JP3703933B2 - 窒素生成のための、透過による空気分離方法および装置 - Google Patents

窒素生成のための、透過による空気分離方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素生成のための透過による空気分離方法であって、空気が圧縮され、望ましい場合は透過段階から再利用ガスが混合され、冷却され、精製され、精製空気として透過器に導入され、透過器に進入するときの空気の温度が前もって決められた温度差ΔTにより上昇させられた、圧縮空気の最終冷媒液の温度TAと少なくとも同じである値TSに調節されるタイプの方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半透過性膜は多数のガス混合物の分離を可能とする。透過は、分圧差の膜の反対側への影響下で起こる。透過物、つまり膜を通過するガスは、最も透過性のある成分が豊富であり、残りの部分(濃縮物)は最も透過性のない成分が豊富である。
【0003】
膜の分離特性は温度に大きく依存する。通常の動作範囲においてほとんどの膜はアレニウス式に従う。例えば、二成分分離の場合、以下の式が成り立つ。
【0004】
PermA =PermA0×exp(−Ea (A)/RT)…(1)
PermB =PermB0×exp(−Ea (B)/RT)…(2)
(PermA :成分Aの透過率[成分Aの単位分圧差についてのAの透過速度]、
PermB :成分Bの透過率、
PermA0,PermB0:定数、
a (A),Ea (B):活性化エネルギー(定数)、
T:絶対温度、
R:理想気体定数。)
【0005】
透過率の比PermA /PermB (PermA >PermB の場合)によって規定される選択性は分離効率の基準となる。これは温度に依存し、以下の式で表される。
【0006】
sel=sel0 ×exp( Ea (B)−Ea (A))/RT…(3)
【0007】
大気からの窒素生成に利用する場合、最も透過性のある成分(成分A)は酸素であり、透過の濃縮物(非透過物)となる窒素(成分B)は、工業的に高純度で回収され得る。使用される膜は一般的にポリマー膜である。以下の説明は、これを使用する場合にのみ限定される。
【0008】
空気中のアルゴンは透過物と濃縮物とに分けられ、アルゴンは不活性ガスなのでよりしばしば窒素とともに受け入れられる。以下、「窒素純度」とは、不活性ガス(窒素+アルゴン)の純度を意味する。この純度は、工業的に、適切な生成のもとで99%のオーダー値に達し得る。
【0009】
前記の関係式(1)と(2)は、温度が上昇すると透過率が上昇し、このことは膜の窒素生成、つまり特定の純度と供給圧力での1単位面積の膜によって生成される窒素流量にも同じことが言えることを示す。しかしながらこの流量の増加は入ってくる空気の流量の増加を必要とする。
【0010】
一方、等式(3)によれば、Ea (O2 ) <Ea (N2 )であるので、選択性は減少し、窒素生成量、つまり定純度での濃縮物流量の供給空気流量に対する比にも同じことが言える。
【0011】
したがって、分離温度の選択は、生産性と分離生成との妥協からなる。分離温度の選択は、選択性、活性化エネルギー、単位面積あたりの費用の、膜の酸素透過性(より一般的には資本費用) に対する比、分離装置の使用の度合い、およびエネルギーコストに依存する。
【0012】
93%以下の現行純度とする場合、選択性は重要なパラメーターではなく、比較的高温で動作することが望ましい。反対に、99%のオーダーの高純度が求められる場合、処理される空気の温度を下げることは経済的に興味深い。
【0013】
処理される空気の温度を下げる最も経済的な方法は、空気圧縮器の出口で、空気冷却剤を、または所望により冷却水を取り付けることである。こうして、TA+2℃(TAは、冷却器で使用された最終冷媒液の温度)のオーダーの温度が達成される。
【0014】
しかしながら、有効面積を減少させることで透過器の動作を不調にする透過器内の水の存在によるいかなる危険性をも避けるためには、水とオイルとの濾過の後に、空気を数度だけ再加熱し、相対湿度を100%から80%未満に下げる(これを透過前の空気を脱飽和という)ことが必要である。
【0015】
したがって、分離温度TSは、常時少なくともTA+ΔT(ΔTは前もって決められた温度差)と同じでなくてはならず、しばしば少なくとも5℃であるように選定される。
