. &
Gerlach, W. L., Nature 334: 585-591 (1988))。これ
まで、リボザイムのin vivo使用に関する数多くの研究
が行われ、種々の生物での遺伝子発現の抑制のためにリ
ボザイムを利用することを目的とした多くの成功実験例
が報告されている(Sullenger, B. A. & Cech, T. R., S
cience 262: 1566-1569 (1993); Yu, M., et al., Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA 92: 699-703 (1995); Bertra
nd, E. et al., RNA 3: 75-88 (1997); Kawasaki, H.,
et al., Nature 393: 284-289 (1998); Kuwabara, T.,
et al., Nature Biotechnol. 16: 961-965 (1998); Kuw
abara, T., et al., Mol. Cell 2: 617-627 (1998); Pl
ehn-Dujowich, D. & Altman, S., Proc. Natl. Sci. Ac
ad. USA 95: 7327-7332 (1998); Koseki, S., et al.,
J. Virol. 73: 1868-1877 (1999); Tanabe, T. et al.,
Nature 406: 473-474 (2000))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】遺伝子治療に期待され
るような高い効果を得るためには、細胞内でどれだけ機
能性核酸がその活性を発揮できるかどうかにかかってい
る。細胞内では、mRNAは絡み合った高次構造をとってい
るが、これは一本鎖のmRNA内に所々で相補的な塩基対
(ステム構造)を形成するためである。mRNAを一本の毛
糸にたとえると、その高次構造は静電気によって毛糸が
所々でくっつき合い絡まっているような構造である。こ
の絡まった毛糸(例えばmRNA)内にリボザイムの切断部
位があると、さらにリボザイムと切断部位が結合する確
率は低くなる。このため、in vitroで活性が確認された
リボザイムの多くが、in vivoで有効に機能できないと
いう課題を抱えている。標的mRNAのコンピューターによ
る二次構造予測と、実際のmRNAの高次構造は必ずしも一
致せず、長時間かけてリボザイムを構築してアッセイし
た結果、効率よいリボザイムを得ることに結局失敗する
こともよくある。mRNAの高次構造を何とかして計算、予
測して、アンチセンスが結合しやすい箇所を探索しよう
とする研究も多く成されてきているが、どんな標的にも
対応できる一般的なアプローチの樹立に成功した例は全
くない。
【0006】このような状況のもと、本発明者らは、リ
ボザイムを含む機能性核酸に、標的核酸との高い結合
性、スライディング機能および核酸の高次構造をほど
く、即ち巻戻す(unwinding)機能を付与することによ
って、絡まりあった複雑な核酸構造の内部に埋もれた部
分であっても 効率よく標的を探し出して作用しうる高
機能性核酸の創製に成功した。
【0007】すなわち、本発明の一の目的は、スライデ
ィング可能な分子に対し結合親和性をもつ領域またはス
ライディング可能な分子と複合体を形成する分子に対し
結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメ
ラ分子、あるいはスライディング可能な分子と任意の機
能性領域とを含むキメラ分子、を提供することである。
このようなキメラ分子を構成する領域は、高分子領域と
低分子領域、高分子領域と高分子領域、低分子領域と高
分子領域、低分子領域と低分子領域のいずれも包含す
る。
【0008】本発明の別の目的は、上記キメラ分子また
はこのキメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクター
を提供することである。本発明のさらに別の目的は、上
記キメラ分子とスライディング可能な分子との複合体を
提供することである。本発明のさらに別の目的は、上記
キメラ分子、複合体または発現ベクターを有効成分とし
て含む医薬組成物を提供することである。
【0009】本発明のさらに別の目的は、上記キメラ分
子、複合体または発現ベクターを用いて標的核酸を特異
的に切断する方法を提供することである。本発明のさら
に別の目的は、上記キメラ分子、複合体または発現ベク
ターを用いて標的核酸の生物学的機能を解明するための
方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明を以下に要約す
る。本発明は、スライディング可能な分子に対し結合親
和性をもつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子
を提供する。本発明はまた、スライディング可能な分子
と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供する。
【0011】本発明はさらに、スライディング可能な分
子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域
と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供する。こ
こでスライディング可能な分子と複合体を形成する分子
としては、例えばアダプターがある。
【0012】本発明のキメラ分子は例えば、核酸、ペプ
チド核酸またはタンパク質あるいはそれらの組合わせで
ある。また機能性領域は例えば、酵素もしくは触媒機能
を有するか、または阻害機能もしくは亢進機能を有する
ものであり、このような機能のいずれかをもつ領域であ
る。
【0013】本発明の実施態様において、スライディン
グ可能な分子に対し結合親和性をもつ領域またはスライ
ディング可能な分子と複合体を形成する分子に対し結合
親和性をもつ領域は核酸である。スライディング可能な
分子がタンパク質である場合、該タンパク質の例はDNA
結合タンパク質、RNA結合タンパク質などを含む。例え
ばこのようなタンパク質は、(DNAもしくはRNA)ヘリカ
ーゼ、制限酵素、(DNAもしくはRNA)ポリメラーゼ、お
よびリプレッサーなどであるが、これらに限定されな
い。
【0014】本発明の別の実施態様において、上記機能
性領域はリボザイム、DNAエンザイム、アンチセンスRN
A、アンチセンスDNAおよびアプタマーからなる群から選
ばれる機能性核酸である。リボザイムとしてはハンマー
ヘッド型リボザイムが好ましい。あるいは、機能性領域
は制限酵素、抗体などの機能性タンパク質、生理活性物
質、薬剤などの任意の物質を包含する。
【0015】より具体的には、本発明のキメラ分子は、
スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性をも
つ核酸または該タンパク質と複合体を形成する分子に対
し結合親和性をもつ核酸と、任意の機能性核酸とを含む
キメラ分子である。
【0016】本発明において、スライディング可能な分
子に対し結合親和性をもつ領域または該分子と複合体を
形成する分子に対し結合親和性をもつ領域は上記機能性
領域に直接的にまたは間接的に結合している。間接的に
結合する場合は、領域間に適する長さのリンカーまたは
アダプターが存在しうる。
【0017】本発明のさらに別の実施態様において、上
記スライディング可能なタンパク質に対し結合親和性を
もつ領域または該タンパク質と複合体を形成する分子に
対し結合親和性をもつ領域は、ヘリカーゼまたはそれと
複合体を形成するタンパク質に対し結合親和性を有する
核酸である。そのような核酸の具体例は、RNAヘリカー
ゼまたはそれと複合体を形成するタンパク質に対し結合
親和性を有するCTE(constitutive transport elemen
t)または該CTEと実質的に同等の機能をもつ核酸、或い
はポリ(A)からなる核酸である。ここで該CTEと実質的
に同等の機能をもつ核酸の例は、in vitro selection法
(SELEX法)で人工的に合成された核酸分子(RNAまたは
DNA)である。具体的には、CTEは図2A(または配列番号
1)に示される配列または該CTEと実質的に同等の機能
をもつその変異体からなる。
【0018】本発明は、別の態様において、上記のキメ
ラ分子(DNAの場合)またはキメラ分子(RNAまたはタン
パク質の場合)をコードするDNAを含む発現ベクターを
提供する。通常、上記キメラ分子または該キメラ分子を
コードするDNAはプロモーターによって制御されてい
る。このようなプロモーターの例は、tRNAプロモーター
等のポリメラーゼIIIプロモーター、特にtRNAvalプロモ
ーターまたはその変異体である。例えば、下記の二次構
造(I)をとるRNAのヌクレオチド配列のヌクレオチド8〜
14およびヌクレオチド73〜79の間で水素結合が形成され
る領域にバルジ構造が導入されたプロモーターまたはそ
の変異体を挙げることができる。
【0019】
【化1】
【0020】ここでバルジ構造とは、RNAがヘアピン構
造をとった場合、塩基対が形成できずに二本鎖構造が突
出している部分を指す。本発明の発現ベクターにおい
て、上記キメラ分子の下流にターミネーター配列をさら
に含むことができる。
【0021】本発明の実施態様において、上記キメラ分
子は、機能性RNA配列およびCTE配列を含む。機能性RNA
配列は例えば、リボザイム配列、アンチセンスRNA配列
およびアプタマー配列からなる群から選ばれるが、これ
らに限定されない。後述の実施例では機能性核酸として
リボザイムが使用されるが、本発明は、スライディング
機能が付与された、任意の機能性領域(または機能性分
子)を含むあらゆるキメラ分子を包含することを意図し
ている。
【0022】本発明は、さらに別の態様において、上記
の発現ベクターDNAを鋳型にしてRNAを合成し、生成した
RNAを回収することを含む、上記キメラ分子の製造方法
を提供する。
【0023】本発明は、さらに別の態様において、上記
のキメラ分子と、上記のスライディング可能な分子との
複合体を提供する。スライディング可能な分子の例はRN
Aヘリカーゼ、DNAヘリカーゼ等のヘリカーゼおよび他の
タンパク質(例えば制限酵素、ポリメラーゼ、リプレッ
サーなど)である。本発明の具体例では該スライディン
グ可能な分子はヘリカーゼであるが、これに限定されな
い。ヘリカーゼはアダプターを介してキメラ分子と結合
しうる。
【0024】本発明は、さらに別の態様において、上記
のキメラ分子、複合体または発現ベクターを有効成分と
して含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は例えば、
ウイルス性疾患、アポトーシス関連疾患または遺伝子発
現異常に基づく疾患を予防または治療するためのもので
ある。ウイルス性疾患は、例えばHIV、HCV、HBVを含む
種々のウイルスを原因とする疾患である。
【0025】本発明は、さらに別の態様において、上記
のキメラ分子、複合体または発現ベクターを用いて標的
核酸を特異的に切断する方法を提供する。標的核酸は例
えばRNAウイルス由来遺伝子、癌原遺伝子またはアポト
ーシス関連遺伝子である。
【0026】本発明の別の態様において、本発明は、標
的核酸の生物学的機能を解明するための、上記のキメラ
分子、複合体または発現ベクターの使用を提供する。具
体的には、本発明は、上記のキメラ分子、複合体または
発現ベクターを用いて標的核酸を特異的に切断するかま
たは標的核酸の生物学的機能を特異的に阻害し、必要に
応じて該核酸の切断部位およびその近傍の配列を決定
し、該切断または該阻害が生物学的活性に及ぼす影響を
調べることを含む、標的核酸の生物学的機能を解明する
ための方法を提供する。
【0027】上記方法を用いることによって、何らかの
表現型(例えば癌化が治癒または抑制されるとか、細胞
が分化したとかなどの影響)が得られれば、その効果を
発揮したリボザイム等の機能性核酸を単離、クローニン
グし、その配列を決定し、その配列を基に、その機能性
核酸の標的となっていた遺伝子を決定することが可能と
なる。それにより、その標的遺伝子の機能を解明した
り、新規の遺伝子を発見したりすることができる。
【0028】本発明では、上述のとおり、いかなる機能
性核酸も使用可能であるが、機能性核酸としてリボザイ
ム、アンチセンスRNAまたはアンチセンスDNAが使用され
る場合、それらの基質結合部位はランダム化されていて
もよい。例えばハンマーヘッド型リボザイムの場合、そ
の基質結合部位であるステム(stem)IおよびステムIII
領域がランダム化することができる。ここで「ランダム
化」とは、核酸の基質結合部位の塩基において各塩基に
対しA,T,G,Cすべての塩基が導入されたもののプールを
作製することである。
【0029】本明細書で使用する特定の用語について、
以下に定義する。スライディングとは、ある特定の分子
がある別の分子上を移動することを意味する。本発明の
実施態様では、スライディング機能をもつタンパク質に
結合親和性を有するある種のDNAまたはRNA(mRNAを含
む)などの核酸に機能性核酸を直接的にまたは間接的に
結合することによって、該機能性核酸がスライディング
可能なタンパク質を介して核酸上を移動することが可能
となる。
【0030】機能性領域とは、生体内または細胞内で特
定の生物学的機能、例えば酵素機能、触媒機能(RNA鎖
切断活性など)、(生物学的)阻害機能、(生物学的)
亢進機能などの機能を有する領域をいう。そのような領
域は例えば、リボザイム、DNAエンザイム、アンチセン
スRNA、アンチセンスDNA、アプタマー、DNA酵素(金属
を取り込んで酵素活性を発現する酵素)、制限酵素など
である。
【0031】リボザイムとは、触媒機能をもつRNAを指
す。触媒機能とはRNAの特定の部位を特異的に切断する
働きをいう。リボザイムの一種であるハンマーヘッド型
リボザイムは、基質であるRNA(特にmRNA)と相補的塩
基対を形成して結合し、NUH(NはA,G,C,Uであり、 HはA,
C,Uである。いずれの組み合わせでもよいがGUCがもっと
もよく切断される。)配列の3’側でそのリン酸ジエス
テル結合を切断する(図4A)。本発明では、図4Aに示
される構造のリボザイムが好ましく使用できるが、基質
に相補的な部分の配列の長さおよび塩基配列は表示のも
のに限定されないものとする。
【0032】アンチセンスRNAもしくはDNAとは、標的と
なるRNA(特にmRNA)またはDNAに相補的に結合し、それら
の機能を阻害する核酸を言う。標的がmRNAの場合、アン
チセンスRNAがmRNAに結合し、これによってタンパク質
への翻訳が阻害される。
【0033】アプタマーとは、ある特定のタンパク質に
高い親和性をもって結合するRNA分子をいう。病原性の
原因となるタンパク質に特異的に作用するアプタマー
は、そのタンパク質の機能を細胞内で阻害できると考え
られる。
【0034】RNAまたはDNAヘリカーゼとは、一本鎖のRN
AまたはDNA部分に結合し、RNA(特にmRNA)またはDNAの
高次構造をほどく(即ち巻戻す)酵素であり、例えばヒト
の場合どの細胞でも発現しているタンパク質である。
【0035】CTE(constitutive transport element)
とは、ウイルス構造タンパク質の発現およびパッケージ
ングのために、スプライシングを受けていないゲノムRN
Aを細胞質に輸送するためのシス(cis)作用性ウイルスRN
Aを指す。本明細書中で使用する「CTEと実質的に同等の
機能をもつ核酸」とは、CTEのようにRNAを細胞質に輸送
する働きを有する核酸分子、およびRNAヘリカーゼ等の
スライディングタンパク質と結合親和性をもつように人
工的に創製された核酸分子(RNAおよびDNAなど)を意味
する。また「CTEと実質的に同等の機能をもつその変異
体」とは、RNAを細胞質に輸送する働きを有し、かつCTE
配列において1個または複数個のヌクレオチドの欠失、
置換、付加または挿入を含むCTE変異体を意味する。CTE
にはTAP(Tip-Associated Protein、ここでTipはtyrosi
ne kinase-interacting proteinを意味する。)やRNAヘ
リカーゼAが結合することができる。
【0036】ポリメラーゼIII(「pol III」ともいう)
プロモーターは、リボザイム等の短いRNA分子の発現に
適したプロモーターであり、tRNAプロモーター、レトロ
ウイルス性LTRプロモーター、アデノウイルスVA1プロモ
ーターなどが例示される。ターミネーターとは、mRNA転
写終結部分の遺伝子をいう。
【0037】tRNAvalプロモーター(「tRNAval」ともい
う)とは、pol IIIプロモーターの一種でありtRNA等の
短いRNA分子の転写に関与するプロモーターを意味す
る。tRNAvalプロモーターは、その起源および配列に特
に制限はないが、例えば配列番号8に示される配列(ヒ
ト由来)又はその変異体(例えば3'末端側に1以上の塩
基の変異を含む配列、例えば配列番号10のヌクレオチド
番号(nt)1〜91の配列)、或いはそれらをコードするDN
A配列からなることができる。アダプターとは、物質同
士を結合するときにその物質間に介在する1個または複
数個の分子を意味する。結合は共有結合または非共有結
合のいずれでもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】本発明は、スライディング可能な
分子に対し結合親和性をもつ領域と任意の機能性領域と
を含むキメラ分子;スライディング可能な分子と任意の
機能性領域とを含むキメラ分子;およびスライディング
可能な分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性を
もつ領域と任意の機能性領域とを含むキメラ分子を提供
する。
【0039】具体的には、本発明は、スライディング可
能なタンパク質に対し結合親和性をもつ核酸または該タ
ンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をも
つ核酸と、任意の機能性核酸とを含むキメラ分子を提供
する。また本発明は、スライディング可能なタンパク質
と任意の機能性核酸とを含むキメラ分子を提供する。
【0040】本明細書中で使用する「機能性核酸」は、
上記定義のとおり、生体内または細胞内で特定の生物学
的機能を有するいずれの核酸(DNAまたはRNA)でもよ
く、例えばリボザイム、DNAエンザイム、アンチセンスR
NA、アンチセンスDNA、アプタマー、DNA酵素(金属を取
り込んで酵素活性を発現する酵素)などがあげられる
が、これらに限定されない。後述の具体例では、機能性
核酸としてリボザイム、特にハンマーヘッド型リボザイ
ムが例示される。
【0041】また、スライディング可能なタンパク質の
例は、RNAヘリカーゼ、DNAヘリカーゼからなるヘリカー
ゼ、および、二本鎖DNAを切断するEcoRVなどの制限酵素
などであるが、これらに限定されない。このようなタン
パク質を機能性核酸に外因的にまたは内因的に結合でき
れば、機能性核酸をDNAまたはRNA上をスライディング
(即ち、移動)させることが可能となる。特にヘリカー
ゼが機能性核酸に結合するときには、機能性核酸は標的
核酸の高次構造をほどきながらその核酸上をスライディ
ングすることができる。本発明においては、スライディ
ング可能なタンパク質に対し結合親和性をもつ核酸配列
を任意の機能性核酸配列と結合したキメラ分子を作り、
例えばこのキメラ分子をマイクロインジェクションなど
の方法で直接的に細胞内に導入したり、あるいはキメラ
分子をカチオン性リポソームに封入し細胞内に導入した
り、あるいはウイルスベクター等のベクターに組み込ん
だものを細胞に感染させ導入することによって、該キメ
ラ分子を宿主細胞内で発現させ標的核酸に作用させるこ
とができる。本発明のキメラ分子は、ヘリカーゼ等のス
ライディング可能なタンパク質または該タンパク質と複
合体を形成する分子に対し結合親和性を有しているた
め、細胞内に導入後、細胞内で該タンパク質または該タ
ンパク質と複合体を形成する分子と複合体を形成し標的
核酸上をスライディングし、これにより機能性核酸は標
的核酸上のその作用部位で作用することが可能となる
(図1参照)。特に該タンパク質がヘリカーゼの場合、
標的核酸の高次構造をほどきながら核酸上をスライディ
ングするため、機能性核酸は標的に対し効率的に作用で
きる。
【0042】本発明で使用される「スライディング可能
なタンパク質に対し結合親和性を有する核酸」または
「スライディング可能なタンパク質と複合体を形成する
分子に対し結合親和性を有する核酸」は例えば、ヘリカ
ーゼまたはそれと複合体を形成する分子と結合親和性を
有する核酸、好ましくはRNAヘリカーゼまたはそれと複
合体を形成する分子(アダプター)と結合親和性を有す
る核酸、例えばRNAヘリカーゼ Aと結合するCTE(consti
tutive transport element)と呼ばれる約170塩基のRNA
配列(図 2A;配列番号1)、ポリ(A)配列、人工的に
作られたRNAまたはDNAなどであるが、これらに限定され
ない。CTEはMason-Pfizer monkey virus(MPLV)などのサ
ルD型レトロウイルスが本来もっているRNAであり、こ
れらのウイルスはスプライシングを受けないRNAを核外
輸送するためにこのCTEというRNAモチーフをもっている
と考えられている(H. Tang et al., (1997) Science 27
6:1412-1415; J. Li et al., (1999) Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA 96:709-714; H. Tang et al., (1999) Mo
l. Cell Biol. 19:3540-3550)。本発明の好適な実施態
様においては、スライディング可能なタンパク質または
該タンパク質と複合体を形成する分子に対し結合親和性
を有するRNAは、上記CTE、または該CTEと実質的に同等
の機能をもつRNA、または該CTEと実質的に同等の機能を
もつ図2Aに示されるCTE配列の変異体である。ここで「C
TEと実質的に同等の機能をもつRNA」とは、スライディ
ング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形
成する分子と結合親和性をもつCTE以外の分子、例えばS
ELEX法で人工的に作ったヘリカーゼに結合するアプタマ
ーなどの分子を意味する。また「変異体」とは1個また
は複数個のヌクレオチドの改変(置換、欠失、付加また
は挿入)を意味する。このような改変は、J. Sambrook
et al,Molecular Cloning A Laboratory Mannual,Cold
Spring Harbor Laboratory Press (1989)などの一般的
文献に記載される方法によって実施可能である。
【0043】理論に拘束されるつもりはないが、CTE配
列をリボザイムに連結したキメラ分子あるいは該キメラ
分子をコードするDNAを含む発現ベクターで宿主細胞を
形質転換またはトランスフェクトすると、細胞内で発現
されたCTE配列にはRNAヘリカーゼ が結合するので、RNA
ヘリカーゼ結合リボザイムが細胞内で形成され、そのヘ
リカーゼが標的mRNAの一本鎖部分に結合し、RNA鎖上を
スライディングしながら高次構造をほどき、一方リボザ
イムが標的のRNA鎖の内部に埋もれた切断部位を認識
し、その部位を切断すると考えられる。
【0044】本発明の後述の具体例では、スライディン
グ可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成
する分子に対し結合親和性をもつ核酸がCTE又はポリ
(A)であり、機能性核酸がリボザイムである。そし
て、この場合スライディング可能なタンパク質はRNAヘ
リカーゼである。しかし、本発明はこれらの具体例に限
