JP3685767B2 - クロムを含むニッケル基合金の粒界腐食の非破壊検査方法および検査装置 - Google Patents
クロムを含むニッケル基合金の粒界腐食の非破壊検査方法および検査装置 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インコネル合金に代表されるクロムを含むニッケル基合金の熱鋭敏化による粒界腐食の非破壊検査方法および検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロムを含むニッケル基耐熱合金の代表的な合金であるインコネル合金は、ニッケルと約15〜23wt%のクロムを主成分とする耐熱合金であり、鉄、コバルト、モリブデンを含む場合がある。代表的なインコネル600合金(Ni76.0%、Cr15.5%、Fe7.8%,Mn0.4%,Si0.2%,C0.08%:重量%)は、原子炉周辺機器、火力発電プラント、化学プラントなどに使用されているが、溶接時などの熱処理や高温長時間保持などによる熱鋭敏化により結晶粒界に沿ってクロム炭化物が析出し、クロム欠乏層が生じる。そして、このクロム欠乏層が応力腐食割れの原因の1つとなる。
【0003】
このような応力腐食割れの検査方法としては、従来、テストピースを動作環境に置き、定期的に取り出して、化学薬品による腐食を行い光学顕微鏡で観察する方法や電気化学的にクロム炭化物の析出物を腐食して調べる方法やシャルピー試験など、いずれも破壊試験での検査が行われている。
例えば、特公平2−54501号公報には硝酸を含む水溶液中でニッケルが活性溶解を起こす電位で分極を行い、クロムを含むニッケル基合金のクロム欠乏層を検出する粒界腐食試験方法が開示されている。
含フェライト系ステンレス鋼や低合金鋼などの鉄基合金製品の実機部材における高温時効脆化や歪損傷の検知に磁気測定方法を用いることは公知である(特公平7−6950号公報、特開平4−218764号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のとおり、インコネル合金に代表されるクロムを含むニッケル基合金は熱鋭敏化により結晶粒界付近にクロム炭化物が析出し、クロム欠乏相ができる。図1は、インコネル600合金の結晶粒界付近にクロム炭化物が析出した場合のクロム濃度の分布を模式的に示したものであり、例えば、図示のように、10wt%以下のクロム濃度が結晶粒界にできると応力腐食割れの危険が高まる。このクロム濃度分布はインコネル600合金構造材の溶接時の熱処理またはインコネル600合金構造体を600℃から700℃に長時間保持するときのクロム炭化物の析出によって生じ、保持時間によっても分布が変化する。
【0005】
クロム欠乏相の従来の検査方法は上記のように表面を腐食したり、破断させたりするために破壊を伴い非破壊検査の理念に反する方法である。また、表面のクロム欠乏相の情報しか得ることが出来なかった。また、欠乏相のクロム濃度および欠乏相の体積を定量的に調べることは時間と多大な労力を必要とする。
磁化率を測定する従来の方法は、結晶粒界付近のクロム原子の析出物やクロム欠乏相を定性的に観測することしかできない。
Fe基合金部材の上記の磁気測定法は相変態に基づく飽和磁化などの変化を既知データと対比演算するものであり、クロムを含むニッケル基合金のクロム炭化物の析出に伴うクロム欠乏相のクロム濃度別体積を求めることはできない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、クロムを含むニッケル基合金の粒界腐食割れの原因となるクロム欠乏相の存在を磁気的な手段を用いることによって定量的に測定できる非破壊検査方法およびそのための検査装置を開発した。
【0007】
すなわち、本発明は、クロムを含むニッケル基合金の熱鋭敏化による粒界腐食を検査する方法において、該合金のクロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの範囲内における測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化Ms(Ti) を測定することにより、下記の式(1)に基づいてνkを算出することによりクロム欠乏相の体積をクロム濃度別に定量的に求めることを特徴とするクロムを含むニッケル基合金の粒界腐食の非破壊検査方法である。
【数2】
ただし、νkはクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の体積、Vはテストピースの体積、kは測定条件に合わせて、測定温度Tminと測定温度Tmaxの間をn等分して決める自然数、Mk(Ti) は測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の予め求めた下記の(a),(b),(c)のデータに基づく飽和磁化である。
(a)クロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度の関係
(b)クロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の関係
(c)クロム欠乏相の飽和磁化と測定温度の関係
【0008】
また、本発明は、冷媒槽の中央部に設けられたテストピース収容部、該収容部の内壁に取り付けられたテストピース励磁器、テストピースを励磁器の中心位置に装入する支持体、テストピースの周囲に取り付ける磁束検出器、冷媒槽に冷媒を供給し、冷媒から発生した冷却ガスをテストピース収容部に流入させ、循環して冷却する冷凍機、テストピースの下部に設けた加熱用ヒーター、冷媒および加熱用ヒーターによりテストピースの測定温度を制御する手段、からなることを特徴とする上記の非破壊検査方法に使用するためのテストピースの磁気特性検出装置である。
【0009】
以下は、クロムを含むニッケル基合金の代表的なものとして知られるインコネル600合金について具体的に説明するが、本発明の方法の検査対象は該インコネル合金に限定されるものではない。インコネル合金には、インコネル600、インコネル601、インコネル625、インコネル690、インコネル617などがあり、インコネル600合金の成分の概略値はニッケル74wt%、クロム16wt%、Fe10wt%からなる。本発明において、クロムを含むニッケル基合金とは、これらのインコネル合金と同様にクロム炭化物の粒界析出を起こす程度にクロムを含有するニッケル基合金をいう。
【0010】
インコネル600合金のキュリー温度(磁気遷移温度)は109Kである。インコネル600合金の熱鋭敏化のメカニズムおよび熱鋭敏化が起こる温度はこれまでの多くの研究で調べられてきた。これまでの熱鋭敏化の検証は化学薬品を用いた腐食や電気化学的な腐食によって行われ、熱鋭敏化が進む温度は600から700℃であることが報告されている。
【0011】
