JP3696326B2 - ディーゼル機関支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1運転状態及び第2運転状態から成るディーゼル機関の診断に関連した運転状態のうちの第1運転状態を自動的に検出するようにされたディーゼル機関であって船舶に搭載されたディーゼル機関の取扱いを支援するディーゼル機関支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶では、乗組員の減員や熟練者の減少等に対処するため、運行管理の省力化や安全運転確保等が重要な課題になっている。このため、ディーゼル主機関の診断予知装置を船舶に搭載したり、陸上からデータの監視・蓄積やメンテナンス計画を補助する等の陸上支援システムが提案され一部では実施されている。
【0003】
従来の機関診断予知システムでは、一般に、各種センサの入力値と初期値とを比較し、それらの関係から機関の異常を予測したり整備時期を知らせる方法が採用している。しかし、このようなセンサ入力のみによる診断では、その正確性が不十分である。即ち、例えば機関のある故障を予知する場合には、その故障又は故障の前兆として現れる機関の状態の全てを考慮することにより、その故障の発生又は発生の可能性を正確に知ることができる。ところが、実際に装備でき診断に使用できるセンサの種類は、種々の理由、即ち、センサ自体が開発されていないこと、舶用としては信頼性に欠けるものであること、価額が高かいこと、狭い船内では装備場所に制約があること、船の推進用の主機関は気筒数が多いため各シリンダ毎に自動検出用のセンサを装備することが不経済であること、等により、かなり限定される。その結果、従来の機関診断システムでは、その判断結果が大まかであったり不明確であり、信頼性の低いものであった。
【0004】
又、機関診断には、通常コンピュータ等の演算処理装置を用いるが、このような装置を船舶に搭載するには種々の障害がある。即ち、船舶では振動や動揺が大きく装備場所も狭くコンピュータ等を搭載するには環境が悪いこと、これらの操作は船の乗組員にとって不慣れであること、乗組員が頻繁に変わりその操作方法等に習熟しにくいこと、特に500トン〜2000トンクラスの内航船では、各船毎にこのような装置を持つのは技術的に、また経済的に負担が大きいこと等種々の問題がある。
【0005】
一方、従来の陸上支援システムは、機関監視機能、データ蓄積機能、保守管理機能等を中心としたものであり、陸上に主体を置いて信頼性の高い機関診断まで行えるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術に於ける上記問題を解決し、船内の装備機器が少なく、乗組員の負担が少なく、簡単な構成で経済性が高く、信頼できる定量的な診断機能を備えたディーゼル機関支援装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、複数の第1の項目で構成される第1運転状態及び複数の第2の項目で構成され人によって調べられる第2運転状態から成るディーゼル機関の診断に関連した運転状態のうちの前記第1運転状態を構成する前記複数の第1の項目をセンサによって自動的に検出するようにされたディーゼル機関であって船舶に搭載されたディーゼル機関の取扱いを支援するディーゼル機関支援装置において、
前記船舶が複数隻ありそれぞれの船舶に搭載された船側送受信部と船側表現部と船側入力部と、陸上に設置された陸側送受信部と分析部と記憶部と陸側表現部と、を有し、
前記船側送受信部は前記第1運転状態の検出値を陸側に送信すると共に陸側からの送信を受信し、
前記陸側送受信部は前記船側からの送信を受信して前記分析部に出力すると共に前記陸側表現部で表現される特定第2運転状態の項目を船側へ送信し、
前記記憶部は、前記第1運転状態を構成する前記複数の第1の項目のそれぞれの基準値と、前記ディーゼル機関の前記複数の異常状態のそれぞれと前記第1運転状態の第1の項目及び前記第2運転状態の第2の項目のそれぞれとの予め定められ数値にされているか又は前記分析部で数値にされる因果関係の程度とを保有し、
前記分析部は、前記陸側送受信部の出力及び前記記憶部の基準値を入力してこれらを比較してその相違の程度を計算し、該相違の程度と前記記憶部から取り出した前記第1運転状態の前記複数の第1の項目のそれぞれの前記因果関係の程度とから前記複数の異常状態のそれぞれの異常状態毎に該異常状態の発生している第1の可能性の程度を計算し、
