JP3687047B2 - ゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゾッキ・パンティーストッキング等に用いられる耐久性良好なゾツキ用ポリウレタン繊維糸、および、その製造方法に関する。より詳しくは、形態固定性が高く、そのうえ、力学的な耐久性はもとより、カビ等に対しても充分に耐性があり、しかも高い強度、伸度、及びゾッキ用に適した細繊度を有するゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸を、乾式紡糸によって製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタン繊維は、高い弾性を有する特徴を生かして、各種の用途に広く用いられている。そして、その用途の範囲の拡大とともに、ポリウレタン繊維には、新たな特性が要求されるようになってきた。
その新たな用途の一つとして、ゾッキと略称されるゾッキストッキング類(ゾッキ・パンティーストッキングも含む)がある。
【0003】
そしてゾッキ用に要求される特性の代表的なものとしては、形態固定性が高いことから大きなサイズとすることができること、しかも、形態固定し大きなサイズとした後も機械的な耐久性が高く、弾性回復性があり、かつ、耐カビ性が高く、さらに高い強度、伸度を有することである。さらに、これらの特性を保持しつつ細いポリウレタン繊維糸に対する要請も高まっている。
【0004】
ポリウレタン・ウレアからなるポリウレタン繊維の物性と構造に関しては、いくつかの公知文献がある。その代表的なものとしては、化学同人社発行の化学増刊58(昭和48年3月10日発行)「高分子物性と分子構造」が挙げられる。その第207〜229頁には、鎖伸長剤として各種のジアミンを使用したポリウレタン−ウレアの一般的な構造と物性の関係が開示されている。この記載は、ポリウレタン−ウレアからなる繊維についてであり、鎖伸長剤としてジオールを使用したポリウレタンの構造と物性の関係については、何ら開示されていない。
【0005】
高分子論文集第45巻第10号第795〜802頁(1988年10月発行)等には、鎖伸長剤としてジオールを使用したポリウレタンが開示されているが、やはり、乾式紡糸によるゾッキ用ポリウレタン繊維を示唆する記載はない。
日本の特許公報においても乾式紡糸により細繊度のゾッキ用ポリウレタン繊維を製造する技術を開示するものはないのが現状である。
このように、乾式紡糸によるゾッキ用ポリウレタン繊維糸はまだないのが実状である。
【0006】
ジオール伸長によるポリウレタンからなる繊維は、溶融紡糸により製造されてきているが、このポリウレタン繊維を乾式紡糸により製造しようとする提案も報告されている。しかし、ジオール伸長によるポリウレタンから、細繊度のゾッキ用ポリウレタン繊維糸を工業的に安定して製造する技術は未だ提案されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、形態固定性が高く、力学的な耐久性はもとより、カビ等に対しても充分な耐性があり、しかも高い強度、伸度および弾性回復性を有するとともに、細くてもこれらの特性を保持するゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸を乾式紡糸によって製造する方法を提供すること、及び乾式紡糸によるゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、従来の溶融紡糸によるゾツキ用ポリウレタン繊維糸とは別の特定の構造を持ち、乾式紡糸により製造された特定のポリウレタン繊維糸がゾツキ用に特に好適な特性を有することを見出すことによって完成したものである。
【0009】
本発明のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸は以下の構成を有する。
すなわち、下式(I)で示される構造式からなり、数平均分子量が6万〜20万であるポリウレタンを乾式紡糸することによって製造されたポリウレタン繊維糸であって、その小角X線散乱像において、層線状斑点からなる層線状散乱像を示し、その子午線方向の長周期が7〜16nmであり、軟化点が130〜230℃であり、モノフィラメントもしくは2本合着された糸であり、その繊度が3〜30デニールであり、かつ、伸度が300%以上であることを特徴とするゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸である。
−(P−U−R1−U−)n1−(R2−U−R3−U)n2−…(I)
(式中、Pはポリオール残基、R1およびR3は互いに同一でも異なってもよいジイソシアネート残基、R2はジオール残基、Uはウレタン結合をそれぞれ表し、n1、n2は繰返し単位数である。)
【0010】
また、上記式(I)で示される構造式からなり、数平均分子量が6万〜20万であるポリウレタンを乾式紡糸することによって製造されたポリウレタン繊維糸であって、その小角X線散乱像において、眉毛状4点散乱像を示し、その子午線方向の長周期が7〜16nm、赤道線方向の長周期が13〜30nmであり、軟化点が130〜230℃であり、モノフィラメントもしくは2本合着された糸であり、その繊度が3〜30デニールであり、かつ、伸度が300%以上であることを特徴とするゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸である。
【0011】
本発明の耐久性ポリウレタン繊維の製造方法は以下の構成を有する。
すなわち、繊度が3〜30デニールで、伸度が300%以上であるゾツキ用ポリウレタン繊維糸を製造する方法であって、前記した式(I)で示される構造式を有するとともに、下式(II)で表される付加比率が1.7〜3、ハード比率(n2/n1)が0.65〜3、数平均分子量が6万〜12万、かつ軟化点が130〜230℃であるポリウレタンの溶液を乾式紡糸し、ゴデローラーに対する巻取機の速度比(巻取機の速度/ゴデローラーの速度)を1.2〜2.5とすることを特徴とするゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸の製造方法である。
【0012】
付加比率=(ジイソシアネートに基づくNCO基の数)/(ポリオールに基づく水酸基の数) …(II)
(ただし、上記式(II)中、ポリオールに基づく水酸基の数には、鎖伸長剤のジオールに基づく水酸基の数は含まれない。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
従来のポリウレタン繊維糸を小角X線で測定すると、幾つかのパターンを示す。その代表的なものとしては、2点散乱像が挙げられる。また、長周期に基づく小角X線散乱像をまったく示さないものも見られる。
これに対し、本発明にかかる乾式紡糸によるゾツキ用ポリウレタン繊維糸は、小角X線散乱像において、上記の2者とは異なる層線状散乱像または眉毛状4点散乱像を示すものである。
【0014】
以下に、層線状散乱像および眉毛状4点散乱像について、図面を参照しながら詳しく説明する。
まず、層線状散乱像について説明する。図1は、本発明のポリウレタン繊維が小角X線散乱測定により示す層線状散乱像の一例を模式的に表す。図にみるように、この層線状散乱像は、赤道線2を間において赤道線2から同じ距離を隔てて対向する少なくとも1対の層線状斑点31、31からなる。
【0015】
各斑点31は、X線散乱が一般的には正規分布状に現れており、子午線上付近に散乱強度の強い部分31aが現れる。各斑点31の斑点長比は、糸の耐久性を向上させる観点から1.5以上であることが好ましい。ここで、前記斑点長比とは、斑点31の中心線の長さLと斑点31の最大幅Wとの比(L/W)をいう。なお、斑点が2対以上存在する時は、像の強度が最も強い1対の斑点について、このような測定を行う。