クロムを含むニッケル基合金は熱鋭敏化により結晶粒界付近にクロム炭化物が析出するが、クロム欠乏相のキュリー温度はクロム濃度に依存する。図2には、インコネル600合金についてのクロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度との関係を示す。クロム濃度14wt%で勾配が少し変わるがクロム濃度の減少にほぼ比例してキュリー温度は高くなる。これまでの研究からクロム濃度が最も低いのは6wt%であり、この濃度に対応するキュリー温度は450Kである。
【0012】
本発明の検出方法では、このキュリー温度とクロム濃度の関係に基づく予め求めた測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の飽和磁化と、クロムを含むニッケル基合金のクロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの温度である109K〜450Kの範囲内における一定の測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化の測定値に基づいて、所定の演算式によりテストピースのクロム欠乏相の平均の空間分布、すなわち結晶粒界付近のクロム欠乏相のクロム濃度別体積を定量的に測定するのが特徴である。
【0013】
本発明の方法により、溶接時や高温での長期間使用によりクロム炭化物が析出したクロムを含むニッケル基合金の結晶粒界近傍のクロム欠乏相のクロム濃度別体積を定量的に求めることができる。
【0014】
また、クロム欠乏相の体積 ν1, ν2, … νnの値からインコネル600構造材の実質的なクロム炭化物の析出物の変化を定量的に求めることができる。さらに、化学的不均一性は応力腐食割れの要因の一つであるが、例えば、10wt%クロム濃度のクロム欠乏相の体積が分かることにより、シュミレーションなどにより応力腐食割れの起こる確率が計算できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
クロムを含むニッケル基合金のクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の体積νkを求める方法は以下の解析手順に基づいてプログラム化されている。
クロムを含むニッケル基合金の代表的なものであるインコネル600合金は、炭化物の析出を伴わない化学的に均一な組成の場合、キュリー温度(109K)以上で飽和磁化がゼロである。しかし、クロム欠乏相が存在する場合にはクロム欠乏相のクロム濃度に依存し、109K以上の温度でも、飽和磁化をもつ。109K以上の測定温度Tiでテストピースの飽和磁化を測定した場合、その飽和磁化Ms(Ti)は、下記(1)の計算式で求めることができる。
【0016】
【数3】
【0017】
νkはクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の体積、Vはテストピースの体積、kは測定条件に合わせて、測定温度Tminと測定温度Tmaxの間をn等分して決める自然数である。nの数は多いほど分布を正確に測定でき、少ないと分布を大雑把にしか捉えられない。測定温度Tminは、原理的にはクロムを含むニッケル基合金のキュリー温度より低い温度から測定すればよいので105K、100Kでもよい。上限の測定温度Tmaxは450Kとすることが望ましいが、室温300Kとすれば、クロム欠乏相の16wt%から9wt%の範囲の濃度分布を計測することになる。以下は、Tminを100K、Tmaxを室温300Kとした場合について説明する。
【0018】
Mk(Ti) は測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の予め求めた下記の(a),(b),(c)のデータに基づく飽和磁化である。
(a)クロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度の関係
(b)クロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の関係
(c)クロム欠乏相の飽和磁化と測定温度の関係
【0019】
具体的には、クロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化Mk(0)を求める。クロム濃度Ckをもつクロム欠乏相のキュリー温度Tc kを求める。規格化した飽和磁化Mk(Ti) /Mk(0)とTi /Tc kの関係(c)からTi における飽和磁化Mk(Ti) /Mk(0)が求まる。飽和磁Mk(Ti) /Mk(0)と先に求めておいたMk(0)を用い、Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の飽和磁化Mk(Ti)を求めることができる。
式(1)のMk(Ti) を以上の方法で予め求めておき、テストピースのTiKにおける飽和磁化Ms(Ti) を計測することにより式(1) の連立方程式を解くことによりνkを求めることができる。
【0020】
図3に、インコネル600合金のクロム欠乏相の体積νkとクロム濃度Ckの関係を予め求めた数値を示す。図4には、インコネル600合金より得られたクロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度との関係を予め求めた値を示す。また、図5に、インコネル600合金の欠乏相のクロム濃度が14wt%以上の場合の飽和磁化と各測定温度との相関をキュリー温度および飽和磁化ともに規格化して示す。また、図6に、同じくクロム濃度が14wt%未満の場合について示す。
【0021】
図4から、絶対温度0Kにおけるクロム濃度Ckにおけるクロム欠乏相の飽和磁化を求めることができる。また、図2から、クロム濃度Ckにおけるキュリー温度を求めることができる。このクロム濃度Ckにおけるキュリー温度と測定温度Tiとの比から図5または図6を利用し、測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の飽和磁化Mk(Ti)が求まる。
【0022】
一方、測定温度Tiでのテストピースの飽和磁化Ms(Ti)の計測値は磁化曲線を計測することによって求める。測定温度Tiでの磁化曲線は常磁性状態と強磁性状態が共存している。強磁性状態はクロム濃度が低く、キュリー温度が測定温度Ti以下の領域から生じる。
【0023】
式(1)において、νk以外は全ての物理量が上記の方法で求まる。未知数νkはn個あり、式(1)もn個あるので、未知数νkを連立方程式を解くことにより求めることができる。
【0024】
上記の過程をたどり、ν1, ν2, … νnを求めるためには、実際にMs(Ti) を求めなければならない。上記の方法で、Ms(Ti) を直接求める際には、冷媒およびヒータを用いてテストピースを各測定温度になるように制御し、外部から、例えば、0〜2×104Oeの範囲の磁場を加えて計測する。強い磁場を発生させるためには測定装置の大型化などの問題がある。そこで、弱い磁場で簡易的に求める方法を次に示す。