前記陸側表現部は、前記分析部で計算した異常状態のうちの少なくとも1つの特定異常状態と相関のある第2運転状態のうちの特定のものである前記特定第2運転状態の項目を前記記憶部から取り出して表現でき、
前記船側表現部は、前記陸側送受信部と前記船側送受信部とを介して前記特定第2運転状態を表現でき、
前記船側入力部は、前記船側表現部の表現によって人が調べた前記特定第2運転状態と前記人が正常な運転状態として認識している前記特定第2運転状態の基準状態との相違の程度であって数値にされているか又は前記分析部で数値にされる相違の程度を入力でき、
前記分析部は、更に、前記船側入力部の入力と前記記憶部から取り出した前記第2運転状態の因果関係の程度とによって前記特定異常状態の発生している第2の可能性の程度を加えるように前記特定異常状態の程度を再計算し、
前記陸側表現部は、更に、前記再計算部の計算結果を表現できる、
ことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を適用したディーゼル機関支援装置の構成の一例を示す。
本装置は、第1運転状態及び第2運転状態から成るディーゼル機関の診断に関連した運転状態のうちの第1運転状態を自動的に検出するようにされたディーゼル機関の取扱いを支援するディーゼル機関支援装置であり、船舶に搭載された船側送受信部としての船側通信コンピュータ1と、船側表現部としてのこれに接続された船側CRT11と、同じくコンピュータ1に接続された船側入力部としての船側キーボード12と、陸上に設置された陸側送受信部としての陸側通信コンピュータ2と、分析部としての分析コンピュータ3と、記憶部としての記憶装置4と、陸側表現部としての分析コンピュータ3に接続された分析CRT31及び分析キーボード32とを有する。
【0009】
図において鎖線の上側に示された船側のものは、多数の船舶のそれぞれに搭載されている。鎖線の下側に示された陸上のものは、例えば機関製造所等の一か所にあればよい。このような構成により、本例の陸上支援装置は、多数の船舶に搭載されたディーゼル機関のそれぞれを陸上で一括して診断できる機能を備えている。符号5は第1運転状態を自動検出するためのセンサ類、符号6は検出値の信号変換部、そして符号7はサーバである。又、上記の第1運転状態とは、センサ等で測定することが比較的容易な運転状態のことで、例えば一般的な温度、圧力、回転数等が該当し、第2運転状態とは、センサで検出することが不可能又は困難であったり、信頼性が低かったり、不経済である運転状態のことで、例えば異常色、異常音、特殊な異常振動、シリンダ毎のデータ等が該当する。
【0010】
船側及び陸側通信コンピュータ1、2は、船舶電話回線等を介して相互に送受信することができる。船側キーボード12及びCRT11は、必要に応じて送信内容の入力及び送受信内容の表示をすることができる。船側通信コンピュータ1は、送信時期等を制御し、例えば4時間に一度送信する通常送信モードや、非常時や呼出等に応じて行われる不定期通信モード等を備えている。陸側通信コンピュータ2は、通常待機状態になっていて、常に船側のデータを受信できる。
【0011】
サーバ7は、分析コンピュータ3が複数台設けられるような場合等に、それらの信号の整理を行う。又、多数の船からの通信を受け付けられるように、受信したデータを必要に応じて記憶装置4に入れたり、記憶装置4のデータの出し入れの管理を行う。但し、通信コンピュータや分析コンピュータにこのような機能を持たせるようにしてもよい。
【0012】
記憶装置4は、第1運転状態の基準値や、ディーゼル機関の複数の異常状態のそれぞれと運転状態項目のそれぞれとの予め定められた因果関係の程度の相関等の機関診断に関連したデータを保有している。このようなデータが各船毎に異なっている場合には、各船別に格納されている。更に、受信した多数の船の運転データが各船別に蓄積されている。
【0013】
分析コンピュータ3は、何れかの船に搭載されたディーゼル機関の診断を行うときには、まず、センサ類5で検出したその船の第1運転状態の検出値を入力し、これを基準値と比較して基準値との相違の程度を計算する。基準値と共に、船側から受信した検出値は前述の如く各船毎に一度記憶装置4内に収められていて、計算する時に呼び出される。検出値と基準値の相違の程度は、例えば、検出値と基準値との差の基準値に対する比率として算出される。