【0016】
また、1対の斑点31、31の中心線を結び、長径OPおよび短径OQがそれぞれ赤道線2および子午線1に重なる楕円4を描くことができる場合、この楕円4の長短径比は、糸の耐久性を向上させる観点から1.3以上であることが好ましい。ここで、前記長短径比とは、楕円4の長径OPと短径OQとの比(OP/OQ)をいう。点Oは子午線1と赤道線2との交点であり、点Pは楕円4と赤道線2との交点であり、点Qは楕円4と子午線1との交点である。1対の斑点31、31は、子午線1および赤道線2に関して対称である。
【0017】
なお、当然のことではあるが、1対の斑点が赤道線に対して平行ないしは広がっており、これらの斑点の中心線を結ぶ、図1にみるような楕円4を描くことができなくても何ら問題ない。
【0018】
次に、眉毛状4点散乱像について述べる。
図2は、本発明のポリウレタン繊維が小角X線散乱測定により示す眉毛状4点散乱像の一例を模式的に表す。図にみるように、この眉毛状4点散乱像は、赤道線2を間に置いて赤道線2から同じ距離を隔てて対向する少なくとも1対の眉毛状斑点32、32からなる。各斑点32は、子午線1の両側に散乱強度の強い部分32aを有する。言い換えれば、各斑点32においては、両側部分32aにおける散乱強度が他の部分(各斑点32が子午線1を切る部分)32bに比較して強くなっている。このように、各斑点32が散乱強度の強い部分32aを2つ(2点)ずつ有するので、1対の斑点32、32は、散乱強度の強い部分32aを合計4つ(4点)持つことになる。1対の斑点32、32は、子午線1および赤道線2に関して対称である。
【0019】
なお、図1および図2において、散乱強度の強い部分を31aあるいは32aとして分けて表示したが、これらは31bあるいは32bに対して不連続的に強度が変わっている部分ではなく、連続的に(一般的には正規分布状に)強度が強くなっている部分であり、図1および図2では説明しやすいようにモデル的に記載したものである。
なお、本発明のポリウレタン繊維が示す層線状散乱像および眉毛状4点散乱像は、上述の例に限定されない。
【0020】
本発明のポリウレタン繊維は、層線状散乱像を示す場合は子午線方向についてのみ長周期を有し、眉毛状4点散乱像を示す場合は子午線方向および赤道線方向の両方向について長周期を有する。
【0021】
長周期Jは、たとえば、下記ブラッグ(Bragg)の式から求めることができる。
J=λ/2 sin[{tan-1(r/R)}/2]
ただし、上記式中、λはX線の波長、Rはカメラ半径(測定試料とフィルムの間の距離)、rは以下に述べるものである。
【0022】
層線状散乱像の場合は、たとえば、図1にみる散乱像において、赤道線2から斑点31の中心(最も密度の高い点)までの距離r1 をrとして上記ブラッグの式から子午線方向の長周期を求めればよい。眉毛状4点散乱像の場合は、たとえば、図2にみる散乱像において、子午線方向の長周期については赤道線2から斑点32の中心までの距離r1 をrとし、赤道線方向の長周期については子午線1から斑点32の散乱強度の最も強い部分までの距離r2 をrとして、上記ブラッグの式から求めればよい。
【0023】
なお、上記r1 およびr2 の測定は、小角X線写真のポジではなくネガで行うことが好ましい。ネガで測定すると、ネガからポジへ変換する際に生じる現像の倍率ムラによる誤差をなくすことができるからである。
【0024】
本発明のポリウレタン繊維は、上記のような小角X線散乱像を示し、かつ、この散乱像から測定される子午線方向の長周期は、層線状散乱像および眉毛状4点散乱像のいずれの場合も7〜16nmである。この長周期の特に好ましい範囲は9〜13nmである。子午線方向の長周期が9〜13nmであると、ポリウレタン繊維としての強度、特に実用強度がより高まるからである。特に、ゾッキ・パンティーストッキング(以下、「ゾッキ」と略称する)のように過酷な耐久性が要求される用途において、他の構造の繊維に比較して顕著に高くなるからである。
【0025】
本発明のポリウレタン繊維が眉毛状4点散乱像を示す場合は、その赤道線方向の長周期は13〜30nmであり、特に好ましくは15〜22nmである。このような値を示す繊維は、実用において特に高い耐久性を示すからである。
【0026】
なお、ポリウレタン繊維の小角X線測定は、たとえば、下記の方法により行うことができる。ただし、これに限定されない。
【0027】
A.試料の調製:
繊維を引き揃え、4cmの長さに切り、40mgを天秤で秤りきり、両糸端を結んで測定試料とする。
【0028】
B.写真測定:
写真法:Kissig Cameraによる。
X線発生装置:理学電機株式会社製、PU−200型
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用;波長1.5418オングストロ-ム)
出力 :50kV、200mA
スリット径:0.3mmφ
カメラ半径:400mm
撮影条件: 露出時間:120分
フィルム:Kodak DEF−5
【0029】
次に、本発明の繊維を構成するポリウレタンの分子構造や組成について述べる。
このポリウレタンは、前記式(I)で示されるジオール伸長ポリウレタンである。ジオール伸長ポリウレタンは、繊維を、適度の熱セット性、適度の弾性回復性および高強度を有するものにすることができるので、好ましい。
なお、本発明の効果を妨げない範囲で、ポリウレタン分子中に、ウレア結合が一部存在していても何ら構わない。
【0030】
式(I)中のジオール残基R2 となってポリウレタン分子中に配置され、ウレタン結合を与える原料のジオール鎖伸長剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものが広く適用できる。なお、本発明の効果を妨げない範囲で、鎖伸長剤として、グリセリン等のように3個以上の水酸基を持つ化合物が併用されてもよいことは言うまでもない。
【0031】
ジオール鎖伸長剤の中で、より優れたポリウレタン繊維を得るために好ましいものとしては、特に限定されるわけではないが、以下に列挙するものが挙げられる。エチレングリコール(以下、「EG」と略称する)、1,3−プロパンジオール(以下、「PDO」と略称する)、1,4−ブタンジオール(以下、「BDO」と略称する)、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(以下、「BHEB」と略称する)、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、パラキシリレンジオール等。これらのジオール鎖伸長剤の中でも好ましいものとしては、EG、PDO、BDOおよびBHEBが挙げられる。特に、EGを伸長剤として用いたポリウレタン繊維は、強度が特に高く、耐熱性も高く、しかも、適度の熱セット性と弾性回復性を有し、さらには、耐光性も高いので、特に好ましい。
【0032】
また詳細な原因は不明であるがEGを伸長剤として用いた場合には、高染色性となる特徴もあり極めて好ましいのである。
なお、ジオール鎖伸長剤は、1種のみのジオールからなるものに限定されるわけではなく、複数種のジオールからなるものであってもよい。
【0033】
式(I)中のジイソシアネート残基R1 およびR3 となってポリウレタン分子中に配置され、ウレタン結合を与える原料のジイソシアネートとしては、特に限定はされず、従来公知のものが広く適用できる。なお、本発明の効果を妨げない範囲で、3個以上のイソシアネート基を持つ化合物を併用してもよい。
