JP3697852B2 - 計測システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞プローブ、計測システムおよび検定用プローブに関し、特にアレルギー反応を計測するのに適した細胞プローブ、計測システムおよび検定用プローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
アレルギー検査はこれまで、血中のIgE濃度や、アレルゲン添加に伴う好塩基球や好酸球から放出される、ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエン等の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を定量することで行ってきた。それらの定量法にはこれまで数多くの方法が開発され、現在、研究や医療等の分野で利用されている。
【0003】
特に、ヒスタミンはアレルギー反応を検定する指標として最も一般的な物質であり、生物学的定量法、化学的定量法、酵素学的定量法等の数多くの定量法が開発されている。肥満細胞等から放出されたヒスタミンをイオン交換樹脂カラムにより分離し、それをHPLC法により定量する方法が一般的に利用されている。また、化学的に定量する方法としてフタルアルデヒドとヒスタミンを縮合させ、安定な蛍光物質を形成して、その蛍光の強度を測定し、ヒスタミンを定量する方法が知られている。さらに、ヒスタミン抗体を利用したラジオイムノアッセイ法が現在では最も簡単で、信頼性のある方法として広く利用されている。このラジオイムノアッセイ法を利用した方法は、ヒスタミン定量用キットとして検出方法に工夫を施したものが数多く開発されている。
【0004】
上記した方法は、肥満細胞等アレルギー関連細胞から放出されたヒスタミンを定量する手段として十分有用な感度がある。しかしながら、上記手法は定量するまで最低でも1時間以上の時間を必要とする。また、上記手法はすべてアレルギー反応後、肥満細胞等から放出されたヒスタミンを、細胞外溶液を計測することにより定量するものである。そのため、アレルギー反応後の最終的なヒスタミンの放出量の定量は可能であるが、反応直後の放出過程の時間的変化量、さらにはヒスタミン以外の化学伝達物質との因果関係を詳細に計測することは不可能であるのが現状である。
【0005】
ヒスタミン等の化学伝達物質を計測してアレルギー反応を検査する方法とは別に、アレルゲン添加後の人体の反応を直接観察する方法が広く利用されている。それらの方法のうち、腕の上皮細胞を針で傷つけ、そこにアレルゲンを添加し、その後の皮膚の炎症を観察することにより検査するスクラッチ法は、もっとも手軽であり、幅広く利用されている。しかしながら、上記手法では、判定まで最低でも1時間以上の時間が必要であり、また、検査に苦痛を伴うなど、問題点が数多く残されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アレルギー反応は一般にアレルゲンが肥満細胞の細胞膜にあるIgEと結合し、それがひきがねとなり肥満細胞内のヒスタミン等の化学伝達物質が放出され、最終的にそれらの伝達物質が生体組織の炎症を引き起こす。すなわち、ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエン等の定量測定はアレルギー検査においては最も重要で信頼のおける手段である。これまでの検査では、反応後の細胞外溶液を抽出し、そこに含まれるヒスタミン等を分析しているため、検査に数時間必要であった。そこで、本発明ではその時間的問題を解決するために、卵母細胞にヒスタミン受容体を発現させた細胞プローブを作製し、そのヒスタミンに対する応答を瞬時に電気生理学的手法により計測することを考えた。
【0007】
したがって、本発明の一つの目的は、アレルギー反応を検査するための細胞プローブの提供およびその利用法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、細胞プローブを利用してヒスタミンの定量計測法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、細胞プローブを利用して、肥満細胞等の活性化を詳細に調べる方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、複数の種類の異なる細胞プローブにより、複数の化学伝達物質の放出機構を同時に調べる手段を提供するものである。