【0014】
分析コンピュータ3は、次に、上記の相違の程度と、ディーゼル機関の複数の異常状態のそれぞれと第1運転状態項目のそれぞれとの予め定められた因果関係の程度とから、それぞれの異常状態毎に異常状態の程度を計算する。ここで異常状態とは、破損、損傷、損耗、調整不良等、機関部位の不良な状態のことである。異常状態と運転状態項目との因果関係の程度の相関は、同様に記憶装置4に例えば相関表として格納されていて、計算時に呼び出される。
【0015】
因果関係の程度は、例えばA、B、Cの3段階にランク付けされる。これらは、予め数値として入力されていてもよいし、分析コンピュータ3によって計算され数値化されてもよい。この場合には、例えば、因果関係を有する運転状態の全数及びそれぞれの程度から比例配分された数値が与えられる。異常状態の程度は、例えば前記相違の程度と前記因果関係の程度との積を、それぞれの因果関係毎に集計した値として算出される。この結果は、例えば燃料弁本体クラックの可能性が40%というように数値として出される。
【0016】
分析CRT31では、計算した異常状態のうちの少なくとも1つの特定異常状態と相関のある特定第2運転状態の項目を記憶装置4から読み出して表現することができる。特定異常状態が例えば“燃料弁本体クラック”であるとすると、これと相関のある特定第2運転状態の項目として、“任意シリンダ爆発圧力、任意シリンダ爆発圧力偏差、燃料消費量、排気の色、回転数変動、回転数のハンチング”という6つの項目が表示される。このような項目は、これを表現する趣旨を明確にするために、例えば“排気の色は黒いか”というように質問の形式にすることが望ましい。なお、表現部は、本例ではCRTによる視覚表示にしているが、音声表示であってもよい。
【0017】
分析CRT31の表示事項は、分析コンピュータ1等を介して船側通信コンピュータ1に入れられ、船側CRT11で表示可能になる。このときには、アラーム等が発生し、船側の誰かがCRT11の画面を見て、上記の質問事項を知ることになる。第2運転状態は検出手段によって自動検出されないので、船側キーボード12で入力できるようにしているが、そのためには、上記のような第2運転状態を人が確認しなければならない。この場合、船側の装置は、通常操舵室又は機関制御室に設けられるので、画面を見た者が自分で運転状態を調べるか、又は船内電話等でエンジンの運転監視をしている者に調査を依頼する。そして、調査結果を船側キーボード12で入力する。
【0018】
第2運転状態の基準状態は、通常、船舶側でも保有している。即ち、ディーゼル機関の運転者である機関長や機関士は、常時ディーゼル機関の運転・監視を行っているので、音や色や振動等について基準状態である機関が正常に運転されている時の状態を認識している。従って、多少主観的要素が入るものの、センサ等による検出の困難性や、検出精度の低さ、誤検知の可能性等を考慮すれば、観察者の判断には重大な誤りは有り得ないため、その判断の方がはるかに信頼し得るものである。現実に、本発明のような診断機能を持った支援装置が装備されていない場合には、異常状態に対して、運転者がこれと関係のある第2運転状態を考え出し、実際のエンジンでその状態を確認し、頭の中でそれらを総合判断するという困難な作業をしているのであるから、本発明の支援装置を用いて行う単なる第2運転状態の正常時と異常時との相違の認識程度は、運転者にとって容易かつ正確にできるものである。
【0019】
但し、このような第2運転状態項目の表現において、基準状態の表示まで含めるようにしてもよい。又、表示を質問形式にする場合に、例えば、“排気の色が正常時のほぼ灰白色から黒くなっている程度は大か小か無か”とか、“回転数の変動が3%より大きいか小さいか”というような、基準状態及び基準状態との差の程度まで包含した内容にしてもよい。この場合には、船側キーボード12で“大”、“中”、“無”等の何れかを入力することになる。
【0020】