定されるべきではない。すなわち、スライディング可能
なタンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分
子に対し結合親和性をもつ核酸ならばいかなるものでも
よいし、また機能性核酸もリボザイムに加えてアンチセ
ンス、アプタマーなどのいずれの機能性核酸も使用可能
である。
【0045】本発明のキメラ分子は、通常、スライディ
ング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を形
成する分子に対し結合親和性をもつ核酸配列と任意の機
能性核酸配列とを直接的または間接的に結合したものか
らなり、例えばDNA/RNA合成機(例えばApplied Biosyste
ms社製のモデル394など)を使用することによって化学合
成することができる。両核酸配列の結合の仕方として
は、上記スライディング可能なタンパク質に対し結合親
和性をもつ核酸配列が上記機能性核酸配列の上流側にあ
ってもよいしあるいは下流側にあってもよいが、好まし
くは機能性核酸配列の下流側に、スライディング可能な
タンパク質または該タンパク質と複合体を形成する分子
に対し結合親和性をもつ核酸配列が結合される。これに
よって例えばリボザイム等の機能性核酸の活性効率がよ
り向上する。
【0046】本発明はまた、上記キメラ分子またはこの
キメラ分子をコードするDNAを含む発現ベクターを提供
する。発現系を構築するためのベクターとしては、pUC1
9(宝酒造、京都)、pGREEN LANTERN(ライフテックオ
リエンタル(株)、東京)、pHaMDR (HUMAN GENE THERA
PY 6:905-915 (July 1995))などのプラスミドベクタ
ー、遺伝子治療用ベクターとしてのアデノウイルスベク
ターやレトロウイルスベクターなどを使用できる。
【0047】上記ベクターにおいて、キメラ分子の上流
にはプロモーター配列を含むことができる。プロモータ
ー配列は、該キメラ分子の発現を調節する要素であり、
ウイルスプロモーター(SV40プロモーターなど)、ファ
ージプロモーター(λPLプロモーターなど)、pol III
プロモーター(ヒトtRNAプロモーター(例えばtRNAval
プロモーター)、アデノウイルスVA1プロモーターな
ど)などが含まれる。本発明では、pol IIIプロモータ
ー、特にtRNAプロモーターが好ましく使用できる。
【0048】また本発明のベクターにおいては、キメラ
分子の下流にターミネーター配列をさらに含むことがで
きる。ターミネーターは、転写を終結させる配列であれ
ば、いずれの配列も使用できる。後述の実施例では、タ
ーミネーター配列としてUUUUUが使用された。ベクター
は、必要に応じて抗生物質耐性遺伝子(例えばAmpr, Ne
or)、栄養要求性を相補する遺伝子などの選択マーカー
遺伝子若しくはレポーター遺伝子を含むことができる。
【0049】さらに本発明のベクターにおいて、機能性
核酸配列は機能性RNA(例えばリボザイム、アンチセン
ス、またはアプタマー)配列が好ましく、またスライデ
ィング可能なタンパク質または該タンパク質と複合体を
形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸配列はCTE配
列又はポリ(A)配列が好ましく、したがって好ましい
キメラ分子は機能性RNA配列およびCTE配列又はポリ
(A)配列を含む。
【0050】本発明のキメラ分子は、DNA/RNA合成機に
より化学合成してもよいし、あるいは上記発現ベクター
DNAを鋳型にしてDNA依存性RNAポリメラーゼ酵素の存在
下にRNAを合成し、生成したRNA、即ちキメラ分子、を回
収することによっても得ることができる。また、本発明
の発現ベクターは細胞内に導入される場合には、相同組
換えにより染色体上に組み込まれた後、キメラ分子を発
現することができる。相同組換えを起こすために、宿主
細胞ゲノムの一部と相同な配列の内部にキメラ分子をコ
ードするDNAを挿入したものをベクターDNAに組み込むこ
とができる。染色体への組込みは、遺伝子治療法で使用
されるようなアデノウイルスベクターやレトロウイルス
ベクターだけでなく、プラスミドベクターによっても行
うことができる。
【0051】本発明はさらに、上記キメラ分子とスライ
ディング可能なタンパク質との複合体も包含する。キメ
ラ分子は好ましくはリボザイム配列とCTE配列又はポリ
(A)配列からなるものである。またスライディング可
能なタンパク質は好ましくはヘリカーゼ、特にRNAヘリ
カーゼである。結合は、各成分の機能を損なわない限
り、共有結合または非共有結合のいずれでもよい。非共
有結合の場合には、ヘリカーゼに特異的に結合するアダ
プターを介してCTE又はポリ(A)配列に結合することが
できる。また共有結合の場合には、必要によりリンカー
を介して結合することができる。
【0052】本発明はさらに、上記キメラ分子、上記複
合体または上記発現ベクターを有効成分として含む医薬
組成物を包含する。該組成物は、必要により医薬上許容
される担体(例えば生理食塩水、緩衝液などの希釈剤)
を含むことができる。本発明の医薬組成物の適用は、キ
メラ分子を構成する機能性領域の機能の種類に依存して
いる。例えば機能性分子がリボザイム、アンチセンスお
よびアプタマーである場合には、エイズウイルス(HI
V)、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス等のウイルス
を原因とする疾患、アポトーシス関連疾患(例えばアル
ツハイマー病、パーキンソン病など)、癌、自己免疫疾
患、炎症、遺伝子疾患などの疾患の予防または治療に有
用である。アプタマーであっても、リボザイムと標的は
同じである。本発明で使用される機能性核酸は、疾患の
原因物質の核酸を切断したりまたは核酸に相補的に結合
して機能阻害を起こしたり、病原タンパク質に特異的に
結合して機能阻害を起こすことにより、原因物質の正常
機能を損なわせることができる。キメラ分子またはそれ
をコードするDNAを含有するベクターを細胞に導入する
方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレー
ション法、リポフェクション法、マイクロインジェクシ
ョン法、遺伝子銃による方法、リポソームによる方法
(例えば中西守ら,タンパク質 核酸 酵素 Vol.44, No.1
1, 1590-1596 (1999))などの方法がある。ベクターを
使用する場合には、ベクターを細胞に上記の方法で導入
することができる。例えば疾患部位の細胞を一部取り出
し、in vitroで遺伝子導入を行った後、該細胞を再び組
織に戻すことも可能であるし、あるいは、疾患部の組織
に直接ベクターを導入することもできる。ウイルスベク
ターで感染させる場合のウイルスタイターは通常約107p
fu/ml以上である。
【0053】本発明はさらに、上記キメラ分子、上記複
合体または上記発現ベクターを用いて標的核酸を特異的
に切断または標的核酸の生物学的機能を阻害もしくは抑
制する方法を提供する。この場合、キメラ分子を構成す
る機能性核酸はリボザイムまたはアンチセンスである。
この方法は、例えば標的核酸の生物学的機能を解明する
ためにも使用することができる。リボザイムの標的結合
部位(stem IおよびIII)の配列をランダム化すると、
ある種の生物学的機能に必要な遺伝子を解明することも
できる。
【0054】具体的には、細胞に上記のようなランダム
化した標的結合部位をもつリボザイムをスライディング
できるようにして導入する。例えば正常な細胞に導入し
た結果、癌化を引き起こしたり、あるいは異常な癌細胞
に導入した結果、正常細胞に戻すことができたりした場
合、これにより、癌化に関わる遺伝子を明らかにするこ
とができる。必要に応じて、ジーンバンク等でその配列
を調べることにより、その遺伝子の全配列および機能が
解明できる。遺伝子が未知であった場合は、標的結合部
位の配列を足がかりに標的となっていた遺伝子のクロー
ニングを行うことにより全配列を決定できる。上記のラ
ンダムな配列がたとえ重要な遺伝子と相補的であったと
しても、相手の高次構造のために、多くは標的と相互作
用できず切断できないで終わってしまう。スライディン
グ機能を付加することで、そのようなことが回避され効
率が格段に向上する。
【0055】以下において、機能性核酸としてリボザイ
ム、スライディング可能なタンパク質または該タンパク
質と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸
としてCTE配列及びポリ(A)配列を例に取り上げて、本
発明を説明する。はじめに、高機能化リボザイムの実際
の設計について説明する。
【0056】まず問題となるのは、リボザイムの細胞内
での発現方法である。リボザイムを細胞内に導入するに
は、大きく分けて二つの方法がある。一つは化学合成し
たRNA分子をカチオン性の脂質膜(リポソーム)など
で包み、直接細胞内に導入する方法である。この方法で
は、細胞内に存在するRNA分解酵素に対して抵抗性を与
えるために、RNAに様々な化学修飾を加える必要があ
る。もう一つの方法は、リボザイム配列をコードするDN
Aをプラスミドやウイルスベクター等を用いて導入し、
細胞内のRNA転写系を利用してリボザイムを発現させ
る方法である。この方法では、持続的にリボザイムによ
る標的遺伝子の発現抑制効果が得られ、前者と比べて修
飾が加えられていないので細胞毒性はない。リボザイム
による標的遺伝子の発現抑制効果は、リボザイムの転写
量、安定性、転写された後の活性などによって、大きく
左右される。そこで、これらと密接に関係している発現
系を上手に選択し、効果的なリボザイム発現ベクターを
構築することが重要となる。
【0057】本発明者らは、リボザイムの発現系とし
て、RNAポリメラ−ゼII系に比べて発現量が2〜3桁
高いRNAポリメラ−ゼIII系を選択した。その発現の
ためには、RNAポリメラ−ゼIIIが認識するプロモ−
タ−配列を、リボザイムの前に付加する必要がある(J.
Ohkawa et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9
0:11302-11306など)。好ましいプロモーターとしてtRNA
プロモーター、特にtRNA Valプロモーターを見出し、こ
れを作動可能にリボザイムに結合した。結合の仕方とし
ては、例えばプロモーターの下流にリボザイムが配置さ
れるように結合するのが好ましい。結合の仕方によって
リボザイムの細胞内活性に大きな影響を与えるため、リ
ボザイムの前にどのようにプロモーター配列を結合すれ
ばリボザイムの切断活性に影響を及ぼさないかを調べ、
効果的なリボザイム発現ユニットの開発を行ってきた
(S. Koseki et al., (1999) J. Viol. 73:1868-1877;
T. Kuwabara et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 96:1886-1891; T. Kuwabara et al., (1998) Mol.
Cell 2:617-627)。その工夫により、発現したリボザイ
ムのほとんどが細胞質に局在するように輸送されること
が明らかとなっている。これによってリボザイムを標的
であるmRNAと同様に細胞質に局在させることが可能とな
る。
【0058】CTE結合リボザイム RNA 結合、スライディングおよびRNA 高次構造の巻戻し
機能をもったRNAヘリカーゼをリボザイムと細胞内で結
合させるために、CTEというRNA配列を導入することはす
でに前述した。本発明者らはこのCTE配列をリボザイム
配列の3'側とターミネーター配列との間に、短いリンカ
ー配列を介して挿入した(図 2B)。 HIV-1のLTR領域を
標的とした、このCTE付加型リボザイムおよび非付加型
リボザイム発現ベクターを作成し、HeLa細胞中における
ルシフェラーゼを用いたモデル系でその効果を比較し
た。
【0059】本発明者らは先に、HIV-1のTAR(trans ac
tivating region)を含んだLTR領域の下流にルシフェラ
ーゼ遺伝子を組み込んだLTR-ルシフェラーゼキメラ分子
(配列番号2)を作成し、この遺伝子をゲノム中に組み
込んだ形質転換HeLa細胞株(LTR-Luc HeLa)の樹立を行
っている(図3A)(S. Koseki et al., (1998) J. Cont
rol. Release 53:159-173)。このLTR-ルシフェラーゼ
キメラ分子では、LTR領域中のTAR領域にTat(Trans-act
ivating protein)タンパク質が結合することでその転
写が促進され、その結果、下流にコードされているルシ
フェラーゼの発現が促進される(図3B)。つまり、この
キメラ分子は、HIVの増殖に必須であるTARおよびTatを
介したHIVの転写制御系をモデル化したものであり、実
際のウイルスを用いなくてもウイルス増殖阻害効果を評
価することができる簡易アッセイ系である。この細胞で
はTatタンパク質発現ベクター(pCD-SRα/tat; Y. Take
be etal., (1988) Mol. Cell Biol. 8:466-472)を外か
ら加えることで染色体中に含まれるLTR-ルシフェラーゼ
遺伝子の発現が誘導される。この時、LTR-ルシフェラー
ゼ遺伝子またはTat遺伝子を狙ったリボザイムの発現ベ
クターを同時に加えると、その発現阻害効果をルシフェ
ラーゼ活性により測定することができる。このようなレ
ポーター遺伝子を用いたアッセイ系は、リボザイム等の
阻害剤の効果をより定量的に測定することが可能であ
り、本発明者らの高機能化リボザイムの能力を評価する
のに適していると考えられる。
【0060】リボザイムの切断部位については、ハンマ
ーヘッド型リボザイムは基質mRNAと相補的塩基対を形成
して結合し、NUH(N: A, G, C, U; H: A, C, U, どの組
み合わせでもよいがGUCをもっとも効率よく切断す
る。)配列の3'側でそのリン酸ジエステル結合を切断す
る(図 4A)。LTR-ルシフェラーゼキメラ分子中にはハ
ンマーヘッド型リボザイムの切断可能部位がいくつも含
まれている。前述の通り、リボザイムは基質RNA中の堅
い高次構造の間に割って入り内部にあるNUH配列を切断
する能力は非常に乏しく、比較的容易に相補的塩基対を
形成できるループまたはステムループ中にあるNUH配列
をその切断部位として好む。そこで、二次構造を比較的
予測しやすい、転写開始点から300塩基について、LTR-
ルシフェラーゼmRNAの構造をコンピューターを用いて予
測した(図3B)。この5'領域のうち、アクセスし易いル
ープまたはステムループ中にあるNUH配列を標的とした
リボザイムと、およそリボザイムの切断部位にはむかな
い堅いステム中にあるNUH配列を標的としたリボザイム
をそれぞれ設計した(実施例1及び2、図4Bなど)。そ
れぞれの標的部位は図3B中に示した(配列番号22〜2
6)。LTR領域からの転写物にはTARと呼ばれるRNAモチー
フが含まれている。TARはステムループ構造をしたRNAモ
チーフで、その機能および高次構造において非常によく
研究されている。そのステムループ領域には20塩基対以
上からなる長いステム領域が存在し、非常に強固な構造
をとっていることが知られている。今回設計したリボザ
イムの内、TARGUU Rz(図9のTAR Rz4と同一)、TAR Rz5
はこのTARの堅いステム領域にあるGUU配列、CUA配列を
狙ったものである。これまでのリボザイムの常識では、
このリボザイムは切断部位に結合できず、その切断効率
は非常に低いものであると予測される。しかしながら、
CTE配列をリボザイムにつなげることでRNAヘリカーゼが
リボザイムに結合し、本発明者らの予想した通りにRNA
ヘリカーゼ結合リボザイムが機能するとすれば、TARの
堅いステム領域を狙ったTAR GUU Rz、TAR Rz5も高い切
断活性を示すことが期待される。そこで、本発明者らは
この5種類のリボザイムについて、CTEを付加したもの
(CTE-Rz)と付加しないのも(Rz)の両方をそれぞれ図
2Bに示したように作成し、細胞内で切断活性の比較検討
を行った。
【0061】CTE結合リボザイムによるLTR-ルシフェラ
ーゼキメラ分子の阻害活性 LTR-ルシフェラーゼmRNAに対するCTE付加型または非付
加型リボザイムの細胞内活性は、前述の通りそれぞれの
リボザイムを導入した細胞中におけるルシフェラーゼ活
性を測定することで評価した。
【0062】アッセイの方法は、まず無血清培地(OPTI
-MEM-1)中のLTR-Luc HeLa 細胞(図 3A)に、Tat タン
パク質発現ベクター(pCD-SRα/tat;Y. Tanabe et a
l., Mol. Cell Biol. 8:466-472 (1998)とCTE付加型ま
たは非付加型リボザイム発現ベクター(pCTE-Rz または
pRz;図3A)を、リポフェクチン試薬を用いてトラン
スフェクションした。これらの細胞をCO2インキュベー
ター中で12時間インキュベートした後、血清入り培地
(DMEM, 10% FCS)に培地交換し、さらに24時間インキ
ュベートした。24時間経過後、細胞を溶解し、その細胞
抽出液のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0063】Tat タンパク質発現ベクターだけを細胞に
トランスフェクションした場合のルシフェラーゼ活性を
100%とし、測定結果を図5、図9に示した。結果は、図か
ら明らかなように、CTEを付加したリボザイムはどれも
非付加型リボザイムよりも高い阻害効果を示した。特
に、TAR GUU Rz 、TAR Rz5は、TAR のステム領域を標
的としており、野生型ではほとんどLTR-ルシフェラーゼ
遺伝子の発現を阻害することができなかったのに対し、
CTEを付加することでその活性が飛躍的に増加し高い阻
害効果を示すようになった。TARの様に、堅い高次構造
を形成しているRNAを効果的に切断するには、単なるRNA
結合能の増加だけでなく、その高次構造をほどいてあげ
るサポートが必要である。TARを狙ったCTE-Rzにおける
高い阻害効果は、RNA ヘリカーゼの巻戻し(unwindin
g)能がサポーターとしてリボザイムに加わったと考え
れば説明しやすい。また、コントロールとしてリボザイ
ムに変異を入れて不活性化したもの(TAR GUU IRz;図4
A)やLTR-ルシフェラーゼmRNAを標的とはしていないリ
ボザイム(No target Rz)についても同様にしてアッセ
イを行ったが、有意な阻害効果は得られなかった。この
ことから、CTE付加による副作用はほとんどなく、その
作用はリボザイムに特異的であるといえる。
【0064】またこの実験とは別に、本発明者らは他の
数種類の遺伝子に対してもこのCTE-Rzを作成し、その切
断効果を評価したところ、上記と同様の結果を得ること
ができた。図6、図10はその一例であるが、アポトーシ
ス関連の重要な遺伝子の一つであるプロカスパーゼ(Pr
ocaspase)-3〔CPP32とも呼ばれ、Caspase-3の前駆体で
ある。そのCaspase-3はアポトーシスで起こるクロマチ
ンの断片化に関わるヌクレアーゼを活性化すると言われ
ている。この例で使用したCPP32はマウス由来である
が、本発明ではヒトを含む他の動物由来のものも包含す
る。〕を標的としたリボザイムにCTEを導入したもので
ある。この遺伝子に対しても10個のリボザイム(CPP R
z1〜CPP Rz10)を構築し、NIH3T3細胞にそれぞれのリ
ボザイムを導入し、Procaspase-3タンパク質の発現量を
ウエスタンブロットで調べたものである。図6A、図10B
はFITCラベルした二次抗体を用いたウエスタンブロット
をフルオロイメージャーで読みとった結果で、図 6B、
図10Cはその結果を定量化したものである。いずれの場
合においてもCTEを付加することでその遺伝子発現阻害
効果に著しい増加が見られた。この場合も、野生型のCP
P-Rz5ではほとんど切断できなかったのに対して、CTEを
付加することで高い阻害活性を示すようになった。一
方、コントロールとして用いたActinの発現量には何ら
影響が見られなかった(図6A、図10B)。このことか
ら、CTE付加型および非付加型リボザイムによる副作用
の問題は無く、この効果がProcaspase-3に特異的である
であることがわかる。
【0065】ポリ(A)結合リボザイム 本発明の第二の例は、ハンマーヘッド型リボザイムの部
位特異的切断活性と、内因性RNAヘリカーゼeIF4AIのス
ライディング及び巻戻し活性(Jankowsky, E. etal., Na
ture 403:447-451 (2000))とを組み合わせた新規のポリ
(A)結合リボザイムである。
【0066】ヘリカーゼにリボザイムを結合するため
に、リボザイムの3'末端に天然のRNAモチーフであるポ
リ(A)配列を付加した。このポリ(A)配列はポリ(A)結合
タンパク質(PABP)及びPABPと相互作用するプロテイン-
1(PIAP)との相互作用を介してRNAヘリカーゼeIF4AIと
相互作用する(Craig, A. W. et al., Nature 392: 520-
523 (1998); Gallie, D. R., Gene 216: 1-11 (1998);
De Gregorio, E. et al.,EMBO J. 18: 4865-4874 (199
9))。
【0067】リボザイムは特定の遺伝子の発現の抑制の
ための潜在的に有用なツールであるのは明らかである。
多くの実験的試行がうまくいっているが(Kawasaki, H.,
etal., Nature 393: 284-289 (1998); Kuwabara, T.,
et al., Nature Biotechnol. 16: 961-965 (1998); Kuw
abara, T., et al., Mol. Cell 2: 617-627 (1998);Kos
eki, S., et al., J. Virol. 73: 1868-1877 (1999); T
anabe, T. et al.,Nature 406: 473-474 (2000))、in v
ivoで使用可能な有効なリボザイム-発現系を設計するこ
とは依然として難しい。多くの場合、in vivoでのリボ
ザイムの効力はin vitroでの実験から予想されるものよ
りは低いことが証明されているが、これは、リボザイム
をその標的RNAと接触させることが難しいこと、また細
胞内でその標的部位を位置付けることが難しいことによ
るだろう。多数の研究がリボザイムやアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドの最良の標的部位を同定するための方法
を開発しようとしてきたが、これまで、アクセス可能な
標的配列の選択が標的遺伝子の有効な抑制の成功のため
に不可欠であった。
【0068】本出願において、本発明者らは、新規のハ
イブリッドリボザイムであるtRNAVa l-Rz-A60を構築し、
この種のリボザイムが強力な切断活性と基質巻戻し活性
とをもつことを実証した。この構築物は2つの主要な利
点をもつように思われる。その1つは、これらのリボザ
イムがRNAヘリカーゼeIF4AIとの結合を介して巻戻し活
性を示すことであり、2つめは、このヘリカーゼが通常
の翻訳に利用されているので、これらのリボザイムが高
い効率でそれらの標的mRNAと同時局在可能であるらし
いことである。
【0069】本発明者らのハイブリッドリボザイムは、
親リボザイムよりも効率的に標的mRNAの発現を抑制し
た。さらに、それらは、標的部位の近傍における推定二
次もしくは三次構造に関係無く、任意の選択部位で標的
mRNAを切断することが可能であった。本発明者らのデー
タは全て、おそらくPABPおよびPAIP(Craig, A. W. et a
l., Nature 392: 520-523 (1998); Gallie, D. R., Gen
e 216: 1-11 (1998); DeGregorio, E. et al., EMBO J.