【0034】
ジイソシアネートの中で、より優れたポリウレタン繊維を得るために好ましいものとしては、特に限定されるわけではないが、以下に列挙するものが挙げられる。ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略称する)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「HMDI」と略称する)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等。これらのジイソシアネートの中でも特に好ましいものは、MDIおよびHMDIである。MDIを用いたポリウレタン繊維は、強度がより高く、耐熱性も高く、さらに耐溶剤性等も良好なものとなるからである。また、HMDIを用いたポリウレタン繊維は、ポリオールおよび鎖伸長剤を適切に選定すると、耐光性が高くなる等の大きな利点があるからである。さらには、これら2者の中でもMDIがより好ましい。ジイソシアネートは、1種のみの使用に限定されず、複数種を併用してもよい。
【0035】
式(I)中のポリオール残基Pとなってポリウレタン分子中に配置され、ウレタン結合を与える原料ポリオールは、特に限定はされないが、その代表的なものとしては、以下のものが挙げられる。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略称する)およびその共重合体、ポリプロピレングリコールおよびその共重合体を初めとするエーテル系ポリオール、さらには、ポリブチレンアジペートグリコールおよびその共重合体、ネオペンチルアジペートグリコールおよびその共重合体、特開平4−41714号公報の第3頁第1欄第13行〜同頁第4欄第4行等に開示されているポリエステル系ポリオール、ポリエステル系ポリオールの1種であるポリカーボネート系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等の公知のポリオール等。これらのポリオールの中で、エーテル系ポリオールとして好ましいものとしては、PTMGおよびその共重合体等が挙げられる。PTMGの共重合体の代表的なものとしては、エチレンオキシドをPTMGの末端に付加したもの、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称する)と3−メチルTHFとの共重合PTMG等が挙げられる。ポリオールとしてPTMGおよび/またはその共重合体を用いたポリウレタン繊維は、低温特性に優れ、耐カビ性がより高く、弾性回復性により優れ、しかも耐加水分解性が高い。
【0036】
また、好ましい他のポリオールとして、メチル基等の側鎖が付いたポリエステル系のポリオールが挙げられる。このようなポリオールとしては、特開平4−41714号公報の第3頁第1欄第13行〜同頁第4欄第4行等に開示されたポリエステル系ポリオール、および、ネオペンチルアジペートグリコールを初めとするネオペンチルグリコールと各種の脂肪族ジカルボン酸との共重合グリコール、また、ネオペンチルグリコールを共重合したポリカプロラクトンジオール等が代表的なものとして挙げられる。このようなエステル系ポリオールは、耐カビ性もより高く、耐塩素性、耐光性に優れ、しかも耐加水分解性が高いので、特に好ましいものの一つである。
【0037】
ポリオールの分子量としては、繊維の強度および弾性回復性等を考慮して、800〜3500のものが好ましい。特に、側鎖のないポリオールについては、好ましい分子量は800〜2500である。これらの範囲の分子量のものを使用すると、ポリウレタン繊維の低温特性が特に優れたものとなるからである。
また、特に好ましいのは、ポリオールが単一成分ではなく数平均分子量800〜2500と数平均分子量1600〜4000のものとの複数成分からなり、かつポリオール全体としての数平均分子量が1200〜2600のものである。
【0038】
詳細な理由は不明ではあるが、1種の分子量からなるポリオールより、幾つかの分子量からなるものを混ぜたポリオールからなるもののほうが、ポリウレタン繊維の伸度も高くなり、またその耐久性も向上し、さらに糸の外観も高透明性となり好ましい。
【0039】
例えば、数平均分子量が2200のポリオールを用いる場合、数平均分子量が2200のポリオールを単独で用いるより、1800と3000のポリオールをブレンドしてなる数平均分子量2200のものを用いることが好ましいのである。
【0040】
そしてこの場合、目標の数平均分子量に対して、低分子量のポリオールを主体とし、高分子量のポリオールを少数とすることが好ましい。
すなわち、目標の数平均分子量が2500の時は、2500未満のポリオールを主体にし、2500超のポリオールを少なくするようにすることが好ましい。
【0041】
ポリウレタンを構成するポリオール残基Pは、ポリウレタンの1分子内において、1種類のみの使用に限定されるものではなく、複数種のポリオール残基、たとえば、エーテル系ポリオール残基とエステル系ポリオール残基が併用されていてもよい。用途に応じては、エーテル系ポリオール残基とエステル系ポリオール残基が併用されている方が良い場合もある。
【0042】
ジイソシアネートとポリオールとの比率である付加比率は、特に高い耐熱性が要求される時には高いことが好ましい。
【0043】
ここで、この明細書中、付加比率とは、下式(II)で表されるものである。
付加比率=(ジイソシアネートに基づくNCO基の数)/(ポリオールに基づく水酸基の数) …(II)
(ただし、上記式(II)中、ポリオールに基づく水酸基の数には、鎖伸長剤のジオールに基づく水酸基の数は含まれない。)
この付加比率は、繊維の融点の低下および粘着性の増加を防止する観点から1.7以上とするのが好ましい。一方、繊維の伸度が低下するのを防ぐ観点から3以下とするのが好ましい。特に、耐熱性が高く、適度のセット性の繊維を得る観点から、付加比率は1.8〜2であることが好ましい。
【0044】
ポリウレタンのハード比率は、0.65〜3であることが好ましい。ここで、この明細書中、ハード比率とは、前記式(I)中の繰り返し単位数n2 とn1 との比(n2 /n1 )を指す。ハード比率が上記の範囲であると、ポリウレタンの強度がより高くなり、また、耐熱性も高くなるからである。このような効果をより高くするために特に好ましいハード比率は0.9〜1.8である。ハード比率を0.9〜1.8とする方法としては、具体的には幾つかの方法が挙げられ特に限定されるものではない。
【0045】
ポリウレタンの数平均分子量は、6万〜12万である。数平均分子量がこの範囲であると、強度はもとより、実用においても耐久性が著しく向上するからである。なお、ポリウレタンの数平均分子量は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC法」と略す)により標準ポリスチレンで検量線を作成して測定することができる。
【0046】
前記式(I)中、n1、n2は、繰り返し単位数である。
【0048】
なお、ポリウレタンは高分子であるので、n1およびn2の両方とも平均値である。したがって、整数とは限らない。
このn2とn1との比(n2/n1)は、NMR法、加水分解法による測定値として求めることができる。
【0049】
本発明のゾツキ用ポリウレタン繊維糸は、前記した繊維構造を有し、上記したポリウレタンから構成されるとともに、そのポリウレタン繊維糸の軟化点が130〜230℃であり、かつ、その糸繊度が3〜30デニールのモノフィラメントもしくは2本合着された糸である。
【0050】