【0011】
本発明の他の目的は、細胞プローブの電気的応答反応を、イオン電極、蛍光反応等の手段で計測する方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、細胞間情報伝達に関与する物質の受容体を発現させた卵母細胞からなる細胞プローブを用い、前記物質の分析・定量をする。また、細胞プローブを用い、肥満細胞または好塩基球のアレルギー関連細胞の活性化を、細胞プローブの膜電位変化から調べることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、アレルギー反応に伴うヒスタミン等の化学伝達物質を瞬時に計測することができる細胞プローブを提供できる。
【0014】
また、本発明によれば細胞プローブによるヒスタミン等の定量測定法を提供できる。
【0015】
本発明によれば、肥満細胞等の活性化、および複数の種類の異なる細胞プローブにより、複数の化学伝達物質の放出機構の時間変化を調べる手段を提供できる。
【0016】
さらに、本発明によれば、細胞プローブの電気的応答反応をイオン電極、蛍光反応等の手段での計測方法を提供できる。
【0017】
本発明によれば、卵母細胞に発現させたヒスタミン受容体によりヒスタミンを認識させ、その後の卵母細胞内情報伝達反応によるクロライドイオンチャネルの開閉に伴う膜電位変化を計測することにより行う。そのため、ヒスタミン認識後数秒以内にヒスタミン定量計測を行なうことが可能である。
【0018】
本発明によれば、これまで最低でも1時間以上の時間を必要としていたアレルギー反応の検査を1分以下の短時間で行うことができ、さらにアレルゲンの反応にともない放出される化学伝達物質を複数同時に計測することが可能となる。すなわち、これまでのアレルギー診断を詳細に行うことができ、緊急医療分野での利用が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施例1
図1はヒスタミン認識卵母細胞の作成方法を示す図である。アフリカツメガエルの卵巣から取り出した未受精の卵母細胞11にヒスタミン受容体のmRNAを注入する。その卵母細胞を培養液中で2〜3日培養すると細胞膜12にヒスタミン受容体18が発現する。このヒスタミン受容体は卵母細胞膜中で活性があり、ヒスタミン17がヒスタミン受容体に結合すると、卵母細胞内にすでに存在する細胞内情報伝達物質を介して情報が伝わる。ヒスタミンの結合の後に、Gタンパク質13にシグナルが伝わり、次にホスホリパーゼC14に伝わり、そこでIP3(イノシトール三りん酸)が合成され、それがカルシウムイオン(Ca2+)小胞体15に結合し、カルシウムイオンを放出させる。そして、そのカルシウムイオンが細胞膜上にあるクロライドイオンチャネル(Cl-チャネル)16を開ける。その結果、卵母細胞内外の膜電位の変化が起こる。
【0020】
このような卵母細胞を利用した受容体の発現の実験はGundersenらにより、セロトニン受容体で初めて行われた(Gundersen, C. B. et al., 1984, Nature 308, 421-424)。その後、グルタミン酸受容体等、数多くの受容体の発現が試みられている。すなわち、図1で示した情報伝達を活性化する受容体であれば、アレルギー反応に関係するセロトニン、ロイコトリエン等他の化学伝達物質はもちろん、他の生体内に存在する伝達物質の認識細胞を作製することが可能である。また、図1で示した情報伝達を活性化しない受容体の場合、活性化するために必要な細胞内情報伝達タンパク質要素を共発現させることにより任意の伝達物質を認識する卵母細胞細胞を作製することが可能となる。さらに、複数の受容体遺伝子を導入することにより、同時に複数の伝達物質を認識する細胞をも作製することが可能となる。
【0021】
図2はヒスタミン認識卵母細胞のクロライドイオンチャネルが開いた時の電位変化を計測する方法を示した図である。サンプルチャンバー26に緩衝液を入れ、その中に図1で示したヒスタミン認識細胞24を入れる。その卵母細胞に微小のガラス電極23を刺す。ピペット22により溶液中の卵母細胞の細胞膜表面にヒスタミン21をかける。卵母細胞のヒスタミン受容体がヒスタミンと結合すると、クロライドイオンチャネルが開き卵母細胞の内外に電位変化が生じる。その変化を電流計25で計測する。その計測されるべき電流変化を27に模式的に示す。