18: 4865-4874 (1999))などのアダプター分子を介した
ポリ(A)尾部とRNAヘリカーゼとの相互作用に由来する種
々のハイブリッドリボザイムの効率が向上したことを示
している。本発明者らが構築したポリ(A)を含有するリ
ボザイムは全て、細胞において有意な活性を示した(デ
ータは示していない)。多くの場合、親ハンマーヘッド
型リボザイムでなくポリ(A)含有リボザイムのみが、目
的の遺伝子の発現を抑制した。本発明者らはまた、別の
ヘリカーゼ結合モチーフである構成的輸送エレメント(C
TE)を用いても同様の結果を得た。CTEは、RNAヘリカー
ゼAおよびDbp5などの他のタイプのRNAヘリカーゼと結合
するものである。有用なRNAモチーフは、ポリ(A)尾部お
よびCTEに限らず、巻き戻し機能を有する様々なハイブ
リッドリボザイムも一般的かつ広範な適用性を有するこ
とが判明するであろう。
【0070】リボザイムを使用する機能性遺伝子の同定 これらのリボザイムを用いて特定の既知の標的mRNAを切
断することに加えて、細胞において特定の表現型に関連
する遺伝子を同定することもできる。これは、ランダム
化結合アームを有するリボザイムを作製することにより
達成し得る。ヒトゲノム配列はまもなく利用可能になる
であろうし、それは重要な遺伝子の迅速な同定方法の開
発にとって極めて価値あるものとなるであろう(Q.-X. L
i et al., Nucleic Acids Res.,28: 2605-2612 (2000);
P. J. Welch et al., Genomics,66: 274-283 (2000);
M. Kruger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 8
566-8571 (2000))。本発明者らのハイブリッドリボザイ
ムは任意の部位を攻撃できるので、それらは任意のmRNA
を攻撃できることになる。ランダム化結合アームを有す
るハイブリッドリボザイムのライブラリーを細胞に導入
すれば、表現型における任意の変化に関連する遺伝子
を、特定のリボザイムクローンの配列決定により容易に
同定することができる(図17a〜d)。
【0071】巻戻し活性と切断活性とを結合させる手段
としての内因性ヘリカーゼの加入は、他のリボザイムや
アンチセンス分子にも応用可能である。これらの研究
は、リボザイムの単純で一般的に応用可能な改変、すな
わちtRNA駆動リボザイムへのCTEやポリ(A)配列の付加に
より、以前にはアクセス不能であった配列を切断の標的
とすることが可能になることを実証するものである。さ
らに、このリボザイム技術は、治療的および一般的に重
要な遺伝子不活性化試薬の開発ならびにポストゲノム時
代における機能遺伝子の迅速な同定にとって強力なツー
ルの代表的なものとなるはずである。
【0072】
【実施例】本発明を以下の実施例によってさらに具体的
に説明するが、本発明の範囲および技術的思想はこれら
の実施例に限定されないものとする。 <実施例1> CTE結合リボザイム(I) 材料と方法 CTE結合リボザイム発現ベクターの構築 S. Kosekiら, (1999) J. Virol. 73:1868-1877に記載の
方法に従って、哺乳類細胞内で活性リボザイムを生成で
きるリボザイム発現ベクターpUC-dtを構築した。リボザ
イムの発現はtRNAvalプロモーターの制御下にあった。
リボザイム配列をヒト遺伝子のtRNAval部分の3’改変
部位に結合して非常に活性なtRNAvalプロモーター連結
リボザイムを得た。元のプラスミドpUC-dtは、tRNAval
をコードするヒト遺伝子のプロモーターを有し、かつリ
ボザイムを挿入するためのクローニング部位Csp 45IとS
alIを有していた。
【0073】プラスミドpUC-dtを制限酵素CspIとSalIで
二重消化し、このプラスミド断片に、KpnIおよびEcoRV
部位をもつリボザイム配列と、該リボザイム配列の3’
末端にターミネーター配列UUUUUをクローン化した。そ
の後、上記KpnIおよびEcoRV部位にCTE配列を挿入した
(図2B)。挿入されたCTE配列は、サルD型レトロウイル
ス由来のSRV CTE-1であり、その構造は図2Aに示した。
また、対照として、CTE配列を含まず、リボザイム配列
とターミネーター配列を含むプラスミドも構築した。
【0074】上記の手順によって、図4Bに示す、CTE配
列をもつまたはCTE配列をもたない4組みのリボザイム(T
AR AUC Rz; LTR CUC Rz; Luc GUA Rz; TAR GUU Rz(そ
れぞれ配列番号4〜7))をpUC-dtにクローン化した。T
AR GUU RzおよびTAR GUU CTE-Rzを具体例として、その
発現カセット部位のDNA配列をそれぞれ配列番号10およ
び11に示す。 (配列番号10): 5'-accgttggtttccgtagtgtagtggttatcacgttcgcctaacacgcgaaaggtccccggttcgaaacc gggcactacaaaaaccaactttatctggtctctgatgaggccgaaaggccgaaaccagagagggtaccccgg atatcttttt-3' (配列番号11): 5'-accgttggtttccgtagtgtagtggttatcacgttcgcctaacacgcgaaaggtccccggttcgaaacc gggcactacaaaaaccaactttatctggtctctgatgaggccgaaaggccgaaaccagagagggtaccagac cacctccctgcgagctaagctggacagccaatgacgggtaagagagtgacattgttcactaacctaagacag gagggccgtcagagctactgcctaatccaaagacgggtaaaagtgataaaaatgtatcactccaacctaaga caggcgcagcttccgagggatttggatatcttttt-3'
【0075】LTR-Luc HeLa細胞におけるtRNAvalリボザ
イム活性の測定用アッセイ系 S. Kosekiら, (1998) J. Control. Release 53:159-173
に記載の方法で作製されたLTR-Luc HeLa細胞(図3A)
は、HIV-1の長末端反復配列(LTR)とルシフェラーゼ遺伝
子とからなるキメラ分子を安定にコードしている。HIV-
1のLTRはTAR(HIVのtrans activating region)領域を
含む調節要素を有している(図3B)。HIV-1調節タンパ
ク質であるTatはTARに結合することによって実質的に転
写を刺激する。ルシフェラーゼ活性の測定は、tRNAval
プロモーター連結リボザイムがキメラLTR-Luc遺伝子の
発現に与える影響をモニターして行なわれた(図3A)。
【0076】基本的に、ルシフェラーゼ活性の測定はS.
Kosekiら,J. Control Release, 1998(上掲)に記載さ
れる方法に従った。80%成長率のLTR-Luc HeLa細胞を12
ウエルプレート中に接種し、CO2インキュベーター中37
℃でインキュベートした。この培養細胞をリン酸緩衝食
塩水(PBS)で2回洗浄し、300μLの無血清培地(OPTI-M
EM-1, Gibco BRL)中に入れ、(同時)トランスフェク
ションを行った。図9に示されるアッセイでは、2μgの
リボザイム発現プラスミドと150ngのTat発現プラスミド
(pCD-SRα/tat)を、300μLのOPTI-MEM -1培地中3μL
のLipofectin試薬(Gibco-BRL, Rockville, MD)と混合
し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーシ
ョン後、混合物をゆっくりOPTI-MEM -1培地中の細胞に
加えた。12時間後、培地を10%FCS含有成長培地(DME
M)と置換し、細胞をさらに24時間培養した。
【0077】ルシフェラーゼ活性は、S. Kosekiら,J. C
ontrol Release, 1998 (上掲)に記載されるとおり、P
icaGeneキット(東京インキ、東京)を用いて測定され
た。LTR-Luc HeLa培養細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)
で2回洗浄後、150μLの1×細胞溶解緩衝液(Promega,
Madison, WI)の中に入れた。室温で30分間インキュベ
ーション後、細胞をかき取り、沈殿物を遠心分離によっ
て除去した。上清から適量のアリコートを取り出し、10
0μLのLuciferin(東京インキ、東京)と混合した後、
ルミノメータでルシフェラーゼ活性を測定した。β−ガ
ラクトシダーゼ活性を参照することによりトランスフェ
クション効率を標準化するために、細胞を50μgのpSV-
β-ガラクトシダーゼコントロールベクター(Promega,
Madison, WI)により同時トランスフェクトし、ついで
β−ガラクトシダーゼによる化学発光シグナルをルミネ
ッセントβ−ガラクトシダーゼジェネティックレポータ
ー系(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて添付の使用
説明書に記載のとおりに測定した(S. Kosekiら,J. Con
trol Release, 1998(上掲)参照)。
【0078】図8に示すアッセイについては、12ウエル
プレートに接種した80%成長率のLTR-Luc HeLa細胞を1
μgのリボザイム発現ベクターと1μgのCTE発現ベクタ
ーとにより同時トランスフェクトした。
【0079】CPP32(procaspase-3) mRNAを標的とするtR
NAvalプロモーター−リボザイムの活性を測定するため
のアッセイ系 CPP32を標的とするリボザイムの活性を検出するため
に、ウエスターンブロッティング分析を行い、NIH 3T3
細胞中のCPP32のレベルを検出した(図6)。上述のリボ
ザイム発現ベクターでトランスフェクトしたNIH 3T3細
胞を収穫した。1レーンあたり50μgのタンパク質を15
%SDS PAGEにロードし、電気泳動後、タンパク質バンド
をPVDF膜(Amersham Co., Buckinghamshire, UK)に転
写した。膜を、ウサギポリクローナルαCPP32抗体とウ
サギポリクローナルアクチン抗体を用いてプローブし
た。膜を、第二抗体であるFITC結合IgG抗体を用いてプ
ローブした後、Fluoro-Image Analyzer (Molecular Dyn
amics)でバンドを検出した。基本的に、L. Dubrezら,(1
998) Blood 7:2415-2422に記載されるとおりにブロッキ
ングおよび検出を行った。
【0080】ノーザンブロティング分析 LTR-Luc HeLa細胞中のリボザイムの発現量と細胞内局在
を測定するために、ノーザンブロッティングを行った。
各発現ベクターでトランスフェクトしたLTR-Luc HeLa細
胞からの全RNAを核画分(N)と細胞画分(C)に分け
た。
【0081】図7に示す各リボザイム発現ベクターをLip
ofectin(Gibco-BRL, Rockville, MD)と組み合わせて用
いてLTR-Luc HeLa細胞にトランスフェクトした。37℃で
36時間培養後、全RNAをISOGEN(登録商標;日本ジー
ン、富山)を用いて単離した。細胞質RNAと核RNAを、Y.
Huang とG.G. Carmichael (1996) Mol. Cell Biol. 1
6:1534-1542に記載される手法で単離した。レーンあた
り30μgの全RNAを3.0%NuSieve(登録商標)(3:1)ア
ガロースゲル(FMC Inc., Rockland, ME)上にロード
し、ついでRNAバンドをHybond-N(登録商標)ナイロン
膜(Amersham Co., Buckinghamshire, UK)に転写し
た。膜を、個々のリボザイムの配列に相補的な合成オリ
ゴヌクレオチドを用いてプローブした。CTEの配列に相
補的な合成プローブは、tRNAvalプロモーター駆動のCTE
RNAの局在と定常状態レベルの測定に使用された。すべ
てのプローブは、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒
造、京都)を用いて32Pで標識した。プローブの配列は
以下のとおりである。 TRNA用プローブ(配列番号12): 5'-aagatatccggggtaccaaagttggtttttgtagtgcccg-3' tRNA-CTE用プローブ(配列番号13): 5'-aagatatccaaatccctcggaagctgcgcctgtcttaggt-3' TAR AUC-RzおよびTAR AUC CTE-Rz用プローブ(配列番号
14): 5'-agaccagatttcggcctttcggcctcatcagtgagcctgg-3' TAR GUU-RzおよびTAR GUU CTE-Rz用プローブ(配列番号
15): 5'-ctctctggtttcggcctttcggcctcatcagagaccagat-3'
【0082】以下に、図面を参照しながら本発明の具体
例を説明する。図1に、ハンマーヘッド型リボザイムへ
のCTE配列の付加、該リボザイムへの可能なスライディ
ング機能の付加、CTE連結リボザイムによる隠れた標的
部位の切断を模式的に示した。
【0083】一般に、EcoRVのような制限酵素のDNA相互
作用領域は正に荷電されており、これによって該制限酵
素はポリヌクレオチド鎖にそってスライディング(移
動)して標的部位を探し出すことができる(図1A;線形
拡散とスライディング機構については、A. Jeltsch et
al., (1996) EMBO J., 15:5104-5111参照)。この機構
においては、標的部位の探索の間に動力学的に好ましく
ない会合/解離の反復事象が回避される。これに反し
て、RNAを切断するリボザイムは、それらのRNA基質と同
様に負に荷電されているため、リボザイムはRNA鎖に沿
って移動することができず、したがってそれらは動力学
的に好ましくない会合/解離の反復事象によって標的部
位を探し出す必要がある(図1A)。その結果、リボザイ
ムの標的部位を含むRNA鎖が長いほど、リボザイムによ
る切断効率は低い。さらに標的部位の中にはin vitroだ
けでなくin vivoでもリボザイムに近づくことができな
いものもあるが、これはそのような標的部位が安定なス
テム構造の内部に隠れていることに起因する。
【0084】この状況を改善するために、本発明者らは
リボザイムにスライディング機能をもたせることを計画
した。翻訳機構に生じるRNAヘリカーゼは天然酵素であ
り、mRNAに沿って移動しmRNAの三次構造をほどくことが
できる(C.−G.Lee et al.(1993)J.Biol.Chem.2
68:13472−13478)。したがって、本発明者らは、直接
的または間接的相互作用によりリボザイムをCTEに連結
することによって、リボザイムとRNAヘリカーゼを結合
することを試みた(図1B)。RNAヘリカーゼは、その非
特異的なRNA結合とスライディング活性のために、構造
化されたmRNAをほどく間にリボザイムをその標的部位に
導くことができる。RNAヘリカーゼとCTEとの直接的相互
作用は、リボザイムにスライディング機能を付与しin v
ivoでリボザイム活性が高まることができる限り、必要
に応じてアダプター分子を介してもよいし、または他の
RNAヘリカーゼの関与を伴ってもよい。図2Aは、MulFold
に基づいたCTEの予測二次構造を示す。また図2BはtRNA
valプロモーターによって制御されるリボザイム発現カ
セットの概略図である。
【0085】In vivoでリボザイムが特定の遺伝子をう
まく不活性化できるかどうかは、標的部位の選択だけで
なく発現ベクターの設計に依存している。発現ベクター
の設計は、発現量と発現されたリボザイムの半減期を決
定する。Pol IIプロモーター(例えば脾臓細胞で特異的
に機能するインスリンプロモーター)は組織特異的なま
たは調節可能な発現を可能にするが、pol III転写体は
かなり高レベルで発現されるようである。pol IIIプロ
モーターの制御下での高レベル発現が有利であるが、こ
れはリボザイムとその標的mRNAとの会合が細胞中でのリ
ボザイム仲介反応の律速段階であるからである。このた
めに本発明者らは、tRNAvalプロモーターの制御下でリ
ボザイムを発現することを選択した。このプロモーター
は従来リボザイムによる標的遺伝子の抑制にうまく使用
されてきたものである(M. Yu etal., (1999) Proc. Nt
l. Acad. Sci. USA 92:699-703; E. Bertrans et al.,
(1997) RNA 3:75-88)。
【0086】tRNAvalプロモーター連結リボザイム酵素
の設計は特に本発明者らの研究成果に基づいているが、
それは、リボザイム配列をヒト遺伝子のtRNAvalプロモ
ーター部分の3’改変部位に結合して非常に高いリボザ
イム活性を得ることからなる(H. Kawasaki et al., (1
998) Nature 393:284-289; T. Kuwabara et al., (199
8) Nature Biotechnology 961-965; T. Kuwabara et a
l., (1998) Mol. Cell 2:617-627; S. Koseki et al.,
(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891)。
すべての場合に、ヒト遺伝子のtRNAval部分の3’部位
が、(i)転写体がRNase Pによってプロセシングを受けな
い、(ii)転写体の構造がtRNAに十分に類似しており、
そのため細胞質に輸送するための輸送レセプターによる
認識を可能とするし、またその標的との同時局在を確実
にする、および(iii)基質−認識アームが分子内ステム
の破壊の際により接近可能になるように、改変された。
【0087】CTE連結リボザイム(CTE-Rz)の構築のた
めに、図2Aに示されるCTE配列が、tRNA連結リボザイム
のリボザイム配列の下流のKpnI部位とEcoRV部位との間
に挿入された。図3Aは、LTR-Luc HeLa細胞におけるtRNA
val-リボザイム活性の測定のためのアッセイ系を示す。
また図3Bは、リボザイムが標的とするLTR-ルシフェラー
ゼ mRNAの5’領域のMulFoldに基づいて予測された二次
構造である。
【0088】本発明者らは、S. Kosekiら, (1998) J. C
ontrol Release 53:159-173に記載されるアッセイ方法
で、HIV-1のLTRとルシフェラーゼ遺伝子とからなるキメ
ラ分子を安定にコードするLTR-Luc HeLa細胞を用いて、
tRNAvalプロモーター連結リボザイムとtRNAvalプロモー
ター連結CTE結合リボザイムの細胞内活性を評価した。H
IV-1のLTRはTAR領域を含む調節要素を含んでいる。HIV-
1調節タンパク質であるTatはTARに結合することによっ
て、実質的に転写を刺激する。ルシフェラーゼ活性の測
定は、tRNAvalプロモーター連結リボザイムがキメラLTR
-Luc遺伝子の発現に与える影響をモニターすることを可
能にする。LTR-Luc HeLa細胞はtRNAvalプロモーター駆
動のリボザイム発現ベクターとTat発現ベクター(pCD-S
Rα/tat)(Y. Takebe et al., (1988) Mol. Cell Biol.
