JP3701701B2 - シームレスベルト - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真式複写機,レーザービーム式プリンター・FAX等において使用される感光体基体用,中間転写用,搬送用,定着用のベルトとして好適なシームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を採用した機器はその利便性から広く用いられている。中間転写方式を採用した場合のその主要機構を図1に示す。
感光部1は通常金属製ドラムに感光体が塗布された構成を有している。この感光体を帯電部2で均一に帯電させたのち、露光部3で図示しない原稿や文字データに対応した露光を行う。光の当たった部は光導電により帯電していた電荷が内面の導電層を通して流れ、感光体1の表面に画像に対応した静電潜像が形成される。現像部4はこの静電潜像に正または負に予め帯電したトナーを供給し、感光体上にトナー画像を形成する。転写部5は感光体上のトナー画像を搬送部11および11’により搬送される紙などの被転写物に転写する。定着部12は熱によりトナーを融解し、被転写物に定着する。一方、転写部5へ転写しきれず感光体上に残ったトナーおよび残留電荷は除電・クリーニング部6で除去される。
【0003】
上記構成のうち、感光部1、帯電部2、転写部5、搬送部11および11’はベルトを用いて実現することができる。特に感光部1においては感光体基体としてアルミドラムを使用する場合が多いが、アルミドラムを導電性ベルトに置き換えれば省スペースが実現できるほか位置決めの自由度が増し高速化を図ることができる。
【0004】
また、転写部5をドラムで実現しようとすると非常に嵩高いものになるが、ベルトをもちいるとかなりの省スペースとなる。また、単色刷りと同構成で多色刷りを行えるというメリットもある。
搬送部11をベルト方式にすると紙サイズに対応した多数本のローラーを省略することが出来るため機構が簡単になる。
【0005】
加えて、ベルトを継ぎ目のないシームレースベルトにすることにより、ベルトの位置決めに対する自由度が増し、高速化にも貢献する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この様な用途に用いられるシームレスベルトは、種々の特性を満たす必要がある。すなわち感光体基体用では高い導電性の精密な制御、中間転写用では半導電性の精密な制御、用紙搬送用では紙などの被印刷媒体との高い摩擦係数が必要であり、機構面ではいずれも精密な寸法精度と繰り返しの折り曲げに対する耐久性が必要である。
【0007】
しかし、従来から知られているポリカーボネートにカーボンブラックを配合したシームレスベルトでは繰り返しの折り曲げに対する耐久性が不十分であるといった問題点がある。
従って、本発明は、電子写真方式を採用した機器に用いるシームレスベルトにおいて、抵抗制御などの機能面が精密に制御され、かつ寸法精度・繰り返しの折り曲げに対する耐久性をも満足するシームレスベルトを実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、シームレスベルト材料の選定において、剛性・寸法精度をポリマー成分に、繰り返しの折り曲げに対する耐久性をエラストマー成分に、電気抵抗値や用紙との摩擦係数などの特性は機能性成分にそれぞれ分担させることとし、ポリマー成分/エラストマー/機能性成分という配合を考えた。機能性成分は発現すべき機能に従い、導電性ないし半導電性であれば導電性フィラーを用いることとし、紙の高い摩擦係数であれば粘着成分を用いることとした。そして、種々の材料について検討した結果、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明のシームレースベルトは、PAT51〜97重量%と、融点が100℃以上でPATの融点以下、かつPATとの相溶性パラメーターの差が2.0未満の熱可塑性エラストマー49〜4重量%とからなる樹脂100重量部と機能性成分3〜50重量部とからなるシームレスベルトを提供するものである。
【0010】
(ポリマー成分)
剛性・精度という性能を受け持たせるポリマー成分としては、成形の量産性という点から熱硬化性樹脂に比べて優れる熱可塑性樹脂を用いることとし、熱可塑性樹脂の中でも耐久性に優れる傾向にある結晶性樹脂、その中でもフィルムでの実績が多く繰り返しの折り曲げに対する耐久性に優れているポリアルキレンテレフタレート(PAT)を選定した。
PATとしてはフィルム状に成形可能であれば特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を用いることができる。
【0011】
ただし、フィルム状に成形することから、PATのMFRとしては30.0〜1.0g/10分が好ましい。PATを環状ダイから押し出し、フィルム状に成形する場合、MFRが30.0g/10分を超えると途中でフィルムが切れることが多く、切れない場合でもフィルムの厚みむらがあった。一方、MFRが1.0g/10分に満たないと、背圧が高すぎてうまく押し出すことができない。
【0012】
(エラストマー成分)
PATの剛性、成形時及び使用環境下での寸法精度を犠牲にしない範囲で耐久性を向上させるための第2成分としてのエラストマーとしては、繰り返しの折り曲げに対する耐久性の高いゴム・エラストマーが候補として考えられるが、成形の量産性という点から熱可塑性エラストマーを用いることとした。
【0013】
熱可塑性エラストマーとしては、PAT系機能性シームレスベルトの機能を損なわず繰り返しの折り曲げに対する耐久性を向上させるものであれば特に制限はないが、電子写真装置の使用条件等を考慮するとシームレスベルトの耐熱性は80℃以上が必要である。熱可塑性エラストマーはマトリックス成分ではないので80℃より充分高い耐熱性は必要はないが、シームレスベルトの使用環境温度である0〜80℃で性能が大きく変わることは好ましくないので融点は100℃以上が好ましく、150℃以上であれば更に好ましい。
【0014】