【0022】
図3に添加したヒスタミンの量と、それに伴い引き起こる電流変化をプロットした図を示す。添加したヒスタミンの濃度に比例して電流値も変化する結果となり、卵母細胞で起こる電流変化は、溶液中のヒスタミン濃度と相関関係があることを示している。図4に卵母細胞内に注入したヒスタミン受容体のmRNA量の違いによる電流変化を示した。注入するヒスタミン受容体のmRNA量を100ng/mgから200ng/mgに増加すると、電流変化が約2倍となった。これは、卵母細胞に発現するヒスタミン受容体が2倍になったためと考えられる。すなわち、ヒスタミン受容体の発現量に比例して、ヒスタミンに対する応答が増加することを示す結果である。すなわち、ヒスタミン受容体の発現量を制御することにより、ヒスタミン認識卵母細胞のヒスタミンに対する感度を調節することが可能となる。その発現量の制御としてその他、注入するmRNAの量及び、mRNA注入後の培養時間が考えられる。しかしながら、mRNAは非常に不安定であり、その注入量の制御は困難を伴う。その解決策として、卵母細胞の核にヒスタミン受容体のDNAを直接注入することが考えられる。さらに、そのDNAのプロモーターの種類を換えることにより、受容体タンパク質の発現量をも制御することが可能となる。
【0023】
卵母細胞内に発現しているヒスタミン受容体の量は、ヒスタミンに対する応答の計測により定量化できるが、その他にルシフェラーゼやグリーンフルオレッセンスタンパク質(GFP)遺伝子等をヒスタミン遺伝子のN-末端もしくは、C-末端に結合させ同時に発現させる。そして、それらの蛍光や吸収を定量計測し、ヒスタミン受容体を定量することが可能となる。
【0024】
ヒスタミン認識卵母細胞のヒスタミン認識の定量性及び均一性は、これまで記した方法によりある程度制御は可能であるが、卵母細胞自身の個体差によるばらつきを解消することは困難である。その解決法としてトランスジェニックのカエルを利用し、卵母細胞のクローン化をする方法が考えられる。最近、トランスジェニックカエルの研究が進み、現実に可能となってきた(Slack, J. M. W., 1984, Nature 383, 765-766)。また、このトランスジェニックカエルを利用することにより、ヒスタミン受容体を発現した卵母細胞を、これまで記してきたmRNAの細胞への注入やDNAの核への注入をせずに、作製することが可能となる。さらに、発現量の制御や発現量の定量化は、これまで記したプロモーターを制御する方法により同様に可能である。
【0025】
実施例2
図5に実施例1で作製したヒスタミン認識卵母細胞を利用したアレルギー反応の計測法の例を示す。サンプルチャンバー51の底面に肥満細胞57等のアレルギー関連細胞を培養するか、または張り付ける。その細胞の上に実施例1で作製したヒスタミン認識卵母細胞56を載せる。その卵母細胞に実施例1と同様にガラス電極54を差す。ピペット52でアレルゲン53を肥満細胞に添加する。肥満細胞がアレルゲン53に対するIgE抗体により感作されている場合、アレルゲン添加により反応を引き起こし、ヒスタミンが遊離する。その遊離したヒスタミンによりヒスタミン認識卵母細胞が反応を起こし、その結果として電流変化が計測される。その電流変化を電流計55で定量計測することにより、肥満細胞のアレルゲンによる活性化の状態を詳しく調べることが可能となる。
【0026】
図6に図5のヒスタミン認識卵母細胞と肥満細胞の接触部分の拡大部分を示す。実際の計測では、カバーガラス63上で肥満細胞64を培養し、それをサンプルチャンバーに沈め、その上にヒスタミン認識卵母細胞61を載せる。肥満細胞の大きさは卵母細胞の100分の1程度であるため、ヒスタミン受容体62が発現している卵母細胞膜上に肥満細胞がまんべんなく接触する。そのため、アレルギー反応に伴う肥満細胞からのヒスタミンがヒスタミン受容体に瞬時に結合することができ、肥満細胞のヒスタミン遊離過程の時間変化をも計測することが可能となる。
【0027】
図7に図6の肥満細胞一分子とそのヒスタミン認識卵母細胞の接触部分の拡大部分を示す。実際の実験では、カバーガラス77上の肥満細胞76に初めにIgE75を結合させる。その後、余分なサンプルチャンバー内のIgEを洗い流し、その後アレルゲン73を添加する。この操作により肥満細胞よりヒスタミン74が遊離する。そして、そのヒスタミンが卵母細胞72の細胞膜に発現しているヒスタミン受容体71に結合する。