【0016】
簡易化するため、通常の方法では、前記の最終冷媒液の予見しうる最高温度よりも例えば5℃高い一定温度TSで動作する。典型的には、圧縮器が最終空気冷却剤を備え、最高周辺温度35℃で動作する場合TSは約40℃に選定される。
【0017】
しかしながら上述のように、温度TSは、この装置を使用する場合、高純度窒素が生成される際、経済的最適値と一致することはほとんどない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高純度窒素生成における経済性を向上させることである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のことを特徴とする上述の方法を提供する。
【0020】
(a) 温度TAの値が第一しきい値TA1と同じかそれ以下であるとき、温度TSは一定値TS1=TA1+ΔTに調節される。
【0021】
(b) 温度TAの値がTA1とTA1よりも高い第2しきい値TA2と間にあるとき、温度TSはTS−TA≧ΔTに成るように調節される。
【0022】
本発明による方法は一または複数の以下の特徴を有する。
【0023】
TSの値は、温度TAのTA1、TA2の間隔の全範囲において、一定値TS2である。
【0024】
温度TAの値がTA1と同じかそれ以下であるとき第1透過面積A1が使用され、TA値がTA1とTA2の間の温度であるとき、透過面積はA1よりも小さい第2値A2にまで減少される。
【0025】
温度TAの値が、TA2とTA2よりも高い値TA3との間にあるとき、温度TSはTS3−TA3≧ΔTであるような一定値TS3に調節される。
【0026】
温度TAの値が、TA2とTA2よりも高い値TA3との間にあるとき、透過面積はA2よりも低い値A3にまで再び減少される。
【0027】
温度TAの値の間隔がTA1よりも高いとき、TSは可変値TA+ΔTに調節される。
【0028】
TA1およびΔTの値はそれぞれ約25℃、および約5℃である。
【0029】
本発明はまた、上記で規定した方法の実施に適する窒素生成のための装置を提供する。
【0030】
この装置は、直列に、空気圧縮器、空冷または水冷式冷却器、水およびオイル濾過器、空気再加熱器、および透過器が配置されてなるタイプであり、空気再加熱器が、冷却器の透過ユニットへ進入する空気の温度TSを、冷却器の最終冷媒液の温度TAの関数として調節する手段を備えることを特徴とする。
【0031】
本装置の他の特徴によれば、
空気再加熱器は、熱を生じる液のための通路とこの通路のための調整可能なバイパスとを有する;
透過器は少なくとも2つの透過装置を有し、これらのうち少なくとも1つはその稼働を停止させる手段を有する。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
【0033】
図1に示される装置は、空気圧縮器2の許容周辺温度、つまり約35℃までの温度の全範囲において実質的に一定な圧力の下で、排出導管1において純度が99%(窒素およびアルゴンの純度)である窒素を生成するように設定されている。本装置は、圧縮器2から下流側へ連続的に、空気冷却器3、水およびオイルの濾過ユニット4、空気再加熱器5、透過器6および流量調節弁7を有する。
【0034】
冷却器3は、圧縮器2で圧縮された空気の循環のためのコイル8が横切るラジエーターを備える。このラジエーターはコイル8へ大気空気を吹きつける送風器9を備える。
【0035】
濾過ユニット4は連続的に、液体の大きな滴を除去するためのサイクロン10、そして残留する小滴を除去するための粗い凝集濾過器11と微細な凝集濾過器12、および最後に、オイル蒸気を除去するための炭素塔13を有する。
【0036】
空気再加熱器5は、濾過された空気のための通路14と、圧縮器の潤滑および冷却油の向流循環のための通路15とを有する間接向流熱交換器である。オイル回路16はさらに交換器の端部へのバイパス17を有し、このバイパスを循環する液は、透過器に入る空気温度の検出器18Aによって制御される3方向弁18によって調節される。検出器18Aは周辺温度の検出器18Bによって規定される制御温度を表示する。
【0037】
