JP3694322B2 - 生体適合性医療用製品及び方法 - Google Patents
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Description
発明の背景
本発明は、一般的に、改良された組織及び血液生体適合性が備えられているヒト又は動物の体にインプラントするための医療用装置に関する。より特異的には、本発明の医療用装置の金属又はガラス部分には、共有結合した生物活性分子(bioactive molecules)で化学的に変性された表面が備えられている。
手術又は透析で補助するために身体に接続すべきことを意図した、体内及びその上で代用血管、合成及び眼球内レンズ、電極、カテーテルなどとしてまたは体外装置として役立つ医療用装置は公知である。しかしながら、医療用装置においてそのような生体適合材料を使用すると、急激な凝塊形成作用などの不都合な身体応答を刺激し得る。種々の血漿蛋白質は、プラスチック表面に血小板及びフィブリン沈着を開始する行動をとる。これらの作用は、血流を阻害する血管狭窄及び、医療用装置の機能を失わせる炎症反応を導く。
「生体適合材料(biomaterials)」は、実質的に体液に不溶性で且つ身体内若しくはその上に設置したりまたは体液と接触させるために設計且つ構築された材料として定義し得る。理想的には、生体適合材料は、身体内で望ましくない反応(例えば、血液凝固、組織死、腫瘍形成、アレルギー反応、異物身体反応(拒絶)または炎症反応)を誘発せず;所望の目的のために機能するのに必要な物理的特性(例えば、強度、弾性、透過性及び柔軟性)を備え;容易に精製、製作及び滅菌し得;身体内に移植されたり、または身体と接触している間その物理的特性及び機能を実質的に維持するだろう。
本明細書中、生体適合材料の固体表面は、生体に純粋に有益な効果をもって生体組織及び/または生物学的液体と接触して存在又は機能し得る場合には、「生体適合性(biocompatible)」として特徴付けられる。宿主生体の妨害を減少させるために、長期の生体適合性が望まれている。生体適合材料の改良された生体適合性への一つの試みとしては、身体の通常の一部として身体が装置を受容するように、通常の細胞又は蛋白質層の付着及び成長を促進し得る種々の「生体高分子(biomolecules)」を付着させることがある。装置表面に付着した成長因子及び細胞付着蛋白質などの生体高分子は、この目的の為に使用され得た。さらに、抗凝塊形成性、抗血小板の、抗炎症性等の生体高分子は、表面の生体適合性を改良するためにも使用されてきた。
そのような生体高分子を付着させるために種々のアプローチが示唆されてきた。そのようなアプローチの一つとしては、Dekkerらの"Adhesion of endothelial cells and adsorption of serum proteins on gas plasma-treated polytetrafluoroethylene",Biomaterials,第12巻、1991年3月に記載されたものがある。このアプローチでは、PTEE支持体を高周波プラズマにより変性させてその表面の湿潤性を改良した。ヒト血清アルブミン、ヒトフィブロネクチン、ヒト免疫グロブリン及びヒト高密度リポ蛋白質をプラズマ-処理支持体に吸着させ、次いでヒト内皮細胞を生じさせる。別のアプローチは、Hoffmanらの米国特許第5,055,316号に記載されたもので、アルブミン、免疫グロブリン、フィブリノーゲン若しくはフィブロネクチンなどの血清蛋白質、又は蛋白質-A若しくは糖蛋白質などの異なる源由来の蛋白質を、最初にプラズマ-沈着表面を提供するためにプラズマ-重合可能なフッ化水素ガスの存在下でプラズマガス放電を使用し、次いで該蛋白質の溶液に暴露することにより表面に結合させるというものである。そのような生体高分子の共有結合は、Itoらの"Materials for Enhancing Cell Adhesion by Immobilization of Cell-Adhesive Peptide",Journal of Biomedical Materials Research,25:1325-1337(1991)に知見され得、該文献では、フィブロネクチン又はRGD蛋白質を水溶性カルボジイミドを使用してヒドロゲルに結合させている。この方法は表面から伸長した生体高分子を結合させているが、生体高分子がゲル層内にしっかりと固定されているという事実により、例えば、生体高分子に接着させようとした細胞との相互作用に関しては生体高分子の有用性を減少させてしまっている。
スペーサー分子(spacer molecules)は、この問題と取り組むために使用されてきた。スペーサー分子は、固体表面に付着し得、前記表面から伸長するほど十分に大きく、且つ単数及び/または複数の生体高分子を固定し得る分子または化合物である。スペーサーは、体液と効率的に接触させるために、生体高分子の活性部位を支持体の外側へ確実に保持する。スペーサーは、むしろ一般的に有機分子の対向端に配置された少なくとも2個の官能基を有する有機分子から誘導される。そのような基は、スペーサーを固定表面及び生体高分子に結合させ得る付着媒体(vehicles)として機能する。例えば、Narayananらの米国特許第5,132,108号では、コポリマー表面を水蒸気プラズマ媒体の存在下、高周波電場に暴露することによって高周波プラズマ処理にかけた。ポリエチレンイミン(PEI)及び1-(3-ジメチルプロピル)-3-カルボジイミド(EDC)カップリング剤の水溶液を高周波プラズマ放電で変性したポリウレタン表面に適用した。次いで、ヘパリン及びEDCの水溶液をPEI-処理表面に適用して該表面にしっかり固定された抗-凝血剤を有するポリマー表面を提供した。しかしながら、多官能性スペーサー分子でコーティングしたポリウレタン表面の不均一性(heterogeneity)の考察は保証されていない。
例えば、Golanderらの米国特許第4,565,740号またはLarmらの米国特許第5,049,403号によれば、追加の適用が提供され得る。これらの特許の最初のものにおいては、ポリマー性カチオン界面活性剤(例えば、ポリアルキレンイミン)及びジアルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)の錯体を支持体材料上に吸着させる。これらの特許の第2のものでは、ポリアミンを支持体表面上に吸着させ、クロトンアルデヒドで架橋させる。次いで、アニオン性材料の中間層を含む多層コーティングを適用して有効なコーティングを得ている。しかしながら、これらの架橋コーティングは、表面上の吸着及び表面に対するイオン結合に依存するため、表面に対しコーティングの優れた結合を提供しないだろう。
本発明者らは、米国特許第5,229,172号、同第5,308,641号及び同第5,350,800号において多層コーティングの使用を経て、生体適合材料の生体適合性の改良に寄与してきた。例えば、米国特許第5,229,172号では、本発明者らは、種々のスペーサー及び生体高分子を付着させるのに使用し得るポリマー表面上にグラフト化アクリルアミドのベース層を提供することによりポリマー性材料の表面特性を変性する方法を知見した。また、米国特許第5,308,641号では、本発明者らは、アミノ化支持体に共有結合され、且つアルデヒド基のついた二官能性の架橋剤で架橋されたポリアルキレンイミンを包含する改良されたスペーサー物質を発見した。また、米国特許第5,350,800号では、本発明者らは、カルボキシル基を有する生体高分子をカルボジイミドによりアミノ化固体表面に付着させ、次いでカルボキシル基の生体-官能価を選択的に復活させる方法を知見した。