シームレスベルトの繰り返しの折り曲げに対する耐久性としては3000回以上あればよく、10000回以上あれば全く問題ないが、融点が100℃未満の熱可塑性エラストマーではPATとの混練・成形時の熱劣化があり、耐久性の向上にはつながらない。融点が150℃以上の熱可塑性エラストマーの場合には耐久性は全く問題ないレベルとなる。従って、熱可塑性エラストマーの融点としては100℃以上が好ましく、150℃以上であれば更に好ましい。しかし、逆に融点が高すぎるとPATとの混練・成形時に熱可塑性エラストマーが完全に溶融しなくなるのでPATの耐熱性より低いことが好ましい。
【0015】
熱可塑性エラストマーとPATとの親和性は両者の相溶性パラメーター(SP値)の差で評価することとしたが、SP値の差が2.0(cal/cm3 )1/2 以上あると繰り返しの折り曲げに対する耐久性向上の効果が無くなるので、SP値の差は2.0未満が好ましい。これは、SP値の差が大きいとPATとエラストマーとの密着性が悪化するためと考えられる。
【0016】
熱可塑性エラストマーの添加量は、シームレスベルトとしたときの剛性(ヤング率)により定める。シームレスベルトの剛性は10000kg/cm2 以上が好ましく、15000kg/cm2 以上がさらに好ましい。10000kg/cm2 未満となると成形時の寸法精度に悪影響が出る。この剛性からおおよその配合量を示すと、49重量%以下が好ましく、30重量%以下であれば更に好ましいことになる。ただし、熱可塑性エラストマーの添加量が少なすぎると繰り返しの折り曲げに対する耐久性の改良効果が小さくなるので2重量%以上が好ましく、顕著な効果を得るためには5重量%以上が好ましい。
【0017】
(機能性成分)
機能性成分としてはシームレスベルトの用途に要求される性能を満たすものであれば特に制限はないが、導電性が必要であれば導電性フィラーであるカーボンブラック,金属粉末,金属酸化物粉末等を用いることが出来、半導電性が必要であれば、カーボンブラック,金属酸化物粉末等を用いることが出来、被印刷媒体との高い摩擦係数が必要であれば極性の熱可塑性エラストマー,粘着ゴム粉末等を用いることができる。
【0018】
機能性成分の添加量としては、シームレスベルトとしての機能を果たす限りにおいて特に制限はないが、あまり入れすぎると繰り返しの折り曲げに対する耐久性が低下するため、PATと熱可塑性エラストマーとからなる樹脂100重量部に対して50重量部以下が好ましく、添加量が少なすぎると機能を発現するにいたらなくなるので3重量部以上が好ましく、安定して機能を発現するためには5重量部以上が更に好ましい。
【0019】
【実施例】
以下の実施例において、各種数値は以下のように測定した。
(MFR) メルトインデックス(MI)はASTM D1238に準拠して2.16kg荷重で測定した。
(融点) 融点はDSCを用いて測定した。
【0020】
(相溶性パラメーター) POLYMER HANDBOOK SECONDEDITION(米国 JOHN WILEY&SONS社刊)
P.IV−339,表B2を基に算出した。
(繰り返しの折り曲げに対する耐久性) 東洋精機製MIT耐折疲労試験機を用いて破断するまでの折り曲げ回数を測定した。
【0021】
(抵抗値) 三菱油化製ハイレスタ、ロレスタを用いて測定した。表面固有抵抗(ρs)は特に記載の無い限り500Vで測定した。
また、実施例および比較例に用いた材料は以下のとおりである。
【0022】
(PAT)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
ノバドール5010(三菱化成(株)製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)
レマペット150(三菱油化(株)製)
【0023】
(熱可塑性エラストマー)
スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー(SEBS)
ラバロンSJ6400(三菱油化(株)製)
ポリエステル−エラストマー(PER)
ハイトレル6347(東レ(株)製)
ポリエステル−エーテルエラストマー(PEER)
ペルプレンP150B(東洋紡績(株)製)
ポリウレタンエラストマー(PUR)
ミラクトランP22MRNAT(日本ポリウレタン工業(株)製)
エチレン−プロピレンエラストマー(EPR)
サーモラン215(三菱油化(株)製)
【0024】
(機能性成分)
カーボンブラック
デンカブラック(電気化学工業(株)製)
ポリカーボネート(PCa)
ユーピロンE−2000(三菱ガス化学(株)製)
【0025】
(混練)PAT、熱可塑性エラストマー、機能性成分を2軸混練機を用いて混練しペレットとした。
(成形)成形は1軸押出し機、環状ダイ、引取り機、切断機を組み合わせた装置を用いて筒状のシームレスベルトとした。
【0026】
〔実施例1〜6〕
表1および表2記載の原料を混練・成形してシームレスベルトとした。得られたシームレスベルとの特性を表1および表2に示す。
【0027】
〔比較例1〜7〕
表3〜表5に記載の材料を用い、実施例と同様に混練・成形した。得られた結果を表3〜表5に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】電子写真方式を採用した機器の主要部の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 感光部
2 帯電部
3 露光部
4 現像部
5 転写部
6 除電・クリーニング部
Claims (3)
- メトルインデックス(MI)が1.0〜30g/10分であるポリアルキレンテレフタレート(PAT)51〜96重量%と融点が100℃以上前記PATの融点以下でかつ前記PATとの相溶性パラメーターの差が2.0未満の熱可塑性エラストマー49〜4重量%とからなる樹脂成分100重量部に、5〜50重量部の機能性成分を加えてなる樹脂組成物からなり、且つ、剛性(ヤング率)が10000kg/cm 2 以上、繰り返しの折り曲げに対する耐久性が3000回以上であることを特徴とするシームレスベルト。
- 前記PATがポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、であることを特徴とする請求項1記載のシームレスベルト。
- 繰り返しの折り曲げに対する耐久性が10000回以上であることを特徴とする請求項1記載のシームレスベルト。
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