軟化点が130℃以上であると、他の繊維と、本発明の繊維との併用が容易になるからである。また、軟化点が230℃以下であると、熱によって形態を容易に固定できる利点があるからである。 これらの観点から特に好ましい軟化点は150〜230℃である。なお、ポリウレタン繊維糸の軟化点は、たとえば、サーモメカニカルアナライザー(Thermomechanical analyzer) 法(以下、「TMA法」と略称する)により測定することができる。
【0051】
ゾツキ用の場合、ポリウレタン繊維糸の繊度は30d以下(この明細書中、単位「d」はデニールを意味する)、より好ましくは20d以下、さらにもっと好ましくは15d以下の繊維において、従来の繊維に比較して、特に実用耐久性が高くなる。このような細いポリウレタン繊維は、特にゾッキ用途に好適である。特に繊度が3〜30dのポリウレタン繊維はゾッキに展開すると、良好な履き心地と高い耐久性のゾッキが得られる。
【0052】
また、本発明のポリウレタン繊維糸がモノフィラメントである場合、高透明性でかつ薄いゾッキとすることができる。また、2本のモノフィラメントが製造工程で合着(接合)された糸の場合も同様な特性となるので、上記同様にゾッキに適している。また、2本合着された糸の場合には、特に耐久性を高くすることができるので好ましい。
【0053】
ポリウレタン繊維糸の伸度は300%以上である。強度は1.5g/d以上であることが好ましい。強度および伸度がこれらの範囲であると、ポリウレタン繊維をゾツキ用にした時に、ゾツキの耐久性が向上するだけでなく、ポリウレタン繊維をゾツキにする工程でのポリウレタン繊維の破壊も大幅に減少し、このため、ゾツキの耐久性が大幅に向上する利点があるからである。また、得られる布帛の品位も向上する。
【0054】
本発明のポリウレタン繊維糸は、乾式紡糸により製造されたものである。乾式紡糸により作られたポリウレタン繊維は、乾燥時に適度の熱を受けているためか、熱安定性が高い利点があるからである。また、このようなポリウレタン繊維は、強度がより高く、しかも耐久性もより高い繊維となるからである。
【0055】
本発明のポリウレタン繊維は、上述の構成からなるものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、ベンゾトリアゾール系薬剤等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系薬剤等の耐光剤;ヒンダードフェノール系薬剤等の酸化防止剤;酸化チタン、酸化鉄等の各種顔料;硫酸バリウム;酸化亜鉛;酸化セリウム;銀イオンを含有する無機物等の機能性無機薬剤;滑剤;各種シリコーン油;鉱物油;各種の帯電防止剤等が含有されていてもよい。
【0056】
次に、本発明にかかるポリウレタン繊維糸を製造する方法について説明する。
本発明のポリウレタン繊維糸は、溶媒に溶解したポリウレタンを乾式紡糸することにより作られる。
乾式紡糸するために、溶媒に溶解したポリウレタン溶液を調製する方法は、特に限定はされないが、たとえば、以下の2つの方法が挙げられる。
【0057】
第1の方法は、特定のポリウレタンを溶媒に溶解してポリウレタン溶液を得、このポリウレタン溶液を乾式紡糸する方法である。
第2の方法は、特定のポリウレタンを溶媒中で合成してポリウレタン溶液を得、このポリウレタン溶液を乾式紡糸する方法である。
【0058】
まず、第1の方法について説明する。
ポリウレタンとしては、前記の式(I)で示される構造式を有するものが用いられる。また、このポリウレタンは、付加比率が1.7〜3、ハード比率(n2/n1)が0.65〜3、数平均分子量が6万〜12万、軟化点が130〜230℃のものとする。
【0059】
このようなポリウレタンを得る方法については、溶融重合法であれ、溶液重合法であれ、公知の方法が適用でき、限定されるものではない。重合の処方についても、特に限定はされず、たとえば、ポリオールとジイソシアネートとを反応させた後、ジオールからなる鎖伸長剤を添加し、ポリウレタンとする方法、また、ポリオールと、ジイソシアネートと、ジオールからなる鎖伸長剤とを同時に反応させることによりポリウレタンを合成する方法等が挙げられ、いずれの方法によるものでもよい。
【0060】
なお、異種のポリオールを併用する時、また同様に異種のジオールを併用する時、さらに異種のジイソシアネートを併用する時の方法も特に限定されるものではなく任意の方法が使用できる。
また、分子量の異なるポリオールを混合して任意の分子量のポリオールとする時も同様である。例えば、ポリオールを先に混合した後にジイソシアネートと反応させても良いし、また、分子量の異なったポリオールとジイソシアネートおよびジオールを同時に反応させてもよい。
【0061】
なお、反応速度の大幅に異なるものを併用する時には別々に反応させて、しかる後に混合することが好ましい。
なお、かかる事項は、本発明の耐久性ポリウレタン繊維の製造方法に全て共通するものである。
【0062】
ポリウレタンを溶解するための溶媒としては、特に限定されるわけではないが、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略称する)、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略称する)およびジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と略称する)からなる群から選ばれた少なくとも1種からなるものが好ましい。このような溶媒を用いて乾式紡糸すると、安定に良好な繊維が得られるからである。このような観点から、上記の溶媒の中でも特に好ましい溶媒はDMACである。これは、ポリウレタンを溶媒に溶解する場合に限らず、後述の第2の方法のように、溶媒中でポリウレタンを合成する場合も同様である。
【0063】
ポリウレタンを溶解する方法も特に限定されるものではなく、たとえば、攪拌中の溶媒中にポリウレタンを添加する方法、攪拌中の溶液に超音波をかける方法、ホモミキサーのように高速の剪断力を利用する方法、スタティックミキサーを用いる方法等の公知の手段が適用できる。必要に応じては、溶解助剤を併用してもよい。ポリウレタンとして粉体やチップ状のものを用いることにより、ポリウレタンを溶解しやすくすることも有効である。本発明の効果を妨げない範囲で、上記溶媒と併せて、その他の溶媒を用いてもよい。
【0064】
また、ポリウレタン溶液には、適宜、必要に応じて、MDI、HMDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を代表とするジイソシアネートやその誘導体(たとえば、両末端にMDIを付加してなる、MDI付加ブタンジオール、MDI付加エチレングリコール、MDI付加ポリプロピレングリコール);トリフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート付加ブタンジオール、さらには、グリセリンにMDIを付加してなるMDI付加グリセリン等をはじめとするトリイソシアネート等の化合物等を添加してもよい。
【0065】
上記のようにして作られたポリウレタン溶液は、口金から吐出させ、乾式紡糸する。以上が第1の方法である。
【0066】
次に、第2の方法について述べる。
この方法は、溶液中で目的とするポリウレタンを合成した後、得られた反応溶液(生成したポリウレタンが溶解した溶液)を乾式紡糸する方法である。
【0067】
まず、ポリオールとジイソシアネートを付加比率が1.7〜3となるように添加し、反応させる。この反応の手法も特に限定されるものではなく、公知の手法が適用できる。その代表的なものとしては、たとえば、通常の攪拌による方法、攪拌中の溶液に超音波をかける方法、ホモミキサーを併用する方法、スタティックミキサーを用いる方法、2軸のエクストルーダーを用いる方法、ニーダーを用いる方法等が挙げられる。