【0025】
飽和磁化と弱い磁場での測定温度Tiにおける磁化率χ0(Ti) との間には下記の(2)式で表される簡単な相関がある。
χ0(Ti) = A Ms(Ti) (2)
A は比例乗数である。
【0026】
例えば、50 Oeでの磁化を磁化率χ0とすると、図7には、χ0(Ti) とMs(Ti)の相関をとってある。χ0(Ti) とMs(Ti)の間には非常に良い相関があることを示す。Aは測定温度やクロム濃度にはほとんど独立な定数である。測定温度Tiにおける飽和磁化Ms(Ti)を直接求める代わりに弱い磁場の磁化を求め、(2)式の相関から間接的に求めることが出来る。A の値は予め求めておく。
【0027】
上述した各温度での測定により得られた磁化特性は、50 Oeという弱い磁場での磁化であるので、テストピースの飽和磁化の値を直接求めることが出来ない。ゆえに、予め、通常の磁化測定により磁化特性を得るための係数を求める必要があるが、この係数は、既知の実測材料と同じテストピースで予め測定し、前もって求めておくことができる。
【0028】
上述のようにして求めた擬似的磁化特性により磁化率の値が求められる。この値からクロム原子の析出によるテストピースの内部の実質的な熱鋭敏化の存在を確認し、その量を決めることができる。
【0029】
ここで、定数Aは材料の内部構造によって定まるが、テストピースについて、この定数Aをテストピースと同種の材料のテストピースで前もって求めておき、それらの定数を用いて、上記式(2)から、磁化率の値とクロム欠乏相の体積比の関係を求める。上述の測定で求めた磁化率の値に対応する、熱鋭敏化によって変態したクロム欠乏相の体積が容易に求められる。したがって、実際に、ν1, ν2, … νn を求める際には強い磁場を必要としない。
【0030】
したがって、本発明のインコネル600合金構造材の熱鋭敏化の非破壊検査方法によれば、測定により得られた疑似的な磁化曲線から磁化率の値を求め、図10に例示する如きクロム欠乏相の大きさを非破壊で正確に求めることができ、熱鋭敏化した材料とその材料の標準的な関係とを比較することで、インコネル600合金構造材の熱鋭敏化によるクロム欠乏相を非破壊的に測定できる。上記の解析は予めプログラムされた演算装置で簡単にできる。
【0031】
図8は、本発明の方法を実施するために使用する磁気特性検出装置の概念的な部分断面図である。図8に示すように、冷媒槽1の中央部にテストピース収容部2を設け、収容部2の内壁に電磁石または超伝導磁石からなる励磁器3を取り付ける。冷媒槽1には冷凍機4から冷媒を供給管5から供給する。テストピース収容部2の下部には冷媒からのガスをテストピース収容部2に流入させる冷却ガス供給管6を設ける。テストピースを冷やしたガスはテストピース収容部2の上方から冷却ガス排出管7を経て冷凍機4へ循環させる。
【0032】
テストピース8はテストピース支持体に取り付けて、テストピース8が励磁器3の中心位置になるように装入する。図8では、テストピース8をテストピース支持棒9の下部に取り付け、支持棒9をテストピース収容部2の中心部に上方からテストピース8が励磁器3の中心位置になるように装入した状態を示す。テストピース8の周囲に磁束検出器10を取り付ける。磁束検出器10からの計測データは導線11を介して磁化特性を解析し、クロム欠乏相の体積を算出する演算装置12に取り込まれる。
【0033】
励磁器3にはコントローラ(図示せず)により励磁電流を供給する。テストピース収容部2の底部近くのテストピース下部にはテストピース8の測定温度をコントロールするためのヒータ13を設置する。支持棒9の下端にはテストピース8の温度測定用の温度計14を設置する。冷媒としては液体窒素を使用できる。
【0034】
この磁気特性検出装置を用いて、まず、テストピースの温度が冷媒および加熱用ヒーターによりテストピースの測定温度を制御する手段(図示せず)を用いて均一にコントロールされた後、コンロトーラにより励磁器3に励磁電流が供給され、このとき磁束検出器10に誘起した電圧の測定データが、演算装置12に導かれて増幅積分され、その結果、測定温度のテストピースの磁化特性が得られ、解析プログラムにより演算されたクロム欠乏相の体積が表示装置15に表示される。さらに、等分された各測定温度で磁化特性の測定を繰り返す。これにより、クロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの範囲内における測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化Mk(Ti) が測定できる。
【0035】
【実施例】
実施例1
インコネル600合金を700℃で10時間時効してテストピースとした。このテストピースを図8に示すような検査装置を用いて飽和磁化を測定した。
測定温度は、100K から300Kの温度範囲を10等分した。各測定温度の磁化曲線は図9に示すようになった。図9に示す磁化曲線から測定温度Tiでの飽和磁化Ms(Ti)を磁化曲線を外挿し縦軸(外部磁場ゼロ)の交点から求める。その結果の測定温度Tiと飽和磁化Ms(Ti)(単位emu/g)の関係を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
νk(k=1, 2, 3,…10)は以下のように演算して求めた。
Ms(300)は、式(1)において、Ti=300、k=1として、下記の式(3)で表される。
Ms(300) = ν1M1(300)/V (3)
【0038】
300 K以上のキュリー温度をもつクロム欠乏相はクロム濃度が10.2wt%以下である。いま、300 K以上のキュリー温度をもつクロム欠乏相をキュリー温度350Kのクロム欠乏相で代表させる。キュリー温度が350Kのクロム欠乏相のクロム濃度は、図2から8.82 wt%であるので、絶対温度0Kでの飽和磁化は、図4から38.3 emu/gとなる。クロム濃度8.82 wt%でのキュリー温度は350Kであるので、300Kでの飽和磁化は、図6から300/350 (=0.86)に対する規格化された飽和磁化は0.52 で、予め求めたデータに基づく飽和磁化は38.3×0.52 すなわちM1(300)= 19.9emu/gとなる。Ms(300)は、表1からMs(300)=0.015 emu/gとなる。よって、ν1/Vは7.5×10-4となる。
【0039】
同じように、キュリー温度が280K以上300K未満すなわちクロム濃度が11.xwt%以下10wt%以上の相の体積ν2も、下記の式(4)により求めることができる。
Ms(280) = {ν1M1(280)+ν2M2(280)}/V (4)
【0040】