【0028】
以上記した通り、本発明の方法によりアレルギー反応に伴う肥満細胞からのヒスタミンの遊離過程の時間変化を定量計測することが可能となる。またヒスタミン受容体以外にセロトニンやロイコトリエン等の他の化学伝達物質の受容体を発現させた卵母細胞を作製し、複数の化学伝達物質を同時に計測することも、本発明の方法により可能となる。
【0029】
図5の方法ではヒスタミン認識卵母細胞が肥満細胞と一点のみの接触のため計測感度に限界がある。そこで、キャリアーに肥満細胞を吸着させ、それを利用した方法を図8に示す。肥満細胞吸着キャリアー85をチャンバー83に満たし、その中にヒスタミン認識卵母細胞84を沈める。卵母細胞の周りにキャリアーが一様に接触するため、アレルゲン81をピペット82から添加すると卵母細胞のまわりのすべての活性化した肥満細胞から遊離したヒスタミンを計測することが可能となる。図9に図8のヒスタミン認識卵母細胞と肥満細胞吸着キャリアーとの接触部分の拡大図を示す。キャリアー93の表面に肥満細胞92が吸着しており、その肥満細胞吸着キャリアーがヒスタミン認識卵母細胞91に一様に接触する。これにより、肥満細胞から遊離するヒスタミンをさらに感度良く計測することが可能となる。
【0030】
実施例3
図10に実施例1で作製したヒスタミン認識卵母細胞を利用し、肥満細胞の組織特異的アレルギー反応の計測例を示す。アレルギー反応に伴う肥満細胞の活性化には、アレルギー症状の起こる組織で多様性がある。これは、組織及び肥満細胞に発現している細胞接着分子であるタンパク質が一つの重要な要因であることが知られている。それら細胞接着分子の肥満細胞活性化に対する影響を調べる計測方法として、卵母細胞101にヒスタミン受容体102と共に細胞接着分子104を発現させる。一方、肥満細胞108には組織特異的にその組織に発現している接着分子に対応する接着分子103が発現している。細胞接着分子を共発現したヒスタミン認識卵母細胞と、その関連の接着分子が発現している肥満細胞を混ぜ合わせることにより、両方の細胞が結合する。その後、肥満細胞に対してIgE107とアレルゲン106を結合させ、ヒスタミン105の遊離を誘導させる。その遊離したヒスタミンと卵母細胞に発現しているヒスタミン受容体102が結合し、卵母細胞の活性化が起こる。その活性化を実施例1で記した方法により計測し、肥満細胞の接着分子による活性化の影響を調べる。この計測方法により、肥満細胞の組織特異的な活性化を詳細に調べられることはもちろん、機能の不明な遺伝子をヒスタミン認識卵母細胞で共発現させ、肥満細胞の活性化を調べることにより、これまで知られていなかった新たな肥満細胞活性化因子をも検索することが可能となる。
【0031】
実施例4
図11に実施例1で作製したヒスタミン認識卵母細胞をピペットに固定し、ヒスタミンの定量計測をする方法を示す。ピペット111でヒスタミン認識卵母細胞113を一ヶつかむ。それをヒスタミン115の溶けているヒスタミン溶液114のチャンバー116に浸ける。ヒスタミン溶液中には比較の電極117があり、ピペット内溶液とつながっている。ヒスタミンがヒスタミン認識細胞のヒスタミン受容体と結合することにより、クロライドイオンチャネルが開き、ヒスタミン溶液内との電位差が生じる。その電流変化を電流計112で計測することにより、溶液中のヒスタミン濃度を瞬時にして定量することができる。このピペットに固定した細胞プローブの大きさは直径約1mm程度の卵母細胞と同じであり、微量溶液中のヒスタミン濃度の定量計測をすることが可能である。
【0032】
図12に卵母細胞の細胞膜の一部分を利用した、パッチ法による微小電極の作製方法を示す。卵母細胞123の細胞膜122にパッチピペット121を接触させ、細胞膜の一部分を切り出す。切り出す方法はoutside-outで行い卵母細胞内部をピペットの内側になるようにする。図13にその切り出した細胞膜の一部分の拡大した部分を示す。パッチピペット131で切り出された細胞膜132には、ヒスタミン受容体133、それに共役するGタンパク質134が存在する。さらに、実施例1で利用したクロライドイオンチャネルの代わりに、そのGタンパク質で直接制御されるカリウムチャネル135を同時に卵母細胞に発現させる。カリウムチャネルを利用する理由として、実施例1ではIP3やカルシウムイオン等の水溶性の因子が必要であり、同実施例のようなオープンな系ではそのような因子を利用することが不可能である。さらに、パッチ電極では高濃度の塩化カリウム溶液を必要とするために、電極内部からのカリウムイオンの放出を計測することが最も有用な系であると考えられる。これらの電極を作製するためには、ヒスタミン受容体、Gタンパク質、イオンチャネルが存在すれば可能である。すなわち、本電極により1ミクロン以下の微小領域でのヒスタミン濃度の計測をすることが可能である。