【0068】
次に、上記のようにしてジイソシアネートが付加されたジイソシアネート付加ポリオールを溶媒に溶解する。好ましい溶媒は、特に限定されるわけではないが、この溶媒がそのまま乾式紡糸時のポリウレタン溶液の溶媒となるので、前述した第1の方法で乾式紡糸されるポリウレタン溶液の好ましい溶媒として挙げたものと同じである。
【0069】
ジイソシアネート付加ポリオールを溶媒に溶解する方法も特に限定されるものではなく、前述の第1の方法においてポリウレタンを溶解する方法として挙げたものと同様の方法等が好ましく用いられる。
【0070】
次に、最終のポリウレタンの構造式が(I)で、かつ、ハード比率が0.65〜3になるようにジオールを添加して鎖伸長させる。ハード比率を0.65〜3とする場合には、ジイソシアネートと鎖伸長剤であるジオールを適宜添加し、鎖伸長させる。また、ジイソシアネートと鎖伸長剤であるジオールとを予め反応させて得られる、末端がジオールの低分子ウレタンを鎖伸長剤として使用することも有効である。すなわち、このような鎖伸長工程においては、鎖伸長剤であるジオールのみならず、必要に応じて、MDI、HMDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を代表とするジイソシアネートやその誘導体(たとえば、両末端にMDIを付加してなる、MDI付加ブタンジオール、MDI付加エチレングリコール、MDI付加ポリプロピレングリコール);トリフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート付加ブタンジオール、さらには、グリセリンにMDIを付加してなるMDI付加グリセリン等をはじめとするトリイソシアネート等の化合物等を添加してもよい。また、モノイソシアネート、モノアミン、モノオール等の末端封鎖剤等を必要に応じて添加することも有効である。
【0071】
このような処方により、最終のポリウレタンの数平均分子量が6万〜12万となるように反応させる。
このような鎖伸長の手法は、特に限定されるものではなく、公知の手法が適用できる。
【0072】
次に、第2の方法の他の方法として、1段階法を用いることができる。
すなわち、例えば、特開昭60−206817号公報に開示されているようにポリオールとジオールを溶媒に溶解し次にジイソシアネートを添加し重合する方法がある。
なお、この1段階法による反応の場合も、ポリオールとジオールとジイソシアネートとの比率は上記同様である。かかる方法は簡単であり、安価に生産出来るメリットがある。
【0073】
また、上記の反応は、得られる最終のポリウレタンの軟化点が130〜230℃となるように行う。ポリウレタンの軟化点をこのような温度にするためには、事前にテストをし、ポリオールとジイソシアネートと鎖伸長剤であるジオールの各々の種類およびそれらの比率を決めることが必要である。
【0074】
次に、こうして得られたポリウレタン溶液を口金から吐出させ、乾式紡糸する。以上が第2の方法である。
【0075】
以上のように、第1および第2の両方の方法とも、特定のポリウレタンが溶解してなるポリウレタン溶液を用い、これを乾式紡糸するという点では共通し、しかも、その乾式紡糸方法も双方に共通するので、以下では、これら両方法に分離せずに、両方法に共通する事項について述べる。
【0076】
乾式紡糸されるポリウレタン溶液に溶解したポリウレタンの原料として用いられる、ジオール鎖伸長剤、ジイソシアネートおよびポリオールについては、前述した通りである。
【0077】
特に、より高強度、かつ、より高伸度のポリオール繊維が要求される時には、ポリウレタン原料のジイソシアネートとしてMDIおよび/またはHMDIを用い、ジオール鎖伸長剤としてEG、PDO、BDOおよびBHEBからなる群から選ばれた少なくとも1種(特に好ましくは、EG)を用い、ポリオールとして下記のものから選ばれた少なくとも1種を用いて得られたポリウレタンの溶液を乾式紡糸することが好ましい。
【0078】
ポリオール=分子量が800〜3500のPTMGおよび/またはその共重合体、分子量が800〜3500で側鎖として少なくとも1つのメチル基を有するポリエステルジオール等。
【0079】
上記の原料から得られたポリウレタンが良好な特性を示すことは前述の通りである。
【0080】
また、かかるポリオールの数平均分子量は1400〜2600であり、かつ該ポリオールは単一成分ではなく数平均分子量800〜2500と数平均分子量1600〜4000のものとの複数成分からなるものが好ましい。
かかるものであると、得られる繊維の特性として、1種の分子量からなるポリオールより、幾つかの分子量からなるものを混ぜたポリオールからなるもののほうが、伸度も出やすく、また耐久性も高くなり、また糸の外観も高透明性となり好ましいことは前記した通りである。
【0081】
また、ブレンドの方法としては、目標の分子量に対して、低分子量のポリオールを主体とし、高分子量を少数とすることが好ましい。
例えば、目標の分子量が2500の時は、2500未満のポリオールを主体にし、2500超過のポリオールを少なくするようにすることが好ましい。
【0082】
かかる事項は物としての特徴であるが、かかる構成をとることにより、製法的にも下記のような利点が発揮されるのである。すなわち、溶液中に各種の添加剤を付与しても溶液が安定し、紡糸性が高くなるのである。
【0083】
ポリウレタン溶液を乾式紡糸する際、加熱温度は、(ポリウレタンの軟化点±70)℃であることが好ましい。このような温度で加熱すると、紡糸時の糸切が少なくなり、また、糸の温度も上がり、伸度も上がるからである。この観点から、特に好ましい加熱温度は、(ポリウレタンの軟化点±50)℃である。なお、上記加熱温度は、乾式紡糸における紡糸筒の壁面温度である。
【0084】
紡糸の際、糸切れを少なくして安定に紡糸でき、かつ、伸度の高い繊維を得る観点から、ドラフト比は5〜150であることが好ましく、引取速度は300〜2000m/分であることが好ましい。
【0085】
特に、より高伸度の繊維を希望する時には、ポリウレタンの組成にもよるが、低ドラフト比で紡糸することが好ましい。その際の好ましいドラフト比は7〜50である。一方、伸度の比較的少ない繊維を希望する時には、高ドラフト比で紡糸することが好ましい。その際の好ましいドラフト比は30〜100である。このように、糸の使用目的に応じて好ましいドラフト比が選定される。なお、これらは、用いるポリウレタンの種類によっても異なるので、所望の目的に応じて設定すればよい。
【0086】
ここで、この明細書中、引取速度とは、口金から吐き出された糸が最初に触れるゴデローラー(口金から吐き出され乾燥処理された糸が最初に触れる糸の速度を規定するローラー)の速度を意味し、巻取機の巻取速度を意味するのではない。なお、ゴデローラーの速度と巻取機の速度が同一であっても何ら構わない。
【0087】
糸の巻取方法としては、ゴデローラーの速度よりも巻取機の速度を速くする。この観点から、速度比率(巻取機の速度/ゴデローラーの速度)は1.2〜2.5である。高強度の糸とする時には、両者間で速度差をつけることは有効なことである。そして、特に好ましい速度比率は1.3〜2.5である。このような方式で糸を巻き取ると、糸の強度は非常に高くなる。
【0088】
特に、30d以下の細い繊維を作る時には、孔径(D)が0.1〜0.35mmφ、かつ、孔径(D)と孔長(L)との比率L/Dが1.1〜5の口金を用いることが好ましい。特に、数平均分子量が5万以上のポリウレタンを紡糸する時には、L/Dが1.2〜4の口金を用いることが好ましい。このような口金で紡糸すると、より高強度、かつ、より高伸度の繊維が容易に作れるからである。