8:466-472)とにより同時トランスフェクトされた。Tat
リボザイムおよびtRNAval連結リボザイムの一時的発現
後に、本発明者らはルシフェラーゼ活性を測定すること
によって各tRNAval-リボザイムの細胞内活性を評価した
(図3A)。
【0089】図3Bに、LTR駆動のルシフェラーゼmRNAの3
00ntの5’部分配列の予測二次構造を示す。in vivoで
のリボザイムによる特定遺伝子の不活性化がうまく行く
かどうかは標的部位の選択に依存している。標的部位の
中には安定なステム構造内部に隠れているものもあり、
そのような標的部位はin vitroでもin vivoでもリボザ
イムに接近できない。本発明者らは、比較的接近可能な
部位を標的とするリボザイムによる遺伝子不活性化の効
率を、比較的接近できない部位を標的とするリボザイム
による効率と比較するために、4組のCTE結合リボザイム
とCTE非結合リボザイムを設計した。3つのリボザイ
ム、即ちTAR AUC Rz, LTR CUC RzおよびLuc GUA Rz(そ
れぞれ橙色、青色、緑色)を設計し、図3Bの対応する色
で下線を引いて示したように、LTR-ルシフェラーゼキメ
ラmRNAのループ領域に位置する比較的接近可能な部位を
標的化するように設計した。これに対して、残りのTAR
GUURz(赤色)は、TAR領域内部の安定なステム構造中に
位置する接近できない部位を標的化するように設計され
た。TAR領域は安定なステム−ループ構造をもつため、
このリボザイムは十分な阻害作用を示すことができない
と予測した。図3B中、ハンマーヘッド型リボザイムによ
る切断に必須のトリプレットは赤い文字で示されてい
る。
【0090】図4Aは、ハンマーヘッド型リボザイムの二
次構造を示す。また図4BはHIV-1駆動のルシフェラーゼm
RNAを標的とする一連のリボザイムを示す。ハンマーヘ
ッド型リボザイムは最小の触媒RNAである。その二次構
造がハンマーヘッドの形に類似しているため、ハンマー
ヘッドと名付けられた。自己切断反応(シス作用)に起
因する配列モチーフがはじめある特定のウイルスのサテ
ライトRNA中で認識されたが、本発明者らは、治療等に
汎用可能なように、トランスに作用するハンマーヘッド
型リボザイムへの変換を行った。このリボザイムは、ア
ンチセンス部位と、フランキングステム−ループ部位を
もつ触媒コアとからなっている(図4A)。これらのリボ
ザイムは、オリゴヌクレオチドを特定の部位NUH(ここ
で、NはA, G, CまたはUであり、HはA, CまたはUであ
る。)で切断可能であり、GUCトリップレットをもっと
も効率的に切断する。
【0091】4つのリボザイムの基質−認識アームの配
列は図4Bに示し、図3Bに対応する色で色づけされてい
る。図5は、tRNAval連結リボザイムによるLTR駆動のル
シフェラーゼ活性の抑制を示す。
【0092】Tat発現ベクター(pCD-SRα/tat)のみを
用いた場合に記録されたルシフェラーゼ活性を100%
(レーン1)とした。リボザイム発現ベクターおよびTa
t発現ベクターを10:1のモル比で用いてLTR-Luc HeLa
細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクショ
ンの36時間後に、各細胞内のルシフェラーゼ活性を分析
した。図5に示された結果は2回の実験の平均結果であ
る。図から判るように、tRNAおよびCTE連結tRNAはLTR−
ルシフェラーゼ遺伝子の発現に対しほとんど阻害作用を
もたない(レーン2と3)。このことは、CTEや、tRNA
valプロモーターが機能するヒト遺伝子を用いる酵素−
発現系に起因した副作用がほとんどないことを示す。さ
らに、比較的接近可能な部位を標的とするように設計さ
れた3つのタイプのリボザイム(TAR AUC Rz, LTR CUC R
z, Luc GUA Rz; それぞれレーン4, 6および8)は、ルシ
フェラーゼ遺伝子の発現にかなりの阻害作用を有するこ
とが判る。これに対し、ステム構造化されたTAR領域内
の接近できない部位を標的とするように設計されたTAR
GUU Rzはほとんど阻害作用をもたない(レーン10)。
【0093】驚くべきことに、リボザイム配列の3’側
にCTE配列を結合した場合(即ち、CTE-Rzを使用した場
合)には、いずれの場合にも、リボザイムの効率は同レ
ベルに顕著に改善されることが判った(レーン5, 7, 9,
11)。リボザイムは、接近可能な部位であろうが接近
できない部位であろうがいずれの部位に対しても同等の
かなりの程度の効率で標的指向した。特に、TAR GUU CT
E-Rz(レーン11)は、その親であるTAR GUU Rz(レーン
10)がほとんど阻害作用をもたないという事実にも拘ら
ず、他のCTE-Rzと同様にかなりの阻害作用を示した。こ
の場合、ルシフェラーゼ活性の有効な阻害を示すうえ
で、ステム構造化されたTAR領域の巻戻しが必須であ
る。したがって、この阻害作用の改善は、リボザイムを
その基質に結合するのを促進し、高度に構造化されたmR
NAをほどくことができるある特定のエフェクター分子の
関与を強く示唆している。その1つの強力な候補はRNA
ヘリカーゼAである。この酵素はRNA結合、スライディン
グ、巻戻しのいずれの酵素活性も有している。対照とし
てTAR GUU Rzの不活性化変異体(TAR GUU IRz)を使用
したが、この変異体は、触媒上重要な保存されたヌクレ
オチドG5→A5の単一変異を有している。また別の対照と
してLTR-Luc mRNAの内部に局在しない標的部位をもつリ
ボザイム(No target Rz)を用いた。CTE配列の有無に
拘らず、これらの対照リボザイムはLTR-ルシフェラーゼ
遺伝子の発現に対しほとんど阻害作用を示さなかった
(レーン12, 13, 14 および15)。このことは、CTEや、
tRNAvalプロモーターが機能するヒト遺伝子を用いる酵
素−発現系に起因した副作用がほとんどないことを示
す。
【0094】図6は、CTE連結リボザイムおよびCTE非連
結リボザイムによるCPP32(Procaspase-3)遺伝子の発現
阻害を示す。LTR-Luc mRNAを標的とするリボザイムとは
別に、CTE連結リボザイムの効果の普遍性を調べるため
に、本発明者らはいくつかの他の遺伝子に標的指向する
CTE連結リボザイムを設計した。多くの場合、本発明者
らはCTE連結リボザイムの同様に高い効能を知見した。
そのような実験結果の一例をこの図に示した。即ち、本
発明者らは、周知のアポトーシス関連遺伝子であるマウ
スCPP32(Procaspase 3)遺伝子の発現の阻害を試験し
た。その際、CPP32 mRNA中の異なる部位に作用する5種
類のリボザイム、即ちCPP Rz1(配列番号49), CPP Rz2(配
列番号50), CPP Rz3(配列番号51), CPP Rz4(配列番号5
2), CPP Rz5(配列番号53)を設計した。特にCPP Rz5は、
ステム構造化されたCPP32 mRNA中の比較的接近できな
い部位に標的指向するように設計された。マウス由来の
NIH3T3細胞をこれらのリボザイム発現プラスミドでトラ
ンスフェクトし、36時間後、各細胞内の蛋白含量をα−
CPP32抗体を用いるウエスタンブロッティングによって
調べた。またα−アクチン抗体を対照として使用した。
第二抗体としてFITC標識α−IgG抗体を使用し、バンド
の強さをFluoro-imager (Molecular Dynamics)により分
析(図6A)しかつ定量(図6B)した。
【0095】図6Aおよび6Bに示されるように、CTEをリ
ボザイムに結合することによって、図5に示した実験と
同様に、阻害効果が甚だしく増強されることが判る。こ
の例でさえ、CTE連結CPP Rz5は、その親リボザイムがTA
R GUU CTE-Rzのように阻害効果をほとんど示すことがで
きないという事実にも拘らず、十分な阻害効果を示し
た。一方、リボザイムはアクチン遺伝子の発現を非特異
的に阻害することはなかった。このことから、CTE連結
リボザイムの高い特異性が示される。
【0096】図7は、LTR-Luc HeLa細胞内の、tRNAプロ
モーター連結リボザイムおよびCTE連結リボザイムの有
効な発現と細胞内局在を示す。LTR-Luc HeLa細胞内での
各リボザイムの発現レベルとその細胞内局在を決定する
ために、ノーザンブロッティング分析を行った。各発現
ベクターでトランスフェクトされたLTR-Luc HeLa細胞か
らの全RNAは核画分(N)と細胞質画分(C)に分けた。
転写された各酵素の量を、各転写体に特異的なプローブ
(配列番号12〜15)を用いるノーザンブロッティングに
よって調べた。先に、本発明者らは、調べた全ての例に
おいて、tRNAvalプロモーターの制御下の発現系からの
転写体は個々に細胞質に輸送されることを確認した(S.
Koseki et al., (1999) J. Viol.,73:1868-1877)。図
7に示されるように、またtRNAvalプロモーター発現系の
性質から予測されるように、tRNAvalプロモーター連結
酵素のいずれも同様の相当程度に細胞質画分に見出さ
れ、核画分には有意な程度に検出されなかった。リボザ
イムとCTE連結リボザイムはともに、CTE配列の有無に拘
らず、類似の発現レベルで細胞質に局在した。
【0097】CTE配列は、細胞質へのD型レトロウイルス
RNAの輸送用シグナルであることが知られているので、C
TEと連結することによるリボザイムの阻害効果の上昇は
細胞質へのリボザイム転写体の輸送と、該リボザイムと
標的mRNAとの共存とに起因するものと推定される。し
かし、リボザイムの効能に及ぼすCTE関連経路を介する
輸送の影響は無視することができる。これは、本発明の
発現系に関する限り、転写体のすべてが個々に細胞質に
輸送され得たからである。また各リボザイムの発現レベ
ルに違いはなかった。したがって、CTEを連結すること
によるリボザイムの効能の増加は、他の影響、おそらく
RNAヘリカーゼAの機能に起因する影響によるものである
ことを強く支持している。
【0098】図8は、CTE連結リボザイムに対する有力な
マイナス作用の検討結果を示す。CTE−リボザイムによ
る効力の増加がCTE配列によるものかどうかを調べるた
めに、CTE連結リボザイムに対するCTEの有力なマイナス
作用を検討した。図8に示すように、TAR GUU Rz発現ベ
クターとトランス作用のCTE発現ベクターとによる同時
トランスフェクションは、TAR GUU Rzの効力に影響を与
えなかった(レーン3, 4)。TAR GUU RzをシスにCTEに
連結したときのみ、かなりの効果が観察された(レーン
5)。しかし、CTE-Rzの増大された効果は、CTE-Rz発現
ベクターとCTE発現ベクターとによる同時トランスフェ
クションによって失われた(レーン6)。CTEによるこの
有力なマイナス作用は、リボザイム効力の改善における
シスに連結したCTEの参加を強く示している。
【0099】 <実施例2> CTE結合リボザイム(II) 材料及び方法 プラスミドの構築 先に記載したようにして、プラスミドpUC-dtから誘導し
たリボザイム発現ベクターを構築した(Koseki, S., et
al., J. Virol., 73:1868-1877 (1999); Kuwabara, T.
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891
(1999))。CTE-Rz発現ベクターを作製するために、サル
D型レトロウイルス由来のCTE(SRV CTE-1;Tang, H. et
al., Science 276:1412-1415 (1997)など)配列を挿入
した(図2A)。pUC-dtをCsp 45IとSal Iとで二重消化
し、Kpn I及びEcoR V部位と3'末端に終結配列UUUUUを
もつ各リボザイム配列を、得られた上記プラスミドにク
ローン化した(図2A)。Kpn IとEcoR V部位は、その後の
CTE配列の挿入に使用された。ベクターpRcCMV-mychDbp5
は、N末端にmycタグをもつヒトDbp5ヘリカーゼ(hDbp5)
遺伝子をコードしている(Schmitt, C. et al., EMBO
J. 18:4332-4347 (1999))。ベクターpcDNA3 RHA-HA
は、N末端にHAタグをもつヒトRNAヘリカーゼA遺伝子を
コードしている(Li, J. et al., Proc. Natl. Acad. S
ci. USA 96:709-714 (1999)など)。
【0100】LTR-Luc HeLa 細胞中のリボザイム活性の測定 ルシフェラーゼ活性は、基本的には文献記載に従ってモ
ニターした(Kuwabara,T. et al.(1999), 上掲)。LTR-
Luc HeLa細胞を12ウエルプレート中80%コンフルエンス
にプレーティングし、CO2インキュベータ中で37℃でイ
ンキュベートした。(同時)トランスフェクション前にリ
ン酸緩衝塩水(PBS)で細胞を二度洗浄した。各リボザイ
ム発現プラスミド4μg及びTat発現用プラスミド(pCD-S
Rα/tat;Koseki, S. et al., Journal of Controlled
Release 53:159-173 (1998))150ngを、低血清培地(OPTI
-MEM I; Gibco-BRL)400μL中、Lipofectin試薬(Gibco-B
RL, Rockville, MD)4μLと混合し、製造業者の使用説
明書の記載に従って室温で30分インキュベートした。優
性陰性活性のアッセイの場合には、指示した量のプラス
ミドをトランスフェクションに用いた(図10B)。つい
で、混合物を静かに細胞に加えた。12時間後、培地を10
%牛胎児血清を補充した成長培地(DMEM)と置換し、細
胞をさらに24時間培養した。
【0101】ルシフェラーゼ活性はPicaGeneキット(東
洋インキ)を用いて文献記載のとおり行った(Kuwabara,
T. et al.(1999),上掲)。β-ガラクトシダーゼ活性を参
照してトランスフェクション効率を標準化するため、細
胞を50ngのpSV-β-ガラクトシダーゼ対照ベクター(Prom
ega, Madison, WI)により同時トランスフェクトし、β-
ガラクトシダーゼによる化学発光シグナルを、発光性β
-ガラクトシダーゼGenetic Reporter System (Clontec
h, Palo Alto, CA)を用いて測定した(Kuwabara,T. et
al.(1999),上掲)。
【0102】in vitroでの個々のリボザイムの切断活性の分析 CTE配列を有する又は有さない各リボザイム及び基質RN
A、即ちLTR-Luc mRNAの5'領域(300 nt)(図2B)、をT7
RNAポリメラーゼを用いてin vitroで調製した。リボザ
イム活性のin vitroアッセイを酵素飽和(シングルター
ンオーバー)条件下、10mM MgCl2、50mM Tris-HCl(pH7.