船側キーボード12の入力内容は、陸側に送信されて分析コンピュータ3に入れられる。この内容は、分析CRT31に表示することができる。分析コンピュータ3は、この入力と、記憶装置4に入れられている特定異常状態とこの入力との因果関係の程度から、一度計算した異常状態の程度を再計算する。分析CRT31はこの結果を表示することができる。この結果は、例えば、燃料弁本体クラックの可能性は80%というように、最初の計算値を修正した数値として表現される。このような再計算によれば、機関診断に全ての運転状態を取り入れたことになるので、画一的且つ客観的な手法によって、特別なディーゼル機関の専門家でなくても、信頼性の高い機関診断の最終判断を得ることができる。そして、これをディーゼル機関の整備・補修に活用し、その合理化を図ると共に運転の安全性を向上させることができる。
【0021】
以下に、具体例を交えて本発明のディーゼル機関支援装置の診断機能の内容を更に詳細に説明する。
表1、表2は、船舶に搭載された推進用主機ディーゼル機関で発生する可能性のある異常状態の一例とこれに関連した運転状態項目との予め定められた因果関係の程度の相関の例を示す。そのうち表1は、センサ5によって自動的に検出される第1運転状態の項目に関し、表2はセンサ入力のない第2運転状態の項目に関する。
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
表1、2は燃料系統の機械や部品の異常状態の例であるが、診断機能全体としては、機関本体の構造部分や附属機器の構造部分、潤滑系統、冷却水系統、吸気系統、排気系統、圧縮空気系統等の諸系統の機器や部品等について、診断されるべき全ての異常状態とこれに因果関係のある運転状態との相関表が作成される。そして、これらの全ての第1運転状態(表1)に対してセンサ4が設けられ、その検出値が自動入力される。なお異常状態には、整備や調整不良の状態等も含まれる。
【0024】
これらの表と共に、これらの運転状態項目については、それぞれの基準値又は基準状態が記憶装置4に入れられている。この基準値は一定値でもよいが、船の推進用ディーゼル機関では、機関回転数の基準値が当初220rpmとして記憶されても、船体やプロペラの汚れ等の影響で回転数が低下してくるので、このように経年変化するような運転状態に対しては基準値を修正するようにしてもよい。この場合、分析コンピュータ3を用いてトレンド解析等によって自動修正させることも可能である。
【0025】
表1、2においては、因果関係の程度を大きい順にA、B、Cの3段階に区分している。例えば、燃料ポンプのプランジャスティックという異常状態が発生すれば、第1運転状態の中の機関回転数は明らかに低下するので、この例では機関回転数の低下という運転状態が発生すれば上記異常の原因のうちでAという大きい影響を持つと解釈している。燃料ポンプのプランジャがスティックすれば種々の機関の運転状態が基準値又は基準状態と異なってくるので、Aという因果関係の程度も、数値的には全項目との関連によって定められる。表1、2の例では、上記異常に対してA、B、Cがそれぞれ6、5、8個あるので、1つのAに対しては、分析コンピュータ3により、
3/〔(6×3)+(5×2)+(8×1)〕≒0.083
という計算した数値が与えられる。
【0026】
なお、上記異常状態に対して、過給機回転数は基準値より高い場合もしくは低い場合の何れの場合も因果関係を持つので、何れか1つで影響度を計算している。他の異常状態についても、基準値の両側(高低など)の運転状態が因果関係を持つ場合には、このように計算する。又、A、B等の符号の変わりに、上記のような数値を予め計算して相関表に記入しておいてもよい。更に、因果関係の程度は、計算は複雑になるが、ある運転状態項目に対して、どれだけの異常が起こっている可能性があるかという、表1、2の縦欄を考慮に入れるようにしてもよい。
【0027】
測定値と基準値との相違の程度は、前述したように例えばそれらの差の基準値に対する比率として計算される。例えば、機関回転数の検出値が205rpmで、基準値が220rpmであれば、分析コンピュータ3では6.8%と計算される。次の異常状態の程度の計算では、この数値をそのまま用いることもできるが、例えば1〜0まで適当な間隔で7段階にランク付けをして、上記の6.8%をランクに当てはめ、そのランクの数字に換算させるようにしてもよい。なお、因果関係の大きさや基準値との相違の数値化には各種の計算方法があるので、合理的である限り、他のどのような計算方法を用いてもよい。
【0028】