金属又はガラス表面上には、金属又はガラス支持体とグラフト化ベース層との間に共有結合を提供するための有機構造がないため、そのような多層コーティングのベース層の結合は、問題となり得る。他の者達は、表面に接着させるためにアミノシラン類を適用し、次いで該アミノシランのアミン官能価により生体高分子を該アミノシランに付着させることにより、金属及びガラスへの接着問題と取り組んできた。このことはアミノシランを使用して酸化タンタル表面にヘパリン分子を接着させるという、Rowlandらの米国特許第5,355,433号に知見され得る。アミノシラン類は、Erikssonらの米国特許第4,118,485号においては、ガラス又は金属表面にヘパリン分子を付着させるためにも開示されている。しかしながら、この種のコーティングにおいてアミノシラン類を使用することは、高レベルの生物学的有効性及び安定性の表面を製造するのにおいては非常に良好ではなかった。
従って、本発明の目的は、金属又はガラス支持体上に改良された安定性を有する生体高分子及び/またはスペーサー分子を付着させるためのベースを提供することである。
また、本発明の目的は、生体高分子を付着させるための安定なプラットフォームを提供し、これにより、付着させた生体高分子が該スペーサー層に埋め込まれないようにする、混合ベース/スペーサーを提供することである。
発明の概要
従って、本発明は、接着コーティングを有する表面を備えた金属又はガラス表面を有する医療用製品を包含する。該コーティングは、シランが表面から垂下するビニル官能価を備えて表面に接着するようにビニル官能価を有し、次いで該シランの垂下しているビニル官能価がグラフトポリマーと共有結合することによりグラフトポリマー中に取り込まれるように適用したシランと共に該表面上にグラフトポリマーを形成するシラン化合物を包含する。
好ましいシランは、通常、構造:
C2H3-Si-X3
(式中Xは、ハロゲン、メトキシ又はエトキシ基である)の化合物である。この種の化合物の好ましい化合物としては、トリクロロビニルシランが挙げられる。他のシラン類も、以下詳細に記載するように使用し得る。
シランのビニル官能価を含むベース層も、薄いが密に形成したグラフトポリマーを含む。好ましくは、グラフトポリマーは、エチレン性不飽和モノマーからの遊離ラジカル反応により形成される。従って、グラフトポリマーを形成する反応は、シランの垂下しているビニル基も活性化し、グラフトポリマー形成時にグラフトポリマー中にビニル基を含ませる。セリウムイオンなどの酸化金属を使用して重合反応を開始させ得る。モノマーがセリウムイオンと共に沈澱する傾向を持たない時、例えば、アクリルアミドと共に使用する際には、セリウムイオングラフト化が最もよく作用することが知られている。アクリル酸の市販品中に存在する重合阻害剤が最初に蒸留によって除去されるという条件のもとでは、アクリル酸はセリウムイオングラフト化で使用するのに優れた候補モノマーでもある。アクリル酸、アクリルアミド及び他のモノマーのブレンドも、グラフトの所望の特性に依存して使用し得る。
グラフト化表面に付着した二官能性分子は、例えば、抗凝血剤(例えば、ヘパリン、硫酸ヘパリン、デルマタン硫酸、グリコサミノグリカン配列及び類似体、ヒルジン、トロンビン阻害剤)、血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ、組織生形質活性剤)、凝血促進剤、血小板接着阻害剤、血小板活性阻害剤、細胞付着蛋白質、成長因子/サイトカイン、創傷治癒剤(wound healing agents)、抗菌剤、抗ガン剤、ホルモン、鎮痛剤、無毒化剤などの生体高分子であり得る。これらの生体高分子は、当業者に公知の方法により、生体官能性(biofunctional)分子上の対応する基と反応するグラフト化ポリマー中のアミン及びカルボキシル基等の垂下している官能基によりグラフト化表面に共有結合し得る。
好ましくは、本発明の医療用製品は、生体高分子用の付着手段としてスペーサーを包含する。そのようなスペーサーは、本発明の背景で記載したように当業界で公知である。好ましいスペーサーは、本明細書中その全体が参照として含まれる、本出願人の米国特許第5,308,641号に記載されているようなポリアミンスペーサーであり得る。
本発明により生体適合性表面に提供され得る装置の例としては、血管グラフト若しくは硬質組織補綴学などの補綴装置及び移植した補綴装置の部品、内在性カテーテルなどの侵襲性(invasive)装置または透析装置若しくは血管循環若しくは心血管手術で使用する酸素輸送装置などの体外血液取扱装置が挙げられる。本発明の特別な血管補綴態様においては、生体活性(bioactive)コーティングが深割れまたは剥離せずに湾曲に耐え得るため、上記ベース層をインプラント又は使用時に動作に耐える金属製医療用装置に付着させ得る。これに関する例としては、ステントとして一般的に公知である、金属製で半径方向に拡張可能な一般的に筒状の体内プロテーゼ(endoprotheses)がある。これに関する例示的なステントは、その主題が参照として含まれる、Wiktorの米国特許第4,886,062号及び同第5,133,732号に記載されている。このようなステントは、非常にファインゲージの金属製ワイヤ、典型的にはタンタルワイヤ又はステンレスチールワイヤから製造されている。インプラント時、これらのステントは、血管等に沿って部分的に閉塞した場所に到着するまで血管形成カテーテルなどのバルーン上に据え付けられ、到達時に閉塞部を開口し、その場所で血管を支持する目的のためにバルーン及びステントを半径方向且つ円周方向に拡張させる。これには、タンタルワイヤを大きく曲げることが必要である。多くのコーティングは、この種の湾曲に暴露した際に、コーティングの深割れ及び/または欠損を防ぐのに必要な柔軟性及び/または接着特性を有していない。さらに、本発明により生体高分子としてヘパリンを備え、且つ血管内にインプラントされたステントは、ステントインプラント工程の結果として発生し得る金属部材上の血栓形成を防ぎ得る。
発明の詳細な説明
多層コーティングのベース層は、シランが表面に接着するように、垂下しているビニル官能価を有するシランを表面に最初に提供することにより製造する。使用するシランとしては、構造:
C2H3-Si-X3
または、場合により、
C2H3-R-Si-X3
(式中、Xは、ハロゲン、メトキシ又はエトキシ基であり、及びRは、短鎖アルキル基である)の化合物が挙げられる。好ましいシラン化合物は、トリクロロビニルシランである。
当業者は、表面にシランをうまく適用するには、表面を予め清浄しておくこと及びシランの適用時に該表面の水分を制御することが含まれることを認識するだろう。従って清浄な表面を提供し且つ水分の制御をするために多段清浄及び乾燥操作を使用する。清浄及び乾燥の例示的な方法は、本明細書中実施例にて知見され得る。
シランのビニル官能価を含むベース層は薄いが密に形成したグラフトポリマーを含む。好ましくは、グラフトポリマーは、エチレン性不飽和モノマーからフリーラジカル反応により製造する。従って、グラフトポリマーを形成する反応はシランの垂下しているビニル基をも活性化し、その形成時にグラフトポリマーに該基を包含させる。セリウムイオンなどの酸化金属を使用して重合反応を開始させ得る。
好ましいグラフト工程は、有機溶媒重合などの他の溶媒重合方法又はバルク重合と対照的に水溶液(モノマー20〜40重量%)中の支持体上で実施する。好ましいモノマー溶液の組成は、生体高分子又はスペーサー層を付着させるために使用し得るグラフト化表面上にカルボキシル基の所望の密度を提供するために、主にアクリル酸及びアクリルアミドである。あるいは、アクリルアミドを独占的に使用し、次いで得られたポリマー上で加水分解処理をして、カルボキシル基の所望の密度を得ることができる。