5)中37℃で行った(Kuwabara, T. et al. Mol. Cell 2:
617-627 (1998))。各リボザイム(10μM)を2nMの5'-
32P標識基質を用いてインキュベートした。基質と各反
応生成物を電気泳動(5%ポリアクリルアミド/7M尿素変
性ゲル)によって分離し、オートラジオグラフィーによ
って検出した。
【0103】ウエスターンブロッティング分析 各リボザイム発現ベクターでトランスフェクトされたNI
H3T3細胞を回収した。レーンあたり50μgのタンパク質
を15%SDSポリアクリルアミドゲル上にロードした。電
気泳動後、タンパク質バンドを二フッ化ポリビニリデン
(PVDF)膜(Amersham, Buckinghamshire, UK)に転写し
た。CPP32に対するウサギポリクローナル抗体とアクチ
ンに対するウサギポリクローナル抗体を用いて膜をプロ
ーブした(Kuwabara, T. et al.(1998),上掲)。二次抗
体であるFITC結合抗IgG抗体と一緒に膜をインキュベー
トした後、FluoroImage Analyzer(Molecular Dynamics,
Sunnyvale, CA)にて検出した。ブロッキングと検出は
基本的に文献記載のとおり行った(Kuwabara, T. et a
l.(1998),上掲)。
【0104】ノーザンブロッティング分析 細胞質RNAと核RNAを各リボザイム発現ベクターでトラン
スフェクトしたLTR-Luc HeLa細胞から単離した(Kuwaba
ra, T. et al.(1998),上掲;Koseki, S. et a.,上掲;K
uwabara, T. et al.(1999),上掲)。レーンあたり30μg
の全RNAを3.0%NuSieve 3:1アガロースゲル(FMC, Rockla
nd, ME)上にロードした。電気泳動後、RNAのバンドをHy
bond-NTMナイロン膜(Amersham)に転写した。種々のリ
ボザイムの配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドを用
いて膜をプローブした。CTE配列に相補的な合成プロー
ブを用いてCTE RNAの局在位置と定常レベルを測定し
た。
【0105】細胞内でのCTE-RzとRNAヘリカーゼとの相互作用の検出 CTE-Rz RNA及びRNAヘリカーゼhDbp5若しくはRNAヘリカ
ーゼAの同時免疫沈降を、CTE-Rz発現ベクターとpRcCMV-
mychDbp5(Schmitt, C. et al., EMBO J. 18:4332-4347
(1999))若しくはpcDNA3 RHA-HA(Li, J. et al., Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 96:709-714 (1999))のいずれか
とを用いてHeLa S3細胞を一過的にトランスフェクトす
ることによって行った。c-myc-hDbp5又はHA-RNAヘリカ
ーゼAを一過的に、指示した型のTAR Rz4発現ベクターを
もつHeLa S3細胞中に同時トランスフェクトした。トラ
ンスフェクションの36時間後、細胞抽出物を集めた。C-
myc-tag(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)又はH
A(hemagglutinin)-tag(Boehringer Mannheim GmbH)のい
ずれかに特異的な抗体を免疫沈降に用いた。50μlのプ
ロテインA-アガロースビーズ(Amersham)に結合させた各
抗体10μlを一緒に4℃一晩インキュベートした。ビー
ズを溶解バッファー(50mM Hepes-KOH, pH7.5,60mM KC
l, 2.5 mM EDTA, 0.1% Triton X-100)を用いて3回洗浄
した。フェノール抽出、エタノール沈殿、DNase Iでの
処理(37℃3時間)、フェノール抽出、エタノール沈殿に
よってビーズから抽出し、定量した。抽出されたRNAを
リボザイム特異的プライマーを用いるRT-PCRに掛け、PC
R産物をアガロースゲル上UV光下で視覚化した。
【0106】in vitro合成されたCTE-Rzと相互作用する
RNAヘリカーゼhDbp5及びRNAヘリカーゼAの沈殿 in vitro合成されたCTE-Rzと相互作用するタンパク質の
沈殿を基本的に文献記載のとおり行った(Li, J. et
a.,上掲)。ビオチン標識RNAをAmpliScribeTM T7転写キ
ット(Epicentre Technologies, Madison, WI)を用いて
合成した。反応中のBiotin-21-UTP(Clontech)対UTPのモ
ル比は1:5であった。対照として、tRNA,Rz又はCTE配
列を含まないビオチニル化転写体(MCS;multi cloning
site)をpBS(Stratagene)を鋳型とし、かつT7 RNAポリ
メラーゼを用いて調製した。pRcCMV-mychDbp5又はpcDNA
3 RHA-HAのいずれかでトランスフェクトされたHeLa S3
細胞2×107からの細胞抽出液200μlを70μgのビオチニ
ル化RNAと混合し、10分間氷上でインキュベートし、結合
バッファーで1mlに調整した。このサンプルに70μlの
ストレプトアビジン結合アガロースビーズ(Gibco BRL)
を加えた。このビーズは前もって、結合バッファー(20
mM Tris-HCl, pH7.5, 60 mM KCl, 2.5 mM EDTA, 0.1% T
riton X-100)で2回洗浄し、結合バッファー100μl中に
懸濁し、氷上に放置した。4℃で一晩インキュベーショ
ン後、ビーズを3回洗浄バッファー(20mM Tris-HCl, pH
7.5, 350 mM KCl, 0.01% NP-40)で洗浄し、20μlの結
合バッファー中に再懸濁した。煮沸によりタンパク質を
溶離し、SDS-PAGE(7%ポリアクリルアミド)によって
分離した。各RNAヘリカーゼの免疫沈降のために、標準
法によってタンパク質をPVDF膜に転写し、上記の抗体で
プローブした。対照として、pRcCMV-mychDbp5又はpcDNA
3 RHA-HAでトランスフェクトされたHeLa細胞からの全細
胞溶解物もウエスタンブロッティングに掛けた。
【0107】結果 ハイブリッド-リボザイム(CTE-Rz)の設計及びLTR-ル
シフェラーゼキメラ遺伝子の発現に対するリボザイムの
作用 CTE配列を従来のtRNA駆動リボザイムの3'末端に結合し
た(図2A, B)。HIV-1由来のLTRのTAR領域に対するリボ
ザイム(Rz)及びCTE-リボザイム(CTE-Rz)の細胞内活性
を定量的に評価した。チャレンジング標的を選択した
が、これは、それが広い二次構造をもつためであった
(図3B)。標的遺伝子はHeLa細胞中で安定に発現し、HIV-
1の長末端反復配列(LTR)とルシフェラーゼ遺伝子とか
らなっている(Koseki, S. et a.(1998),上掲)。このレ
ポーターはTat依存性であるため、Tat用の発現プラスミ
ドを一過的に、リボザイム発現ベクターと一緒にトラン
スフェクションした。
【0108】CTE-Rz設計物の効力を試験するため、特異
的標的用に5つのCTE結合及び非結合リボザイムを作製
した。3つのリボザイム、即ちTAR Rz1(実施例1のTAR A
UC Rzと同一), LTR Rz2(実施例1のLTR CUC Rzと同じ)
及びLuc Rz3(実施例1のLuc GUA Rzと同一)、を、LTR-
ルシフェラーゼキメラmRNAの予測されるループ領域に位
置する比較的アクセス可能な部位にターゲッティングす
るように設計した(図3B)。明らかなように、これらのリ
ボザイムは有意にレポーターの発現を減少した(図9、
レーン4、6及び8)。
【0109】TAR Rz4(実施例1のTAR GUU Rzと同一)と
TAR Rz5(配列番号16)を、LTRルシフェラーゼmRNA5'
領域の予測される切断部位(図3B、それぞれnt5〜23、n
t42〜60)にターゲッティングするように設計し、後に、
TAR領域の公知の安定なステム構造内にアクセス不能で
あることを確認した(下記参照)。CTEをもたないこれら
のリボザイムはルシフェラーゼレポーター活性レベルに
影響を及ぼすことができなかった(図9、レーン10及び1
2)。CTEが結合された場合には、これらのリボザイム
は、切断を触媒することにおいて著しく有効になり、そ
の結果レポーター活性の80%を減少させた(図9、レー
ン11および13)。さらにまた、これらのCTE結合リボザ
イムは、開かれた標的部位を切断するように設計された
従来のリボザイム(TAR Rz1, LTR Rz2, Luc Rz3)につい
て認められるものと比べてより良いレベルに達した。他
のリボザイムへのCTEの結合もまた、それらの活性を高
めた。重要なことには、TAR CTE-Rz4及びTAR CTE-Rz5
は、TAR CTE-Rz1, LTR CTE-Rz2及びLuc CTE-Rz3につい
て認められるものと類似の抑制レベルを達成した(図
9、レーン5、7及び9)。このことから、全てのリボ
ザイムが選択した標的部位を効率的に攻撃することをCT
E部分が可能にしていることが示された。
【0110】in vivoでの標的RNAの巻戻しとヘリカーゼの関与 TAR領域のステムが切断されるためには巻戻しされねば
ならないこと、及びCTEが切断に必要であることが判明
したことから、CTEが巻戻しを容易にすることが分か
る。Tatや多くの他のタンパク質はTAR領域に結合するこ
とも知られている。TAR CTE-Rz4やTAR CTE-Rz5が切断活
性をもつことから、Tatの存在は干渉しなかったことが
示されたが、これはおそらく、TARの二次構造を緩和す
るプロセスの一部としてTatが除去されたためであろ
う。
【0111】観察された阻害作用が実際リボザイム仲介
切断によるものであることを実証するために、本発明者
らは、触媒部位に単一の変異を含む不活性化TAR Rz4を
試験した(図9、レーン14及び15)。切断の欠如は、TAR
CTE-Rz4による阻害がリボザイム仲介切断によるもの
で、アンチセンス作用によらないものであることが示さ
れた。また、豊富に発現されたtRNAと融合する場合に
は、CTEはルシフェラーゼレポーター活性に対し非特異
的な作用をしなかった(図9、レーン3及び15)。
【0112】TAR領域がin vivoでアクセスするのが難し
いのはRNAの折り畳みによるもので、RNA-結合タンパク
質に起因するものでないことをコンピュータ構造予測で
証明するために、in vitro切断アッセイを行った。TAR
基質の非常に僅かな切断が(従来のリボザイムかまたはC
TE融合リボザイムのいずれかである)TAR Rz4とTAR Rz5
について観察されたが、これは、TAR領域の固有の折り
畳みがリボザイムのアクセス不能性の原因であることを
示している。さらにまた、アクセス可能であると予想さ
れる部位に向けられる、従来の及びCTE結合型のリボザイ
ム(TAR Rz1, LTRRz2及びLuc Rz3)はともに、類似した
有意のin vitro活性レベルを示した。したがって、細胞
中で起こるCTE仲介による増強は細胞性因子、おそらくR
NAの二次構造を分離できるヘリカーゼに依存しているよ
うに思われる。
【0113】ハイブリッドリボザイムの一般的応用 CTEリボザイムの一般的応用を調べるために、内因性マ
ウスプロカスパーゼ3(CPP32)の5つの部位をターゲット
とした(図10A;配列番号39〜43(それぞれSite6〜Site
10))。リボザイムCPP Rz6、CPP Rz7、CPP Rz8、CPP
Rz9、CPPRz10の配列をそれぞれ配列番号44〜48に示
す。ターゲットの中にはアクセス不能であることが予想
される部位を含む。マウスNIH3T3細胞をリボザイム発現
プラスミドでトランスフェクトし、ウエスタンブロッテ
ィングによってプロカスパーゼ3の発現レベルを測定し
定量した(図10B)。アクチン発現レベルを対照として用
いた。LTR-lucレポーターについて先述したように、CTE
結合リボザイムは従来の相当物よりも有効であった。特
にCPP CTE-Rz10はかなりの阻害作用(図10C、レーン13)を
示したが、その親リボザイムは実際全く作用しなかった
(レーン12)。CTEリボザイムのいずれもアクチンの発
現を妨げなかった。同様の結果は、数個の他の内因性標
的についても得られた(データを示さず)。
【0114】上記の実験では一過性のトランスフェクシ
ョンを用いたため(つまり、トランスフェクション効率
が100%でなかったため)、完全な抑制は観察されなか
った。しかし、CTE-Rzを用いて安定な細胞系が樹立され
る場合には、標的遺伝子のほぼ100%抑制が達成され
る。これらの結果はCTE-リボザイムの特異性、強力な活
性及び一般的な有用性を実証している。
【0115】ハイブリッドリボザイムの発現レベルと局在 リボザイムの発現レベル、安定性および局在性は、in v
ivoでのリボザイム効率の重要な決定要素である(Sullen
ger, B.A. et al., Science 262:1566-1569 (1993)な
ど)。CTEはD-型レトロウイルスRNAの細胞質への輸送の
ためのシグナルであることが知られているので(Tang,
H. et al., Science 276:1412-1415 (1997)など)、CTE
はリボザイムの細胞質への輸送を促進し、それにより高
活性を導くことができると考えられる。または、CTEが
ステム構造を有するので、CTEはリボザイム含有転写体
を安定化させ得る。CTE-リボザイムの細胞発現レベルお
よび局在を測定するために、本発明者らは、TAR Rz4お
よびTAR CTE-Rz4でトランスフェクトし、分画した細胞
に由来するRNAのノーザンブロット分析を行った(図11
A)。本発明者らの以前の研究においては、試験した全て
の場合に、高活性を有する従来のリボザイムは、ヒトtR
NA Valプロモーターの制御下で専ら細胞質(C)中にの
み見出された(Kawasaki, H. et al., Nature 393:284-2
89 (1998)など)。期待通りに、TAR Rz4およびTAR CTE-R
z4は同程度のレベルで発現され、細胞質に分画され、核
には分画されなかった(図11A)。従って、CTE仲介による
リボザイム活性の増強は、発現レベルが増加したために
生じるものではなく、増加した安定性または輸送効率の
いずれかの結果である。
【0116】増強された効率に関するCTE配列の重要性 CTE-Rzの改善された効力が、増強された転写体の安定性
と細胞内輸送以外の特性に帰せられるように思われたた
め、CTEのヘリカーゼとの相互作用能力が原因であると
考えられた。ヘリカーゼの関与に関して調べるために、
本発明者らは競合実験を行った。リボザイムを含まない
tRNA-CTE とTAR CTE-Rz4との共発現の結果、TAR CTE-Rz
4の、LTR-luc基質の切断効率は減少した(図11B、レーン
6および7)。過剰のtRNA-CTE(図11B、レーン7)、および
過剰ではないtRNA単独(リボザイムを含まず、CTEも含ま
ないもの)(図11B、レーン6)がTAR CTE-Rz4切断に干渉す
ることは、tRNA-CTEとTAR CTE-Rz4が、いくつかの制限
因子に関して競合していることを示唆している。
【0117】さらに、TAR CTE-Rz4の野生型CTEが、2つ
のCTEの突然変異型である△CTE(Tang,H. et al., Scie
nce276:1412-1415(1997)など)またはM36CTE(Braun,
I. etal., EMBO J. 18:1953-1965 (1999); Mol. Cell
1:649-659 (1998)など)のいずれかで置換された場合に
は、リボザイム増強活性は消失した(図11B、レーン8お
よび9)。2つの公知のRNAヘリカーゼは、CTEと相互作用
することが示されている(Tang, H. et al.,上掲など)。
△CTE突然変異体はRNAヘリカーゼAとは相互作用せず (W
estberg, C. et al., J. Biol. Chem. 275:21396-21401
(1999)など)、そして前述のM36CTEはhDbp5 RNAヘリカ
ーゼと相互作用しないことが知られている(Braun,I.
C., 上掲)。これらのCTE突然変異体に関して得られた結
果は、CTEの重要性を強調し、CTE-Rz活性の効率の向上
におけるRNAヘリカーゼの関与を強く支持している。
【0118】ハイブリッド-リボザイムとRNAヘリカーゼ
とのin vivoでの相互作用 これらのRNAヘリカーゼのいずれかが本発明のCTE-Rzと
相互作用するか否かを直接的に試験するために、hDbp5
およびRNAヘリカーゼAを用いて同時免疫沈降を行った。
最初に、TAR CTE-Rz4を、c-myc-タグ付hDbp5(Schmitt,
C. et al., EMBO J. 18:4332-4347 (1999))またはHA-タ
グ付RNAヘリカーゼA(Tang, H. et al.,Science 276:141
2-1415 (1997))のいずれかとともにHeLa細胞中に同時ト
ランスフェクトした。次に、細胞溶解物を、c-myc抗体
またはHA抗体のいずれかを用いる免疫沈降に付した。そ
の結果得られた沈殿物を、TAR CTE-Rz4の存在に関してR
T-PCRにより評価した。TAR CTE-Rz4は、hDbp5沈殿物中
に明らかに見出され、それによりTAR CTE-Rz4とhDbp5が
in vivoで相互作用することが示された(図12A)。TAR CT
E-Rz4は、RNAヘリカーゼAとも結合していたが、この相
互作用はhDbp5に関して観察されたものよりも弱く見受
けられた(図12A)。TAR Rz4、TAR M36CTE-Rz4及びTAR △
CTE-Rz4が用いられた場合には、hDbp5とRNAヘリカーゼA
との相互作用は観察されず、それによりTAR CTE-Rz4お
よびヘリカーゼのいずれかとの相互作用が、機能性CTE
の存在に依存することが確認された。
【0119】相互沈殿により上記の結果を確認した。こ
の場合には、in vitroで転写されたビオチニル化リボザ
イムを、c-myc-hDbp5(Schmitt, C.,上掲)またはHA-RNA
ヘリカーゼA(Westberg, C. et al.,上掲など)のいずれ
かでトランスフェクトしたHeLa細胞から誘導した細胞溶
解物と混合した。使用した4つのリボザイム構築物はTAR
Rz4、TAR CTE-Rz4、TAR M36CTE-Rz4およびTAR △CTE-R
z4であった。非特異的相互作用を抑制するために、tRN
A、RzまたはCTE配列を有しないビオチニル化転写体を用
いた(図12B、MCS)。ビオチンを認識するアビジン結合ア
ガロースビーズを用いてタンパク質を沈殿させた。沈殿
物を、c-myc-hDbp5またはHA-RNAヘリカーゼAに関して、
ウエスタンブロッティングにより探索した。TAR CTE-Rz
4のみがc-myc-hDbp5およびHA-RNAヘリカーゼAと複合体
形成することが見出され、CTEが、hDbp5および/またはR
NAヘリカーゼAと優先的に相互作用することによりCTE-R
z活性を増強していることが証明された。
【0120】考察 tRNA-RzへCTE配列を付加することにより、本発明者ら
は、局所的RNA折り畳みが原因で以前は手におえなかっ
た部位を、効率的に切断できるようにした。またCTEの
存在は、既に機能的であったリボザイムについての切断
活性を改良した。TAR CTE-Rz4およびTAR CTE-Rz5が、Ta
t(TARに結合することが知られたタンパク質)の存在下で
あってもTARを切断できることもまた注目すべきであ
る。RNAヘリカーゼ相互作用を欠損しているCTE突然変異
体を野生型CTEに代えて置換した場合には、その結果得
られるTAR △CTE-Rz4およびTAR M36CTE-Rz4は、完全に
活性を失った。従って、効果的であるためには、CTEはc
isで存在しなければならず、RNAヘリカーゼと相互作用
する能力を維持していなければならない。
【0121】CTE仲介による活性の増加は、リボザイム
の増加された安定性、発現または輸送とは関連していな
いように見られる。むしろ、CTEは、RNAヘリカーゼと相
互作用することにより、リボザイムの作用を仲介してい
ると思われる。2つのRNAヘリカーゼ(hDbp5およびRNAヘ
リカーゼA)がCTEと相互作用することがこれまでに見出
されている。本発明者らは、本発明のCTE-Rzが実際に、
これらのRNAヘリカーゼと(少なくともRNAヘリカーゼhDb
p5と、そしてより少ない程度でRNAヘリカーゼAと(図12
A))哺乳動物細胞において相互作用することを示した。R
NAヘリカーゼhDbp5は、TAP(Tip-関連タンパク質)として
知られたアダプタータンパク質と相互作用することが示
されている(Gruter, P. et al., Mol. Cell 1:649-659
(1998);Kang, Y et al., Genes Dev 13:1126-1139 (199
9))。この相互作用はhDbp5-CTEの相互作用に関して重要
である。TAPを欠いた細胞(QCl-3;Kang Y. et al., Gene
sDev. 13:1126-1139 (1999))を用いることにより、本発
明者らは、TAPがCTE-Rz活性に関して必要不可欠である
こと、そしてそれによりさらにCTE-Rz活性においてhDbp
5と関連していることを示唆する予備的な証拠を得た
(データは示さず)。hDbp5を含むRNAヘリカーゼはRNA
巻戻し活性を有することが知られているので(Lee, C.-
G. et al., J. Biol. Chem. 268:16822-16830など)、本
発明者らはCTEがこのヘリカーゼを、それらが抑制的構
造を巻戻す標的部位へ補充しているとの仮説を立てた。
ヘリカーゼが、いくつかのRNAヘリカーゼについて示さ
れたスライド作用機構と一致して、tRNA-Rzを転写に沿
ってスライドさせる能力さえ有し得ることを考慮するの
は魅力的である(図1B)。本発明のCTE-リボザイムの鍵
となる面とは、それがリボザイム利用の主要な障害を克
服し、それによりリボザイムの一般的な有用性を顕著に
増加させたことである。特に、CTEの結合により、以前
にはリボザイム切断に対して抵抗性であることが見出さ
れていた遺伝子の発現を抑制することが可能となった。
【0122】リボザイムの有用性を一般的に改善したリ
ボザイム技術の近年の進歩にもかかわらず、リボザイム
の設計は問題点を有するものであり続けている(Kawasak
i, H. et al., Nature 393:284-289 (1998); Plehn-Duj
owich, D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:73
27-7332 (1998); Tanabe, T. et al., Nature 406:473-
474 (2000)など)。リボザイムに関して成功するために
は、リボザイムは容易にアクセス可能な標的配列を有し
ていなければならない。現在まで、そのような標的部位
は、コンピュータによって支援される標的RNAの構造的
予測に基づいて、または実用的でない試行錯誤実験によ
って検索されてきた。この制限を克服するために、本発
明者らは、局所的二次構造または三次構造に関係なく、
いずれの標的部位にもアクセスする能力を有し得るリボ
ザイムの構築を探求した。RNA構造を調節するためのRNA
ヘリカーゼの本質的能力を利用することを希望しつつ、
本発明者らはリボザイムをRNAヘリカーゼへ結合するこ
とを決定した。このことは、本発明のリボザイムを、RN
Aヘリカーゼと相互作用することが示された配列であ
る、構成的輸送エレメント(CTE) 配列と結合することに
よって実現した。
【0123】試験した全てのmRNAに関して、本発明のCT
E-リボザイムは、親の非-CTEリボザイムと比較して、遥
かに効率的に発現を抑制する。最も重要なことは、本発
明のCTE-リボザイムは、予測された二次構造または三次
構造に関係なく、いずれの部位においても標的mRNAを切
断する能力を有していることである。全てのCTE-リボザ
イムは、細胞培養物中で強力な活性を示し、多くの場合
に、親の非-CTEリボザイムが不活性であった場合でも作
用した。従って本発明者らは、CTE-リボザイムは幅広い
用途を有するものと確信する。なぜなら、本発明のCTE-
リボザイムは設計および使用が非常に容易であるが、他
方、従来のリボザイム技術では専門的能力が要求される
からである。
【0124】<実施例3> ポリ(A)結合リボザイム 材料および方法 ポリ(A)結合リボザイムをコードするベクターの構築 プラスミドpUC-dtから誘導されたリボザイム発現ベクタ
ーの構築に関しては、先述した(Koseki, S., et al.,
J. Virol. 73: 1868-1877 (1999))。ポリ(A)結合Rz発現
ベクターを作製するために、60ヌクレオチドのポリ(A)
配列を挿入した(図13b)。Csp 45IおよびSal Iを用いてp
UC-dtを二重消化し、Kpn IおよびEcoR V部位ならびに3'
末端にターミネーター配列UUUUUを有する個々のリボザ
イム配列を前記プラスミド中にクローニングした(図13
b)。該Kpn IおよびEcoR V部位は、後のポリ(A)配列の挿
入のために用いた。
【0125】HeLa細胞の培養およびトランスフェクション 10% FCSを添加したダルベッコ改良イーグル培地(Dulbec
co's modified Eagle's medium: DMEM)中でHeLa細胞を
増殖した。ヒトFas遺伝子を安定的に発現したHeLa細胞
(HeLa-Fas細胞)を、Wajant, H. et al., Current Biolo
gy 8: 113-116 (1998)に記載の如く調製した。Lipofect
inTM試薬(GIBCO-BRL)を用いて、Kawasaki,H., et al.,
Nature 393: 284-289 (1998)に記載の如くトランスフェ
クションを実施した。リボザイムをトランスフェクトさ
れたHeLa-Fas細胞系の各々を、3週間、G418と共にイン
キュベートすることにより選別した。
【0126】RT-PCRによる分析 製造業者のプロトコルに従ってIsogenTM(日本ジーン)を
用いて、HeLa-Fas細胞から全RNAを単離した。RNA PCR K
it ver.2(寶酒造)を用いて、FADD上流(nt.110-134)およ
び下流(nt. 589-610)プライマーまたはCBP上流(nt. 442
-467)および下流(nt. 632-655)プライマーを対照として
RT-PCRを実施した。2%アガロースゲル上の電気泳動によ
り、PCR産物を分析した。
【0127】ウェスタンブロット分析 個々のリボザイム発現ベクターでトランスフェクトした
HeLa-Fas細胞を回収した。タンパク質をSDS-PAGE(5%ま
たは10.0%ポリアクリルアミド)により分離し、Kawasak
i, H., et al., Nature 393: 284-289 (1998)に記載の
如くエレクトロブロッティングによりPVDF膜(フナコシ
薬品)に転写した。ヒトFADD(Santa Cruz)、ヒトCBP(San
ta Cruz)、ヒトFLASH(Santa Cruz)、ヒトCaspase 9(San
ta Cruz)、またはヒトPTEN(Santa Cruz)に対する特異抗
体を用いて、Amplified AP-immunblot kit(Bio Rad)に
より免疫複合体を可視化した。
【0128】in vitroにおけるビオチン標識RNA「プル
−ダウン」アッセイ ポリ(A)結合リボザイムとRNAヘリカーゼeIF4AIとの結合
を、記載(Rodgers, J. T. et al., Anal. Biochem. 27
7: 254-259 (2000); Li, J., et al., Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA 96: 709-714 (1999))の如くin vitroにお
けるビオチン標識RNA「プル−ダウン」アッセイによっ
て検出した。各ビオチン標識リボザイムは、Biotin RNA
Labeling Mix Kit(Boehringer Mannheim)を用いて合成
された。
【0129】免疫沈降−RT-PCR(IP-RT-PCR)による分析 ポリ(A)結合リボザイムとRNAヘリカーゼeIF4AIとのin v
ivoにおける結合を、記載(Rodgers, J. T. et al., An
al. Biochem. 277: 254-259 (2000); Li, J.,et al., P
roc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 709-714 (1999))の如
くIP-RT-PCR分析によって検出した。
【0130】ヘリカーゼ活性のELISA ポリ(A)結合リボザイム−タンパク質複合体のヘリカー
ゼ活性を、Hsu, C. C.et al., Biochem. Biophys. Res.