上記のような因果関係及びその程度と相違の程度により、分析コンピュータ3は異常状態毎にその程度(以下「確信度」という)を計算する。例えば前記のランクを用いた計算では、第2運転状態も含めて全てのランクが1であるときには、その異常の確信度は1即ち100%になる。前記プランジャスティックの例で、仮に因果関係A、B、Cのもののランクがそれぞれ全て0.6、0.6、0.4であるとすれば、確信度Pは、第1運転状態のみで計算すると、
P1 =〔(2x3x0.6)+(2x2x0.6)+(5x1x0.4) 〕/36 =22.2 %
になり、第2運転状態まで含めると、
P2 =〔(6x3x0.6)+(5x2x0.6)+(8x1x0.4) 〕/36 =55.5 %
となる。
なお、このような計算方法として、合理的な他の計算方法を用いてもよいことは勿論である。
【0029】
表3は、以上のようにして計算した異常状態の程度即ち診断結果の一例を示し、表4は、異常状態の中のT/C(ターボチャージャ)軸受損傷と因果関係のある第1運転状態、即ち診断要素の内容を示す。これらの表は何れも分析CRT31に表示することができる。この表の影響度大、中、小は表1、2に示すA、B、Cに相当する。左欄の数字は、表3では異常状態項目の番号、表4では運転状態項目の番号を示す。
【表3】
【0030】
【表4】
表5は、T/C軸受損傷と因果関係のある第2運転状態を質問形式で分析CRT31に表示した例を示す。この中の102を除く他の項目では、運転状態の性格自体が基準状態を示している。即ち、サージング、異常音及び回転数ハンチングは通常発生しないので、図の矢印選択の欄の“イイエ”が基準状態である。項目102では、数値的な基準状態即ちシリンダ内最高圧力の基準値、及び測定値が基準値と相違する程度(低い程度)を示すこともできるが、本例ではこれを明示せず、機関の運転者の保有するデータ及び判断基準に委ねている。
【0031】
【表5】
【0032】
但し、このように基準値や相違の程度を数値的に示し得るものについては、基準値欄を設けると共に、質問内容を、“基準値との差が10kgf/cm2 より大、小”というように表示して単なる選択のみとし、運転者の負担を更に軽くするようにしてもよい。なお、この例の項目はセンサでは殆ど検出できないものである。又項目102のシリンダ内最高圧力についても、高温・高圧の条件下で作動できる耐久性のあるセンサは入手しにくく、全気筒に付けて自動計測するには高価なものとなる。
【0033】
この第2運転状態の項目は、船側に送信されて船側通信コンピュータ1に入れられ、船側CRT11に表示可能になる。船側コンピュータ1は例えば操舵室に配置されていて、陸側からの送信を受信するとアラームが鳴り、エンジンの担当者である機関長又は機関士に知らされる。そして、船側CRT11で通信内容である質問事項を確認し、エンジンルームに入ってそれらについて調べることになる。場合によっては、エンジンルーム内で運転監視中の他の機関士に電話等で調査を依頼してもよい。このような第2運転状態を調べた結果は、表5の例では、同じ画面を用いて、船側キーボード12で該当個所にカーソルを移動することにより入力できるようになっている。図では黒い四角で塗られた個所が解答内容を示す。即ち、中程度の影響度を持つ項目158のサージングはかなり大きかったことを示している。この内容は、通信コンピュータ1、2等を介して再び陸側の分析コンピュータ3に入れられる。
【0034】
表6は、上記の入力によって分析コンピュータ3が再計算した結果と、その診断要素を示す。この再計算では、入力された第2運転状態を、第1運転状態による計算と同様の計算方法で修正している。この再計算結果は、分析キーボード32を操作することによって分析CRT31に表示できる。本例では、表7に示すように、この結果に基づいた処置内容まで表示できる。
【表6】
【0035】
【表7】
以上の如く、本発明のディーゼル機関支援装置は機関診断機能を有するが、更に、機関データのトレンド分析機能、機関保全管理機能、予備品管理機能等の諸機能を追加して、本装置をディーゼル機関の運転、保守の総合的支援装置にすることが望ましい。その場合には、図1において二点鎖線で示すように、必要に応じて追加したセンサ類5´によって機関診断のための運転状態以外のその他の運転状態を検出したり、又は船側キーボード12を利用してマニュアル入力し、必要データを陸側に送信できるようにする。このときにも、これまで説明した各種コンピュータや記憶装置等を利用することができる。
【0036】