本発明のグラフト化反応は、約18℃〜25℃の温度で実施し得る。本発明は、加圧又は部分真空下で実施し得るが、反応がその圧力で非常に有利に進行する限りは大気圧を使用するのが好ましい。硝酸セリウムアンモニウムとのグラフト化溶液のpHは、典型的には約1.4である。
本発明の方法の実施で使用したセリウムイオン量は、かなり広範囲を変動し得る。例えば、重合可能なモノマー1モル当たりセリウムイオン約0.0001〜0.002モルを使用し得る。好ましくは、アクリルアミド1モル当たりセリウムイオン0.0002〜0.0005モルを使用する。セリウムイオンは好ましくは、セリウム塩の形態で反応混合物中に導入する。本発明の使用に適合したセリウム塩の中には、硝酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウム、ピロリン酸セリウムアンモニウム、ヨウ化セリウム、有機酸のセリウム塩、例えば、ナフテン酸セリウム及びリノール酸セリウム等がある。これらの化合物は、単独又は互いに組み合わせて使用し得る。
通常、所望の程度の重合を達成するのに必要な時間は、経験的に決定し得る。従って、例えば、アクリルアミドは、種々の時間間隔でグラフトし得、化学的変性によりグラフト中に導入された官能基を着色することにより、グラフト化度を決定し得る。ポリマー鎖長及びグラフト密度は、アクリルアミド濃度、セリウムイオン濃度、温度及び酸素濃度を変動させることによって変動させ得る。
抗凝血剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、グリコサミノグリカン配列及び類似体、ヒルジン、トロンビン阻害剤)、血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ、組織生形質活性剤)、凝血促進剤(例えば、因子VIII、ウィルブランド因子、コラーゲン)、血小板接着阻害剤(例えば、アルブミン、アルブミン吸着表面、親水性ヒドロゲル、リン脂質)、血小板活性阻害剤(例えば、アスピリン、ジピリマダール(dipyrimadole)、フォルスコリン(forskolin))、細胞付着蛋白質(フィブロネクチン、ビトロネクチン(vitronectin)、種々のコラーゲン種、ラミニン、エラスチン、ベース膜蛋白質、フィブリン、ペプチド配列)、成長因子/サイトカイン類(例えば、形質転換成長因子、基底繊維芽細胞成長因子、血小板誘導成長因子、内皮細胞成長因子、ガンマインターフェロン)、ヒドロゲル、コラーゲン、表皮成長因子、抗菌剤(例えば、ゲンタマイシン、リファンピン、銀塩)、抗ガン剤(例えば、5-フルオロウラシル)、ホルモン(インシュリン、バソプレッシン黄体ホルモン、ヒト成長ホルモン)、鎮痛薬、無毒化剤(例えば、キレート化剤)などの生体官能性分子(生体高分子)は、生体高分子を付着させるのに好適な表面を提供するために本発明のグラフト化方法を最初に適用することにより金属支持体にイオン的又は共有結合的に結合させ得る。このような分子は、本発明の方法により製造したグラフト化表面に共有結合的に結合され得、化学的変性によりゲル中に導入されたアミン及びカルボキシル基などの垂下している官能基が当業者に公知の方法により生体官能性分子上の対応する基と反応する。
好ましくは、本発明の医療用製品は、生体高分子用の付着手段としてスペーサー分子を含む。そのようなスペーサー分子は、本発明の背景にて上記したように当業界で公知である。
好ましいスペーサー分子は、ポリアルキレンイミン又は他の分岐ポリアミン類である。従って、ポリアルキレンイミンなる用語は、1-非置換イミン類、1-置換塩基性イミン類、活性化イミン類(1-アシル置換イミン類)、異性体オキサゾリン類/オキサジン類などのアジリジン及びアゼチジンモノマーから案出される、水溶性で、親水性のポリアミン類を含むものとする。本発明で使用されるポリアルキレンイミンは、高度に分岐しているのが好ましく、これにより、1級、2級及び3級基を含む。従って、単独又はエチレンイミンとの共重合に好適な他のモノマーと共に従来のカチオン性鎖伸長重合により重合したエチレンイミンを本発明で使用し得た。
ポリアミンスペーサーの追加的な安定性を提供するために、本発明では架橋剤を使用し得る。架橋剤は、ポリアミンスペーサー中に存在するアミン基と反応性の基で少なくとも二官能性である任意の架橋剤であり得る。従って、架橋剤は、アルデヒド官能価を有する。例えば、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ゴキサール(goxal)、マオンアルデヒド(maonaldehyde)、スクシンアルデヒド、アジポアルデヒド及びジアルデヒドスターチを使用し得た。他の好適な架橋剤としては、シアヌール酸クロリド及び誘導体、ジビニルスルホン、エポキシ化合物、イミデートエステル(imidate esters)及びアミンと反応性の他の架橋剤が挙げられる。
従って、本発明のスペーサーは、グラフト化表面にポリアルキレンイミンを適用し、次いで適用したポリアルキレンイミンを架橋剤で処理することにより製造し得る。好ましくは、ポリアルキレンイミンを架橋するのに使用した架橋剤は、軽度の架橋を達成するために好適なpH及び希釈溶液中で適用する。例えば、約0.0005〜約0.05Mの範囲の濃度を有するアルデヒド溶液を使用し得るが、約0.0005〜約0.005Mの範囲の濃度が好ましい。また、例えば、約7〜約10の範囲のアルデヒド溶液のpHが好ましい。軽度の架橋反応を完了するのに必要な時間は、ジアルデヒドの場合には典型的にはほんの数分から他の架橋剤に関してはより長時間である。好ましくは、ポリアミンを使用する架橋反応は、グラフト化表面にポリイミンを適用する前に着手する。
ポリアルキレンイミンは、グラフト化表面上のカルボキシル基を活性化し、ポリアルキレンイミンにカルボキシル基を結合させる活性化剤とグラフト化表面とを接触させることによりグラフト化表面に共有結合させる。使用する共有結合剤は、好ましくは構造:R1N=C=NR2(式中、R1はアルキル又はシクロアルキル基であり、及びR2は、1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩または1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリノエチル)カルボジイミドなどのアルキルアミン又はシクロアルキルアミン基である)の水溶性カルボジイミドであり得る。カルボジイミドとの反応は、約5のpH、冷(0〜4℃)溶液中で実施するが、室温も許容可能である。グラフト化表面はカルボジイミドで前処理し、次いでポリアミンと接触させ得るか、または好ましくは、グラフト化表面をポリアミンでコートし、次いでカルボジイミドで処理し得る。ポリアミン及びカルボジイミドはグラフトに適用前に、約9のpHで一緒に予め混合しておくのが好ましい。反応時、カルボジイミドは、ポリアミンとの反応後のグラフトのカルボキシル基を活性化し、好適なアミド結合を形成し、グラフト化表面にポリアミンを効果的に固定させる。