【0033】
実施例5
図14に実施例1で作製したヒスタミン認識卵母細胞をピペットに固定し、さらにその周囲からアレルゲンを注入するためのピペットを被せたアレルゲン検定用プローブを示す。実施例4で示したヒスタミン認識卵母細胞145を固定したホールセルプローブ144の周りにもう一層アレルゲン141を注入するためのピペット143をはめ込む。その検定プローブをアレルギー反応を調べたい組織147(たとえば皮膚組織)に刺す。その後アレルゲンを周りより注入し組織内の肥満細胞を活性化させる。その活性化後の遊離したヒスタミン146がヒスタミン受容体と結合する。その後の反応を実施例1と同様な方法により電流計142により計測する。すなわち、組織でのアレルギー反応を瞬時に調べることができる。この検定プローブは実施例4で作製したホールセルプローブを改良することで可能であり、1mm以下の微小領域での計測が可能である。さらに、図13で記したパッチ法で作製することにより、1ミクロン以下の微小領域での計測も可能となる。
【0034】
実施例6
図15及び図16に実施例1で作製したヒスタミン認識卵母細胞の基板への固定化、及び電極を卵母細胞に刺さずにヒスタミンの定量計測をする方法を示す。固定基板155に半円の穴をあけ、その周りにクロライドイオン感受性膜156を張り付ける。その上にヒスタミン認識卵母細胞154を載せ、さらにその上をアガロース153等の高分子で固める。ヒスタミン151をピペット152で添加することにより、そのヒスタミンがヒスタミン受容体と結合する。その後、クロライドイオンチャネルが開き、クロライドイオンが細胞外へ放出される。そのクロライドイオンの濃度変化が基板上のクロライドイオン感受性膜で電流変化として計測される。すなわち、ヒスタミン添加後の電流変化を計測することにより、ヒスタミンの濃度を定量計測することが可能となる。
【0035】
図16は上記した図15の固定化方法と基本的に同様である。図15のクロライドイオン感受性膜の代わりにクロライドイオンチャネルブロッカー161を固定基板162上に張り付ける。その上に載せて固定されたヒスタミン認識卵母細胞164のクロライドイオンチャネルは、ヒスタミン166による卵母細胞の活性化後もブロックされた状態であり、卵母細胞の反対側のアガロース165に埋められた部分のみに接したクロライドイオンチャネルが開く。すなわち、クロライドイオンの放出に非対称性が生じる。そこで、クロライドイオンチャネルをブロックした領域とブロックしていない領域との間に電位差が生じる。その電位変化を電流計163で計測することにより、ヒスタミンの濃度が定量測定できる。
【0036】
このように、ヒスタミン認識細胞を基板上に固定することにより、その細胞自身を痛めず扱うことが可能となるばかりではなく、実施例1で示したような電極を細胞に刺すことなしに計測できるため、細胞自身の安定性を高めることが可能となる。また、クロライドイオン感受性膜やクロライドイオンチャネルブロッカーの代わりに膜電位感受性色素やクロライドイオン感受性色素等を固定基板上へ張り付けることで、卵母細胞のクロライドイオン変化を光学的に計測することも可能となる。
【0037】
さらに、このような固定化の方法に加えて、細胞の凍結保存を取り入れることに、長期間のヒスタミン認識卵母細胞の保存が可能となる。現在、体外受精等で卵子の凍結保存技術が飛躍的に進歩している。その技術を本発明のヒスタミン認識卵母細胞に適応することも可能であると考えられる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば卵母細胞にヒスタミン受容体を発現させ、その細胞プローブのヒスタミンに対する応答を計測することにより、アレルギー反応を瞬時にして検査することができる。さらに、その細胞プローブを計測手段として利用することにより、アレルギー反応に伴う肥満細胞等の活性化を詳細に調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒスタミン認識卵母細胞の作製法を示す図。