Ms(280)= 0.037 emu/g は実測値(表1)から求まる。ν1/Vは前過程で7.5×10-4と求まっている。M1(280) はクロム濃度8.82 wt%での280 Kでの飽和磁化であるので、図6から280/350 = 0.80 に対する規格化した飽和磁化は0.602 であり、予め求めたデータに基づく飽和磁化は38.3×0.602 すなわち23.0 emu/gとなる。
【0041】
M2(280)はクロム濃度が10.7wt%(キュリー温度300 K)での飽和磁化である。M2(280) の絶対温度0Kでの飽和磁化は、図4から33.8emu/gであるので、 図6から、280/300(=0.93)での規格化された飽和磁化は 0.36であるので、予め求めたデータに基づく飽和磁化は 33.8×0.36から280 KにおけるM2(280)=12.2 emu/gが求まる。これらの値を式(4)に代入し、0.037=7.7×10-4×23.0+12.2ν2/Vより、ν2/V=1.58×10-3となり、ν2が求まる。
以上の操作を繰り返すことにより、その他の体積比ν3/V, ν4/V,…..ν10/V の値が求まる。
【0042】
実際のインコネル600合金には時効前からクロムの析出物が存在している。このことを考慮して求めた結晶粒界近傍のクロム欠乏相のクロム濃度と体積の関係を図10、図11に示す。
【0043】
図10には、700℃で1時間と10時間時効処理したことによって析出した結果を示している。図11には、700℃で10時間と100時間時効処理したことによって析出した結果を示している。これらの結果は、時効後の析出物の体積から時効する前の体積を差し引いた結果を示す。図11には、クロムの析出物が結晶粒界に析出したとし、クロム析出物の粒界付近の分布を計算した結果である。時効時間によりクロム欠乏相の体積が増加し、時効時間が10時間で欠乏相が広がる(図10)。その後、周りからクロムが供給され回復する(図11)。この現象は電子顕微鏡観察の結果と一致する。
【0044】
また、先に求めた、ν1, ν2, ν3, …から結晶粒を球とみなして結晶粒界近傍のクロム欠乏相の分布を簡単な方法で求めることができる。すなわち、結晶粒を球として、その半径をr、体積をV、クロム濃度Ckのクロム欠乏相の厚さをdとすると、νk/V=(4πr2d)/(4/3πr3)=3d/rから、νk/Vは求まっているのでクロム欠乏相の厚さdを各クロム濃度に対して求めることができる。図12、図13にその結果を示す。横軸は結晶粒界を0nmとしたクロム欠乏相の厚さ(nm)である。
【0045】
上記の例は110 Kから300Kの温度範囲を10等分した例を示したが、温度範囲を必要な情報に応じて適当にとることが出来る。また、さらに細かく等分することによりクロム欠乏相の濃度分布に関する情報をよりきめ細かく得ることが出来る。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、磁化測定器で、飽和磁化を直接測定し、あるいは磁化率を測定して、磁化率を用いて間接的に飽和磁化を測定し、その大きさとクロム欠乏相の予め求めたデータに基づく飽和磁化からクロムを含有するニッケル基合金のクロム濃度ごとのクロム欠乏相の体積を求めることができる。
【0047】
それゆえ、本発明の方法によれば、原子炉や火力発電所の発電機などのインコネル600で代表されるクロムを含有するニッケル基合金で製造される構造物の熱鋭敏化の程度を、粒界腐食割れにより亀裂が発生する前段階で、非破壊的に正確に検査できる。なおかつ、小型の冷凍機を具える簡単な磁気特性検出装置で検査することができる。
【0048】
化学的にしろ、電気化学的にしろ腐食による方法は非破壊検査にはならない。また、これまでの電気化学的腐食による方法はテストピース表面のクロム欠乏相の情報しか得られなかったのに対し、磁気的な方法はテストピース表面および内部を含めたテストピース全体の平均の情報を得ることができる。本発明の方法は、測定精度の面からも従来の電気化学的腐食による方法より優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】インコネル600合金の粒界付近でのクロム炭化物とクロム欠乏相のクロム濃度分布の模式図である。
【図2】インコネル600合金のクロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の相関を示すグラフである。
【図3】インコネル600合金の粒界付近でのクロム濃度別のクロム欠乏相の体積の分布を例示するグラフである。
【図4】インコネル600合金のクロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度との相関を示すグラフである。
【図5】インコネル600合金のクロム欠乏相の各クロム濃度(14wt%≦CCr≦16wt%)における飽和磁化と温度(温度、飽和磁化共に規格化してある。)との関係を示すグラフである。
【図6】インコネル600合金のクロム欠乏相の各クロム濃度(9wt%≦CCr<14wt%)における飽和磁化と温度(温度、飽和磁化共に規格化してある。)との関係を示すグラフである。
【図7】インコネル600合金の飽和磁化と磁化率の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の方法を実施するために使用するテストピースの磁気特性検出装置の概念的な部分断面図である。
【図9】インコネル600合金を700℃で10時間時効したテストピースの各測定温度における磁化曲線を示すグラフである。
【図10】インコネル600合金の700℃で1時間、10時間の時効によって生じたクロム欠乏相のクロム濃度別分布を本発明の方法で実際に求めた結果の一例を示すグラフである。
【図11】インコネル600合金の700℃で10時間、100時間の時効によって生じたクロム欠乏相のクロム濃度別分布を本発明の方法で実際に求めた結果の一例を示すグラフである。
【図12】図10に対応するクロム欠乏相の厚さdを各クロム濃度に対して求めた結果の一例を示すグラフである。
【図13】図11に対応するクロム欠乏相の厚さdを各クロム濃度に対して求めた結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 冷媒槽
2 テストピース収容部
3 励磁器
4 冷凍機
5 冷媒供給管
6 冷却ガス供給管
7 冷却ガス排出管
8 テストピース
9 テストピース支持棒
10磁束検出器
11導線
12演算装置
13ヒータ
14温度計
15表示装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、インコネル合金に代表されるクロムを含むニッケル基合金の熱鋭敏化による粒界腐食の非破壊検査方法および検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロムを含むニッケル基耐熱合金の代表的な合金であるインコネル合金は、ニッケルと約15〜23wt%のクロムを主成分とする耐熱合金であり、鉄、コバルト、モリブデンを含む場合がある。代表的なインコネル600合金(Ni76.0%、Cr15.5%、Fe7.8%,Mn0.4%,Si0.2%,C0.08%:重量%)は、原子炉周辺機器、火力発電プラント、化学プラントなどに使用されているが、溶接時などの熱処理や高温長時間保持などによる熱鋭敏化により結晶粒界に沿ってクロム炭化物が析出し、クロム欠乏層が生じる。そして、このクロム欠乏層が応力腐食割れの原因の1つとなる。