【0089】
次に、特に伸度が高く、かつ安定した解舒性の糸巻体(チーズ)とするは巻取機と巻取トラバースの速度を調整し、巻取糸体の平均綾角が5〜18゜となるように巻取ることが好ましい。
綾角度を決めるのは糸の巻取速度と巻取トラバースの速度とトラバースの幅(糸巻体の幅)である。
したがって、この3者を調整して、綾角が5〜18°となるようにするのである。そして特に好ましい綾角は6〜12°である。かかる綾角になるように巻取ると、伸度が高く、かつ解舒性の安定した繊維となるのである。
【0090】
なお、乾式紡糸するポリウレタン溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の、ベンゾトリアゾール系薬剤等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系薬剤等の耐光剤;ヒンダードフェノール系薬剤等の酸化防止剤;酸化チタン、酸化鉄等の各種顔料、硫酸バリウム;酸化亜鉛;酸化セリウム;銀イオンを含有する無機物等の機能性無機薬剤;滑剤;各種シリコーン油;鉱物油;各種の帯電防止剤等を適宜添加されていてもよい。
【0091】
これらの添加方法は、特に限定はされず、公知の手法が適用できる。代表的なものとしては、前述した、通常の攪拌による方法、攪拌中の溶液に超音波をかける方法、ホモミキサーを併用する方法、さらにスタティックミキサーを用いる方法、2軸のエクストルーダーを用いる方法、ニーダーを用いる方法等が挙げられる。
【0092】
ポリウレタン繊維が、前記式(I)で示される構造式のポリウレタンからなっていて、繊維の小角X線散乱像において、層線状散乱像を示すとともに子午線方向の長周期が7〜16nmであるか、または、眉毛状4点散乱像を示すとともに子午線方向の長周期が7〜16nm、かつ、赤道線方向の長周期が13〜30nmであると、形態固定性が高く、力学的な耐久性はもとより、カビ等に対しても充分な耐性があり、しかも高い強度、伸度および弾性回復性を有するとともに、細くしても、これらの特性を保持する優れた耐久性ポリウレタン繊維となる。本発明のゾッキ用ポリウレタン繊維糸は、さらに、前記した特定の熱特性、繊度などのゾツキ用に適した特性を有するので、耐久性に優れ、透明性が高く、形態固定性が高くてサイズの適正なゾツキストッキング類を製造できる。
【0093】
上記特定構造のポリウレタン繊維が上記の優れた性能を示す理由(繊維の構造と性能との詳細な関係)は、まだ明らかではないが、このポリウレタン繊維の構造と耐久性との関係についてあえて言及すれば、以下のように推定される。すなわち、小角X線散乱像が層線状散乱像または眉毛状4点散乱像を示すポリウレタン繊維においては、繊維中のハードセグメントがマクロ的に見ると比較的均一に分布しており、しかもソフトセグメントがタイ分子の役割を充分に果している。そのため、繊維にかかる外力にうまく抵抗するので耐久性が高くなる。
【0094】
【実施例】
以下に、本発明の実施例と比較例を説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0095】
−実施例1−
付加比率が2.010になるように、分子量2000のPTMG2000gとMDI503gを窒素シールされた攪拌容器中に投入し、85℃で反応させ、MDI末端のプレポリマーを得た。次に、このプレポリマー2000gをDMAC3890gに溶解し、さらに、ハード比率が1.1になるように鎖伸長剤としてEG75.6gとMDI20gを添加し、反応させ、さらに末端封鎖剤としてブタノールを添加することにより、ポリウレタン溶液を得た。
【0096】
得られたポリウレタン溶液に含まれるポリウレタンの数平均分子量をGPC法で測定したところ、ポリスチレン換算で約10万であった。また、TMA法により測定したポリウレタンの熱軟化点は200℃であった。
【0097】
上記ポリウレタン溶液を、孔径(D)=0.20mmφ、孔長(L)=0.50mm、L/D=2.5の口金を用いて加熱温度(紡糸筒の壁面温度)200℃で乾式紡糸したところ、良好に紡糸でき、ポリウレタン繊維を得た。その際、引取速度は550m/分、巻取速度は900m/分、速度比率(巻取速度/引取速度)は1.64であり、ドラフト比は18であった。
【0098】
得られたポリウレタン繊維の物性は、繊度が17dのモノフィラメントで強度が37.4gすなわち2.2g/d、伸度が370%であり、極めて高強度であった。
このポリウレタン繊維の小角X線写真を前述の方法により撮影したところ、実施例1と同様の眉毛状4点散乱像を得た。また、子午線方向の長周期および赤道線方向の長周期の両方とも実施例1と同様であった。
【0099】
このポリウレタン繊維にナイロン糸(12d、7フィラメント)を巻き付けてシングルカバードヤーンにし、このシングルカバードヤーンを用いて、さらにゾッキを試作し、含金酸性染料で染色し、これを実用テストしたところ、15日間の実用に耐えた。本品は良好に染色でき、美しいゾッキとなった。
【0100】
−実施例2−
実施例1において、ポリウレタン溶液を紡糸する際、加熱温度(紡糸筒の壁面温度)を230℃に、巻取速度を680m/分に、それぞれ変更し、2本の糸を仮撚により合着させたこと以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン繊維を得た。
得られたポリウレタン繊維の物性は、繊度が20dで、2本の糸が合着された糸であり、強度が31gすなわち1.6g/d、伸度が440%であった。すなわち、伸度が高く、高強度のポリウレタン繊維が得られた。
【0101】
このポリウレタン繊維の小角X線写真を前述の方法により撮影した結果(写真のポジ)を図5に示す。この図にみるように、層線状散乱像を示した。この散乱像において、斑点長比は2.5、長短径比は1.7、子午線方向の長周期は13nmであった。
このポリウレタン繊維にナイロン糸(12d、7フィラメント)を巻き付けてシングルカバードヤーンにし、このシングルカバードヤーンを用いてゾッキを試作し、これを実用テストしたところ、15日間の実用に耐えた。
【0102】
−実施例3−
分子量1800のPTMGを667g、分子量3000のPTMGを333g、エチレングリコール28gを3300gのDMACに溶解し、次に229gのMDIを追加し、次にこの溶液を60〜70℃で9時間攪拌しながら反応させ、さらに、ブタノールを添加し末端封鎖した。
【0103】
なお、PTMGの計算上の数平均分子量は2200であった。また、付加比率はほぼ2であり、また、ハード比率はほぼ1であった。
得られたポリウレタンの分子量をGPC法で測定したところ、数平均分子量は約9万であった。また、熱軟化点は190℃であった。
【0104】
次に、得られた溶液を孔径が0.25mmφ、孔長が0.45mm、すなわちL/D=1.8の口金を用いて加熱温度220℃で乾式紡糸したところ、良好に紡糸できた。引取り速度は400m/m、巻取速度は600m/m(速度比率=1.5)であった。また、糸のケークの平均綾角は9°であった。得られた繊維のデニールは18デニールのモノフィラメント糸であった。
【0105】
得られた繊維の小角X線写真は図1と同様の眉毛状4点散乱像を示した。また、繊維の強度は28g、すなわち1.6g/d、伸度は400%であった。
さらに、得られた繊維にナイロン糸(12d、7フィラメント)を巻きつけ、シングルカバードヤーンにし、酸性染料で染色しゾッキとし、実用テストしたところ15日の実用に耐えた。本ゾッキは透明性が特に高く、また伸縮性に富み、また良好に着色でき良好なものであった。