次いで、固定化ポリアミンを種々の二官能性分子の固定用のプラットフォームとして使用し得る。例えば、ヘパリンの場合、ヘパリンの生物活性を阻害しないが、ポリアミンのアミン基と反応してNaCNBH3などの好適な還元剤の存在下でヘパリンをポリアミンに共有結合させる、反応性アルデヒド部分を含むように変性させ得る。アルデヒド基は、制御した過ヨウ素酸塩(periodate)酸化によりヘパリン上に形成し得る。ヘパリン中の糖類分子の一部は、非置換グリコール構造:(c(2)-OH及びC(3)-OH)を含み、これはC(2)-C(3)結合を分離する過ヨウ素酸塩と反応し、ジアルデヒド構造を形成し、次いで多糖類主鎖をそのままにしておく。酸化(光の非存在下)後、活性化ヘパリン含有溶液を好適な濃度まで適当な緩衝液で希釈し得る。次いで該溶液を表面上に固定化されたポリアミンに適用する。ヘパリン上のアルデヒド官能基は、次いで、遊離アミン基と反応して、安定な第2級アミンを提供するために還元し得るシフ塩基を形成する。例示的な還元剤としては、ホウ水素化ナトリウム、シアノホウ水素化ナトリウム、ジメチルアミンボラン及びテトラヒドロフラン-ボランが挙げられる。結合反応完了時、表面を水及び塩化ナトリウム溶液で洗浄して、緩やかに結合したヘパリン又は未反応ヘパリンを除去し得る。
実験例1
コイル巻きタンタルワイヤの一片を2%ミクロクリーンで30分間超音波洗浄し、次いで脱イオン水で30分間超音波処理した。コイルをイソプロパノール中で濯いだ後にこの最終段階を繰り返し、50℃で20分間乾燥した。
清浄したコイルをキシレン中トリクロロビニルシランの2%溶液(MerkDarmstadt,FRG)中で60秒間かき回し、次いでキシレン中で60秒間、イソプロパノール中で60秒間、水中で60秒間、次いで最終的にアセトン中で濯いだ。次いで、コイルを一晩風乾した。
次いで乾燥したコイルを、新しく蒸留したアクリル酸35重量%及び5重量%アクリルアミドの水溶液15mlを充填したガラス管内に設置した。モノマー溶液15mlに、硝酸(0.1M)中硝酸セリウムアンモニウム溶液(0.1M)0.9mlを添加した。約18mmHgで3〜5分間脱気し、次いで、10分間超音波処理し、さらに35〜40分間インキュベーションした。全て室温で実施した。次いでグラフト化サンプルを50℃で脱イオン水で10回濯ぎ、次いで50℃で一晩インキュベーションした。採取したサンプルは、トルイジンブルー溶液中に浸漬すると濃く着色した。
0.1M硼酸ナトリウム中375mlクロトンアルデヒドの溶液(pH=9.1)を製造し、10分間撹拌後、ポリエチレンイミン(PEI,Mw 60,000,BASF製Polymin SN)を添加した。さらに5分間撹拌後、コイルを架橋したPEI溶液中で撹拌しながら1時間インキュベートした。脱イオン水で濯いだ後、コイルを0.1M硼酸ナトリウム中0.5重量%PEI(Polymin SN)の溶液(Ph=9.1)と10分間接触させた。水溶性カルボジイミド(1-(3-ジエチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド HCl)を0.05Mの濃度で添加した。振盪しながら1時間結合を進行させ、次いで脱イオン水で10分間濯いだ。
酸化ヘパリンを、光を排除して、0.165mg NaIO4/ml〜5mg天然ヘパリン(Akzo)/ml 0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=6.88;0.025M K2HPO4+NaH2PO4 *2H2O)を添加して製造した。一晩酸化後、得られたヘパリン溶液を0.4M酢酸塩pH=4.6中に1:20の割合で希釈した。0.1mg NaCNBH3/mlを希釈ヘパリンに添加し、コイルをこの溶液中で50℃で2時間インキュベートした。脱イオン水で濯いだ後、1M NaCl及び水を再び添加して緩やかに結合したヘパリンを除去し、トルイジンブルーとインキュベートすると、コイルはライラック色の着色となり、ヘパリン化がうまくいったことを示した。追加の生物活性試験も成功裏に実施し、予め吸着させた抗トロンビンIIIの活性化を介してトロンビンを失活させるためにヘパリン化表面の能力を決定した。50℃で1%ドデシル硫酸ナトリウムで一晩抗原投与した後に、生物学的活性も試験したが、金属支持体上のコーティングの優れた安定性を示した。
比較実験例2〜8
比較試験を種々の変数で実施した。実験例1に記載した金属表面をアミノ化する種々の方法及び還元性アミノ化方法を介してヘパリンを結合させる能力を評価した。試験した変数としては、シラン不使用、アミノシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、及びビニルシラン、トリクロロビニルシラン(TCVS)の使用;グラフト化ポリマー(アクリルアミド(AAm)及びアクリル酸(Ac))及びベース層としてコポリマーの使用;吸着又はグラフト化PEI層;並びにPEI層(クロトンアルデヒド(Ca)、グルタルアルデヒド(Gda)及びジビニルスルホン(DVS))の種々の架橋である。実験例8に関しては、実験例1に本質的に記載の如く、コイルをグラフト化ヒドロゲルで製造した。0.1M硼酸塩pH=9.0中の0.1重量%PEI(Mw 60,000のBASF製Polymin SN)の溶液を製造し、この溶液に水溶性カルボジイミド(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド HCl,Aldrich)を0.05Mの濃度まで添加した。カルボジイミドの溶解直後、グラフト化コイルを緩やかに振盪しながら溶液と50分間接触させた。水で十分濯いだ後、ヘパリンを実験例1に記載の如くコイルと結合させた。実験例2〜8の試験結果を以下の表1に示す。
表1の比較試験結果は、吸着させたPEI層の生物学的活性(DEA/cm2のIU)が、実験例7及び8で存在した共有結合層の値よりも低かったことを示した。さらに、一晩1%ドデシル硫酸ナトリウムで抗原投与した後の着色(0=着色なし〜5=濃い着色のスケール)は、ヘパリン層はアミノシラン及び吸着PEIを有する試験サンプル上には効果的に保持されていなかったが、ヘパリン層は共有結合したPEI上には保持されていたことを示した。
当業者には、本発明が特定の態様及び実験例に関して上述されているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱せずに種々の他の態様、実験例、使用、変形並びに、態様、実験例及び使用からの発展が可能であることが理解されよう。
本発明は、一般的に、改良された組織及び血液生体適合性が備えられているヒト又は動物の体にインプラントするための医療用装置に関する。より特異的には、本発明の医療用装置の金属又はガラス部分には、共有結合した生物活性分子(bioactive molecules)で化学的に変性された表面が備えられている。
手術又は透析で補助するために身体に接続すべきことを意図した、体内及びその上で代用血管、合成及び眼球内レンズ、電極、カテーテルなどとしてまたは体外装置として役立つ医療用装置は公知である。しかしながら、医療用装置においてそのような生体適合材料を使用すると、急激な凝塊形成作用などの不都合な身体応答を刺激し得る。種々の血漿蛋白質は、プラスチック表面に血小板及びフィブリン沈着を開始する行動をとる。これらの作用は、血流を阻害する血管狭窄及び、医療用装置の機能を失わせる炎症反応を導く。
「生体適合材料(biomaterials)」は、実質的に体液に不溶性で且つ身体内若しくはその上に設置したりまたは体液と接触させるために設計且つ構築された材料として定義し得る。理想的には、生体適合材料は、身体内で望ましくない反応(例えば、血液凝固、組織死、腫瘍形成、アレルギー反応、異物身体反応(拒絶)または炎症反応)を誘発せず;所望の目的のために機能するのに必要な物理的特性(例えば、強度、弾性、透過性及び柔軟性)を備え;容易に精製、製作及び滅菌し得;身体内に移植されたり、または身体と接触している間その物理的特性及び機能を実質的に維持するだろう。