【0003】
このような応力腐食割れの検査方法としては、従来、テストピースを動作環境に置き、定期的に取り出して、化学薬品による腐食を行い光学顕微鏡で観察する方法や電気化学的にクロム炭化物の析出物を腐食して調べる方法やシャルピー試験など、いずれも破壊試験での検査が行われている。
例えば、特公平2−54501号公報には硝酸を含む水溶液中でニッケルが活性溶解を起こす電位で分極を行い、クロムを含むニッケル基合金のクロム欠乏層を検出する粒界腐食試験方法が開示されている。
含フェライト系ステンレス鋼や低合金鋼などの鉄基合金製品の実機部材における高温時効脆化や歪損傷の検知に磁気測定方法を用いることは公知である(特公平7−6950号公報、特開平4−218764号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のとおり、インコネル合金に代表されるクロムを含むニッケル基合金は熱鋭敏化により結晶粒界付近にクロム炭化物が析出し、クロム欠乏相ができる。図1は、インコネル600合金の結晶粒界付近にクロム炭化物が析出した場合のクロム濃度の分布を模式的に示したものであり、例えば、図示のように、10wt%以下のクロム濃度が結晶粒界にできると応力腐食割れの危険が高まる。このクロム濃度分布はインコネル600合金構造材の溶接時の熱処理またはインコネル600合金構造体を600℃から700℃に長時間保持するときのクロム炭化物の析出によって生じ、保持時間によっても分布が変化する。
【0005】
クロム欠乏相の従来の検査方法は上記のように表面を腐食したり、破断させたりするために破壊を伴い非破壊検査の理念に反する方法である。また、表面のクロム欠乏相の情報しか得ることが出来なかった。また、欠乏相のクロム濃度および欠乏相の体積を定量的に調べることは時間と多大な労力を必要とする。
磁化率を測定する従来の方法は、結晶粒界付近のクロム原子の析出物やクロム欠乏相を定性的に観測することしかできない。
Fe基合金部材の上記の磁気測定法は相変態に基づく飽和磁化などの変化を既知データと対比演算するものであり、クロムを含むニッケル基合金のクロム炭化物の析出に伴うクロム欠乏相のクロム濃度別体積を求めることはできない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、クロムを含むニッケル基合金の粒界腐食割れの原因となるクロム欠乏相の存在を磁気的な手段を用いることによって定量的に測定できる非破壊検査方法およびそのための検査装置を開発した。
【0007】
すなわち、本発明は、クロムを含むニッケル基合金の熱鋭敏化による粒界腐食を検査する方法において、該合金のクロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの範囲内における測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化Ms(Ti) を測定することにより、下記の式(1)に基づいてνkを算出することによりクロム欠乏相の体積をクロム濃度別に定量的に求めることを特徴とするクロムを含むニッケル基合金の粒界腐食の非破壊検査方法である。
【数2】
ただし、νkはクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の体積、Vはテストピースの体積、kは測定条件に合わせて、測定温度Tminと測定温度Tmaxの間をn等分して決める自然数、Mk(Ti) は測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の予め求めた下記の(a),(b),(c)のデータに基づく飽和磁化である。
(a)クロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度の関係
(b)クロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の関係
(c)クロム欠乏相の飽和磁化と測定温度の関係
【0008】
また、本発明は、冷媒槽の中央部に設けられたテストピース収容部、該収容部の内壁に取り付けられたテストピース励磁器、テストピースを励磁器の中心位置に装入する支持体、テストピースの周囲に取り付ける磁束検出器、冷媒槽に冷媒を供給し、冷媒から発生した冷却ガスをテストピース収容部に流入させ、循環して冷却する冷凍機、テストピースの下部に設けた加熱用ヒーター、冷媒および加熱用ヒーターによりテストピースの測定温度を制御する手段、からなることを特徴とする上記の非破壊検査方法に使用するためのテストピースの磁気特性検出装置である。
【0009】
以下は、クロムを含むニッケル基合金の代表的なものとして知られるインコネル600合金について具体的に説明するが、本発明の方法の検査対象は該インコネル合金に限定されるものではない。インコネル合金には、インコネル600、インコネル601、インコネル625、インコネル690、インコネル617などがあり、インコネル600合金の成分の概略値はニッケル74wt%、クロム16wt%、Fe10wt%からなる。本発明において、クロムを含むニッケル基合金とは、これらのインコネル合金と同様にクロム炭化物の粒界析出を起こす程度にクロムを含有するニッケル基合金をいう。
【0010】
インコネル600合金のキュリー温度(磁気遷移温度)は109Kである。インコネル600合金の熱鋭敏化のメカニズムおよび熱鋭敏化が起こる温度はこれまでの多くの研究で調べられてきた。これまでの熱鋭敏化の検証は化学薬品を用いた腐食や電気化学的な腐食によって行われ、熱鋭敏化が進む温度は600から700℃であることが報告されている。
【0011】
クロムを含むニッケル基合金は熱鋭敏化により結晶粒界付近にクロム炭化物が析出するが、クロム欠乏相のキュリー温度はクロム濃度に依存する。図2には、インコネル600合金についてのクロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度との関係を示す。クロム濃度14wt%で勾配が少し変わるがクロム濃度の減少にほぼ比例してキュリー温度は高くなる。これまでの研究からクロム濃度が最も低いのは6wt%であり、この濃度に対応するキュリー温度は450Kである。
【0012】