【図2】ヒスタミン認識卵母細胞によるヒスタミンの計測法を示す図。
【図3】ヒスタミン認識卵母細胞のヒスタミン濃度と電流変化の相関を示す図。
【図4】ヒスタミン認識卵母細胞のヒスタミン受容体mRNA注入量と電流変化の相関を示す図。
【図5】ヒスタミン認識卵母細胞によるアレルギー反応の計測法を示す図。
【図6】図5の部分拡大図。
【図7】図6の部分拡大図。
【図8】キャリアーを利用した肥満細胞から遊離するヒスタミンのヒスタミン認識卵母細胞による計測法を示す図。
【図9】図8の部分拡大図。
【図10】細胞接着分子を共発現させたヒスタミン認識卵母細胞での肥満細胞活性化の計測法を示す図。
【図11】ヒスタミン認識卵母細胞を改良したホールセルプローブによるヒスタミンの計測法を示す図。
【図12】パッチピペットによるヒスタミン認識パッチセルプローブの作製法を示す図。
【図13】図12の部分拡大図。
【図14】ホールセルプローブを改良したアレルゲン検定用プローブを示す図。
【図15】ヒスタミン認識卵母細胞の固定化法を示す図。
【図16】ヒスタミン認識卵母細胞の他の固定化法を示す図。
【符号の説明】
11…卵母細胞、12…細胞膜、13…Gタンパク質、14…ホスホリパーゼC、15…カルシウムイオン小胞体、16…Cl-チャネル、17…ヒスタミン、18…ヒスタミン受容体、21…ヒスタミン、22…ピペット、23…ガラス電極、24…ヒスタミン認識卵母細胞、25…電流計、26…サンプルチャンバー、51…サンプルチャンバー、52…ピペット、53…アレルゲン、54…ガラス電極、55…電流計、56…ヒスタミン認識細胞、57…肥満細胞、61…ヒスタミン認識細胞、62…ヒスタミン受容体、63…カバーガラス、64…肥満細胞、71…ヒスタミン受容体、72…卵母細胞、73…アレルゲン、74…ヒスタミン、75…IgE、76…肥満細胞、77…カバーガラス、81…アレルゲン、82…ピペット、83…チャンバー、84…ヒスタミン認識細胞、85…肥満細胞吸着キャリアー、91…ヒスタミン認識卵母細胞、92…肥満細胞、93…キャリアー、101…卵母細胞、102…ヒスタミン受容体、103…細胞接着分子、104…細胞接着分子、105…ヒスタミン、106…アレルゲン、107…IgE、108…肥満細胞、111…ピペット、112…電流計、113…ヒスタミン認識卵母細胞、114…ヒスタミン溶液、115…ヒスタミン、116…チャンバー、117…電極、121…パッチピペット、122…細胞膜、123…卵母細胞、131…パッチピペット、132…細胞膜、133…ヒスタミン受容体、134…Gタンパク質、135…Gタンパク質制御K+チャネル、141…アレルゲン、142…電流計、143…ピペット、144…ホールセルプローブ、145…ヒスタミン認識卵母細胞、146…ヒスタミン、147…組織、151…ヒスタミン、152…ピペット、153…アガロース、154…ヒスタミン認識卵母細胞、155…固定基板、156…クロライドイオン感受性膜、161…クロライドチャネルブロッカー、162…固定基板、163…電流計、164…ヒスタミン認識卵母細胞、165…アガロース、166…ヒスタミン。
Claims (3)
- 化学伝達物質の受容体を発現させた卵母細胞を、先端に固定する第1のピペットと、
前記第1のピペットの外周に設けられた、第2のピペットと、
前記受容体の前記化学伝達物質への応答による前記卵母細胞の内外の膜電位変化を検出する手段を有し、
前記第1のピペットと前記第2のピペットとの間にアレルゲンが注入され、前記第2のピペットの先端部が組織に刺されることによって、前記組織から遊離した前記化学伝達物質を、前記膜電位変化によって検出することを特徴とする計測システム。 - 請求項1記載の計測システムにおいて、前記化学伝達物質はヒスタミンであることを特徴とする計測システム。
- 請求項1または2に記載の計測システムにおいて、前記膜電位の変化を検出する手段は、前記卵母細胞内の情報伝達反応によるクロライドイオンチャネルの開閉に伴う膜電位変化を計測することにより行うことを特徴とする計測システム。
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1997
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