Comm., 253: 594-599 (1998)に記載の如くELISAによっ
て測定した。
【0131】ポリ(A)結合または非結合リボザイム−タ
ンパク質複合体のin vitroにおける活性の検定 ポリ(A)結合または非結合リボザイム−タンパク質複合
体については、本明細書中に記載されている。FADDの部
分mRNA(図13cにおいて、それぞれ緑および紫色のライン
で示されたnt. 60-134およびnt. 140-206)を基質として
用いて、T4ポリヌクレオチドキナーゼにより[γ‐32P]-
ATPで標識した。このアッセイにおいて使用された基質
は、Hsu, C.C.ら(Biochem. Biophys. Res. Comm. 253:5
94-599 (1998))の方法に従ってそれぞれの32P標識mRNA
をハイブリダイズすることにより二本鎖に調製した。各
リボザイムによるin vitroにおける巻き戻しおよび切断
アッセイについては、Kuwabara, T.ら(Mol. Cell 2: 6
17-627 (1998))に記載の方法に従って行った。
【0132】アポトーシスの検出 アポトーシスした細胞の割合を、「TUNEL」アッセイ(K
awasaki, H., et al.,Nature 393: 284-289 (1998))に
よって測定した。4%パラホルムアルデヒド中で15分間、
細胞を固定し、0.1% Triton X-100で透過性し、PBSで洗
浄し、TUNELkit(Boehringer-Mannheim, Mannheim, Germ
any)の製造業者によるプロトコルに従って37℃で60分
間、1×ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフ
ェラーゼ(TdT)(300 U/ml TdTおよび40μMビオチン‐dUT
Pを含有する)中でインキュベートした。次いで、細胞を
PBSで洗浄した。37℃で30分間、FITCにコンジュゲート
させたストレプトアビジンと共にインキュベートするこ
とにより、TUNEL陽性細胞を検出した。DAPI染色による
アポトーシス小体の検出については、Kawasaki,H.ら(N
ature 393: 284-289 (1998))の方法に従って行った。
【0133】ランダム化Rz-A60ライブラリーを用いた機
能性遺伝子のスクリーニング 各基質結合アーム中に10個のランダムヌクレオチドを有
するランダム化Rz-A60ライブラリー(ここで、A60は、6
0ヌクレオチドからなるポリ(A)配列を表す。)を、レ
トロウイルス発現系(Kuwabara, T., et al., Mol. Cel
l 2: 617-627 (1998))を用いて構築した。ランダム化R
z-A60ライブラリーを発現するレトロウイルスに感染さ
せた後、ランダム化Rz-A60ライブラリーを発現したHeLa
-Fas細胞を、Fasに特異的な抗体で処理した。24時間
後、生存クローンを取得し、そのゲノムDNAを精製し
た。直接配列決定法によりRz-A60の配列を決定し、Rz-A
60の標的遺伝子を遺伝子データベース(BLAST検索)から
同定した。
【0134】結果 内因性RNAヘリカーゼeIF4AIのスライディング及び巻戻
し活性(Jankowsky, E.et al., Nature 403: 447-451 (2
000))とハンマーヘッド型リボザイムの切断活性とを組
合わせることによって、新規のリボザイムを創製した
(図13a)。ヘリカーゼにリボザイムを結合するため
に、リボザイムの3'末端に天然のRNAモチーフであるポ
リ(A)配列を付加した。このポリ(A)配列はポリ(A)結合
タンパク質(PABP)及びPABPと相互作用するプロテイン-
1(PIAP)との相互作用を介してRNAヘリカーゼeIF4AIと
相互作用する(Craig, A. W. et al., Nature 392: 520-
523 (1998); Gallie, D. R., Gene 216: 1-11 (1998);
De Gregorio, E. et al., EMBO J. 18: 4865-4874 (199
9))。
【0135】ポリ(A)結合リボザイムを構築するため
に、tRNAValプロモーター駆動のリボザイムの3'末端に
ポリ(A)配列(60ヌクレオチド)を結合(図13b;tRNAVal
-Rz-A60という。)し、アポトーシス因子FADD(Fas-assoc
iated death domain protein)(Chinnaiyan, A. M. et a
l., Cell 81, 505-512 (1995); Muzio, M. et al., Cel
l85: 817-27 (1996))のmRNAにターゲッティングする種
々のリボザイム及びポリ(A)結合リボザイム(Rz-A60)の
細胞内活性を評価した。FADD mRNAの300ヌクレオチド(n
t)からなる5'配列の二次構造をMulFoldプログラム(Jae
ger, J. A., Turner, D. H. and Zuker, M., Methods i
n Enzymology 183: 281-306 (1989))を用いたコンピュ
ータシュミレーションにより予測し、その二次構造図を
図13c(配列番号17)に示した。in vivoでのリボザイム
による特定遺伝子の不活化がうまくいくかどうかは、ア
クセス可能な標的部位の選択に通常依存している。ポリ
(A)結合リボザイムの効力を調べるために、特定の標的
に対する4種類のポリ(A)結合リボザイム、ポリ(A)非結
合リボザイムを設計した。3つのリボザイム、即ちFADD-
Rz1, FADD-Rz2, FADD-Rz3(図13d;それぞれ配列番号18
〜20)を、安定なステム構造内に局在するアクセス不能
部位(配列番号27〜29)をターゲッティングするように
設計した(図13c)。これに対して、FADD-Rz4(図13d;配
列番号21)は、対照として設計され、FADD mRNAのループ
領域内に位置する比較的アクセス可能な部位(配列番号
30)をターゲッティングするようにした(図13c)。本発
明者らは、ポリ(A)配列を含む若しくはそれを含まない
種々のリボザイムを、図13bに示すように、親tRNAVal
発現ベクターであるpUCdt中にクローン化した。
【0136】RNAヘリカーゼeIF4Aがin vitroでtRNA
Val-Rz-A60と結合するかどうかを調べるために、本発明
者らは、T7ポリメラーゼによりin vitroで転写された
ビオチン標識tRNAVal-Rz又はtRNAVal-Rz-A60を用いてビ
オチン-ストレプトアビジン「プルダウン」アッセイを
実施した。ビオチン標識tRNAVal-Rz又はtRNAVal-Rz-A60
と一緒にインキュベートしたHeLa細胞の抽出物をストレ
プトアビジンビーズとインキュベートした。ビーズを良
く洗い、結合タンパク質をビーズから溶離した。つい
で、溶離したタンパク質をSDS-PAGE及びeIF4AI特異抗体
を用いるウエスタンブロッティングによって分析した。
イムノブロットにより、ポリ(A)配列をもたないtRNAVal
-Rz転写体はeIF4AIに結合しなかったことが示された(図
14a、レーン2〜5)。これに対して、tRNAVal-Rz-A60転
写体はeIF4AIに結合した(図14a、レーン6〜9)が、こ
のことは、tRNAVal-Rz-A60転写体と内因性eIF4AIとの間
の明らかな相互作用を示している。陰性対照として、po
ly(C)(60ヌクレオチド)を結合したtRNAVal-Rz (tRNA
Val-Rz2-C60)も試験したが、これらはeIF4AIに結合しな
かった(図14a、レーン10)。これらの結果から、内因性
RNAヘリカーゼeIF4AIがin vitroでtRNA-Rz-A60と結
合することを示した。
【0137】種々の形態のtRNA-Rz-A60と内因性eIF4AI
との間のin vivoでの相互作用を確認するために、免疫
沈降-RT-PCR(IP-RT-PCR)を行った。tRNA-Rz-A60をコー
ドするプラスミドを用いてHeLa細胞にトランスフェクシ
ョンした。36時間後、eIF4AI結合タンパク質及びRNA
をeIF4AI抗体-プロテインA-セファロースビーズを用い
て沈降させた。ついで、eIF4AI結合RNAを精製し、適
するリボザイム特異的プライマーを使用するRT-PCRによ
る分析にかけた。はじめに、RT-PCRによって細胞中のtR
NA-Rz又はtRNA-Rz-A60転写体を調べた。図14bに示すよ
うに、発現レベルは、実験誤差の限界内で、8つの各リ
ボザイムについてほぼ同一であることが判った(レーン
1〜9)。IP-RT-PCR分析では、eIF4AIはtRNA-Rz-A60転
写体の全てと相互作用した(図14c、レーン5〜8)。
これに対して、ポリ(A)尾部をもたないリボザイム、たと
えばtRNA-Rz及びtRNA-Rz-C60転写体、はeIF4AIと共沈降
しなかった(図14c、レーン1〜4、9)。これらの結果
は、eIF4AIがtRNA-Rz-A60とin vivoで相互作用すること
を示している。
【0138】tRNAVal-Rz-A60に結合するたタンパク質が
ヘリカーゼ活性をもつかどうかを調べるために、RNA
ヘリカーゼ活性についてELISAを行った(Hsu, C. C. et
al.,Biochem. Biophys. Res. Comm., 253: 594-599 (19
98))。はじめに、センス鎖、即ちビオチン標識した部分F
ADD mRNA(図13c中の緑色ラインで示される、nt60-13
4)、をビオチン-UTPとT7ポリメラーゼを用いて作製
した。つぎに、対応するDIG(ジゴキシゲニン)標識相
補鎖であるDIG標識した部分FADD相補RNA(nt140-20
6、紫色ライン)を、DIG-UTPを用いてT7ポリメラーゼ
によって転写した(図15a)。これらのRNAを互いにハ
イブリダイズさせて、ストレプトアビジン被覆マイクロ
タイタープレートのウエルに結合し、これによってヘリ
カーゼが巻戻し反応を触媒することを可能にした。可能
なヘリカーゼ活性の供給源として使用するために、本発
明者らはDIG標識tRNAリボザイム-タンパク質複合体を単
離した(図15a)。もし基質RNAが巻戻しされなかった
場合、DIG標識FADD mRNA(nt 140-206)がプレート上に
保持されると予測し、またアルカリホスファターゼ(A
P)を結合したDIG特異抗体(α-DIG)により検出可能で
あると予測した。吸光度の測定により、巻戻しの効率の
決定を可能にした。図15bに示すように、tRNAVal(対
照)及びtRNAVal-リボザイムに結合したタンパク質は巻
戻し活性をもたなかったが、一方、tRNAVal-Rz-A60の各
々に結合したタンパク質はヘリカーゼ活性を有してい
た。さらに、tRNAVal-Rz-C60に結合したタンパク質はい
かなるヘリカーゼ活性ももたなかった。したがって、こ
れらの結果は、tRNAVal-Rz-A60複合体は基質にそってス
ライドし、内因性RNAヘリカーゼeIF4AIと相互作用する
結果として基質を巻戻しすることを示唆している。
【0139】さらに、tRNAVal-Rz-A60-タンパク質複合
体がアクセス不能な標的部位を切断できるかどうかを調
べるために、これらのリボザイム-タンパク質複合体に
よるin vitro切断アッセイを行った。はじめに、FADDの
部分mRNA(図15aに示されるものであるが、DIG若しくは
ビオチンラベルがないもの)をハイブリダイズすること
によって基質である二重鎖を作製し、上記のとおりポリ
(A)結合若しくは非結合リボザイム-タンパク質複合体と
混合した。図15cに示されるように、ポリ(A)非結合FADD
-Rz1, -Rz2, -Rz3及び-Rz2-C60は二重鎖を巻戻しせず
(レーン2、4、6及び8)、したがってそれらは基質
を切断できなかった。これに対して、FADD-Rz1-A60, -R
z2-A60及び-Rz3-A60は明らかに基質の巻戻しと切断を可
能にした(レーン3、5及び7)。しかし、FADD-Rz2-A
60(触媒的に重要な保存ヌクレオチドに単一のG→A突然
変異をもつ「I-FADD-Rz-A60」)は二重鎖を巻戻しするこ
とができるが、基質を切断しなかった(レーン9)。こ
れらの結果は明らかに、tRNAVal-Rz-A60-タンパク質複
合体がin vitroにおいて巻戻しと切断のような2つの活
性を有することを示した。このように、重要なことに
は、ポリ(A)結合リボザイムは、従来のリボザイムによ
って切断できなかったアクセス不能な標的部位を切断可
能にした。
【0140】プロアポトーシス因子FADDのmRNAにター
ゲッティングされたハイブリッドリボザイムの作用を調
べるために、Fas遺伝子を発現するHeLa細胞(J. Exp. M
ed.103:273 (1956))を使用した。RT-PCRによって、ポ
リ(A)結合及び非結合リボザイムを発現する細胞中のFAD
D mRNAのレベルを調べた。図16aに示すように、従来の
リボザイムであるFADD-Rz1, -Rz2又は-Rz3を発現するHe
La細胞中のFADD mRNAのレベルは、トランスフェクトさ
れていない(WT)HeLa細胞中のFADD mRNAのものと比較
されるとおり変化しなかった(レーン1、2,4及び
6)。ここでWTは野生型(wild type)を示す。しかし
ながら、FADD mRNAのレベルは、FADD-Rz1,-Rz2又は-Rz3
を発現する細胞及びWT HeLa細胞におけるレベルと比較
して、ポリ(A)結合リボザイム、即ちFADD-Rz1-A60, -Rz2
-A60又は-Rz3-A60、を発現するHeLa細胞中で劇的に減少
した(レーン3、5及び7)。アクセス可能な標的部位
をターゲッティングするときには、ポリ(A)非結合FADD-
Rz4もまた基質を切断することができ、FADD mRNAのレベ
ルはFADD-Rz4及びFADD-Rz4-A60の両方によって減少した
(レーン8及び9)。さらに、観察された阻害作用が実
際にリボザイム仲介切断によるものであることを示すた
めに、不活性型FADD Rz2-A60を使用した。不活性Rz2-A6
0(I-Rz2-A60、レーン10)はFADD mRNAのレベルに影響
を及ぼさなかった。これらの結果から明らかに、本ポリ
(A)結合リボザイムは、それらとRNAヘリカーゼeIF4AIと
の結合の結果、標的mRNAを切断することにおいて非常
に有効であった。
【0141】つぎに、ポリ(A)結合又は非結合リボザイ
ムを発現するHeLa細胞中のFADD自体のレベルをウエスタ
ンブロッティングによって調べた。FADD-Rz1-A60, -Rz2
-A60又は-Rz3-A60を発現するHeLa細胞では、FADDのレベ
ルはWT HeLa細胞又はFADD-Rz1, -Rz2若しくは-Rz3を発
現する細胞中のものよりかなり低かった(図16b、レーン
3、5及び7)。種々の細胞系で対照として使用されるC
BPタンパク質(CREB結合タンパク質)のレベルは、WT H
eLa細胞中のものと同じままであった。これらの結果
は、RT-PCRの結果と同様に、Rz-A60の作用が従来の親リ
ボザイムのものよりかなり大きかったことを示してい
る。さらに、不活性Rz2-A60は阻害作用をもたなかった
(図16b、レーン11)。これらの結果は、阻害作用がリボ
ザイム仲介切断によるものであるという初期の結論に支
持を与えるものである。減少したFADDレベルは減少した
FADD mRNAレベルを反映した。
【0142】Fasは腫瘍壊死因子受容体ファミリーの一
員であり、Fas特異抗体と架橋するとアポトーシスを誘
導する(Yonehara, S. et al., J. Exp. Med. 169: 1747
-1756(1989); Trauth, B. C. et al., Science 245: 30
1-305 (1989); Suda, T. et al., Cell 75:1169-1178
(1993))。該抗体と架橋すると、Fasは死を誘導するシグ
ナル伝達複合体の形成を誘導する。この複合体はアダプ
ター分子であるFADDとカスパーゼ8からなる。その結
果、活性なカスパーゼ8が放出されアポトーシス過程を
開始する(Chinnaiyan, A. M. et al., Cell 81: 505-5
12 (1995); Muzio,M. et al., Cell 85: 817-27 (199
6))。しかしながら、エフェクターカスパーゼの活性化
に細胞を引き渡す後続の段階の後には、Fas誘導性アポ
トーシスが起こるだけである。Fas誘導アポトーシスの
機序の完全なる詳細は依然として不明である。FADDのレ
ベルが、FADD-Rz-A60を発現するがFADD-Rzを発現しない
細胞中で低下するため、FADD-Rz-A60を発現する細胞の
表現型が変化したかどうかを調べた。Fas特異抗体(α-
Fas)によって誘導されるアポトーシスの間に種々のリ
ボザイムを発現する細胞の生存を調べた。α-Fasで処理
を開始してから24時間後に生存細胞数をカウントした。
【0143】図16cに示すように、α-Fasでの処理の
後、アポトーシスが野生型細胞中で生じた。これに対し
て、ポリ(A)結合リボザイムであるFADD-Rz-A60はアポト
ーシスを起こさなかった。通常のリボザイムを発現する
細胞は、その標的部位へのアクセスが巻戻しなしに可能
であるFADD-Rz4を発現する細胞を除いて、アポトーシス
を生じた(図16a、レーン8及び図16b、レーン8)。FADD
-Rz-A60を発現する細胞の表現型はFADD-Rz4を発現する
細胞のものと同じであるため、ポリ(A)モチーフはあら
ゆる他の遺伝子の発現に影響しなかった。類似の結果は
4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩・n水
和物(DAPI)による、その場(in situ)での染色によって得
られた(図16d)。高レベル活性をもつFADD-Rz-A60は、ア
ポトーシスへのFas誘導経路の詳細な研究のために有用
であろう。
【0144】本発明者らはさらに、ランダム化Rz-A60発
現ライブラリーを用いたFas誘導性アポトーシスのシグ
ナル経路に関する新規な機能性遺伝子のスクリーニング
システムを確立した。このシステムでは、本発明者らは
Rz-A60の各基質結合アームにおいて10個のヌクレオチド
をランダム化し、次いで、ランダム化Rz-A60発現ライブ
ラリーを担持するレトロウイルスベクターによりHeLa-F
as細胞を形質導入した(図17a)。ランダム化Rz-A60を導
入したHeLa-Fas細胞を、Fasに特異的な抗体で処理し、
生存した細胞を回収し、各クローンからそれぞれのゲノ
ムDNAを単離した。各ゲノムDNA中のRz-A60のランダム化
領域の配列決定により、アポトーシス経路において重要
な役割を果たす遺伝子の迅速な同定が可能となった(図1
7b)。この一次スクリーニングにおいて、本発明者ら
は、ヒト由来のFLASH、カスパーゼ9、FADDおよびPTENな
どの、Fas誘導性アポトーシスシグナリングの間にプロ
アポトーシス機能を有する多くの興味ある遺伝子を同定
し(図17b;配列番号31〜34)、特異的なRz〔FLASH-Rz
(配列番号35)、Caspase 9-Rz(配列番号36)、FADD-Rz
(配列番号37)、PTEN-Rz(配列番号38)〕およびそれ
らのRz-A60(Rzの3'末端に60ヌクレオチドからなるポ
リ(A)が結合したもの)を作製することにより、これ
らの因子の発現レベルおよびそのアポトーシス機能を確
認した(図17c、d)。現在、本発明者らは、一次スクリー
ニングにおいてプロアポトーシス機能を有すると同定さ
れた他の未知の遺伝子(Gene Bankに未だに寄託されてい
ないもの)の分析を進めている。理論的には、ポリ(A)尾
部を持たない従来のリボザイムを用いても同様のライブ
ラリーを作製することは可能であるが、本発明のハイブ
リッドリボザイムは任意のmRNA中の任意の部位を攻撃で
きるため、ランダム化Rzs-A60ライブラリーを用いるこ
とによって偽陽性のレベルが有意に減少する(データは
示していない)ということには触れておかねばならな
い。この見解に一致して、図17dに示したように、ポリ
(A)尾部の非存在下においては、本発明者らは、従来の
リボザイムを有する同様のライブラリーの一次スクリー
ニングにおいてFADDおよびPTEN(およびその他の未知の
遺伝子)を同定することができなかった。このことは、
本発明のハイブリッドリボザイムの応用が、遺伝子発見
のための一般的な方法として有利であることを実証する
ものである。
【0145】
【発明の効果】リボザイムは、部位特異的にRNAを切断
することができる、いわゆるRNA制限酵素である。その
上、理論上どんな遺伝子(mRNA)にも適用が可能であ
り、抗ウイルス剤、癌遺伝子発現抑制剤、機能解析を目
的とした特異的遺伝子発現阻害剤等、その応用性は計り
知れない。これまで、リボザイムを用いた遺伝子発現制
御に多くの研究者が取り組んできた。少しずつ進歩はし
てきており、最近ではリボザイムを用いた発現阻害の成
功例がいくつも論文として発表されるようになってきて
いる。しかしながら、成功するかどうかは未だ不確かな
もので、より一般性のあるリボザイム法(リボザイムを
用いた遺伝子発現制御法)の確立が切望されていた。本
発明者らは、これまでにリボザイムの発現系に改良を加
え、高い確立で発現抑制が期待できるリボザイム法の開
発に成功してきた。しかしながら、その方法でもリボザ
イムによる抑制効果は切断部位の選択に非常に影響さ
れ、そのために1つの遺伝子に対しいくつものリボザイ
ムを設計しなければならない。アンチセンスの分野でも
同様の問題が起こっており、効果的な作用部位の選択法
の開発に関する研究も盛んに行われている。本発明者ら
が構築したCTE付加型及びポリ(A)結合付加型リボザイ
ムは、細胞内で発現されているRNAヘリカーゼと直接的
又は間接的に結合しその力を借りることによって、これ
までリボザイムなどの機能性核酸が標的にできなかった
高次構造を作っているRNAも容易に標的にできる。それ
は、切断部位の選択がリボザイムによる発現制御に影響
しなくなることを示している。この方法を利用すること
で、リボザイム法の成功率が上がることは間違いなく、
また、そのリボザイム開発にかかる時間も飛躍的に縮小
されることが期待される。
【0146】上記の実施例ではリボザイムとRNA ヘリカ
ーゼとのアダプターにCTEを使ったが、このCTEに結合す
るタンパク質はRNA ヘリカーゼ Aが有力な候補ではある
が、他のタンパク質質の候補も報告されている(P. Grut
er et al., (1998) Mol. Cell 1:649-659; I.C. Braun
et al., (1999) EMBO J. 18:1953-1965; Y Kang and B.