本発明の検出方法では、このキュリー温度とクロム濃度の関係に基づく予め求めた測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の飽和磁化と、クロムを含むニッケル基合金のクロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの温度である109K〜450Kの範囲内における一定の測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化の測定値に基づいて、所定の演算式によりテストピースのクロム欠乏相の平均の空間分布、すなわち結晶粒界付近のクロム欠乏相のクロム濃度別体積を定量的に測定するのが特徴である。
【0013】
本発明の方法により、溶接時や高温での長期間使用によりクロム炭化物が析出したクロムを含むニッケル基合金の結晶粒界近傍のクロム欠乏相のクロム濃度別体積を定量的に求めることができる。
【0014】
また、クロム欠乏相の体積 ν1, ν2, … νnの値からインコネル600構造材の実質的なクロム炭化物の析出物の変化を定量的に求めることができる。さらに、化学的不均一性は応力腐食割れの要因の一つであるが、例えば、10wt%クロム濃度のクロム欠乏相の体積が分かることにより、シュミレーションなどにより応力腐食割れの起こる確率が計算できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
クロムを含むニッケル基合金のクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の体積νkを求める方法は以下の解析手順に基づいてプログラム化されている。
クロムを含むニッケル基合金の代表的なものであるインコネル600合金は、炭化物の析出を伴わない化学的に均一な組成の場合、キュリー温度(109K)以上で飽和磁化がゼロである。しかし、クロム欠乏相が存在する場合にはクロム欠乏相のクロム濃度に依存し、109K以上の温度でも、飽和磁化をもつ。109K以上の測定温度Tiでテストピースの飽和磁化を測定した場合、その飽和磁化Ms(Ti)は、下記(1)の計算式で求めることができる。
【0016】
【数3】
【0017】
νkはクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の体積、Vはテストピースの体積、kは測定条件に合わせて、測定温度Tminと測定温度Tmaxの間をn等分して決める自然数である。nの数は多いほど分布を正確に測定でき、少ないと分布を大雑把にしか捉えられない。測定温度Tminは、原理的にはクロムを含むニッケル基合金のキュリー温度より低い温度から測定すればよいので105K、100Kでもよい。上限の測定温度Tmaxは450Kとすることが望ましいが、室温300Kとすれば、クロム欠乏相の16wt%から9wt%の範囲の濃度分布を計測することになる。以下は、Tminを100K、Tmaxを室温300Kとした場合について説明する。
【0018】
Mk(Ti) は測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の予め求めた下記の(a),(b),(c)のデータに基づく飽和磁化である。
(a)クロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度の関係
(b)クロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の関係
(c)クロム欠乏相の飽和磁化と測定温度の関係
【0019】
具体的には、クロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化Mk(0)を求める。クロム濃度Ckをもつクロム欠乏相のキュリー温度Tc kを求める。規格化した飽和磁化Mk(Ti) /Mk(0)とTi /Tc kの関係(c)からTi における飽和磁化Mk(Ti) /Mk(0)が求まる。飽和磁Mk(Ti) /Mk(0)と先に求めておいたMk(0)を用い、Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の飽和磁化Mk(Ti)を求めることができる。
式(1)のMk(Ti) を以上の方法で予め求めておき、テストピースのTiKにおける飽和磁化Ms(Ti) を計測することにより式(1) の連立方程式を解くことによりνkを求めることができる。
【0020】
図3に、インコネル600合金のクロム欠乏相の体積νkとクロム濃度Ckの関係を予め求めた数値を示す。図4には、インコネル600合金より得られたクロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度との関係を予め求めた値を示す。また、図5に、インコネル600合金の欠乏相のクロム濃度が14wt%以上の場合の飽和磁化と各測定温度との相関をキュリー温度および飽和磁化ともに規格化して示す。また、図6に、同じくクロム濃度が14wt%未満の場合について示す。
【0021】
図4から、絶対温度0Kにおけるクロム濃度Ckにおけるクロム欠乏相の飽和磁化を求めることができる。また、図2から、クロム濃度Ckにおけるキュリー温度を求めることができる。このクロム濃度Ckにおけるキュリー温度と測定温度Tiとの比から図5または図6を利用し、測定温度Tiにおけるクロム濃度Ckをもつクロム欠乏相の飽和磁化Mk(Ti)が求まる。
【0022】
一方、測定温度Tiでのテストピースの飽和磁化Ms(Ti)の計測値は磁化曲線を計測することによって求める。測定温度Tiでの磁化曲線は常磁性状態と強磁性状態が共存している。強磁性状態はクロム濃度が低く、キュリー温度が測定温度Ti以下の領域から生じる。
【0023】
式(1)において、νk以外は全ての物理量が上記の方法で求まる。未知数νkはn個あり、式(1)もn個あるので、未知数νkを連立方程式を解くことにより求めることができる。
【0024】
上記の過程をたどり、ν1, ν2, … νnを求めるためには、実際にMs(Ti) を求めなければならない。上記の方法で、Ms(Ti) を直接求める際には、冷媒およびヒータを用いてテストピースを各測定温度になるように制御し、外部から、例えば、0〜2×104Oeの範囲の磁場を加えて計測する。強い磁場を発生させるためには測定装置の大型化などの問題がある。そこで、弱い磁場で簡易的に求める方法を次に示す。
【0025】
飽和磁化と弱い磁場での測定温度Tiにおける磁化率χ0(Ti) との間には下記の(2)式で表される簡単な相関がある。
χ0(Ti) = A Ms(Ti) (2)
A は比例乗数である。
【0026】
例えば、50 Oeでの磁化を磁化率χ0とすると、図7には、χ0(Ti) とMs(Ti)の相関をとってある。χ0(Ti) とMs(Ti)の間には非常に良い相関があることを示す。Aは測定温度やクロム濃度にはほとんど独立な定数である。測定温度Tiにおける飽和磁化Ms(Ti)を直接求める代わりに弱い磁場の磁化を求め、(2)式の相関から間接的に求めることが出来る。A の値は予め求めておく。
【0027】