【0106】
−実施例4−
付加比率が2.010になるように、分子量2000のPTMG2000gとMDI503gを窒素シールされた攪拌容器中に投入し、85℃で反応させ、MDI末端のプレポリマーを得た。次に、このプレポリマー2000gをDMAC3840gに溶解し、さらに、鎖伸長剤としてEGを、ハード比率が1.0になるように68.7g添加し、反応させ、さらに末端封鎖剤としてブタノールを添加することにより、ポリウレタン溶液を得た。
【0107】
得られたポリウレタン溶液に含まれるポリウレタンの数平均分子量をGPC法で測定したところ、ポリスチレン換算で約8万であった。また、TMA法により測定したポリウレタンの熱軟化点は195℃であった。
【0108】
次に、上記ポリウレタン溶液を、孔径(D)=0.25mmφ、孔長(L)=0.45mm、L/D=1.8の口金を用いて加熱温度(紡糸筒の壁面温度)200℃で乾式紡糸したところ、良好に紡糸でき、ポリウレタン繊維を得た。
その際、引取速度は700m/分、巻取速度は950m/分、速度比率(巻取速度/引取速度)は1.36であり、ドラフト比は18であった。
【0109】
得られたポリウレタン繊維の物性は、繊度が18dのモノフィラメントで強度が36gすなわち2.0g/d、伸度が410%であった。
【0110】
このポリウレタン繊維の小角X線写真を前述の方法により撮影し、得られた写真のネガから長周期を前述の方法により算出した。
得られた写真のポジを図3に示す。この図にみるように、典型的な眉毛状4点散乱像を示した。この散乱像において、子午線方向の長周期は11nm、赤道線方向の長周期は17nmであった。
【0111】
このポリウレタン繊維にナイロン糸(15d、10フィラメント)を巻き付けてシングルカバードヤーンにした。
【0112】
−実施例5−
ハード比率が1.05になるように、分子量1500のPTMG1800gとBHEB250gをニーダー中で混合し、さらに、付加比率が2.0になるようにMDI 615gを添加し、充分反応させた。その後、反応混合物を水中に押し出し、カットして、チップ状のポリウレタンを得た。
【0113】
このポリウレタンの数平均分子量をGPC法で測定したところ、ポリスチレン換算で約6万であった。また、TMA法により測定したポリウレタンの熱軟化点は190℃であった。
【0114】
このポリウレタン500gをDMAC1000gに溶解し、得られたポリウレタン溶液を実施例1と同様にして乾式紡糸することにより、ポリウレタン繊維を得た。
このポリウレタン繊維の物性は、繊度が20dのモノフィラメントで強度が32gすなわち1.6g/d、伸度が350%であった。
【0115】
このポリウレタン繊維の小角X線写真を前述の方法により撮影した結果(写真のポジ)を図4に示す。この図にみるように、眉毛状4点散乱像を示した。この散乱像において、子午線方向の長周期は10nm、赤道線方向の長周期は19nmであった。
このポリウレタン繊維にナイロン糸(15d、10フィラメント)を巻き付けてシングルカバードヤーンにした。
【0116】
−比較例1−
実施例5で得られたチップ状のポリウレタンを通常のエクストルーダー型の溶融紡糸機にかけ、230℃で紡糸することにより、ポリウレタン繊維を得た。その際、引取速度は650m/分、巻取速度は850m/分、速度比率(巻取速度/引取速度)は1.31であった。また、ドラフト比は40であった。
このポリウレタン繊維の物性は、繊度が20dのモノフィラメントで強度が21gすなわち約1.1g/d、伸度が340%であった。
【0117】
このポリウレタン繊維の小角X線写真を前述の方法により撮影した結果(写真のポジ)を図6に示す。この図にみるように、典型的な2点散乱像を示した。この散乱像において、子午線方向の長周期は11nmであった。
このポリウレタン繊維に15dのナイロン糸を巻き付けてシングルカバードヤーンにした。
【0118】
−比較例2−
付加比率が1.6になるようにし、分子量1600のPTMG800gとMDI 200gを窒素シールされた攪拌容器中に投入し、85℃で反応させ、MDI末端のプレポリマーを得た。次に、このプレポリマーをDMAC1900gに溶解し、さらに、鎖伸長剤としてエチレンジアミン30gを添加し、反応させ、さらに末端封鎖剤としてジエチルアミンを添加することにより、ポリウレタン溶液を得た。
【0119】
得られたポリウレタン溶液に含まれるポリウレタンの数平均分子量をGPC法で測定したところ、ポリスチレン換算で約3万であった。また、TMA法により測定したポリウレタンの熱軟化点は245℃であった。
【0120】
上記ポリウレタン溶液を、孔径(D)=0.25mmφ、孔長(L)=0.45mm、L/D=1.8の口金を用いて加熱温度(紡糸筒の壁面温度)210℃で乾式紡糸し、2本の糸を仮撚により合着させたところ、良好に紡糸でき、ポリウレタン繊維を得た。
その際、引取速度は700m/分、巻取速度は880m/分、速度比率(巻取速度/引取速度)は1.26であり、ドラフト比は18であった。
【0121】
得られたポリウレタン繊維の物性は、繊度が20dで2本の10dの糸が合着されたものであった。また、強度が22gすなわち1.1g/d、伸度が500%であり、極めて高強度であった。
このポリウレタン繊維の小角X線写真を前述の方法により撮影したところ、比較例1とほぼ同様の散乱像を得た。また、子午線方向の長周期は9nmであった。
【0122】
このポリウレタン繊維に15dのナイロン糸を巻き付けてシングルカバードヤーンにした。
【0123】
【発明の効果】
本発明の乾式紡糸により製造されたゾッキ用ポリウレタン繊維糸は、従来のポリウレタン繊維とは異なる特定の構造を有するものであり、形態固定性が高く、力学的な耐久性はもとより、カビ等に対しても充分な耐性があり、しかも高い強度、伸度および弾性回復性を有するとともに、細くしても、これらの特性を保持する。
本発明の製造方法によれば、上記の優れたゾッキ用ポリウレタン繊維糸を安定に容易に製造することができる。
本発明のゾッキ用ポリウレタン繊維糸は、ゾッキストッキング、ゾッキパンティーストッキング等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のポリウレタン繊維糸が小角X線散乱測定により示す層線状散乱像の一例を表す模式図である。
【図2】 本発明のポリウレタン繊維糸が小角X線散乱測定により示す眉毛状4点散乱像の一例を表す模式図である。
【図3】 実施例4のポリウレタン繊維糸の小角X線写真である。
【図4】 実施例5のポリウレタン繊維糸の小角X線写真である。
【図5】 実施例2のポリウレタン繊維糸の小角X線写真である。
【図6】 比較例1のポリウレタン繊維糸の小角X線写真である。
【符号の説明】
1: 子午線
2: 赤道線
31: 層線状散乱像
32: 眉毛状4点散乱像
Claims (14)
- 下式(I)で示される構造式からなり、数平均分子量が6万〜12万であるポリウレタンを乾式紡糸することによって製造されたポリウレタン繊維糸であって、その小角X線散乱像において、層線状斑点からなる層線状散乱像を示し、その子午線方向の長周期が7〜16nmであり、軟化点が130〜230℃であり、モノフィラメントもしくは2本合着された糸であり、その繊度が3〜30デニールであり、かつ、伸度が300%以上であることを特徴とするゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
−(P−U−R1−U−)n1−(R2−U−R3−U)n2−…(I)