R. Cullen (1999) Genes Dev. 13:1126-1139)。ただ、
この候補タンパク質に関しても細胞内で別のRNA ヘリカ
ーゼと強く結合していることが分かっている(S.S. Tse
ng et al., (1998) EMBO J. 17:2651-2662; C.A. Snay-
Hodge et al., (1998) EMBO J. 17:2663-1676)。ま
た、RNA ヘリカーゼと結合できるRNAモチーフはCTE、ポ
リ(A)配列に限った訳ではなく(H.J. Liao et al.,
(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8514-8519)、
幅広い構築方法が考えられる。しかし重要なことは、い
かにしてRNAヘリカーゼの機能をリボザイムに付加でき
るかということと、その有用性であり、本発明はそのい
ずれも達成可能とする点で極めて価値が高い。
【0147】遺伝子解析プロジェクトの成果として2003
年までにはヒトの遺伝子の解読が終了するといわれてい
るが、これらの情報を利用するためには個々の遺伝子が
それぞれいかなる機能を有しているかを調べる必要があ
る。本発明のキメラ分子であるスライディングリボザイ
ムは細胞内で極めて有効に標的mRNAを切断することが可
能である。そこで、このリボザイムの標的認識配列をラ
ンダム化して細胞内で機能させ、ある着目した表現型が
現れた細胞を回収して、そこで発現しているリボザイム
の標的認識配列を解析すると、その着目した表現型と細
胞内でリボザイムに切断された遺伝子の配列との関係を
知ることができる。これは新規の遺伝子機能探索技術、
すなわちジーンディスカバリィーシステムであり、本発
明によって可能となる技術である。
【0148】上記の実施例ではCTE又はポリ(A)配列と
リボザイムとのキメラ分子について説明したが、本発明
は、このような特定の分子に限定されず、他のスライデ
ィング可能な分子と、あるいはこの分子またはこの分子
と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ領域
と、他の任意の機能性領域を含む種々のキメラ分子をも
包含することは上記の発明の詳細な説明から明らかであ
ろう。
【0149】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Secretary of Agency of Industrial Science and Technology, and Kazu nari Taira <120> Functional chimeric molecules capable of sliding <130> 117F0122 <140> <141> <150> JP 1999-316133 <151> 1999-11-05 <160> 53 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 173 <212> RNA <213> Mason-Pfizer monkey virus <400> 1 agaccaccuc cccugcgagc uaagcuggac agccaaugac ggguaagaga gugacauugu 60 ucacuaaccu aagacaggag ggccgucaga gcuacugccu aauccaaaga cggguaaaag 120 ugauaaaaau guaucacucc aaccuaagac aggcgcagcu uccgagggat ttg 173 <210> 2 <211> 300 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the 5'-nucleotide sequence of LTR-luciferase chimeric gene <400> 2 gggucucucu gguuagacca gaucugagcc ugggagcucu cuggcuaacu agggaaccca 60 cugcuuaagc cucaauaaag cuuggcauuc cgguacuguu gguaaaaugg aagacgccaa 120 aaacauaaag aaaggcccgg cgccauucua uccucuagag gauggaaccg cuggagagca 180 acugcauaag gcuaugaaga gauacgcccu gguuccugga acaauugcuu uuacagaugc 240 acauaucgag gugaacauca cguacgcgga auacuucgaa auguccguuc gguuggcaga 300 <210> 3 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of hammerhead ribozyme (Rz) <400> 3 nnnnnnnnnc ugaugaggcc gaaaggccga aannnnnnnn 40 <210> 4 <211> 47 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of TAR AUC Rz <400> 4 agagcuccca ggcucacuga ugaggccgaa aggccgaaau cuggucu 47 <210> 5 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of LTR CUC Rz <400> 5 agcuuuauuc ugaugaggcc gaaaggccga aaggcuuaag 40 <210> 6 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of Luc GUA Rz <400> 6 uauuccgcgc ugaugaggcc gaaaggccga aacgugaugu 40 <210> 7 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of TAR GUU Rz <400> 7 aucuggucuc ugaugaggcc gaaaggccga aaccagagag 40 <210> 8 <211> 95 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of the transcript of the human placental tRNAVal <400> 8 accguugguu uccguagugu agugguuauc acguucgccu aacacgcgaa agguccccgg 60 uucgaaaccg ggcggaaaca aagacagucg cuuuu 95 <210> 9 <211> 19 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of a substrate for Rz <400> 9 nnnnnnnnun nnnnnnnnn 19 <210> 10 <211> 151 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence encoding tRNAval-linked TAR GUU Rz <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 1-91 is of tRNAval with 3'-modification <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 92-131 is of TAR GUU Rz <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 132-137 is of a KpnI-recognition site <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 138-140 is of a linker <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 141-146 is of an EcoRV-recognition site <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 147-151 is of a terminator <400> 10 accgttggtt tccgtagtgt agtggttatc acgttcgcct aacacgcgaa aggtccccgg 60 ttcgaaaccg ggcactacaa aaaccaactt tatctggtct ctgatgaggc cgaaaggccg 120 aaaccagaga gggtaccccg gatatctttt t 151 <210> 11 <211> 320 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence encoding tRNAval-TAR GUU Rz-CTE <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 1-91 is of tRNAval with 3'-modification <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 92-131 is of TAR GUU Rz <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 132-137 is of a KpnI-recognition site <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 138-309 is of CTE <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 310-315 is of an EcoRV-recognition site <220> <223> Other information: the sequence of nucleotide numbers 316-320 is of a terminator <400> 11 accgttggtt tccgtagtgt agtggttatc acgttcgcct aacacgcgaa aggtccccgg 60 ttcgaaaccg ggcactacaa aaaccaactt tatctggtct ctgatgaggc cgaaaggccg 120 aaaccagaga gggtaccaga ccacctccct gcgagctaag ctggacagcc aatgacgggt 180 aagagagtga cattgttcac taacctaaga caggagggcc gtcagagcta ctgcctaatc 240 caaagacggg taaaagtgat aaaaatgtat cactccaacc taagacaggc gcagcttccg 300 agggatttgg atatcttttt 320 <210> 12 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of a probe for Northern blotting <400> 12 aagatatccg gggtaccaaa gttggttttt gtagtgcccg 40 <210> 13 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of a probe for Northern blotting <400> 13 aagatatcca aatccctcgg aagctgcgcc tgtcttaggt 40 <210> 14 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of a probe for Northern blotting <400> 14 agaccagatt tcggcctttc ggcctcatca gtgagcctgg 40 <210> 15 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the sequence of a probe for Northern blotting <400> 15 ctctctggtt tcggcctttc ggcctcatca gagaccagat 40 <210> 16 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of TAR Rz5 <400> 16 uggguucccc ugaugaggcc gaaaggccga aaguuagcca 40 <210> 17 <211> 298 <212> RNA <213> Homo sapiens <400> 17 cucuaaaggu ucgggggugg aauccuuggg ccgcugggca agcggcgaga ccuggccagg 60 gccagcgagc cgaggacaga gggcgcacgg agggccgggc cgcagccccg gccgcuugca 120 gaccccgcca uggacccguu ccuggugcug cugcacucgg ugucguccag ccugucgagc 180 agcgagcuga ccgagcucaa guuccuaugc cucgggcgcg ugggcaagcg caagcuggag 240 cgcgugcaga gcggccuaga ccucuucucc augcugcugg agcagaacga ccuggagc 298 <210> 18 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of FADD-Rz1 <400> 18 gacgacaccc ugaugaggcc gaaaggccga aagugcagcu 40 <210> 19 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of FADD-Rz2 <400> 19 gacaggcugc ugaugaggcc gaaaggccga aacgacaccg 40 <210> 20 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of FADD-Rz3 <400> 20 ucgcugcucc ugaugaggcc gaaaggccga aacaggcugg 40 <210> 21 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of FADD-Rz4 <400> 21 cauggagaac ugaugaggcc gaaaggccga aaggucuagg 40 <210> 22 <211> 26 <212> RNA <213> Human immunodefiency virus <400> 22 agaccagauc ugagccuggg agcucu 26 <210> 23 <211> 19 <212> RNA <213> Human immunodefiency virus <400> 23 cuuaagccuc aauaaagcu 19 <210> 24 <211> 19 <212> RNA <213> Human immunodefiency virus <400> 24 acaucacgua cgcggaaua 19 <210> 25 <211> 19 <212> RNA <213> Human immunodefiency virus <400> 25 cucucugguu agaccagau 19 <210> 26 <211> 19 <212> RNA <213> Human immunodefiency virus <400> 26 uggcuaacua gggaaccca 19 <210> 27 <211> 19 <212> RNA <213> Homo sapiens <400> 27 agcugcacuc ggugucguc 19 <210> 28 <211> 19 <212> RNA <213> Homo sapiens <400> 28 cggugucguc cagccuguc 19 <210> 29 <211> 19 <212> RNA <213> Homo sapiens <400> 29 ccagccuguc gagcagcga 19 <210> 30 <211> 19 <212> RNA <213> Homo sapiens <400> 30 ccuagaccuc uucuccaug 19 <210> 31 <211> 21 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 31 aactttttgt ataaagtttg c 21 <210> 32 <211> 23 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 32 ctgaagacga gtcccctggg cag 23 <210> 33 <211> 23 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 33 gggctctcag gtcctgccag atg 23 <210> 34 <211> 23 <212> DNA <213> Mouse <400> 34 tgatgatgta gtaaggtttt tgg 23 <210> 35 <211> 40 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of FLASH-Rz <400> 35 gcaaacuuua cugaugaggc cgaaaggccg aaacaaaaag 40 <210> 36 <211> 39 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of Caspase 9-Rz <400> 36 ccagggcuga ugaggccgaa aggccgaaac ucgucuuca 39 <210> 37 <211> 42 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of FADD-Rz <400> 37 caucuggcag cugaugaggc cgaaaggccg aaaccugaga gc 42 <210> 38 <211> 42 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of PTEN-Rz <400> 38 aaaaaccucu gaugaggccg aaaggccgaa acuacaucau ca 42 <210> 39 <211> 26 <212> RNA <213> Mouse <400> 39 caaagcgcag uguccugcgg cgggga 26 <210> 40 <211> 21 <212> RNA <213> Mouse <400> 40 ucaguggauu caaaauccau u 21 <210> 41 <211> 22 <212> RNA <213> Mouse <400> 41 gggagcaagu caguggacuc ug 22 <210> 42 <211> 21 <212> RNA <213> Mouse <400> 42 ucuggacagu aguuacaaaa u 21 <210> 43 <211> 21 <212> RNA <213> Mouse <400> 43 acuggaaugu caucucgcuc u 21 <210> 44 <211> 49 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz6 <400> 44 uccccgccgc agcucugaug aggccgaaag gccgaaacac ugcgcuuug 49 <210> 45 <211> 42 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz7 <400> 45 aauggauuuu cugaugaggc cgaaaggccg aaaauccacu ga 42 <210> 46 <211> 43 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz8 <400> 46 cagaguccac ucugaugagg ccgaaaggcc gaaacuugcu ccc 43 <210> 47 <211> 42 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz9 <400> 47 auuuuguaac cugaugaggc cgaaaggccg aaacugucca ga 42 <210> 48 <211> 42 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz10 <400> 48 agagcgagau cugaugaggc cgaaaggccg aaacauucca gu 42 <210> 49 <211> 142 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz1 <400> 49 accguugguu uccguagugu agugguuauc acguucgccu aacacgcgaa agguccccgg 60 uucgaaaccg ggcacuacaa aaaccaacuu ucuagaccgc cgcagcugau gaggccgaaa 120 ggccgaaaca cugcgcggua cc 142 <210> 50 <211> 142 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz2 <400> 50 accguugguu uccguagugu agugguuauc acguucgccu aacacgcgaa agguccccgg 60 uucgaaaccg ggcacuacaa aaaccaacuu ucuagaaugg auuuucugau gaggccgaaa 120 ggccgaaaau ccacugggua cc 142 <210> 51 <211> 142 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz3 <400> 51 accguugguu uccguagugu agugguuauc acguucgccu aacacgcgaa agguccccgg 60 uucgaaaccg ggcacuacaa aaaccaacuu ucuagaaagu ccacucugau gaggccgaaa 120 ggccgaaacu ugcuccggua cc 142 <210> 52 <211> 141 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz4 <400> 52 accguugguu uccguagugu agugguuauc acguucgccu aacacgcgaa agguccccgg 60 uucgaaaccg ggcacuacaa aaaccaacuu ucuagauuug uaaccugaug aggccgaaag 120 gccgaaacug uccaggguac c 141 <210> 53 <211> 142 <212> RNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: the nucleotide sequence of CPP Rz5 <400> 53 accguugguu uccguagugu agugguuauc acguucgccu aacacgcgaa agguccccgg 60 uucgaaaccg ggcacuacaa aaaccaacuu ucuagagagc gagaucugau gaggccgaaa 120 ggccgaaaca uuccagggua cc 142
【0150】
【配列表フリーテキスト】配列番号2-人工配列の説
明:LTR−ルシフェラーゼキメラ分子の5’−塩基配
列。 配列番号3-人工配列の説明:ハンマーヘッド型リボザ
イム(Rz)の塩基配列。 配列番号4-人工配列の説明:TAR AUC Rzの塩基配列。 配列番号5-人工配列の説明:LTR CUC Rzの塩基配列。 配列番号6-人工配列の説明:LUC GUA Rzの塩基配列。 配列番号7-人工配列の説明:TAR GUU Rzの塩基配列。 配列番号8-人工配列の説明:ヒト胎盤tRNAvalの転写体
の塩基配列。 配列番号9-人工配列の説明:Rzの基質の配列。 配列番号10-人工配列の説明:tRNAvalを結合したTAR
GUU Rzの配列。塩基番号1−91は3'末端に改変をもつt
RNAval、塩基番号92−131はTAR GUU Rz、塩基番号132−
137はKpnI認識部位、塩基番号138−140はリンカー、塩
基番号141−146はEcoRV認識部位、塩基番号147−151は
ターミネーターの各配列である。 配列番号11-人工配列の説明:tRNAval-TAR GUU Rz-CT
Eの配列。塩基番号1−91は3'末端に改変をもつtRNA
val、塩基番号92−131はTAR GUU Rz、塩基番号132−137
