JP3690986B2 - 水貯留池の清掃方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水貯留池の清掃方法及び装置に係り、特に、上水道施設における浄水池や配水池等のように浄化された水を貯留するための水貯留池の清掃方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上水道施設においては、河川水等の原水を施設内に導き、水処理を行なって飲用が可能な水質基準を満たすように浄化して浄水としたのち、利用者に配水している。この上水道施設では、水処理プロセスを経た浄水は、浄水池や配水池等の池(槽)に貯留される。この浄水池や配水池等の池(槽)の底部には、長時間使用している間に沈殿物が堆積していく。そのため、上水道施設では、池(槽)の底部に堆積する沈殿物を定期的に除去(洗浄)することが必要である。この場合、沈殿物の除去には、▲1▼池の水を抜き取った後に人力で吸引装置(バキュームクリーナ)を用いて除去する方法と、▲2▼潜水して人力で吸引装置を用いて除去する方法とが採用されており、いずれの方法も主として人力に頼っていた。
【0003】
最近、上記人力による方法に代わって、ロボットにより沈殿物を除去する清掃方法が開発されてきており、沈殿物の吸引作業はロボットにより行われるようになってきている。
上述の主として人力により清掃する方法およびロボットにより清掃する方法のいずれの方法においても、吸引した水と沈殿物は、そのまま排水とするか、又は浄水場の既設の装置に導いて処理した後に廃棄している。そして、この従来の清掃方法においては、配水を止めるか、又は二系統の池がある場合には片側の池ごとに清掃するようにしている。この場合、具体的な方法としては、先ず、池の水位を運転可能な程度まで配水した後、水貯留池の運転を停止する。その後、残水を排出して池を空にして清掃するか、該水貯留池に潜水して人力で吸引装置を用いて清掃した後、汚れた池内の水を全て排出する。そして、清掃後にもう一度清浄な水を注入して、これを再度排出することで池内の清掃による汚れを取り除き、清浄にしてから運用に帰するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の清掃方法においては、処理水と除去した沈殿物は全て廃棄物として処理されている。また清掃のために池を一時期使用停止にしなければならず、せっかく浄化した水も排水するという無駄が生じている。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、上水道施設の浄水池や配水池等の水貯留池の底部に堆積した沈殿物を吸引した後に、この沈殿物から水を分離して浄水として元の池に返送するか、他の池に供給することにより、水貯留池内の貴重な水を捨てなくて良くなり、かつ水貯留池が稼働している状態で清掃作業が可能な水貯留池の清掃方法及び装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するため、本発明の水貯留池の清掃方法は、上水道施設の浄水を貯留する水貯留池から沈殿物を除去する清掃方法において、水貯留池の底部に堆積した沈殿物を自走可能なロボットからなる吸引装置により吸引し、吸引された沈殿物から水をろ過水の水質が浄水のものと同等の水質まで処理できる性能の膜を備えているろ過器からなる分離装置により分離し、分離された水を前記水貯留池に返送するか又は他の池に供給することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の水貯留池の清掃装置は、上水道施設の浄水を貯留する水貯留池から沈殿物を除去する清掃装置において、水貯留池の底部に堆積した沈殿物を吸引する自走可能なロボットからなる吸引装置と、吸引された沈殿物から水をろ過水の水質が浄水のものと同等の水質まで処理できる性能の膜を備えているろ過器からなる分離装置と、分離された水を前記水貯留池に返送するか又は他の池に供給する移送ラインとを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、水貯留池の底部を自走するロボット等からなる吸引装置によって池の底部に堆積した沈殿物を吸引し、吸引された沈殿物は分離装置に送り込まれる。該分離装置で、送り込まれた沈殿物をろ過することにより、浄水と汚泥とに分離する。分離された浄水は、元の池に返還されるか、又は他の池に供給される。即ち、本発明によれば、沈殿物から分離処理した浄水が元の池の水と同程度の水質を確保できるので、従来、排水していた水をそのまま元の池に返還でき又は他の池に供給でき、貴重な水を捨てなくてもよいことになる。また、配水池や浄水池等の水貯留池は稼働状態で清掃作業が可能であるので、いつでも清掃を実施でき、配水運営上に不都合は生じなくなる。
【0009】