(式中、Pはポリオール残基、R1およびR3は互いに同一でも異なってもよいジイソシアネート残基、R2はジオール残基、Uはウレタン結合をそれぞれ表し、n1、n2は繰り返し単位数である。) - 層線状斑点の中心線の長さと該層線状斑点の最大幅との比である斑点長比が1.5以上であり、かつ、1対の層線状斑点の中心線を結び、長径および短径がそれぞれ赤道線および子午線に重なる楕円を描くことができ、この楕円の前記長径と短径との比である長短径比が1.3以上である請求項1記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
- 下式(I)で示される構造式からなり、数平均分子量が6万〜12万であるポリウレタンを乾式紡糸することによって製造されたポリウレタン繊維糸であって、その小角X線散乱像において、眉毛状4点散乱像を示し、その子午線方向の長周期が7〜16nm、赤道線方向の長周期が13〜30nmであり、軟化点が130〜230℃であり、モノフィラメントもしくは2本合着された糸であり、その繊度が3〜30デニールであり、かつ、伸度が300%以上であることを特徴とするゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
−(P−U−R1−U−)n1−(R2−U−R3−U)n2−…(I)
(式中、Pはポリオール残基、R1およびR3は互いに同一でも異なってもよいジイソシアネート残基、R2はジオール残基、Uはウレタン結合をそれぞれ表し、n1、n2は繰り返し単位数である。) - 強度が1.5g/d以上である請求項1〜3のいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
- ジイソシアネート残基R1およびR3の各々として、ジフェニルメタンジイソシアネート残基およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート残基からなる群から選ばれた少なくとも1種が配置され、かつ、ジオール残基R2として、エチレングリコール残基、1,3−プロパンジオール残基、1,4−ブタンジオール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,2−プロピレングリコール残基、1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、1,4−シクロヘキサンジオール残基、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン残基、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート残基およびパラキシリレンジオール残基からなる群から選ばれた少なくとも1種が配置されている請求項1〜4のいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
- ポリオール残基Pとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール残基およびポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体残基からなる群から選ばれた少なくとも1種が配置され、ジイソシアネート残基R1およびR3としてジフェニルメタンジイソシアネート残基が配置され、かつ、ジオール残基R2としてエチレングリコール残基が配置されている請求項5記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
- ポリオール残基Pの分子量が800〜3500である請求項1〜6のいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
- ポリオール残基Pが単一成分ではなく数平均分子量800〜2500と数平均分子量1600〜4000のものとの複数成分からなり、かつ、ポリオール残基P全体としての数平均分子量が1200〜2600である請求項1から7までのいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
- 下式(II)で表される付加比率が1.7〜3であり、かつ、ハード比率(n2/n1)が0.65〜3である請求項1〜8のいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸。
付加比率=(ジイソシアネートに基づくNCO基の数)/(ポリオールに基づく水酸基の数)…(II)
(ただし、上記式(II)中、ポリオールに基づく水酸基の数には、鎖伸長剤のジオールに基づく水酸基の数は含まれない。) - 繊度が3〜30デニールで、伸度が300%以上であるゾツキ用ポリウレタン繊維糸を製造する方法であって、下式(I)で示される構造式を有するとともに、下式(II)で表される付加比率が1.7〜3、ハード比率(n2/n1)が0.65〜3、数平均分子量が6万〜12万、かつ軟化点が130〜230℃であるポリウレタンの溶液を乾式紡糸し、ゴデローラーに対する巻取機の速度比(巻取機の速度/ゴデローラーの速度)を1.2〜2.5とすることを特徴とするゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸の製造方法。
−(P−U−R1−U−)n1−(R2−U−R3−U)n2−…(I)
(式中、Pはポリオール残基、R1およびR3は互いに同一でも異なってもよいジイソシアネート残基、R2はジオール残基、Uはウレタン結合をそれぞれ表し、n1、n2は繰り返し単位数である。)
付加比率=(ジイソシアネートに基づくNCO基の数)/(ポリオールに基づく水酸基の数)…(II)
(ただし、上記式(II)中、ポリオールに基づく水酸基の数には、鎖伸長剤のジオールに基づく水酸基の数は含まれない。) - ポリウレタン溶液が、ポリオールとジイソシアネートとを付加比率が1.7〜3となるように反応させて得られたジイソシアネート付加ポリオールを溶媒に溶解した後、ジオールを添加し、鎖伸長反応させることにより得られたものである請求項10記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸の製造方法。
- ポリウレタン溶液が、ポリオールとジオールとジイソシアネートとを有機溶媒中で反応させることにより得られたものである請求項10又は11に記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸の製造方法。
- ポリウレタンの鎖伸長剤のジオールとして、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびパラキシリレンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる請求項10〜12のいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸の製造方法。
- 数平均分子量が800〜2500のポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体からなるポリオールと、数平均分子量が1600〜4000のポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体からなるポリオールとを混合し、全体としての数平均分子量が1200〜2600であるポリオールを、ポリウレタンの原料ポリオールとして用いることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載のゾツキ用耐久性ポリウレタン繊維糸の製造方法。
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