図2〜図4は、それぞれ、上記のように構成したディーゼル機関支援装置により、トレンド分析の一例として、分析コンピュータ3及びそのCRT画面を用いて、機関の回転数と出力との関係、回転数、プロペラ翼角及びFOラック目盛の時間的変化、並びに、過給機回転数、給気圧、シリンダ出口排気温度及び過給機入口排気温度の性能偏差の時間的変化を解析して表示した結果を示す。本例では、2カ月分のデータを表示させているが、数日単位又は数年単位等で表示することもできる。
【0037】
このようなトレンド分析機能によれば、多種類の長期間にわたる膨大なデータを容易に整理して分析・表示でき、通常船で記録されているログブックだけでは容易に分からないディーゼルエンジンの運転状態や性能の変化の傾向を極めて容易且つ正確に知ることができる。そして、このようなトレンド分析の結果により、診断機能の基準となるベースデータを修正したり、診断機能の最終判断を更に補強することも可能になる。又、船の運転、保守に対して一層的確な支援を行うことができる。
【0038】
【発明の効果】
船側及び陸側に設けられた送受信部により、陸側に設けられている分析部に第1運転状態の検出値を入力できる。分析部は、まずこの検出値と記憶部に保有されている基準値とからこれらの間の相違の程度を計算し、次に記憶部からディーゼル機関の異常状態と第1運転状態との因果関係の程度を引き出し、これらから第1運転状態に関する限りの異常状態の程度を具体的に数値として算出する。しかしながら、この段階では、第2運転状態の因果関係を判断に入れていないので、計算結果の確信度はまだ不十分である。
【0039】
陸側表現部では、計算部で計算した異常状態のうちの目的とするものについて、これと因果関係があり且つ自動検出されない特定第2運転状態の項目の全てを記憶部から取り出して表現できる。このような項目の全ては、たとえレベルの高いディーゼルエンジンの技術者であっても、当座においては容易に考え出せないものであるが、この表現部によって誰でもそれらの全てを瞬時に知ることができる。
【0040】
船側表現部は、陸側及び船側通信部を介して上記陸側表現部に表示された前記項目を表現できるので、ディーゼルエンジンの搭載されている船の乗組員は、その表現事項を確認してそれらの項目について基準状態との相違の程度を調べることができる。船側入力部では、その結果を入力でき、これが船側及び陸側の送受信部を介して再び分析部に入力され、分析部はこの入力を加味して異常状態の程度を再計算し、陸側表現部で再計算結果を表現できるので、最終的に、異常状態と因果関係のある全ての運転状態が計算に含まれた診断結果を得られ、ディーゼル機関の診断結果の信頼性が大幅に向上する。そして、支援装置のこのような診断機能によれば、人の思考や判断を殆ど取り入れる必要がないので、画一的且つ客観的に診断でき、それ程技術レベルの高いエンジンニヤを必要としない。
【0041】
又本発明では、ディーゼル機関に関連した運転状態を第1運転状態と第2運転状態とを分け、第1運転状態のみを自動検出するが、第2運転状態も判断に加えられるようにしているので、自動検出のためのセンサとしては、現在開発が完了していて実用性や信頼性があり、極端にコスト高にならないもののみを使用すれば足りる。特に船舶の推進用主機ディーゼル機関では、気筒数の多いものが多く、このような多気筒エンジンのシリンダ毎に各種の自動検出計器を取り付けるのは、いたずらにコスト高を招くが、このような問題も解決される。従って本発明によれば、機関の構造を複雑にしたりコストを上昇させることなく、精度の高い機関診断を行うことができる。このような信頼できる診断結果によれば、保守の合理化や運転の安全性の確保に寄与することができる。
【0042】
そしてこの場合、船側には、コンピュータ機能を持つ装置として表示及び入力部分を備えた送受信部だけの簡単なものだけを設ければよいので、設備費用も極めて少なく、又、内航船のように船内スペースが狭い船であっても、その設置スペースを容易に確保でき、例えば操船者の常駐する操舵室に設置することも可能である。又、この程度の装置であれば、操作が簡単であるため、船の乗組員であっても容易にその取扱方法を習得することができる。
【0043】