本明細書中、生体適合材料の固体表面は、生体に純粋に有益な効果をもって生体組織及び/または生物学的液体と接触して存在又は機能し得る場合には、「生体適合性(biocompatible)」として特徴付けられる。宿主生体の妨害を減少させるために、長期の生体適合性が望まれている。生体適合材料の改良された生体適合性への一つの試みとしては、身体の通常の一部として身体が装置を受容するように、通常の細胞又は蛋白質層の付着及び成長を促進し得る種々の「生体高分子(biomolecules)」を付着させることがある。装置表面に付着した成長因子及び細胞付着蛋白質などの生体高分子は、この目的の為に使用され得た。さらに、抗凝塊形成性、抗血小板の、抗炎症性等の生体高分子は、表面の生体適合性を改良するためにも使用されてきた。
そのような生体高分子を付着させるために種々のアプローチが示唆されてきた。そのようなアプローチの一つとしては、Dekkerらの"Adhesion of endothelial cells and adsorption of serum proteins on gas plasma-treated polytetrafluoroethylene",Biomaterials,第12巻、1991年3月に記載されたものがある。このアプローチでは、PTEE支持体を高周波プラズマにより変性させてその表面の湿潤性を改良した。ヒト血清アルブミン、ヒトフィブロネクチン、ヒト免疫グロブリン及びヒト高密度リポ蛋白質をプラズマ-処理支持体に吸着させ、次いでヒト内皮細胞を生じさせる。別のアプローチは、Hoffmanらの米国特許第5,055,316号に記載されたもので、アルブミン、免疫グロブリン、フィブリノーゲン若しくはフィブロネクチンなどの血清蛋白質、又は蛋白質-A若しくは糖蛋白質などの異なる源由来の蛋白質を、最初にプラズマ-沈着表面を提供するためにプラズマ-重合可能なフッ化水素ガスの存在下でプラズマガス放電を使用し、次いで該蛋白質の溶液に暴露することにより表面に結合させるというものである。そのような生体高分子の共有結合は、Itoらの"Materials for Enhancing Cell Adhesion by Immobilization of Cell-Adhesive Peptide",Journal of Biomedical Materials Research,25:1325-1337(1991)に知見され得、該文献では、フィブロネクチン又はRGD蛋白質を水溶性カルボジイミドを使用してヒドロゲルに結合させている。この方法は表面から伸長した生体高分子を結合させているが、生体高分子がゲル層内にしっかりと固定されているという事実により、例えば、生体高分子に接着させようとした細胞との相互作用に関しては生体高分子の有用性を減少させてしまっている。
スペーサー分子(spacer molecules)は、この問題と取り組むために使用されてきた。スペーサー分子は、固体表面に付着し得、前記表面から伸長するほど十分に大きく、且つ単数及び/または複数の生体高分子を固定し得る分子または化合物である。スペーサーは、体液と効率的に接触させるために、生体高分子の活性部位を支持体の外側へ確実に保持する。スペーサーは、むしろ一般的に有機分子の対向端に配置された少なくとも2個の官能基を有する有機分子から誘導される。そのような基は、スペーサーを固定表面及び生体高分子に結合させ得る付着媒体(vehicles)として機能する。例えば、Narayananらの米国特許第5,132,108号では、コポリマー表面を水蒸気プラズマ媒体の存在下、高周波電場に暴露することによって高周波プラズマ処理にかけた。ポリエチレンイミン(PEI)及び1-(3-ジメチルプロピル)-3-カルボジイミド(EDC)カップリング剤の水溶液を高周波プラズマ放電で変性したポリウレタン表面に適用した。次いで、ヘパリン及びEDCの水溶液をPEI-処理表面に適用して該表面にしっかり固定された抗-凝血剤を有するポリマー表面を提供した。しかしながら、多官能性スペーサー分子でコーティングしたポリウレタン表面の不均一性(heterogeneity)の考察は保証されていない。
例えば、Golanderらの米国特許第4,565,740号またはLarmらの米国特許第5,049,403号によれば、追加の適用が提供され得る。これらの特許の最初のものにおいては、ポリマー性カチオン界面活性剤(例えば、ポリアルキレンイミン)及びジアルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)の錯体を支持体材料上に吸着させる。これらの特許の第2のものでは、ポリアミンを支持体表面上に吸着させ、クロトンアルデヒドで架橋させる。次いで、アニオン性材料の中間層を含む多層コーティングを適用して有効なコーティングを得ている。しかしながら、これらの架橋コーティングは、表面上の吸着及び表面に対するイオン結合に依存するため、表面に対しコーティングの優れた結合を提供しないだろう。
本発明者らは、米国特許第5,229,172号、同第5,308,641号及び同第5,350,800号において多層コーティングの使用を経て、生体適合材料の生体適合性の改良に寄与してきた。例えば、米国特許第5,229,172号では、本発明者らは、種々のスペーサー及び生体高分子を付着させるのに使用し得るポリマー表面上にグラフト化アクリルアミドのベース層を提供することによりポリマー性材料の表面特性を変性する方法を知見した。また、米国特許第5,308,641号では、本発明者らは、アミノ化支持体に共有結合され、且つアルデヒド基のついた二官能性の架橋剤で架橋されたポリアルキレンイミンを包含する改良されたスペーサー物質を発見した。また、米国特許第5,350,800号では、本発明者らは、カルボキシル基を有する生体高分子をカルボジイミドによりアミノ化固体表面に付着させ、次いでカルボキシル基の生体-官能価を選択的に復活させる方法を知見した。
金属又はガラス表面上には、金属又はガラス支持体とグラフト化ベース層との間に共有結合を提供するための有機構造がないため、そのような多層コーティングのベース層の結合は、問題となり得る。他の者達は、表面に接着させるためにアミノシラン類を適用し、次いで該アミノシランのアミン官能価により生体高分子を該アミノシランに付着させることにより、金属及びガラスへの接着問題と取り組んできた。このことはアミノシランを使用して酸化タンタル表面にヘパリン分子を接着させるという、Rowlandらの米国特許第5,355,433号に知見され得る。アミノシラン類は、Erikssonらの米国特許第4,118,485号においては、ガラス又は金属表面にヘパリン分子を付着させるためにも開示されている。しかしながら、この種のコーティングにおいてアミノシラン類を使用することは、高レベルの生物学的有効性及び安定性の表面を製造するのにおいては非常に良好ではなかった。
従って、本発明の目的は、金属又はガラス支持体上に改良された安定性を有する生体高分子及び/またはスペーサー分子を付着させるためのベースを提供することである。
また、本発明の目的は、生体高分子を付着させるための安定なプラットフォームを提供し、これにより、付着させた生体高分子が該スペーサー層に埋め込まれないようにする、混合ベース/スペーサーを提供することである。
発明の概要
従って、本発明は、接着コーティングを有する表面を備えた金属又はガラス表面を有する医療用製品を包含する。該コーティングは、シランが表面から垂下するビニル官能価を備えて表面に接着するようにビニル官能価を有し、次いで該シランの垂下しているビニル官能価がグラフトポリマーと共有結合することによりグラフトポリマー中に取り込まれるように適用したシランと共に該表面上にグラフトポリマーを形成するシラン化合物を包含する。
好ましいシランは、通常、構造:
C2H3-Si-X3
(式中Xは、ハロゲン、メトキシ又はエトキシ基である)の化合物である。この種の化合物の好ましい化合物としては、トリクロロビニルシランが挙げられる。他のシラン類も、以下詳細に記載するように使用し得る。