上述した各温度での測定により得られた磁化特性は、50 Oeという弱い磁場での磁化であるので、テストピースの飽和磁化の値を直接求めることが出来ない。ゆえに、予め、通常の磁化測定により磁化特性を得るための係数を求める必要があるが、この係数は、既知の実測材料と同じテストピースで予め測定し、前もって求めておくことができる。
【0028】
上述のようにして求めた擬似的磁化特性により磁化率の値が求められる。この値からクロム原子の析出によるテストピースの内部の実質的な熱鋭敏化の存在を確認し、その量を決めることができる。
【0029】
ここで、定数Aは材料の内部構造によって定まるが、テストピースについて、この定数Aをテストピースと同種の材料のテストピースで前もって求めておき、それらの定数を用いて、上記式(2)から、磁化率の値とクロム欠乏相の体積比の関係を求める。上述の測定で求めた磁化率の値に対応する、熱鋭敏化によって変態したクロム欠乏相の体積が容易に求められる。したがって、実際に、ν1, ν2, … νn を求める際には強い磁場を必要としない。
【0030】
したがって、本発明のインコネル600合金構造材の熱鋭敏化の非破壊検査方法によれば、測定により得られた疑似的な磁化曲線から磁化率の値を求め、図10に例示する如きクロム欠乏相の大きさを非破壊で正確に求めることができ、熱鋭敏化した材料とその材料の標準的な関係とを比較することで、インコネル600合金構造材の熱鋭敏化によるクロム欠乏相を非破壊的に測定できる。上記の解析は予めプログラムされた演算装置で簡単にできる。
【0031】
図8は、本発明の方法を実施するために使用する磁気特性検出装置の概念的な部分断面図である。図8に示すように、冷媒槽1の中央部にテストピース収容部2を設け、収容部2の内壁に電磁石または超伝導磁石からなる励磁器3を取り付ける。冷媒槽1には冷凍機4から冷媒を供給管5から供給する。テストピース収容部2の下部には冷媒からのガスをテストピース収容部2に流入させる冷却ガス供給管6を設ける。テストピースを冷やしたガスはテストピース収容部2の上方から冷却ガス排出管7を経て冷凍機4へ循環させる。
【0032】
テストピース8はテストピース支持体に取り付けて、テストピース8が励磁器3の中心位置になるように装入する。図8では、テストピース8をテストピース支持棒9の下部に取り付け、支持棒9をテストピース収容部2の中心部に上方からテストピース8が励磁器3の中心位置になるように装入した状態を示す。テストピース8の周囲に磁束検出器10を取り付ける。磁束検出器10からの計測データは導線11を介して磁化特性を解析し、クロム欠乏相の体積を算出する演算装置12に取り込まれる。
【0033】
励磁器3にはコントローラ(図示せず)により励磁電流を供給する。テストピース収容部2の底部近くのテストピース下部にはテストピース8の測定温度をコントロールするためのヒータ13を設置する。支持棒9の下端にはテストピース8の温度測定用の温度計14を設置する。冷媒としては液体窒素を使用できる。
【0034】
この磁気特性検出装置を用いて、まず、テストピースの温度が冷媒および加熱用ヒーターによりテストピースの測定温度を制御する手段(図示せず)を用いて均一にコントロールされた後、コンロトーラにより励磁器3に励磁電流が供給され、このとき磁束検出器10に誘起した電圧の測定データが、演算装置12に導かれて増幅積分され、その結果、測定温度のテストピースの磁化特性が得られ、解析プログラムにより演算されたクロム欠乏相の体積が表示装置15に表示される。さらに、等分された各測定温度で磁化特性の測定を繰り返す。これにより、クロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの範囲内における測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化Mk(Ti) が測定できる。
【0035】
【実施例】
実施例1
インコネル600合金を700℃で10時間時効してテストピースとした。このテストピースを図8に示すような検査装置を用いて飽和磁化を測定した。
測定温度は、100K から300Kの温度範囲を10等分した。各測定温度の磁化曲線は図9に示すようになった。図9に示す磁化曲線から測定温度Tiでの飽和磁化Ms(Ti)を磁化曲線を外挿し縦軸(外部磁場ゼロ)の交点から求める。その結果の測定温度Tiと飽和磁化Ms(Ti)(単位emu/g)の関係を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
νk(k=1, 2, 3,…10)は以下のように演算して求めた。
Ms(300)は、式(1)において、Ti=300、k=1として、下記の式(3)で表される。
Ms(300) = ν1M1(300)/V (3)
【0038】
300 K以上のキュリー温度をもつクロム欠乏相はクロム濃度が10.2wt%以下である。いま、300 K以上のキュリー温度をもつクロム欠乏相をキュリー温度350Kのクロム欠乏相で代表させる。キュリー温度が350Kのクロム欠乏相のクロム濃度は、図2から8.82 wt%であるので、絶対温度0Kでの飽和磁化は、図4から38.3 emu/gとなる。クロム濃度8.82 wt%でのキュリー温度は350Kであるので、300Kでの飽和磁化は、図6から300/350 (=0.86)に対する規格化された飽和磁化は0.52 で、予め求めたデータに基づく飽和磁化は38.3×0.52 すなわちM1(300)= 19.9emu/gとなる。Ms(300)は、表1からMs(300)=0.015 emu/gとなる。よって、ν1/Vは7.5×10-4となる。
【0039】
同じように、キュリー温度が280K以上300K未満すなわちクロム濃度が11.xwt%以下10wt%以上の相の体積ν2も、下記の式(4)により求めることができる。
Ms(280) = {ν1M1(280)+ν2M2(280)}/V (4)
【0040】
Ms(280)= 0.037 emu/g は実測値(表1)から求まる。ν1/Vは前過程で7.5×10-4と求まっている。M1(280) はクロム濃度8.82 wt%での280 Kでの飽和磁化であるので、図6から280/350 = 0.80 に対する規格化した飽和磁化は0.602 であり、予め求めたデータに基づく飽和磁化は38.3×0.602 すなわち23.0 emu/gとなる。
【0041】
M2(280)はクロム濃度が10.7wt%(キュリー温度300 K)での飽和磁化である。M2(280) の絶対温度0Kでの飽和磁化は、図4から33.8emu/gであるので、 図6から、280/300(=0.93)での規格化された飽和磁化は 0.36であるので、予め求めたデータに基づく飽和磁化は 33.8×0.36から280 KにおけるM2(280)=12.2 emu/gが求まる。これらの値を式(4)に代入し、0.037=7.7×10-4×23.0+12.2ν2/Vより、ν2/V=1.58×10-3となり、ν2が求まる。