透過器6は、並列に配置される2つの分離濾過装置6Aおよび6Bからなり、それぞれの膜は19Aおよび19Bで示される。実際には、それぞれの装置6Aおよび6Bは管状の膜の束を囲包する1または複数の濾過モジュールを有し、分離されるべき空気はこれらの管内へ導入される。装置6Aまたは6Bが複数のモジュールからなる場合は、この分野では知られるように、これらのモジュールは異なった方法で配置され得る。
【0038】
交換器5を通過した空気を輸送する導管20は、2つの装置6A、6Bの入口にそれぞれつながる岐管20A、20Bに分かれる。生成された窒素(濃縮物)は、単管21で再結合する導管21A、21Bを経由する。導管21は、弁7の下流側で生成物排出導管1を成す。導管20Bと21Bはそれぞれ遮断バルブ22Bおよび23Bを備える。2つの装置内の富酸素空気からなる透過物は、残留廃棄物Wとして、単管24において再結合する導管24Aと24Bを経由して本装置から排出される。
【0039】
上記各要素4ないし7は、同出願人の欧州特許0588705に記述されている方法で、検出器18Bによって制御される加熱装置26により温度制御される格納器25内に配置される。これにより、装置の停止の間、それぞれ互いに近い温度に維持することができる。
【0040】
従って上記の装置は、以下の方法で動作する。
【0041】
周辺温度が25℃以下である場合、2つの透過装置6Aと6Bを透過するための全ての空気が使用されるように弁22Bと23Bが開かれる。再加熱器5は、25+5=30℃の空気を導管20で供給するように調節される。
【0042】
周辺温度が25℃を超える場合、弁22Bと23Bは閉じられ、同時に、検出器18Aは再加熱器5の基準点を40℃にする。反対に、周辺温度が25℃よりも低下すると、弁22Bと23Bは再び開かれ、同時に検出器18Aは、再加熱器5の制御点を30℃まで戻す。
【0043】
この方法により、周辺温度が高い場合、生成窒素の圧力は、必要であれば圧縮器の加圧能力によって透過器を使用することで、実質的に一定に維持され得る。
【0044】
図2において、破線(曲線C1)は、分離温度TSが35℃以下の全範囲において40℃で一定である前記の通常の方法を示し、実線(曲線C2)は、TSがTA≦25℃のとき30℃であり、TAが25〜30℃の間とき40℃である上記本方法を示している。
【0045】
弁7は、以下のどちらかの方法により窒素を一定純度に維持することを保証し得る。
【0046】
第1の方法によれば、解析器(図示されず)は導管21内を移動するガスの酸素含量を計測し、この計測値の関数として弁7の開閉度を制御する。より正確には、もし窒素の純度が前もって定めた値よりも下がる場合、解析器は弁の開口度を下げ、またその逆が行われる。
【0047】
第2の方法によれば、弁7は流量調節器に設置され、つまり導管21の上流側に設置され、弁の開閉を制御する狭窄部に連結される。こうして調節された流量は、分離温度TSの関数として表示され、したがって検出器18Aで制御され得る基準値に対応する。生成する窒素の一定純度を維持することを可能にする流量の変動の法則は透過器のパラメータから決定される。
【0048】
上記の方法は以下のように改変される。
【0049】
実際には、再加熱器5での加熱温度変化の透過器への効果は、約10分経過しなければ現れず、安定化は膜が新たな分離温度に達するのに必要な最後の30分から1時間の間を除いては生じない。
【0050】
したがって、TSの値が変化すると、透過面積は、前もって決められた時間まで、そうでなければ、別の態様として、出口圧が前もって決められた値に変更されるときまで、弁22Bと23Bとの操作によって修正され得ない。
【0051】
この方法の他の態様では、温度TSが変化する間にヒステリシスを導入することを含む。したがって、上記例では、周辺温度が26℃を超えるときTSを30℃から40℃に上昇させ、周辺温度が24℃を下回るときは30℃から40℃に戻す。
【0052】
またある態様において、透過器の空気圧縮器への順応性を改良するために、透過装置は3つの透過器と、2つの周辺しきい値温度と、3つのTS値にさらに分割され得る。もちろん透過装置の数は3より多くすることができる。
【0053】
例えば、TA≦25℃、TS=30℃であるとき、3つの透過装置が動作する。25℃<TA≦30℃、TS=35℃であるとき、2つの透過器だけが動作する。そして30℃<TA≦35℃、TS=40℃であるとき、1つの透過器が動作する。これは図2の2点で交わる線(曲線C3)で示される。
【0054】
もちろん、この態様では、装置はより複雑に改変される。
【0055】