シランのビニル官能価を含むベース層も、薄いが密に形成したグラフトポリマーを含む。好ましくは、グラフトポリマーは、エチレン性不飽和モノマーからの遊離ラジカル反応により形成される。従って、グラフトポリマーを形成する反応は、シランの垂下しているビニル基も活性化し、グラフトポリマー形成時にグラフトポリマー中にビニル基を含ませる。セリウムイオンなどの酸化金属を使用して重合反応を開始させ得る。モノマーがセリウムイオンと共に沈澱する傾向を持たない時、例えば、アクリルアミドと共に使用する際には、セリウムイオングラフト化が最もよく作用することが知られている。アクリル酸の市販品中に存在する重合阻害剤が最初に蒸留によって除去されるという条件のもとでは、アクリル酸はセリウムイオングラフト化で使用するのに優れた候補モノマーでもある。アクリル酸、アクリルアミド及び他のモノマーのブレンドも、グラフトの所望の特性に依存して使用し得る。
グラフト化表面に付着した二官能性分子は、例えば、抗凝血剤(例えば、ヘパリン、硫酸ヘパリン、デルマタン硫酸、グリコサミノグリカン配列及び類似体、ヒルジン、トロンビン阻害剤)、血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ、組織生形質活性剤)、凝血促進剤、血小板接着阻害剤、血小板活性阻害剤、細胞付着蛋白質、成長因子/サイトカイン、創傷治癒剤(wound healing agents)、抗菌剤、抗ガン剤、ホルモン、鎮痛剤、無毒化剤などの生体高分子であり得る。これらの生体高分子は、当業者に公知の方法により、生体官能性(biofunctional)分子上の対応する基と反応するグラフト化ポリマー中のアミン及びカルボキシル基等の垂下している官能基によりグラフト化表面に共有結合し得る。
好ましくは、本発明の医療用製品は、生体高分子用の付着手段としてスペーサーを包含する。そのようなスペーサーは、本発明の背景で記載したように当業界で公知である。好ましいスペーサーは、本明細書中その全体が参照として含まれる、本出願人の米国特許第5,308,641号に記載されているようなポリアミンスペーサーであり得る。
本発明により生体適合性表面に提供され得る装置の例としては、血管グラフト若しくは硬質組織補綴学などの補綴装置及び移植した補綴装置の部品、内在性カテーテルなどの侵襲性(invasive)装置または透析装置若しくは血管循環若しくは心血管手術で使用する酸素輸送装置などの体外血液取扱装置が挙げられる。本発明の特別な血管補綴態様においては、生体活性(bioactive)コーティングが深割れまたは剥離せずに湾曲に耐え得るため、上記ベース層をインプラント又は使用時に動作に耐える金属製医療用装置に付着させ得る。これに関する例としては、ステントとして一般的に公知である、金属製で半径方向に拡張可能な一般的に筒状の体内プロテーゼ(endoprotheses)がある。これに関する例示的なステントは、その主題が参照として含まれる、Wiktorの米国特許第4,886,062号及び同第5,133,732号に記載されている。このようなステントは、非常にファインゲージの金属製ワイヤ、典型的にはタンタルワイヤ又はステンレスチールワイヤから製造されている。インプラント時、これらのステントは、血管等に沿って部分的に閉塞した場所に到着するまで血管形成カテーテルなどのバルーン上に据え付けられ、到達時に閉塞部を開口し、その場所で血管を支持する目的のためにバルーン及びステントを半径方向且つ円周方向に拡張させる。これには、タンタルワイヤを大きく曲げることが必要である。多くのコーティングは、この種の湾曲に暴露した際に、コーティングの深割れ及び/または欠損を防ぐのに必要な柔軟性及び/または接着特性を有していない。さらに、本発明により生体高分子としてヘパリンを備え、且つ血管内にインプラントされたステントは、ステントインプラント工程の結果として発生し得る金属部材上の血栓形成を防ぎ得る。
発明の詳細な説明
多層コーティングのベース層は、シランが表面に接着するように、垂下しているビニル官能価を有するシランを表面に最初に提供することにより製造する。使用するシランとしては、構造:
C2H3-Si-X3
または、場合により、
C2H3-R-Si-X3
(式中、Xは、ハロゲン、メトキシ又はエトキシ基であり、及びRは、短鎖アルキル基である)の化合物が挙げられる。好ましいシラン化合物は、トリクロロビニルシランである。
当業者は、表面にシランをうまく適用するには、表面を予め清浄しておくこと及びシランの適用時に該表面の水分を制御することが含まれることを認識するだろう。従って清浄な表面を提供し且つ水分の制御をするために多段清浄及び乾燥操作を使用する。清浄及び乾燥の例示的な方法は、本明細書中実施例にて知見され得る。
シランのビニル官能価を含むベース層は薄いが密に形成したグラフトポリマーを含む。好ましくは、グラフトポリマーは、エチレン性不飽和モノマーからフリーラジカル反応により製造する。従って、グラフトポリマーを形成する反応はシランの垂下しているビニル基をも活性化し、その形成時にグラフトポリマーに該基を包含させる。セリウムイオンなどの酸化金属を使用して重合反応を開始させ得る。
好ましいグラフト工程は、有機溶媒重合などの他の溶媒重合方法又はバルク重合と対照的に水溶液(モノマー20〜40重量%)中の支持体上で実施する。好ましいモノマー溶液の組成は、生体高分子又はスペーサー層を付着させるために使用し得るグラフト化表面上にカルボキシル基の所望の密度を提供するために、主にアクリル酸及びアクリルアミドである。あるいは、アクリルアミドを独占的に使用し、次いで得られたポリマー上で加水分解処理をして、カルボキシル基の所望の密度を得ることができる。
本発明のグラフト化反応は、約18℃〜25℃の温度で実施し得る。本発明は、加圧又は部分真空下で実施し得るが、反応がその圧力で非常に有利に進行する限りは大気圧を使用するのが好ましい。硝酸セリウムアンモニウムとのグラフト化溶液のpHは、典型的には約1.4である。
本発明の方法の実施で使用したセリウムイオン量は、かなり広範囲を変動し得る。例えば、重合可能なモノマー1モル当たりセリウムイオン約0.0001〜0.002モルを使用し得る。好ましくは、アクリルアミド1モル当たりセリウムイオン0.0002〜0.0005モルを使用する。セリウムイオンは好ましくは、セリウム塩の形態で反応混合物中に導入する。本発明の使用に適合したセリウム塩の中には、硝酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウム、ピロリン酸セリウムアンモニウム、ヨウ化セリウム、有機酸のセリウム塩、例えば、ナフテン酸セリウム及びリノール酸セリウム等がある。これらの化合物は、単独又は互いに組み合わせて使用し得る。
通常、所望の程度の重合を達成するのに必要な時間は、経験的に決定し得る。従って、例えば、アクリルアミドは、種々の時間間隔でグラフトし得、化学的変性によりグラフト中に導入された官能基を着色することにより、グラフト化度を決定し得る。ポリマー鎖長及びグラフト密度は、アクリルアミド濃度、セリウムイオン濃度、温度及び酸素濃度を変動させることによって変動させ得る。