以上の操作を繰り返すことにより、その他の体積比ν3/V, ν4/V,…..ν10/V の値が求まる。
【0042】
実際のインコネル600合金には時効前からクロムの析出物が存在している。このことを考慮して求めた結晶粒界近傍のクロム欠乏相のクロム濃度と体積の関係を図10、図11に示す。
【0043】
図10には、700℃で1時間と10時間時効処理したことによって析出した結果を示している。図11には、700℃で10時間と100時間時効処理したことによって析出した結果を示している。これらの結果は、時効後の析出物の体積から時効する前の体積を差し引いた結果を示す。図11には、クロムの析出物が結晶粒界に析出したとし、クロム析出物の粒界付近の分布を計算した結果である。時効時間によりクロム欠乏相の体積が増加し、時効時間が10時間で欠乏相が広がる(図10)。その後、周りからクロムが供給され回復する(図11)。この現象は電子顕微鏡観察の結果と一致する。
【0044】
また、先に求めた、ν1, ν2, ν3, …から結晶粒を球とみなして結晶粒界近傍のクロム欠乏相の分布を簡単な方法で求めることができる。すなわち、結晶粒を球として、その半径をr、体積をV、クロム濃度Ckのクロム欠乏相の厚さをdとすると、νk/V=(4πr2d)/(4/3πr3)=3d/rから、νk/Vは求まっているのでクロム欠乏相の厚さdを各クロム濃度に対して求めることができる。図12、図13にその結果を示す。横軸は結晶粒界を0nmとしたクロム欠乏相の厚さ(nm)である。
【0045】
上記の例は110 Kから300Kの温度範囲を10等分した例を示したが、温度範囲を必要な情報に応じて適当にとることが出来る。また、さらに細かく等分することによりクロム欠乏相の濃度分布に関する情報をよりきめ細かく得ることが出来る。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、磁化測定器で、飽和磁化を直接測定し、あるいは磁化率を測定して、磁化率を用いて間接的に飽和磁化を測定し、その大きさとクロム欠乏相の予め求めたデータに基づく飽和磁化からクロムを含有するニッケル基合金のクロム濃度ごとのクロム欠乏相の体積を求めることができる。
【0047】
それゆえ、本発明の方法によれば、原子炉や火力発電所の発電機などのインコネル600で代表されるクロムを含有するニッケル基合金で製造される構造物の熱鋭敏化の程度を、粒界腐食割れにより亀裂が発生する前段階で、非破壊的に正確に検査できる。なおかつ、小型の冷凍機を具える簡単な磁気特性検出装置で検査することができる。
【0048】
化学的にしろ、電気化学的にしろ腐食による方法は非破壊検査にはならない。また、これまでの電気化学的腐食による方法はテストピース表面のクロム欠乏相の情報しか得られなかったのに対し、磁気的な方法はテストピース表面および内部を含めたテストピース全体の平均の情報を得ることができる。本発明の方法は、測定精度の面からも従来の電気化学的腐食による方法より優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】インコネル600合金の粒界付近でのクロム炭化物とクロム欠乏相のクロム濃度分布の模式図である。
【図2】インコネル600合金のクロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の相関を示すグラフである。
【図3】インコネル600合金の粒界付近でのクロム濃度別のクロム欠乏相の体積の分布を例示するグラフである。
【図4】インコネル600合金のクロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度との相関を示すグラフである。
【図5】インコネル600合金のクロム欠乏相の各クロム濃度(14wt%≦CCr≦16wt%)における飽和磁化と温度(温度、飽和磁化共に規格化してある。)との関係を示すグラフである。
【図6】インコネル600合金のクロム欠乏相の各クロム濃度(9wt%≦CCr<14wt%)における飽和磁化と温度(温度、飽和磁化共に規格化してある。)との関係を示すグラフである。
【図7】インコネル600合金の飽和磁化と磁化率の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の方法を実施するために使用するテストピースの磁気特性検出装置の概念的な部分断面図である。
【図9】インコネル600合金を700℃で10時間時効したテストピースの各測定温度における磁化曲線を示すグラフである。
【図10】インコネル600合金の700℃で1時間、10時間の時効によって生じたクロム欠乏相のクロム濃度別分布を本発明の方法で実際に求めた結果の一例を示すグラフである。
【図11】インコネル600合金の700℃で10時間、100時間の時効によって生じたクロム欠乏相のクロム濃度別分布を本発明の方法で実際に求めた結果の一例を示すグラフである。
【図12】図10に対応するクロム欠乏相の厚さdを各クロム濃度に対して求めた結果の一例を示すグラフである。
【図13】図11に対応するクロム欠乏相の厚さdを各クロム濃度に対して求めた結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 冷媒槽
2 テストピース収容部
3 励磁器
4 冷凍機
5 冷媒供給管
6 冷却ガス供給管
7 冷却ガス排出管
8 テストピース
9 テストピース支持棒
10磁束検出器
11導線
12演算装置
13ヒータ
14温度計
15表示装置
Claims (2)
- クロムを含むニッケル基合金の熱鋭敏化による粒界腐食を検査する方法において、該合金のクロム欠乏相のクロム濃度に対応するキュリー温度の最低から最高までの範囲内における測定温度範囲を等分した各測定温度でのテストピースの飽和磁化Ms(Ti) を測定することにより、下記の式(1)に基づいてνkを算出することによりクロム欠乏相の体積をクロム濃度別に定量的に求めることを特徴とするクロムを含むニッケル基合金の粒界腐食の非破壊検査方法。
(a)クロム欠乏相の絶対温度0Kにおける飽和磁化とクロム濃度の関係
(b)クロム欠乏相のキュリー温度とクロム濃度の関係
(c)クロム欠乏相の飽和磁化と測定温度の関係 - 冷媒槽の中央部に設けられたテストピース収容部、該収容部の内壁に取り付けられたテストピース励磁器、テストピースを励磁器の中心位置に装入する支持体、テストピースの周囲に取り付ける磁束検出器、冷媒槽に冷媒を供給し、冷媒から発生した冷却ガスをテストピース収容部に流入させ、循環して冷却する冷凍機、テストピースの下部に設けた加熱用ヒーター、冷媒および加熱用ヒーターによりテストピースの測定温度を制御する手段、からなることを特徴とする請求項1記載の非破壊検査方法に使用するためのテストピースの磁気特性検出装置。
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