一定の透過面積を有する通常の透過装置を使用するために、周辺温度が上昇する間の空気の相対湿度を80%より下回るように維持する他の方法では、ある一定のしきい値よりも高いTAのそれぞれの値、例えばTA=25℃であるとき、TS=TA+5℃に選定し、出口圧に対応する方法で、つまりTAが上昇すると出口圧が下がるように調節する。この方法は、窒素の使用が、TS=40℃における対応する出口圧よりも実質的に低い圧力で継続的に行われる多くの場合に適する。
【0056】
この態様は図2に示される破線(曲線4)に示される。
【0057】
数値的な例では、装置は、13バールの圧力を供給する潤滑スクリュータイプの圧縮器2を有する。装置6Aと6Bはそれぞれ2210m2 と、520m2 の透過面積を有する。生成された窒素の純度は酸素解析器の手段によって99%に維持され、TA=20℃の場合の窒素の公称流量は基準100として選定される。
【0058】
以下の表は、上述の本発明の方法による2つの主要な動作態様での様々な周辺温度における流量と窒素の圧力(相対バール値)を示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003703933
【0060】
また本発明の方法は、温暖気候における現行純度(≦93%)での窒素生成にも適用され得る。従って、長期継続性を改良した条件の下で、温度を下げた状態で、いつでも膜を動作することができる。
【0061】
他の態様では、冷却器3で使用される冷媒液は水でも成り得、所望する場合は、付加的な回路によって冷却される。この場合、前記温度TAは、交換器内の水の入口温度であり、検出器18Bはこの温度を検出し、検出器18Aと温度調整器26を制御する。
【0062】
本発明による方法では、透過器6からの透過物の一部を圧縮器2の入口へ再循環させることが当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による窒素生成のための装置を示す概略図。
【図2】本発明を表す相対ダイアグラム図。
【符号の説明】
2…空気圧縮器
3…冷却器
4…濾過ユニット
5…空気再加熱器
6…透過器。

Claims (10)

  1. 空気を圧縮し、冷却し、および精製し、この精製空気を透過器に導入することを包含し、透過器に進入する空気の温度が前もって決められた温度差ΔTによって上昇された、圧縮空気の最終冷媒液の温度TAと少なくとも同じである値TSに調節される、窒素生成のための透過による空気分離方法において、
    (A)温度TAの値が第一しきい値TA1と同じかそれ以下であるとき、温度TSは一定値TS1=TA1+ΔTに調節され、
    (B)温度TAが、温度TA1とTA1よりも高い第2値TA2との間にあるとき、温度TSはTS−TA≧ΔTであるような値に調節されることを特徴とする空気分離方法。
  2. TSの値が温度TAが間隔TA1、TA2の全範囲において一定である値TS2である請求項1記載の方法。
  3. 温度TAの値がTA1以下であるとき、第1透過面積A1が利用され、温度TAの値がTA1からTA2の間にあるとき、透過面積はA1よりも小さい第2値A2に減少する請求項1記載の方法。
  4. 温度TAの値がTA2とTA2よりも高いTA3との間にあるとき、温度TSはTS3−TA3≧ΔTであるような一定値TS3に調節される請求項1記載の方法。
  5. 温度TAの値がTA2とTA2よりも高いTA3との間にあるとき、透過面積はA2よりも少ない第3値に再び減少する請求項3記載の方法。
  6. TA1よりも大きいすべてのTAについて、TSはTA+ΔTに等しい請求項1記載の方法。
  7. TA1の値とΔTがそれぞれ25℃と5℃である請求項1記載の方法。
  8. 窒素生成のための、透過による空気分離のための装置であって、直列に、空気圧縮器、冷却器、オイルと水を濾過するための装置、空気再加熱器および透過器を有し、空気再加熱器が、冷却器内の最終冷媒の温度の関数として透過器に進入する空気の温度を調節する手段を有する装置。
  9. 空気再加熱器が熱交換液のための通路と、この通路のための調節可能なバイパスを有する請求項8記載の装置。
  10. 透過器が少なくとも2つの透過装置を有し、これらの少なくとも1つが装置外への排出手段を有する請求項8記載の装置。
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