抗凝血剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、グリコサミノグリカン配列及び類似体、ヒルジン、トロンビン阻害剤)、血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ、組織生形質活性剤)、凝血促進剤(例えば、因子VIII、ウィルブランド因子、コラーゲン)、血小板接着阻害剤(例えば、アルブミン、アルブミン吸着表面、親水性ヒドロゲル、リン脂質)、血小板活性阻害剤(例えば、アスピリン、ジピリマダール(dipyrimadole)、フォルスコリン(forskolin))、細胞付着蛋白質(フィブロネクチン、ビトロネクチン(vitronectin)、種々のコラーゲン種、ラミニン、エラスチン、ベース膜蛋白質、フィブリン、ペプチド配列)、成長因子/サイトカイン類(例えば、形質転換成長因子、基底繊維芽細胞成長因子、血小板誘導成長因子、内皮細胞成長因子、ガンマインターフェロン)、ヒドロゲル、コラーゲン、表皮成長因子、抗菌剤(例えば、ゲンタマイシン、リファンピン、銀塩)、抗ガン剤(例えば、5-フルオロウラシル)、ホルモン(インシュリン、バソプレッシン黄体ホルモン、ヒト成長ホルモン)、鎮痛薬、無毒化剤(例えば、キレート化剤)などの生体官能性分子(生体高分子)は、生体高分子を付着させるのに好適な表面を提供するために本発明のグラフト化方法を最初に適用することにより金属支持体にイオン的又は共有結合的に結合させ得る。このような分子は、本発明の方法により製造したグラフト化表面に共有結合的に結合され得、化学的変性によりゲル中に導入されたアミン及びカルボキシル基などの垂下している官能基が当業者に公知の方法により生体官能性分子上の対応する基と反応する。
好ましくは、本発明の医療用製品は、生体高分子用の付着手段としてスペーサー分子を含む。そのようなスペーサー分子は、本発明の背景にて上記したように当業界で公知である。
好ましいスペーサー分子は、ポリアルキレンイミン又は他の分岐ポリアミン類である。従って、ポリアルキレンイミンなる用語は、1-非置換イミン類、1-置換塩基性イミン類、活性化イミン類(1-アシル置換イミン類)、異性体オキサゾリン類/オキサジン類などのアジリジン及びアゼチジンモノマーから案出される、水溶性で、親水性のポリアミン類を含むものとする。本発明で使用されるポリアルキレンイミンは、高度に分岐しているのが好ましく、これにより、1級、2級及び3級基を含む。従って、単独又はエチレンイミンとの共重合に好適な他のモノマーと共に従来のカチオン性鎖伸長重合により重合したエチレンイミンを本発明で使用し得た。
ポリアミンスペーサーの追加的な安定性を提供するために、本発明では架橋剤を使用し得る。架橋剤は、ポリアミンスペーサー中に存在するアミン基と反応性の基で少なくとも二官能性である任意の架橋剤であり得る。従って、架橋剤は、アルデヒド官能価を有する。例えば、グルタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ゴキサール(goxal)、マオンアルデヒド(maonaldehyde)、スクシンアルデヒド、アジポアルデヒド及びジアルデヒドスターチを使用し得た。他の好適な架橋剤としては、シアヌール酸クロリド及び誘導体、ジビニルスルホン、エポキシ化合物、イミデートエステル(imidate esters)及びアミンと反応性の他の架橋剤が挙げられる。
従って、本発明のスペーサーは、グラフト化表面にポリアルキレンイミンを適用し、次いで適用したポリアルキレンイミンを架橋剤で処理することにより製造し得る。好ましくは、ポリアルキレンイミンを架橋するのに使用した架橋剤は、軽度の架橋を達成するために好適なpH及び希釈溶液中で適用する。例えば、約0.0005〜約0.05Mの範囲の濃度を有するアルデヒド溶液を使用し得るが、約0.0005〜約0.005Mの範囲の濃度が好ましい。また、例えば、約7〜約10の範囲のアルデヒド溶液のpHが好ましい。軽度の架橋反応を完了するのに必要な時間は、ジアルデヒドの場合には典型的にはほんの数分から他の架橋剤に関してはより長時間である。好ましくは、ポリアミンを使用する架橋反応は、グラフト化表面にポリイミンを適用する前に着手する。
ポリアルキレンイミンは、グラフト化表面上のカルボキシル基を活性化し、ポリアルキレンイミンにカルボキシル基を結合させる活性化剤とグラフト化表面とを接触させることによりグラフト化表面に共有結合させる。使用する共有結合剤は、好ましくは構造:R1N=C=NR2(式中、R1はアルキル又はシクロアルキル基であり、及びR2は、1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩または1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリノエチル)カルボジイミドなどのアルキルアミン又はシクロアルキルアミン基である)の水溶性カルボジイミドであり得る。カルボジイミドとの反応は、約5のpH、冷(0〜4℃)溶液中で実施するが、室温も許容可能である。グラフト化表面はカルボジイミドで前処理し、次いでポリアミンと接触させ得るか、または好ましくは、グラフト化表面をポリアミンでコートし、次いでカルボジイミドで処理し得る。ポリアミン及びカルボジイミドはグラフトに適用前に、約9のpHで一緒に予め混合しておくのが好ましい。反応時、カルボジイミドは、ポリアミンとの反応後のグラフトのカルボキシル基を活性化し、好適なアミド結合を形成し、グラフト化表面にポリアミンを効果的に固定させる。
次いで、固定化ポリアミンを種々の二官能性分子の固定用のプラットフォームとして使用し得る。例えば、ヘパリンの場合、ヘパリンの生物活性を阻害しないが、ポリアミンのアミン基と反応してNaCNBH3などの好適な還元剤の存在下でヘパリンをポリアミンに共有結合させる、反応性アルデヒド部分を含むように変性させ得る。アルデヒド基は、制御した過ヨウ素酸塩(periodate)酸化によりヘパリン上に形成し得る。ヘパリン中の糖類分子の一部は、非置換グリコール構造:(c(2)-OH及びC(3)-OH)を含み、これはC(2)-C(3)結合を分離する過ヨウ素酸塩と反応し、ジアルデヒド構造を形成し、次いで多糖類主鎖をそのままにしておく。酸化(光の非存在下)後、活性化ヘパリン含有溶液を好適な濃度まで適当な緩衝液で希釈し得る。次いで該溶液を表面上に固定化されたポリアミンに適用する。ヘパリン上のアルデヒド官能基は、次いで、遊離アミン基と反応して、安定な第2級アミンを提供するために還元し得るシフ塩基を形成する。例示的な還元剤としては、ホウ水素化ナトリウム、シアノホウ水素化ナトリウム、ジメチルアミンボラン及びテトラヒドロフラン-ボランが挙げられる。結合反応完了時、表面を水及び塩化ナトリウム溶液で洗浄して、緩やかに結合したヘパリン又は未反応ヘパリンを除去し得る。
実験例1
コイル巻きタンタルワイヤの一片を2%ミクロクリーンで30分間超音波洗浄し、次いで脱イオン水で30分間超音波処理した。コイルをイソプロパノール中で濯いだ後にこの最終段階を繰り返し、50℃で20分間乾燥した。
清浄したコイルをキシレン中トリクロロビニルシランの2%溶液(MerkDarmstadt,FRG)中で60秒間かき回し、次いでキシレン中で60秒間、イソプロパノール中で60秒間、水中で60秒間、次いで最終的にアセトン中で濯いだ。次いで、コイルを一晩風乾した。
次いで乾燥したコイルを、新しく蒸留したアクリル酸35重量%及び5重量%アクリルアミドの水溶液15mlを充填したガラス管内に設置した。モノマー溶液15mlに、硝酸(0.1M)中硝酸セリウムアンモニウム溶液(0.1M)0.9mlを添加した。約18mmHgで3〜5分間脱気し、次いで、10分間超音波処理し、さらに35〜40分間インキュベーションした。全て室温で実施した。次いでグラフト化サンプルを50℃で脱イオン水で10回濯ぎ、次いで50℃で一晩インキュベーションした。採取したサンプルは、トルイジンブルー溶液中に浸漬すると濃く着色した。