上記分離装置は、逆洗式ろ過器からなり、例えば、逆洗可能なプリーツ型フィルタからなっている。このプリーツ型フィルタは、ろ過水の水質が浄水のものと同等の水質まで処理できる性能の膜を備えている。そして、このプリーツ型フィルタは少量の水又は空気等の気体によって逆洗できる構造になっている。フィルタの逆洗ができることによって、膜の寿命が延びて膜の消費コストが低減できるとともに二次廃棄物の発生量を低減できる。この逆洗式ろ過器には中空糸型フィルタもあるが、この中空糸型フィルタを使用してもよい。
【0010】
逆洗は、逆洗水専用のポンプを用いても、送水ポンプを用いてもよく、逆洗水は排水口から排出して分離汚泥と同様に汚泥濃縮器により処理する。
逆洗に空気を用いる場合は、例えば、オイルフリー(オイルを除去した)のコンプレッサ圧縮空気を用いるが、その他に高圧ボンベに詰めた圧縮ガス(窒素,酸素,空気等)を用いてもよい。
【0011】
フィルタの性能は、ろ過処理水が、再度浄水池又は配水池等の水貯留池に返送されることに鑑み、水質を確保するためにも1.0μm程度のろ過性能を有することが好ましい。沈殿物が多量に存在する場合には、サイクローン分離機などの荒取り用前置分離機で処理した後に、前記プリーツ型フィルタ等のろ過器で処理を行うなどの多段階処理方法を採用することが好ましい。
【0012】
分離水の水質検査には、全量検査法と抜き取り検査法とがあるが、いずれでも良く、その測定機器を清掃装置に付設させておくと良い。
ろ過処理水の水質が所定値以下の場合は、これを水貯留池に返送することなく排水する必要もあるため、分離装置の排水口側に経路切り替え可能な排水経路を設けておくことが好ましい。
分離装置により分離された汚泥は、別途、汚泥濃縮器により濃縮固形化処理される。尚、この汚泥濃縮器は清掃装置に付設させてもよく、また、浄水場の既設の装置を利用してもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る水貯留池の清掃方法及び装置の一実施形態を図1を参照して説明する。
図1は本発明の水貯留池の清掃装置を備えた上水道施設を示す概略図である。図1に示すように、浄水池又は配水池からなる水貯留池1には吸引装置2が配置されている。吸引装置2は池内を自走しつつ池底部に堆積した沈殿物を吸引する水中ロボットにより構成されている。吸引装置2は沈殿物移送ホース7によって分離装置3に接続されている。分離装置3は水又は空気等の気体によって逆洗可能なプリーツ型フィルタから構成されており、吸引装置2から供給された沈殿物をろ過して浄水と汚泥に分離する。分離装置3によりろ過された水は、水貯留池1内に貯留された浄水と同等の水質を有している。
【0014】
前記分離装置3は移送ホースからなる移送ライン9によって水質測定器5に接続されており、分離装置3により分離された浄水は水質測定器5により、その水質が検査されるようになっている。分離装置3は移送ホースからなる汚泥ライン14によって汚泥濃縮器8に接続されており、分離装置3により分離された汚泥は汚泥濃縮器8により濃縮されるようになっている。そして、水質測定器5を通過した浄水は、移送ライン9を介して水貯留池1に返送されるか、又は水質によって、切替バルブ13が作動して、排水ライン6を介して汚泥ライン14に排出されるようになっている。汚泥濃縮器8では、供給された汚泥が濃縮されて脱水ケーキ12となり、汚泥から分離された水分は分離排水11として排出される。
【0015】
一方、分離装置3には、逆洗水汲み上げ用ホースからなる逆洗ライン10および逆洗水ポンプ4によって水貯留池1内の浄水が供給され、分離装置3の逆洗が可能になっている。そして、分離装置3を逆洗した逆洗水は汚泥ライン14によって汚泥濃縮器8に供給されるようになっている。
【0016】
次に、前述のように構成された水貯留池の清掃装置による清掃方法を説明する。
浄水池又は配水池からなる水貯留池1には、原水を水処理することによって浄化された浄水が貯留されている。水貯留池1の底部には、長時間使用している間に、水中に含まれる沈殿物が次第に堆積していく。そのため、水貯留池1を稼働した状態で、水貯留池1の底部を走行する吸引装置2が池の底部に堆積した沈殿物を吸引し、この吸引された沈殿物は沈殿物移送ホース7を介して分離装置3に送り込まれる。
【0017】
分離装置3で、送り込まれた沈殿物をろ過し、分離された浄水は、その水質が所望の水質であれば移送ライン9を介して元の水貯留池1に返送される。即ち、移送の際、分離された浄水の水質を水質測定器5により検査し、元の水貯留池1に返送するに足る水質が確保されているか否かを確認する。水質の程度が所望の水質を満たしていなければ、水質測定器5を通過した水は排水ライン6および汚泥ライン14を経由して汚泥濃縮器8に送り込まれる。尚、水質検査には、全量検査法と抜き取り検査法とがあるが、いずれでもよく、図示するようにその測定機器を清掃装置に付設させておくとよい。なお、図示はしないが、分離装置3で分離された浄水を、この浄水と同等な水質の水が貯留されている他の池に供給することもできる。
【0018】
一方、分離された汚泥は、分離装置3から排出された後、汚泥濃縮器8で濃縮して固形化処理され、脱水ケーキ12となる。また、汚泥濃縮器8で汚泥から分離された水分は分離排水11として排出される。