はKpnI認識部位、塩基番号138−309はCTE、塩基番号310
−315はEcoRV認識部位、塩基番号316−320はターミネー
ターの各配列である。 配列番号12-人工配列の説明:ノーザンブロティング
のためのプローブの配列。 配列番号13-人工配列の説明:ノーザンブロティング
のためのプローブの配列。 配列番号14-人工配列の説明:ノーザンブロティング
のためのプローブの配列。 配列番号15-人工配列の説明:ノーザンブロティング
のためのプローブの配列。 配列番号16-人工配列の説明:TAR Rz5の塩基配列。 配列番号18-人工配列の説明:FADD‐Rz1の塩基配列。 配列番号19-人工配列の説明:FADD‐Rz2の塩基配列。 配列番号20-人工配列の説明:FADD‐Rz3の塩基配列。 配列番号35-人工配列の説明:FLASH‐Rzの塩基配列。 配列番号36-人工配列の説明:Caspase 9‐Rzの塩基配
列。 配列番号37-人工配列の説明:FADD‐Rzの塩基配列。 配列番号38-人工配列の説明:PTEN‐Rzの塩基配列。 配列番号44-人工配列の説明:CPP Rz6の塩基配列。 配列番号45-人工配列の説明:CPP Rz7の塩基配列。 配列番号46-人工配列の説明:CPP Rz8の塩基配列。 配列番号47-人工配列の説明:CPP Rz9の塩基配列。 配列番号48-人工配列の説明:CPP Rz10の塩基配列。 配列番号49-人工配列の説明:CPP Rz1の塩基配列。 配列番号50-人工配列の説明:CPP Rz2の塩基配列。 配列番号51-人工配列の説明:CPP Rz3の塩基配列。 配列番号52-人工配列の説明:CPP Rz4の塩基配列。 配列番号53-人工配列の説明:CPP Rz5の塩基配列。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aおよび1Bは、パネルAに、タンパク質酵素
とリボザイムのRNAスライディングの容易性の相違を荷
電の仕方に基づいて模式的に説明し、またパネルBに、
ハンマーヘッド型リボザイムへのCTE配列の付加、該リ
ボザイムへの可能なスライディング機能の付加、CTE連
結リボザイムによる隠れた標的部位の切断を模式的に示
す。
【図2】図2Aおよび2Bは、パネルAに、MulFoldに基づ
いたCTEの予測二次構造を示し、またパネルBに、tRNA
valプロモーターによって制御されるリボザイム発現カ
セットの概略図を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、パネルAに、LTR-Luc HeLa
細胞におけるtRNAval-リボザイム活性の測定のためのア
ッセイ系を示し、またパネルBに、リボザイムが標的と
するLTR-Luciferase mRNAの5’領域のMulFoldに基づい
て予測された二次構造を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、パネルAに、ハンマーヘッ
ド型リボザイムの二次構造を示し、またパネルBに、LTR
融合のルシフェラーゼmRNAを標的とする一連のリボザイ
ムを示す。
【図5】この図は、tRNAvalプロモーター連結リボザイ
ムによるLTR駆動のルシフェラーゼ活性の抑制を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、CTE連結リボザイムおよびC
TE非連結リボザイムによるCPP32(Procaspase-3)遺伝子
の発現阻害を示す。第二抗体としてFITC標識α−IgG抗
体を使用し、バンドの強さをFluoro-imager (Molecular
Dynamics)によりウエスタンブロッティング分析(パネ
ルA)し、かつ定量(パネルB)した結果である。
【図7】図7Aおよび7Bは、LTR-Luc HeLa細胞内の、tRN
A連結リボザイムおよびCTE連結リボザイムの有効な発現
と細胞内局在を示す。パネルAは、tRNA連結CTEの局在を
示し、またパネルBはtRNA連結リボザイムおよびCTE-Rz
の局在を示す。Nは核画分、Cは細胞質画分である。
【図8】この図は、CTE連結リボザイムに対する有力なマ
イナス作用の検討結果を示す。
【図9】この図は、CTE-RzによるLTR-駆動ルシフェラー
ゼ活性の抑制を示す。赤色の星印は、TARの比較的アクセ
ス不能な部位にターゲッティングするリボザイムを用い
て得られた結果を示す。LTR-Luc HeLa細胞を一過的にTa
tのみ(レーン1)でトランスフェクトするか、あるい
は指示したtRNAベースのリボザイム構築物でトランス
フェクトした(Kuwabara, T., et al.(1999),上掲;Kose
ki, S. et al., Journal of Controlled Release 53:15
9-173 (1998))。リボザイム活性を示すルシフェラーゼ
活性をTatのみの対照に対する割合(%)として記載す
る。示された値は少なくとも3つのデータ点の平均であ
る。アッセイは一過性のトランスフェクションを用いた
ため、統計的変動がある。誤差バーは、同日にデータを
取ったときには10%以内であり、違った日に取ったとき
には10%〜25%であった。しかし、いずれの場合にもCT
E-リボザイムは常に従来のリボザイムよりも有意に大き
な活性を有していた。
【図10】図10A、10Bおよび10Cは、CTE-Rzによるプロカ
スパーゼ3(CPP32)遺伝子発現の阻害を示す。パネルA
は、リボザイムがターゲッティングするプロカスパーゼ
3 mRNAの5'領域のMulFold(Kuwabara, T. et al., P
roc. Ntl. Acad. Sci. USA 96:1886-1891 (1999))によ
り予測された二次構造を示す(Kuwabara,T. et al., Mo
l. Cell 2:617-627(1998))。パネルBは、ウエスタン
ブロッティングによるプロカスパーゼ3及びアクチンタ
ンパク質の検出を示す。マウスNIH3T3細胞が指示したリ
ボザイム構築物でトランスフェクトされた。パネルC
は、パネルBの結果を棒グラフで示したものである。二
次抗体としてウサギIgGに対するフルオレセインイソチ
オシアナート(FITC)標識抗体を用いた。また、アクチ
ン及びプロカスパーゼ3のバンド強度を定量した。プロ
カスパーゼ3蛋白レベルはアクチン蛋白レベルに対し標
準化された。細胞がリボザイム発現ベクターでトランス
フェクトされていない場合に記録された標準化された蛋
白レベルを100%とした(レーン1)。
【図11】図11Aおよび11Bは、リボザイム発現に対するCT
Eの作用及びリボザイム活性に対する変異体CTEの作用を
示す。パネルAは、HeLa細胞内でのリボザイム転写体の
発現、安定性及び細胞内局在を示す。指示した発現構築
物でトランスフェクトされたHeLa細胞から調製されたRN
Aを分画した。N及びCはそれぞれ、核画分、細胞質画分を
示す。パネルBは、CTE-Rzの活性に対するCTE配列内の
変異(レーン8と9の比較)及びtRNA-CTEのみの優性陰
性作用(レーン6と7の比較)を示す。トランスフェク
ションに使用した各RNAをコードするプラスミドの量
(μg)を示している。提示される値は少なくとも3つ
のデータ点の平均である。アッセイは一過性のトランス
フェクションを用いたため、統計的変動がある。誤差バ
ーは、同日にデータを取ったときには10%以内であり、
異なる日に取ったときには10%〜25%であった。
【図12】図12Aおよび12Bは、tRNAVal駆動CTE-RzとRNAヘ
リカーゼとの細胞内相互作用を示す。パネルAは、RNAヘ
リカーゼhDbp5及びRNAヘリカーゼA(Li, J. et al., Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA 96:709-714 (1999))によ
るCTE-Rz RNAの同時免疫沈降を示す。C-myc-hDbp5ヘリ
カーゼ(Schmitt, C. et al., EMBO J. 18:4332-4347 (1
999))又はHA-RNAヘリカーゼ(Tang, H. et al., Science
276:1412-1415 (1997); Schmitt, C. et al.,上掲)は
一過的に、指示した型のTAR Rz4発現ベクターをもつHeL
a S3細胞中に同時トランスフェクトされた。適当なタグ
を用いて得られた免疫沈降物をRT-PCR((+)RT(+)PCR)
に掛けた。野生型CTEが存在する場合にのみ、CTE-Rzが
検出された。対照として、RT-PCR(2μg RNA)前、及びR
T処理のないPCR((+)PCR)に掛けた後に、RNAを分析し
た。パネルBは、RNAヘリカーゼhDbp5及びRNAヘリカーゼ
AがCTE-Rzと相互作用することを示す。指示した型のTA
R Rz4はビオチニル化UTPを用いてin viroにて合成し、
c-myc-hDbp5又はHA-RNAヘリカーゼAによってトランスフ
ェクトされた細胞からのHeLa S3細胞と混合した。スト
レプトアビジンビーズを用いてビオチニル化RNA及び関
連蛋白を沈殿させた。適当なタグを認識する抗体を用い
るウエスタンブロッティングにより、TARCTE-Rz4のみが
ヘリカーゼと相互作用することが示された。図中、Cont
rol(対照)はトランスフェクトされた細胞からの全細胞
溶解物を示す。
【図13】図13a〜13dは、ポリ(A)結合ハイブリッドリボ
ザイムの概念およびFADD遺伝子に対するリボザイムの設
計を示す。パネルaは、通常ではアクセス不能な標的部
位の本発明ハイブリッドリボザイムによる切断の模式図
を示す。ポリ(A)配列の付加により、eIF4AI RNAヘリカ
ーゼの加入が可能になり、ヘリカーゼの巻き戻し活性を
ハンマーヘッドリボザイムの切断活性と結合させる。パ
ネルbは、tRNAValプロモーターの制御下にあるポリ(A)
結合リボザイムからなる発現カセットを示す。パネルc
は、矢印を付した種々のリボザイムの標的であるFADDの
mRNAの5'領域の二次構造(MulFoldにより推定)を示す。
後の研究で用いたFADDのmRNAの一部は、緑(nt. 60-134)
および紫(nt. 140-206)の線で示した。パネルdは該mRNA
を標的とするために用いた種々のリボザイムを示す。パ
ネルdは、4つのリボザイムの基質認識アームの配列を示
した。切断は、ピンクで示されたトリプレットの後で起
こる。
【図14】図14a〜14cは、in vitroおよびin vivoにおけ
る、種々のタイプのtRNAVal駆動ポリ(A)結合リボザイム
とRNAヘリカーゼeIF4AIとの相互作用を示す。パネルa
は、RNAヘリカーゼeIF4AIが、各ポリ(A)結合リボザイム
と相互作用することを示す。示されたリボザイムは、ビ
オチニル化UTPを用いてin vitroで合成され、次いでHeL
a-Fas細胞抽出物と混合された。ストレプトアビジンビ
ーズを用いて、ビオチニル化RNAおよび結合したタンパ
ク質を沈降させた。eIF4AIに対する特異抗体を用いたウ
ェスタンブロッティングにより、4つのポリ(A)結合リボ
ザイムのみがeIF4AIと相互作用することが示された。詳
細については本文を参照されたい。パネルbは、RT-PCR
により検出された、HeLa細胞における種々のリボザイム
の発現を示す。パネルcは、ポリ(A)結合リボザイムとRN
AヘリカーゼeIF4AIとの免疫沈降を示す。HeLa S3細胞
を、示されたリボザイム発現ベクターで一過的にトラン
スフェクトした。免疫沈降物をRT-PCRにかけた。4つの
ポリ(A)結合リボザイムがRNAヘリカーゼeIF4AIと同時免
疫沈降した。
【図15】図15a〜15cは、ポリ(A)結合リボザイム‐タン
パク質複合体に結合したヘリカーゼの活性のELISAによ
る検出を示す。パネルaは、本文中に記載の如く実施し
たELISAの模式図を示す。緑(nt. 60-134)および紫(nt.
140-206)の線で示したFADDの基質mRNAの配列は、図13c
に示してある。APとはアルカリフォスファターゼを示
し、450 nmとはAPにより触媒される反応生成物の450 nm
での検出を示す。パネルbは、ハイブリッドリボザイム
による巻戻し活性を示す。試験した4つのポリ(A)結合リ
ボザイム‐タンパク質複合体は全て、ヘリカーゼ活性を
有していた。値は、各ケースにつき3回繰り返して得ら
れた結果の標準偏差付き平均である。パネルcは、ポリ
(A)結合または非結合リボザイム‐タンパク質複合体のi
n vitroにおける切断活性を示す。
【図16】図16a〜16dは、ポリ(A)結合ハイブリッドリボ
ザイムによるFADD遺伝子発現の抑制を示す。パネルa
は、ポリ(A)結合または非結合リボザイムを発現した細
胞におけるFADD mRNAのレベルを示す。パネルbは、ポリ
(A)結合または非結合リボザイムを発現した細胞におけ
るFADDのレベルを示す。パネルcは、ポリ(A)結合または
非結合リボザイムを発現した細胞におけるアポトーシス
の度合い(%)を示す。値は、各ケースにつき3回繰り返し
て得られた結果の標準偏差付き平均である。パネルd
は、ポリ(A)結合または非結合リボザイムの発現に関連
したアポトーシス小体の検出を示す。
【図17】図17a〜17cは、ポリ(A)結合ハイブリッドリボ
ザイムライブラリーによるFas誘導性アポトーシスのた
めの遺伝子発見システムを示す。パネルaは、遺伝子発
見システムの模式図を示す。ランダム化Rz-A60ライブラ
リーを発現したHeLa-Fas細胞を、Fas特異的抗体で処理
した。生存クローンから単離したゲノムDNAの分析か
ら、該リボザイムのランダム化アームの配列を取得し
た。アポトーシス経路において重要な役割を果たす遺伝
子を、遺伝子データベースから取得することが可能であ
る。パネルbは、該遺伝子発見システムによる標的遺伝
子の同定を示す。大文字は、Rz-A60のランダム化アーム
に相補的であった標的配列を示す。パネルcは、ポリ(A)
結合もしくは非結合のFLASH‐、Caspase 9-、FADD-、ま
たはPTEN‐Rzを発現した細胞における標的遺伝子の発現
レベルを示す。ヒトFLASH、ヒトCaspase 9、ヒトFADDま
たはヒトPTENを、これらの因子に対する特異的な抗体を
用いたウェスタンブロット分析により検出した。パネル
dは、FLASH、Caspase 9、FADD、またはPTENの遺伝子に
対するポリ(A)結合もしくは非結合リボザイムを発現し
た細胞におけるアポトーシスの度合い(%)を示す。値
は、各ケースにつき3回繰り返して得られた結果の標準
偏差付き平均である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 31/12 C12N 9/22 43/00 C12Q 1/02 C12N 9/22 1/68 Z C12Q 1/02 G01N 33/53 M 1/68 33/566 G01N 33/53 C12N 15/00 ZNAA 33/566 A61K 37/02 (72)発明者 藁科 雅岐 茨城県つくば市東1丁目1番4 工業技術 院 産業技術融合領域研究所内 (72)発明者 桑原 知子 茨城県つくば市東1丁目1番4 工業技術 院 産業技術融合領域研究所内 (72)発明者 川崎 広明 茨城県つくば市東1丁目1番4 工業技術 院 産業技術融合領域研究所内

Claims (47)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スライディング可能な分子に対し結合親
    和性をもつ領域と、任意の機能性領域とを含むキメラ分
    子。
  2. 【請求項2】 スライディング可能な分子と、任意の機
    能性領域とを含むキメラ分子。
  3. 【請求項3】 スライディング可能な分子と複合体を形
    成する分子に対し結合親和性をもつ領域と、任意の機能
    性領域とを含むキメラ分子。
  4. 【請求項4】 スライディング可能な分子と複合体を形
    成する分子がアダプターである、請求項3に記載のキメ
    ラ分子。
  5. 【請求項5】 核酸、ペプチド核酸またはタンパク質、
    あるいはそれらの組合わせである、請求項1〜3のいず
    れか1項に記載のキメラ分子。
  6. 【請求項6】 前記スライディング可能な分子に対し結
    合親和性をもつ領域、あるいは前記スライディング可能
    な分子と複合体を形成する分子に対し結合親和性をもつ
    領域が核酸である、請求項1または3に記載のキメラ分
    子。
  7. 【請求項7】 前記スライディング可能な分子がタンパ
    ク質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキメ
    ラ分子。
  8. 【請求項8】 前記タンパク質がヘリカーゼ、制限酵
    素、ポリメラーゼおよびリプレッサーから選択される、
    請求項7に記載のキメラ分子。
  9. 【請求項9】 前記機能性領域が、酵素もしくは触媒機
    能を有するか、または阻害機能もしくは亢進機能を有す
    る、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキメラ分子。
  10. 【請求項10】 前記機能性領域が核酸からなる、請求
    項1〜9のいずれか1項に記載のキメラ分子。
  11. 【請求項11】 スライディング可能なタンパク質と任
    意の機能性核酸とを含むキメラ分子。
  12. 【請求項12】 スライディング可能なタンパク質に対
    し結合親和性をもつ核酸または該タンパク質と複合体を
    形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸と、任意の機
    能性核酸とを含むキメラ分子。
  13. 【請求項13】 前記スライディング可能なタンパク質
    に対し結合親和性をもつ核酸または該タンパク質と複合
    体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸が、前記
    機能性核酸に直接的にまたは間接的に結合している、請
    求項12に記載のキメラ分子。
  14. 【請求項14】 前記機能性核酸が、リボザイム、DNA
    エンザイム、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAおよび
    アプタマーからなる群から選ばれる、請求項11〜13
    のいずれか1項に記載のキメラ分子。
  15. 【請求項15】 前記リボザイムがハンマーヘッド型リ
    ボザイムである、請求項14に記載のキメラ分子。
  16. 【請求項16】 前記リボザイム、アンチセンスRNAま
    たはアンチセンスDNAの基質結合部位がランダム化され
    ている、請求項14または15に記載のキメラ分子。
  17. 【請求項17】 ハンマーヘッド型リボザイムの基質結
    合部位であるステムIおよびステムIII領域がランダム化
    されている、請求項16に記載のキメラ分子。
  18. 【請求項18】 前記スライディング可能なタンパク質
    が、ヘリカーゼである、請求項11または12に記載の
    キメラ分子。
  19. 【請求項19】 前記スライディング可能なタンパク質
    に対し結合親和性をもつ核酸または該タンパク質と複合
    体を形成する分子に対し結合親和性をもつ核酸が、CTE
    (constitutive transport element)または該CTEと実
    質的に同等の機能をもつ核酸、あるいはポリ(A)から
    なる核酸である、請求項11または12に記載のキメラ
    分子。
  20. 【請求項20】 前記該CTEと実質的に同等の機能をも
    つ核酸が、人工的に合成されたRNAまたはDNAである、請
    求項19に記載のキメラ分子。
  21. 【請求項21】 前記CTEが配列番号1に示される配列
    または該CTEと実質的に同等の機能をもつその変異体か
    らなる、請求項19に記載のキメラ分子。
  22. 【請求項22】 請求項1〜21のいずれか1項に記載
    のキメラ分子または該キメラ分子をコードするDNAを含
    む発現ベクター。
  23. 【請求項23】 前記キメラ分子または該キメラ分子を
    コードするDNAがプロモーターによって制御されてい
    る、請求項22に記載の発現ベクター。
  24. 【請求項24】 前記プロモーターがポリメラーゼIII
    プロモーターである、請求項23に記載の発現ベクタ
    ー。
  25. 【請求項25】 前記ポリメラーゼIIIプロモーターがt
    RNAプロモーターである、請求項24に記載の発現ベク
    ター。
  26. 【請求項26】 前記tRNAプロモーターがtRNAvalプロ
    モーターまたはその変異体である、請求項25に記載の
    発現ベクター。
  27. 【請求項27】 前記キメラ分子または該キメラ分子を
    コードするDNAの下流にターミネーター配列をさらに含
    む、請求項22に記載の発現ベクター。
  28. 【請求項28】 前記キメラ分子が機能性RNA配列およ
    びCTE配列を含む、請求項22〜27のいずれか1項に記
    載の発現ベクター。
  29. 【請求項29】 前記機能性RNA配列がリボザイム配
    列、アンチセンスRNA配列およびアプタマー配列からな
    る群から選ばれる、請求項28に記載の発現ベクター。
  30. 【請求項30】 前記機能性RNA配列がリボザイム配列
    である、請求項28に記載の発現ベクター。
  31. 【請求項31】 請求項22〜30のいずれか1項に記
    載の発現ベクターDNAを鋳型にして従来の方法でRNAを合
    成し、生成したRNAを回収することを含む、請求項1〜
    21のいずれか1項に記載のキメラ分子の製造方法。
  32. 【請求項32】 請求項1〜21のいずれか1項に記載
    のキメラ分子と、スライディング可能な分子との複合
    体。
  33. 【請求項33】 前記スライディング可能な分子がヘリ
    カーゼである、請求項32に記載の複合体。
  34. 【請求項34】 前記キメラ分子と前記ヘリカーゼがア
    ダプターを介して結合している、請求項33に記載の複
    合体。
  35. 【請求項35】 請求項1〜21のいずれか1項に記載
    のキメラ分子を有効成分として含む医薬組成物。
  36. 【請求項36】 請求項22〜30のいずれか1項に記
    載の発現ベクターを有効成分として含む医薬組成物。
  37. 【請求項37】 請求項22〜34のいずれか1項に記
    載の複合体を有効成分として含む医薬組成物。
  38. 【請求項38】 ウイルス性疾患、アポトーシス関連疾
    患または遺伝子発現異常に基づく疾患を予防または治療
    するためのものである、請求項35〜37のいずれか1
    項に記載の医薬組成物。
  39. 【請求項39】 請求項1〜21のいずれか1項に記載
    のキメラ分子、請求項22〜30のいずれか1項に記載
    の発現ベクター、または請求項22〜34のいずれか1
    項に記載の複合体を用いて標的核酸を特異的に切断する
    方法。
  40. 【請求項40】 前記標的核酸がウイルス由来遺伝子、
    癌原遺伝子またはアポトーシス関連遺伝子である、請求
    項39に記載の方法。
  41. 【請求項41】 請求項1〜21のいずれか1項に記載
    のキメラ分子、請求項22〜30のいずれか1項に記載
    の発現ベクター、または請求項22〜34のいずれか1
    項に記載の複合体を用いて標的核酸の生物学的機能を特
    異的に阻害または抑制する方法。
  42. 【請求項42】 標的核酸の生物学的機能を解明するた
    めの、請求項1〜21のいずれか1項に記載のキメラ分
    子、請求項22〜30のいずれか1項に記載の発現ベク
    ター、または請求項22〜34のいずれか1項に記載の
    複合体の使用方法。
  43. 【請求項43】 請求項1〜21のいずれか1項に記載
    のキメラ分子、請求項22〜30のいずれか1項に記載
    の発現ベクター、または請求項22〜34のいずれか1
    項に記載の複合体を用いて標的核酸を特異的に切断する
    かまたは標的核酸の生物学的機能を特異的に阻害し、必
    要に応じて該核酸の切断部位およびその近傍の配列を決
    定し、該切断または該阻害が生物学的活性に及ぼす影響
    を調べることを含む、標的核酸の生物学的機能を解明す
    るための方法。
  44. 【請求項44】 前記機能性核酸がリボザイム、アンチ
    センスRNAまたはアンチセンスDNAである、請求項43に
    記載の方法。
  45. 【請求項45】 前記リボザイムがハンマーヘッド型リ
    ボザイムである、請求項44に記載の方法。
  46. 【請求項46】 前記機能性核酸の基質結合部位がラン
    ダム化されている、請求項44または45に記載の方
    法。
  47. 【請求項47】 前記ハンマーヘッド型リボザイムの基
    質結合部位であるステムIおよびステムIII領域がランダ
    ム化されている、請求項46に記載の方法。
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