一方、陸側には多機能を持つ分析部と多くのデータを保有できる記憶部等が設けられるが、これらは多数の船舶に共通的な装置であるから、各船毎に装備することに較べれば、支援装置全体として大幅な設備の削減が図られる。そして、陸上の一か所でコンピュータ等の操作に習熟した者が集中的に管理すれば、支援システム全体として大幅な省力化が図られる。この場合、陸上の通常の操作者は、必ずしもディーゼルエンジンの高度な技術者でなくてもよく、単にOA機器の操作のできる者であってもよい。そして、支援装置の陸上部分を例えばエンジンの製造所に設置することにより、設計データ等の保有しているエンジンの全てのデータと専門的知識を必要に応じて活用し、ディーゼル機関の運転、保守を更に的確に支援することが可能になる。従って、本発明のような支援システムによれば、人や資料の効果的な活用も図られる。。
【0044】
又、本発明のように船側と陸側とでデータをやり取りし、分析機能や記憶機能を備えた部分を有するディーゼル機関支援装置では、検出項目や計算分析事項を追加することにより、機関のトレンド分析、保全や予備品管理等の諸機能を追加し、容易にディーゼル機関の運転、保守の総合的支援装置にすることができ、更に陸上支援を充実したものにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したディーゼル機関支援装置の構成例を示す説明図である。
【図2】上記装置にトレンド分析機能を持たせた場合の分析結果の一例を示す曲線図である。
【図3】トレンド分析結果の他の一例を示す曲線図である。
【図4】トレンド分析結果の更に他の一例を示す曲線図である。
【符号の説明】
1 船側通信コンピュータ(船側送受信部)
2 陸側通信コンピュータ(陸側送受信部)
3 分析コンピュータ(分析部)
4 記憶装置(記憶部)
11 船側CRT(船側表現部)
12 船側キーボード(船側入力部)
31 分析CRT(陸側表現部)
Claims (1)
- 複数の第1の項目で構成される第1運転状態及び複数の第2の項目で構成され人によって調べられる第2運転状態から成るディーゼル機関の診断に関連した運転状態のうちの前記第1運転状態を構成する前記複数の第1の項目をセンサによって自動的に検出するようにされたディーゼル機関であって船舶に搭載されたディーゼル機関の取扱いを支援するディーゼル機関支援装置において、
前記船舶が複数隻ありそれぞれの船舶に搭載された船側送受信部と船側表現部と船側入力部と、陸上に設置された陸側送受信部と分析部と記憶部と陸側表現部と、を有し、
前記船側送受信部は前記第1運転状態の検出値を陸側に送信すると共に陸側からの送信を受信し、
前記陸側送受信部は前記船側からの送信を受信して前記分析部に出力すると共に前記陸側表現部で表現される特定第2運転状態の項目を船側へ送信し、
前記記憶部は、前記第1運転状態を構成する前記複数の第1の項目のそれぞれの基準値と、前記ディーゼル機関の前記複数の異常状態のそれぞれと前記第1運転状態の第1の項目及び前記第2運転状態の第2の項目のそれぞれとの予め定められ数値にされているか又は前記分析部で数値にされる因果関係の程度とを保有し、
前記分析部は、前記陸側送受信部の出力及び前記記憶部の基準値を入力してこれらを比較してその相違の程度を計算し、該相違の程度と前記記憶部から取り出した前記第1運転状態の前記複数の第1の項目のそれぞれの前記因果関係の程度とから前記複数の異常状態のそれぞれの異常状態毎に該異常状態の発生している第1の可能性の程度を計算し、
前記陸側表現部は、前記分析部で計算した異常状態のうちの少なくとも1つの特定異常状態と相関のある第2運転状態のうちの特定のものである前記特定第2運転状態の項目を前記記憶部から取り出して表現でき、
前記船側表現部は、前記陸側送受信部と前記船側送受信部とを介して前記特定第2運転状態を表現でき、
前記船側入力部は、前記船側表現部の表現によって人が調べた前記特定第2運転状態と前記人が正常な運転状態として認識している前記特定第2運転状態の基準状態との相違の程度であって数値にされているか又は前記分析部で数値にされる相違の程度を入力でき、
前記分析部は、更に、前記船側入力部の入力と前記記憶部から取り出した前記第2運転状態の因果関係の程度とによって前記特定異常状態の発生している第2の可能性の程度を加えるように前記特定異常状態の程度を再計算し、
前記陸側表現部は、更に、前記再計算部の計算結果を表現できる、
ことを特徴とするディーゼル機関支援装置。
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