分離装置3の逆洗は、逆洗水ポンプ4を稼働させて、逆洗ライン10から水貯留池1内の浄水を汲み上げ、分離装置3に供給することにより行なう。圧縮ガスを利用する場合は、逆洗水ポンプ4の出口側に高圧ボンベに接続するための座を設け、この座を介して圧縮ガスを分離装置3に供給することにより行なう。
【0019】
上述した実施形態においては、本発明を上水道施設の浄水池や配水池の清掃に適用した場合を説明したが、工業用水用の施設において水処理プロセスを経た清浄な水を貯留する池の清掃にも適用可能である。
【0020】
【実験結果】
次に、本発明の実験結果を示す。
直径16.5m、水深4mのコンクリート製配水池において、図1に示した本発明の装置を用いて清掃した。その時の清掃条件は以下の通りである。
▲1▼ 水中ロボットからなる吸引装置の吸引水量:3.6m/h
▲2▼ 水中ロボットからなる吸引装置の清掃面積:30m/h
この時、吸引装置により吸引された沈殿物の処理前の平均SS濃度(沈殿物混入濃度)は600mg/lであった。分離装置(ろ過器)によってろ過処理した後の水質は、SS濃度1mg/l以下、濁度も1度以下で、良質の水質であることを確認し、元の配水池へ戻すことができた。
【0021】
清掃作業は約7時間で終了となり、配水池底部の沈殿物は、吸引装置が走行不可能な部分を除き十分に除去された。また、この清掃において、ろ過器にて除去された沈殿物は約15kgで、ろ過器の性能限界以下であったため、ろ過器の逆洗浄は行わずに済んだ。
結果として、総吸引水量3.6m/h×7時間に対し、約25mの水量が下水等へ排出されずに元の池に返送され、配水池の水質も悪化せず、そのまま通常通りの配水をしながら清掃を完了できた。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、水貯留池の沈殿物を分離処理した浄水が元の池の水と同程度の水質を確保できるので、従来、排水していた水をそのまま元の池に返送するか又は他の池へ供給でき、貴重な水を捨てなくてもよいことになる。また、配水池や浄水池等の水貯留池が稼働している状態で清掃作業が可能であるので、いつでも必要なときに水貯留池の清掃作業を実施でき、配水運営上に不都合は生じなくなる。
【0023】
また、従来、浄水池や配水池等の水貯留池は多量の沈殿物が堆積するため、フィルタを用いて沈殿物をろ過した場合において、フィルタに汚泥が所定以上に付着した場合には、頻繁にこのフィルタを廃棄しなければならなかったが、逆洗式のろ過器を用いることにより、廃棄処分とすることなく、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水貯留池の清掃装置を備えた上水道施設を示す概略図である。
【符号の説明】
1 水貯留池
2 吸引装置
3 分離装置
4 逆洗水ポンプ
5 水質測定器
6 排水ライン
7 沈殿物移送ホース
8 汚泥濃縮器
9 移送ライン
10 逆洗ライン
11 分離排水
12 脱水ケーキ
13 切替バルブ
14 汚泥ライン

Claims (7)

  1. 上水道施設の浄水を貯留する水貯留池から沈殿物を除去する清掃方法において、水貯留池の底部に堆積した沈殿物を自走可能なロボットからなる吸引装置により吸引し、吸引された沈殿物から水をろ過水の水質が浄水のものと同等の水質まで処理できる性能の膜を備えているろ過器からなる分離装置により分離し、分離された水を前記水貯留池に返送するか又は他の池に供給することを特徴とする水貯留池の清掃方法。
  2. 前記分離装置は逆洗式ろ過器からなることを特徴とする請求項記載の水貯留池の清掃方法。
  3. 前記逆洗式ろ過器の逆洗は、前記水貯留池又は他の池の清浄な水を逆洗ラインに送ることにより行うか、又は気体を逆洗ラインに送ることにより行うことを特徴とする請求項記載の水貯留池の清掃方法。
  4. 上水道施設の浄水を貯留する水貯留池から沈殿物を除去する清掃装置において、水貯留池の底部に堆積した沈殿物を吸引する自走可能なロボットからなる吸引装置と、吸引された沈殿物から水をろ過水の水質が浄水のものと同等の水質まで処理できる性能の膜を備えているろ過器からなる分離装置と、分離された水を前記水貯留池に返送するか又は他の池に供給する移送ラインとを備えたことを特徴とする水貯留池の清掃装置。
  5. 前記分離装置は逆洗式ろ過器からなることを特徴とする請求項記載の水貯留池の清掃装置。
  6. 前記逆洗式ろ過器における逆洗は、前記水貯留池又は他の池の清浄な水を逆洗ラインに送ることにより行うか、又は気体を逆洗ラインに送ることにより行うことを特徴とする請求項記載の水貯留池の清掃装置。
  7. 前記分離装置により分離された汚泥および前記ろ過器の逆洗に用いた逆洗水は、濃縮器にて濃縮処理されることを特徴とする請求項記載の水貯留池の清掃装置。
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