0.1M硼酸ナトリウム中375mlクロトンアルデヒドの溶液(pH=9.1)を製造し、10分間撹拌後、ポリエチレンイミン(PEI,Mw 60,000,BASF製Polymin SN)を添加した。さらに5分間撹拌後、コイルを架橋したPEI溶液中で撹拌しながら1時間インキュベートした。脱イオン水で濯いだ後、コイルを0.1M硼酸ナトリウム中0.5重量%PEI(Polymin SN)の溶液(Ph=9.1)と10分間接触させた。水溶性カルボジイミド(1-(3-ジエチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド HCl)を0.05Mの濃度で添加した。振盪しながら1時間結合を進行させ、次いで脱イオン水で10分間濯いだ。
酸化ヘパリンを、光を排除して、0.165mg NaIO4/ml〜5mg天然ヘパリン(Akzo)/ml 0.05Mリン酸塩緩衝液(pH=6.88;0.025M K2HPO4+NaH2PO4 *2H2O)を添加して製造した。一晩酸化後、得られたヘパリン溶液を0.4M酢酸塩pH=4.6中に1:20の割合で希釈した。0.1mg NaCNBH3/mlを希釈ヘパリンに添加し、コイルをこの溶液中で50℃で2時間インキュベートした。脱イオン水で濯いだ後、1M NaCl及び水を再び添加して緩やかに結合したヘパリンを除去し、トルイジンブルーとインキュベートすると、コイルはライラック色の着色となり、ヘパリン化がうまくいったことを示した。追加の生物活性試験も成功裏に実施し、予め吸着させた抗トロンビンIIIの活性化を介してトロンビンを失活させるためにヘパリン化表面の能力を決定した。50℃で1%ドデシル硫酸ナトリウムで一晩抗原投与した後に、生物学的活性も試験したが、金属支持体上のコーティングの優れた安定性を示した。
比較実験例2〜8
比較試験を種々の変数で実施した。実験例1に記載した金属表面をアミノ化する種々の方法及び還元性アミノ化方法を介してヘパリンを結合させる能力を評価した。試験した変数としては、シラン不使用、アミノシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、及びビニルシラン、トリクロロビニルシラン(TCVS)の使用;グラフト化ポリマー(アクリルアミド(AAm)及びアクリル酸(Ac))及びベース層としてコポリマーの使用;吸着又はグラフト化PEI層;並びにPEI層(クロトンアルデヒド(Ca)、グルタルアルデヒド(Gda)及びジビニルスルホン(DVS))の種々の架橋である。実験例8に関しては、実験例1に本質的に記載の如く、コイルをグラフト化ヒドロゲルで製造した。0.1M硼酸塩pH=9.0中の0.1重量%PEI(Mw 60,000のBASF製Polymin SN)の溶液を製造し、この溶液に水溶性カルボジイミド(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド HCl,Aldrich)を0.05Mの濃度まで添加した。カルボジイミドの溶解直後、グラフト化コイルを緩やかに振盪しながら溶液と50分間接触させた。水で十分濯いだ後、ヘパリンを実験例1に記載の如くコイルと結合させた。実験例2〜8の試験結果を以下の表1に示す。
表1の比較試験結果は、吸着させたPEI層の生物学的活性(DEA/cm2のIU)が、実験例7及び8で存在した共有結合層の値よりも低かったことを示した。さらに、一晩1%ドデシル硫酸ナトリウムで抗原投与した後の着色(0=着色なし〜5=濃い着色のスケール)は、ヘパリン層はアミノシラン及び吸着PEIを有する試験サンプル上には効果的に保持されていなかったが、ヘパリン層は共有結合したPEI上には保持されていたことを示した。
当業者には、本発明が特定の態様及び実験例に関して上述されているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱せずに種々の他の態様、実験例、使用、変形並びに、態様、実験例及び使用からの発展が可能であることが理解されよう。
Claims (20)
- 体液と接触する金属表面を有する体内プロテーゼであって、該表面上に、
(a)ビニル官能価を含むシランであって、該シランは該ビニル官能価が表面から垂下するように該金属表面に接着しており、及び
(b)シランの垂下しているビニル官能価がグラフトポリマーに共有結合するような該シラン接着表面上のグラフトポリマーであって、エチレン性不飽和モノマーからのフリーラジカル反応により形成される上記グラフトポリマー
を含むコーティングを有する、体内プロテーゼ。 - (a)該グラフトポリマーに共有結合したポリアミンスペーサー;及び
(b)該スペーサーに共有結合した生体高分子
も含む、請求項1に記載の体内プロテーゼ。 - 該シランが、ハロゲン、メトキシ及びエトキシ基からなる群から選択される官能基も包含する、請求項1に記載の体内プロテーゼ。
- 該シランがトリクロロビニルシランである、請求項3に記載の体内プロテーゼ。
- 該モノマーがアクリルアミド及びアクリル酸から選択される、請求項1に記載の体内プロテーゼ。
- 該ポリアミンスペーサーがポリアルキレンイミンである、請求項2に記載の体内プロテーゼ。
- 該生体高分子が凝血防止剤である、請求項2に記載の体内プロテーゼ。
- 該凝血防止剤が、ヘパリン及びヘパリン誘導体からなる群から選択される、請求項7に記載の体内プロテーゼ。
- 体液と接触する金属又はガラス表面を有する医療用装置であって、該表面は、
(a)構造:
C2H3-R-Si-X3
(式中、Xは、ハロゲン、メトキシ又はエトキシであり、及びRは、追加の短鎖アルキル基である)を有するシランであって、該シランは該ビニル官能基が表面から垂下するように該表面に接着しており;及び
(b)エチレン性不飽和モノマーからフリーラジカル反応により形成したグラフトポリマーであって、該グラフトポリマーは、シランの垂下しているビニル官能価がグラフトポリマー中に含まれるように該シラン接着面上に形成されている、
を含むコーティングをその上に含む、該医療用装置。 - (a)該グラフトポリマーに共有結合したポリアルキレンイミンスペーサー;及び
(b)該スペーサーに共有結合した生体高分子
をも含む、請求項9に記載の医療用装置。 - 該シランがトリクロロビニルシランである、請求項9に記載の医療用装置。
- 該モノマーがアクリルアミド及びアクリル酸から選択される、請求項9に記載の医療用装置。
- 該生体高分子が凝血防止剤である、請求項10に記載の医療用装置。
- 該抗凝血防止剤がヘパリン及びヘパリン誘導体からなる群から選択される、請求項13に記載の医療用装置。
- (a)シランが表面に接着するようにビニル官能価を有するシランを表面に適用し;
(b)エチレン性不飽和モノマーからのフリーラジカル反応により該シランのビニル官能価がグラフトポリマー内に取り込まれるようにグラフトポリマーを該シラン接着表面上に形成する
段階を含む、ガラス又は金属表面を有する医療用製品にガラス又は金属表面上の生体適合性コーティングを提供する方法。 - 該シランが、構造:
C2H3-R-Si-X3
(式中、Xは、ハロゲン、メトキシ又はエトキシ基であり、及びRは、追加の短鎖アルキル基である)を有する、請求項15に記載の方法。 - 該シランが希釈溶液中で該表面に適用されたトリクロロビニルシランである、請求項16に記載の方法。
- 該グラフトポリマーが、フリーラジカル開始剤の存在下、該シラン接着表面にエチレン性不飽和モノマーを適用することにより、該シラン接着表面上に形成される、請求項15に記載の方法。
- グラフトポリマーに生体高分子を共有結合させる段階をも含む、請求項15に記載の方法。
- (a)グラフトポリマーにスペーサー分子を共有結合させ;次いで
(b)スペーサー分子に生体高分子を共有結合させる
段階により生体高分子が共有結合する、請求項19に記載の方法。
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